体積ホログラム記録材料用組成物及び体積ホログラム記録媒体
【課題】微粒子が有する様々な機能と高分子が有する加工性、及び成形性の容易さを兼ね備え、かつ重合時の収縮率が少ない体積ホログラム記録媒体を提供すること。
【解決手段】可干渉な光の干渉により生じる干渉縞を、屈折率の差によって記録する体積ホログラム記録材料用組成物であって、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物及び(c)粒径が1nm以上、100nm以下である微粒子又は(d)ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が500乃至5000000である分岐重合物を含む体積ホログラム記録材料用組成物。
【解決手段】可干渉な光の干渉により生じる干渉縞を、屈折率の差によって記録する体積ホログラム記録材料用組成物であって、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物及び(c)粒径が1nm以上、100nm以下である微粒子又は(d)ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が500乃至5000000である分岐重合物を含む体積ホログラム記録材料用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン露光することにより、組成物中の各成分に移動が生じ、各成分の空間分布が変化したパターンを形成できる感光性組成物、及び該組成物を用いたパターンの形成方法に関する。また、当該感光性組成物が体積位相型ホログラムを記録するホログラム記録層のためのホログラム記録材料用組成物、及び当該ホログラム記録層並びに当該ホログラム記録層を含む体積位相型ホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィック回折格子(ホログラム)は、光の明暗(干渉)パターンを感光材料等に屈折率あるいは吸収率のパターンとして記録したものであり、多機能を有することから回折光学素子、ホログラフィック光メモリ、狭帯域波長フィルター、フォトニック結晶、光導波路結合器、光インターコネクション、立体画像ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイなど、フォトニクスや情報ディスプレイ等の幅広い分野において数多くの応用が報告されている。
これらの応用では高い屈折率変化と記録感度が通常要求される。さらに、ホログラフィック露光時に生じるポリマー化に伴う重合収縮による記録されたホログラムの機械的な歪みから生じる再生光品質の劣化を防ぐため、低重合収縮性が要求される。
【0003】
従来の代表的なホログラム記録材料用組成物としては、重クロム酸ゼラチン感光材料や、漂白処理した銀塩感光材料が使用されてきた。これらは高い回折効率を持つが、ホログラム作成時の処理が複雑で、特に湿式現像処理が必要であるという欠点があった。
かかる欠点を克服する乾式のホログラム感光材料として、デュポン社のオムニデックスシリーズが広く知られている。この材料はラジカル重合モノマーとバインダーポリマー、光ラジカル重合開始剤及び増感色素を主成分として、ラジカル重合モノマーとバインダーポリマーの屈折率差を利用してホログラムを記録するものである。すなわち、フィルム状に形成された該感光性組成物を干渉露光すると、光が強い部分にてラジカル重合が開始され、それに伴いラジカル重合モノマーの濃度勾配ができ、光が弱い部分から強い部分にラジカル重合モノマーの拡散移動が起こる。結果として干渉光の強弱に応じて、ラジカル重合モノマー密度及び重合したポリマーの密度の疎密ができ、それらとバインダーポリマーの屈折率の差としてホログラムが形成される。この材料系は現状報告されているホログラム用フォトポリマーとしては高性能であるが、30μm程度の厚みに限定されること、そして、耐熱性、透明性に問題が指摘されている。
【0004】
また、ラジカル重合とカチオン重合を併用した材料系(特許文献1参照)や、カチオン重合を利用した材料系(特許文献2参照)が報告されているが、これらはお互いのポリマー同士が分子レベルで相溶しないため、この材料系で形成されたホログラム記録膜は相分離による透明性の低下が生じ、それに基づく散乱損失の増大などの問題点がある。さらに機械的強度及び環境安定性に関し未だ不十分である。
【0005】
また、無機物質ネットワークと光重合性モノマーを併用した材料系が開示されている(特許文献3参照)。ネットワークを形成し得る無機材料をバインダーとして用いる場合には、耐熱性、対環境性、機械強度に優れると共に、光重合性の有機モノマーとの屈折率差を大きく取れるという利点があるが、この材料系で形成したホログラム記録膜はどちらかと言えば脆くて、柔軟性や加工性、コーティング適性に劣るという問題点、及び無機バインダーと有機モノマーとの相溶性が良くないので、均一な塗工材料を調整するのが困難という問題点がある。
【0006】
また、固体マトリックスに金属超微粒子を分散した材料が、ホログラム記録材料として開示されている(特許文献4参照)。しかし、この発明ではマトリックスに流動性を持たせる必要があり、固体性が悪いだけでなく、金属粒子界面と固体マトリックスとの界面密着性が悪く、脆く、界面へ水が侵入するなどの問題がある。
【0007】
また、有機−無機ハイブリッドポリマーと光重合反応性基を有する有機金属微粒子を用いたホログラム記録材料が開示されている(特許文献5参照)。しかし、この発明では干渉縞を固定する為に加熱及び紫外線重合が必要となり、工業プロセスとして課題がある。
【0008】
より簡便な方法でホログラム記録を行う材料として、無機微粒子を光重合性モノマーに分散させたホログラム記録材料が開示されている(特許文献6、特許文献7及び非特許文献1参照)。しかし、この発明では用いた無機微粒子の粒径が大きいことと粒度分布の巾が広く、さらに無機微粒子の粒子同士が凝集しやすいため、光散乱損失が大きいという課題がある。
【0009】
ところで、体積ホログラムの超高密度光記録のためには、多重記録が必須であり、この多重記録を達成するためには体積収縮率をできるだけ小さくしなければならない。すなわち重合に伴う収縮が大きいと、初期に書き込んだ記録が多重記録時に発生する歪みが記録とともに徐々に大きくなり、最終的には記録が読み取れなく(エラー発生に)なってしまうのである。
非特許文献2には通常のフォトポリマー方式において、モノマー重合時の体積収縮による記録干渉縞の歪みによってデータの入出力時にエラーを引き起こす、という重大な問題が提起されている。
一方、重合に伴う体積収縮が小さい化合物の開発が行われてきている。体積収縮を抑制している化合物の例として、非特許文献3、4には、重合時に体積が膨張する重合性モノマーが開示されている。しかし、該化合物はモノマー状態では室温において固体であるため、各種産業分野で求められている低体積収縮性モノマーという観点からは実用上の意味をなしていない。
【0010】
体積ホログラム記録媒体に好適に用いられるモノマーとして、ビニルシクロプロパン化合物が知られている。例えば、特許文献8には、ビニルシクロプロパンをホログラム記録用組成物の記録モノマーとして用いた例が開示されている。しかし、この例では組成物にウレタンマトリックスを多量に使用しているため、充分な記録容量が得られないものであった。
【0011】
体積ホログラム記録用材料組成物としては、一般的に多官能性モノマーからなる組成物が知られているが、この多官能性モノマーがラジカル重合系の場合の体積収縮率は一般的に10%を越えるものが多く、単独では5%未満の重合収縮を達成するのは極めて困難である。これはモノマー間の距離と高分子化合物中のモノマーの繰り返し単位間の結合距離の差で説明され、重合反応前のモノマーの分子間に作用する弱い引力(ファンデルワールス結合)に対して、モノマー同士が重合して共有結合の結合距離となるためである。すなわち重合反応によって弱い相互作用のファンデルワールス結合から、非常に短い共有結合距離になるため体積収縮が生じるのである。
この多官能性モノマーがエポキシやオキセタンのようなカチオン重合系の場合は、重合に伴い開環による結合切断が生じるためにラジカル重合系に比較すると収縮率は低くなるが、最も重合収縮が小さいものでも3%以下を達成する事は非常に困難である。
このような事情から、高い記録容量と少ない重合収縮率を両立し得るホログラフィック用記録組成物の速やかな開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−107999号公報
【特許文献2】米国特許第5759721号明細書
【特許文献3】特開平6−019040号公報
【特許文献4】特表2000−508783号公報
【特許文献5】特開2002−236440号公報
【特許文献6】特開2003−084651号公報
【特許文献7】特開2005−099612号公報
【特許文献8】特開2007−291056号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.),2002年,第81巻,p.4121−4123
【非特許文献2】日本印刷学会誌,2004年,41巻,279ページ
【非特許文献3】マクロモレキュルズ(Macromolecules),1994年,27巻,p.5543−5546
【非特許文献4】マクロモレキュルズ(Macromolecules),1996年,29巻,p.1943−1950
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、微粒子をエチレン性不飽和基を有するエン化合物及びメルカプト基を有するチオール化合物の混合物(以下、「エン/チオール重合系化合物」とも言う)に分散することにより、低収縮かつ回折効率の高いホログラムが永続的に形成される体積ホログラム記録材料用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
すなわち、第1観点として、可干渉な光の干渉により生じる干渉縞を、屈折率の差によって記録する体積ホログラム記録材料用組成物であって、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物(以下、「エン化合物」とも言う)、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物(以下、「チオール化合物」とも言う)及び(c)粒径が1nm以上、100nm以下である微粒子を含む体積ホログラム記録材料用組成物。
