説明

体温調節システム

【課題】 利用者の体温を利用者にとって快適な温度に調節することができる体温調節システムを提供する。
【解決手段】 体温調節システムは、利用者の自律神経のうち交感神経および副交感神経の優位状態を測定する心電計と、利用者に対して加温および冷却を実行するペルチェ素子と、心電計によって交感神経が優位であると測定されたとき(ステップS61)にペルチェ素子に冷却(ステップS63)または加温(ステップS64)を実行させる制御部とを備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者の体温を調節する体温調節システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、利用者の体温を調節するシステムとして、利用者の体温を検出する温度センサと、利用者の身体を冷暖する温調部と、温度センサによって検出される利用者の体温に基づいて温調部に利用者の身体を冷暖させる制御部とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−102020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、暑がりの人や寒がりの人が存在するように、同じ温度であっても温度の感じ方は個人差があるので、従来のシステムにおいては、調節された体温が利用者にとって快適な温度であるとは限らないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、利用者の体温を利用者にとって快適な温度に調節することができる体温調節システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の体温調節システムは、利用者の自律神経のうち交感神経および副交感神経の優位状態を測定する自律神経状態測定部と、前記利用者に対して加温および冷却の少なくとも一方の動作を実行する体温調整動作部と、前記自律神経状態測定部によって前記交感神経が優位であると測定されたときに前記体温調整動作部に前記動作を実行させる制御部とを備えていることを特徴とする。
【0007】
人間は、暑いと感じるときや、寒いと感じるときに、ストレスによって自律神経のうち交感神経が優位になる。本願の発明者は、この現象に着目することによって、人によって異なる温度の感じ方に対応できる体温調節システムを発明した。すなわち、本発明の体温調節システムは、利用者の体温を調節するための動作を従来のように温度という客観的な基準のみによって実行するのではなく、交感神経が優位であるという利用者次第の基準によって実行するので、利用者の体温を利用者にとって快適な温度に調節することができる。
【0008】
また、本発明の体温調節システムの前記体温調整動作部は、前記利用者に対して加温および冷却の両方の動作を実行可能であり、前記制御部は、前記利用者に対して加温および冷却の一方の動作を前記体温調整動作部に実行させた後、所定の時間、前記自律神経状態測定部によって前記交感神経が優位であると測定され続けたときに、前記利用者に対して加温および冷却の他方の動作を前記体温調整動作部に実行させることが好ましい。
【0009】
利用者に対して加温および冷却の一方の動作が実行されても、所定の時間、利用者の交感神経が優位であり続ける場合には、例えば、利用者が暑いと感じていたのに加温したり、利用者が寒いと感じていたのに冷却したりした可能性がある。本発明の体温調節システムは、このような場合に、利用者に対する加温の動作と、利用者に対する冷却の動作とを切り替えるので、利用者の体温を利用者にとって更に快適な温度に調節することができる。
【0010】
また、本発明の体温調節システムは、前記利用者の体温を測定する体温測定部を備えており、前記制御部は、前記自律神経状態測定部によって前記交感神経が優位であると測定されたときに、前記体温測定部によって測定された前記体温に基づいて前記体温調整動作部に前記動作を実行させることが好ましい。
【0011】
利用者が暑いと感じたから利用者の交感神経が優位になったのか、利用者が寒いと感じたから利用者の交感神経が優位になったのかは、利用者の体温に基づいて推定することができる。例えば、利用者の体温が上がっていて利用者の交感神経が優位になっている場合には、利用者が暑いと感じていると推定することができる。本発明の体温調節システムは、利用者の体温を調節するための動作を、交感神経の優位状態だけではなく、利用者の体温にも基づいて実行するので、利用者の体温を利用者にとって更に快適な温度に調節することができる。
【0012】
また、本発明の体温調節システムは、前記利用者の発汗状態を測定する発汗状態測定部を備えており、前記制御部は、前記自律神経状態測定部によって前記交感神経が優位であると測定されたときに、前記発汗状態測定部によって測定された前記発汗状態に基づいて前記体温調整動作部に前記動作を実行させることが好ましい。
【0013】
利用者が暑いと感じたから利用者の交感神経が優位になったのか、利用者が寒いと感じたから利用者の交感神経が優位になったのかは、利用者の発汗状態に基づいて推定することができる。例えば、利用者が発汗していて利用者の交感神経が優位になっている場合には、利用者が暑いと感じていると推定することができる。本発明の体温調節システムは、利用者の体温を調節するための動作を、交感神経の優位状態だけではなく、利用者の発汗状態にも基づいて実行するので、利用者の体温を利用者にとって更に快適な温度に調節することができる。
【0014】
また、本発明の体温調節システムは、前記利用者の動きを測定する動き測定部を備えており、前記体温調整動作部は、前記利用者に対して冷却の動作を実行可能であり、前記制御部は、前記利用者が横たわって停止していることが前記動き測定部によって測定された場合、前記自律神経状態測定部によって前記交感神経が優位であると測定されたときに、前記利用者に対して冷却の動作を前記体温調整動作部に実行させることが好ましい。
【0015】
人間は、睡眠に入るときに体温を放出して深部体温を下降させるようになっていることが知られている。そのため、人間は、外部から少し冷却されることによって、睡眠に入り易くなり、良い睡眠をとることができる。本発明の体温調節システムは、利用者が横たわって停止していることによって利用者が睡眠に入ろうとしていることを判断し、利用者が睡眠に入ろうとしている場合、利用者の自律神経のうち交感神経が優位であるとき、すなわち利用者がリラックスできていないときに、利用者に対して冷却の動作を実行する。したがって、本発明の体温調節システムは、睡眠に入ろうとしている利用者の体温を利用者にとって快適な温度に調節して、利用者を睡眠に誘導することができる。
【0016】
また、本発明の体温調節システムは、前記利用者によって携帯可能であることが好ましい。
【0017】
この構成により、本発明の体温調節システムは、利用者が移動する場合であっても利用者の体温を利用者にとって快適な温度に調節することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の体温調節システムは、利用者の体温を利用者にとって快適な温度に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る体温調節システムの外観斜視図である。
