説明

体液吸収性物品

【課題】広い範囲で体液を吸収することのできる体液吸収性物品の提供。
【解決手段】体液吸収性物品1における吸収体4が互いに重なり合う上方吸収部11と下方吸収部12とを有する。吸収体4はまた、体液の拡散手段として、上方吸収部11にあって下方吸収部12に接触するスキン層および下方吸収部12にあって上方吸収部11に接触するスキン層12aのいずれか一方のスキン層を含む。そのいずれか一方のスキン層は、いずれか一方のスキン層の直上部分および直下部分における体液の拡散速度よりも速い体液の拡散速度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、吸尿パッドや生理用ナプキン等として使用可能な体液吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
体液吸収性物品の一つとして、生理用ナプキンは従来周知であり、生理用ナプキンにおける吸収体に中高なものがあることは公知である。
【0003】
たとえば、特開2002−238948号公報(P2002−238948A、特許文献1)に記載の吸収性物品は、生理用ナプキンを一例とするもので、吸収体は上層吸収体と、上層吸収体より小型に形成されていて上層吸収体に積層されている下層吸収体とを有する。この生理用ナプキンは、着用者の肌側に向けられる面に凸状の中高部を有する。
【0004】
また、特開2008−6203号公報(P2008−6203A、特許文献2)に記載の吸収性物品は、生理用ナプキンを一例とするもので、吸収体には、第1中高部と、第2中高部とが形成されている。第1中高部は、吸収体の厚さがその周囲よりも厚く形成されている部分であり、第2中高部は第1中高部の上にあって第1中高部よりも吸収体が厚く形成されている。この吸収体を作るには、下層吸収体を部分的に圧搾し、その圧搾した部分に上層吸収体を積層する。下層吸収体は第1中高部を形成し、下層吸収体とそれに積層した上層吸収体とで第2中高部を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−238948号公報(P2002−238948A)
【特許文献2】特開2008−6203号公報(P2008−6203A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
吸収体に中高部が形成してある生理用ナプキン等の体液吸収性物品は、その中高部を着用者の体液排泄部に密着させることが容易であり、その中高部で排泄物を集中的に捕捉することができる。しかし、通常、中高部は吸水性繊維または吸水性繊維と高吸水性ポリマー粒子との混合物が集合している部分であって、中高部で捕捉された体液は、中高部の周囲部分へ速やかに拡散するということが難しい。その結果として、体液吸収性物品は、体液を未だ吸収していない部分があるにもかかわらず、その着用者に強い湿潤感を与えるということがある。
【0007】
そこで、この発明は、吸収体が中高になるように形成されている場合であっても、吸収体の広い範囲で体液を吸収し得るように、従来の体液吸収性物品に改良を施すことを課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、この発明には第1発明〜第3発明がある。これら第1〜第3発明は、体液吸収性物品であって、長さ方向と幅方向と厚さ方向とを有し、前記厚さ方向において透液性のトップシートと透液性および不透液性いずれかのバックシートとの間に吸収体が介在し、前記吸収体が、吸水性繊維として少なくとも粉砕パルプを含む吸水性材料の集合体をラッピングシートで被覆したものであって、体液の拡散を容易にする拡散手段を有し、前記ラッピングシートが少なくとも前記厚さ方向の上方に位置する部分において透液性である体液吸収性物品を対象にしている。
【0009】
前記第1発明が特徴とするところは、以下のとおりである。すなわち、前記吸収体は、前記ラッピングシートの内側にあって前記厚さ方向で互いに重なり合う上方吸収部と下方吸収部とを有し、かつ、前記拡散手段として、前記上方吸収部にあって前記下方吸収部に接触するスキン層および前記下方吸収部にあって前記上方吸収部に接触するスキン層のいずれかのスキン層を含む。前記吸収体における前記長さ方向および前記幅方向のいずれかの方向での前記体液の拡散速度は、前記いずれかのスキン層における前記拡散速度が、前記いずれかのスキン層の直上部分および直下部分における前記拡散速度よりも速い。
【0010】
第1発明の実施態様の一つにおいて、前記いずれかのスキン層では、前記吸水性繊維が前記いずれか一方のスキン層において、前記長さ方向および前記幅方向のうちの少なくとも一方向へ横たわるように延びていることによって、前記拡散速度が速くなっている。
【0011】
第1発明の実施態様の他の一つにおいて、前記上方吸収部と前記下方吸収部とが高吸水性ポリマー粒子を含み、前記上方吸収部における前記高吸水性ポリマー粒子の含有率が前記下方吸収部における前記高吸水性ポリマー粒子の含有率よりも低い。
【0012】
第1発明の実施態様の他の一つにおいて、前記いずれかのスキン層は、前記高吸水性ポリマー粒子を含むことのない層である。
【0013】
第1発明の実施態様の他の一つにおいて、前記上方吸収部と前記下方吸収部とは、前記長さ方向および前記幅方向の少なくとも一方の方向における中央部分が前記少なくとも一方の方向において前記中央部分を挟む両側部分よりも厚さが厚く形成されている。
【0014】
第1発明の実施態様の他の一つにおいて、前記上方吸収部と前記下方吸収部とのそれぞれにおいて、前記中央部分には前記吸水性繊維を単位面積当たりの質量で300〜400g/m含む部位が形成され、前記両側部分には前記吸水性繊維を単位面積当たりの質量で100〜250g/m含む部位が形成されている。
【0015】
第1発明の実施態様の他の一つにおいて、前記上方吸収部と前記下方吸収部とのそれぞれが35〜75重量%の前記高吸水性ポリマー粒子を含んでいる。
【0016】
第2発明が特徴とするところは、以下のとおりである。すなわち、前記長さ方向には、前記拡散手段として、前記吸収体を前記厚さ方向において部分的に圧搾することにより形成された複数の圧搾部位が間欠的に並ぶ。前記圧搾部位それぞれの面積は、前記長さ方向の中央部から前記長さ方向の端部に向かって次第に大きくなるように形成されている。
【0017】
第2発明の実施態様の一つにおいて、複数の前記圧搾部位が前記吸収体における前記幅方向の中央部に形成されている。
【0018】
第2発明の実施態様の他の一つにおいて、複数の前記圧搾部位が前記吸収体の前記幅方向の両側それぞれに形成されている。
【0019】
第2発明の実施態様の他の一つにおいて、前記吸収体の前記端部における前記幅方向には、前記幅方向の中央部に形成されている前記圧搾部位の側方にも、前記吸収体を前記厚さ方向において部分的に圧搾することにより、第2の圧搾部位が形成されている。
【0020】
