説明

体液測定装置および体液測定方法

【課題】採取する面の全面に体液試料が採取されなくても、採取物の濃度を算出できる体液採取具の採取および測定方法を提供する。
【解決手段】本発明の体液測定装置は、第1の領域と第2の領域とからなり、前記第1の領域に被測定体液が担持され、前記第2の領域に液抵抗率が既知の溶液が担持される絶縁性の担持体と、前記被測定体液および前記既知溶液の電気抵抗を測定する抵抗検知部と、前記被測定体液の電気抵抗および前記既知溶液の電気抵抗を用いて前記第1の領域の面積を類推し、前記第1の領域の面積および前記被測定体液の電気抵抗から前記被測定体液中の成分濃度を検出する成分検出部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から採取される体液を測定する装置および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人体から採取される体液である、血液、唾液、汗、尿、皮脂などの生体試料に含有される成分の計測や特定成分の有無の検出などは、各種疾患の診断上極めて重要である。これ等の検査を行うために医療機関に赴くことなく、家庭或いは集団検診等の場所において生体試料を採取し、検査機関へ輸送し、衛生的に又簡便且つ感度良く被験物質の検出を行う検査方法、並びにこれに用いる簡易型検査装置がこれ等疾患の早期発見のために提案されており、ますます体液成分の採取は重要となっている。
【0003】
例えば、口腔歯科領域に見られる試料をふきとりにより採取する方法は、スワブを押し付ける圧力などがばらつく、採取量が容易に変動してしまう。また、シート状の吸収 体を押し付け、体液を転写する場合も同様に押し付ける圧力などがばらつく他、押し付ける面の形状によっては、シートの全面に吸収されないことがある。シートが大きく、採取する面が凹凸に富んだ形状を有する場合は特に困難となり、シートの屈曲性としわ発生などを両立する等の工夫が別途 必要となる。確実に被測定溶液を担持体やセンサに担持させる技術は既に様々なものがある。
【0004】
例えば、特許文献1に開示される方法は、生体試料採取器具を用いて生体試料を採取し、予め所定量の分散媒を収容した容器内に生体試料を導入し、該生体試料を前記分散媒に懸濁または溶解した後、次の操作即ち、(1)上記容器に内設した計量杯に該懸濁液または該溶液の一定量を分取して検体となし、(2)該計量杯に臨む上記容器の器壁部分に開口を作り、(3)該開口から分析用具を上記の分取した検体と接触させること、の各操作を行うことを特徴とする。しかしながら、本方法は多量の溶液を採取する必要があり、唾液や汗等の採取量が限られる体液には不向きであるという課題がある。
【0005】
また、特許文献2に開示される方法は、生体サンプルに含まれる検体を回収と研究分析用に郵便で送るために、個人から入手した液体生体サンプルの遠隔地での定量採取と 乾燥を行なう装置であって、この装置は、検体を含む関心のある成分からサンプル内の望ましくない成分を選択的に分離して残す分離部材と、分離された検体を含む関心のある成分を採取して乾燥する非反応性の採取部材とを備え、検体の研究分析用に前記検体を含む成分を回収するために、前記乾燥した採取部材を少なくとも部分的に前記装置から取り外せるように構成した生体サンプルの採取装置である。しかしながら、関心のある成分が採取部材へ確実に採取されるとは言えない。特に点着することが難しい体液においては全面に採取させることが難しいという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−318623号公報
【特許文献2】特表2002−527726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、簡便に体液から生体成分の採取を実現し、かつ、採取によるバラツキを 小さくするのは難しかった。よって、採取した成分を信頼性よく分析することが困難であった。本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、たとえ、採取する面の全面に体液試料が採取されなくても、採取物の濃度を算出できる体液採取具の採取および測定方法を提供することを目的とする。また、この方法に基づく体液採取具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある実施形態の体液測定装置は、第1の領域と第2の領域とからなり、前記第1の領域に被測定体液が担持され、前記第2の領域に液抵抗率が既知の溶液が担持される絶縁性の担持体と、前記被測定体液および前記既知溶液の電気抵抗を測定する抵抗検知部と、前記被測定体液の電気抵抗および前記既知溶液の電気抵抗を用いて前記第1の領域の面積を類推し、前記第1の領域の面積および前記被測定体液の電気抵抗から前記被測定体液中の成分濃度を検出する成分検出部とを有し、上記の課題を解決する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の測定装置によれば、測定する体液の物理特性(例えば、pHや伝導度など)が未知であっても、採取した面積が割出し可能であるので、体液成分中の成分濃度を信頼性よく検出することができる。