説明

体幹部皮下脂肪測定方法及び体幹部皮下脂肪測定装置

【解決手段】体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に一方の電流印加電極を配置し、該一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極を体幹部から突出する部位に配置し、体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に一方の電圧計測電極を配置し、該一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極を、前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる体幹部から突出する部位に配置して、体幹部のインピーダンスを測定することにより体幹部皮下脂肪組織層情報を求める。
【効果】皮下脂肪組織厚計測部位と計測法を限定することにより、体幹部の皮下脂肪組織層情報を精度よく測定でき、また、高精度の測定皮下脂肪組織層情報を体幹部の内臓脂肪組織情報の推定に利用することにより、体幹部内臓脂肪組織を精度よく測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体幹部皮下脂肪測定方法および装置、並びに体幹部内臓脂肪測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体電気インピーダンスを利用した体脂肪組織の推定技術は、体脂肪組織および体脂肪率を計測する技術として世に広がってきたが、実際には、脂肪組織を直接的に測定するものとはなっておらず、脂肪組織以外の水が支配的な除脂肪組織を電気的に計測したものである。特に、全身(Whole Body)計測では、旧来のタイプでは仰臥位姿勢で片手-片足間を1つの円柱でモデル化している(片手-片足間誘導法)し、簡易型としては、立位姿勢で測定する両掌間誘導法や、体重計と一体になった両脚裏間誘導法、上肢部と下肢部または、上肢部と下肢部と体幹部、または、左右上肢部、左右下肢部、体幹部の様に5セグメントに分けて個別に円柱モデルを適用可能としてインピ−ダンスを計測した技術も顕在化してきている。また、インピ−ダンスCT計測技術を簡略して体幹部臍囲に電流印加・電圧計測電極を配置して腹部のインピ−ダンスを計測し、内臓脂肪組織量を推定する計測技術について、特許出願がなされている(特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3396677号
【特許文献2】特許第3396674号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、体脂肪の情報は、糖尿病や高血圧および高脂血症などの生活習慣病のスクリ−ニング用としての有用性が特に問われており、内臓器組織近辺に付着、蓄積した内臓脂肪組織や皮下脂肪組織に関して、その計測の重要性が日に日に高まってきている。
【0005】
特に、内臓脂肪組織は、体幹部の腹部付近に集中的に分布する脂肪組織で、X線CTやMRI等による腹部横断画像でその脂肪組織の横断面積で判断されてきていた。しかし、装置が大掛かりで、また、X線の場合被曝の問題もあり、費用面もあり、フィールドおよび家庭用での計測に適さない。そこで、内臓脂肪組織は、全身脂肪組織との相関または、全身の除脂肪組織との相関からの推定するのが一般的で、スクリーニング用としても、十分な信頼性を確保するにいたらなかった。
【0006】
最近では、体幹部の臍囲周辺に電極を配置し、体幹部の内部インピ−ダンスを計測して、内臓脂肪組織情報を推定するといった方法も開発中である。しかしながら、この方法は、骨格筋組織層と皮下脂肪組織層と内臓脂肪組織の間に有意な相関が存在することに基づくものであり、いずれかの組織の情報が捕捉出来ればおおよその情報の推定が可能であることを前提とするものである。このため、非常に有意な相関が存在し得る自立性の高い健康域の被験者については良好な結果が期待できるが、各組織間の相関が異なる対象者、例えば、内臓脂肪組織が顕著に肥大し、かつ、皮下脂肪組織層や骨格筋組織層との相関性が顕著に低い被験者における計測結果については大きな誤差を含んだものとなり得る。つまり、この開発中の方法にあっても、健康な自立生活が可能な被験者であれば、臍部全周囲のどこに電極を配置しても何とか計測の可能性は考えられるが、麻痺・介護患者等、特にベッド上の寝たきり患者での計測となると課題が大きい。
【0007】
また、この開発中の方法は、測定対象としている組織部位を腹部表面から電流を印加通電させて、内部の組織に関連するインピ−ダンス値を取得している点で高い技術と言えるが、測定部位である体幹部が有する内部構造上の問題から、測定されたインピ−ダンス情報そのものが内臓脂肪組織に対してほとんど有用な感度を有していないのが実情である。即ち、測定部位である体幹部は太短く、多重構造、つまり、測定対象である内臓脂肪組織は内臓器組織や背骨組織とともに非常に良好な導電性を示す骨格筋組織層で覆われ、更に、この骨格筋組織層は導電性が非常に悪い皮下脂肪組織層で覆われているといった構造になっている。特に、測定対象である内臓脂肪組織周辺は、骨格筋組織層より導電性が劣る内臓器組織とこの内臓器組織に付着、蓄積した導電性が悪い内臓脂肪組織が支配的で、かつ、複雑な構成のため、骨格筋組織層より内部の導電性はかなり劣るものとなっている。このため、単純に電流印加電極を腹周囲に配置したとしても、大半は、骨格筋組織層を通じた通電になり、電流密度分布も、骨格筋組織層に支配的な電位分布として表面計測電極から観測されることになる。さらに、電流印加電極の表面積または腹周囲方向への電極幅で印加電流密度の分布が決まり、電極直下の皮下脂肪組織層における電流密度が高い拡がり抵抗領域での情報の観測が支配的となってしまう。
【0008】
更に言えば、測定部位である体幹部は太短いため、電流印加電極直下の電流密度集中(広がり抵抗)領域の皮下脂肪組織層における感度が高くなり、さらに、骨格筋組織は脂肪組織に比べて導電性が相当高いことから、皮下脂肪組織層を通過した電流の大半が骨格筋組織層を介して対向する電流印加電極側に皮下脂肪組織層を通って戻るル−トを取り、結果的に、内部での電位分布はこの骨格筋組織層で大幅に歪められてしまう。よって、従来の方法では、測定される電位の大半は、皮下脂肪組織層の情報となってしまい、測定対象である内臓脂肪組織、即ち、内臓器組織およびその周囲に付着、蓄積する内臓脂肪組織への通電はほとんど期待できず、全インピ−ダンス計測区間の10%以下の極めて計測感度の低い情報しか捕捉出来ていないのである。
【0009】
これらの問題を回避するために、皮下脂肪組織層面積と相関性が高い腹囲長を推定式に組み込むことで、その推定誤差の拡大を防止する方法も考えられてはいるが、この方法はあくまで構成組織間の相関性による間接推定にほかならず、腹部中央に必要な通電感度を確保した計測法とは言いづらい。つまり、統計的相関デザインからずれる個々人の誤差は、保証出来ず、特に病的に皮下や内臓脂肪組織が多い場合や、中間の骨格筋組織層が多い/少ない場合などは顕著な誤差が生じ得る。尚、皮下脂肪組織層面積が腹囲長と相関性が高いのは、人間の体幹部は同心円上の組織配列デザインとなっており、皮下脂肪組織層は、最も外側の配置であるため、外周囲長と皮下脂肪組織厚でその面積が決まることになるからである。
【0010】
体幹部に対しての電極配置にも通常は、四電極法が用いられる。この方法は、被験者の体内に電流を印加するとともに、印加電流によって被験者の測定部位区間に生じた電位差を測定して測定部位区間生体電気インピーダンスを測定するというものである。体幹部のような太短い測定部位に四電極法を適用した場合、電流が広がり始めの電流密度集中(即ち、広がり抵抗領域)が、例えば、電流印加電極直下のため、皮下脂肪組織層付近で大きな電位差を生じ、電圧計測電極間で計測される電位差の大半を占めることになる。この広がり抵抗による影響を小さくするためには、電流印加電極と電圧計測電極間距離を十分確保する配置とすることが重要である。一般的な測定では、測定区間が長く電圧計測電極間距離が十分確保できる条件での測定であるため、いわゆるS/N感度(Nは広がり抵抗による影響(ノイズ)、Sは電圧電極間で計測される信号)は十分確保されるはずである。しかしながら、体幹部のような太短い測定部位の場合は、Nを小さくすべく、電流印加電極からの距離を確保しようとして電圧計測電極を遠ざけると、逆に、電圧計測電極区間距離が小さくなり、この結果、Sが小さくなって、結局、S/Nは悪くなってしまう。さらに、電流密度が高い広がり抵抗部は、皮下脂肪組織層部であり、厚みがある肥満傾向の被験者が一般的であるため、かなり大きなNとなってしまい、二重にS/Nが悪くなってしまう。このように、体幹部のような太短い測定部位に対して四電極法を用いる場合には、単に臍囲周上に電極を配置しただけでは、内臓脂肪組織への有用なS/N感度を確保することにかなり無理があると推測される。尚、S/Nに関しては、後述する実施例についての説明において更に詳述する。
【0011】
本発明の目的は、これら従来技術における問題点を解消することにあり、導電性の悪い内臓器組織および内臓脂肪組織の複合組織領域においても測定に必要な感度を確保し、体幹部に蓄積される脂肪組織、特に、内臓器組織周辺に付着、蓄積する内臓脂肪組織および皮下層に蓄積する皮下脂肪組織層情報を、皮下脂肪組織層情報とともに、切換えのみによって同時に測定可能とする方法および装置を提供することにある。特に、本発明の目的は、体幹部における皮下脂肪組織層情報を精度よく測定できるような体幹部皮下脂肪測定方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一つの観点によれば、体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に一方の電流印加電極を配置し、該一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極を体幹部から突出する部位に配置し、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に一方の電圧計測電極を配置し、該一方の電流計測電極と対となる他方の電圧計測電極を、前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置して、体幹部のインピーダンスを測定することにより体幹部皮下脂肪組織層情報を求めることを特徴とする体幹部皮下脂肪測定方法が提供される。
【0013】
本発明の一つの実施の態様によれば、前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍囲周上の臍横と肩甲骨下部と腸骨稜上縁部の何れか又は全ての部位、または、臍囲周上の臍凹部と背骨部と腱膜部の何れか又は全ての部位、または、皮下脂肪組織沈着の最も大きい部位候補部と最も薄い部位との組み合わせ部位である。
【0014】
本発明の別の実施の形態によれば、前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍横と腱膜部と側腹部との3つの部位である。
【0015】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部から突出する部位は、四肢部または頭部または耳部のうちのいずれかである。
【0016】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記一方の電流印加電極に近接した位置は、該電流印加電極直下の広がり抵抗の影響が支配的な位置である。
【0017】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、身体特定化情報を得、かつ前記各電圧計測電極対の間の電位差を測定することにより、体幹腹部の前記各部の皮下脂肪組織層インピーダンスを求め、前記得た身体特定化情報と前記求めた各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスとに基いて体幹部の皮下脂肪組織量を求める。
【0018】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記各電圧計測電極対の間の電位差を測定することにより、体幹腹部の前記各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスを求め、該求めた各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスに基づいて体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスを求め、該求めた体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部の皮下脂肪組織量を求める。
【0019】
本発明の別の観点によれば、体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に配置される一方の電流印加電極と体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極とからなる少なくとも1組の電流印加電極対と、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に配置される一方の電圧計測電極と前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極とからなる少なくとも1組の電圧計測電極対とを備えており、体幹部のインピーダンスを測定することにより体幹部皮下脂肪組織層情報を求めることを特徴とする体幹部皮下脂肪測定装置が提供される。
【0020】
本発明の一つの実施の形態によれば、前記体幹部皮下脂肪測定装置において、前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍囲周上の臍横と肩甲骨下部と腸骨稜上縁部の何れか又は全ての部位、または、臍囲周上の臍凹部と背骨部と腱膜部の何れか又は全ての部位、または、皮下脂肪組織沈着の最も大きい部位候補部と最も薄い部位との組み合わせ部位である。
【0021】
本発明の別の実施の形態によれば、前記体幹部皮下脂肪測定装置において、前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍横と腱膜部と側腹部との3つの部位である。
【0022】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部皮下脂肪測定装置において、前記体幹部から突出する部位は、四肢部または頭部または耳部のうちのいずれかである。
【0023】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部皮下脂肪測定装置において、前記一方の電流印加電極に近接した位置は、該電流印加電極直下の広がり抵抗の影響が支配的な位置である。
【0024】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部皮下脂肪測定装置において、身体特定化情報を取得する身体特定化情報取得手段と、前記各電圧計測電極対の間の電位差を測定し、体幹腹部の前記各部の皮下脂肪組織層インピーダンスを測定する体幹腹部部位皮下脂肪組織層インピーダンス測定手段と、前記取得された身体特定化情報と前記測定された各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスとに基いて体幹部の皮下脂肪組織量を推定する体幹部皮下脂肪組織量推定手段とを備える。
【0025】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部皮下脂肪測定装置において、前記各電圧計測電極対の間の電位差を測定して、体幹腹部の前記各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスを測定する体幹腹部部位皮下脂肪組織層インピーダンス測定手段と、前記測定された各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスに基づいて体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスを推定する体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段と、該推定した体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部の皮下脂肪組織量を推定する体幹部皮下脂肪組織量推定手段とを備える。
【0026】
本発明のさらに別の観点によれば、体幹部内臓脂肪組織を測定するための体幹部内臓脂肪測定方法において、下肢部の生体インピーダンス、上肢部の生体インピーダンスおよび体幹部の生体インピーダンスを測定し、前記測定した下肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて下肢部骨格筋組織量を求め、前記測定した上肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて上肢部骨格筋組織量を求め、前記求めた下肢部骨格筋組織量および上肢部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織量を求め、該求めた体幹部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織層のインピーダンスを求め、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求め、身体特定化情報に基づいて体幹部内臓器組織のインピーダンスを求め、前記求めた体幹部の生体インピーダンスと、前記求めた体幹部骨格筋組織層のインピーダンス、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび体幹部の内臓器組織のインピーダンスとに基づいて体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスを求め、該求めた体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部内臓脂肪組織量を求める各段階を含み、前記体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求める段階は、体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に一方の電流印加電極を配置し、該一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極を体幹部から突出する部位に配置し、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に一方の電圧計測電極を配置し、該一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極を、前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置して、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求めることを含むことを特徴とする体幹部内臓脂肪測定方法が提供される。
