説明

体液分析システムならびに体液分析のための画像処理装置および方法

体液分析システムは、ソース画像取得要素に制御信号を送る中央制御処理要素を備えており、ソース画像取得要素は、制御信号に従って体液のソース画像を取得し、当該ソース画像を中央制御処理要素に送る。中央制御処理要素は、ソース画像を画像係数に変換し、対応する係数マトリクスを生成するためにさらに用いられる。当該係数マトリクスは出力のために焦点融合画像に逆変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は体液分析に関する。特に、本発明は、画像ベースの自動化された体液顕微鏡分析装置に用いられる、画像処理装置および方法ならびに体液分析システムに関する。
【0002】
発明の背景
体液分析、特に尿沈渣鏡検は、腎臓、泌尿器および生殖器の診断を行うことができ、全体的な健康状態に関する臨床情報を提供することができるため、臨床において最も一般的な検査である。10種類以上の粒子を尿サンプル中に発見することができる。このような粒子としては、赤血球、白血球、剥離物、バクテリア、上皮細胞、結晶などが挙げられる(これらの粒子を以下「対象」という。)。形状およびサイズの異なるこれらの粒子は、種類の異なる要素の割合を反映するスペクトルを生成するために、同定および計数される必要があり、これらはしきい値または健康参照値と比較される。
【0003】
尿沈渣鏡検に関して、伝統的な人手による顕微鏡処理は、以下の問題に悩まされている。すなわち、非常に手間がかかり時間がかかること、沈降物処理が異なると得られる計数が非常に異なる場合があること、観察者が異なると検査標準の方法に違いがあること、などである。
【0004】
今世紀の初頭に開発され、AusmaCorp.により製造された自動尿沈渣顕微鏡分析装置の目的は、人手による検査方法を置き換え、精度とスループットを高めることであった。このAusmaシステムは、計数セル中の尿サンプルをスキャンし、光学顕微鏡に接続されたデジタルカメラを用いて尿サンプルの写真を撮るものである。分析プロセッサは、専用ソフトウェアを用いて対象の同定および計数を行う。対象の画像はそれぞれ、サイズ、形状、コントラストおよびテクスチャ特性に従って自動的に分類される。最終的な報告は種類に従って結果を表す。
【0005】
図1は、この従来技術における、尿サンプルを含む計数セルおよび顕微鏡の対物ガラスの側面図である。既存の分析装置においては、計数セルは、長さ(x軸方向)および幅(y軸方向)が数ミリ、高さ(z軸方向)が少なくとも100ミクロンの小さい長方形のセルである。直径が数ミクロンから数十ミクロンの様々な粒子がこの3次元空間内に分散している。この分散は特定の時間(たとえば1秒間)、静的であると仮定される。x−y軸方向の完全なスキャンと画像化を行う成熟した技術がある。しかし、z軸方向については、対物ガラスの被写界深度(DOF)が計数セルの高さよりもはるかに小さい。このため、z軸に垂直な異なる複数の層において対象を含む画像を収集することが必要となる。したがって、垂直方向における十分な解像度の撮像が、体液分析における基本的な画像収集の課題となっている。さらに、画像収集は、システムの精度の保証において重要なステップであるが、最も標準化されておらず、最も時間のかかるステップとなっている。画像収集にはまた最も高いスループットが要求されている(1時間当たり50〜100サンプル以上)。そして、DOFが不十分であるということが、画像の劣化を避けることをさらに難しいものとしている。対象が不鮮明なまたは抜けている画像は、同定の精度および計数の結果に大きく影響する。
【0006】
AVE Science and Technology Industry Co.,Ltdにより開発されたAusma AVE736の例を、Ausmaシステムの取得モジュールがどのように機能するかの具体的な説明として以下用いる。
【0007】