また、体液成分の採取状態を電気抵抗によって検出するので、体液成分の分析同定が同じ電気測定でなされる場合は、採取から同定までの同時実施が可能となる。たとえば、分析に総酸測定を行う場合、血清中のコレステロール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル及びリン脂質等の各成分濃度を特異的、高感度、簡便、迅速に測定でき、このような分析を行なうための血清中の脂質成分分析装置も安価に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態の測定装置の構成を示す模式図
【図2】(a)から(c)は、測定手順の模式図
【図3】(a)および(b)は、工程Bにおける測定装置の状態を示す図1のA部拡大図
【図4】(a)および(b)は、工程Dにおける測定装置の状態を示す図1のA部拡大図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[総酸測定]
1.本発明の測定装置
本発明の実施の形態につき図を用いて例示的に説明する。図1は、本発明の一実施の形態における、本発明により特徴付けられる体液成分の測定装置1の構成を示す図である。測定装置1は、採取器具2と測定部3から構成され、採取器具2は、体液の採取が行いやすいように、測定部3から着脱が可能である。採取器具2の担持体4は、その片面に接するように電極5が配置されており、他面は体液9を担持させやすいように開放面を構成しているのが望ましい。
【0012】
図1は、電気抵抗測定を実施するときの状態を示し、採取器具2は測定部3にドッキングされている。この状態では、検出部3の電極6は、電極5と対となるように、採取器具2の担持体4を挟み込む。電極5と電極6は、それぞれリード線7およびリード線8を介して測定部3の抵抗検知部10と電気的に接続される。抵抗検知部10は、電極間に電圧を印加した時の電流値を検知することで、電極間の抵抗値を計測する。また、電極5および電極6は、成分検出部11とも電気的に接続される。抵抗検知部10および成分検出部11は、解析制御部12と接続され、抵抗値測定や成分検出が実施できる。かかる構成によれば、採取器具2は、必要最小限の構成として分離できるので、小型・ポータブル構成により取りまわしが可能となり、体液の採取を無理なく行うことができる。特に、採取器具2の小型化は、採取面20が平らでなく、体表面や舌に代表されるように、曲率や凹凸が存在する場合にも、その曲率や凹凸に対して十分に小さくすることに寄与する。採取器具2の形状は、採取操作者が容易に採取作業を行えるような形状が望ましい。具体的には、筒状やグリップがにぎりやすくなっている筐体である。担持体4は、少なくとも外部とつながる構造であれば外部から体液9とともに被採取物質を取り込むことができる。好適には、電極5の表面積に比べ担持体4の厚みが無視できうるほど薄い薄膜や単層構造であることが望ましく、電極5の面を除いて外部に開放されている構造が望ましい。
【0013】
担持体4の構造は、被採取物質と体液9とを内部に保持できる当該技術の郡より選択される。多孔質やポーラスな構造を有することが望ましく、使用する体液のPHや化学腐食、温度に対して耐性がある材料であることが必要である。例えば、体表面での皮脂成分を被採取物質とする場合は、孔径100マイクロメートル程度の多孔質や天然ヤシ繊維部材が皮脂の吸収を効率的に行えるため適する。また、血液中に含有されるタンパクなどの可溶化成分を被採取物質とする場合は、ガラス繊維状のフィルタや血液を含侵できる紙状の物質が適する。担持体4の電気特性は、絶縁性に近い特性を示すことが望ましい。その絶縁性は、抵抗率10KΩ以上であればより好ましい。
【0014】
電極5は、既知の面積を有し、担持体4と採取器具2側にて接する。材料は採取目的には特に限定されないが、体液成分同定の目的を兼ねる場合は、適宜選択される。例えば、電気化学測定も行う場合には、通常、カーボン電極や、金、白金等の化学的に安定な貴金属が選択される。電極5の面積は、接触する担持体4の表面積Sより小さくないことが望ましく、もっとも好適には担持体4の表面積に一致する状態である。電極5の厚みは問わない。
【0015】
電極6は、測定部3側に配置され、ドッキング状態で担持体4を挟んで対向する構成が望ましい。図1から図6の例では、この構成を示したが、本例に限定されず、必要に 応じて、採取器具2側に配置してもよい。図1から図6に示した構成により、担持体4が体表面と接触する面積を大きくとることができる。電極6の面積は、電極5と等しいことがもっとも望ましく、厚みは問わない。抵抗検知部10において計測される電極間の抵抗R(交流電圧の場合はインピーダンスZ)は、以下の式で表される。
(式1)
【数1】