【図2】図1に示すセンサ装置の外観斜視図である。
【図3】図1に示すセンサ装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示す本体装置の外観斜視図である。
【図5】図1に示す本体装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図1に示す体温調節システムの動作のフローチャートである。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る体温調節システムのセンサ装置の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る体温調節システムの動作のフローチャートである。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る体温調節システムのセンサ装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第3の実施の形態に係る体温調節システムの動作のフローチャートである。
【図11】本発明の第4の実施の形態に係る体温調節システムのセンサ装置の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第4の実施の形態に係る体温調節システムの動作のフローチャートである。
【図13】本発明の第5の実施の形態に係る体温調節システムの外観斜視図である。
【図14】図13に示す本体装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る体温調節システムの構成について説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る体温調節システム10の外観斜視図である。
【0023】
図1に示すように、体温調節システム10は、利用者90の胸部91に取り付けられるセンサ装置20と、センサ装置20と無線で通信可能な本体装置30とを備えている。
【0024】
図2は、センサ装置20の外観斜視図である。
【0025】
図2に示すように、センサ装置20は、裏面21aで利用者90(図1参照。)の胸部91(図1参照。)に貼り付けられる粘着シート21と、粘着シート21の表面21b側に着脱可能に取り付けられる筐体22とを備えている。粘着シート21は、利用者90の心臓から発せられる起電力を読み取るための図示していない2つの電極が設けられている。これらの電極は、粘着シート21の表面21b側に図示していない突起部を有しており、この突起部が筐体22に形成された図示していない2つの穴にそれぞれ挿し込まれることによって筐体22と電気的に接続されるとともに筐体22を粘着シート21に固定するようになっている。また、これらの電極のうち粘着シート21の裏面21a側の部分は、利用者90の胸部91に貼り付けられる粘着剤であって上述した突起部と電気的に接続された導電性の粘着剤によって形成されていても良いし、上述した突起部の根本が粘着シート21の裏面21a側に貫通することによって形成されていても良いし、その他の構成によって形成されていても良い。センサ装置20は、利用者90に取り付けられるので、小型で軽量のものが望ましい。
【0026】
図3は、センサ装置20の構成を示すブロック図である。
【0027】
図3に示すように、センサ装置20は、装置全体を制御するための制御部22aと、制御部22aによって実行されるプログラムなどが記憶された記憶部22bと、利用者90(図1参照。)の心臓から発せられる起電力によって生体の異なる部位に生じる電位差を測定する心電計22cと、心電計22cによって測定されたデータを本体装置30(図1参照。)に無線で送信する送信部22dとを備えている。制御部22aは、CPU(Central Processing Unit)などによって構成されている。記憶部22bは、ROM(Read Only Memory)などによって構成されている。心電計22cは、利用者90の心臓から発せられる起電力によって生体の異なる部位に生じる電位差を、粘着シート21の上述した電極を介して測定するようになっている。制御部22a、記憶部22b、心電計22cおよび送信部22dは、筐体22(図2参照。)の内部に収納されている。また、筐体22の内部には、制御部22aなどに電力を供給するための図示していない電池も収納されている。
【0028】
図4は、本体装置30の外観斜視図である。
【0029】
図4に示すように、本体装置30は、内側の面31aで利用者90(図1参照。)の頸部92(図1参照。)に接触する体温調整動作部としての頸部冷暖部31を備えている。頸部冷暖部31は、利用者90の頸部92に取り付けられるために略U字型に形成されており内側に面31aを有するU字部31bと、U字部31bの外側の面に複数個取り付けられた四角形のブロックであるペルチェ素子31cとを備えている。また、本体装置30は、一部が頸部冷暖部31のペルチェ素子31cのうちU字部31b側とは反対側の面に密接して取り付けられて内部に水を循環させるチューブ32と、頸部冷暖部31のペルチェ素子31cに接続された電力供給用のケーブル33と、チューブ32およびケーブル33が接続された筐体34と、筐体34に接続された電力供給用のケーブル35と、ケーブル35が接続された筐体36とを備えている。頸部冷暖部31は、利用者90の体温のうち深部体温を調節するための動作として、利用者90に対して加温および冷却を実行するようになっている。ペルチェ素子31cは、U字部31bに接する面と、チューブ32に接する面とのうち一方が発熱して、他方が吸熱するように、頸部冷暖部31に配置されている。ペルチェ素子31cのうちU字部31bに接する面が発熱するとき、U字部31bは、ペルチェ素子31cで発生した熱を利用者90の頸部92の全周に伝達することによって、利用者90に対して加温を実行するようになっている。また、ペルチェ素子31cのうちU字部31bに接する面が吸熱するとき、U字部31bは、利用者90の頸部92の全周の熱をペルチェ素子31cに伝達することによって、利用者90に対して冷却を実行するようになっている。筐体34および筐体36は、利用者90が身に付けているベルト93(図1参照。)に取り付けられるようになっている。筐体34の内部には、チューブ32の内部の水を冷却するための図示していないラジエータが収納されている。
【0030】
図5は、本体装置30の構成を示すブロック図である。
【0031】
図5に示すように、本体装置30は、頸部冷暖部31(図4参照。)を構成する上述したペルチェ素子31cと、上述したラジエータを冷却するファン34aと、チューブ32(図4参照。)の内部の水を循環させるためのポンプ34bと、装置全体を制御するための制御部36aと、制御部36aによって実行されるプログラムなどが記憶された記憶部36bと、センサ装置20(図1参照。)の送信部22d(図3参照。)によって送信されたデータを無線で受信する受信部36cとを備えている。ファン34aおよびポンプ34bは、筐体34(図4参照。)の内部に収納されている。制御部36aは、CPUなどによって構成されている。記憶部36bは、ROMなどによって構成されている。制御部36a、記憶部36bおよび受信部36cは、筐体36(図4参照。)の内部に収納されている。また、筐体36の内部には、制御部36aなどに電力を供給するための図示していない電池も収納されている。