第2観点として、前記(a)エン化合物と前記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、前記(c)微粒子の屈折率との差が0.01以上、1.3以下である、第1観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第3観点として、前記(c)微粒子が無機微粒子である、第1観点又は第2観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第4観点として、前記(c)微粒子がシリカ微粒子である、第3観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第5観点として、前記(c)微粒子が有機微粒子である、第1観点又は第2観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第6観点として、前記(c)微粒子がハイパーブランチポリマーである、第5観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第7観点として、前記(a)エン化合物、前記(b)チオール化合物及び前記(c)微粒子の合計体積に占める前記(c)微粒子の割合が、3体積%以上、50体積%以下である、第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第8観点として、可干渉な光の干渉により生じる干渉縞を、屈折率の差によって記録す
る体積ホログラム記録材料用組成物であって、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物及び(d)ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が500乃至5000000である分岐重合物を含む体積ホログラム記録材料用組成物。
第9観点として、前記(a)エン化合物と前記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、前記(d)分岐重合物の屈折率との差が0.01以上、1.3以下である、第8観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第10観点として、前記(a)エン化合物、前記(b)チオール化合物及び前記(d)分岐重合物の合計体積に占める前記(d)分岐重合物の割合が、3体積%以上、50体積%以下である、第8観点又は第9観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第11観点として、第1観点乃至第10観点のうち何れか一項に記載の組成物を含む体積ホログラム記録層。
第12観点として、第11観点に記載の体積ホログラム記録層を含む体積ホログラム記録媒体。
第13観点として、体積ホログラム記録層が2枚の透明基体間に配置された構造である、第12観点に記載の体積ホログラム記録媒体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微粒子をエン/チオール重合系化合物に分散させることによって、微粒子が有する様々な機能と高分子が有する加工性及び成形性の容易さを兼ね備えた、低収縮かつ回折効率の高いホログラムが永続的に形成される体積ホログラム記録材料用組成物、及び体積ホログラム記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、参考例1で得られたHB−TFA29の1H NMRスペクトル図である。
【図2】図2は、体積ホログラム記録媒体に対する二光束干渉露光の概念図である。
【図3】図3は、実施例1における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図4】図4は、実施例3における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図5】図5は、実施例4における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図6】図6は、実施例5における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図7】図7は、実施例6における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図8】図8は、実施例6における体積ホログラム記録媒体の屈折率変調量の露光時間変化を表すグラフである。
【図9】図9は、実施例7における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図10】図10は、実施例7における体積ホログラム記録媒体の屈折率変調量の露光時間変化を表すグラフである。
【図11】図11は、実施例8における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図12】図12は、実施例8における体積ホログラム記録媒体の屈折率変調量の露光時間変化を表すグラフである。
【図13】図13は、実施例9における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図14】図14は、実施例9における体積ホログラム記録媒体の屈折率変調量の露光時間変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物は、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物及び(c)粒径が1nm以上、100nm以下である微粒子からなる。
【0019】
次に、体積ホログラム記録材料用組成物を用いた、体積ホログラム記録媒体の体積ホログラム記録方法について説明する。記録原理は明らかではないが、次のように推察される。
【0020】
まず、媒体に2本のレーザー光を同時に照射すると媒体上に明部と暗部が縞状に並ぶ干渉縞が形成される。すると媒体の明部ではモノマーである(a)エン化合物と(b)チオール化合物とが重合を開始し、明部のモノマー濃度が低下する。それに従い、暗部と明部にモノマーの濃度勾配が生じ、暗部から明部にモノマー(エン化合物及びチオール化合物)が移動、供給され更に重合が進む。
入れ替わりに微粒子が明部から暗部に移動する。そして明部と暗部で微粒子の分布に偏りが発生する。更にある程度の時間が経つと、最終的には、暗部でもモノマーの重合が進み、媒体の記録層全体が重合体となる。このようにして、モノマーの重合体の中に暗部に対応して微粒子の縞状分布ができる。微粒子の屈折率はモノマーの重合体の屈折率と異なるため、記録層に屈折率分布ができ、ホログラムが記録される。再生時には、該干渉縞が形成された領域に再生光を照射すると、回折が起こり、ホログラム像が再生されるのである。
【0021】
以下、本発明の体積ホログラム記録材料用組成物の構成について詳細に説明する。
【0022】
[(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物]
本発明におけるエチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物は、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する多官能性の化合物であれば特に限定はされず、単量体又は高分子であってもよい。ここで、エチレン性不飽和基とは、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等を包含するがこれらに限定されない。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基を指す。
本発明に用いられるエン化合物としては、アリルアルコール誘導体、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化合物、ウレタンアクリート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの中で、特にアリルアルコール誘導体が好ましい。
【0023】
上記アリルアルコール誘導体の具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルマレエート、ジアリルアジペート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリオキサルビス(ジアリルアセタール)等を挙げることができる。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化合物において、(メタ)アクリル酸とエステル化合物を形成する多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等を挙げることができる。
【0025】
上記エン化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0026】
[(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物]
本発明におけるメルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物は、1分子中に2個以上、好ましくは2乃至4個のメルカプト基を有する多官能性の化合物であれば特に限定はされず、脂肪族又は芳香族であってもよく、また単量体又は高分子であってもよい。
【0027】
本発明に用いられるチオール化合物の分類としては、ポリオールと、チオグリコール酸やβ−メルカプトプロピオン酸のようなα−又はβ−メルカプトカルボン酸類を包含する末端チオール置換カルボン酸(又はエステル類又はアシルハロゲン化物等の誘導体)とのエステル化によって得られるものが挙げられる。
【0028】
上述のようにして得られる化合物としては、例えば、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールジメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。これらの中で、特にトリメチロールプロパントリエステル類又はペンタエリスリトールテトラエステル類が好ましい。
【0029】
上記チオール化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物における、上記エン化合物と上記チオール化合物との使用量比は特に限定されないが、一方が大過剰の場合には、露光時に硬化不足や回折効率低下などの要因となる。そのため、官能基数比、すなわちエチレン性不飽和基数とメルカプト基数の比で1:5乃至5:1が好ましく、1:2乃至2:1がより好ましい。
【0031】
本発明による体積ホログラム記録材料用組成物は、少なくとも1つの反応性希釈剤を含んでもよい。反応性希釈剤は、組成物の粘度を調節するために使用できる。したがって、反応性希釈剤は、各々が化学線に暴露したときに重合することができる官能基を少なくとも1つ含有する低粘度モノマーである。例えば、ビニル反応性希釈剤及び(メタ)アクリレートモノマー希釈剤を使用してもよい。
【0032】
上記反応性希釈剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0033】
[(c)微粒子]
微粒子の粒径は、100nm以下である。あまり大きいと光散乱を起こしやすくなるためである。より好ましくは50nm以下である。粒径は小さいほど好ましいが、小さいほど組成物の粘度上昇が激しく生じ、作業性、成形性の観点から、実際上1nm以上に限られる。
【0034】