ここで、V は電極間に印加する電圧21[V]、iは電極を通じてリード線に流れる電流22[A]、ρは液体の抵抗率[Ωm]、Sは液体が担持体4の一部にみたされたときの電極上で の濡れ面積[m]、dは電極間における液体の長さ[m]、すなわち図3では担持体4の厚み24をあらわす。成分検出部11は、電極間で体液成分の同定が実施できるなら任意であるが、本実施形態では、血漿試料中に含まれる脂質成分の濃度をボルタンメトリーを利用し電気化学的に酸濃度を測定することによって同定する例を示す。以下はその構成を有する。ボルタンメトリーを利用して電気化学的に酸濃度を測定する方法は、様々な文献等に示されている。
【0016】
酵素処理により脂肪酸を遊離した血清に有機溶媒とキノン誘導体及び電解質を混合し、その共存電解液に徐々に電荷をかけ、その過程で発生する電流を計測したとき、酸が溶液中に存在する場合のみに特徴的に見受けられるボルタモグラム還元前置波のピーク値を計測する事によって酸の濃度分析を行う方法である。この共存電解液中で脂肪酸は強いプロトン供与体として働き、共存電解液中に存在しているキノン誘導体にプロトンを与える。脂肪酸のようなプロトン供与体とキノンの付加体は、キノン単体よりも易還元性であるため、ボルタモグラムにおいて有機溶媒中のキノンが通常示す還元波よりも前に還元波(ボルタモグラム還元前置波)を生じる。その還元前置波の電流値は、溶液中の酸の濃度と比例関係にあることが分かっている。あらかじめ既知の酸濃度溶液で求めておいた検量線に照らし合わせることで試料中の酸濃度を正確に測定するものである。還元前置波の位置は脂肪酸の種類によってほとんど変化することはないため、第一段階の酵素反応によって血清より生成する脂肪酸が多種類であっても酸の合計量を正確に測定できる。つまり、成分検出部はボルタンメトリー機能を有し、電極5が作用電極、電極6が参照電極および対極として機能する。
【0017】
酵素反応前の総酸量を同様に測定し反応後の総酸量との差をとることによって試料中の各種脂質成分、具体的にはコレステロール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、リン脂質のそれぞれ個別の含有量の定量が可能となる。上述した電気化学的測定方法に用いる各種キノン誘導体や溶媒あるいは電解質の種類は酸濃度に比例した還元前置波を示すものであれば特に限定はしない。測定部3は、測定部内の電極間の近傍環境の温度を一定に保つことができるように、さらに温度保持部13を備えていてもよい。例えば、血清中の各脂質成分に特異的に作用する酵素の反応を安定して維持することのできる温度(多くは30℃ 〜40℃)に保つことは反応を早く確実に実行することに寄与する。また、酵素反応を速やかに進めるために撹拌部14を備えていてもよい。
【0018】
キノン誘導体としてはオルトベンゾキノン誘導体もしくはパラベンゾキノン誘導体等が望ましい。というのは、これらのキノン誘導体であれば、先に説明したボルタモグラム還元前置波の位置が、液中の溶存酸素 の還元波形の位置からシフトして出現するため、除酸素しなくても正確に酸の濃度分析を行うことができるからである。また有機溶媒としては80重量%以上のエタノール溶液であることが望ましい。このとき脂肪酸を十分溶解できる。そして電解質としては塩化カリウムが適当である。
【0019】
2.本発明の体液採取具の採取および測定方法