【0032】
なお、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度がペルチェ素子31cによって下げられるとき、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面の温度は上がる。ここで、制御部36aは、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げるときに、ファン34aおよびポンプ34bにも電圧を供給するようになっている。これによって、チューブ32の内部の水は、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面と、上述したラジエータとの間をポンプ34bによって循環させられる。その結果、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面に発生した熱は、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面からチューブ32の内部の水に吸収された後、チューブ32の内部の水からラジエータを介してファン34aによって外気に放出される。したがって、頸部冷暖部31は、内側の面31aによって利用者90(図1参照。)の頸部92(図1参照。)を効率的に冷却することができる。
【0033】
また、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度がペルチェ素子31cによって上げられるとき、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面の温度は下がる。ここで、制御部36aは、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を上げるときに、ファン34aおよびポンプ34bにも電圧を供給するようになっている。これによって、チューブ32の内部の水は、ペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面と、上述したラジエータとの間をポンプ34bによって循環させられる。その結果、外気の熱は、ファン34aによってラジエータを介してチューブ32の内部の水に吸収された後、チューブ32の内部の水からペルチェ素子31cのうちチューブ32に接する面に放出される。したがって、頸部冷暖部31は、内側の面31aによって利用者90の頸部92を効率的に加温することができる。
【0034】
次に、体温調節システム10(図1参照。)の動作について説明する。
【0035】
センサ装置20(図3参照。)の制御部22a(図3参照。)は、センサ装置20の電源が入っている間、心電計22c(図3参照。)によって測定されたデータを送信部22d(図3参照。)によって本体装置30(図5参照。)に無線で送信し続けている。そして、本体装置30の制御部36a(図5参照。)は、本体装置30の電源が入っている間、センサ装置20の送信部22dによって送信されたデータを受信部36c(図5参照。)によって無線で受信し続けている。なお、これらの通信は、間欠的に行われるようになっていても良く、どの程度の期間を置いて繰り返されるかは設計次第である。
【0036】
図6は、体温調節システム10(図1参照。)の動作のフローチャートである。
【0037】
図6に示すように、本体装置30(図5参照。)の制御部36a(図5参照。)は、受信部36c(図5参照。)によって受信した心電計22c(図3参照。)の測定データに基づいて、利用者90(図1参照。)の自律神経のうち交感神経が、所定の時間、優位状態であるか否かを判断する(ステップS61)。このように、心電計22cおよび制御部36aは、利用者90の自律神経のうち交感神経および副交感神経の優位状態を測定するようになっており、本発明の自律神経状態測定部を構成している。
【0038】
ここで、自律神経のうち交感神経が優位状態であるか否かを判断する方法について説明する。この方法は、心電図を用いた公知の方法である。制御部36aは、心電計22cの測定データである心電図に基づいて心拍のRR間隔の変動を周波数解析し、主に交感神経を反映する低周波成分LFと、主に副交感神経を反映する高周波成分HFとを求め、この比であるLF/HF比が所定の値より大きければ、自律神経のうち交感神経が優位状態であると判断する。
【0039】
制御部36aは、自律神経のうち交感神経が、所定の時間、優位状態ではないとステップS61において判断すると、再びステップS61の処理を行う。一方、制御部36aは、自律神経のうち交感神経が、所定の時間、優位状態であるとステップS61において判断すると、ペルチェ素子31c(図5参照。)に供給する電圧の制御状態が加温状態であるか否かを判断する(ステップS62)。ここで、加温状態とは、温度変更部31(図4参照。)の内側の面31a(図4参照。)の温度が人間の平均的な深部体温より高い所定の温度になるように制御された状態である。
【0040】
制御部36aは、ペルチェ素子31cに供給する電圧の制御状態が加温状態であるとステップS62において判断すると、ペルチェ素子31cに供給する電圧の制御状態を冷却状態にして(ステップS63)、再びステップS61の処理を行う。ここで、冷却状態とは、温度変更部31の内側の面31aの温度が人間の平均的な深部体温より低い所定の温度になるように制御された状態である。このように、制御部36aは、頸部冷暖部31に加温を実行させた後、所定の時間、利用者90の交感神経が優位であると測定され続けたときに、頸部冷暖部31に冷却を実行させるようになっている。
【0041】
制御部36aは、ペルチェ素子31cに供給する電圧の制御状態が加温状態ではないとステップS62において判断すると、ペルチェ素子31cに供給する電圧の制御状態を加温状態にして(ステップS64)、再びステップS61の処理を行う。このように、制御部36aは、頸部冷暖部31に冷却を実行させた後、所定の時間、利用者90の交感神経が優位であると測定され続けたときに、頸部冷暖部31に加温を実行させるようになっている。
【0042】
人間の体は、体温調節システム10の動作に対して、遅れて反応することが考えられる。例えば、制御部36aが頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を変化させた後、自律神経の状態が変化するまでは、多少の時間がかかることが考えられる。したがって、制御部36aは、ステップS63の処理の直後に再びステップS61の処理に戻るときや、ステップS64の処理の直後に再びステップS61の処理に戻るときなどに、適当な待ち時間を入れるようにしても良い。
【0043】
以上に説明したように、体温調節システム10は、従来のように温度という客観的な基準のみによって加温または冷却を実行するのではなく、交感神経が優位であるという利用者90次第の基準によって加温または冷却を実行するので、利用者90の深部体温を利用者90にとって快適な温度に調節することができる。
【0044】