【0027】
本発明のさらに別の観点によれば、体幹部内臓脂肪組織を測定するための体幹部内臓脂肪測定方法において、下肢部の生体インピーダンス、上肢部の生体インピーダンスおよび体幹部の生体インピーダンスを測定し、前記測定した下肢部の生体インピーダンスおよび上肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織量を求め、該求めた体幹部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織層のインピーダンスを求め、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求め、身体特定化情報に基づいて体幹部内臓器組織のインピーダンスを求め、前記求めた体幹部の生体インピーダンスと、前記求めた体幹部骨格筋組織層のインピーダンス、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび体幹部の内臓器組織のインピーダンスとに基づいて体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスを求め、該求めた体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部内臓脂肪組織量を求める各段階を含み、前記体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求める段階は、体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に一方の電流印加電極を配置し、該一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極を体幹部から突出する部位に配置し、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に一方の電圧計測電極を配置し、該一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極を、前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置して、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求めることを含むことを特徴とする体幹部内臓脂肪測定方法が提供される。
【0028】
本発明の一つの実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定方法において、前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍囲周上の臍横と肩甲骨下部と腸骨稜上縁部の何れか又は全ての部位、または、臍囲周上の臍凹部と背骨部と腱膜部の何れか又は全ての部位、または、皮下脂肪組織沈着の最も大きい部位候補部と最も薄い部位との組み合わせ部位である。
【0029】
本発明の別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定方法において、前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍横と腱膜部と側腹部との3つの部位である。
【0030】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定方法において、前記体幹部から突出する部位は、四肢部または頭部または耳部のうちのいずれかである。
【0031】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定方法において、前記一方の電流印加電極に近接した位置は、該電流印加電極直下の広がり抵抗の影響が支配的な位置である。
【0032】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定方法において、前記求めた体幹部の生体インピーダンスと、前記求めた体幹部骨格筋組織層のインピーダンス、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび体幹部の内臓器組織のインピーダンスとに基づいて体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスを求める段階は、体幹部の電気的等価回路が、前記体幹部の内臓器組織のインピーダンスと前記体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスとの直列回路に対して前記体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび前記体幹部骨格筋組織層のインピーダンスが並列に接続されたものとしている。
【0033】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定方法において、前記内臓器組織インピーダンスは、身体特定化情報から内臓器組織量を求め、前記内臓器組織量と身体特定化情報とに基づいて求められる。
【0034】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定方法において、前記身体特定化情報は、身体的な特徴を示す情報である。
【0035】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定方法において、前記身体的な特徴を示す情報は、身長、性別、体重、年齢、四肢長(下肢長、上肢長)、体幹部長(体幹中部長)、腹囲長、腹部幅、腹部厚等である。
【0036】
本発明のさらに別の観点によれば、体幹部内臓脂肪組織を測定するための体幹部内臓脂肪測定装置において、下肢部の生体インピーダンスを測定するための下肢部生体インピーダンス測定手段と、上肢部の生体インピーダンスを測定するための上肢部生体インピーダンス測定手段と、体幹部の生体インピーダンスを測定するための体幹部生体インピーダンス測定手段と、前記測定した下肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて下肢部骨格筋組織量を推定する下肢部骨格筋組織量推定手段と、前記測定した上肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて上肢部骨格筋組織量を推定する上肢部骨格筋組織量推定手段と、前記推定した下肢部骨格筋組織量および上肢部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織量を推定する体幹部骨格筋組織量推定手段と、前記推定した体幹部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織層のインピーダンスを推定する体幹部骨格筋組織層インピーダンス推定手段と、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを推定する体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段と、身体特定化情報に基づいて体幹部の内臓器組織のインピーダンスを推定する体幹部内臓器組織インピーダンス推定手段と、前記推定した体幹部の生体インピーダンスと、前記推定した体幹部骨格筋組織層のインピーダンス、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび体幹部の内臓器組織のインピーダンスとに基づいて体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスを推定する体幹部内臓脂肪組織インピーダンス推定手段と、前記推定した体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部内臓脂肪組織量を推定する体幹部内臓脂肪組織量推定手段とを備えており、前記体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段は、体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に配置される一方の電流印加電極と体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極とからなる少なくとも1組の電流印加電極対と、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に配置される一方の電圧計測電極と前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極とからなる少なくとも1組の電圧計測電極対とを備え、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求めることを特徴とする体幹部内臓脂肪測定装置が提供される。
【0037】
本発明のさらに別の観点によれば、体幹部内臓脂肪組織を測定するための体幹部内臓脂肪測定装置において、下肢部の生体インピーダンスを測定するための下肢部生体インピーダンス測定手段と、上肢部の生体インピーダンスを測定するための上肢部生体インピーダンス測定手段と、体幹部の生体インピーダンスを測定するための体幹部生体インピーダンス測定手段と、前記測定した下肢部の生体インピーダンスおよび上肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織量を推定する体幹部骨格筋組織量推定手段と、前記推定した体幹部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織層のインピーダンスを推定する体幹部骨格筋組織層インピーダンス推定手段と、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを推定する体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段と、身体特定化情報に基いて体幹部の内臓器組織のインピーダンスを推定する体幹部内臓器組織インピーダンス推定手段と、前記推定した体幹部の生体インピーダンスと、前記推定した体幹部骨格筋組織層のインピーダンス、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび体幹部の内臓器組織のインピーダンスとに基づいて体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスを推定する体幹部内臓脂肪組織インピーダンス推定手段と、前記推定した体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部内臓脂肪組織量を推定する体幹部内臓脂肪組織量推定手段とを備えており、前記体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段は、体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に配置される一方の電流印加電極と体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極とからなる少なくとも1組の電流印加電極対と、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に配置される一方の電圧計測電極と前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極とからなる少なくとも1組の電圧計測電極対とを備え、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求めることを特徴とする体幹部内臓脂肪測定装置が提供される。
【0038】
本発明の一つの実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍囲周上の臍横と肩甲骨下部と腸骨稜上縁部の何れか又は全ての部位、または、臍囲周上の臍凹部と背骨部と腱膜部の何れか又は全ての部位、または、皮下脂肪組織沈着の最も大きい部位候補部と最も薄い部位との組み合わせ部位である。
【0039】
本発明の別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍横と腱膜部と側腹部との3つの部位である。
【0040】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記体幹部から突出する部位は、四肢部または頭部または耳部のうちのいずれかである。
【0041】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記一方の電流印加電極に近接した位置は、該電流印加電極直下の広がり抵抗の影響が支配的な位置である。
【0042】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記体幹部内臓脂肪組織インピーダンス推定手段は、体幹部の電気的等価回路が、前記体幹部の内臓器組織のインピーダンスと前記体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスとの直列回路に対して前記体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび前記体幹部骨格筋組織層のインピーダンスが並列に接続されたものとして推定を行う。
【0043】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記体幹部内臓器組織インピーダンス推定手段は、身体特定化情報から体幹部の内臓器組織量を推定し、該推定した体幹部の内臓器組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部内臓器組織インピーダンスを推定する。
【0044】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記身体特定化情報は、身体的な特徴を示す情報である。
【0045】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記身体的な特徴を示す情報は、身長、性別、体重、年齢、四肢長(下肢長、上肢長)、体幹部長(体幹中部長)、腹囲長、腹部幅、腹部厚等である。
【0046】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記各電圧計測電極対の間の電位差を測定して、体幹腹部の前記各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスを測定する体幹腹部部位皮下脂肪組織層インピーダンス測定手段と、前記測定された各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスに基づいて体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスを推定する体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段と、該推定した体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部の皮下脂肪組織量を推定する体幹部皮下脂肪組織量推定手段とを備える。
【0047】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記推定した体幹部内臓脂肪組織量と前記推定した体幹部皮下脂肪組織量とから体幹部腹部脂肪組織量を推定する体幹腹部脂肪組織量推定手段を更に備える。
【0048】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記推定した体幹部内臓脂肪組織量と前記推定した体幹部皮下脂肪組織量とから体幹部内臓脂肪/皮下脂肪比を推定する体幹部内臓脂肪/皮下脂肪比推定手段を更に備える。
【0049】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、呼吸周期時間より短いサンプリング周期で測定した体幹部の生体インピーダンスに基づいて呼吸による変動の影響を除去するための呼吸変動影響除去手段を更に備える。
【0050】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記測定した体幹部の生体インピーダンスを集団の一般的な値と比較することにより異常値判定処理を行う異常値判定処理手段を更に備える。
【0051】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記異常値判定処理手段による判定結果に基づいてアドバイス情報を表示する表示手段を更に備える。
【0052】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記体幹部内臓脂肪組織量は、体幹部内臓脂肪率で表される。
【0053】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記体幹部内臓脂肪組織量は、体幹部内臓脂肪組織横断面積で表される。
【0054】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記体幹部内臓脂肪組織量は、体幹部内臓脂肪組織体積量で表される。
【0055】
本発明のさらに別の実施の形態によれば、前記体幹部内臓脂肪測定装置において、前記体幹部内臓脂肪組織量は、体幹部内臓脂肪組織重量で表される。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、体幹部の皮下脂肪組織層情報を精度よく測定でき、また、高精度の測定皮下脂肪組織層情報を体幹部の内臓組織情報の推定に利用することにより、体幹部内臓脂肪組織を精度よく測定できる。
【0057】
また、麻痺患者及び介護等によりベッド上で寝たきりの被験者においても、測定部を背中部を除く腹部前面とすることで、被験者が容易に測定を可能と出来る。更に、腹部への電極装着により、測定部位を被験者が意識できることによって、意識的拘束による測定精度の向上及びモチベ−ションの確保に有益となる。
【0058】
更に、内臓器組織付近に付着する蓄積脂肪組織の蓄積具合を従来の簡易計測法との組み合わせ及び簡便性を踏襲する中で、必要なレベルに応じた精度の高いスクリーニング情報を顕在化させることができる。