第2発明の実施態様の他の一つにおいて、前記吸収体の厚さは、前記長さ方向の中央部から前記端部に向かって次第に薄くなるように形成されていて、前記長さ方向に並ぶ前記複数の前記圧搾部位の密度は前記長さ方向の中央部から前記端部に向かって高くなるように変化している。
【0021】
第2発明の実施態様の他の一つにおいて、前記吸収体は、前記ラッピングシートの内側にあって記厚さ方向で重なり合う上方吸収部と下方吸収部とによって形成され、前記圧搾部位は、前記吸収体を前記上方吸収部および前記下方吸収部の一方から他方に向かって圧搾することにより形成されている。
【0022】
第3発明が特徴とするところは、以下のとおりである。すなわち、前記長さ方向には、前記拡散手段として、前記吸収体を前記厚さ方向において部分的に圧搾することにより形成された複数の圧搾部位が間欠的に並ぶ。前記圧搾部位それぞれの密度は前記長さ方向の中央部から前記長さ方向の端部に向かって次第に高くなるように形成されている。
【発明の効果】
【0023】
この発明のうちの第1発明に係る体液吸収性物品では、吸収体が、上方吸収部にあって下方吸収部に接触するスキン層および下方吸収部にあって上方吸収部に接触するスキン層のうちのいずれか一方のスキン層を含む。いずれか一方のスキン層は、そこでの体液の拡散速度が、いずれか一方のスキン層の直上部分および直下部分における体液の拡散速度よりも速くなっている。上方吸収部において吸収した体液が下方吸収部に向かって移行するときに、そのいずれか一方のスキン層に到達すると、体液はいずれか一方のスキン層において体液吸収性物品の長さ方向および/または幅方向へ拡散しながら下方吸収部へと移行することが可能になる。その結果として、吸収体は、たとえばその長さ方向の両端部分を含む広い範囲で体液を吸収保持することができる。
【0024】
この発明のうちの第2発明に係る体液吸収性物品では、体液拡散手段として、体液吸収性物品の長さ方向に間欠的に並ぶ圧搾部位を有する。圧搾部位それぞれの面積は長さ方向の中央部から端部に向かって次第に大きくなるので、その中央部で排泄された体液は、圧搾部位周囲の密度の低い部位から圧搾部位へと集まり、さらにその体液は長さ方向の端部に形成された面積の広い圧搾部位へと拡散するので、吸収体の端部を含む広い範囲において体液の吸収が可能になる。
【0025】
この発明のうちの第3発明に係る体液吸収性物品では、体液拡散手段として、体液吸収性物品の長さ方向に間欠的に並ぶ圧搾部位を有する。圧搾部位それぞれの密度は長さ方向の中央部から端部に向かって次第に高くなるので、その中央部で排泄された体液は、圧搾部位周囲の密度の低い部位から圧搾部位へと集まり、さらにその体液は長さ方向の端部に形成された密度の高い圧搾部位へと拡散するので、吸収体の端部を含む広い範囲において体液の吸収が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】体液吸収性物品(吸尿パッド)の部分破断斜視図。
【図2】図1のII−II線切断面を示す図。
【図3】図1のIII−III線切断面を示す図。
【図4】実施態様の一例を示す図3と同様な図。
【図5】体液吸収性物品の製造工程の一例を示す図。
【図6】実施態様の一例を示す図1と同様な図。
【図7】実施態様の一例を示す図3と同様な図。
【図8】実施態様の一例を示す図1と同様な図。
【図9】図8のIX−IX線切断面を示す図。
【図10】実施態様の一例を示す図8と同様な図。
【図11】実施態様の一例を示す図9と同様な図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明に係る体液吸収性物品の一例として吸尿パッドを例にとり、その詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0028】
図1は、吸尿パッド1の部分破断斜視図である。このパッド1は、長さ方向Aと幅方向Bと厚さ方向Cとを有し、厚さ方向Cの上方には透液性のトップシート2が位置し、下方には不透液性のバックシート3が位置し、トップシート2とバックシート3との間には体液吸収性の吸収体4が介在している。トップシート2とバックシート3とは吸収体4の周囲から延出して互いに重なり合い、ホットメルト接着剤(図示せず)を介して互いに接合している。パッド1は、ほぼ矩形に形成され、吸収体4もまたほぼ矩形に形成されている。かようなパッド1はまた、その長さを二等分して幅方向Bへ延びる幅方向中心線Pと幅を二等分して長さ方向Aへ延びる長さ方向中心線Qとに関して対称に形成され、幅方向中心線Pの近傍の部位である中央部分6において厚さが厚く、長さ方向Aにおける両端部分7,8において厚さが薄くなるように形成されており、その意味において中高なパッドと呼ぶことのできるものである。吸尿パッド1は、パンツやおむつカバー、おむつ等の着用物品を使用して着用することができる。
【0029】
図2は、図1のII−II線に沿ったパッド1の切断面を示す図であって、II−II線は幅方向中心線Pに一致している。図2において、トップシート2とバックシート3との間に介在する吸収体4は、積層状態にある体液吸収性の上方吸収部11と体液吸収性の下方吸収部12とを含み、これらの両吸収部11,12がラッピングシート13によって被覆されている。
【0030】
上方吸収部11は、吸水性繊維21として少なくとも粉砕パルプを含む吸水性材料の集合体である。上方吸収部11はまた、レーヨン繊維等の半合成繊維のステープル、熱可塑性合成繊維のステープル、親水化処理された熱可塑性合成繊維のステープル等の繊維や高吸水性ポリマー粒子22を含むことができる。パッド1の厚さ方向Cにおいて、上方吸収部11は上方スキン層11aと、上方スキン層11aの直下に位置する上方吸収層11bとを有する。上方スキン層11aは、上方吸収部11の頂面部分を形成している薄層状の部分であって、ラッピングシート13のうちの第1ラッピングシート13aに密着している。上方スキン層11aでは、吸水性繊維21を形成しているステープルおよび/または粉砕パルプが集積しているのであるが、それらの繊維は頂面部分の広がる方向へ延びた状態にある。上方吸収層11bは、上方吸収部11の底面部分11dを含み、上方吸収部11の厚さの大部分を占めている部位であって、底面部分11dは下方吸収部12に密着している。上方吸収層11bでは、前記ステープルおよび/または粉砕パルプが集積しているのであるが、その集積している状態には規則性がない。上方スキン層11aは、高吸水性ポリマー粒子22を含まないことが好ましい部位であって、上方吸収部11に含まれる高吸水性ポリマー粒子22は、そのほとんどすべてが上方吸収層11bに存在している。上方スキン層11aにおいて水分を吸収した高吸水性ポリマー粒子22がゲルブロックを形成すると、そのゲルブロックは吸収体4における体液の吸収の妨げになる。
【0031】