利用者90が加温および冷却の一方を実行されても、所定の時間、利用者90の交感神経が優位であり続ける場合には、例えば、利用者90が暑いと感じていたのに加温したり、利用者90が寒いと感じていたのに冷却したりした可能性がある。体温調節システム10は、このような場合に、加温と、冷却とを切り替えるので、利用者90の深部体温を利用者90にとって更に快適な温度に調節することができる。
【0045】
(第2の実施の形態)
まず、本発明の第2の実施の形態に係る体温調節システムの構成について説明する。
【0046】
本実施の形態に係る体温調節システムの構成は、以下に説明するセンサ装置20(図7参照。)の構成を除いて、第1の実施の形態に係る体温調節システム10(図1参照。)の構成と同様であるので、体温調節システム10の構成と同様な構成については体温調節システム10の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0047】
図7は、本実施の形態に係る体温調節システムのセンサ装置20の構成を示すブロック図である。
【0048】
図7に示すように、本実施の形態に係るセンサ装置20の構成は、利用者90の体温のうち体表面温を測定する体温測定部としての体温計122aを第1の実施の形態に係る体温調節システム10(図1参照。)のセンサ装置20(図3参照。)が筐体22(図2参照。)の内部に備えた構成と同様である。
【0049】
次に、本実施の形態に係る体温調節システムの動作について説明する。
【0050】
センサ装置20(図7参照。)の制御部22a(図7参照。)は、センサ装置20の電源が入っている間、心電計22c(図7参照。)および体温計122a(図7参照。)によって測定されたデータを送信部22d(図7参照。)によって本体装置30(図5参照。)に無線で送信し続けている。そして、本体装置30の制御部36a(図5参照。)は、本体装置30の電源が入っている間、センサ装置20の送信部22dによって送信されたデータを受信部36c(図5参照。)によって無線で受信し続けている。なお、これらの通信は、間欠的に行われるようになっていても良く、どの程度の期間を置いて繰り返されるかは設計次第である。
【0051】
図8は、本実施の形態に係る体温調節システムの動作のフローチャートである。
【0052】
図8に示すように、本体装置30(図5参照。)の制御部36a(図5参照。)は、受信部36c(図5参照。)によって受信した心電計22c(図7参照。)の測定データに基づいて、利用者90(図1参照。)の自律神経のうち交感神経が優位状態であるか否かを判断する(ステップS161)。
【0053】
制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態ではないとステップS161において判断すると、再びステップS161の処理を行う。一方、制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態であるとステップS161において判断すると、受信部36cによって受信した体温計122a(図7参照。)の測定データに基づいて、利用者90の体表面温が上昇しているか否かを判断する(ステップS162)。
【0054】
制御部36aは、利用者90の体表面温が上昇しているとステップS162において判断すると、ペルチェ素子31c(図5参照。)に供給する電圧を制御して頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げて(ステップS163)、再びステップS161の処理を行う。このように、制御部36aは、利用者90の交感神経が優位であると測定されたときに、体温計122aによって測定された利用者90の体表面温に基づいて頸部冷暖部31に冷却を実行させるようになっている。
【0055】
制御部36aは、利用者90の体表面温が上昇していないとステップS162において判断すると、ペルチェ素子31cに供給する電圧を制御して頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を上げて(ステップS164)、再びステップS161の処理を行う。このように、制御部36aは、利用者90の交感神経が優位であると測定されたときに、体温計122aによって測定された利用者90の体表面温に基づいて頸部冷暖部31に加温を実行させるようになっている。
【0056】
以上においては、制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態であるとステップS161において判断した後、利用者90の体表面温が上昇しているか否かによって頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を制御するようになっているが、他の方法によって制御するようになっていても良い。例えば、制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態であるとステップS161において判断した後、利用者90の体表面温が上昇しているときに頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げて、利用者90の体表面温が下降しているときに頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を上げて、利用者90の体表面温が変化していないときに頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を変化させないようになっていても良い。また、制御部36aは、利用者90の体表面温の変化によって頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を制御するのではなく、利用者90の体表面温そのものによって頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を制御するようになっていても良い。例えば、制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態であるとステップS161において判断した後、利用者90の体表面温が所定の温度に対して高いときに頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げて、利用者90の体表面温が所定の温度に対して低いときに頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を上げて、利用者90の体表面温が所定の温度であるときに頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を変化させないようになっていても良い。
【0057】
また、制御部36aは、利用者90の体表面温が上昇しているとステップS162において判断する度に頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げ続けるのではなく、所定の温度に達した場合には、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げることを止めるようになっていても良い。同様に、制御部36aは、利用者90の体表面温が上昇していないとステップS162において判断する度に頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を上げ続けるのではなく、所定の温度に達した場合には、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を上げることを止めるようになっていても良い。