更に、本発明によれば、小型で簡便な装置にて体幹部内臓脂肪組織や皮下脂肪組織を精度よく測定できるので、家庭用として最適なものとすることもできる。しかも、測定前の腹部コンディションチェック、すなわち、内臓器組織等での炎症や病的な体液分布異常の早期チェック等も可能で、それに応じた適切な健康指針アドバイスも与えることができる。したがって、ユーザにとっては、食事および運動による日々のダイエットを適正に行い且つそのためのモチベーションを維持し、継続可能な健康の維持増進の自己管理をする上で役立つ諸情報を簡便な仕方で得ることができ、非常に有用なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明による体幹部内臓・皮下脂肪測定装置の一実施例の外観を示す概略斜視図である。
【図2】図1の装置を用いて体幹部内臓脂肪および皮下脂肪を測定する場合における使用態様を説明するための概略図である。
【図3】図1の実施例の装置における腹部押当て電極部に代わりうる別の実施形態としての腹部押当て電極部を示す概略図である。
【図4】図3の腹部押当て電極部の使用態様を説明するための概略図である。
【図5】図1の装置の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明において使用する四肢誘導法について説明するための模式図である。
【図7】体幹腹部の構造を模式的に示す図である。
【図8】図7の体幹腹部の構造を、皮下脂肪組織層を省略して考えた体幹腹部の電気的等価回路として示す図である。
【図9】図7の体幹腹部の構造を、皮下脂肪組織層を省略せずに考えた体幹腹部の電気的等価回路として示す図である。
【図10】図7に示した体幹部の模式図を臍高さにおける腹囲周横断面にてモデル化した図である。
【図11】図10のモデル図を電気的等価回路として表した図である。
【図12】図11の回路を簡略化して示したものである。
【図13】電極間距離と広がり抵抗の関係を説明する図である。
【図14】電極間距離と広がり抵抗の関係を説明する図である。
【図15】皮下脂肪組織層情報を得るための電極配置方法の一例を体幹腹部の構造と共に示す図である。
【図16】皮下脂肪組織層情報を得るための新誘導法を説明するための図である。
【図17】皮下脂肪組織層情報を得るための新誘導法を説明するための図である。
【図18】皮下脂肪組織層情報を得るための新誘導法を説明するための図である。
【図19】皮下脂肪組織層情報を得るための新誘導法を説明するための図である。
【図20】皮下脂肪組織層情報を得るための新誘導法を説明するための図である。
【図21】皮下脂肪組織層情報を得るための新誘導法を説明するための図である。
【図22】本発明における最適皮下脂肪組織計測部位に対する電極配置例を示す図である。
【図23】本発明の一実施例による体幹部内臓・皮下脂肪組織測定用の基本フローチャートを示す図である。
【図24】図23の基本フローのサブルーチンとしての内臓器組織量および内臓器組織インピーダンスの推定処理フローを示す図である。
【図25】図23の基本フローのサブルーチンとしての内臓脂肪組織インピーダンスおよび内臓脂肪組織量の推定処理フローを示す図である。
【図26】図23の基本フローのサブルーチンとしての体幹部インピーダンス計測処理フローを示す図である。
【図27】図26の体幹部インピーダンス計測処理フローのサブルーチンとしての体幹部インピーダンス計測データ呼吸変動補正処理フローを示す図である。
【図28】図26の体幹部インピーダンス計測処理フローのサブルーチンとしての飲食および膀胱尿貯留等による異常値判定処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
本発明の実施の形態および実施例について詳細に説明する前に、体幹部の内臓脂肪組織の測定原理について説明する。本発明は、基本的には、上肢(腕)部、下肢(脚)部、体幹部(体幹中部)等の四肢誘導法で得られるセグメント毎の生体電気インピーダンス情報と身体特定化情報を用いて、体幹腹部(中部)の内臓脂肪組織情報(横断面積量、体積量または重量)、体幹部内臓脂肪と皮下脂肪量との比(V/S)、および皮下脂肪と内臓脂肪の合計脂肪量(体幹腹部脂肪組織量)を推定可能とすることにある。
【0061】
特に、本発明は、体幹部に蓄積される脂肪組織のうち、特に、皮下層に蓄積する皮下脂肪組織層情報を、高精度で簡便に測定可能とすることにある。すなわち、体幹部の皮下脂肪組織量、特に横断面積量(CSA)を算出するためには、腹囲周囲長と、皮下脂肪組織厚の計測情報が必要である。腹囲周長又は腹部幅や厚み等は実測によって確保可能であるが、皮下脂肪組織厚は、腹囲周上の場所によって異なり、個人差が多い。よって、皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位を特定して測定することが重要となる。そして、腹部の皮下脂肪組織量として体積量を推定する場合には、上記CSAに体幹腹部の長さ情報を掛けることにより算出できる。体幹腹部長は、身長との相関性が高いため、身体特定化情報より推定することができる。
【0062】
換言するならば、特に、本発明は、体幹腹部臍囲周での皮下脂肪組織量(CSA)の推定に際し、腹囲周長情報と特定の貢献性の高い皮下脂肪組織厚情報を用いることで、高精度の推定を可能とするものである。この場合において、腹囲周長情報は、腹囲周長以外に臍囲部での腹部幅又は厚み情報でも有用な推定用変数情報となり得る。身体的特定化情報(身長H、体重W、性差SEX、年齢Age等)も踏まえた重回帰により、信頼性の高い腹囲周長情報を確保可能とできる。
【0063】
本発明は、このため次のような手法を駆使する。
(1)体幹腹部の生体電気インピーダンス情報に含まれる組織情報を骨格筋組織層と内臓器組織と内臓脂肪組織で直並列の等価回路モデルで仮定すること。内臓器組織と内臓脂肪組織を直列に考える。(したがって、内臓脂肪組織の大小により通電量の変化を期待できる)。
【0064】
(2)なお、腹囲長が身体特定化情報として確保できる場合は、皮下脂肪組織層も、等価回路モデルに含めた、高精度モデルとして、皮下脂肪組織層と骨格筋組織層と内臓器組織と内臓脂肪組織で直並列の等価回路モデルで仮定すること。
【0065】
(3)皮下脂肪組織量推定は、身体特定化情報のうち腹囲長を主体的な説明変数とした重回帰式で構成されること。さらに、腹囲長の二乗を主体的説明変数と置く。本発明の特定の手法によって、皮下脂肪組織厚の情報を支配的に有する体幹部インピーダンスが得られる場合には、この体幹部インピーダンスと腹囲長(一乗)の積を主体的説明変数とする。
【0066】
(4)上肢(腕)部、下肢(脚)部の四肢誘導法で得られるセグメント毎の生体電気インピーダンス情報と身体特定化情報を用いて、体幹腹部(中部)の骨格筋組織層情報を顕在化させ、内臓脂肪組織情報推定のための未確定情報の確定に用いる。
【0067】
(5)内臓器組織情報の確定は、身体特定化情報のうち、身長情報が主体的な説明変数とした重回帰式で構成し、内臓脂肪組織情報推定のための未確定情報の確定に用いる。
【0068】
(6)各組織を定量化するための重回帰分析(検量線作成手法)に用いる組織の基準測定は、臍位でのX線CT断層画像からの組織横断面積(CSA:Cross-Section Area)やMRI法によるCSA及び体幹腹部全体でのDEXA法,MRI法(長さ方向へ、スライス毎の積分処理)を用いた組織体積量,重量(体積量から重量への変換は、先行研究による組織密度情報より算出可能)で実現できる。DEXA法では、腹部内臓脂肪組織と皮下脂肪組織の合計の総脂肪組織情報を基準測定できる。
【0069】
(7)上記の様な手法を用いて内臓脂肪組織の情報を高精度に捕捉可能とするためには、呼吸等による体幹部の計測インピ−ダンス情報の変動を一定条件値に置き換える手立てが必要となり、インピーダンス計測サンプリング周期を一般的な呼吸周期の1/2以内とし、呼吸変化を時系列的にモニタリングして、呼吸周期及び呼吸周期毎の最大値と最小値を呼吸周期毎に判別し、安静呼吸の中央値を補足可能とすること。
【0070】
(8)さらに、測定前の飲食及び膀胱尿の貯留などによる悪影響の事前チェックも、計測インピーダンス情報より可能とする。一般に、体幹腹部のインピーダンス値は、健康な一般的な被験者集団では、骨格筋組織層の情報が支配的に反映される。また、体幹部の骨格筋組織層の情報は、測定値としては非常に小さく個々人毎で大きな違いが認められない。理由は、地球重力下で自重を支えて発達する抗重力筋との相関の高いデザインとなるため、特別に寝たきりで重力の影響を受けない被験者とか、自重の数倍のストレスが加わる種目のアスリートなど、特殊な集団以外ではほぼ身体サイズで決定されてしまうためである。よって、前記体幹腹部の骨格筋組織量の推定は、四肢部骨格筋組織からの方が測定感度の良い成果が期待できるわけである。ここで、骨格筋組織層及び前記呼吸変動以外で体幹腹部のインピーダンスに影響が大きいのは、飲食及び膀胱尿の貯留などによる悪影響である。よって、集団デ−タとして体幹中部のインピーダンス値を収集し、平均値[mean]と偏差[SD]で見ると、飲食及び膀胱尿の貯留などによる影響は、2SDを超える範囲にあることがわかった。ただ、ある程度のアスリート等の準一般的集団まで踏まえると、3SDをクライテリアとすることで、本影響のスクリーニングを可能と出来る。
【0071】
次に、前述したような手法に基づく本発明の測定原理につき、順を追って詳述していく。
【0072】
1.体幹区分の考え方
(1)体幹部を上部/中部/下部に分けた時、骨格筋組織の発達の関係は、次のようである。
(a)体幹上部は、上肢部との相関が高く、特に、近位上腕の骨格筋組織との相関が高い。
(b)体幹下部は、下肢との相関が高く、特に、近位大腿部の骨格筋組織との相関が高い。
(c)体幹中部は、下肢部の大腿部骨格筋組織量との相関が高い(下肢大腿部をコントロールする大腰筋,腸腰筋等が占有骨格筋組織量として大きいため)。
【0073】
(2)体幹中部(腹部)の骨格筋組織は、腹筋群と背筋群で構成されており、これらは、上肢部と下肢部のジョイント(左右の回転動作や前後への屈伸動作など)としての機能的発達を有している。
【0074】
2.四肢部からの体幹中部骨格筋組織の推定
(3)よって、体幹中部の骨格筋組織発達(量)は、上下肢部の骨格筋組織の発達と密接な関係がある。つまり、体幹中部の骨格筋組織量は、上下肢部の骨格筋組織量より推定できる。体幹中部骨格筋組織量を従属変数として、上肢部骨格筋組織量及び下肢部骨格筋組織量を各々独立の説明変数と置いて、重回帰式を作ることで、体幹中部の骨格筋組織量を推定することが出来る。
体幹中部骨格筋組織量[MMtm]=a0*下肢部骨格筋組織量[MMl] + b0*上肢部骨格筋組織量[MMu] + c0 ・・・式1
ここで、a0、b0、c0は、回帰係数で定数である。
【0075】
(4)また、四肢部の骨格筋組織量は、測定区間のインピーダンス計測値とその区間の長さ情報から、骨格筋組織量の推定が可能であることは、先行研究より明らかである。
下肢部骨格筋組織量[MMl]=a1*Ll2/Zl + b1・・・式2
上肢部骨格筋組織量[MMu]=a2*Lu2/Zu + b2・・・式3
ここで、a1,a2,b1,b2は、回帰係数で定数である。Llは、下肢部の長さ、Luは、上肢部の長さ、Zlは、下肢部のインピーダンス値、Zuは、上肢部のインピ−ダンス値である。
【0076】
(5)四肢長は、一般的な対象者であれば身長、体重、性別、年齢等の身体(個人)特定化情報より推定しても良い(特に、性別毎での身長情報が有用性高い)。
【0077】
(6)同様に、上下肢部の骨格筋組織量及び体幹中部骨格筋組織量の推定式へも、説明変数として性別、年齢、体重等の身体特定化情報を付加することにより、発育発達及び加齢による神経系及び組織の質的変化を統計的に若干補正することも可能である。
【0078】
(7)尚、重回帰推定式を作成する折の基準側の測定は、MRI法、DEXA法で求めた骨格筋量を用いる。
【0079】
(8)また、もっとシンプルな精度向上が期待できる方法として、体幹部及び四肢長情報が測定によって得られる以外の、身長等の身体特定化情報より体幹部及び四肢長情報を推定する場合には、四肢部のインピーダンス情報を直接体幹中部骨格筋組織量の推定式に組み込む手法である。
体幹中部骨格筋組織量[MMtm]= a3*H2/Zl + b3*H2/Zu +c3・・・式4
ここで、a3、b3、c3は、回帰係数で定数である。Hは身長、Zlは下肢部のインピーダンス値、Zuは上肢部のインピ−ダンス値である。
【0080】
(9)より精度向上が期待できる方法として、体幹部長情報が更に測定によって得られる場合には、下記の様な推定式の変形が考えられる。
式1〜3に対して、
体幹中部骨格筋組織量[MMtm]=a0’*下肢部骨格筋組織量[MMl]*Ltm2/Ltm’2+ b0’*上肢部骨格筋組織量[MMu ] *Ltm2 /Ltm’2+ c0’・・・式5
ここで、a0’、b0’、c0’は、回帰係数で定数である。そして、Ltmは体幹部長(または体幹中部長)である。そして、Ltm’は、四肢長または身長からの体幹部長(または体幹中部長)の推定値である。
Ltm’=aa*Ll+bb*Lu+cc ・・・式5-1
または
Ltm’=aa1*H+bb1 ・・・式5-2
ここで、aa、aa1、bb、bb1、ccは、回帰係数で定数である。
【0081】
(10)さらなる精度の向上を期待する場合は、測定に対する拘束性が増える(簡便性に劣る)デメリットはあるが、四肢の近位部の情報を用いる方法がある。膝肘に電圧計測電極を当てるまたは貼り付けることにより、四肢測定と同様の四肢誘導法で計測できる。つまり、遠位からの下肢部や上肢部の情報よりも、遠位部を除く近位部の情報の方が、体幹中部の骨格筋組織層との関連情報として、有用性が高いからである。つまり、上腕(上肢近位)部は体幹上部と、大腿(下肢近位)部は体幹下部と高い相関を持ち、体幹上部と中部と下部間も、有用な関係を持っている。よって、上下肢部骨格筋組織量に対し、大腿部骨格筋組織量や上腕部骨格筋量を測定して、体幹中部の骨格筋組織量の推定に用いる方法も上記と同様の手順で推定式を作成可能である。
【0082】
(11)体幹部の骨格筋組織層についての考え方の例として、
(a)体幹上部と下部は、上肢部と下肢部との相関が高いことから、上部は上肢部とみなし、下部は下肢部とみなす考え方。
(b)体幹上部と下部を体幹中部と合わせて、体幹部とみなす考え方がある。
いずれの方法でも、対象者を一般健常人または、それに近い自立生活が出来る範囲に置くことで、各々の相互間の相関が高いことから、いずれの考え方でも大きな違いは出てこない。
【0083】
3.体幹部構成組織の電気的等価回路モデル化
(12)四肢誘導法より求められる体幹部のインピーダンスは、体幹中部の情報となる。このインピーダンスについては、後述する実施例についての説明において詳述する。
【0084】
(13)体幹部は、主として、皮下脂肪組織層と、骨格筋組織層(腹筋群、背筋群)と、内臓器組織とその隙間に付着する内臓脂肪組織から成ると考えることが出来る。骨組織を構成組織として挙げていないのは、骨組織は骨格筋組織層と量的相関が非常に高く、一体の組織体として考えられるからである。体積抵抗率も、生体内では骨髄組織も骨格筋組織層や内臓器組織に近い特性を有するものと考えられる。よって、この4組織を電気的な等価回路モデルで表すと、内臓器組織と内臓脂肪組織を直列に構成し、その直列の複合組織層に対して、皮下脂肪組織層及び骨格筋組織層がそれぞれ並列に構成される。この等価回路モデルについては、後述する実施例についての説明において詳述する。このモデルによると、体幹部の長さ方向への通電に対しては、骨格筋組織層に支配的に電流が流れる。内臓脂肪組織は、内臓器組織の周辺の隙間に付着することから、内臓脂肪組織が無い時、または少ない時、内臓器組織が骨格筋組織に近い導電性を示すことから、内臓器組織側にも電流が通電されることになる。また、内臓脂肪組織が多くなるほど、内臓器組織と内臓脂肪組織の複合体としての複合組織への通電量が低下してゆくことになる。体幹中部の計測インピーダンスと、それを構成する4組織を等価回路モデルで表した時のモデル式は、下記の様に表現できる。
Ztm = ZFS//ZMM//(ZVM+ZFV) ・・・式6
ここで、
体幹中部全体のインピーダンス:Ztm
皮下脂肪組織層のインピーダンス:ZFS・・・体積抵抗率は、大きい。
骨格筋組織層のインピーダンス:ZMM・・・体積抵抗率は、小さい。
内臓器組織のインピーダンス:ZVM・・・骨格筋組織層に近い体積抵抗率と考えられている。
内臓脂肪組織のインピーダンス:ZFV・・・体積抵抗率は、皮下脂肪組織と同等かそれよりも、やや小さ目と考えられる。脂肪組織の合成分解が皮下脂肪組織に比べて速いことから、組織内血管及び血液量が多いものと考えられる。
組織間の電気的特性は、インピーダンスよりはむしろ体積抵抗率ρ[Ωm]で決まる。上の関係から、各組織の電気的特性値は一般に以下の関係で説明される。
ρMM<<ρ(VM+FV)<ρFS
ρVM<<ρFV
ρMM=ρMV、若しくは、ρMM<ρMV
ρFV=ρFS、若しくは、ρFV<FS
ここで、
皮下脂肪組織層の体積抵抗率:ρFS
骨格筋組織層の内側の内臓器組織と内臓脂肪組織の複合組織層の体積抵抗率:ρ(VM+FV)
骨格筋組織層の体積抵抗率:ρMM
よって、各組織間の電気的特性の比較関係は、
ZFS >> (ZVM+ZFV) >> ZMM ・・・式7
と考えられる。
この式6、7の関係式から、次の様な二つのアプローチ案によって、内臓脂肪組織情報を推測可能とする手法が考えられる。
【0085】
(14)アプローチ1
皮下脂肪組織層は、他の構成組織と比較する中で体積抵抗率が高いことから体幹中部の等価回路から見て、省略して考える。つまり、体幹中部で計測されるインピーダンス値には、体幹中部の皮下脂肪組織層を除いた内臓脂肪組織を含む除脂肪組織の情報が計測されているものと考えることが出来る。よって、この関係式は、次の様に表現できる。
Ztm ≒ ZMM//(ZVM+ZFV) ・・・式8
式8を変形すると、
1/Ztm ≒ 1/ZMM + 1/(ZVM+ZFV) ・・・式9
この式中の骨格筋組織層のインピーダンスZMMおよび内臓器組織のインピーダンスZVMを下記で記述される手段で顕在化することで、内臓脂肪組織のインピーダンスZFVを算出可能となる。そして、この内臓脂肪組織のインピーダンス情報より、内臓脂肪組織量を推定可能と出来る。式9からZFVを誘導すると、次の式10となり、内臓脂肪組織の情報を有するインピーダンス情報を求めることができる。
ZFV= 1/[ 1/Ztm−1/ZMM] − ZVM・・・式10
【0086】
(15)アプローチ2
前記アプローチ1では皮下脂肪組織層を省略して考えたが、皮下脂肪組織層を大量に有する被験者に対しては誤差要因となりえるため、式6のままで進める方法である。
この式中の骨格筋組織層のインピーダンスZMMおよび内臓器組織のインピーダンスZVMは、前記手法と同様とし、皮下脂肪組織層のインピーダンスZFSに対して、インピーダンス情報は他の組織と同様の考え方で皮下脂肪組織量と有用な関係が有る。ここで、皮下脂肪組織量は、その組織表面での周囲長、つまり、腹囲長との相関が非常に高い関係があることが一般に報告されている(特に皮下脂肪組織層が多い被験者に対して、または、皮下脂肪組織を除く除脂肪組織に比較して多い場合)ことから、皮下脂肪組織層は腹囲長情報から推定可能となる。よって、皮下脂肪組織層のインピーダンスは、腹囲長の情報から推測可能と出来る。以下、前記アプローチと同様の手法で内臓脂肪組織のインピーダンスZFVを算出可能となる。そして、この内臓脂肪組織のインピーダンス情報より、内臓脂肪組織量を推定可能と出来る。