体液成分の測定装置1を使った体液採取具の採取および測定方法を説明する。本発明の体液採取具の採取および測定方法は、図2にその手順の概観を示した。まず、体液採取具の操作者もしくは被測定者自身に採取器具2の担持体4を被採取の体表面20に押し当て、被測定体液9を担持させる工程A(図2(a))、 工程Aの後、採取器具2を測定部3に戻し、抵抗検知部10において被測定体液9の電気抵抗を測定する工程B(図2(b))、成分検出部11において被測定体液9中に含まれる特定成分の同定を実施する工程C、工程Cの後、測定部3に液抵抗率が既知の溶液19を注ぎ入れ、既知の溶液19を、担持体4の被測定体液9が担持された以外の残りの体積に担持させる工程D(図2(c))、工程Bと同様の方法で抵抗検知部10において溶液19の電気抵抗を測定する工程E、工程Bおよび工程Dで測定した電気抵抗から被測定体液9が担持体4内に染込んだ体積を類推する工程F、工程Fの後、類推した体積に応じて工程Cでの計測結果を補正する工程Gからなる。
【0020】
かかる構成により、たとえ、採取する面の全面に体液試料が採取されなくても、採取物の濃度を算出できる。ここで、工程Cが工程Bの計測に影響を与えない限りにおいては、順不同としうる。同時に実施してもよいし、工程Bと工程Cを1セットとして繰り返してもよい。工程Bの結果に基づき、状況に応じて、工程E、工程F、工程Gは省略しうる。
例えば、工程Bにおいて電気抵抗を測定した結果、被測定体9液が十分に担持体4の全面に担持されていると判定された場合などである。工程Dにおいて、測定部3は上方を開放した容器状であり、かつ、採取器具2の外形寸より大きいため、採取器具2をドッキングしてもなお、測定部3の上方は開放されたままである。よって、既知の溶液19は、この上方の開放面より容易に注ぎいれることができる。既知の溶液19を注ぎ入れる量は、担持体4の全面が濡れるに足る量であればよいが、かかる構成は、水面23が電極5より上方に位置すれば、液自体の自重により確実に担持体4の全面を濡らすことができる。電極5面より測定部3の高さが十分に高ければ、例え注入量を多くしてもこぼれない。なお、既知溶液19の注入量がいずれであっても、工程Dでは、電極間に位置する電気抵抗は電極間に存在する溶液の体積に依存するので、測定する結果は変わらない。無視できうる変動である。
【0021】
被測定体液9は、生体成分を含む体表面および体内にて算出される溶液を指す。具体的には、唾液、尿、血液、汗、皮脂、鼻水、血液等が挙げられるがこれに限定されない。既知の溶液19は、液体の導電率特性が既知であれば、特に限定されない。好適には、超純水は、温度に対する導電率特性等も詳細に調べられており、理想である。さらに 、好ましくは担持体4内で被測定体液とは容易に混ざり合わないことが望ましい。担持体4の大きさが十分に小さい場合は、溶液の拡散は非常に遅いため必須ではないが、例えば、被測定体液が皮脂を含む場合、溶液は有機溶媒を含まない水溶液系である。かかる構成により、工程Dの計測タイミングを工程Bの十分後に行っても問題はなくなる。
【0022】
工程Bの抵抗検知部10において、担持体4に担持させた被測定体液9の抵抗Rは式1のようになる。印加する電圧21は、直流電圧と交流電圧のいずれでもかまわないが、交流電圧が適する。直流電圧は溶液中に含まれる溶存酸素が電気分解しないように全幅振幅値が1V以下であることが望ましい。交流電圧は周波数が高い方が同様の理由で望ましく、具体的には100Hz以上が好ましい。交流電圧の波形は、正弦波、矩形波、三角波等任意の形状から選びうるが、好適には正弦波である。矩形波の場合は、立上りと立下りでの波形劣化が電気抵抗測定に影響しない工夫や周波数が選択される。
【0023】
図3は、工程Bにおける図1のA部近傍の拡大図であり(図3(a))、電極間の等価回路(図3(b))を示す。電極間のインピーダンスZ1は、各電極表面でのキャパシタンスと、担持体に担持された被測定体液の電気抵抗の直列接続として表される。
(式2)
【数2】