Ausma AVE736において、尿サンプルが計数セルにロードされた後、最初にサンプルがスキャンされ、低倍率の(x10)顕微鏡を用いて対象が検索される。報告は、標的が発見されなかった場合には直接生成され、この報告はこのサンプルが健康体の臨床標準を満たしていることを示す。標的が発見された場合、低倍率顕微鏡によって、粒子のうちでより大きい対象たとえば剥離物や上皮細胞の同定、分類、計数が行われ、各視野について1つの画像が取得され、保持される。次いで、低倍率顕微鏡により発見された標的をさらにトラッキングするために、高倍率の(x40)顕微鏡が用いられる。焦点面は対物ガラスとサンプルステージの機械的な調整によって調整される。自動焦点合わせに続いて、1つの画像が図2に示されるような各高倍率視野(HPF)について保持される。次いで、低倍率顕微鏡を用いて行われるやり方と同様にして対象の同定、分類、計数が行われ、保存された全ての画像は結合されて最終結果を形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この技術は、画像収集の間、低倍率顕微鏡と高倍率顕微鏡との間の前後の切換により全体的な効率を向上させ、ある程度までz軸方向のスキャンを行うことができる。しかし、x軸方向位置およびy軸方向位置は同じであるがz軸方向位置が異なる対象が存在する場合、抜けまたは不鮮明な画像となる可能性が高い。このことは、画像に基づく同定および計数を不確実なものとし、以降の処理に人手を加える必要がある(20%超の割合)。
【0009】
さらに、画像の標的がz軸方向の複数のDOFに位置している場合、最終的な画像は信用できないものとなる。すなわち、全体の画像の質を保証するため、部分部分の精度が犠牲となる。したがって、3次元空間全体にわたる鮮明な画像をいかにして得るかという問題について、危急に解決策が求められている。
【0010】
また、対物ガラスの機械的な調整は対象のスキャン速度または深度を制限する。Ausmaシステムの平均スループットは今のところ1時間当たり60サンプルである。いくつかのグループが、スキャンを行う顕微鏡のDOFを拡大するため、この技術におけるハードウェアおよびソフトウェア的な試みを行っている。光学顕微鏡の焦点調整において最も広く適用されている機構は、たとえば、対物ガラス全体を機械的に調整するものや、対物ガラスとサンプルとを相対的に動かすものである。z軸方向の満足できる解像度を得るため、多くの種類の機械的な焦点調整機構が開発されている(たとえば、PI社により開発されたピエゾZ軸対物ガラスグレーダ)。しかし、機械的な調整は全く信頼できない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記事情を鑑みて、本発明の主たる課題は、体液分析システムならびに体液分析のための画像処理装置および方法を提供することにある。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の技術的スキームは、
ソース画像取得要素に制御信号を送る中央制御処理要素を備えており、
ソース画像取得要素は、制御信号に従って体液のソース画像を取得し、当該ソース画像を中央制御処理要素に送り、
中央制御処理要素は、ソース画像を画像係数に変換し、対応する係数マトリクスを生成するためにさらに用いられ、当該係数マトリクスは出力のために焦点融合画像に逆変換される、体液分析システム、
により実現される。
【0013】
ソース画像取得要素は、制御信号に従って、1視野内の複数のスタック層に対応する体液のソース画像を顕微鏡を介して取得し、
中央制御処理要素は、各ソース画像を画像係数に変換し、1視野内の全てのソース画像に対応する画像係数から係数マトリクスを生成するために用いられる。
【0014】
中央制御処理要素は、
1視野内で取得される複数のスタック層に対応する体液ソース画像制御信号を送出する中央制御部と、
体液のソース画像を受信し、ソース画像から即時解像度を収集し、中央制御部に記憶する即時解像度収集要素と、を備えており、
中央制御部は、1視野内の全てのソース画像に対応する即時解像度から係数マトリクスを生成し、当該係数マトリクスを逆変換部に送るためにさらに用いられ、
逆変換部は、係数マトリクスを焦点融合画像に逆変換し、中央制御部に当該画像を保存する。
【0015】
中央制御部は、
ソース画像取得要素、即時解像度収集部および逆変換部の動作を制御する制御信号を送出するシステムコントローラと、
ソース画像、係数マトリクスおよび焦点融合画像を含む画像データを保存するメモリと、
を備える。
【0016】
即時解像度収集部は、
ソース画像取得要素により提供される同一ソースの画像を受信するサンプリング回路と、
ソース画像のウェーブレット分解を行うウェーブレット分解回路と、
分解された画像をウェーブレット係数に変換する離散ウェーブレット変換回路と、
を備える。
【0017】
逆変換部は、
中央制御部から係数マトリクスを取得し、そのうちから全ての波長スケールにおいて最大のウェーブレット係数を選択するウェーブレット係数比較回路と、
選択されたウェーブレット係数を保存するバッファメモリと、