式6を変形すると、
1/Ztm = 1/ZFS + 1/ZMM + 1/(ZVM+ZFV) ・・・式11
ZFV= 1/[ 1/Ztm−1/ZMM−1/ZFS] − ZVM・・・式12
【0087】
4.内臓器組織量[VM]からのインピーダンス[ZVM]の推定
(16)体幹中部の内臓器組織量[VM]は、身長、体重、性別、年齢等の身体(個人)特定化情報から推定することが出来る。説明変数の中で、身長項の影響が大きい。
男性用: 内臓器組織量[VM] = a4*身長[H]+ b4*体重[W] + c4*年齢[Age] + d4
・・・式13-1
女性用: 内臓器組織量[VM] = a5*身長[H]+ b5*体重[W] + c5*年齢[Age] + d5
・・・式13-2
ここで、a4、a5、b4、b5、c4、c5、d4、d5は、回帰係数で定数である。
なお、本検量線(回帰式)に用いる内臓脂肪組織量VMの基準量の計測は、MRI法やX線CT法により得られるスライス毎のCSA(組織横断面積)を長さ方向に積分して求めた組織体積、または、臍位等の1スライスからのCSAとする。組織体積は、先行研究論文等で公知の組織密度情報から重量へ変換することで組織量とすることが出来る。
【0088】
(17)次に、内臓器組織のインピーダンスZVMを推定する。
各組織とも、インピーダンスと組織量との関係を式で表現可能とするために、円柱モデルを適用する。適用式は、下記の様に表現できる。
VM ∝ LVM2 / ZVM・・・式14-1
変形すると、
ZVM ∝ LVM2 / VM・・・式14-2
ここで、LVMは、円柱モデル化するときの仮想円柱長であるが、体幹長[Lt],体幹中部長[Ltm]および身長[H]との高い相関関係が有ることから、
LVM ∝ Lt ∝ Ltm ∝ H ・・・式15
よって、LVMの代わりに身長H(体幹部の実測情報が得られるのであれば、Ltまたは Ltmで式中に用いる)で代用するとすると、
ZVM = a6*H2 / VM + b6・・・式16
となり、内臓器組織のインピーダンスZVMを推定することが出来る。
ここで、a6、b6は、回帰係数で定数である。
この式16は、単回帰式であるが身体特定化情報を説明変数として組み込む重回帰式とすることで、推定精度向上が期待できる。
男性用:ZVM= a7*H2 /VM + b7*H + c7*W + d7*Age + e7・・・式17-1
女性用: ZVM= a8*H2 /VM + b8*H + c8*W + d8*Age + e8・・・式17-2
ここで、a7、a8、b7、b8、c7、c8、d7、d8、e7、e8は、回帰係数で定数である。
【0089】
5.骨格筋組織量[MM] からのインピーダンス[ZMM]の推定
(18)体幹中部の骨格筋組織量[MM]は、前記式1、4、5で求めた四肢部骨格筋組織量(四肢部インピーダンス情報)からの体幹中部骨格筋組織量[MMtm]を用いる。
MM=MMtm・・・式18
【0090】
(19)次に、骨格筋組織層のインピーダンスZMMを推定する。
各組織とも、インピーダンスと組織量との関係を式で表現可能とするために、円柱モデルを適用する。適用式は、下記の様に表現できる。
MM ∝ Ltm2 / ZMM・・・式19-1
変形すると、
ZMM ∝ Ltm2 / MM・・・式19-2
ここで、Ltmは、円柱モデル化するときの体幹中部長であるが、体幹部長[Lt]および身長[H]との高い相関関係が有ることから、
Ltm ∝ Lt ∝ H ・・・式20
よって、Ltmの代わりに身長H(体幹の実測情報Ltm、Ltが得られない場合)で代用するとすると、
ZMM = a9*H2 / MM + b9・・・式21
となり、骨格筋組織層のインピーダンスZMMを推定することが出来る。
ここで、a9、b9は、回帰係数で定数である。
この式21は、単回帰式であるが身体特定化情報を説明変数として組み込む前記同様の手順により重回帰式とすることで、推定精度向上が期待できる。
【0091】
6.皮下脂肪組織量[FS]からのインピーダンス[ZFS]の推定
(20)体幹中部の皮下脂肪組織量[FS]は、腹囲長[Lw]2から推定することが出来る。さらに、他の身体特定化情報を説明変数として付加して重回帰式とすることで精度向上が期待できる。
男性用: 皮下脂肪組織量[FS] = a10*腹囲長[Lw]2+b10*身長[H]+ c10*体重[W] + d10
*年齢[Age] + e10・・・式22-1
女性用: 皮下脂肪組織量[FS] = a11*腹囲長[Lw]2+b11*身長[H]+ c11*体重[W]+ d11
*年齢[Age] + e11・・・式22-2
ここで、a10、a11、b10、b11、c10、c11、d10、d11、e10、e11は、回帰係数で定数である。
なお、本検量線(回帰式)に用いる皮下脂肪組織量FSの基準量の計測は、MRI法やX線CT法により得られるスライス毎のCSA(組織横断面積)を長さ方向に積分して求めた組織体積、または、臍位等の1スライスからのCSAとする。組織体積は、先行研究論文等で公知の組織密度情報から重量へ変換することで組織量とすることが出来る。
【0092】
(21)次に、皮下脂肪組織層のインピーダンスZFSを推定する。
各組織とも、インピーダンスと組織量との関係を式で表現可能とするために、円柱モデルを適用する。適用式は、下記の様に表現できる。
FS ∝ Ltm2 / ZFS・・・式23-1
変形すると、
ZFS ∝ Ltm2 / FS・・・式23-2
ここで、Ltmは、円柱モデル化するときの体幹中部長であるが、体幹部長[Lt]および身長[H]との高い相関関係が有ることから、
Ltm ∝ Lt ∝ H ・・・式20
よって、Ltmの代わりに身長H(体幹の実測情報Ltm、Ltが得られない場合)で代用するとすると、
ZFS = a12*H2 / FS + b12・・・式24
となり、皮下脂肪組織層のインピーダンスZFSを推定することが出来る。
ここで、a12、b12は、回帰係数で定数である。
この式24は、単回帰式であるが身体特定化情報を説明変数として組み込む前記同様の手順により重回帰式とすることで、推定精度向上が期待できる。
【0093】
7.内臓脂肪組織量[FV]の推定
(22)内臓脂肪組織のインピーダンス[ZFV]は、式10または式12へ、体幹中部の実測インピーダンス[Ztm]と、式16、17で求めた内臓器組織のインピーダンス[ZVM]と、式21で求めた骨格筋組織層のインピーダンス[ZMM]を、または式24で求めた皮下脂肪組織層のインピーダンス[ZFS]を代入することで求められる。
【0094】
(23)この内臓脂肪組織のインピーダンス[ZFV]情報から、内臓脂肪組織量[FV]を推定する。
各組織とも、インピーダンスと組織量との関係を式で表現可能とするために、円柱モデルを適用する。適用式は、下記の様に表現できる。
FV ∝ LFV2 / ZFV・・・式25
ここで、LFVは、円柱モデル化するときの仮想円柱長であるが、体幹部長[Lt],体幹中部長[Ltm]および身長[H]との高い相関関係が有ることから、
LFV ∝ Lt ∝ Ltm ∝ H ・・・式26
よって、LFVの代わりに身長H(体幹の実測情報が得られるのであれば、Ltまたは Ltmで式中に用いる)で代用するとすると、
FV = a13*H2 / ZFV + b13・・・式27
となり、内臓脂肪組織量FVを推定することが出来る。
ここで、a13、b13は、回帰係数で定数である。
この式27は、単回帰式であるが身体特定化情報を説明変数として組み込む重回帰式とすることで、推定精度向上が期待できる。
男性用:FV = a14*H2 /ZFV + b14*H + c14*W + d14*Age + e14・・・式28-1
女性用: FV = a15*H2 /ZFV + b15*H + c15*W + d15*Age + e15・・・式28-2
ここで、a14、a15、b14、b15、c14、c15、d14、d15、e14、e15は、回帰係数で定数である。
【0095】
8.体幹腹部脂肪組織量[FM]の推定
(24)腹部脂肪組織量[FM]は、式22からの皮下脂肪組織量[FS]と式27または式28からの内臓脂肪組織量[FV]から求めることが出来る。
FM=FS+FV・・・式29
【0096】
(25)他の腹部脂肪組織量[FM]の推定法としては、基準計測情報としてDEXA法を用いて腹部脂肪組織量を計測し、式22からの皮下脂肪組織量[FS]と式27または式28からの内臓脂肪組織量[FV]の主要パラメータを説明変数に用いることで、腹部脂肪組織量[FM]の推定を可能とする。つまり、腹囲長[Lw]2とH2 /ZFVと身体特定化情報とから重回帰式を作成することである。
【0097】
9.体幹腹部内臓脂肪/皮下脂肪比[V/S]の推定
(26)内臓脂肪/皮下脂肪比[V/S]は、式22からの皮下脂肪組織量[FS]と式27または式28からの内臓脂肪組織量[FV]から求めることが出来る。
V/S=FV/FS・・・式30
【0098】
10.体幹腹部(中部)のインピーダンスによる内臓器組織異常判定の考え方
(27)前記で内臓脂肪組織量推定に必要な体幹腹部(中部)のインピーダンスZtmは、呼吸及び飲食等により変動が大きな部位でもあることから、安定性及び信頼性の高い情報の計測が必要となる。よって、次の様な処理を加えることで、信頼性の高い体幹腹部のインピーダンス情報を確保出来る。また、一部体幹部の体液分布の乱れに関連する情報としての視点から、体幹腹部の組織異常の判定も可能と出来る。
【0099】
(28)呼吸による変動の影響除去処理
(a)一般的な呼吸周期時間の1/2より短いサンプリング周期で、体幹腹部のインピーダンスを測定する。
(b)サンプリング毎の測定デ−タに対して移動平均等によるスムージング処理を施す。
(c)処理後の時系列データより、呼吸の周期性と周期毎の最大値と最小値を検出する。
(d)毎周期毎の最大値と最小値を各々別個に平均処理する。
(e)最大値と最小値の平均処理後の値を平均して、呼吸の中央値を算出する。
(f)呼吸周期毎の呼吸の中央値が規定回数規定以内の安定域に入った時点で、呼吸中央値確定と判断し、確定した中央値のインピ-ダンス値を体幹腹部のインピーダンス値として登録し、測定を完了とする。
【0100】
(29)飲食及び膀胱等への水分貯留(尿等)による異常値判定処理
(a)体幹腹部のインピーダンスは、26.7±4.8Ω(mean±SD)が集団の一般的な値となる。
(b)反面、便秘及び膀胱尿の貯留や胃での飲食物の充満時の値は、mean±3SDの範囲を超える。
(c)よって、3SDを超える測定値が得られる場合には、飲食及び膀胱尿等の影響の可能性を被験者へ報知し、最善の環境で測定に望んで貰う様促す。ただし、実際にこれらの影響なしに骨格筋組織発達及び内臓器組織が標準サイズとは異なる被験者においては、測定を継続出来る様に進める。
(d)さらに、判定感度を上げる方法としては、性別、体重、身長別で規定値を細分化する。又は、体重で割るか、身長で割って単位当りの値として規定値を規定する。
【0101】
<皮下脂肪組織測定、或いは、皮下脂肪組織及び内臓脂肪組織の選択測定>
皮下脂肪組織を、或いは、皮下脂肪組織及び内臓脂肪組織を、選択的に測定するにあたっては、特に、以下の11〜16を考慮する。
【0102】
11.体幹部構成組織の電気的等価回路モデル化(補足1)
(30)組織間の電気的特性は、インピーダンスよりはむしろ体積抵抗率ρ[Ωm]で決まる。「3.体幹部構成組織の電気的等価回路モデル化」で示した関係から、各組織の電気的特性値は一般に以下の関係で説明される。
ρMM<<ρ(VM+FV)<ρFS
ρVM<<ρFV
ρMM=ρMV、若しくは、ρMM<ρMV
ρFV=ρFS、若しくは、ρFV<FS
ここで、
皮下脂肪組織層の体積抵抗率:ρFS
骨格筋組織層より内側の内臓器組織と内臓脂肪組織の複合組織層の体積抵抗率:ρ(VM+FV)
骨格筋組織層の体積抵抗率:ρMM
よって、式6との関連により、各組織間の電気的特性の比較関係は、
ZFS >> (ZVM+ZFV) >> ZMM ・・・式31(式7と同じ)
となる。
【0103】
12.体幹部骨格筋組織横断面積量(AMM)と体幹部骨格筋組織層インピーダンス(ZMM)の推定
(31)内臓脂肪組織量は横断面積量や体積量で表すことができる。横断面積量の場合は、臍囲周での計測においては、CT法(X線−CT、MRI)による横断面積量が一般的な計測基準と考えられる。一方、体積量の場合は、CT法によるスライスによる横断面積量を長さ方向に複数のスライス情報で積分することで求めることができる。骨格筋組織量(骨格筋量)は、これら横断面積量と体積量の双方に高い相関を有すると考えられる。ここでは横断面積量で考えることにする。骨格筋組織層の横断面積量(AMM)は、身体特定化情報でおおよそ推定することができる。なぜなら、身体の骨格筋の発達デザインは、地球重力下で自重を支えるための発達、適応でほとんど決まってしまうからである。よって、アスリートや麻痺看者や介護者などの重力非適応者を除けば、身体特定化情報で推定可能となる。この推定は、身長H、体重W、年齢Ageを以下の式に代入することによって行う。
AMM=a*H+b*W+c*Age+d・・・式32
ここで、a、b、c、dは、定数である。
(32)体幹部骨格筋組織層インピーダンス(ZMM)も身体特定化情報によって推定できる。便宜上、ここでは上で求めた横断面積量(AMM)を利用する。この推定は以下の式を用いて行うことができる。
ZMM=a0*H/AMM+b0・・・式33
ここで、a0、b0は、定数である。
【0104】
13.内臓脂肪組織インピーダンス(ZFV)及び内臓脂肪組織量(AFV)の推定
式6、31の関係式から、次の様な2つのアプローチ案によって、内臓脂肪組織情報を推測可能とする手法が考えられる。
(33)アプローチ1
皮下脂肪組織層は、他の構成組織と比較する中で体積抵抗率が高いことから体幹部の等価回路から見て、省略して考える。つまり、体幹部で計測されるインピーダンス値には、体幹部の皮下脂肪組織層を除いた内臓脂肪組織を含む除脂肪組織の情報が計測されているものと考えることが出来る。よって、この関係式は、次の様に表現できる。
Ztm ≒ ZMM//(ZVM+ZFV) ・・・式34
式34を変形すると、
1/Ztm ≒ 1/ZMM + 1/(ZVM+ZFV) ・・・式35
この式中の骨格筋組織層のインピーダンスZMMおよび内臓器組織のインピーダンスZVMを下記で記述される手段で顕在化することで、内臓脂肪組織のインピーダンスZFVを算出可能となる。そして、この内臓脂肪組織のインピーダンス情報より、内臓脂肪組織量を推定可能と出来る。式35からZFVを誘導すると、次の式36となり、内臓脂肪組織の情報を有するインピーダンス情報を求めることができる。
ZFV= 1/[ 1/Ztm−1/ZMM] − ZVM・・・式36
【0105】
(34)アプローチ2
前記アプローチ1では皮下脂肪組織層を省略して考えたが、皮下脂肪組織を大量に有する被験者に対しては誤差要因となりえるため、式6のままで進める方法である。
この式中の骨格筋組織層のインピーダンスZMMおよび内臓器組織のインピーダンスZVMは、前記手法と同様とし、皮下脂肪組織層のインピーダンスZFSに対して、インピーダンス情報は他の組織と同様の考え方で皮下脂肪組織量と有用な関係がある。ここで、皮下脂肪組織量は、その組織表面での周囲長、つまり、腹囲長との相関が非常に高い関係があることが一般に報告されている(特に皮下脂肪組織層が多い被験者に対して、または、皮下脂肪組織を除く除脂肪組織に比較して多い場合)ことから、皮下脂肪組織層は腹囲長情報から推定可能となる。よって、皮下脂肪組織層のインピーダンスは、腹囲長の情報から推測可能と出来る。以下、前記アプローチと同様の手法で内臓脂肪組織のインピーダンスZFVを算出可能となる。そして、この内臓脂肪組織のインピーダンス情報より、内臓脂肪組織量を推定可能と出来る。
式6を変形すると、
1/Ztm = 1/ZFS + 1/ZMM + 1/(ZVM+ZFV) ・・・式37
ZFV= 1/[ 1/Ztm−1/ZMM−1/ZFS] − ZVM・・・式38
【0106】
(35)内臓脂肪組織量(AFV)は、ここでは内臓脂肪組織横断面積として取り扱う。内臓脂肪組織組織量(AFV)は、式39において、上記インピーダンス情報と身長情報から算出することができ、
AFV=aa*H/ZFV+bb・・・式39
ここで、aa、bbは定数である。
【0107】
14.内臓器組織量[AVM]及び内臓器組織インピーダンス [ZVM]の推定
(36)体幹部の内臓器組織量[VM]は、身長、体重、性別、年齢等の身体(個人)特定化情報から推定することが出来る。説明変数の中で、身長項の影響が大きい。
内臓器組織量[AVM] = a1*身長[H]+ b1*体重[W] + c1*年齢[Age] + d1・・・式40
ここで、a1、b1、c1、d1は、男女で別の値を与える定数である。
なお、本検量線(回帰式)に用いる内臓脂肪組織量VMの基準量の計測は、MRI法やX線CT法により得られるスライス毎のCSA(組織横断面積)を長さ方向に積分して求めた組織体積、または、臍位等の1スライスからのCSAとする。組織体積は、先行研究論文等で公知の組織密度情報から重量へ変換することで組織量とすることが出来る。
【0108】
(37)次に、内臓器組織のインピーダンスZVMを推定する。
内臓器組織のインピーダンス[ZVM]は、身長、体重、性別、年齢等の身体(個人)特定化情報から推定することが出来る。説明変数の中で、身長項の影響が大きい。便宜上、ここでは上で求めた内臓器組織量[AVM]を利用する。この推定は、以下の式を用いて行うことができる。
ZVM=a2*H/AVM+b2・・・式41
ここで、a2、b2は、定数である。
【0109】
15.皮下脂肪組織量[AFS]の推定
(38)体幹部の皮下脂肪組織量[AFS]の測定方法については後述する。なお、本検量線(回帰式)に用いる皮下脂肪組織量FSの基準量の計測は、MRI法やX線CT法により得られるスライス毎のCSA(組織横断面積)を長さ方向に積分して求めた組織体積、または、臍位等の1スライスからのCSAとする。組織体積は、先行研究論文等で公知の組織密度情報から重量へ変換することで組織量とすることが出来る。
【0110】
16.体幹部内臓脂肪/皮下脂肪比[V/S]の推定
(39)内臓脂肪/皮下脂肪比[V/S]は、式22-1、式22-2からの皮下脂肪組織量[AFS]や後述する式45からの皮下脂肪組織量[AFS]と式39からの内臓脂肪組織量[AFV]から求めることが出来る。
V/S=AFV/AFS・・・式42
【0111】
17.皮下脂肪組織量[AFS]の推定
(40)体幹部の皮下脂肪組織量AFSは、前項「6.皮下脂肪組織量[FS]からのインピーダンス[ZFS]の推定」で説明したように、腹囲長[Lw]2から推定することもできるが、以下に示すように、皮下脂肪組織層のインピーダンス情報ZFSと腹囲長Lwから推定することも出来る。
皮下脂肪組織量[AFS] = aa0*ZFS*Lw+bb0・・・式43
ここで、aa0、bb0は、定数である。
尚、上の式43の導き方については後に詳述する。