(式3)
【数3】


ここでC電極は電極-溶液界面での静電容量、R体液は体液成分の電気抵抗を表し、fは印加電圧21(V1)の周波数である。100Hz以上の交流電圧の場合は、上記キャパシタンス成分が電気抵抗に比べて無視できうるほど小さくなるので、結局電極間のインピーダンスZ1は、式4に示すように被測定体液の電気抵抗R1に等しくなる。さらに、被測定体液の電気抵抗R1は式4のように表せる。
(式4)
【数4】


ここで、ρは体液9の抵抗率[Ωm]、S1は体液9が担持体4の一部にみたされたときの電極上での濡れ面積[m]、dは電極間における液体の長さ[m]、すなわち図3では担持体4の厚み24をあらわす。
【0024】
図4は、工程Dにおける図1のA部近傍の拡大図であり(図4(a))、電極間の等価回路(図4(b))を示す。電極間のインピーダンスZは、各電極表面でのキャパシタンスと、担持体に担持された被測定体液の電気抵抗R1と既知溶液の電気抵抗R溶液R2を用いて以下の式で表される。
(式5)
【数5】


100Hz以上の交流電圧の場合は、上記キャパシタンス成分が電気抵抗に比べて無視できうるほど小さくなるので、結局電極間のインピーダンスZ2は、式6に示すように簡略化できる。
(式6)
【数6】


ここで、R溶液は、R溶液LとR溶液Rの合成抵抗、つまり、体液成分の以外の部分を占める既知溶液の電気抵抗を表す。
(式7)
【数7】



ここで、Vは電極間に印加する電圧21[V]、iは電極を通じてリード線に流れる電流22[A]、ρは液体19の抵抗率[Ωm](既知)、Sは電極全面の表面積、Sは既知の溶液19が電極5または電極6と接した担持体4上での濡れ面積[m2]、d は電極間における液体の長さ[m]、すなわち図3と同様、担持体4の厚み24をあらわす。式1から式7より、工程Aにおいて被測定体液が担持された担持体上の表面積S1は、式8のように求められる。
(式8)
【数8】


工程Fでは、上記の処理が解析制御部12で行われる。さらに、工程Cで測定された電流値に対しても処理を行う。検量線と照らし合わせることにより、測定した電流値から血清中の脂質成分の濃度を算出する。従来の酵素法による分析は、3〜4段階の酵素反応の後に過酸化水素の濃度分析を行うため、正確さに問題が残り、時間もかかるものであったが、本実施の形態のボルタンメトリーによる血清脂質成分分析装置によれば、血清から1段階の酵素反応により生じた遊離脂肪酸を直接測定するため、血清脂質成分の濃度を特異的、簡便、迅速、高感度に定量することができる。工程Gでの補正は、当業者に公知の技術が用いられる。例えば、工程Cでは、被測定体液中の成分が担持体4の全面に担持された前提での濃度換算をしていた場合には、担持体全面の表面積Sと工程Fで求められた実際の担持面積S1を使って濃度の補正が行われる。あるいは、各表面積値に対して予め濃度補正値のテーブルを装置の解析制御部に保持させ、適宜参照する方法でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の適用により、信頼性が高く正確な各体液成分濃度を簡単に入手できるようになり、医療現場での臨床検査のみならず家庭での個人的な健康管理においても有用な情報提供が可能になる。また、各成分に係る基礎研究や応用開発研究において研究速度及び研究精度の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 測定装置
2 採取器具
3 測定部
4 担持体
5 電極
6 電極
7 リード線
8 リード線
9 体液
10 抵抗検知部
11 成分検出部
12 解析制御部
13 温度保持部
14 撹拌部
19 既知の溶液
20 採取面
21 電圧
22 電流
23 水面
24 担持体の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の領域と第2の領域とからなり、前記第1の領域に被測定体液が担持され、前記第2の領域に液抵抗率が既知の溶液が担持される絶縁性の担持体と、
前記被測定体液および前記既知溶液の電気抵抗を測定する抵抗検知部と、
前記被測定体液の電気抵抗および前記既知溶液の電気抵抗を用いて前記第1の領域の面積を類推し、前記第1の領域の面積および前記被測定体液の電気抵抗から前記被測定体液中の成分濃度を検出する成分検出部とを有する体液測定装置。
【請求項2】
分離可能な体液採取具を備え、
前記体液採取具は、前記担持体と、前記担持体を挟んで両側に配置される所定面積の第1の電極および第2の電極とを有する、請求項1に記載の体液測定装置。
【請求項3】
絶縁性の担持体の一部分である第1の領域に被測定体液を担持させる第1工程と、
前記被測定体液の電気抵抗を測定する第2工程と、
前記担持体の前記第1の領域以外の領域である第2の領域に、液抵抗率が既知の溶液を担持させる第3工程と、
前記既知溶液の電気抵抗を測定する第4工程と、
前記被測定体液の電気抵抗および前記既知溶液の電気抵抗を用いて、前記第1の領域の面積を類推する第5工程と、
前記第1の領域の面積と前記被測定体液の電気抵抗から、前記被測定体液中の成分濃度を検出する第6工程とを有する、体液成分の測定方法。
【請求項4】
前記被測定体液は血中成分を含む、請求項3に記載の体液成分の測定方法。
【請求項5】
前記被測定体液が皮脂を含み、前記既知溶液が水溶液である、請求項3に記載の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−33485(P2011−33485A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180306(P2009−180306)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】