逆離散ウェーブレット変換を実行して、選択されたウェーブレット係数を焦点融合画像に変換する逆離散ウェーブレット変換回路と、
を備える。
【0018】
画像取得要素は、組込型液体レンズと、液体レンズドライバと、シャッタと、駆動部と、センサと、A/D変換器と、を備え、
液体レンズドライバは、制御信号に従って、液体レンズの焦点距離を変化させ、
駆動部は、制御信号に従って、シャッタを駆動させ、
センサは、シャッタの駆動の後に、得られたセンサ信号をA/D変換器に送信し、
A/D変換器は、センサ信号のA/D変換の後に、中央制御処理要素に取得された体液のソース画像を提供する。
【0019】
1視野内で取得された複数のスタック層に対応する体液ソース画像制御信号を送出する中央制御部と、
体液のソース画像を受信し、ソース画像の即時解像度を収集し、中央制御部に保存する即時解像度収集部と、
中央制御部は、1視野内の全てのソース画像に対応する即時解像度から係数マトリクスを生成し、当該係数マトリクスを逆変換部に送出するためにさらに用いられ、
逆変換部は、係数マトリクスを焦点融合画像に逆変換し、中央制御部に当該画像を保存する、
体液分析のための画像処理装置。
【0020】
A.1視野内で取得された複数のスタック層に対応する体液ソース画像制御信号をソース画像取得要素に送出するステップと、
B.画像取得要素により提供される体液のソース画像を受信し、各ソース画像を画像係数に変換し、1視野内の全てのソース画像に対応する画像係数から係数マトリクスを生成するステップと、
C.係数マトリクスを出力のために焦点融合画像に逆変換するステップと、
を含む、体液分析のための画像処理方法。
【0021】
上記方法は、
D.ステップCの実行後に同期信号を送出し、全ての視野について処理が行われたときにステップEを実行し、そうでない場合次の視野についてステップAを実行するステップと、
E.全ての視野についての焦点融合画像を最終画像に結合するステップと、
をさらに含む。
【0022】
全ての視野についての焦点融合画像を最終画像に結合するステップは、各画像を離散ウェーブレット変換によってウェーブレットに変換するステップを含み、
係数マトリクスを焦点融合画像に逆変換するステップは、
係数マトリクスから全ての波長スケールについて最大のウェーブレット係数を選択するステップと、
選択されたウェーブレット係数を焦点融合画像に逆離散ウェーブレット変換するステップと、
を含む。
【0023】
上記体液とは、尿、血液、髄液、胸膜液、腹水、精液である。
【0024】
本発明が解決する課題とは、垂直方向における不十分な画像解像度による対象の抜けと不鮮明さが対象の効率的な同定を妨げ、これにより、体液分析システムの精度が低下することである。上記の技術的スキームから理解されるように、本発明は、スタックされるz軸方向の焦点面を画像融合により結合するシステム、装置および方法を提供することにより上記課題を克服する。結果として、本発明は、z軸方向全体のスタック後の全体的なDOF範囲を可能とし、これにより、システムの精度と画像の収集速度を向上させる。
【0025】
詳細には、本発明は、z軸方向にスタックされた複数の焦点面の超高速の画像収集を、対象指向の画像融合と組み合わせて、超高解像度(通常x400)で、極めて限られた被写界深度(DOF)で光学顕微鏡を使用することにより生じる焦点対象の抜けや不鮮明等の問題を解決し、これにより、DOFよりも大きい深度(30〜50倍)での、尿サンプルなどの体液サンプルの画像化を行うことができる。本発明は、画像対象が抜けたり不鮮明となる可能性を低減させ、同定の成功率を大きく向上させ、全体のシステムの精度を新たなレベルにまで上昇させる。さらに、本発明は、並行した画像収集および焦点融合を行うことにより、現実の処理時間を大きく低減させる。
【0026】
さらに、本発明は、迅速な焦点合わせを実現可能な液体レンズを採用する。測定される液体レンズの再焦点合わせ時間はナノ秒単位である。さらに、液体レンズは焦点合わせの制御に可動要素を使用しない。このため、液体レンズの慣性は機械的な調整のものと比較して無視できる。したがって、本発明は、より高速な画像収集を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来技術における尿サンプルを含む計数セルおよび対物レンズの側面図である。
【図2】従来技術における、各視野の自動焦点合わせの後の画像の取得の図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態における画像ベースの体液分析システムの要素図であり、(b)は本発明の実施形態における対物ガラス303の拡大図である。