【0112】
次に、前述したような本発明の測定原理に基づいた、体幹部内臓脂肪組織、及び/又は、体幹部皮下脂肪組織を測定するための本発明の体幹部内臓・皮下脂肪測定方法及び装置の実施例について説明する。
【0113】
図1は、本発明による体幹部内臓・皮下脂肪測定装置の一実施例の外観を示す概略斜視図であり、図2は、図1の装置を用いて体幹部内臓脂肪組織および皮下脂肪組織層を測定する場合における使用態様を説明するための概略図である。図3は、図1の実施例の装置における腹部押当て電極部に代わりうる別の実施形態としての腹部押当て電極部を示す概略図であり、図4は、図3の腹部押当て電極部の使用態様を説明するための概略図である。図5は、図1の装置(図3の腹部押当て電極部とした場合も含む)の構成を示すブロック図である。
【0114】
これら図1から図5に示されるように、本実施例の体幹部内臓・皮下脂肪測定装置1は、主として、本体部2と、体重測定部3と、腹部押当て電極部4または4Aとから構成される。体重測定部3は、電気ケーブル5を介して本体部2に接続されており、腹部押当て電極部4または4Aは、電気ケーブル6を介して本体部2に接続されている。図5によく示されるように、本体部2には、主として、電力供給部21と、演算兼制御部22と、部位インピーダンス測定部23と、記憶部24と、表示兼入力部25と、ブザー報知部26と、印刷部27とを備えている。
【0115】
部位インピーダンス測定部23は、主として、電流供給部231と、電流引火電極切替部232と、電圧計測電極切替部233と、電圧測定部234とを備えている。図1によく示されるように、表示兼入力部25は、本体部2の前面側に、各種操作キー等からなる入力部25aと、液晶表示パネル等からなる表示部25bとを与えている。また、ブザー報知部26もまた、本体部2の前面側に与えられている。電力供給部1は、本装置の電気系統各部に電力を供給する。
【0116】
図1に示されるように、体重測定部2は、公知の体重計の如き、重量検出部、増幅部およびAD変換部を内蔵した載台31を備え、身体目方特定情報(体重)に基因する電圧を測定する。さらにまた、載台31の上面には、左足用電流印加電極10aおよび右足用電流印加電極10bと、左足用電圧計測電極11aおよび右足用電圧計測電極11bとが設けられている。
【0117】
図1によく示されるように、腹部押当て電極部4は、腹部押当てプレート41と、この腹部押当てプレート41の前面側の左右に設けられた左手用グリップ42および右手用グリップ43とを備える。腹部押当てプレート41の後面側には、3個の電流印加電極10e、10fおよび10gと、これら各電流印加電極に近接した位置に配置された3個の電圧計測電極11e、11fおよび11gとが設けられている。また、左手用グリップ42には、左手用電流印加電極10cと、左手用電圧計測電極11cとが設けられており、右手用グリップ43には、右手用電流印加電極10dと、右手用電圧計測電極11dとが設けられている。なお、左手用グリップ42および右手用グリップ43に設けられる電極は、電流印加電極および電圧計測電極として兼用される単一の電極としてもよい。
【0118】
図3によく示されるように、腹部押当て電極部4Aは、腹部押当て中央プレート41Aと、腹部押当て左プレート41Bと、腹部押当て右プレート41Cとを備えており、腹部押当て左プレート41Bおよび腹部押当て右プレート41Cは、腹部押当て中央プレート41の側縁に対して、フレキシブル性を有する適当なジョイント材を介してヒンジ接続されている。これにより、腹部押当て中央プレート41A、腹部押当て左プレート41Bおよび腹部押当て右プレート41Cが腹部に密着させられ、そこに配設された電極が腹部表面に密接させられうるようにしている。腹部押当て左プレート41Bの前面側の左側縁近くには、左手用グリップ42Aが設けられており、腹部押当て右プレート41Cの前面側の右側縁近くには、右手用グリップ43Aが設けられている。
【0119】
腹部押当て左プレート41Bの後面側には、例えば、2個の電流印加電極10h、10iと、これら各電流印加電極に近接した位置に配置された2個の電圧計測電極11h、11iとが設けられている。また、腹部押当て中央左プレート41Aの後面側には、例えば、2個の電流印加電極10j、10kと、これら各電流印加電極に近接した位置に配置された2個の電圧計測電極11j、11kとが設けられている。さらにまた、腹部押当て右プレート41Cの後面側には、例えば、2個の電流印加電極10l、10mと、これら各電流印加電極に近接した位置に配置された2個の電圧計測電極11l、11mとが設けられている。左手用グリップ42Aには、左手用電流印加電極10cと、左手用電圧計測電極11cとが設けられており、右手用グリップ43Aには、右手用電流印加電極10dと、右手用電圧計測電極11dとが設けられている。なお、左手用グリップ42Aおよび右手用グリップ43Aに設けられる電極は、電流印加電極および電圧計測電極として兼用される単一の電極としてもよい。
【0120】
図4によく示されるように、腹部押当て中央プレート41Aの前面側には、各種操作キー等からなる入力部25aと、表示部25bとが設けられている。この場合には、図1の実施例において設けられた本体部2の代わりに、この腹部押当て中央プレート41Aを本体部として構成することもできる。また、これら入力部および表示部を前面側でなく、後面側に配置する構成とすることもできる。さらに、載台31を省略して、図4のみで構成することもできる。
【0121】
前述したように各プレートの後面側に配置される電流印加電極および電圧計測電極の数や位置関係や形状については、図示した例に限定されることなく、後述する皮下脂肪組織厚の計測において、次のような情報を容易に得るのに最適な数、位置関係および形状を選択することが重要である。
(a)皮下脂肪組織厚計測部位は、皮下脂肪組織沈着が最も大きい部位として、臍囲周上の臍横と肩甲骨下部と腸骨稜上縁部(側腹部)の何れか又は、全ての情報を用いること。
(b)皮下脂肪組織厚計測部位は、皮下脂肪組織沈着が最も薄い部位として、臍囲周上の臍凹部と背骨部と腱膜部(腹直筋と外腹斜筋の間の結合腱部)の何れか又は、すべての情報を用いること。特に、個人差が大きい腱膜部(腹直筋と外腹斜筋の間の結合腱部)の情報を用いること。
(c)皮下脂肪組織厚計測部位は、前記皮下脂肪組織沈着の最も大きい部位候補部と最も薄い部位の組み合わせた情報を用いること。
(d)皮下脂肪組織分布は、臍囲周での横断面積で、臍と背骨を直線で結んで左右線対称になっている。よって、左右いずれか一方の皮下脂肪組織分布情報を計測すれば済むことになる。
(e)皮下脂肪組織厚の部位間分布の関連は、臍横と肩甲骨下部間で良く一致するため、いずれかの情報で代用可能と出来る。
(f)よって、臍横と腱膜部と腸骨稜上縁部(側腹部)の腹前側部区間の三点で信頼性の高い推定を可能と出来る。
(g)この皮下脂肪組織厚計測は、体幹腹部に配置した電流印加電極直下の電位差又はインピーダンス情報を用いること。
【0122】
演算兼制御部22は、身体目方特定情報(体重)、各種の部位インピーダンス(上肢インピーダンス、下肢部インピーダンス、体幹部インピーダンス等)、前記式1から式51等に基づいて、体幹中部骨格筋組織量、下肢部骨格筋組織量、上肢部骨格筋組織量、内臓器組織量、皮下脂肪組織量、内臓脂肪組織量、体幹腹部脂肪組織量、腹部脂肪組織量、体幹腹部内臓脂肪/皮下脂肪比等を演算したり、呼吸による変動の影響除去処理や、内臓器組織異常判定等の処理を行ったり、その他、各種の入出力、測定、演算等行う。
【0123】
部位インピーダンス測定部23は、公知の生体インピーダンス測定装置(例えば、体脂肪計、体組成計等)の如き、電流供給部231、電流印加電極切替部232、電圧計測電極切替部233および電圧測定部234を備え、演算兼制御部22の制御の下で、電流印加電極切替部232および電圧計測電極切替部233を介して、前述したような電流印加電極10a〜10m、電圧計測電極11a〜11mを適宜切替て使用することにより、各種の身体部位間の生体インピーダンス(各種の部位インピーダンス)に基因する電位差を電位差測定部234にて測定できるようにする。
【0124】
記憶部24は、身長、四肢長、体幹部長、体幹中部長等の身体特定情報や前記の式1から式51等を記憶する。また、記憶部4は、後述するような健康指針アドバイスのための適当なメッセージ等も記憶する。
【0125】
表示兼入力部25は、入力部25aと表示部25bとが一体となったタッチパネル式の液晶表示器からなり、身長を含む身体特定化情報を入力し、また、各種結果、アドバイス情報等を表示する。ブザー報知部26は、測定結果等に応じて警報等を発する。印刷部27は、表示部25bにて表示される各種結果、アドバイス情報等を印刷する。
【0126】
なお、本発明による装置は、図1または図3に示した構成例に限定されるものでなく、種々な構成および形状を取り得るものである。例えば、図1の実施例においては、本体部2と体重測定部3とを別体なものとしているが、本体部2と体重測定部3とを一体なものとして構成することもできる。
【0127】
次に、図2および図4を特に参照して、図1および図3の実施例の使用態様について説明する。先ず、図1の実施例の使用態様について説明するに、図2に示すように、体脂肪組織を測定しようとするユーザは、腹部押当て電極部4の左手用グリップ42および右手用グリップ43をそれぞれ左手および右手で把持し、体重測定部3の載台31上に乗り、腹部押当て電極部4の腹部押当てプレート41の後面側を腹部の所定位置に押し当てるようにする。ユーザは、載台31に乗る前に、または乗った後で、本体部2の入力部25aを操作して所定の身体特定化情報等を入力したり、表示部25bに表示される各種の指示に応じた操作を行うことができる。
【0128】
この状態において、ユーザの左手と右手は、それぞれ、左手電流印加電極10cと左手電圧計測電極11c、及び、右手電流印加電極10dと右手電圧計測電極11dに、それぞれ接触し得る。また、ユーザの左脚部と右脚部の足裏は、それぞれ、左足電流印加電極10aと左足電圧計測電極11a、及び、右足電流印加電極10bと右足電圧計測電極11bに、それぞれ接触し得る。さらに、ユーザの腹部の所定個所は、腹部押当て電極部4に設けられた電流印加電極10eから10gのうちの所定の電流印加電極および電圧計測電極11eから11gのうちの所定の電圧計測電極と接触し得る。
【0129】
同様に、図3の実施例の腹部押当て電極部4Aを使用する場合には、図4に示すように、体脂肪組織を測定しようとするユーザは、腹部押当て電極部4Aの左手用グリップ42Aおよび右手用グリップ43Aをそれぞれ左手および右手で把持し、体重測定部3の載台31上に乗り、腹部押当て電極部4Aの腹部押当て中央プレート41A、腹部押当て左プレート41Bおよび腹部押当て右プレート41Cの後面側を腹部の所定位置に押し当てるようにする。この状態において、ユーザの左手と右手は、それぞれ、左手電流印加電極10cと左手電圧計測電極11c、及び、右手電流印加電極10dと右手電圧計測電極11dに、それぞれ接触し得る。また、ユーザの左脚と右脚の足裏は、それぞれ、左足電流印加電極10aと左足電圧計測電極11a、及び、右足電流印加電極10bと右足電圧計測電極11bに、それぞれ接触し得る。さらに、ユーザの腹部の所定個所は、腹部押当て電極部4Aに設けられた電流印加電極10hから10mのうちの所定の電流印加電極および電圧計測電極11hから11mのうちの所定の電圧計測電極と接触し得る。
【0130】
これら電流印加電極10aから10mと電圧計測電極11aから11mは、SUS材及び樹脂材表面を金属めっき処理等して実現されていてもよい。このタイプの電極は、金属電極表面に、保水性高分子膜をコ−ティングすることで、測定前に水分をふきつけるか、水にぬらして使用する。水にぬらすことにより、皮膚との電気的接触の安定性を確保することができる。また、特に図示しないが、粘着性貼り付けタイプの電極を用いることもできる。これは交換可能な粘着パッドを各電極のベ−ス電極面に貼り付けて皮膚との接触安定性を確保するタイプのものである。このタイプは、例えば、低周波治療器や心電図電極等でよく用いられており、測定後に取り外して廃棄するようなディスポ形態と、パッド表面が汚れて密着性が低下したり水分が蒸発した場合にのみ廃棄交換し、廃棄するまでの間はカバ−シ−ト等で保管する形態がある。
【0131】
次いで、図6を参照して、本装置にて用いられる四肢誘導法による各種の身体部位間の生体インピーダンスの測定のうち、特に、体幹部インピーダンスのみを測定する場合の電極切替の態様を説明する。
【0132】
図6の(A)は、右手−右足間に通電し、左手−左足間にて電位差測定することにより、体幹部インピーダンスを測定する場合を示している(右上肢部と右下肢部間通電ルート体幹腹部生体インピーダンスZtmrrを示している)。この場合において、右手電流印加電極10dと右足電流印加電極10bとが電流印加電極として使用され、左手電圧計測電極11cと左足電圧計測電極11aとが電圧計測電極として使用される。
【0133】
図6の(B)は、左手−左足間に通電し、右手−右足間にて電位差測定することにより、体幹部インピーダンスを測定する場合を示している(左上肢部と左下肢部間通電ルート体幹腹部生体インピーダンスZtmllを示している)。この場合において、左手電流印加電極10cと左足電流印加電極10aとが電流印加電極として使用され、右手電圧計測電極11dと右足電圧計測電極11bとが電圧計測電極として使用される。
【0134】
図6の(C)は、右手−左足間に通電し、左手−右足間にて電位差測定することにより、体幹部インピーダンスを測定する場合を示している(右上肢部と左下肢部間通電ルート体幹腹部生体インピーダンスZtmrlを示している)。この場合において、右手電流印加電極10dと左足電流印加電極10aとが電流印加電極として使用され、左手電圧計測電極11cと右足電圧計測電極11bとが電圧計測電極として使用される。
【0135】
図6の(D)は、左手−右足間に通電し、右手−左足間にて電位差測定することにより、体幹部インピーダンスを測定する場合を示している(左上肢部と右下肢部間通電ルート体幹腹部生体インピーダンスZtmlrを示している)。この場合において、左手電流印加電極10cと右足電流印加電極10bとが電流印加電極として使用され、右手電圧計測電極11dと左足電圧計測電極11aとが電圧計測電極として使用される。このような四肢誘導法による各種の身体部位間の生体インピーダンスの測定における電極切替は、被測定者(ユーザ)が各電極にタッチした状態において、演算兼制御部22による制御のもとで、電流印加電極切替部232および電圧計測電極切替部233によって行われる。
【0136】
図7は、体幹腹部(中部)の構造を模式的に示す図であり、体幹腹部を構成する組織は、皮下脂肪組織層(FS)、骨格筋組織層(MM)、内臓器組織(VM)、その隙間に付着する内臓脂肪組織(FV)と考えることができる。体幹部へ通電する場合には、骨格筋組織層へ大半の電流が通電すると考えられる。何故ならば、骨格筋組織層の電気導電性が他の組織に比べて良いからである。内臓器組織は、内臓脂肪組織と直列に考えられ、内臓脂肪組織の大小により、通電量の変化を期待できることがわかる。
【0137】
図8は、図7の体幹腹部の構造を電気的等価回路として表したもので、皮下脂肪組織層を省略して考えた簡略化体幹腹部等価回路を示しており、前項「3.体幹部構成組織の電気的等価回路モデル化」(14)におけるアプローチ1の手法にて考慮される体幹腹部等価回路である。また、図9は、同様に、図7の体幹腹部の構造を電気的等価回路として表したもので、皮下脂肪組織層を省略せずに考えた体幹腹部等価回路を示しており、前項「3.体幹部構成組織の電気的等価回路モデル化」(15)におけるアプローチ2の手法にて考慮される体幹腹部等価回路である。なお、これらの図において使用されている符号は、前述したとおり、Ztmは、体幹中部全体のインピーダンス、ZFSは、皮下脂肪組織層のインピーダンス、ZMMは、骨格筋組織層のインピーダンス、ZVMは、内臓器組織のインピーダンス、ZFVは、内臓脂肪組織のインピーダンスをそれぞれ示している。そして、前述したとおり、図8の等価回路においては、
Ztm ≒ ZMM//(ZVM+ZFV)の関係式が成り立ち、
図9の等価回路においては、Ztm = ZFS//ZMM//(ZVM+ZFV)の関係式が成り立つ。
【0138】
<皮下脂肪組織層測定、或いは、皮下脂肪組織層及び内臓脂肪組織の選択測定>
特に、皮下脂肪組織層測定、或いは、皮下脂肪組織層及び内臓脂肪組織の選択測定に用いられる技術を説明する。
【0139】
先ず、本発明による皮下脂肪組織厚計測の基本原理の前提となる原理について説明するに、図10は、図7に示された体幹部の模式図を臍高さにおける腹囲周横断面にてモデル化した図である。この図に示すように、体幹部断面は、最も外側にある皮下脂肪組織層(FS)と、そのすぐ内側にある骨格筋組織層(MM)と、最も内側にある内臓器組織(VM)とそれに取り巻く内臓脂肪組織(FV)を含む。
【0140】
図11は、図10に示された模式図を更に電気的な等価回路として表したものである。例えば、電流印加電極10A、10Bにおいて電流(I)を印加し、電圧計測電極11A、11Bで電位差(V)を測定するものとした場合、この等価回路における電気抵抗は、主として、臍前後付近の皮下脂肪組織層のインピーダンス(ZFS1、ZFS2)と、腹周囲の皮下脂肪組織層のインピーダンス(ZFS0)と、臍の左右各側の骨格筋組織層のインピーダンス(ZMM1、ZMM2)と、臍前後付近の内臓脂肪組織のインピーダンス(ZFV1、ZFV2)、更に、体幹部中心付近の内臓器組織のインピーダンス(ZVM)として現れる。
【0141】
図12に、図11を更に簡略化した回路を示す。ZFS1とZFS2は略同じ大きさと考えられるため、ここでは、それらを同値のZFSとして表し、また、ZMM1とZMM2、或いは、ZFV1とZFV2は、それぞれ、ZMM、ZFVとして表している。また、導電性が他の領域に比べて著しく低いと考えられるZFS0は省略した。これを省略できる点は、前項「3.体幹部構成組織の電気的等価回路モデル化」(13)の記載から明らかであろう。
【0142】
次に、図13を参照して、四電極法における電極間距離と広がり抵抗の関係を説明する。図13は、電極間距離と広がり抵抗の関係を示したものである。図中、丸い点線で囲った部分30は広がり抵抗領域を示す。電流印加電極からの電流は、印加後に徐々に被験者の体内に広がるが、印加直後の領域、即ち、広がり抵抗領域においては、それほど大きくは広がっておらず、このため、これらの領域では電流密度が他の領域に比べて非常に高くなる。したがって、電流印加電極10A、10Bと電圧計測電極11A、11Bをあまりに接近させて配置した場合には、電圧計測電極11A、11Bにおいて測定される電位差は広がり抵抗領域における電流の影響を大きく受けてしまう。
【0143】
例えば、前述した式31より明らかなように、臍付近における皮下脂肪組織層のインピーダンス(ZFS)と、腹周囲における皮下脂肪組織層のインピーダンス(ZFS0)、骨格筋組織層のインピーダンス(ZMM)、内臓脂肪組織のインピーダンス(ZFV)、及び、体幹部中心付近の内臓器組織のインピーダンス(ZVM)の間には、