下方吸収部12もまた、吸水性材料の集合体であって吸水性繊維21を含む他に、熱可塑性合成繊維のステープルや高吸水性ポリマー粒子22を含むことができる。厚さ方向Cにおいて、下方吸収部12は下方スキン層12aと、下方スキン層12aの直下に位置する下方吸収層12bとを有する。下方スキン層12aは、下方吸収部12の頂面部分を形成している薄層状の部位であって、上方吸収部11の底面部分11dに密着している。下方スキン層12aでは、吸水性繊維21を形成しているステープルおよび/または粉砕パルプが集積しているのであるが、そのステープルおよび/または粉砕パルプは頂面部分の広がる方向へ延びた状態で集積している。下方吸収層12bは、下方吸収部12の厚さの大部分を占めている部位であって、ラッピングシート13のうちの第2ラッピングシート13bに密着している。下方吸収層12bでは、ステープルおよび/または粉砕パルプが集積する状態に規則性がない。下方スキン層12aは、下方吸収部12にあっても、高吸水性ポリマー粒子22を含まないことが好ましい部位であって、下方吸収部12に含まれる高吸水性ポリマー粒子22は、そのほとんどすべてが下方吸収層12bに存在している。下方スキン層12aにおいて、水分を吸収した高吸水性ポリマー22がゲルブロックを形成すると、そのゲルブロックは上方吸収部11から下方吸収部12に向かっての体液の移行の妨げになる。
【0032】
重なり合う上方吸収部11と下方吸収部12とは、上下二枚の第1ラッピングシート13a,13bによって包まれている。ラッピングシート13のうちで上方吸収部11に密着している第1ラッピングシート13aは透液性である。下方吸収部12における下方吸収層12bは、第2ラッピングシート13bに密着している。第2ラッピングシート13bは、透液性または不透液性の部分である。透液性の第1,第2ラッピングシート13aと13bとには、ティッシュペーパや透液性の不織布、透液性の開孔プラスチックフィルム等を使用することができる。不透液性の第2ラッピングシート13bには、不透液性のプラスチックフィルムや不透液性の不織布等を使用することができる。第2ラッピングシート13bが不透液性のものである場合には、バックシート3として透液性のものを使用することが可能になる。図2において、トップシート2と第1ラッピングシート13a、第1ラッピングシート13aと上方吸収部11、下方吸収部12と第2ラッピングシート13b、および第2ラッピングシート13bとバックシート3は、ホットメルト接着剤を使用して接合することができる。ただし、図2では、そのような接着剤の使用されていない例が示されている。
【0033】
図3は、図1のIII−III線に沿うパッド1の切断面を示す図であって、そのIII−III線は長さ方向中心線Qに一致している。上方吸収部11は、パッド1の中央部分6に位置する第1上方部分31がほぼ一様な厚さで厚く形成され、パッド1の両端部分7,8に位置する第2,第3上方部分32,33が薄く形成され、第1上方部分31と第2上方部分32との間の部分34および第1上方部分31と第3上方部分33との間の部分35において、厚さが徐々に変化している。上方吸収部11は、第1,第2,第3上方部分31,32,33および部分34,35の全体に上方スキン層11aと上方吸収層11bとが形成されている。第1上方部分31は上方吸収部11における長さ方向Aの中央部分であり、第2,第3上方部分32,33は上方吸収部11における両端部分であって長さ方向Aにおいて第1上方部分31を介して対向している。
【0034】
下方吸収部12は、パッド1の中央部分6に位置する第1下方部分41がほぼ一様な厚さで厚く形成され、パッド1の両端部分7,8に位置する第2,第3下方部分42,43が薄く形成され、第1下方部分41と第2下方部分42との間の部分44、および第1下方部分41と第3下方部分43との間の部分45において厚さが徐々に変化している。下方吸収部12は、第1,第2,第3下方部分41,42,43および部分44,45の全体に下方スキン層12aと下方吸収層12bとが形成されている。第1下方部分41は下方吸収部12における長さ方向Aの中央部分でもあって、第2,第3下方部分42,43は下方吸収部12における両端部分であって長さ方向Aにおいて第1下方部分41を介して対向している。
【0035】
図2,3に示されているように、上方吸収部11と下方吸収部12とは、幅方向中心線Pに沿う幅W,Wを有し(図2参照)、長さ方向中心線Qに沿う長さL,Mを有する(図3参照)。パッド1の中央部分6に位置する上方吸収部11の第1上方部分31と下方吸収部12の第1下方部分41とは、長さ方向中心線Qに沿う長さL,Mを有する。これらの寸法は、パッド1の着用者の年齢層を考慮して適宜定めることができるが、そのパッド1が成人用のものである場合の一例において、上方吸収部11の幅Wは40〜100mmに設定することができる。上方吸収部11の長さLは、200〜300mmに設定することができ、長さLは長さLの40〜80%に設定することができる。また、下方吸収部12の幅Wは図示例の如く幅Wと同じ寸法に設定することができる他に、幅Wよりも小さくしたり大きくしたりすることができる。下方吸収部12の長さMは、長さLと同じ寸法にすることも可能であるが、たとえば長さLよりも20〜40mm長くして、上方吸収部11と下方吸収部12とを図3の如くに積層したときに、パッド1の中央部分6と両端部分7,8との間において、パッド1の厚さを徐々に変化させることもできる。
【0036】
パッド1の好ましい一例において、第1上方部分31と第1下方部分41とは単位面積当たりの質量が300〜400g/mの範囲にある吸水性繊維21を含み、第2、第3上方部分32,33と第2、第3下方部分42,43とは単位面積当たりの質量が100〜250g/mの範囲にある吸水性繊維21を含んでいる。また、上方吸収部11と下方吸収部12とが高吸水性ポリマー粒子22を含む場合において、吸収部11,12それぞれにおける高吸水性ポリマー粒子22の含有率は35〜75重量%であることが好ましい。
【0037】
上方吸収部11と下方吸収部12とにおける高吸水性ポリマー粒子22の含有率を測定する方法の一例では、それぞれの吸収部11,12から20×20mmの大きさの試片を切り取って秤量した後に、その試片をほぐして5〜10倍の拡大鏡で観察しながら高吸水性ポリマー粒子22と吸水性繊維21とを選り分けて、それぞれを秤量する。しかる後に、上方吸収部11または下方吸収部12における高吸水性ポリマー粒子22の割合、すなわち含有率を計算する。
【0038】
高吸水性ポリマー粒子22の含有率を測定する他の方法の一例は、下記のとおりである。
(1)測定対象とする上方吸収部11または下方吸収部12をほぐして吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22とをそれぞれ約1gずつサンプリングして秤量し、得られた値のそれぞれを吸水性繊維21の乾燥質量と高吸水性ポリマー粒子22の乾燥質量とする。
(2)サンプリングした吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22とのそれぞれを別々の250メッシュのナイロン袋に入れて、生理食塩水500ml中に30分間浸漬する。
(3)その後にナイロン袋それぞれを15分間室内に吊して水切りをし、次いで秤量して吸水性繊維21の入ったナイロン袋の質量Rと、高吸水性ポリマー粒子22の入ったナイロン袋の質量Rとを求め、次式によって、吸水性繊維21の吸水率Qと、高吸水性ポリマー粒子の吸水率Qとを算出する。