【図4】本発明の実施形態における体液分析システムの機能図である。
【図5】本発明の実施形態に係る体液分析システムにおける中央制御機能を実現する要素401の要素図である。
【図6】本発明の実施形態における要素401の時間軸に沿った動作フロー図である。
【図7】本発明の実施形態に係る体液分析システムにおけるソース画像取得機能を実現する要素402の要素図である。
【図8】本発明の実施形態に係る体液分析システムにおけるソース画像の即時解像度収集機能を実現する要素403の要素図である。
【図9】本発明の実施形態に係る体液分析システムにおける逆変換機能を実現する要素404の要素図である。
【図10】DWTに基づく画像融合に関するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態について、添付図面を参照して以下詳細に説明し、当業者は上述のまたはこれに限られない本発明の特徴および利点について明確に理解できるであろう。
【0029】
本発明の課題、技術スキームおよび利点をより明確にし、より理解しやすいものとするため、本発明について図面を参照して以下に示す実施形態を通じてより詳細に記載する。
【0030】
図3(a)は本発明の実施形態における画像ベースの体液分析システムの要素図である。この体液分析システムの基本的動作について、尿をただ1つの例として記載する。勿論、このシステムは他の体液、たとえば、血液、髄液、胸膜液、腹水、精液などの分析にも用いることができる。
【0031】
図3(a)に示されるシステムにおいて、顕微鏡尿検査ソフトウェア301はカメラ302で取得された画像の分析および処理を行うものである。組込型液体レンズ3031の対物ガラス303はカメラ302に接続されている。この対物ガラス303はさらにズームレンズ3032を備えている。圧力源/液体レンズドライバ304は、液体レンズ3031を所望の焦点距離に調整する。尿サンプル306はローダ307によって自動的にサンプルステージ305上にロードされ、尿サンプル306は液体レンズ3031の対物ガラス303の視野内に置かれる。尿サンプルはアンローダ309によってアンロードされる。また、照明装置308はサンプルステージ305上に配置された尿サンプル306を照らす。
【0032】
図3(b)は、本発明の実施形態における対物レンズ303の拡大図である。図からわかるように、焦点調整を担う液体レンズ3031は、複数のガラス片から構成されており拡大に用いられるレンズ3032の内側に組み込まれている。図3(b)に示されるこの液体レンズ3031は、レンセラー工科大学においてCarlos A.LopezおよびAmir H.Hirsaによって開発されたものである。この液体レンズはシリンダ状の穴を用いて2つの滴を結合する。2つの滴の対向する湾曲が弾性力に似た力を生じ、液体レンズシステム全体を自然な振動子とする。1〜Nの焦点距離において、このシステムは共振を生じ、滴の形状は基本的に球状となる。このため、z軸方向にスタックされた焦点面の画像化に適している。
【0033】
液体レンズは「無限に変更可能な」焦点距離を有するズームレンズであると考えることができる。滴の表面形状が液体レンズシステムの焦点距離を決定するために用いられ、最終的に液体レンズがどのように光を焦点調整するのかを決定するために用いられる。換言すれば、滴の表面形状を変化させることにより、何らの可動部分を用いることなく焦点距離を調整することができる。これにより、所定範囲内の任意の画像表面を取得することができ、ある焦点位置から別の焦点位置にミリ秒単位で精確に調整を行うことができる。近年、組込型液体レンズの光学写真システムは自動焦点カメラに用いられているが、液体レンズは従来技術における顕微鏡システムに適用されるべきである。
【0034】
本発明においては、液体レンズは顕微鏡に組み込まれる。このようにして、画像収集の間、z軸方向の一連の焦点面におけるN個の画像を簡便に取得し、保持することができるが、各視野(FOV)内の各自動焦点画像面において1つの画像を取得することに限定されるものではない。これにより、効率の高い顕微鏡の焦点調整機構が確立される。Nは整数であり、その値はDOFの厚みにより計数セルの高さが分割された後の値に等しい。この値は対象についての明確な焦点調整を保証する。換言すれば、M個のFOVについて、MxN個の画像が収集され、保持される。
【0035】