また、体積ホログラム組成物中の屈折率は構成成分の体積比によって決定されるため、樹脂成分の体積に対する無機微粒子の体積比が大きいほど、達成可能な屈折率差が大きくなる。
従って、(a)エン化合物、(b)チオール化合物及び(c)微粒子の合計体積に占め
る(c)微粒子の割合は、3体積%以上が好ましく、より好ましくは5体積%以上である。
ただし、体積ホログラム組成物中に分散できる微粒子の量には限界があり、あまり多いと拡散しにくくなるため、50体積%以下が好ましく、より好ましくは40体積%以下である。
【0035】
ここで、上記の樹脂成分とは、例えば(a)エン化合物及び(b)チオール化合物であるが、体積ホログラム材料用組成物がバインダー樹脂や反応性希釈剤などの有機化合物を含む場合は、(a)エン化合物及び(b)チオール化合物だけでなく、バインダー樹脂や反応性希釈剤も指す。
【0036】
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物では、上記(a)エン化合物と上記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、上記(c)微粒子の屈折率との差が0.01以上、1.3以下であるのが好ましく、より好ましくは0.03以上、1.1以下である。これは、屈折率の差が0.01未満の場合、最終的な屈折率変調量が少なくなることで記録容量が小さくなり、一方、1.3を越えると光散乱の原因となるおそれがあるためである。
【0037】
微粒子としては、本発明の目的を達成できる粒子であれば特に限定されず、有機微粒子及び無機微粒子から自由に選択することが出来る。
【0038】
上記有機微粒子の具体例としては、ハイパーブランチポリマー、デンドリマー、スターバーストポリマー、フラーレン、ナノダイヤ等が挙げられる。好ましくは主鎖が高度に分岐した高分子であり、例えば、デンドリマー、スターバーストポリマー及びハイパーブランチポリマーであり、これらのうちハイパーブランチポリマーが分散性、透明性及び経済性の面から特に好ましい。ハイパーブランチポリマーの例としては、米国特許2008176146号公報に記載のハイパーブランチポリマー等が挙げられる。
【0039】
上記無機微粒子の具体例としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化クロム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化銅、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ホルミウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化エルビウム、酸化ガドリニウム、酸化インジウム、酸化ニッケル、酸化ストロンチウム、酸化イッテルビウム等の金属酸化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ニオブ等の窒化物、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化モリブデン、炭化タングステン等の炭化物などの誘電体微粒子、Si、Ge等のIV族半導体、CdS、CdSe、ZnSe、CdTe、ZnS、HgS、HgSe等のII−VI族半導体微粒子、GaAs、InP、InSb等のIII−V族半導体微粒子、PbS、PbSe等のIV−VI族半導体微粒子、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、コバルト、タングステン、モリブデン、ニオブ等の金属微粒子等であり、官能性モノマーに均一に分散可能なものであれば、特に限定はされない。
【0040】
無機微粒子を均一分散させるために、微粒子作製時に表面を化学修飾又は微粒子作成後に分散剤添加等の処理を行うのが好ましい。処理としては無機微粒子の分散性を高めるものならどのような化合物、処理方法でもよい。例えばカプセル化、表面処理、ハイブリッド化などの手法が挙げられるが、表面処理剤を用いた修飾が工業的にも簡便なため好ましい。上記微粒子は単独でも、混合体でも、複合体でも使用できる。
【0041】
[(d)分岐重合物]
また、本発明の別の態様では、体積ホログラム記録材料用組成物において、(c)成分である微粒子の代わりに、(d)成分として、分岐重合物を用いることができる。
ここで、上記分岐重合物としては、例えば、下記式(1)又は下記式(2)で表される
構造単位を有する分岐重合物、及び下記式(3)で表される構造を有する分岐重合物が挙げられる。
【0042】
【化1】
【0043】
【化2】
【0044】
【化3】
【0045】
上記分岐重合物は、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が500乃至5000000である。好ましくは1000乃至1
000000であり、さらに好ましくは、2000乃至500000である。
【0046】
また、上記式(3)において、nは、繰り返し単位構造の数であって、2以上の整数を表す。
【0047】
さらに、上述の成分(c)同様、(a)エン化合物、(b)チオール化合物及び(d)分岐重合物の合計体積に占める(d)分岐重合物の割合についても、3体積%以上が好ましく、より好ましくは5体積%以上である。
ただし、体積ホログラム組成物中に分散できる分岐重合物の量には限界があり、あまり多いと拡散しにくくなるため、50体積%以下が好ましく、より好ましくは40体積%以下である。
【0048】
さらに、上記(a)エン化合物と上記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、上記(d)分岐重合物の屈折率との差についても、0.01以上、1.3以下であるのが好ましく、より好ましくは0.03以上、1.1以下である。
【0049】
本発明の体積ホログラム記録媒体における記録層には、上記(a)成分乃至(c)成分又は(d)成分の他、必要に応じて、重合開始剤、増感剤、連鎖移動剤、可塑剤、着色剤等の添加剤を加えてもよい。また、膜厚の均一性を持たせ、光照射での重合で形成された干渉膜を安定に存在させるために、結合材としてバインダー樹脂を加えてもよい。
【0050】
任意成分である光重合開始剤としては、パターン露光によって上記エン/チオール重合系化合物の重合を開始することができる機能を有する化合物であれば特に限定はない。
【0051】
また、パターン露光の方法としては、フォトマスク露光、フェーズマスク露光、干渉露光等が挙げられる。これらのうち体積ホログラム記録を行う場合には干渉露光が好ましい。
干渉露光の光源としては、一般に干渉性の高いレーザー光であり、光重合開始剤に高感度であればよく、例えば、アルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、Nd:YAGレーザー(532nm)、Nd:YVO4レーザー(532nm)、InGaNレーザー(405nm)
、He−Cdレーザー(325nm、442nm)等が使用される。
【0052】
光ラジカル重合開始剤としては、パターン露光時に活性ラジカルを生成する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンゾイン系化合物、α−アミノアルキルフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アゾ系化合物、アジド系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物、有機過酸化物、ベンゾフェノン類、ビスクマリン、ビスイミダゾール化合物、チタノセン化合物、トリクロロメチルトリアジン化合物、あるいはヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物などのオニウム塩化合物等が用いられる。これらのうち、チタノセン化合物が好ましい。
【0053】
上記光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
上記チタノセン化合物は、特に限定はされないが、具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタ
ニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(2,6−ジフルオロフェニル)ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等を挙げることができる。
【0055】
上記ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等を挙げることができる。
【0056】
上記α−アミノアルキルフェノン系化合物としては、例えば、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン等を挙げることができる。
【0057】
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、1−クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等を挙げることができる。
【0058】
上記アゾ系化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−(1−ヒドロキシブチル))プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)等を挙げることができる。
【0059】
上記アジド系化合物としては、例えば、p−アジドベンズアルデヒド、p−アジドアセトフェノン、p−アジド安息香酸、p−アジドベンザルアセトフェノン、4,4’−ジアジドカルコン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフィド、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドスチルベン等を挙げることができる。
【0060】
上記アシルホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0061】
上記オキシムエステル系化合物としては、例えば、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチル
オキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等を挙げることが出来る。
【0062】
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジ−tert−ブチル等を挙げることが出来る。
【0063】
上記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0064】
上記ビスクマリンとしては、例えば、3,3’−カルボニルビス(7−(ジエチルアミノ)−2H−クロメン−2−オン)等が挙げられ、これはみどり化学株式会社でBC(CAS[63226−13−1])として市販されている。