【0058】
また、制御部36aは、利用者90の体表面温が上昇しているとステップS162において判断する度に頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を段階的に下げるのではなく、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を、人間の平均的な深部体温より低い一定の温度に維持するようになっていても良い。同様に、制御部36aは、利用者90の体表面温が上昇していないとステップS162において判断する度に頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を段階的に上げるのではなく、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を、人間の平均的な深部体温より高い一定の温度に維持するようになっていても良い。
【0059】
また、人間の体は、本実施の形態に係る体温調節システムの動作に対して、遅れて反応することが考えられる。例えば、制御部36aが頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を変化させた後、自律神経の状態が変化するまでは、多少の時間がかかることが考えられる。したがって、制御部36aは、ステップS163の処理の直後に再びステップS161の処理に戻るときや、ステップS164の処理の直後に再びステップS161の処理に戻るときなどに、適当な待ち時間を入れるようにしても良い。
【0060】
以上に説明したように、本実施の形態に係る体温調節システムは、従来のように温度という客観的な基準のみによって加温または冷却を実行するのではなく、交感神経が優位であるという利用者90次第の基準によって加温または冷却を実行するので、利用者90の深部体温を利用者90にとって快適な温度に調節することができる。
【0061】
利用者90が暑いと感じたから利用者90の交感神経が優位になったのか、利用者90が寒いと感じたから利用者90の交感神経が優位になったのかは、利用者90の体表面温に基づいて推定することができる。例えば、利用者90の体表面温が上がっていて利用者90の交感神経が優位になっている場合には、利用者90が暑いと感じていると推定することができる。本実施の形態に係る体温調節システムは、交感神経の優位状態だけではなく、利用者90の体表面温にも基づいて加温または冷却を実行するので、利用者90の深部体温を利用者90にとって更に快適な温度に調節することができる。
【0062】
なお、本実施の形態において、体温計122aは、筐体22の内部に収納されているが、もちろん筐体22の外部に筐体22とは別体として設けられていても良い。
【0063】
また、本実施の形態において、体温計122aは、利用者90の体表面温を測定するようになっているが、利用者90の深部体温を測定するようになっていても良い。体温計122aが利用者90の深部体温を測定するようになっている場合、制御部36aは、体温計122aの測定データに基づいて利用者90の深部体温が上昇しているか否かをステップS162において判断し、利用者90の深部体温が上昇しているとステップS162において判断するとステップS163の処理を実行し、利用者90の深部体温が上昇していないとステップS162において判断するとステップS164の処理を実行する。
【0064】
(第3の実施の形態)
まず、本発明の第3の実施の形態に係る体温調節システムの構成について説明する。
【0065】
本実施の形態に係る体温調節システムの構成は、以下に説明するセンサ装置20(図9参照。)の構成を除いて、第1の実施の形態に係る体温調節システム10(図1参照。)の構成と同様であるので、体温調節システム10の構成と同様な構成については体温調節システム10の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
図9は、本実施の形態に係る体温調節システムのセンサ装置20の構成を示すブロック図である。
【0067】
図9に示すように、本実施の形態に係るセンサ装置20の構成は、利用者90の発汗状態を測定するための発汗状態測定部としての湿度計222aを第1の実施の形態に係る体温調節システム10(図1参照。)のセンサ装置20(図3参照。)が筐体22(図2参照。)の内部に備えた構成と同様である。
【0068】
次に、本実施の形態に係る体温調節システムの動作について説明する。
【0069】
センサ装置20(図9参照。)の制御部22a(図9参照。)は、センサ装置20の電源が入っている間、心電計22c(図9参照。)および湿度計222a(図9参照。)によって測定されたデータを送信部22d(図9参照。)によって本体装置30(図5参照。)に無線で送信し続けている。そして、本体装置30の制御部36a(図5参照。)は、本体装置30の電源が入っている間、センサ装置20の送信部22dによって送信されたデータを受信部36c(図5参照。)によって無線で受信し続けている。なお、これらの通信は、間欠的に行われるようになっていても良く、どの程度の期間を置いて繰り返されるかは設計次第である。
【0070】
図10は、本実施の形態に係る体温調節システムの動作のフローチャートである。
【0071】
図10に示すように、本体装置30(図5参照。)の制御部36a(図5参照。)は、受信部36c(図5参照。)によって受信した心電計22c(図9参照。)の測定データに基づいて、利用者90(図1参照。)の自律神経のうち交感神経が優位状態であるか否かを判断する(ステップS261)。
【0072】
制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態ではないとステップS261において判断すると、再びステップS261の処理を行う。一方、制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態であるとステップS261において判断すると、受信部36cによって受信した湿度計222a(図9参照。)の測定データに基づいて、利用者90が発汗しているか否かを判断する(ステップS262)。
【0073】
制御部36aは、利用者90が発汗しているとステップS262において判断すると、ペルチェ素子31c(図5参照。)に供給する電圧を制御して頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げて(ステップS263)、再びステップS261の処理を行う。このように、制御部36aは、利用者90の交感神経が優位であると測定されたときに、湿度計222aによって測定された発汗状態に基づいて頸部冷暖部31に冷却を実行させるようになっている。
【0074】
