説明

体温測定装置

【課題】貼付型体温測定装置の装着時間を長期化するとともに、装着手段の固定状態を検出する。
【解決手段】体に装着して固定する体温測定装置において、装着手段は筐体の上下2つの面に設けられ、最初の装着面として上側の装着手段を使用して体に貼り付けて何度か体温測定し、上側の装着手段の粘着力が弱くなってきたら下側の装着手段を使用することで、装置の連続装着時間を長期化する。体表に貼付した際の非使用面の装着手段にカバーを設け、非使用の装着手段を保護し、さらに非使用時には簡便に収納することができる。累積貼付時間の増加に伴う、中心部のセンサと周辺部のセンサの測定温度差の拡大により、粘着手段の粘着性低下を検出し、粘着手段の適切な交換時期を示唆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体温の測定、特に基礎体温を簡便に測定する体温測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体温を測定するには、脇の下や舌下にプローブ差し込んで測定するが、この場合、測定には5分から10分同じ姿勢を保持する必要がある。基礎体温を測定することは女性の健康を管理する上で有用なことはよく知られている。このため各社から種々の製品が販売されており、いくつかの発明が開示されている。基礎体温は長期間の体温を測定し続ける必要があり、毎回の測定においても毎朝一定時刻に起床し、起床直後に起き上がらずに一定時間測定しなければならないという不便がある。その手間と労力から何十日間にもわたって基礎体温測定を持続させることは困難である。
【0003】
上記課題を解決すべく、近年では人体に装着するタイプの体温計が開発されており(例えば、特許文献1参照)、上記発明によれば、体に装着して体温を測定する体温測定部と表示を行う表示部から構成されており、体温測定部はセンサが内蔵された平面円形のもので、皮膚表面に粘着シートにより貼付する。
【0004】
また、深部体温を測定する非加熱型深部体温計は、体表に接着する装着面と、装着面のセンサ上に重ねた断熱材の上にさらにセンサがある構造を有する(特許文献2参照)。上記体温測定部による深部体温測定に関する発明においては、明確に基礎体温測定時の有効性が示唆されている(例えば特許文献2参照)。上記測定により子供や老人の体温変化を常時モニタリングでき、離れた場所でも体温異常に気づくことができる。また、基礎体温測定に採用することにより、起床時測定の煩わしさを解消して何日間も測定し続けることができる。
【0005】
【特許文献1】特開2007−117268号公報(2−3頁)
【特許文献2】特開2007−212407号公報(2−4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した貼付型体温計の重要な課題の一つは装着時間であり、長時間密着させると密着性が軽減して、正しい体温が測定できない可能性がある。また、長時間装着による、装着手段の能力低下を判断することは困難である。特許文献1の様な体温計では、粘着層が汚れた場合には取り外して洗浄しなければならない不便さがあった。さらに、再び本体に粘着層を取り付ける際に正しい位置に設置する事は容易ではない。その上、センサや基板に及ぶ外力により装置に変形やゆがみなどの損傷を与える恐れもあり、正確な測定値は得がたい。
【0007】
そこで、本発明では上述した問題点を解決し、省スペースで装着しやすくかつ装着後の不快感を軽減し、装置の連続装着時間を長期化すると共に、粘着層の適切な交換時期を示唆する体温測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の体温測定装置は、体に装着して固定する装着手段と体温を測定する体温測定手
段とが複数の面を有する筐体に備えられた体温測定装置であって、装着手段は筐体の所定の少なくとも二つの面にそれぞれ備えられることを特徴とする。
体温測定手段による体温測定が行われている場合には体に装着して固定された装着手段を除く、他の装着手段を保護する保護部材を有することが好ましい。さらに、体温測定手段による体温測定が行われていない場合には装着手段を保護する保護部材を有することが好ましい。体温測定手段は装着手段の固定状態を検出するために一つの面に少なくとも二つのセンサを配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
体温測定装置は少なくとも二つの面に装着手段を有しており、装置の累積貼付時間をより長くすることが可能である。これにより、装置の長寿命化を実現できる。装着手段の能力低下を検出できることから、装着手段の適切な使用期間および装着手段の交換時期を判別することができる。また、装置の固定状態を監視し、常に体表と密着した測定を行うため、正確な温度測定を実現できる。
【0010】
装着手段の粘着層が使用により汚れた場合にも、筐体から装着手段を脱着させることはなく洗浄することが可能であり、外力によるセンサや基板などへの変形やゆがみなどの損傷をおさえることができる。また、装着手段を脱着させないことで、装着手段の設置位置による誤差も発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明を利用した体温測定装置の最適な実施形態を説明する。図1は、本実施形態の体温測定装置の断面図である。体温測定装置は、断熱材を介した上下2つの面の温度勾配より深部体温を算出するために、円平板形状の上下2つの面に体温を測定する体温測定手段であるセンサを備えた形を取る。深部体温計の構造を持つ上記体温測定装置を用いて基礎体温を測定する場合の構造は図1に示すとおり、体への装着機能を有する装着手段は筐体の上下2つの面に設けられている。例えば最初の装着は上側の装着手段である粘着層101を使用して体に貼り付けて何度か体温測定し、粘着層101の粘着力が弱くなってきたら下側の装着手段である粘着層102を使用する。このことにより、装着手段の交換頻度が1/2になり、装置の長寿命化を実現できる。勿論、装着手段を備える面数を増やせば交換頻度はその分だけ減らすことができる。