【0065】
上記ビスイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0066】
また、上記バインダー樹脂は、(a)エン化合物及び(b)チオール化合物と相溶性の良いものが好ましく、その具体例としては、塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルとの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、アセチルセルロース等が挙げられる。
【0067】
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物を用いて体積ホログラム記録媒体を作製するには、(a)エン化合物、(b)チオール化合物及び(c)微粒子又は(d)分岐重合物を、必要に応じ、増感剤及び/又はバインダー樹脂とともに混合し、このまま無溶剤で透明基体上に塗布するか、またはこれらの混合物に溶剤又は添加剤を加えて混合し、これを透明基体上に塗布、乾燥して透明基体上に体積ホログラム記録層が形成した記録媒体を得る。さらに、記録層上に透明基体、あるいは酸素遮断のための保護層を設け、体積ホログラム記録層が2枚の透明基体間、あるいは透明基体と保護層間に配置された構造とすることもできる。
【0068】
溶剤としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル 2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶剤、ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−
ピロリドン等の高極性溶剤、あるいはこれらの混合溶剤、さらには、これらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。
【0069】
上記溶剤の使用量の割合は、本実施形態の体積ホログラム用材料組成物の総量に対して、通常、質量比で1乃至20倍程度の範囲である。
【0070】
上記透明基体としては、透明なガラス板、アクリル板、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム等が用いられる。塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布、カーテン塗布等を用いることができる。
【0071】
上記保護層としては、酸素による感度低下や保存安定性の劣化等の悪影響を防止するための公知技術、例えば、水溶性ポリマー等の塗布を用いることもできる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0073】
<参考例1>
[下記式(1)で表される構造単位を有する分岐重合物(HB−TFA29)の製造]
【0074】
【化4】
【0075】
空気下、200mL四口フラスコに9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(Aldrich社製)5.90g(17mmol)を仕込み、ジメチルアセトアミド80mLを加え、溶解させた。その後、この溶液をオイルバスで100℃に加熱し、別途ジメチルアセトアミド20mLに溶解させた2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(東京化成工業(株)製)3.69g(20mmol)を加え、重合を開始させた。その5分後、この反応液にアニリン3.35g(36mmol)を加え、さらに10分間撹拌した。その後、室温まで放冷後、炭酸カリウム15g(0.11mol)を溶解させた水溶液1L中にこの反応液を加え再沈殿させた。沈殿物をろ過し、テトラヒドロフラン(THF)50mLに再溶解させた後、ヘキサン540mLとエタノール60mLの混合溶液で再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、40℃で6時間減圧乾燥し、目的とするHB−TFA29を10.8g得た。得られたHB−TFA29の1H NMRスペクトルを
図1に示す。また、得られた化合物のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,900、分散度:Mw/Mnは1.68であった。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。
【0076】
[ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)条件]
装置:東ソー(株)製 HLC−8200 GPC
カラム:Shodex KF−804L+KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
【0077】
<実施例1>
[体積ホログラム記録材料用組成物の調製]
シリカ分散液(メチルイソブチルケトン分散、シリカ微粒子濃度30.5質量%、日産化学工業(株)製、製品名MIBK−ST)1.05gに、(a)エン化合物として、トリメチロールプロパンジアリルエーテル(Aldrich社製)0.16g、及びビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(チバ・ジャパン(株)製、商品名Irgacure784)7.2mg並びに過酸化ベンゾイル9mgを加え溶解させた。次にこの溶液に、(b)チオール化合物として、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(Aldrich社製)0.2gを加え、室温で十分撹拌し、体積ホログラム記録材料用組成物を調製した。
【0078】
波長546nmにおける、シリカ微粒子の屈折率は1.46、エン化合物とチオール化合物との重合体の屈折率は1.52であり、両者の屈折率差は0.06であった。
また、エン化合物の密度は0.955g/cm3、チオール化合物の密度は1.21g
/cm3、シリカ微粒子の密度は2.22g/cm3であるから、その体積はそれぞれ、エン化合物0.16/0.955=0.168cm3、チオール化合物0.2/1.21=
0.165cm3、シリカ微粒子1.05×0.305/2.22=0.144cm3であった。
従って、エン化合物、チオール化合物及びシリカ微粒子の合計体積に占めるシリカ微粒子の体積分率は、0.144/(0.168+0.165+0.144)=0.30、即ち30体積%であった。
【0079】
[体積ホログラム記録媒体の作製]
スライドガラスの両端部に、スペーサとして厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り、スライドガラス中央(スペーサに挟まれた領域)に上記体積ホログラム記録材料用組成物を滴下した。続いて、オーブン中、50℃で20分間乾燥し、体積ホログラム記録層を形成した。その後、形成した体積ホログラム記録層を挟むように別のスライドガラスを被せ、体積ホログラム記録媒体を作製した。
【0080】
[体積ホログラム記録時の各物性値の測定]
本発明の体積ホログラム記録媒体に対し、図2に示す装置によって二光束干渉露光を行い、体積ホログラムの記録を試みた。体積ホログラム記録媒体に対し、波長532nmのNd:YVO4レーザーを用いて、露光パワー密度5mW/cm2で二光束干渉露光(格子間隔1μm)を行った。Nd:YVO4レーザーから出射した光はビームエキスパンダを
経てハーフミラーで2本に分割され、それぞれミラーを経て体積ホログラム記録媒体に照射され、両光の干渉縞が記録され体積ホログラムが形成される。
同時に、体積ホログラム記録媒体が感光しない波長632.8nmのヘリウムネオン(He−Ne)レーザーを体積ホログラム記録媒体に照射し、その回折光を光検出器で検出することによりホログラム形成過程をモニターし回折効率を評価した。また、露光後の回折効率の角度依存性を測定し、試料の露光後の膜厚を算出した。さらに、得られた回折効率と膜厚から屈折率変調量(Δn)を評価した。
【0081】
また、露光後の体積ホログラム記録媒体に、波長632.8nmのヘリウムネオン(He−Ne)レーザーを照射し、入射光と(回折光+透過光)の比から散乱損失を評価した。
さらに、記録する二光束がなす角の二等分線からホログラム記録媒体面の垂線を有限な角度傾けながら複数の体積ホログラムの多重記録を行い、記録されたそれぞれのホログラムを読み出した時のBragg角離調からホログラム記録層の体積収縮率を評価した。この収縮率の測定法の詳細は、L.Dhar, Applied Physics Letters 73, 1337−1339 (1998)に説明されている。以上の結果を表1に合わせて示す。
【0082】
<実施例2>
実施例1と同様の方法で、シリカ微粒子の体積分率5体積%の試料を作成し、体積収縮率を評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0083】
<実施例3>
実施例1と同様の方法で、シリカ微粒子の体積分率10体積%の試料を作成し、各物性値を評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0084】
<実施例4>
実施例1と同様の方法で、シリカ微粒子の体積分率20体積%の試料を作成し、各物性値を評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0085】
<実施例5>
実施例1と同様の方法で、シリカ微粒子の体積分率40体積%の試料を作成し、各物性値を評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0086】
<実施例6>
[体積ホログラム記録材料用組成物の調製]
参考例1で製造したHB−TFA29 25質量部にテトラヒドロフラン75質量部を加え、均一な溶液になるまで室温で撹拌した。得られたHB−TFA29分散液(分岐ポリマー濃度25.0質量%)0.33gに、(a)エン化合物として、ペンタエリトリトールアリルエーテル(テクニカルグレード70%、Aldrich社製)63mg、及びビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(チバ・ジャパン(株)製、商品名Irgacure784)3.2mg並びに過酸化ベンゾイル4.1mgを加え溶解させた。次にこの溶液に、(b)チオール化合物として、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(Aldrich社製)0.1gを加え、室温で十分撹拌し、体積ホログラム記録材料用組成物を調製した。
【0087】
波長546nmにおける、HB−TFA29の屈折率は1.73、エン化合物とチオール化合物との重合体の屈折率は1.53であり、両者の屈折率差は0.20であった。
また、エン化合物の密度は0.985g/cm3、チオール化合物の密度は1.21g
/cm3、HB−TFA29の密度は1.29g/cm3であるから、その体積はそれぞれ、エン化合物0.063/0.985=0.064cm3、チオール化合物0.1/1.