ZFS >> (ZVM+ZFV) >> ZMM
の関係がある。
したがって、I−V電極間距離がほとんど無く近接して配置されたときの電位差計測インピーダンスΣZ1は、
ΣZ1=2*ZFS+ZMM//(ZVM+ZFV)≒2*ZFS
となる。これにより明らかなように、広がり抵抗の影響でZFSが数倍に増幅されるため、ここでは、ZFSによる情報が支配的となる。
【0144】
広がり抵抗の影響を小さくするには、電流印加電極と電圧計測電極の間の距離を大きくする必要がある。例えば、I−V電極間距離を10cm程度確保して配置した場合の電位差計測インピーダンスΣZ2は、
ΣZ2≒2*ZFS+ZMM//(ZVM+ZFV)
である。明らかなように、I−V電極間距離を広げることによって、広がり抵抗の影響は多少小さくなっているが、この程度離しただけでは、まだZFSの情報が支配的である。
【0145】
この広がり抵抗の影響を詳細に検討するため、図14に示すように、電極11A、11B、11C、11DにおけるI−V電極間及びV−V電極間相互の距離が各々1/3程度になるよう10cm程度確保して配置した場合を考える。ただし、電極10A、11Aや、電極10B、11Dは、前記I−V電極間距離がほとんど無い近接配置とする。この場合の電位差計測インピーダンスΣZ3は、
ΣZ3≒2*ZFS+ZMM//(ZVM+ZFV)である。
このとき電極間で計測される電圧降下の関係は、おおよそ次のようになる。
V1=I*ZMM//(ZVM+ZFV)
V2=V3=I*2*ZFS
V1:(V2+V3)≒1〜2:10〜20=S:N
上式におけるSの1〜2やNの10〜20のバラツキは、皮下脂肪組織層の厚みの個人差と骨格筋組織層の発達具合によるものである。この結果からも分かるように、たとえ電極間距離を調節しても、十分なS/Nが確保できるとは言いがたい。
【0146】
また、ほとんどの電流は骨格筋組織層で支配的に通電されるため、内臓器組織と内臓脂肪組織の複合組織層への通電感度を十分に確保することはできない。即ち、骨格筋組織層に流れる電流をI1、測定対象である内臓器組織と内臓脂肪組織に流れる電流をI2とすれば、
V1=I*ZMM//(ZVM+ZFV)=I1*ZMM=I2*(ZVM+ZFV)
I=I1+I2
となり、よって、
ZMM:(ZVM+ZFV)=I2:I1≒1:2〜5
となる。これより明らかなように、たとえ広がり抵抗の影響を排除できたとしても、骨格筋組織層に流れる電流は内臓器組織と内臓脂肪組織に流れる電流の2〜5倍にも及ぶため、この結果、S/N特性は更に悪くなる。このように、体幹部のような太短い測定部位においては、たとえ電極間距離を調整しても、電流電極間距離で上限が決まってしまうことから、S/N特性の改善には限界がある。
【0147】
図15に、図7と同様の方法で、皮下脂肪組織層情報を得るための電極配置方法の一例を示す。この電極配置方法を基礎として、皮下脂肪組織層情報のみならず、内臓脂肪組織情報をも互いに分離した情報として同時に計測することができる。本発明の装置は、内臓脂肪組織を計測するための電圧計測電極と、皮下脂肪組織層を計測するための電圧計測電極の双方を有し、これらの電極配置を切換手段で選択的に切換えることによって、内臓脂肪組織情報と皮下脂肪組織層情報の双方を計測することもできる。両方同時計測の目的は、呼吸等による測定中の変動誤差要因を呼吸の変動より速いサンプリングタイミングで計測する等、両測定を同じ環境で同時に測定することでその誤差要因を相対的に除去可能とすることにある。よって、呼吸以外に心拍その他の体動等による影響も考えられる。スピ−ドを早くする以外に、同一測定環境でのスム−ジング処理等でも、同様の目的を達することが出来る。
【0148】
図15の具体的な電極配置例は、左右の腱膜部15に配置した電流印加電極10A、10B直下の皮下脂肪組織層のインピーダンス計測配置例であり、V2は、右前側部皮下脂肪組織計測電位を示す。なお、参照符号Aは、臍位置を示す。皮下脂肪組織層情報(具体的には、電位差値やインピーダンス値)を得るために、ここでは広がり抵抗を利用する。広がり抵抗は一般には好ましくないものとして捉えられてきたが、特に、電流印加電極直下における広がり抵抗は皮下脂肪組織層に関する情報を表すものということができるため、この領域の電位差を計測することで有用な皮下脂肪組織層情報を得ることができる。本発明では、この点に着目して、皮下脂肪組織層情報を得るものである。
【0149】
広がり抵抗を測定するため、少なくとも1つの電流印加電極対10A、10Bと、この電流印加電極対から印加された電流によって被験者に生じた電位差を測定し得る、少なくとも1つの電圧計測電極対を備える。ここで、電流印加電極対に含まれる一方の電流印加電極、例えば、電流印加電極10Bは、皮下脂肪組織層が薄い部位、または、骨格筋組織層の筋腹部が無いまたは薄い部位に電流を印加するように使用され、他方の電流印加電極、例えば、電流印加電極10Aは、皮下脂肪組織層が厚い部位(又は、皮下脂肪組織層測定対象部位)に電流を印加するように使用される。
【0150】
一方、電圧計測電極対に含まれる一方の電圧計測電極34は、電流印加電極直下の広がり抵抗の影響が支配的な位置、つまり、電流印加電極10Bに近接して配置される。これに対し、他方の電圧計測電極36は、電流印加電極直下の広がり抵抗の影響が軽減されるまで離れた位置または体幹部長手方向に電流印加電極から離れた位置または四肢部のうちのいずれかに配置される。電流印加電極10A、10Bにより印加された電流によって電圧計測電極34、36間に生じた、電位差V2における電位差計測値は、皮下脂肪組織層部のインピーダンス(ZFS)値に比例し、また、皮下脂肪組織層の厚み(LFS)情報に比例する、インピーダンス情報と考えられる。広がり抵抗部のインピーダンスを△Z、電流印加電極の面積に相当する定数をA0とおけば、
△Z ∝ ZFS ∝ LFS/A0 ∝ LFS
である。故に、皮下脂肪組織層の横断面積量AFSは、
AFS=Lw*LFS=aa0*ZFS*Lw+bb0・・・式43
で求めることができる。尚、上式において、Lwは腹囲長、つまり、腹16周囲の長さ、aa0、bb0は、男女で別の値となる定数である。
【0151】
皮下脂肪組織層情報とともに内臓脂肪組織情報(電位差値、インピーダンス値等)を得るには、皮下脂肪組織層情報を測定するための電圧電極配置とは異なる配置で設ける、少なくとももう1組の電圧計測電極対が必要である(以上の結果、皮下脂肪組織層情報と内臓脂肪組織情報の双方を同時に計測することができる本発明による方法及び装置を実施するためには、少なくとも2つの電圧計測電極対が必要である)。
【0152】
更に、図16から図21を参照して、四肢部と体幹部組み合わせ電極配置による脂肪組織、ここでは特に、皮下脂肪組織層を計測するための誘導法を説明する。図16から図21は、通電用の電流印加電極の一方(グリップ電極)を掌に設け、他方の電流印加電極を体幹腹部内(腱膜上)に設け、その他2つの電圧計測電極対を体幹腹部上に配置する誘導法を示す。
【0153】
図16から図18は、掌に通電用の電流印加電極の一方をグリップ電極として設け、もう一方の電流印加電極を体幹腹部内(腱膜上)に設け、その他の二つの電圧計測電極も体幹腹部上に配置する新誘導法を示しており、図16は、右腕−体幹腹部通電計測に関するもので、図17は、左腕−体幹腹部通電計測に関するものであり、図18は、両腕−体幹腹部通電計測に関するものである。図16の右腕−体幹腹部通電計測においては、電圧計測電極は、一方を体幹腹部の臍囲周近辺に配置した電流印加電極(骨格筋組織層上の方が有利)に近接配置して、他方を臍囲周上の電流印加電極から広がり抵抗の影響が回避できる距離以上を確保すれば、同等電位が計測できる位置であればどこでも良い。この考え方は、図17以下に示す新誘導法の電極配置にも同様に適用される。
【0154】
図19は、足裏に通電用の電流印加電極の一方をフット電極として設け、もう一方の電流印加電極を体幹腹部内(腱膜上)に設け、その他の二つの電圧計測電極も体幹腹部上に配置する新誘導法のうちの右脚−体幹腹部通電計測に関するものを示している。なお、図示していないが、図19に示す電極配置と同様の考え方により、左脚−体幹腹部通電計測、両脚−体幹腹部通電計測の電極配置もある。また、図示していないが、同様の考え方により、頭部耳部に通電用の電流印加電極の一方を(耳たぶ等に挟むクリップ電極として)設け、もう一方の電流印加電極を体幹腹部内(腱膜上)に設けて配置する新誘導法もあり、この新誘導法においても、右耳−体幹腹部通電計測、左耳−体幹腹部通電計測、オーガン(Organ)らの誘導法による右耳−体幹腹部通電計測等が考えられる。
【0155】
図20は、掌に通電用の電流印加電極の一方の電流印加電極を体幹腹部内(腱膜上)に設け、二つの電圧計測電極の一方を電流印加電極と左右対向する掌にグリップ電極として設け、他方を体幹腹部上に配置する新誘導法のうちのオーガンらの誘導法による右腕−体幹腹部通電計測に関するものを示している。この新誘導法においても、図示していないが、同様の考え方によるオーガンらの誘導法による左腕−体幹腹部通電計測等が考えられる。
【0156】
図21は、足裏に通電用の電流印加電極の一方をフット電極として設け、もう一方の電流印加電極を体幹腹部内(腱膜上)に設け、二つの電圧計測電極の一方を電流印加電極と左右対向する足裏にフット電極として設け、他方を体幹腹部上に配置する新誘導法のうちのオーガンの誘導法による右脚−体幹腹部通電計測に関するものを示している。この新誘導法においても、図示していないが、同様の考え方によるオーガンらの誘導法による左脚−体幹腹部通電計測等が考えられる。
【0157】
図22は、図16から図21を参照して説明したような新誘導法を用いることにより、本発明により皮下脂肪組織層情報を得るための最適皮下脂肪組織計測部位に対する電極配置例を示す概略図である。この図22の電極配置例は、本発明における皮下脂肪組織厚計測部位として前記(a)項から(g)項に述べた中で、(f)項に述べた最適な三点部位、すなわち、「臍横と腱膜部と腸骨稜上縁部(側腹部)の腹前側部区間の三点」での皮下脂肪組織層厚を測定するための電極配置例である。図22に示す電極配置においては、電流印加電極10B1は、腹部16の臍Aに近い臍横に対して配置され、電流印加電極10B2は、腱膜15に対して配置され、電流印加電極10B3は、側腹部に対して配置されており、これら電流印加電極と対になるもう一方の電流印加電極10A1は、四肢部のいずれかに配置される。一方、電圧計測電極341、342および343は、それぞれ、図15を参照して前述したように、電流印加電極直下の広がり抵抗の影響が支配的な位置、つまり、電流印加電極10B1、10B2および10B3に近接して配置される。これに対し、他方の電圧計測電極361は、四肢部のいずれか(四肢部電流印加電極とは別の位置)に配置される。電流印加電極10A1と電流印加電極10B1とにより印加された電流I1により生じた電圧計測電極361と電圧計測電極341との間に生じた電位差V1における電位差計測値は、臍横における皮下脂肪組織層部のインピーダンスZFS1値に比例し、また、臍横における皮下脂肪組織層の厚みLFS1に比例する。同様に、電流印加電極10A1と電流印加電極10B2とにより印加された電流I2により生じた電圧計測電極361と電圧計測電極342との間に生じた電位差V2における電位差計測値は、腱膜部における皮下脂肪組織層部のインピーダンスZFS2に比例し、また、腱膜部における皮下脂肪組織層の厚みLFS2に比例する。また同様に、電流印加電極10A1と電流印加電極10B3とにより印加された電流I3により生じた電圧計測電極361と電圧計測電極343との間に生じた電位差V3における電位差計測値は、側腹部における皮下脂肪組織層部のインピーダンスZFS3に比例し、また、腱膜部における皮下脂肪組織層の厚みLFS3に比例する。
【0158】
本発明の前述した実施例の装置について言えば、図22の電極配置例における電流印加電極10A1としては、体重測定部3の載台31の上面に設けた電流印加電極10a、10bおよび腹部押当て電極部4の左手用グリップ42および右手用グリップ43に設けられた電流印加電極10c、10dのうち、演算兼制御部22の制御の下で電流印加電極切替部232によって切り替え選択されたものが使用されることになる。以下同様に、図22の電極配置例における電流印加電極10B1、10B2、10B3としては、腹部押当て電極部4、4Aに設けた電流印加電極10e〜10mのうち、演算兼制御部22の制御の下で電流印加電極切替部232によって切り替え選択されたものが使用されることになる。この場合において、本発明の装置の具体的形態によっては、ユーザは、本体部2の表示部25b等に表示される指示にしたがって腹部押当て電極部4、4Aの腹部に対する押当て位置を変更して所定の電流印加電極が腹部の最適位置に押当て接触させられるようにする必要がある。図22の電極配置例における電圧計測電極361としては、体重測定部3の載台31の上面に設けた電圧計測電極11a、11bおよび腹部押当て電極部4の左手用グリップ42および右手用グリップ43に設けられた電圧計測電極11c、11dのうち、演算兼制御部22の制御の下で電圧計測電極切替部233によって切り替え選択されたものが使用されることになる。また、図22の電極配置例における電圧計測電極341、342、343としては、腹部押当て電極部4、4Aに設けた電圧計測電極11e〜11mのうち、演算兼制御部22の制御の下で電圧計測電極切替部233によって切り替え選択されたものが使用されることになる。この場合において、本発明の装置の具体的形態によっては、ユーザは、本体部2の表示部25b等に表示される指示にしたがって腹部押当て電極部4、4Aの腹部に対する押当て位置を変更して所定の電圧計測電極が腹部の最適位置に押当て接触させられるようにする必要がある。
【0159】
次に、図23に示す基本フローチャートと図24から図28に示すサブルーチンフローチャートを参照して、図1から図5に示す本発明の実施例での体幹部内臓・皮下脂肪測定装置(体幹部皮下脂肪測定装置)の操作および動作について説明する。
【0160】
図23に示す基本フローチャートにおいては、先ず、本体部2における電源スイッチ(図示していない)がオンされると、電力供給部21から電気系統各部に電力を供給し、表示部25bにより身長等を含む身体特定化情報(身長、体重、性別、年齢等)を入力するための画面が表示される(ステップS1)。
【0161】
続いて、この画面にしたがって、ユーザは、入力部25aから身長、体重、性別、年齢等を入力する(ステップS2)。この場合において、体重については、入力部25aから入力してもよいが、本体部2に接続された体重測定部3により測定したデータを自動的に入力して、演算兼制御部22により身体目方特定情報(体重)を演算するようにしてもよい。これら入力値は、記憶部24に記憶される。
【0162】
次に、ステップS3にて、体幹部長、腹囲長等の形態計測実測値を入力するか否かの判断を行い、それら形態計測実測値を入力する場合には、ステップS4にて、形態計測を実施して、体幹部長、腹囲長等の実測値を入力部25aから入力し、ステップS6へ移行する。ステップS3において、形態計測実測値を入力しないと判断する場合には、ステップS5に移行する。これら入力値も、記憶部24に記憶される。同様に、以下の処理において得られる数値情報等は、記憶部24に記憶される。
【0163】
ステップS5において、演算兼制御部22は、記憶部24に記憶された身長、体重、性別、年齢等の身体特定化情報から、体幹部長、腹囲長等を推定する形態計測情報推定処理(例えば、人間身体情報データベースから作成する検量線使用)を行う。ユーザは、図2または図4を参照して前述したように、腹部押当て電極部4または4Aの左手用グリップ42または42Aおよび右手用グリップ43または43Aをそれぞれ左手および右手で把持して、体重測定部3の載台31の上に乗り、本体部2の表示部25bに表示される指示にしたがって腹部押当て電極部4または4Aを自己の腹部の所定位置に押し当てるようにする。
【0164】
続いて、ステップS6において、部位インピーダンス測定部23により、体幹部インピーダンス計測処理を行う。この体幹部インピーダンス計測処理については、図26に示すサブルーチンフローチャートを参照して後述する。
【0165】
次に、ステップS7において、演算兼制御部22により、体幹部骨格筋組織横断面積量(AMM)の推定処理を行う。この演算処理は、例えば、記憶部4に記憶された身長H、体重W、年齢Ageを用いて、前述の式32に基づいて行われる。
【0166】
次に、ステップS8において、演算兼制御部22により、体幹部骨格筋組織層インピーダンス(ZMM)の推定処理を行う。このZMMは、記憶部24に記憶された身長Hと、ステップS7で求めたAMMとを用いて、前述の式33に基づいて行われる。
【0167】
次に、ステップ9において、演算兼制御部22により、皮下脂肪組織量(AFS)の推定処理を行うものである。この推定処理においては、本発明では、先ず、前述の式24の代わりに、次の式にて皮下脂肪組織層インピーダンスZFSを算出する。
ZFS=aa1*ZFS1+bb1*ZFS2+cc1*ZFS3+dd1・・式44
ここで、aa1、bb1、cc1、dd1は、定数であり、男女で別の値を与える。
そして、前述の式43に基づいて、皮下脂肪組織量AFSを算出する。
【0168】
ステップS10は、演算兼制御部22により、内臓器組織量(AVM)および内臓器組織インピーダンス(ZVM)の推定処理を行うものである。このステップ10については、図24に示すサブルーチンフローチャートを参照して後で詳述する。
【0169】
ステップS11は、演算兼制御部22により、内臓脂肪組織インピーダンス(ZFV)および内臓脂肪組織量(AFV)の推定処理を行うものである。このステップ11については、図25に示すサブルーチンフローチャートを参照して後で詳述する。
【0170】
次に、ステップS12において、演算兼制御部22により、内臓脂肪/皮下脂肪比(V/S)の演算処理を行う。この処理は、記憶部24に記憶された前述した式42に従って行われる。
【0171】
次に、ステップS13において、演算兼制御部22により、体格指数(BMI)の演算処理を行う。この演算処理は、記憶部24に記憶された体重Wと身長Hから次の式にて算出され得る。
BMI=W/H2 ・・・式45
【0172】
更に、ステップS14において、演算兼制御部22により、体幹部体脂肪率(%Fatt)の演算処理を行う。この演算処理は、記憶部24に記憶された皮下脂肪組織量(AFS)、内臓脂肪組織量(AFV)、体幹部骨格筋組織横断面積量(AMM)、及び、内臓器組織量(AVM)から次の式にて算出されるものである。
%Fatt=(AFS+AFV)/[(AFS+AFV)+AMM+AVM]*100・・・式46
【0173】
次に、ステップS15において、演算兼制御部22により、内臓脂肪率(%VFat)の演算処理が行われる。この処理は、前述の演算処理により算出され記憶部24に記憶された体幹部体脂肪率(%Fatt)、内臓脂肪/皮下脂肪比(V/S)から次の式にて行われる。
%VFat=%Fatt*(V/S)/[(V/S)+1] ・・・式47
【0174】