吸水性繊維の吸水率Q(g/g)={質量R−(ナイロン袋の質量)−(吸水性繊維21の乾燥質量)}/(吸水性繊維21の乾燥質量)

高吸水性ポリマー粒子22の吸水率Q(g/g)={質量R−(ナイロン袋の質量)−(高吸水性ポリマー粒子22の乾燥質量)}/(高吸水性ポリマー粒子22の乾燥質量)

(4)次に、上方吸収部11または下方吸収部12から30×30mmの測定用試片を切り取って秤量し、得られた値を試片の乾燥質量Wとする。その試片に含まれる吸水性繊維21の乾燥質量をWとし、高吸水性ポリマー粒子22の乾燥質量をWとする。
(5)試片を250メッシュのナイロン袋に入れて、生理食塩水500ml中に30分間浸漬した後に、15分間室内に吊して水切りをしてから秤量し、吸水した試片の吸水質量Wを求め、乾燥質量Wと吸水質量Wとから試片の吸水量T(g)を求め、さらに次式から吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22との乾燥質量WとWとを求める。

=W+W
=W−W
=Q・W+Q・W=Q・W+Q(W−W)=(Q−Q)・W+Q・W
=(T−Q・W)/(Q−Q
=W−{(T−Q・W)/(Q−Q)}

上記の手順によれば、高吸水性ポリマー粒子22の含有率(%)は、(W/W)・100として求めることができる。なお、上記の式における*印は、試片を測定することによって直接的に求めることのできる値であることを示している。このようにして高吸水性ポリマー粒子22の含有率を測定する方法は、吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22とが容易に分離することがない程度に一体化している場合の上方吸収部11や下方吸収部12に対して適用することが好ましい。
【0039】
図4は、実施態様の一例を示す図3と同様な図である。図4のパッド1が図2,3のパッド1と異なるのは、パッド1の長さ方向Aにおける上方吸収部11の寸法と下方吸収部12の寸法との関係である。図4において、上方吸収部11の長さLは下方吸収部12の長さMよりも大きい。上方吸収部11の第1上方部分31の長さLは、下方吸収部12における第1下方部分41の長さMよりも大きく、下方吸収部12の長さMよりも小さい。このような図4のパッド1においても、パッド1は、中央部分6と端部分7との間、および中央部分6と端部分8との間における厚さが徐々に変化するものになり、たとえば下方吸収体12の厚さが急激に変化する場合に比べると、重なり合う上方吸収部11と下方吸収部12との接触面積が広がるとともに、これら両部11,12の間には間隙が生じ難くなる。また、そのようなパッド1では、端部分7,8とそれらの近傍の肌触りが滑らかなものになり易い。
【0040】
図5は、パッド1の製造工程の部分図であって、図4における上方吸収部11と下方吸収部12とが形成される工程を示している。
【0041】
図5における第I工程では、機械方向MDの上流側から下流側に向かってシート状の第1ウエブ101が連続的に供給される。第1ウエブ101は、図2〜4における第2ラッピングシート13bとなるものであって、成形用の第1ドラム102の下方を通過する。成形用の第1ドラム102は、その周面に図4における下方吸収部12の形状に対応する成形用凹部103が複数形成され、その複数の凹部103は、第1ドラム102の周方向に間欠的に並んでいる。凹部103には、下方吸収部12の第1下方部分41を形成するための深さの深い第1凹部141と、第2,第3下方部分42,43を形成するための深さの浅い第2,第3凹部142,143が形成されている。第1ドラム102は図において時計方向Dへ回転していて、凹部103が12時の位置に近づくと、第1ドラム102の上方に形成されている材料供給部104へ進入する。材料供給部104では、その上方から少なくとも粉砕パルプを含む吸水性繊維21(図4参照)が供給されるとともに、材料供給部104に組み込まれているポリマー供給部106からは高吸水性ポリマー粒子22(図4参照)が供給される。吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22とが供給されているときには、凹部103がサクション部107につながっていて、吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22とが凹部103に吸引され、集積した状態となって材料供給部104の外へ出る。なお、凹部103が材料供給部104へ進入した直後には、その凹部103には主として吸水性繊維21が供給され、吸水性繊維21はその長さ方向がサクションSの作用下に凹部103の平滑な表面に倣って延びるように、換言すると吸水性繊維21は凹部103の表面に横たわるような状態でその表面に集積する。その後に集積する吸水性繊維21では、それの延びる方向が凹部103の長さ方向にも幅方向にも深さ方向にも規則性のない無秩序な状態になり易い。材料供給部104の外では、集積した状態にある吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22とが凹部103から離脱して図4における下方吸収部12となって第1ウエブ101と合流し、第1ウエブ101に載せられた状態で機械方向MDへ間欠的に並び、機械方向MDへさらに進む。なお、集積した状態にある吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22とが凹部103から離脱するときに、第I工程では、その離脱をスムーズにするための機械的な押し出し手段や加圧空気による押し出し手段を使用することができる。
【0042】
機械方向MDへ進む下方吸収部12と第1ウエブ101とは第II工程へ進んで、成形用第2ドラム108の下方を通過する。第2ドラム108は、その周面に図4における上方吸収部11に対応する成形用凹部109が複数形成され、その凹部109は第2ドラム108の周方向に間欠的に並んでいる。凹部109のそれぞれには、上方吸収部11の第1上方部分31を形成するための深さの深い第1凹部131と、第2,第3上方部分32,33を形成するための深さの浅い第2,第3凹部132,133が形成されている。第2ドラム108は、時計方向Dへ回転していて、凹部109が12時の位置に近づくと第2ドラム108の上方に形成された材料供給部111へ進入する。材料供給部111では、その上方から、少なくとも粉砕パルプを含む吸水性繊維21が供給されるとともに材料供給部111に組み込まれているポリマー供給部112からは高吸水性ポリマー粒子22が供給される。吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22とが供給されているときには、凹部109がサクション部113につながっていて、吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22とが凹部109に吸引され、集積した状態となって供給部111の外へ出る。なお、凹部109が材料供給部111へ進入した直後には、凹部109には主として吸水性繊維21が供給され、吸水性繊維21はその長さ方向がサクションSの作用下に凹部109の平滑な表面に倣って延びるように、換言すると吸水性繊維21は凹部109の表面に横たわるような状態でその表面に集積する。その後に集積する吸水性繊維21では、それの延びる方向が凹部109の長さ方向にも幅方向にも深さ方向にも規則性のない無秩序な状態になり易い。材料供給部111の外では、集積した状態にある吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22とが凹部109から離脱して図4における上方吸収部11となって第1ウエブ101と合流し、第1ウエブ101に載せられた下方吸収部12に重なって、機械方向MDへさらに進む。第II工程で得られる上方吸収部11は、第I工程で得られる下方吸収部12と同様に、吸水性繊維21が凹部109の表面に横たわるような状態で集積する。