21=0.083cm3、HB−TFA29 0.33×0.250/1.29=0.0
64cm3であった。
従って、エン化合物、チオール化合物及びHB−TFA29の合計体積に占めるHB−TFA29の体積分率は、0.064/(0.064+0.083+0.064)=0.30、即ち30体積%であった。
【0088】
[体積ホログラム記録媒体の作製]
実施例6で得られた体積ホログラム記録材料用組成物を用いて、実施例1と同様の方法で体積ホログラム記録媒体を作製した。
【0089】
[体積ホログラム記録時の各物性値の測定]
実施例6で得られた体積ホログラム記録材料用組成物を用いて作製した体積ホログラム記録媒体に対し、実施例1と同様の方法で各物性値を評価した。結果を表2に合わせて示す。また、回折効率の露光時間変化を図7に、屈折率変調量の露光時間変化を図8にそれぞれ示す。
【0090】
<実施例7>
実施例6と同様の方法で、HB−TFA29の体積分率35体積%の試料を作成し、各物性値を評価した。結果を表2に合わせて示す。また、回折効率の露光時間変化を図9に、屈折率変調量の露光時間変化を図10にそれぞれ示す。
【0091】
<実施例8>
[体積ホログラム記録材料用組成物の調製]
実施例6で調製したHB−TFA29分散液(分岐ポリマー濃度25.0質量%)0.33gに、(a)エン化合物として、ペンタエリトリトールアリルエーテル(テクニカルグレード70%、Aldrich社製)69mg、及びビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(チバ・ジャパン(株)製、商品名Irgacure784)3.3mg並びに過酸化ベンゾイル4.2mgを加え溶解させた。次にこの溶液に、(b)チオール化合物として、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(Aldrich社製)0.1gを加え、室温で十分撹拌し、体積ホログラム記録材料用組成物を調製した。
【0092】
波長546nmにおける、HB−TFA29の屈折率は1.73、エン化合物とチオール化合物との重合体の屈折率は1.54であり、両者の屈折率差は0.19であった。
また、エン化合物の密度は0.985g/cm3、チオール化合物の密度は1.28g
/cm3、HB−TFA29の密度は1.29g/cm3であるから、その体積はそれぞれ、エン化合物0.069/0.985=0.070cm3、チオール化合物0.1/1.
28=0.078cm3、HB−TFA29 0.33×0.250/1.29=0.0
64cm3であった。
従って、エン化合物、チオール化合物及びHB−TFA29の合計体積に占めるHB−TFA29の体積分率は、0.064/(0.070+0.078+0.064)=0.30、即ち30体積%であった。
【0093】
[体積ホログラム記録媒体の作製]
実施例8で得られた体積ホログラム記録材料用組成物を用いて、実施例1と同様の方法で体積ホログラム記録媒体を作製した。
【0094】
[体積ホログラム記録時の各物性値の測定]
実施例8で得られた体積ホログラム記録材料用組成物を用いて作製した体積ホログラム記録媒体に対し、実施例1と同様の方法で各物性値を評価した。結果を表2に合わせて示す。また、回折効率の露光時間変化を図11に、屈折率変調量の露光時間変化を図12にそれぞれ示す。
【0095】
<実施例9>
実施例8と同様の方法で、HB−TFA29の体積分率35体積%の試料を作成し、各
物性値を評価した。結果を表2に合わせて示す。また、回折効率の露光時間変化を図13に、屈折率変調量の露光時間変化を図14にそれぞれ示す。
【0096】
<比較例>
[体積ホログラム記録材料用組成物の調製]
シリカ分散液(メチルイソブチルケトン分散、固形分濃度30.5質量%、日産化学工業(株)製、製品名MIBK−ST)10.0gに、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(チバ・ジャパン(株)製、商品名Irgacure784)32mgを加え溶解させた。次にこの溶液に、重合性化合物としてp−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)キシリレン3.19gを加え均一溶液とし、感光性組成物を調製した。
【0097】
重合性化合物の密度は1.13g/cm3であるから、その体積は3.19/1.13
=2.82cm3であった。一方、シリカ微粒子の密度は2.22g/cm3であるから、その体積は10.0×0.305/2.22=1.37cm3であった。
従って重合性化合物及びシリカ微粒子の合計体積に占めるシリカ微粒子の体積分率は1.37/(2.82+1.37)=0.33、即ち33体積%であった。
【0098】
[体積ホログラム記録媒体の作製]
乾燥条件を80℃で30分間に変更した以外は実施例1と同様の方法で、体積ホログラム記録媒体を作製した。
【0099】
[ホログラム記録時の各物性値の測定]
露光強度を100mW/cm2に変更した以外は実施例1と同様の方法で、各物性値を
評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に示したように、本発明の体積ホログラム記録材料用組成物の体積収縮率は極めて低く、微粒子の体積分率が同程度の場合(実施例1対比較例)、従来の組成物のおよそ1/8の体積収縮率となる。
【0102】
【表2】
【0103】
表2に示したように、本発明の体積ホログラム記録材料用組成物の体積収縮率は極めて低く、従来の組成物のおよそ1/10の体積収縮率となる(実施例6対比較例)。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物、及びそれらから得られる体積ホログラム記録媒体は、三次元画像表示や画像、ビット情報の大容量メモリ、及び回折光学素子、その他に使用できる。
【符号の説明】
【0105】
1 ホログラム記録媒体
2 Nd:YVO4レーザー
3 ビームエキスパンダ
4 He−Neレーザー
5,6,7,8,9,10,11 ミラー
12 ビームサンプラー
13 ハーフミラー
14,15 半波長板
16,17 偏光プリズム
18,19,20 光検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン露光することにより、組成物中の各成分に移動が生じ、各成分の空間分布が変化したパターンを形成できる感光性組成物、及び該組成物を用いたパターンの形成方法に関する。また、当該感光性組成物が体積位相型ホログラムを記録するホログラム記録層のためのホログラム記録材料用組成物、及び当該ホログラム記録層並びに当該ホログラム記録層を含む体積位相型ホログラム記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィック回折格子(ホログラム)は、光の明暗(干渉)パターンを感光材料等に屈折率あるいは吸収率のパターンとして記録したものであり、多機能を有することから回折光学素子、ホログラフィック光メモリ、狭帯域波長フィルター、フォトニック結晶、光導波路結合器、光インターコネクション、立体画像ディスプレイ、ヘッドアップディスプレイなど、フォトニクスや情報ディスプレイ等の幅広い分野において数多くの応用が報告されている。
これらの応用では高い屈折率変化と記録感度が通常要求される。さらに、ホログラフィック露光時に生じるポリマー化に伴う重合収縮による記録されたホログラムの機械的な歪みから生じる再生光品質の劣化を防ぐため、低重合収縮性が要求される。
【0003】
従来の代表的なホログラム記録材料用組成物としては、重クロム酸ゼラチン感光材料や、漂白処理した銀塩感光材料が使用されてきた。これらは高い回折効率を持つが、ホログラム作成時の処理が複雑で、特に湿式現像処理が必要であるという欠点があった。
かかる欠点を克服する乾式のホログラム感光材料として、デュポン社のオムニデックスシリーズが広く知られている。この材料はラジカル重合モノマーとバインダーポリマー、光ラジカル重合開始剤及び増感色素を主成分として、ラジカル重合モノマーとバインダーポリマーの屈折率差を利用してホログラムを記録するものである。すなわち、フィルム状に形成された該感光性組成物を干渉露光すると、光が強い部分にてラジカル重合が開始され、それに伴いラジカル重合モノマーの濃度勾配ができ、光が弱い部分から強い部分にラジカル重合モノマーの拡散移動が起こる。結果として干渉光の強弱に応じて、ラジカル重合モノマー密度及び重合したポリマーの密度の疎密ができ、それらとバインダーポリマーの屈折率の差としてホログラムが形成される。この材料系は現状報告されているホログラム用フォトポリマーとしては高性能であるが、30μm程度の厚みに限定されること、そして、耐熱性、透明性に問題が指摘されている。
【0004】
また、ラジカル重合とカチオン重合を併用した材料系(特許文献1参照)や、カチオン重合を利用した材料系(特許文献2参照)が報告されているが、これらはお互いのポリマー同士が分子レベルで相溶しないため、この材料系で形成されたホログラム記録膜は相分離による透明性の低下が生じ、それに基づく散乱損失の増大などの問題点がある。さらに機械的強度及び環境安定性に関し未だ不十分である。