また、体表に貼付した際の非使用面の装着手段にはカバー19が装着されており、筐体が他の面に粘着することはない。カバーを設けることで露出した粘着面を保護することができる。さらに、非使用時には両装着手段にカバーを取り付け、簡便に収納することができる。
【0012】
さらに、本発明においては装着手段の固定状態を体温測定に用いる体温測定手段によって検出し、ユーザーに知らせる機能もある。図1におけるセンサ部111において測定された温度が、体温と考えられる温度より低いか、使用開始初期より明らかに測定時間が長くなったことを検出し、装着手段の固定状態が低下したことをアナログ的に検出することができる。図4に示す、所定の時間が経過しても体温と見られる温度に達しない場合、所定の時間内に測定値が安定しない場合に適用する。また、図5に示す、センサ111とセンサ112の検出温度差の拡大により固定状態の低下を検出する。ここで、不適正な測定が検出された場合には、LEDが点灯してユーザーに装着手段の機能低下を知らせることができる。
【0013】
体温測定装置は、円板状に形成され、上面側に粘着層101、および下面側に粘着層102を備え、使用時はいずれかの面の粘着層により皮膚表面に貼り付けられる。例えば、上面の粘着層101を始めに使用した場合、ある程度使用後に粘着層101の粘着力が低下したら、粘着層102を使用する。粘着層は、取り外しや取り替えの必要はないため、
粘着剤を塗布した粘着層とするなど、シート状でなくともよい。
【0014】
体温測定装置は、中心部のセンサ111と、周辺部のセンサ112と、断熱材13と,センサを駆動する回路部を含んで構成される回路基板14と、電池16と、センサ、回路基板、電池、断熱材を収容するケース18、およびケース18と粘着層を保護するケース19とを備えて構成される。
【0015】
センサ111およびセンサ112は、白金測温抵抗体あるいはサーミスタ測温体などで構成された測温素子であり、ケース18の外側の導電性金属で形成された端子内に配置される。測定面の中心部の体表温度を測定する中心部のセンサ111は測定面の中心部に設置され、周辺部のセンサは、中心部より離れた位置に設置される。また、センサ111およびセンサ112を覆う断熱材13があり、断熱材をはさんで同位置に下面のセンサ111およびセンサ112が設置される。センサは粘着層と密着しており、センサが体表面にきわめて近い位置に置かれて測定できる。
【0016】
粘着層101および102は、シート状の粘着層を接着させるか、または粘着性材料を塗布したものである。粘着性材料は皮膚になじむものを使用し、水洗いにより皮脂や汗などが除去されるとともに、粘着力が回復するものが使用される。これによれば交換頻度を削減すると共にかぶれや違和感を発生することなく、装着が可能である。
粘着力の低下は、生体の皮脂や汗等による汚れによって起こるため、水洗いなどの洗浄を行うことにより汚れを除去し、粘着力の回復をはかり、さらに清潔な粘着面を保つことができる。
従来では、粘着層の洗浄を行うには機器から取り外していたが、粘着層は計測において最も重要なセンサ部と密着しているものであり、取り外しや取り付けには十分な注意が必要であり、容易ではないため、粘着層の取り外し作業は行わない方がよい。取り外さない粘着層で洗浄を行い、適切な密着性を保ち、密着性を高めることにより、より正確な体温を測定することができる。
【0017】
測定面を変更した場合の測定面の切り替え操作は、図示しない切り替えスイッチにより行うか、粘着層101と粘着層102の温度勾配より自動で判別されるものとする。
【0018】
また、測定時には使用していない面の粘着層が衣服等に接着するのを防止するため、体温測定装置にカバーを設けた。図2は、粘着層101を用いて体表に貼付する際の体温測定装置の斜視図である。カバーであるケース19は使用時に取り外し可能または取り外さず粘着層の開放が可能であり、たとえばケース18の外側面とケース19の内側面にネジ込み式の構造を備えている。測定時は体表への装着に使用しない非使用面を、衣服やふとんなど外部のものから接触を断ち、粘着層を保護する。体温測定装置を保護することにもなり、さらに外気と本体温計との間の断熱効果もある程度得ることができる。
図3は体温測定装置の収納時の外観図である。ケース19は測定時の非使用面のカバーとなるだけでなく、非測定時の粘着層を保護することもできる。
【0019】
体温測定開始から所定の時間が経過すると、測定された体温は内蔵メモリに記憶される。内蔵メモリに記録されたデータは図示しない出力端子で送信されるか、無線通信を介して、図示しない読み取り装置で測定した体温を確認する。また、体温測定時に出力端子より読み取り装置を接続して使用することもできる。体温測定装置に液晶パネルなどの表示部を設け、測定した体温を表示してもよい。
【0020】
体温測定の開始は、図示しないスイッチにより行うか、またはセンサの温度が体温の温度範囲である30度前後になると自動的に測定を始める。測定の終了は、基礎体温測定の場合は測定開始から半日程度、その他の連続測定の場合は機器を取り外した際のセンサの
測定温度低下で判断し、自動的に終了できるものでよい。またはスイッチにより測定の終了を操作してもよい。
【0021】