【0043】
上方吸収部11と下方吸収部12とが載せられた第1ウエブ101は、第III工程へ進む。第III工程では、図の上方からシート状の第2ウエブ116が連続的に供給され、第1ウエブ101と協働して上方吸収部11と下方吸収部12とをサンドウィッチすることにより、複合ウエブ117が形成される。第2ウエブ116は、図4における第1ラッピングシート13aを形成するために使用される。複合ウエブ117が機械方向MDにおいて隣り合う上方吸収部11と11との間においてカッター118によって切断されると、図4における個別の吸収体4が得られる。
【0044】
図5の工程を経て得られる吸収体4では、上方吸収部11における第1,第2,第3上方部分31,32,33の厚さが凹部109における第1,第2,第3凹部131,132,133の深さによって定まる。また、下方吸収部12における第1,第2,第3下方部分41,42,43の厚さは、凹部103の第1,第2,第3凹部141,142,143の深さによって定まる。ただし、これら各部分31,32,33,41,42,43の厚さの測定及び吸収体4の厚さの測定は、測定すべき部位に平滑な金属プレートを載せて、尾崎製作所製PEACOCKデジタルシックネスゲージJA−257またはその同等品を使用して測定する。ゲージの測定端子には、一例として、直径20mmの円盤を使用し、被測定物に対する接触圧が5.0〜5.5g/cmとなる範囲で測定する。測定結果からは金属プレートの厚さを引いて各部分の厚さとする。また、図5の第I工程で得られる下方吸収部12において、凹部103の表面に集積している吸水性繊維21は下方吸収部12のうちの下方スキン層12aを形成し、下方スキン層12aを形成した後に凹部103に集積した吸水性繊維21と高吸収性ポリマー粒子22とは、下方吸収層12bを形成する。第II工程で得られる上方吸収部11において、凹部109の表面に集積している吸水性繊維21は、上方吸収部11のうちの上方スキン層11aを形成し、上方スキン層11aを形成した後に凹部109に集積した吸水性繊維21と高吸水性ポリマー粒子22とは上方吸収層11bを形成する。ただし、図5の工程は、そのうちの第I工程および/または第II工程において高吸水性ポリマー粒子22を供給せずに吸収体4を得て、この吸収体4を使用してこの発明に係るパッド1を得ることができる。また、第I工程および/または第II工程において、吸水性繊維21として粉砕パルプや半合成繊維のステープル等を単独で使用することができる他に、粉砕パルプと半合成繊維のステープル等とを混合して使用することもできる。
【0045】
このようにして形成された上方吸収部11と下方吸収部12とを含む図1〜4に例示のパッド1では、体液がパッド1の中央部分6に向かって排泄されると、その体液はトップシート2を透過した後に第1ラッピングシート13aを透過して上方吸収部11に吸収される。上方吸収部11に吸収された体液の一部は、厚さ方向Cの下方へ移行して下方吸収部12に吸収される。パッド1においてはまた、トップシート2が体液を拡散させることなく、スポット的に透過させるものであることが好ましい。第1ラッピングシート13aは、体液を拡散させることのないものでもよいのであるが、好ましくは体液を拡散させることに優れたティッシュペーパを使用して、トップシート2を透過してきた体液をパッド1の長さ方向Aと幅方向Bとに拡散させる。第1ラッピングシート13aを透過した体液は、上方吸収部11の頂面部分を形成している上方スキン層11aへ移行する。上方スキン層11aでは、図5の工程でサクション圧の作用を強く受けた吸水性繊維21が上方吸収部11の上面で横たわるように広がっていることによって、体液は上方スキン層11aにおいて拡散しつつ上方吸収層11bに吸収される。上方吸収層11bから下方吸収部12へ移行する体液は、下方吸収部12の頂面部分を形成している下方スキン層12aにおいて吸水性繊維21がその頂面部分で横たわるように広がっていることによって、下方スキン層12aにおいて拡散しつつ下方吸収層12bに吸収される。
【0046】
吸収体4における上方吸収層11bや下方吸収層12bでは、厚さ方向Cにおいてそれぞれのスキン層11a,12aから遠く離れている部分ほど吸水性繊維21が規則性のない状態で集積して、各層11b,12bの密度が低くなる傾向にあるので、体液は長さ方向Aや幅方向Bへ拡散し難いのであるが、上方スキン層11aや下方スキン層12aにおいては、体液が長さ方向Aや幅方向Bに容易に拡散し、拡散した上方吸収層11bや下方吸収層12bへ移行することによって、上方吸収層11bや下方吸収層12bの体液吸収能力を広い範囲にわたって利用することが可能になる。このように、パッド1では、上方スキン層11aや下方スキン層12aが体液を拡散させる手段として作用し、中央部分6において体液が滞留することを防ぐことができるので、中央部分6はパッド1の着用者に対して強い湿潤感を与えることがない。
【0047】
パッド1が図示例の如く中高なものである場合、体液吸収のために吸水性繊維21の多くを有効利用することは必ずしも容易ではないが、上方スキン層11aや下方スキン層12aにおいて体液を拡散させることのできる吸収体4では、吸水性繊維21の多くを利用することが可能になる。そのことはまた、多くの体液をパッド1が吸収可能であることにもつながり、そのようなパッド1は、着用時の湿潤感を軽減することのできるものになるばかりではなく、体液の漏れの少ないものにもなる。
【0048】
パッド1において、上方吸収部11は、下方吸収部12に対して密着していることが好ましいものであるが、重なり合う両吸収部11,12の間には、間隙40(図3参照)が生じることがある。その間隙40は、上方吸収部11から下方吸収部12に向かっての厚さ方向Cにおける体液のスムーズな移行の妨げになることがある。しかし、図3に例示の如く、間隙40を長さ方向Aにおいて縦断するように下方スキン層12aが延びていると、パッド1の中央部分6に排泄された体液は、下方スキン層12aにおいて拡散することによって、その間隙40よりも遠くにある上方吸収部11の第2上方部分32や下方吸収部12の第2下方部分42にまで届き、そこで吸収されることが可能になる。