【0005】
また、無機物質ネットワークと光重合性モノマーを併用した材料系が開示されている(特許文献3参照)。ネットワークを形成し得る無機材料をバインダーとして用いる場合には、耐熱性、対環境性、機械強度に優れると共に、光重合性の有機モノマーとの屈折率差を大きく取れるという利点があるが、この材料系で形成したホログラム記録膜はどちらかと言えば脆くて、柔軟性や加工性、コーティング適性に劣るという問題点、及び無機バインダーと有機モノマーとの相溶性が良くないので、均一な塗工材料を調整するのが困難という問題点がある。
【0006】
また、固体マトリックスに金属超微粒子を分散した材料が、ホログラム記録材料として開示されている(特許文献4参照)。しかし、この発明ではマトリックスに流動性を持たせる必要があり、固体性が悪いだけでなく、金属粒子界面と固体マトリックスとの界面密着性が悪く、脆く、界面へ水が侵入するなどの問題がある。
【0007】
また、有機−無機ハイブリッドポリマーと光重合反応性基を有する有機金属微粒子を用いたホログラム記録材料が開示されている(特許文献5参照)。しかし、この発明では干渉縞を固定する為に加熱及び紫外線重合が必要となり、工業プロセスとして課題がある。
【0008】
より簡便な方法でホログラム記録を行う材料として、無機微粒子を光重合性モノマーに分散させたホログラム記録材料が開示されている(特許文献6、特許文献7及び非特許文献1参照)。しかし、この発明では用いた無機微粒子の粒径が大きいことと粒度分布の巾が広く、さらに無機微粒子の粒子同士が凝集しやすいため、光散乱損失が大きいという課題がある。
【0009】
ところで、体積ホログラムの超高密度光記録のためには、多重記録が必須であり、この多重記録を達成するためには体積収縮率をできるだけ小さくしなければならない。すなわち重合に伴う収縮が大きいと、初期に書き込んだ記録が多重記録時に発生する歪みが記録とともに徐々に大きくなり、最終的には記録が読み取れなく(エラー発生に)なってしまうのである。
非特許文献2には通常のフォトポリマー方式において、モノマー重合時の体積収縮による記録干渉縞の歪みによってデータの入出力時にエラーを引き起こす、という重大な問題が提起されている。
一方、重合に伴う体積収縮が小さい化合物の開発が行われてきている。体積収縮を抑制している化合物の例として、非特許文献3、4には、重合時に体積が膨張する重合性モノマーが開示されている。しかし、該化合物はモノマー状態では室温において固体であるため、各種産業分野で求められている低体積収縮性モノマーという観点からは実用上の意味をなしていない。
【0010】
体積ホログラム記録媒体に好適に用いられるモノマーとして、ビニルシクロプロパン化合物が知られている。例えば、特許文献8には、ビニルシクロプロパンをホログラム記録用組成物の記録モノマーとして用いた例が開示されている。しかし、この例では組成物にウレタンマトリックスを多量に使用しているため、充分な記録容量が得られないものであった。
【0011】
体積ホログラム記録用材料組成物としては、一般的に多官能性モノマーからなる組成物が知られているが、この多官能性モノマーがラジカル重合系の場合の体積収縮率は一般的に10%を越えるものが多く、単独では5%未満の重合収縮を達成するのは極めて困難である。これはモノマー間の距離と高分子化合物中のモノマーの繰り返し単位間の結合距離の差で説明され、重合反応前のモノマーの分子間に作用する弱い引力(ファンデルワールス結合)に対して、モノマー同士が重合して共有結合の結合距離となるためである。すなわち重合反応によって弱い相互作用のファンデルワールス結合から、非常に短い共有結合距離になるため体積収縮が生じるのである。
この多官能性モノマーがエポキシやオキセタンのようなカチオン重合系の場合は、重合に伴い開環による結合切断が生じるためにラジカル重合系に比較すると収縮率は低くなるが、最も重合収縮が小さいものでも3%以下を達成する事は非常に困難である。
このような事情から、高い記録容量と少ない重合収縮率を両立し得るホログラフィック用記録組成物の速やかな開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平5−107999号公報
【特許文献2】米国特許第5759721号明細書
【特許文献3】特開平6−019040号公報
【特許文献4】特表2000−508783号公報
【特許文献5】特開2002−236440号公報
【特許文献6】特開2003−084651号公報
【特許文献7】特開2005−099612号公報
【特許文献8】特開2007−291056号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】アプライド・フィジックス・レターズ(Appl.Phys.Lett.),2002年,第81巻,p.4121−4123
【非特許文献2】日本印刷学会誌,2004年,41巻,279ページ
【非特許文献3】マクロモレキュルズ(Macromolecules),1994年,27巻,p.5543−5546
【非特許文献4】マクロモレキュルズ(Macromolecules),1996年,29巻,p.1943−1950
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、微粒子をエチレン性不飽和基を有するエン化合物及びメルカプト基を有するチオール化合物の混合物(以下、「エン/チオール重合系化合物」とも言う)に分散することにより、低収縮かつ回折効率の高いホログラムが永続的に形成される体積ホログラム記録材料用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。
すなわち、第1観点として、可干渉な光の干渉により生じる干渉縞を、屈折率の差によって記録する体積ホログラム記録材料用組成物であって、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物(以下、「エン化合物」とも言う)、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物(以下、「チオール化合物」とも言う)及び(c)粒径が1nm以上、100nm以下である微粒子を含む体積ホログラム記録材料用組成物。
第2観点として、前記(a)エン化合物と前記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、前記(c)微粒子の屈折率との差が0.01以上、1.3以下である、第1観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第3観点として、前記(c)微粒子が無機微粒子である、第1観点又は第2観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第4観点として、前記(c)微粒子がシリカ微粒子である、第3観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第5観点として、前記(c)微粒子が有機微粒子である、第1観点又は第2観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第6観点として、前記(c)微粒子がハイパーブランチポリマーである、第5観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第7観点として、前記(a)エン化合物、前記(b)チオール化合物及び前記(c)微粒子の合計体積に占める前記(c)微粒子の割合が、3体積%以上、50体積%以下である、第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第8観点として、可干渉な光の干渉により生じる干渉縞を、屈折率の差によって記録す
る体積ホログラム記録材料用組成物であって、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物及び(d)ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が500乃至5000000である分岐重合物を含む体積ホログラム記録材料用組成物。
第9観点として、前記(a)エン化合物と前記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、前記(d)分岐重合物の屈折率との差が0.01以上、1.3以下である、第8観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第10観点として、前記(a)エン化合物、前記(b)チオール化合物及び前記(d)分岐重合物の合計体積に占める前記(d)分岐重合物の割合が、3体積%以上、50体積%以下である、第8観点又は第9観点に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