z軸方向のスタック画像の収集が各視野について行われた後、z軸方向に沿って異なる焦点距離で取得されたN個のソース画像が1つに融合され、その結果、1つの焦点融合画像が各視野について得られる。この画像は1つの視野内の全ての対象の明瞭な画像を含むものである。すなわち、この画像は全てのソース画像よりも大きいDOFを有する。空間領域融合や変換領域融合などの種々の画像融合アルゴリズムが非常に発展している。これらのアルゴリズムの目的は最終的な画像を向上させ、アーチファクトをより少なくし、より高いコントラストとなるようにすることである。その後の対象の同定、分類および計数の処理は、一般的なソフトウェアアプリケーションを用いて行うことができる。最後に、全てのFOV画像が結合されて最終画像を形成する。特定の条件または使用シナリオによって、異なる種類の前処理または後処理を、異なる焦点融合アルゴリズムについて用いてもよい。この事項についてここでさらに言及する必要はない。
【0036】
以下では、高倍率レンズを用いる場合、画像取得の実行のため、図2に示すように、1つの視野(FOV)が複数の高倍率視野(HPF)に分割可能であることについて説明する。勿論、高倍率レンズを用いる前に、たとえばFOVのさらなる分割が必要であるか否かを決定するための対象の予備的なスキャンおよび調査として、前処理のために低倍率レンズを用いてもよい。
【0037】
図4は、本発明の実施形態における液体分析システムの機能図である。このシステムは、機能要素として、中央制御要素401と、画像取得要素402と、即時解像度収集要素403と、逆変換要素404と、出力要素405とを備える。
【0038】
中央制御要素401は、システム処理の制御、起動、同期、データ保存および他の同様の処理を実行する。詳細には、中央制御要素401は、画像取得要素402を起動する制御信号1を出力し、1つのDOFについての1つの写真を撮らせる。指定された焦点距離のセットが。たとえば、ユーザによって入力され、または、DOF画像収集端末によって自己適応的に生成される。自己適応型アプローチの場合、次の焦点距離は直近の画像の焦点の質に基づいて推定可能である。
【0039】
画像取得要素402は、1つのDOF画像2を取得し、この画像の即時解像度を得るため、これを即時解像度収集要素403に送る。即時解像度収集要素403は、得られた係数3を保存のために中央制御要素401に送るために用いられ、得られた係数3はその後アクセス可能である。要素401、402、403および404の間のやりとりは、中央制御要素401が係数マトリクス4を出力するまで、N回発生する(Nはz軸方向にスタックされた焦点面の数)。
【0040】
逆変換要素404は、係数マトリクス4を焦点融合画像5に逆変換し、保存のために中央制御要素に送る。
【0041】
さらに、中央制御要素401は、最終画像6を出力要素405に送り、最終出力画像として提供する。
【0042】
図5は、本発明の実施形態に係る体液分析システムにおける中央制御機能を実現する要素401の要素図である。この要素401は、システムコントローラ501とメモリ502とを備える。
【0043】
システムコントローラは図6に示される時系列に従って、画像収集処理を制御する。
【0044】
メモリ502は画像データを保存する。この画像データには、ソース画像、ウェーブレット係数マトリクス、焦点融合画像、出力画像が含まれる。
【0045】
図6は、本発明の実施形態における要素401の時間軸に沿った動作フロー図である。MはFOVの数であり、Nはスタック層の数であると仮定する。
【0046】
ステップ601:m番目のFOVの、画像X[m,1]〜X[m,N]の取得要求、画像X[m,1]〜X[m,N]のデジタル化、デジタル化された画像X[m,1]〜X[m,N]の保存のために、制御信号が送られる。mの値の範囲は1〜Mである。
【0047】
このステップでは、N個の画像が並行処理に似た方法で処理可能である。たとえば、画像X[m,1]のデジタル化の間、システムは同時に画像X[m,2]を取得することができる。すなわち、画像X[m,2]の取得は、画像X[m,1]の保存を待つ必要なく開始されうる。
【0048】
ステップ602:制御信号が送られ、X[m,1]〜X[m,n]がY[m]に融合される。ここで、Xはソース画像であり、Yは焦点融合画像である。
【0049】
ステップ603:同期信号が送られ、ステップ601に戻り、次のFOV画像の収集および融合が制御される。全てのFOV画像の収集および融合が完了した後、ステップ604に進む。
【0050】
ステップ604:制御信号が送られ、Y[1]〜Y[M]が最終画像に結合される。