制御部36aは、利用者90が発汗していないとステップS262において判断すると、ペルチェ素子31cに供給する電圧を制御して頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を上げて(ステップS264)、再びステップS261の処理を行う。このように、制御部36aは、利用者90の交感神経が優位であると測定されたときに、湿度計222aによって測定された発汗状態に基づいて頸部冷暖部31に加温を実行させるようになっている。
【0075】
制御部36aは、利用者90が発汗しているとステップS262において判断する度に頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げ続けるのではなく、所定の温度に達した場合には、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げることを止めるようになっていても良い。同様に、制御部36aは、利用者90が発汗していないとステップS262において判断する度に頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を上げ続けるのではなく、所定の温度に達した場合には、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を上げることを止めるようになっていても良い。
【0076】
また、制御部36aは、利用者90が発汗しているとステップS262において判断する度に頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を段階的に下げるのではなく、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を、人間の平均的な深部体温より低い一定の温度に維持するようになっていても良い。同様に、制御部36aは、利用者90が発汗していないとステップS262において判断する度に頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を段階的に上げるのではなく、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を、人間の平均的な深部体温より高い一定の温度に維持するようになっていても良い。
【0077】
また、人間の体は、本実施の形態に係る体温調節システムの動作に対して、遅れて反応することが考えられる。例えば、制御部36aが頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を変化させた後、自律神経の状態が変化するまでは、多少の時間がかかることが考えられる。したがって、制御部36aは、ステップS263の処理の直後に再びステップS261の処理に戻るときや、ステップS264の処理の直後に再びステップS261の処理に戻るときなどに、適当な待ち時間を入れるようにしても良い。
【0078】
以上に説明したように、本実施の形態に係る体温調節システムは、従来のように温度という客観的な基準のみによって加温または冷却を実行するのではなく、交感神経が優位であるという利用者90次第の基準によって加温または冷却を実行するので、利用者90の深部体温を利用者90にとって快適な温度に調節することができる。
【0079】
利用者90が暑いと感じたから利用者90の交感神経が優位になったのか、利用者90が寒いと感じたから利用者90の交感神経が優位になったのかは、利用者90の発汗状態に基づいて推定することができる。例えば、利用者90が発汗していて利用者90の交感神経が優位になっている場合には、利用者90が暑いと感じていると推定することができる。本実施の形態に係る体温調節システムは、交感神経の優位状態だけではなく、利用者90の発汗状態にも基づいて加温または冷却を実行するので、利用者90の深部体温を利用者90にとって更に快適な温度に調節することができる。
【0080】
なお、本実施の形態において、湿度計222aは、筐体22の内部に収納されているが、もちろん筐体22の外部に筐体22とは別体として設けられていても良い。
【0081】
なお、上述した各実施の形態において、体温調節システムは、利用者90に対して加温および冷却を実行可能であるが、利用者90に対して加温および冷却の何れか一方のみを実行可能であっても良い。例えば、体温調節システムは、利用者90に対して冷却のみを実行可能である場合、利用者90が暑いと感じる日に利用者90に使用されることに適しており、利用者90の交感神経が優位になったときに利用者90に対して冷却を実行するようになっていても良い。
【0082】
(第4の実施の形態)
まず、本発明の第4の実施の形態に係る体温調節システムの構成について説明する。
【0083】
本実施の形態に係る体温調節システムの構成は、以下に説明するセンサ装置20(図11参照。)の構成を除いて、第1の実施の形態に係る体温調節システム10(図1参照。)の構成と同様であるので、体温調節システム10の構成と同様な構成については体温調節システム10の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0084】
図11は、本実施の形態に係る体温調節システムのセンサ装置20の構成を示すブロック図である。
【0085】
図11に示すように、本実施の形態に係るセンサ装置20の構成は、利用者90の動きを測定する動き測定部としての三次元加速度センサ322aを第1の実施の形態に係る体温調節システム10(図1参照。)のセンサ装置20(図3参照。)が筐体22(図2参照。)の内部に備えた構成と同様である。
【0086】
次に、本実施の形態に係る体温調節システムの動作について説明する。
【0087】
センサ装置20(図11参照。)の制御部22a(図11参照。)は、センサ装置20の電源が入っている間、心電計22c(図11参照。)および三次元加速度センサ322a(図11参照。)によって測定されたデータを送信部22d(図11参照。)によって本体装置30(図5参照。)に無線で送信し続けている。そして、本体装置30の制御部36a(図5参照。)は、本体装置30の電源が入っている間、センサ装置20の送信部22dによって送信されたデータを受信部36c(図5参照。)によって無線で受信し続けている。なお、これらの通信は、間欠的に行われるようになっていても良く、どの程度の期間を置いて繰り返されるかは設計次第である。
【0088】
図12は、本実施の形態に係る体温調節システムの動作のフローチャートである。
【0089】
図12に示すように、本体装置30(図5参照。)の制御部36a(図5参照。)は、受信部36c(図5参照。)によって受信した三次元加速度センサ322a(図11参照。)の測定データに基づいて、利用者90(図1参照。)が横たわって停止しているか否かを判断する(ステップS361)。
【0090】
制御部36aは、利用者90が横たわっていない、または、利用者90が停止していないとステップS361において判断すると、再びステップS361の処理を行う。一方、制御部36aは、利用者90が横たわって停止しているとステップS361において判断すると、受信部36cによって受信した心電計22c(図11参照。)の測定データに基づいて、利用者90の自律神経のうち交感神経が優位状態であるか否かを判断する(ステップS362)。