最後に、ステップS16において、演算兼制御部22は、前述したような演算処理にて求められた内臓脂肪組織情報(AFV、%VFat)、体組成情報(%Fatt、AMM、AFS、AVM)、体格指数(BMI)や、後述する処理によって得られるアドバイス指針等を、表示部25bに表示させるような表示処理を行う。これにより、一連の処理を終了する(ステップS17)。
【0175】
次に、前述のステップS10の内臓器組織量(AVM)および内臓器組織インピーダンス(ZVM)の推定処理について、図24のサブルーチンフローチャートを参照して詳述する。この推定処理は、ステップS18において、記憶部24に記憶された諸数値および前述の式32を用いて内臓器組織量(AVM)を算出し、ステップS19において、記憶部24に記憶された諸数値および前述の式41を用いて実行される。
【0176】
次に、前述のステップS11の内臓脂肪組織インピーダンス(ZFV)および内臓脂肪組織量(AFV)の推定処理について、図25のサブルーチンフローチャートを参照して詳述する。この推定処理は、ステップS20において、記憶部24に記憶された諸数値および前述の式36を用いて内臓脂肪組織インピーダンス(ZFV)を算出し、ステップS21において、記憶部24に記憶された身長Hおよび算出した内臓脂肪組織インピーダンス(ZFV)および前述の式39を用いて内臓脂肪組織量(AFV)を算出するものである。
【0177】
次に、ステップS6の体幹部インピーダンス計測処理について、第一の実施形態を示す図26のサブルーチンフローチャートを参照して、詳述する。この第一形態においては、前項10.(28)および(29)において説明したような「呼吸による変動の影響除去処理」および「飲食および膀胱等への水分貯留(尿等)による異常値判定処理」を行うものである。先ず、ステップS22において、演算兼制御部22は、入力部25a等からの指示に基づいて、カウンター等の初期設定体幹部のインピーダンスZtmの測定データのサンプル数の初期設定を行う。
【0178】
続いて、ステップS23において、演算兼制御部22は、測定タイミングか否かの判定を行う。そして、測定タイミングと判定された場合には、ステップS24にて、演算兼制御部22は、体幹部インピーダンス(Ztm)測定電極配置設定処理を行い体幹部インピーダンス(Ztmx)計測処理を行う。更に、ステップ25において、皮下脂肪組織層部インピーダンス(ZFS1)測定電極配置設定処理と皮下脂肪組織層部インピーダンス(ZFS1x)計測処理(臍横部)を行う。また、ステップ26において、皮下脂肪組織層部インピーダンス(ZFS2)測定電極配置設定処理と皮下脂肪組織層部インピーダンス(ZFS2x)計測処理(腱膜部)を行う。更にまた、ステップ27において、皮下脂肪組織層部インピーダンス(ZFS3)測定電極配置設定処理と皮下脂肪組織層部インピーダンス(ZFS3x)計測処理(側腱膜部)を行い、ステップ23に戻る。
【0179】
一方、ステップS23において測定タイミングでないと判定された場合には、ステップS28に移行して、体幹部インピーダンス(Ztmx)と皮下脂肪組織層部インピーダンス(ZFS1−3x)に対して、計測インピーダンス(Zx)データスムージング処理(移動平均処理等)、即ち、Zx=(Zx-1+Zx)/2を行う。それから、ステップ29において、体幹部インピーダンス計測データ呼吸変動補正処理を行う。この補正処理については、図27のサブルーチンフローチャートを参照して後述する。尚、皮下脂肪組織層部インピーダンス(ZFS1−3x)は、呼吸変動の影響を受けがたいため、体幹部インピーダンスのように補正処理は行われない。
【0180】
続いて、ステップS30にて、演算兼制御部22は、各部位毎の計測インピーダンスの時系列安定性確認処理を行う。これは、ステップS29の体幹部インピーダンス計測データ呼吸変動補正処理後の各値が所定回数所定変動以内の値に収束したかどうかを判定することによって行われる。ステップS31において、演算兼制御部22は、測定したZtmxとZFS1−3xが安定条件を満足するか否かの判定を行う。この判定は、呼吸周期毎の呼吸の中央値が規定回数規定以内の安定域に入った時点で、呼吸中央値確定と判断するようなものである。このステップS31にて、安定条件が満足されたと判定される場合には、ステップS32に移行して、確定した中央値のインピーダンス値を体幹部のインピーダンス値や皮下脂肪組織層部インピーダンス値として、最終安定条件判定値を測定値結果値として記憶部24に登録する。すなわち、安定条件を満足した、ZtmxをZtmとして、ZFS1xをZFS1として、ZFS2xをZFS2として、ZFS3xをZFS3として、それぞれ登録する。一方、ステップS31において、安定条件が満足されないと判定される場合には、ステップS23に戻って同様の処理が繰り返される。
【0181】
ステップS32に続いて、ステップS33において、演算兼制御部22は、飲食および膀胱尿貯留等による異常値判定処理を行い、更に、ステップS34において、測定の完了を報知器ブザー26(図5参照)等を用いてブザー等で報知し、測定を完了する。尚、ステップ33の異常値判定処理については、図28のサブルーチンフローチャートを参照して後述する。
【0182】
次に、ステップS29の体幹部インピーダンス計測データ呼吸変動補正処理について、図27のサブルーチンフローチャートを参照して、詳述する。先ず、ステップS35において、演算兼制御部22は、ステップS28にて処理後の時系列データから変極点検知処理を行う。ステップS36において、変極点か否かの判定を行う。これは、前後の微係数または差分値の極性変化位置のデータを検知することにより行われる。ステップ36において、変極点でないと判断された場合には、この呼吸変動補正処理は終了する。一方、ステップS36にて変極点であると判定される場合には、ステップS37に進み、最大値か否かの判定がなされる。これは、最大値と最小値の振り分けを行うステップである。最大値でない場合には、ステップS38にて、記憶部24に記憶された次の式にて最小値判定データ移動平均化処理が行われる。
[Ztm]minx←([Ztm]minx-1+[Ztm]minx)/2 ・・・式48
【0183】
ステップS37において最大値と判定される場合には、ステップS39において、記憶部24に記憶された次の式にて最大値判定データ移動平均化処理が行われる。
[Ztm]maxx←([Ztm]maxx-1+[Ztm]maxx)/2 ・・・式49
【0184】
続いて、ステップS40において、一呼吸周期分の最大値と最小値データが確保されたかの判定がなされる。ステップ40において、データが確保されないと判断された場合には、この呼吸変動補正処理は終了する。一方、ステップS40において、そのデータが確保されたと判定された場合には、ステップS41にて、記憶部24に記憶された次の式にて呼吸変動中央値演算処理(最大値と最小値データの平均値演算)がなされる。
Ztmx←([Ztm]maxx+[Ztm]minx)/2 ・・・式50
【0185】
次に、ステップS33の飲食および膀胱尿貯留等による異常値判定処理について、図28のサブルーチンフローチャートを参照して、詳述する。先ず、ステップS42において、演算兼制御部22は、記憶部24に記憶された次の式にて、体幹部インピーダンス(Ztm)が正常許容範囲内かのチェックを行う。
Mean−3SD≦Ztm≦Mean+3SD ・・・式51
ここで、許容値例としては、26.7±4.8(Mean±SD)に対して、±3SDが考えられる。
【0186】
ステップS43において、体幹部インピーダンスが許容範囲内かの判定がなされる。許容範囲内でないと判定される場合には、ステップS44に移行して、演算兼制御部22にて、体幹部(腹部)コンディション異常に関するメッセージ報知処理がなされ、表示部25bに適切なアドバイスの表示等がなされる。このアドバイスとしては、例えば、「体幹部コンディション異常につき、排便、排尿等の準備処理を実施」等の報知が考えられる。また、準備処理後も同様の判定結果となる場合は、異常値を用いて測定を完了させ、測定の中止はしないようにすることもできる。
【0187】
ステップS43において許容範囲内で判定される場合には、ステップS45において、演算兼制御部22は、体幹部(腹部)コンディション正常に関するメッセージ報知処理がなされ、表示部25bに適切なアドバイスの表示等がなされる。このアドバイスとしては、例えば、「体幹部コンディション正常」等の報知が考えられる。
【0188】
このような操作および動作にて、本発明によれば、体幹部(体幹部腹部)の内臓脂肪組織情報を求めることができ、しかも、呼吸による変動の影響除去処理や飲食および膀胱等への水分貯留(尿等)による異常判定処理を行い、それに応じたアドバイス情報も提供できる。なお、前述の実施例では、体幹部内臓脂肪組織情報として脂肪率として求めるものとしたが、本発明は、これに限らず、適当な変換式等を用いることにより、横断面積量や、体積量や重量等として求めることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0189】
本発明によれば、皮下脂肪組織厚計測部位と計測法を限定することにより、体幹部の皮下脂肪組織層情報を精度よく測定でき、また、高精度の測定皮下脂肪組織層情報を体幹部の内臓組織情報の推定に利用することにより、体幹部内臓脂肪組織を精度よく測定できる。
【0190】
本発明によれば、そのレベルに応じた内臓器組織付近付着、蓄積脂肪組織の蓄積具合を従来の簡易計測法を踏襲する中で、精度の高いスクリーニング情報を顕在化させることができる。
【0191】
本発明によれば、小型で簡便な装置にて体幹部内臓脂肪組織を精度よく測定できるので、家庭用として最適なものとすることもできる。しかも、測定前の腹部コンディションチェック、すなわち、内臓器組織等での炎症や病的な体液分布異常の早期チェック等も可能で、それに応じた適切な健康指針アドバイスも与えることができる。したがって、ユーザにとっては、食事および運動による日々のダイエットを適正に行い且つそのためのモチベーションを維持し、継続可能な健康の維持増進の自己管理をする上で役立つ諸情報を簡便な仕方で得ることができ、非常に有用なものとなる。
【符号の説明】
【0192】
1 体幹部内臓・皮下脂肪測定装置
2 本体部
3 体重測定部
4 腹部押当て電極部
4A 腹部電極押当て部
5 電気ケーブル
6 電気ケーブル
10a〜10m 電流印加電極
10A 電流印加電極
10B 電流印加電極
11a〜11m 電圧計測電極
15 腱膜部
A 臍
16 腹
21 電力供給部
22 演算兼制御部
23 部位インピーダンス測定部
24 記憶部
25 表示兼入力部
25a 入力部
25b 表示部
26 ブザー報知部
27 印刷部
31 載台
34 電圧計測電極
36 電圧計測電極
ZFS 皮下脂肪組織層部のインピーダンス
FS 皮下脂肪組織層の厚み
41 腹部押当てプレート
42 左手用グリップ
43 右手用グリップ
231 電流供給部
232 電流印加電極切替部
233 電圧計測切替部
234 電位差測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に一方の電流印加電極を配置し、該一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極を体幹部から突出する部位に配置し、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に一方の電圧計測電極を配置し、該一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極を、前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置して、体幹部のインピーダンスを測定することにより体幹部皮下脂肪組織層情報を求めることを特徴とする体幹部皮下脂肪測定方法。
【請求項2】
前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍囲周上の臍横と肩甲骨下部と腸骨稜上縁部の何れか又は全ての部位、または、臍囲周上の臍凹部と背骨部と腱膜部の何れか又は全ての部位、または、皮下脂肪組織沈着の最も大きい部位候補部と最も薄い部位との組み合わせ部位である請求項1に記載の体幹部皮下脂肪測定方法。
【請求項3】
前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍横と腱膜部と側腹部との3つの部位である請求項1に記載の体幹部皮下脂肪測定方法。
【請求項4】
前記体幹部から突出する部位は、四肢部または頭部または耳部のうちのいずれかである請求項1または2または3に記載の体幹部皮下脂肪測定方法。
【請求項5】
前記一方の電流印加電極に近接した位置は、該電流印加電極直下の広がり抵抗の影響が支配的な位置である請求項1から4のうちのいずれか1項に記載の体幹部皮下脂肪測定方法。
【請求項6】
身体特定化情報を得、かつ前記各電圧計測電極対の間の電位差を測定することにより、体幹腹部の前記各部の皮下脂肪組織層インピーダンスを求め、前記得た身体特定化情報と前記求めた各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスとに基いて体幹部の皮下脂肪組織量を求める請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の体幹部皮下脂肪測定方法。
【請求項7】
前記各電圧計測電極対の間の電位差を測定することにより、体幹腹部の前記各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスを求め、該求めた各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスに基づいて体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスを求め、該求めた体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部の皮下脂肪組織量を求める請求項1から5のうちのいずれか1項に記載の体幹部皮下脂肪測定方法。
【請求項8】
体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に配置される一方の電流印加電極と体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極とからなる少なくとも1組の電流印加電極対と、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に配置される一方の電圧計測電極と前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極とからなる少なくとも1組の電圧計測電極対とを備えており、体幹部のインピーダンスを測定することにより体幹部皮下脂肪組織層情報を求めることを特徴とする体幹部皮下脂肪測定装置。
【請求項9】
前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍囲周上の臍横と肩甲骨下部と腸骨稜上縁部の何れか又は全ての部位、または、臍囲周上の臍凹部と背骨部と腱膜部の何れか又は全ての部位、または、皮下脂肪組織沈着の最も大きい部位候補部と最も薄い部位との組み合わせ部位である請求項8に記載の体幹部皮下脂肪測定装置。
【請求項10】
前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍横と腱膜部と側腹部との3つの部位である請求項8に記載の体幹部皮下脂肪測定装置。
【請求項11】
前記体幹部から突出する部位は、四肢部または頭部または耳部のうちのいずれかである請求項8または9または10に記載の体幹部皮下脂肪測定装置。
【請求項12】
前記一方の電流印加電極に近接した位置は、該電流印加電極直下の広がり抵抗の影響が支配的な位置である請求項8から11のうちのいずれか1項に記載の体幹部皮下脂肪測定装置。
【請求項13】
身体特定化情報を取得する身体特定化情報取得手段と、前記各電圧計測電極対の間の電位差を測定し、体幹腹部の前記各部の皮下脂肪組織層インピーダンスを測定する体幹腹部部位皮下脂肪組織層インピーダンス測定手段と、前記取得された身体特定化情報と前記測定された各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスとに基いて体幹部の皮下脂肪組織量を推定する体幹部皮下脂肪組織量推定手段とを備える請求項8から12のうちのいずれか1項に記載の体幹部皮下脂肪測定装置。
【請求項14】
前記各電圧計測電極対の間の電位差を測定して、体幹腹部の前記各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスを測定する体幹腹部部位皮下脂肪組織層インピーダンス測定手段と、前記測定された各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスに基づいて体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスを推定する体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段と、該推定した体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部の皮下脂肪組織量を推定する体幹部皮下脂肪組織量推定手段とを備える請求項8から12のうちのいずれか1項に記載の体幹部皮下脂肪測定装置。
【請求項15】
体幹部内臓脂肪組織を測定するための体幹部内臓脂肪測定方法において、下肢部の生体インピーダンス、上肢部の生体インピーダンスおよび体幹部の生体インピーダンスを測定し、前記測定した下肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて下肢部骨格筋組織量を求め、前記測定した上肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて上肢部骨格筋組織量を求め、前記求めた下肢部骨格筋組織量および上肢部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織量を求め、該求めた体幹部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織層のインピーダンスを求め、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求め、身体特定化情報に基づいて体幹部内臓器組織のインピーダンスを求め、前記求めた体幹部の生体インピーダンスと、前記求めた体幹部骨格筋組織層のインピーダンス、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび体幹部の内臓器組織のインピーダンスとに基づいて体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスを求め、該求めた体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部内臓脂肪組織量を求める各段階を含み、前記体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求める段階は、体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に一方の電流印加電極を配置し、該一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極を体幹部から突出する部位に配置し、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に一方の電圧計測電極を配置し、該一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極を、前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置して、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求めることを含むことを特徴とする体幹部内臓脂肪測定方法。