【0051】
図7は、本発明の実施形態に係る体液分析システムにおけるソース画像収集機能を実現する要素402の要素図である。この要素402は、ズームレンズ701と、液体レンズ702と、シャッタ703と、センサ704と、A/D変換器705と、液体レンズドライバ706と、駆動ユニット707とを備える。この要素において、光(図7中破線にて示す)は、ズームレンズ701、液体レンズ702およびシャッタ703を連続して通過し、センサ704に達する。センサ704は画像化要素として機能し、A/D変換器705にセンサ信号を送る。具体的な要素を実現する際、CCDまたはCMOSセンサを用いることができる。
【0052】
図8は、本発明の実施形態に係る体液分析システムにおけるソース画像の即時解像度収集機能を実現する要素403の要素図である。この要素403は、サンプリング回路801と、ウェーブレット分解回路802と、離散ウェーブレット変換(DWT)回路803とを備える。
【0053】
サンプリング回路801は、要素402から送られる1DOFの画像を受け取り、これらの画像のデジタルサンプリングを行う。詳細には、これらのDOF画像はたとえば要素402のA/D変換器705により提供される。
【0054】
ウェーブレット分解回路802は、画像のウェーブレット分解を行う。
【0055】
離散ウェーブレット変換回路803は、分解画像をウェーブレット係数に変換する。
【0056】
図9は、本発明の実施形態に係る体液分析装置における逆変換機能を実現する要素404の要素図である。この要素404は、ウェーブレット係数比較回路901と、バッファメモリユニット902と、逆離散ウェーブレット変換(IDWT)回路903とを備える。
【0057】
ウェーブレット係数比較回路901は、係数マトリクスを受け取り、波長スケール毎に最も大きいウェーブレット係数を選択する。バッファメモリユニット902は、選択されたウェーブレット係数を保存する。IDWT回路903は、逆離散ウェーブレット変換を実行し、選択されたウェーブレット係数を焦点融合画像に変換する。
【0058】
詳細には、スタック層1〜NがK個のウェーブレットから構成され、これらのウェーブレットがW11〜WKNと番号付けされていると仮定して、要素403および要素404によって行われるDWTに基づく画像融合処理は図10に示されているようなものである。
【0059】
ステップ1001:DWTがk番目のウェーブレットWk1〜WkNについて行われる(kの値の範囲は1〜K)。
【0060】
ステップ1002:同一の波長スケールにおいて最大量のウェーブレット係数を選択し(すなわち、k番目のウェーブレット)、Ckとして保存する。ステップ1001に戻る。全てのK個のウェーブレットの処理が終了した後、ステップ1003を実行する。
【0061】
ステップ1003:最大量を有するウェーブレット係数C1〜CKについてIDWTを行う。
【0062】
ステップ1004:焦点融合画像を出力する。
【0063】
さらに、本発明の実施形態によれば、体液分析のための画像処理装置が提供される。この装置は、基本的に画像収集の制御および収集された画像の処理に用いられる。詳細には、この画像処理装置は、1視野内で取得される複数のスタック層に対応する体液ソース画像制御信号を送出する中央制御ユニットを備え、ソース画像は各スタック層について得られる。
【0064】
即時解像度収集ユニットは、体液ソース画像を収集し、これらのソース画像の即時解像度を収集し、中央制御ユニットにこれらを保存する。即時解像度とは、この画像の一種の画像係数とみなすことができる。
【0065】
中央制御ユニットは、1視野内の全てのソース画像に対応する即時解像度から係数マトリクスを生成し、この係数マトリクスを逆変換ユニットに送るために用いられる。
【0066】
逆変換ユニットは、係数マトリクスを焦点融合画像に逆変換し、中央制御ユニットに保存する。
【0067】
さらに、本発明の実施形態によれば、
A.1視野内で取得された複数のスタック層に対応する体液ソース画像制御信号をソース画像取得要素に送出するステップと、
B.画像取得要素により提供される体液のソース画像を受信し、各ソース画像を画像係数に変換し、1視野内の全てのソース画像に対応する画像係数から係数マトリクスを生成するステップと、
C.係数マトリクスを出力のために焦点融合画像に逆変換するステップと、
を含むことを特徴とする、体液分析のための画像処理方法
が提供される。
【0068】
この方法は、