【0091】
制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態ではないとステップS362において判断すると、再びステップS361の処理を行う。一方、制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態であるとステップS362において判断すると、ペルチェ素子31c(図5参照。)に供給する電圧を制御して頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げて(ステップS363)、再びステップS361の処理を行う。このように、制御部36aは、利用者90が横たわって停止していることが三次元加速度センサ322aによって測定された場合、利用者90の交感神経が優位であると測定されたときに、頸部冷暖部31に冷却を実行させるようになっている。
【0092】
制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態であるとステップS362において判断する度に頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げ続けるのではなく、所定の温度に達した場合には、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を下げることを止めるようになっていても良い。
【0093】
また、制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態であるとステップS362において判断する度に頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を段階的に下げるのではなく、頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を、人間の平均的な深部体温より低い一定の温度に維持するようになっていても良い。
【0094】
また、人間の体は、本実施の形態に係る体温調節システムの動作に対して、遅れて反応することが考えられる。例えば、制御部36aが頸部冷暖部31の内側の面31aの温度を変化させた後、自律神経の状態が変化するまでは、多少の時間がかかることが考えられる。したがって、制御部36aは、ステップS363の処理の直後に再びステップS361の処理に戻るときなどに、適当な待ち時間を入れるようにしても良い。
【0095】
以上に説明したように、本実施の形態に係る体温調節システムは、従来のように温度という客観的な基準のみによって冷却を実行するのではなく、交感神経が優位であるという利用者90次第の基準によって冷却を実行するので、利用者90の深部体温を利用者90にとって快適な温度に調節することができる。
【0096】
人間は、睡眠に入るときに体温を放出して深部体温を下降させるようになっていることが知られている。そのため、人間は、外部から少し冷却されることによって、睡眠に入り易くなり、良い睡眠をとることができる。本実施の形態に係る体温調節システムは、利用者90が横たわって停止していることによって利用者90が睡眠に入ろうとしていることを判断し、利用者90が睡眠に入ろうとしている場合、利用者90の自律神経のうち交感神経が優位であるとき、すなわち利用者90がリラックスできていないときに、利用者90に対して冷却の動作を実行する。したがって、本実施の形態に係る体温調節システムは、睡眠に入ろうとしている利用者90の深部体温を利用者90にとって快適な温度に調節して、利用者90を睡眠に誘導することができる。一方、この仕組みを逆に活用すれば起床の誘導にも応用できる。
【0097】
なお、本実施の形態において、三次元加速度センサ322aは、筐体22の内部に収納されているが、もちろん筐体22の外部に筐体22とは別体として設けられていても良い。
【0098】
なお、制御部36aは、第1の実施の形態において心電計22cの測定結果に基づいて頸部冷暖部31を制御するようになっており、第2の実施の形態において心電計22cおよび体温計122aの測定結果に基づいて頸部冷暖部31を制御するようになっており、第3の実施の形態において心電計22cおよび湿度計222aの測定結果に基づいて頸部冷暖部31を制御するようになっており、第4の実施の形態において心電計22cおよび三次元加速度センサ322aの測定結果に基づいて頸部冷暖部31を制御するようになっているが、これらの制御方法を組み合わせた複雑な制御を行うようになっていても良い。
【0099】
また、上述した各実施の形態において、センサ装置20と、本体装置30との間の通信は、無線通信であるが、もちろん有線通信であっても良い。
【0100】
また、上述した各実施の形態において、制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態であるか否かを心電図に基づいて判断するようになっている。しかしながら、制御部36aは、自律神経のうち交感神経が優位状態であるか否かを心電図以外の方法によって判断するようになっていても良い。自律神経のうち交感神経が優位状態であるか否かを判断する方法としては、例えば、血圧、皮膚電気反射、瞳孔径などを解析する方法が知られている。
【0101】
また、上述した各実施の形態において、頸部冷暖部31は、利用者90の頸部92に対して加温および冷却を実行するようになっているので、利用者90の深部体温を容易に変更することができる。しかしながら、本発明の体温調整動作部は、利用者90の体温を調節するための動作を実行可能であれば、頸部冷暖部31以外の構成であっても良い。例えば、体温調整動作部は、着用者の体温を調節するための冷暖房装置が取り付けられた衣服であっても良い。
【0102】
また、上述した各実施の形態において、体温調節システムは、利用者90によって携帯可能であるので、利用者90が移動する場合であっても利用者90の体温を利用者90にとって快適な温度に調節することができる。しかしながら、体温調節システムは、利用者90の体温を調節するための動作を実行可能であれば、携帯可能でなくても良い。例えば、利用者90が室内に居るとき、体温調節システムは、室内に設置されたエアコンが本発明の体温調整動作部を構成していても良い。
【0103】
(第5の実施の形態)
まず、本発明の第5の実施の形態に係る体温調節システムの構成について説明する。
【0104】
図13は、本実施の形態に係る体温調節システム400の外観斜視図である。
【0105】
図13に示すように、体温調節システム400の構成は、第1の実施の形態に係る体温調節システム10(図1参照。)が本体装置30(図1参照。)に代えて本体装置430を備えた構成と同様であるので、体温調節システム10の構成と同様な構成については体温調節システム10の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0106】
本体装置430は、第1の実施の形態に係る本体装置30のように利用者90に取り付けられるものではなく、室内に設置されたエアコン431を本発明の体温調整動作部として備えている。
【0107】
図14は、本体装置430の構成を示すブロック図である。
【0108】