第11観点として、第1観点乃至第10観点のうち何れか一項に記載の組成物を含む体積ホログラム記録層。
第12観点として、第11観点に記載の体積ホログラム記録層を含む体積ホログラム記録媒体。
第13観点として、体積ホログラム記録層が2枚の透明基体間に配置された構造である、第12観点に記載の体積ホログラム記録媒体。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、微粒子をエン/チオール重合系化合物に分散させることによって、微粒子が有する様々な機能と高分子が有する加工性及び成形性の容易さを兼ね備えた、低収縮かつ回折効率の高いホログラムが永続的に形成される体積ホログラム記録材料用組成物、及び体積ホログラム記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、参考例1で得られたHB−TFA29の1H NMRスペクトル図である。
【図2】図2は、体積ホログラム記録媒体に対する二光束干渉露光の概念図である。
【図3】図3は、実施例1における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図4】図4は、実施例3における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図5】図5は、実施例4における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図6】図6は、実施例5における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図7】図7は、実施例6における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図8】図8は、実施例6における体積ホログラム記録媒体の屈折率変調量の露光時間変化を表すグラフである。
【図9】図9は、実施例7における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図10】図10は、実施例7における体積ホログラム記録媒体の屈折率変調量の露光時間変化を表すグラフである。
【図11】図11は、実施例8における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図12】図12は、実施例8における体積ホログラム記録媒体の屈折率変調量の露光時間変化を表すグラフである。
【図13】図13は、実施例9における体積ホログラム記録媒体の回折効率(Diffraction Efficiency)の露光時間変化を表すグラフである。
【図14】図14は、実施例9における体積ホログラム記録媒体の屈折率変調量の露光時間変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物は、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物及び(c)粒径が1nm以上、100nm以下である微粒子からなる。
【0019】
次に、体積ホログラム記録材料用組成物を用いた、体積ホログラム記録媒体の体積ホログラム記録方法について説明する。記録原理は明らかではないが、次のように推察される。
【0020】
まず、媒体に2本のレーザー光を同時に照射すると媒体上に明部と暗部が縞状に並ぶ干渉縞が形成される。すると媒体の明部ではモノマーである(a)エン化合物と(b)チオール化合物とが重合を開始し、明部のモノマー濃度が低下する。それに従い、暗部と明部にモノマーの濃度勾配が生じ、暗部から明部にモノマー(エン化合物及びチオール化合物)が移動、供給され更に重合が進む。
入れ替わりに微粒子が明部から暗部に移動する。そして明部と暗部で微粒子の分布に偏りが発生する。更にある程度の時間が経つと、最終的には、暗部でもモノマーの重合が進み、媒体の記録層全体が重合体となる。このようにして、モノマーの重合体の中に暗部に対応して微粒子の縞状分布ができる。微粒子の屈折率はモノマーの重合体の屈折率と異なるため、記録層に屈折率分布ができ、ホログラムが記録される。再生時には、該干渉縞が形成された領域に再生光を照射すると、回折が起こり、ホログラム像が再生されるのである。
【0021】
以下、本発明の体積ホログラム記録材料用組成物の構成について詳細に説明する。
【0022】
[(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物]
本発明におけるエチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物は、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する多官能性の化合物であれば特に限定はされず、単量体又は高分子であってもよい。ここで、エチレン性不飽和基とは、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等を包含するがこれらに限定されない。なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基を指す。
本発明に用いられるエン化合物としては、アリルアルコール誘導体、(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化合物、ウレタンアクリート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。これらの中で、特にアリルアルコール誘導体が好ましい。
【0023】
上記アリルアルコール誘導体の具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルマレエート、ジアリルアジペート、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート、グリセリンジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、グリオキサルビス(ジアリルアセタール)等を挙げることができる。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化合物において、(メタ)アクリル酸とエステル化合物を形成する多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等を挙げることができる。
【0025】
上記エン化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0026】
[(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物]
本発明におけるメルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物は、1分子中に2個以上、好ましくは2乃至4個のメルカプト基を有する多官能性の化合物であれば特に限定はされず、脂肪族又は芳香族であってもよく、また単量体又は高分子であってもよい。
【0027】
本発明に用いられるチオール化合物の分類としては、ポリオールと、チオグリコール酸やβ−メルカプトプロピオン酸のようなα−又はβ−メルカプトカルボン酸類を包含する末端チオール置換カルボン酸(又はエステル類又はアシルハロゲン化物等の誘導体)とのエステル化によって得られるものが挙げられる。
【0028】
上述のようにして得られる化合物としては、例えば、エチレングリコールビス(チオグリコレート)、エチレングリコールジメルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(チオグリコレート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等が挙げられる。これらの中で、特にトリメチロールプロパントリエステル類又はペンタエリスリトールテトラエステル類が好ましい。
【0029】
上記チオール化合物は、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0030】
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物における、上記エン化合物と上記チオール化合物との使用量比は特に限定されないが、一方が大過剰の場合には、露光時に硬化不足や回折効率低下などの要因となる。そのため、官能基数比、すなわちエチレン性不飽和基数とメルカプト基数の比で1:5乃至5:1が好ましく、1:2乃至2:1がより好ましい。
【0031】
本発明による体積ホログラム記録材料用組成物は、少なくとも1つの反応性希釈剤を含んでもよい。反応性希釈剤は、組成物の粘度を調節するために使用できる。したがって、反応性希釈剤は、各々が化学線に暴露したときに重合することができる官能基を少なくとも1つ含有する低粘度モノマーである。例えば、ビニル反応性希釈剤及び(メタ)アクリレートモノマー希釈剤を使用してもよい。