D.ステップCの実行後に同期信号を送出し、全ての視野について処理が行われたときにステップEを実行し、そうでない場合次の視野についてステップAを実行するステップと、
E.全ての視野についての焦点融合画像を最終画像に結合するステップと、
をさらに含む。
【0069】
詳細には、全ての視野についての焦点融合画像を最終画像に結合するステップは、各画像を離散ウェーブレット変換によってウェーブレットに変換するステップを含む。
【0070】
係数マトリクスを焦点融合画像に逆変換するステップは、
係数マトリクスから全ての波長スケールについて最大のウェーブレット係数を選択するステップと、
選択されたウェーブレット係数を焦点融合画像に逆離散ウェーブレット変換するステップと、
を含む。
【0071】
実施形態から、以下のことが明らかである。
【0072】
1.本発明は、高精細かつ高速の、十分に自動化された体液分析システムを提供するものであり、画像化モジュールにおける画像対象が抜けたり不明瞭となる可能性を低下させ、これにより、分析および同定の精度を向上させる。さらに、本発明は、臨床的な書類および基準として用いることのできる高品質の画像を提供しうる。
【0073】
2.本発明に係る、液体レンズを備える対物レンズは簡単な構造であり、操作が容易である。高電圧や他の特殊な方法で起動される必要がない。このため、この設計は実用的である。レンズ焦点距離の機械的調整は、電子的なタイミング制御に置き換えられる。結果は、簡便であり高速である。
【0074】
3.本発明は、幅広く適用可能である。本発明は、尿の分析にのみ適用可能なものではなく、血液、髄液、胸膜液、腹水、精液等の他の体液および他の溶液や懸濁液の分析に容易に拡張可能である。
【0075】
上記のものは、本発明の単なる好適な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲を限定することを意図するものではない。本発明の主旨および原理に従って、いかなる修正、均等物による置換または改善も本発明の保護範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
3031 液体レンズ、 401 中央制御要素、 402 ソース画像取得要素、 403 即時解像度収集要素、 404 逆変換要素、 801 サンプリング回路、 802 ウェーブレット分解回路、 803 離散ウェーブレット変換回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース画像取得要素に制御信号を送る中央制御処理要素を備えており、
前記ソース画像取得要素は、前記制御信号に従って体液のソース画像を取得し、当該ソース画像を前記中央制御処理要素に送り、
前記中央制御処理要素は、前記ソース画像を画像係数に変換し、対応する係数マトリクスを生成するためにさらに用いられ、当該係数マトリクスは出力のために焦点融合画像に逆変換される、
ことを特徴とする体液分析システム。
【請求項2】
前記ソース画像取得要素は、前記制御信号に従って、1視野内の複数のスタック層に対応する体液のソース画像を顕微鏡を介して取得し、
前記中央制御処理要素は、各ソース画像を画像係数に変換し、1視野内の全てのソース画像に対応する前記画像係数から係数マトリクスを生成するために用いられる、
請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記中央制御処理要素は、
1視野内で取得される複数のスタック層に対応する体液ソース画像制御信号を送出する中央制御部と、
体液のソース画像を受信し、前記ソース画像から即時解像度を収集し、前記中央制御部に記憶する即時解像度収集要素と、を備えており、
前記中央制御部は、1視野内の全てのソース画像に対応する即時解像度から係数マトリクスを生成し、当該係数マトリクスを逆変換部に送るためにさらに用いられ、
前記逆変換部は、前記係数マトリクスを焦点融合画像に逆変換し、前記中央制御部に当該画像を保存する、
請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記中央制御部は、
前記ソース画像取得要素、前記即時解像度収集部および前記逆変換部の動作を制御する制御信号を送出するシステムコントローラと、
ソース画像、係数マトリクスおよび焦点融合画像を含む画像データを保存するメモリと、
を備える、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記即時解像度収集部は、