図14に示すように、本体装置430の電気的な構成は、第1の実施の形態に係る体温調節システム10(図1参照。)の本体装置30(図5参照。)がペルチェ素子31c、ファン34aおよびポンプ34b(図5参照。)に代えてエアコン431を備えた構成と同様であるので、本体装置30の構成と同様な構成については本体装置30の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0109】
制御部36a、記憶部36bおよび受信部36cは、エアコン431の室内機の内部に収納されている。
【0110】
次に、体温調節システム400の動作について説明する。
【0111】
第1の実施の形態に係る体温調節システム10は、制御部36aがペルチェ素子31c、ファン34aおよびポンプ34bを制御することによって利用者90に対して冷却および加温の動作を行う。一方、体温調節システム400は、制御部36aがエアコン431の設定温度を制御することによって利用者90に対して冷却および加温の動作を行う。それ以外の動作については、体温調節システム400の動作は、第1の実施の形態に係る体温調節システム10の動作と同様である。
【0112】
体温調節システム400は、第1の実施の形態に係る体温調節システム10と同様に心電計22c(図3参照。)の測定結果に基づいてエアコン431を制御するようになっているが、第2の実施の形態に係る体温調節システムと同様に体温計122a(図7参照。)を備えて心電計22cおよび体温計122aの測定結果に基づいてエアコン431を制御するようになっていても良いし、第3の実施の形態に係る体温調節システムと同様に湿度計222a(図9参照。)を備えて心電計22cおよび湿度計222aの測定結果に基づいてエアコン431を制御するようになっていても良いし、第4の実施の形態に係る体温調節システムと同様に三次元加速度センサ322a(図11参照。)を備えて心電計22cおよび三次元加速度センサ322aの測定結果に基づいてエアコン431を制御するようになっていても良い。もちろん、体温調節システム400は、これらの制御方法を組み合わせた複雑な制御を行うようになっていても良い。
【0113】
なお、本発明の体温調整動作部は、第1〜第4の実施の形態において、利用者90に直に接触して自身の温度を変更することによって利用者90の深部体温を調節する頸部冷暖部31であり、第5の実施の形態において、自身と利用者90との間に存在する空気の温度を変更することによって利用者90の体温を調節するエアコン431であったが、利用者90の体温を調節するための動作を実行可能であれば良いので、利用者90に直に接触する装置自身の温度を変更することによって利用者90の体温を調節するものや、装置と利用者90との間に存在する空気などの媒体の温度を変更することによって利用者90の体温を調節するもの以外のものであっても良い。例えば、本発明の体温調整動作部は、扇風機のように利用者90にあたる風の量を変更することによって利用者90の体温を調節するものなど、様々なものが適用可能である。
【0114】
また、本発明の体温調節システムによって調節される利用者90の体温は、深部体温である必要はなく、体表面温であっても良い。
【0115】
なお、上述した各実施の形態においては、利用者の自律神経のうち交感神経が優位であると制御部36が判断したときに制御部36が自動で体温調整動作部の動作を制御するようになっている。しかしながら、このような自動調整ではなく手動調整であっても良い。つまり、体温調整システムは、利用者の自律神経のうち交感神経が優位であるか否かの制御部36による解析結果を音声や表示などの何らかの手段で利用者に通知を行い、利用者は、その通知に基づいて若しくは参考にして自分の温度感覚を加えて快適と感じる方向に体温調整動作部の動作を操作し、体温調整システムは、利用者の操作に応じて体温調整動作部を動作させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0116】
10 体温調節システム
22c 心電計(自律神経状態測定部)
31 頸部冷暖部(体温調整動作部)
36a 制御部(自律神経状態測定部)
90 利用者
122a 体温計(体温測定部)
222a 湿度計(発汗状態測定部)
322a 三次元加速度センサ(動き測定部)
400 体温調節システム
431 エアコン(体温調整動作部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の自律神経のうち交感神経および副交感神経の優位状態を測定する自律神経状態測定部と、前記利用者に対して加温および冷却の少なくとも一方の動作を実行する体温調整動作部と、前記自律神経状態測定部によって前記交感神経が優位であると測定されたときに前記体温調整動作部に前記動作を実行させる制御部とを備えていることを特徴とする体温調節システム。
【請求項2】
前記体温調整動作部は、前記利用者に対して加温および冷却の両方の動作を実行可能であり、
前記制御部は、前記利用者に対して加温および冷却の一方の動作を前記体温調整動作部に実行させた後、所定の時間、前記自律神経状態測定部によって前記交感神経が優位であると測定され続けたときに、前記利用者に対して加温および冷却の他方の動作を前記体温調整動作部に実行させることを特徴とする請求項1に記載の体温調節システム。
【請求項3】
前記利用者の体温を測定する体温測定部を備えており、
前記制御部は、前記自律神経状態測定部によって前記交感神経が優位であると測定されたときに、前記体温測定部によって測定された前記体温に基づいて前記体温調整動作部に前記動作を実行させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の体温調節システム。
【請求項4】
前記利用者の発汗状態を測定する発汗状態測定部を備えており、
前記制御部は、前記自律神経状態測定部によって前記交感神経が優位であると測定されたときに、前記発汗状態測定部によって測定された前記発汗状態に基づいて前記体温調整動作部に前記動作を実行させることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の体温調節システム。
【請求項5】
前記利用者の動きを測定する動き測定部を備えており、
前記体温調整動作部は、前記利用者に対して冷却の動作を実行可能であり、
前記制御部は、前記利用者が横たわって停止していることが前記動き測定部によって測定された場合、前記自律神経状態測定部によって前記交感神経が優位であると測定されたときに、前記利用者に対して冷却の動作を前記体温調整動作部に実行させることを特徴とする請求項1から請求項4までの何れかに記載の体温調節システム。
【請求項6】
前記利用者によって携帯可能であることを特徴とする請求項1から請求項5までの何れかに記載の体温調節システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−83498(P2011−83498A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−239795(P2009−239795)
【出願日】平成21年10月16日(2009.10.16)
【出願人】(509288552)WINヒューマン・レコーダー株式会社 (2)
【Fターム(参考)】