【0049】
上方吸収部11と下方吸収部12との二層を有するパッド1は、上方スキン層11aと下方スキン層12aとを有していることが好ましいものではあるが、それら両層11a,12aの中でも吸収体4の厚さ方向Cの中央部に位置する下方スキン層12aは、下方吸収層12bを活用するうえにおいて特に好ましいものである。下方スキン層12aは、その直上部分である上方吸収層11bおよび直下部分である下方吸収層12bと比較すると、吸水性繊維21が高密度な状態で集積していることや、その吸水性繊維21が第1ドラム102における凹部103の表面や第2ドラム108における凹部109の表面に並行して延びていたことによって、長さ方向Aおよび/または幅方向Bにおける体液の拡散速度が速く、体液を長さ方向Aおよび/または幅方向Bへ速やかに拡散させながら下方吸収層12bへと移行させることができる。下方スキン層12aのこのような作用が顕著なパッド1では、上方スキン層11aが明確に形成されていない上方吸収部11でも使用することができる。
【0050】
上方吸収部11および/または下方吸収部12における体液の拡散速度を観察するには、鋭利な刃物でパッド1をカットしてパッド1の厚さ方向Cの断面を見ることのできる試片を作る。その試片に対してトップシート2の上方から1〜5mlの人工尿や人工経血、生理食塩水等の試験液を少しずつ滴下しながらその断面において試験液がパッド1へ浸透して行く様子を観察すればよい。
【0051】
この発明は、図示例の如き上方吸収部11と下方吸収部12とを有する吸収体4の外に、上方吸収部11の上方にパネル状の追加の吸収部を有する吸収体4や、下方吸収部12の下方にパネル状の追加の吸収部を有する吸収体4を使用したパッド1によって実施することもできる。上方吸収部11の上方に追加の吸収部がある場合の上方吸収部11は、上方スキン層11aを有することが好ましい。また、下方吸収部12の下方に追加の吸収部がある場合の追加の吸収部は、下方吸収部12と接する面にスキン層を有するものであることが好ましい。図示例のパッド1は、それを長さ方向Aで見たときに、両端部分7,8の間に介在する中央部分6が中高な状態にあるものであったが、パッド1はそれを幅方向Bで見たときの中央部分に対する両側方部分が薄く、その両側方部分に挟まれた中央部分が厚いという中高な状態のものにすることもできる。
【0052】
さらにはまた、この発明は、吸尿パッド1の他に、使い捨てのおむつや生理用ナプキン等の体液吸収性着用物品として実施したり、使い捨ておむつやおむつカバー等に交換可能に取り付ける体液吸収性部材として実施したりすることが可能である。
【0053】
図6は、実施態様の一例を示す図1と同様な図である。図6に例示のパッド1は、図1に例示のパッド1の幅方向Bにおける両側部に圧搾部81が形成されている。圧搾部81は、図1のパッド1の両側部の一部分をトップシート2からバックシート3へ向かう方向に圧搾することによって得ることができる。圧搾のために使用する金型は、室温または加熱状態にあるものを使用することができるが、加熱状態にある金型の温度は、パッド1に使用されている熱可塑性合成樹脂成分を軟化させる程度の温度を上限とし、その熱可塑性合成樹脂成分を溶融させることのない温度であることが好ましい。圧搾部81では、圧搾部81以外の部分に比べて、吸水性繊維21の集積状態を高密度な状態にすることができる。そのような圧搾部81は、その形状を長さ方向Aへ連続的または図示例の如く間欠的に延びる溝型のものにしておくと、トップシート2の上においてパッド1の幅方向Bへ流れる体液がパッド1の縁82に到達する前に、その体液を圧搾部81においてパッド1の長さ方向Aへ拡散させ、体液がパッドの縁82から漏れることを防ぐことができる。圧搾部81はまた、そこで重なり合う上方吸収部11と下方吸収部12とを密着させ、これら両吸収部11,12が互いにずれ動くことを防止することができる。
【0054】
図7もまた、この発明の実施態様の一例を示す図3と同様な図である。図7のパッド1は、上方吸収部11と下方吸収部12とを含む吸収体4を有するものであるが、上方吸収部11は、図3において第1ラッピングシート13aに接触している上方スキン層11aではなくて、下方吸収部12に接触している上方スキン層11cを有する。下方吸収部12は、図3において上方吸収部11の上方吸収層11bに接触している下方スキン層12aではなくて、第2ラッピングシート13bに接触している下方スキン層12cを有する。
【0055】
図7における吸収体4は、図5の工程にいくつかの変更を加えることによって得ることができる。すなわち、図7の吸収体4では、図5における第1ウエブ101を第1ラッピングシート13aとして使用し、第2ウエブ116を第2ラッピングシート13bとして使用する。図5における下方吸収部12は図7における上方吸収部11となり、図5における上方吸収部11は図7における下方吸収部12となるように図5の各吸収部を使い分ける。さらに、図5の第1ドラム102における凹部103の周方向における長さが、図5の第2ドラム108における凹部109の周方向における長さとなるように変更し、図5の第2ドラム108における凹部109の周方向の長さが、図5の第1ドラム102における凹部103の周方向の長さとなるように変更する。図7のパッド1は、長さ方向Aおよび/または幅方向Bにおいて、上方スキン層11cが、上方スキン層11cの直上部分である上方吸収層11bや直下部分である下方吸収層12bの体液の拡散速度よりも速い拡散速度を有していて、厚さ方向Cの上方から下方に向かって移行する体液が、上方スキン層11cにおいて長さ方向Aおよび/または幅方向Bへ速やかに拡散し、そのように拡散しながら下方吸収部12における下方吸収層12bの広い範囲へと移行する。
【0056】
図8は、実施態様の一例を示す図1と同様な図である。ただし、図8のパッド1では、図1のパッド1に対して、幅方向Bの中央部において長さ方向Aへ間欠的に並ぶ複数の圧搾部100が形成されている。圧搾部100は、図6における圧搾部81を得るために採用した方法と同じ方法で得ることができる部位であって、圧搾部100では、トップシート2からバックシート3(図1,2参照)へ向かう方向へ図1のパッド1が局部的に圧搾されている。図8では、そのような圧搾部100が長さ方向Aと幅方向Bとに寸法aと寸法bとを有する矩形または正方形に形成された表面部101を有し、長さ方向Aで隣り合う圧搾部100と100とは寸法cだけ離間している。寸法a,b,cは、パッド1の大きさ等を考慮して適宜の値に設定することができるのであるが、図示例では、寸法aとbとが同じで、表面部101が正方形であり、寸法cが一定の値である場合が示されている。圧搾部100の周辺には、圧搾されていない非圧搾部102があり、その非圧搾部102には、隣り合う圧搾部100と100との間に位置していて寸法cを有する中間部103が含まれている。
【0057】