前記ソース画像取得要素により提供される同一ソースの画像を受信するサンプリング回路と、
前記ソース画像のウェーブレット分解を行うウェーブレット分解回路と、
前記の分解された画像をウェーブレット係数に変換する離散ウェーブレット変換回路と、
を備える、請求項3記載のシステム。
【請求項6】
前記逆変換部は、
前記中央制御部から係数マトリクスを取得し、そのうちから全ての波長スケールにおいて最大のウェーブレット係数を選択するウェーブレット係数比較回路と、
前記選択されたウェーブレット係数を保存するバッファメモリと、
逆離散ウェーブレット変換を実行して、選択されたウェーブレット係数を焦点融合画像に変換する逆離散ウェーブレット変換回路と、
を備える、請求項3記載のシステム。
【請求項7】
前記画像取得要素は、組込型液体レンズと、液体レンズドライバと、シャッタと、駆動部と、センサと、A/D変換器と、を備え、
前記液体レンズドライバは、前記制御信号に従って、前記液体レンズの焦点距離を変化させ、
前記駆動部は、前記制御信号に従って、前記シャッタを駆動させ、
前記センサは、前記シャッタの駆動の後に、得られたセンサ信号を前記A/D変換器に送信し、
前記A/D変換器は、前記センサ信号のA/D変換の後に、前記中央制御処理要素に取得された体液のソース画像を提供する、
請求項1〜6のいずれか1項記載のシステム。
【請求項8】
1視野内で取得された複数のスタック層に対応する体液ソース画像制御信号を送出する中央制御部と、
体液のソース画像を受信し、前記ソース画像の即時解像度を収集し、前記中央制御部に保存する即時解像度収集部と、
前記中央制御部は、1視野内の全てのソース画像に対応する即時解像度から係数マトリクスを生成し、当該係数マトリクスを逆変換部に送出するためにさらに用いられ、
前記逆変換部は、前記係数マトリクスを焦点融合画像に逆変換し、前記中央制御部に当該画像を保存する、
体液分析のための画像処理装置。
【請求項9】
A.1視野内で取得された複数のスタック層に対応する体液ソース画像制御信号をソース画像取得要素に送出するステップと、
B.前記画像取得要素により提供される体液のソース画像を受信し、各ソース画像を画像係数に変換し、1視野内の全てのソース画像に対応する画像係数から係数マトリクスを生成するステップと、
C.前記係数マトリクスを出力のために焦点融合画像に逆変換するステップと、
を含むことを特徴とする、体液分析のための画像処理方法。
【請求項10】
D.ステップCの実行後に同期信号を送出し、全ての視野について処理が行われたときにステップEを実行し、そうでない場合次の視野についてステップAを実行するステップと、
E.全ての視野についての焦点融合画像を最終画像に結合するステップと、
をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記の全ての視野についての焦点融合画像を最終画像に結合するステップは、各画像を離散ウェーブレット変換によってウェーブレットに変換するステップを含み、
前記の係数マトリクスを焦点融合画像に逆変換するステップは、
前記係数マトリクスから全ての波長スケールについて最大のウェーブレット係数を選択するステップと、
前記選択されたウェーブレット係数を焦点融合画像に逆離散ウェーブレット変換するステップと、
を含む、
請求項9記載の方法。
【請求項12】
前記体液は、尿、血液、髄液、胸膜液、腹水、精液である、請求項9記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−531608(P2012−531608A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518099(P2012−518099)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【国際出願番号】PCT/EP2010/065672
【国際公開番号】WO2011/051134
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(390039413)シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト (2,104)
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Wittelsbacherplatz 2, D−80333 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】