また、本体温測定装置には、装置の固定状態の低下、つまり粘着層の粘着力が低下したことを検出する手段を備える。図4は、本発明における体温測定装置の測定毎の貼付時間と装置による測定温度の関係図である。測定毎の装着開始時刻を0としたときの装着時間を横軸に、装置により測定された温度を縦軸にとる。装置の装着層の使用回数が少ない、使用開始初期の測定温度曲線を基準線21とし、初期測定の平衡状態の温度を体温Tとみなす。装置の固定状態により、温度曲線は測定可能限界22、測定不可23、測定エラー24に大別される。長期使用により装置の固定状態が低下し、密着性が低下した測定では、温度曲線は測定可能限界22の傾向を示し上述の温度曲線よりなだらかなカーブとなり、測定に時間がかかるようになる。測定開始より体温Tが得られるまでの時間が、所定の時間内に収まらなくなるか、測定不可23に示す様に測定値が体温と考えられる温度Tまで上昇しなくなると、測定不可と判断する。また測定エラー24の様な場合は、測定エラーとみなす。
【0022】
図5は、本発明における体温測定装置の装着手段の、累積貼付時間と、中心部のセンサ111の測定値と周辺部のセンサ112の測定値の差から適正装着時間を求める関係図である。横軸には装着手段の粘着層の一つについての累積貼付時間を、縦軸には中心部のセンサ111と周辺部のセンサ112の測定温度差Δt(℃)をとる。中心部に位置するセンサ111と周辺部に位置するセンサ112を備える体温測定装置では、装置の固定状態の低下により、体表と装置の密着度が減少する。上記の場合、体表と装置との解離度が大きくなるのは、中心部より周辺部であり、この場合はΔtが累積貼付時間と共に増大する。本発明では、Δtの上限を設定することで、装置の固定状態の低下を検出する。
たとえば粘着層101を初めて貼付した際の、中心部のセンサ111と周辺部のセンサ112の測定値より、センサ111とセンサ112の測定温度の差Δtを記録する。2回目以降の測定では、同様にセンサ111とセンサ112の測定温度の差Δtを算出し、初回の測定値と比較する。初回以降の測定ではすべてこの温度差Δtを記録し、初回のΔtと比較する。通常の測定ではΔtはほとんど0に近いため、Δtがたとえば0.5℃程度になれば粘着層101の固定状態が低下したと判断する。粘着層101が低下したと判断した場合は、LEDを点灯させてユーザーに粘着面の取替えの必要性を知らせることができる。
【0023】
基礎体温測定に使用する場合、ユーザーは一回使用あたり数時間ずつ、毎日貼付し測定する。貼付毎に付く皮膚や皮脂などの汚れは、毎日の測定では気がつきにくいが、汚れによる粘着力の低下は深刻な問題となる。粘着力が低下した状態では、装置と体表に隙間ができ、密着しないため、正確な体温測定ができなくなる。基礎体温計は毎日測定するのが望ましいことを考えると、固定状態が低下した装置で測り続けることは問題であり、装着手段の取替えを知らせることは有効である。
さらに、基礎体温測定以外の体温の連続測定でも、装着した状態において寝返りなどにより装置と体表の間の接着状態が低下した場合の検出ができ、ユーザーに知らせることができる。装着手段の固定状態低下による不正確な測定を低減するために有効である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態における体温測定装置の断面図である。
【図2】本発明の実施形態における体温測定装置の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態における体温測定装置の非使用時の外観図である。
【図4】本発明における体温測定装置の貼付時間と測定温度との関係を示した図である。
【図5】本発明の体温測定装置における累積貼付時間と、中心部のセンサの測定値と周辺部のセンサの測定値との差から適正装着時間を求める関係を示した図である。
【符号の説明】
【0025】
101 粘着層
102 粘着層
111 センサ
112 センサ
13 断熱材
14 回路基板
15 素子
16 電池
18 ケース
19 ケース
21 基準線
22 測定可能限界
23 測定不可
24 測定エラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体に装着して固定する装着手段と体温を測定する体温測定手段とが複数の面を有する筐体に備えられた体温測定装置であって、
前記装着手段は前記筐体の所定の少なくとも二つの面にそれぞれ備えられる体温測定装置。
【請求項2】
前記体温測定手段による体温測定が行われている場合には体に装着して固定された装着手段を除く、他の装着手段を保護する保護部材を有することを特徴とする請求項1に記載の体温測定装置。
【請求項3】
前記体温測定手段による体温測定が行われていない場合には前記装着手段を保護する保護部材を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の体温測定装置。
【請求項4】
前記体温測定手段は前記装着手段の固定状態を検出するために一つの面に少なくとも二つのセンサを配置することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の体温測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−229272(P2009−229272A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75640(P2008−75640)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】