図9は、図8のIX−IX線断面の一部分を示す図であって、IX−IX線は長さ方向中心線Qに一致している。圧搾部100のそれぞれでは、図3おけるパッド1の吸収体4が圧搾されることによって、上方吸収部11と下方吸収部12とに含まれていた吸水性繊維21(図2参照)が高密度な集積状態にある一方、圧搾部100との対比において、非圧搾部102では吸水性繊維21が低密度な集積状態にある。ただし、非圧搾部102のうちでも中間部103は、中間部103を挟んで隣り合う圧搾部100が形成されるときの影響を受けて、中間部103以外の非圧搾部102における吸水性繊維21の集積状態に比べると、密度の高い集積状態にある。したがって、吸水繊維21のこれらの集積状態についていえば、圧搾部100では高密度集積部が形成され、中間部103では中密度集積部が形成され、中間部103以外の非圧搾部102では低密度集積部が形成されている。なお、パッド1の非圧搾部102では、圧搾部100の表面部101を画成している四辺のうちの寸法aを有する辺に隣接する部位もまた、圧搾部100が形成されるときの影響を受けている。以下において非圧搾部102というときの非圧搾部102には、その部位が含まれていない。
【0058】
図9において、圧搾部100それぞれの表面部101は、圧搾部100を囲んでいる非圧搾部102のうちで中間部103を除く部分の表面部105よりも寸法Dだけ下方に位置している。換言すると、表面部101は、表面部102と比べるとバックシート3までの距離が寸法Dだけ短い。寸法Dは、実質的な意味においてパッド1に対して施された圧搾の深さであって、パッド1では、その寸法Dを変化させることによって吸水性繊維21が集積状態にある圧搾部100それぞれの密度を変化させることができる。ここで圧搾部100の密度というときには、圧搾部100に含まれる吸収体4の密度であり、その吸収体4は吸水性繊維21を含むものであるが、高吸水性ポリマー粒子22(図2参照)については、それを含む場合と含まない場合とがある。
【0059】
図9において幅方向中心線Pから端部7に向かって並ぶ圧搾部100それぞれの寸法Dには1〜5の接尾辞(サフィックス)が付けてある。それらの寸法D〜Dの間において、寸法D、寸法D、寸法Dはこの順にしたがって寸法が大きくなり、寸法D〜Dは同じ寸法を有している。また、寸法D〜Dを有する圧搾部100は、パッド1のうちで非圧搾部102の厚さが厚くてほぼ一定している中央部分6に形成され、寸法D4を有する圧搾部100は中央部分6と端部7または8の間で厚さがやや薄い中間部分6aに形成され、寸法Dを有する圧搾部100は、中間部分6aの厚さよりも薄い厚さの端部7と8とに形成されている。このように長さ方向Aにおいて寸法Dとパッド1の厚さとが変化するパッド1では、集積した状態にある吸水性繊維21を含む圧搾部100の密度が幅方向中心線Pから端部7に向かって次第に高くなるように変化するという密度勾配が形成されている。パッド1ではまた、横方向中心線Pから端部8に向かって並ぶ圧搾部100の密度が幅方向中心線Pから端部8に向かって次第に高くなるように変化するという密度勾配が形成されている。
【0060】
図9においてはまた、寸法D〜Dのそれぞれを有する一連の圧搾部100は、パッド1の厚さがほぼ一定である場合において形成される密度勾配を例示しており、寸法D〜Dのそれぞれを有する一連の圧搾部100は、パッド1の厚さが次第に薄くなる場合において形成される密度勾配を例示している。いずれの密度勾配においても、体液は密度の高い圧搾部100に向かって拡散する。
【0061】
このようなパッド1では、たとえば幅方向中心線Pと長さ方向中心線Qとが交差する部位に尿等の体液が排泄されると、その体液は、圧搾部100どうしの間の密度勾配にしたがって、幅方向中心線Pから端部7および/または端部8に向かって速やかに拡散して、その端部7や端部8に吸収保持される。それゆえ、このパッド1では、吸収体4におけるスキン層11aや12aの有無にかかわらず、圧搾部100が体液を拡散させるための手段として作用し、体液を吸収処理するためにパッド1の端部7,8やその他の部位を利用することができる。
【0062】
図8,9に例示のパッド1ではまた、圧搾部100における寸法bを一定に保ちながら、端部7および/または端部8に近い圧搾部100ほど寸法aが大きくなるように寸法aを変化させることができる。このようにして得られるパッド1では、圧搾部100の表面部101が端部7および/または端部8に近いものほど長さ方向Aに長く、また面積の大きなものになっていて、体液が長さ方向Aの中央部から端部7および/または端部8に向かって拡散しやすくなる。
【0063】
図8,9に例示のパッド1ではさらにまた、寸法aを一定に保ちながら、端部7および/または端部8に近い圧搾部100ほど寸法bが大きくなるように寸法bを変化させることもできる。このようにして得られるパッド1では、圧搾部100の表面部101が端部7および/または端部8に近いものほど幅が広く、また面積の大きなものになって、長さ方向Aの中央部にある体液が長さ方向Aと幅方向Bとに拡散し易くなる。
【0064】
パッド1ではさらにまた。端部7および/または端部8に近い圧搾部100ほど寸法aと寸法bとが大きくなるように、寸法a,bを変化させることもできる。なお、寸法cは、圧搾部100を形成するうえにおいての支障がない限り、小さな値であることが好ましい。
【0065】
図10は、実施態様の一例を示す図8と同様な図である。ただし、図10のパッド1では、圧搾部100が長さ方向中心線Qの上において間欠的に並んでいることに加えて、端部7と端部8とでは、圧搾部100が幅方向Bへ並ぶように、追加の圧搾部100a,100bが形成されている。追加の圧搾部100aは、端部7における圧搾部100と同様にして形成され、追加の圧搾部100bは、端部8における圧搾部100と同様にして形成される。追加の圧搾部100a,100bが図示例の如く形成されることによって、端部7,8における幅方向Bへの体液の拡散が容易になり、体液を吸収処理するために端部7,8を広い面積にわたって利用することができる。
【0066】
図11は実施態様の一例を示す図9と同様な図である。ただし、図11のパッド1の吸収体4は、図3に例示の積層状態にある上方吸収部11と下方吸収部12とを有するものではなく、上方吸収部11または下方吸収部12と同じ組成であって層状の構造を持たない吸水性材料の集合体が図3に例示のラッピングシート13によって被覆されている。このような吸収体4を有するパッド1においても、図8〜10に例示の圧搾部100を形成して、この発明に係る体液吸収性物品を得ることができる。
【0067】
図1〜11において、パッド1の形状は矩形のものであったが、パッド1の形状はパッド1の用途に応じて適宜変更することができる。また、図6や図8〜11のパッド1における圧搾部81,100の形状は、矩形や正方形以外の形状に変えることができる。圧搾部100は、パッド1をトップシート2からバックシート3に向かって圧搾することに代えて、バックシート3からトップシート2に向かって圧搾することにより形成することもできる。また、図6のパッド1において、圧搾部81の列のそれぞれを図8,9に例示の圧搾部100の列に代えてこの発明に係る体液吸収性物品を得ることもできる。