【請求項16】
体幹部内臓脂肪組織を測定するための体幹部内臓脂肪測定方法において、下肢部の生体インピーダンス、上肢部の生体インピーダンスおよび体幹部の生体インピーダンスを測定し、前記測定した下肢部の生体インピーダンスおよび上肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織量を求め、該求めた体幹部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織層のインピーダンスを求め、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求め、身体特定化情報に基づいて体幹部内臓器組織のインピーダンスを求め、前記求めた体幹部の生体インピーダンスと、前記求めた体幹部骨格筋組織層のインピーダンス、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび体幹部内臓器組織のインピーダンスとに基づいて体幹内臓脂肪組織のインピーダンスを求め、該求めた体幹内臓脂肪組織のインピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部内臓脂肪組織量を求める各段階を含み、前記体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求める段階は、体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に一方の電流印加電極を配置し、該一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極を体幹部から突出する部位に配置し、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に一方の電圧計測電極を配置し、該一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極を、前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置して、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求めることを含むことを特徴とする体幹部内臓脂肪測定方法。
【請求項17】
前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍囲周上の臍横と肩甲骨下部と腸骨稜上縁部の何れか又は全ての部位、または、臍囲周上の臍凹部と背骨部と腱膜部の何れか又は全ての部位、または、皮下脂肪組織沈着の最も大きい部位候補部と最も薄い部位との組み合わせ部位である請求項15または16に記載の体幹部内臓脂肪測定方法。
【請求項18】
前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍横と腱膜部と側腹部との3つの部位である請求項15または16に記載の体幹部内臓脂肪測定方法。
【請求項19】
前記体幹部から突出する部位は、四肢部または頭部または耳部のうちのいずれかである請求項15から18のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定方法。
【請求項20】
前記一方の電流印加電極に近接した位置は、該電流印加電極直下の広がり抵抗の影響が支配的な位置である請求項15から19のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定方法。
【請求項21】
前記求めた体幹部の生体インピーダンスと、前記求めた体幹部骨格筋組織層のインピーダンス、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび体幹部の内臓器組織のインピーダンスとに基づいて体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスを求める段階は、体幹部の電気的等価回路が、前記体幹部の内臓器組織のインピーダンスと前記体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスとの直列回路に対して前記体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび前記体幹部骨格筋組織層のインピーダンスが並列に接続されたものとしている請求項15から20のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定方法。
【請求項22】
前記内臓器組織インピーダンスは、身体特定化情報から内臓器組織量を求め、前記内臓器組織量と身体特定化情報とに基づいて求められる請求項15から21のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定方法。
【請求項23】
前記身体特定化情報は、身体的な特徴を示す情報である請求項15から22のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定方法。
【請求項24】
前記身体的な特徴を示す情報は、身長、性別、体重、年齢、四肢長(下肢長、上肢長)、体幹部長(体幹中部長)、腹囲長、腹部幅、腹部厚等である請求項23に記載の体幹部内臓脂肪測定方法。
【請求項25】
体幹部内臓脂肪組織を測定するための体幹部内臓脂肪測定装置において、下肢部の生体インピーダンスを測定するための下肢部生体インピーダンス測定手段と、上肢部の生体インピーダンスを測定するための上肢部生体インピーダンス測定手段と、体幹部の生体インピーダンスを測定するための体幹部生体インピーダンス測定手段と、前記測定した下肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて下肢部骨格筋組織量を推定する下肢部骨格筋組織量推定手段と、前記測定した上肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて上肢部骨格筋組織量を推定する上肢部骨格筋組織量推定手段と、前記推定した下肢部骨格筋組織量および上肢部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織量を推定する体幹部骨格筋組織量推定手段と、前記推定した体幹部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織層のインピーダンスを推定する体幹部骨格筋組織層インピーダンス推定手段と、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを推定する体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段と、身体特定化情報に基づいて体幹部の内臓器組織のインピーダンスを推定する体幹部内臓器組織インピーダンス推定手段と、前記推定した体幹部の生体インピーダンスと、前記推定した体幹部骨格筋組織層のインピーダンス、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび体幹部の内臓器組織のインピーダンスとに基づいて体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスを推定する体幹部内臓脂肪組織インピーダンス推定手段と、前記推定した体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部内臓脂肪組織量を推定する体幹部内臓脂肪組織量推定手段とを備えており、前記体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段は、体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に配置される一方の電流印加電極と体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極とからなる少なくとも1組の電流印加電極対と、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に配置される一方の電圧計測電極と前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極とからなる少なくとも1組の電圧計測電極対とを備え、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求めることを特徴とする体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項26】
体幹部内臓脂肪組織を測定するための体幹部内臓脂肪測定装置において、下肢部の生体インピーダンスを測定するための下肢部生体インピーダンス測定手段と、上肢部の生体インピーダンスを測定するための上肢部生体インピーダンス測定手段と、体幹部の生体インピーダンスを測定するための体幹部生体インピーダンス測定手段と、前記測定した下肢部の生体インピーダンスおよび上肢部の生体インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織量を推定する体幹部骨格筋組織量推定手段と、前記推定した体幹部骨格筋組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部骨格筋組織層のインピーダンスを推定する体幹部骨格筋組織層インピーダンス推定手段と、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを推定する体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段と、身体特定化情報に基いて体幹部の内臓器組織のインピーダンスを推定する体幹部内臓器組織インピーダンス推定手段と、前記推定した体幹部の生体インピーダンスと、前記推定した体幹部骨格筋組織層のインピーダンス、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび体幹部の内臓器組織のインピーダンスとに基づいて体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスを推定する体幹部内臓脂肪組織インピーダンス推定手段と、前記推定した体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部内臓脂肪組織量を推定する体幹部内臓脂肪組織量推定手段とを備えており、前記体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段は、体幹腹部周囲上の皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い少なくとも1つの部位に配置される一方の電流印加電極と体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電流印加電極と対となる他方の電流印加電極とからなる少なくとも1組の電流印加電極対と、前記体幹腹部周囲上において前記一方の電流印加電極に近接した位置に配置される一方の電圧計測電極と前記他方の電流印加電極が配置される部位とは異なる前記体幹部から突出する部位に配置され前記一方の電圧計測電極と対となる他方の電圧計測電極とからなる少なくとも1組の電圧計測電極対とを備え、体幹部の皮下脂肪組織層のインピーダンスを求めることを特徴とする体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項27】
前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍囲周上の臍横と肩甲骨下部と腸骨稜上縁部の何れか又は全ての部位、または、臍囲周上の臍凹部と背骨部と腱膜部の何れか又は全ての部位、または、皮下脂肪組織沈着の最も大きい部位候補部と最も薄い部位との組み合わせ部位である請求項25または26に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項28】
前記皮下脂肪組織量を推定するのに有用性の高い部位は、臍横と腱膜部と側腹部との3つの部位である請求項25または26に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項29】
前記体幹部から突出する部位は、四肢部または頭部または耳部のうちのいずれかである請求項25から28のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項30】
前記一方の電流印加電極に近接した位置は、該電流印加電極直下の広がり抵抗の影響が支配的な位置である請求項25から29のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項31】
前記体幹部内臓脂肪組織インピーダンス推定手段は、体幹部の電気的等価回路が、前記体幹部の内臓器組織のインピーダンスと前記体幹部内臓脂肪組織のインピーダンスとの直列回路に対して前記体幹部部の皮下脂肪組織層のインピーダンスおよび前記体幹骨格筋組織層のインピーダンスが並列に接続されたものとして推定を行う請求項25から30のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項32】
前記体幹部内臓器組織インピーダンス推定手段は、身体特定化情報から体幹部の内臓器組織量を推定し、該推定した体幹部の内臓器組織量と身体特定化情報とに基づいて体幹部内臓器組織インピーダンスを推定する請求項25から31のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項33】
前記身体特定化情報は、身体的な特徴を示す情報である請求項25から32のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項34】
前記身体的な特徴を示す情報は、身長、性別、体重、年齢、四肢長(下肢長、上肢長)、体幹部長(体幹中部長)、腹囲長、腹部幅、腹部厚等である請求項23に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項35】
前記各電圧計測電極対の間の電位差を測定して、体幹腹部の前記各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスを測定する体幹腹部部位皮下脂肪組織層インピーダンス測定手段と、前記測定された各部位の皮下脂肪組織層インピーダンスに基づいて体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスを推定する体幹部皮下脂肪組織層インピーダンス推定手段と、該推定した体幹部の皮下脂肪組織層インピーダンスと身体特定化情報とに基づいて体幹部の皮下脂肪組織量を推定する体幹部皮下脂肪組織量推定手段とを備える請求項25から34のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項36】
前記推定した体幹部内臓脂肪組織量と前記推定した体幹部皮下脂肪組織量とから体幹腹部脂肪組織量を推定する体幹腹部脂肪組織量推定手段を更に備える請求項35に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項37】
前記推定した体幹部内臓脂肪組織量と前記推定した体幹部皮下脂肪組織量とから体幹部内臓脂肪/皮下脂肪比を推定する体幹部内臓脂肪/皮下脂肪比推定手段を更に備える請求項35または36に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項38】
呼吸周期時間より短いサンプリング周期で測定した体幹部の生体インピーダンスに基づいて呼吸による変動の影響を除去するための呼吸変動影響除去手段を更に備える請求項25から37のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項39】
前記測定した体幹部の生体インピーダンスを集団の一般的な値と比較することにより異常値判定処理を行う異常値判定処理手段を更に備える請求項25から38のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項40】
前記異常値判定処理手段による判定結果に基づいてアドバイス情報を表示する表示手段を更に備える請求項39に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項41】
前記体幹部内臓脂肪組織量は、体幹部内臓脂肪率で表される請求項25から40のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項42】
前記体幹部内臓脂肪組織量は、体幹部内臓脂肪組織横断面積で表される請求項25から40のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項43】
前記体幹部内臓脂肪組織量は、体幹部内臓脂肪組織体積量で表される請求項25から40のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。
【請求項44】
前記体幹部内臓脂肪組織量は、体幹部内臓脂肪組織重量で表される請求項25から40のうちのいずれか1項に記載の体幹部内臓脂肪測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2011−139951(P2011−139951A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96899(P2011−96899)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2005−201193(P2005−201193)の分割
【原出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】