【符号の説明】
【0068】
1 体液吸収性物品(吸尿パッド)
2 トップシート
3 バックシート
4 吸収体
7 部分(端部)
8 部分(端部)
11 上方吸収部
11a スキン層(上方スキン層)
11c スキン層(上方スキン層)
12 下方吸収部
12a スキン層(下方スキン層)
12c スキン層(下方スキン層)
13 ラッピングシート
13a,13b ラッピングシート(第1、第2ラッピングシート)
21 吸水性繊維
22 高吸水性ポリマー粒子
31 中央部分(第1上方部分)
32 端部分(第2上方部分)
33 端部分(第3上方部分)
41 中央部分(第1下方部分)
42 端部分(第2下方部分)
43 端部分(第3下方部分)
100 圧搾部
100a 第2の圧搾部
100b 第2の圧搾部
A 長さ方向
B 幅方向
C 厚さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向と幅方向と厚さ方向とを有し、前記厚さ方向において透液性のトップシートと透液性および不透液性いずれかのバックシートとの間に吸収体が介在し、前記吸収体が、吸水性繊維として少なくとも粉砕パルプを含む吸水性材料の集合体をラッピングシートで被覆したものであって、体液の拡散を容易にする拡散手段を有し、前記ラッピングシートが少なくとも前記厚さ方向の上方に位置する部分が透液性のものである体液吸収性物品であって、
前記吸収体は、前記ラッピングシートの内側にあって前記厚さ方向で互いに重なり合う上方吸収部と下方吸収部とを有し、かつ、前記拡散手段として、前記上方吸収部にあって前記下方吸収部に接触するスキン層および前記下方吸収部にあって前記上方吸収部に接触するスキン層のいずれかのスキン層を含み、
前記吸収体における前記長さ方向および前記幅方向のいずれかの方向での前記体液の拡散速度は、前記いずれかのスキン層における前記拡散速度が、前記いずれかのスキン層の直上部分および直下部分における前記拡散速度よりも速いことを特徴とする前記体液吸収性物品。
【請求項2】
前記いずれかのスキン層では、前記吸水性繊維が前記いずれか一方のスキン層において、前記長さ方向および前記幅方向のうちの少なくとも一方向へ横たわるように延びていることによって、前記拡散速度が速くなっている請求項1記載の体液吸収性物品。
【請求項3】
前記上方吸収部と前記下方吸収部とが高吸水性ポリマー粒子を含み、前記上方吸収部における前記高吸水性ポリマー粒子の含有率が前記下方吸収部における前記高吸水性ポリマー粒子の含有率よりも低い請求項1または2記載の体液吸収性物品。
【請求項4】
前記いずれかのスキン層は、前記高吸水性ポリマー粒子を含むことのない層である請求項3記載の体液吸収性物品。
【請求項5】
前記上方吸収部と前記下方吸収部とは、前記長さ方向および前記幅方向の少なくとも一方の方向における中央部分が前記少なくとも一方の方向において前記中央部分を挟む両側部分よりも厚さが厚く形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の体液吸収性物品。
【請求項6】
前記上方吸収部と前記下方吸収部とのそれぞれにおいて、前記中央部分には前記吸水性繊維を単位面積当たりの質量で300〜400g/m含む部位が形成され、前記両側部分には前記吸水性繊維を単位面積当たりの質量で100〜250g/m含む部位が形成されている請求項5記載の体液吸収性物品。
【請求項7】
前記上方吸収部と前記下方吸収部とのそれぞれが35〜75重量%の前記高吸水性ポリマー粒子を含んでいる請求項3〜6のいずれかに記載の体液吸収性物品。
【請求項8】
長さ方向と幅方向と厚さ方向とを有し、前記厚さ方向において透液性のトップシートと透液性および不透液性いずれかのバックシートとの間に吸収体が介在し、前記吸収体が、吸水性繊維として少なくとも粉砕パルプを含む吸水性材料の集合体をラッピングシートで被覆したものであって前記ラッピングシートは少なくとも前記厚さ方向の上方に位置する部分が透液性のものであり、かつ、前記吸収体が体液の拡散を容易にする拡散手段を含む体液吸収性物品であって、
前記長さ方向には、前記拡散手段として、前記吸収体を前記厚さ方向において部分的に圧搾することにより形成された複数の圧搾部位が間欠的に並び、前記圧搾部位それぞれの面積は前記長さ方向の中央部から前記長さ方向の端部に向かって次第に大きくなるように形成されていることを特徴とする前記体液吸収性物品。
【請求項9】
複数の前記圧搾部位が前記吸収体における前記幅方向の中央部に形成されている請求項8記載の体液吸収性物品。
【請求項10】
複数の前記圧搾部位が前記吸収体の前記幅方向の両側それぞれに形成されている請求項8または9記載の体液吸収性物品。
【請求項11】
前記吸収体の前記端部における前記幅方向には、前記幅方向の中央部に形成されている前記圧搾部位の側方にも、前記吸収体を前記厚さ方向において部分的に圧搾することにより、第2の圧搾部位が形成されている請求項8〜10のいずれかに記載の体液吸収性物品。
【請求項12】
前記吸収体の厚さは、前記長さ方向の中央部から前記端部に向かって次第に薄くなるように形成されていて、前記長さ方向に並ぶ前記圧搾部位の密度は前記長さ方向の中央部から前記端部に向かって高くなるように変化している請求項8〜11のいずれかに記載の体液吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収体は、前記ラッピングシートの内側にあって記厚さ方向で重なり合う上方吸収部と下方吸収部とによって形成され、前記圧搾部位は、前記吸収体を前記上方吸収部および前記下方吸収部の一方から他方に向かって圧搾することにより形成されている請求項8〜12のいずれかに記載の体液吸収性物品。
【請求項14】
長さ方向と幅方向と厚さ方向とを有し、前記厚さ方向において透液性のトップシートと透液性および不透液性いずれかのバックシートとの間に吸収体が介在し、前記吸収体が、吸水性繊維として少なくとも粉砕パルプを含む吸水性材料の集合体をラッピングシートで被覆したものであって前記ラッピングシートは少なくとも前記厚さ方向の上方に位置する部分が透液性のものであり、かつ、前記吸収体が体液の拡散を容易にする拡散手段を含む体液吸収性物品であって、
前記長さ方向には、前記拡散手段として、前記吸収体を前記厚さ方向において部分的に圧搾することにより形成された複数の圧搾部位が間欠的に並び、前記圧搾部位それぞれの密度は前記長さ方向の中央部から前記長さ方向の端部に向かって次第に高くなるように形成されていることを特徴とする前記体液吸収性物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−81246(P2012−81246A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31405(P2011−31405)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】