【0032】
上記反応性希釈剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0033】
[(c)微粒子]
微粒子の粒径は、100nm以下である。あまり大きいと光散乱を起こしやすくなるためである。より好ましくは50nm以下である。粒径は小さいほど好ましいが、小さいほど組成物の粘度上昇が激しく生じ、作業性、成形性の観点から、実際上1nm以上に限られる。
【0034】
また、体積ホログラム組成物中の屈折率は構成成分の体積比によって決定されるため、樹脂成分の体積に対する無機微粒子の体積比が大きいほど、達成可能な屈折率差が大きくなる。
従って、(a)エン化合物、(b)チオール化合物及び(c)微粒子の合計体積に占め
る(c)微粒子の割合は、3体積%以上が好ましく、より好ましくは5体積%以上である。
ただし、体積ホログラム組成物中に分散できる微粒子の量には限界があり、あまり多いと拡散しにくくなるため、50体積%以下が好ましく、より好ましくは40体積%以下である。
【0035】
ここで、上記の樹脂成分とは、例えば(a)エン化合物及び(b)チオール化合物であるが、体積ホログラム材料用組成物がバインダー樹脂や反応性希釈剤などの有機化合物を含む場合は、(a)エン化合物及び(b)チオール化合物だけでなく、バインダー樹脂や反応性希釈剤も指す。
【0036】
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物では、上記(a)エン化合物と上記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、上記(c)微粒子の屈折率との差が0.01以上、1.3以下であるのが好ましく、より好ましくは0.03以上、1.1以下である。これは、屈折率の差が0.01未満の場合、最終的な屈折率変調量が少なくなることで記録容量が小さくなり、一方、1.3を越えると光散乱の原因となるおそれがあるためである。
【0037】
微粒子としては、本発明の目的を達成できる粒子であれば特に限定されず、有機微粒子及び無機微粒子から自由に選択することが出来る。
【0038】
上記有機微粒子の具体例としては、ハイパーブランチポリマー、デンドリマー、スターバーストポリマー、フラーレン、ナノダイヤ等が挙げられる。好ましくは主鎖が高度に分岐した高分子であり、例えば、デンドリマー、スターバーストポリマー及びハイパーブランチポリマーであり、これらのうちハイパーブランチポリマーが分散性、透明性及び経済性の面から特に好ましい。ハイパーブランチポリマーの例としては、米国特許2008176146号公報に記載のハイパーブランチポリマー等が挙げられる。
【0039】
上記無機微粒子の具体例としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化クロム、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化銅、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化ホルミウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化エルビウム、酸化ガドリニウム、酸化インジウム、酸化ニッケル、酸化ストロンチウム、酸化イッテルビウム等の金属酸化物、窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ニオブ等の窒化物、炭化ケイ素、炭化チタン、炭化モリブデン、炭化タングステン等の炭化物などの誘電体微粒子、Si、Ge等のIV族半導体、CdS、CdSe、ZnSe、CdTe、ZnS、HgS、HgSe等のII−VI族半導体微粒子、GaAs、InP、InSb等のIII−V族半導体微粒子、PbS、PbSe等のIV−VI族半導体微粒子、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、鉄、コバルト、タングステン、モリブデン、ニオブ等の金属微粒子等であり、官能性モノマーに均一に分散可能なものであれば、特に限定はされない。
【0040】
無機微粒子を均一分散させるために、微粒子作製時に表面を化学修飾又は微粒子作成後に分散剤添加等の処理を行うのが好ましい。処理としては無機微粒子の分散性を高めるものならどのような化合物、処理方法でもよい。例えばカプセル化、表面処理、ハイブリッド化などの手法が挙げられるが、表面処理剤を用いた修飾が工業的にも簡便なため好ましい。上記微粒子は単独でも、混合体でも、複合体でも使用できる。
【0041】
[(d)分岐重合物]
また、本発明の別の態様では、体積ホログラム記録材料用組成物において、(c)成分である微粒子の代わりに、(d)成分として、分岐重合物を用いることができる。
ここで、上記分岐重合物としては、例えば、下記式(1)又は下記式(2)で表される
構造単位を有する分岐重合物、及び下記式(3)で表される構造を有する分岐重合物が挙げられる。
【0042】
【化1】
【0043】
【化2】
【0044】
【化3】
【0045】
上記分岐重合物は、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が500乃至5000000である。好ましくは1000乃至1
000000であり、さらに好ましくは、2000乃至500000である。
【0046】
また、上記式(3)において、nは、繰り返し単位構造の数であって、2以上の整数を表す。
【0047】
さらに、上述の成分(c)同様、(a)エン化合物、(b)チオール化合物及び(d)分岐重合物の合計体積に占める(d)分岐重合物の割合についても、3体積%以上が好ましく、より好ましくは5体積%以上である。
ただし、体積ホログラム組成物中に分散できる分岐重合物の量には限界があり、あまり多いと拡散しにくくなるため、50体積%以下が好ましく、より好ましくは40体積%以下である。
【0048】
さらに、上記(a)エン化合物と上記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、上記(d)分岐重合物の屈折率との差についても、0.01以上、1.3以下であるのが好ましく、より好ましくは0.03以上、1.1以下である。
【0049】
本発明の体積ホログラム記録媒体における記録層には、上記(a)成分乃至(c)成分又は(d)成分の他、必要に応じて、重合開始剤、増感剤、連鎖移動剤、可塑剤、着色剤等の添加剤を加えてもよい。また、膜厚の均一性を持たせ、光照射での重合で形成された干渉膜を安定に存在させるために、結合材としてバインダー樹脂を加えてもよい。
【0050】
任意成分である光重合開始剤としては、パターン露光によって上記エン/チオール重合系化合物の重合を開始することができる機能を有する化合物であれば特に限定はない。
【0051】
また、パターン露光の方法としては、フォトマスク露光、フェーズマスク露光、干渉露光等が挙げられる。これらのうち体積ホログラム記録を行う場合には干渉露光が好ましい。
干渉露光の光源としては、一般に干渉性の高いレーザー光であり、光重合開始剤に高感度であればよく、例えば、アルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、Nd:YAGレーザー(532nm)、Nd:YVO4レーザー(532nm)、InGaNレーザー(405nm)
、He−Cdレーザー(325nm、442nm)等が使用される。
【0052】
光ラジカル重合開始剤としては、パターン露光時に活性ラジカルを生成する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンゾイン系化合物、α−アミノアルキルフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アゾ系化合物、アジド系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物、有機過酸化物、ベンゾフェノン類、ビスクマリン、ビスイミダゾール化合物、チタノセン化合物、トリクロロメチルトリアジン化合物、あるいはヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物などのオニウム塩化合物等が用いられる。これらのうち、チタノセン化合物が好ましい。
【0053】
上記光重合開始剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
上記チタノセン化合物は、特に限定はされないが、具体的には、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロフェニル)チタ
ニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,4−ジフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)チタニウム、ビス(2,6−ジフルオロフェニル)ビス(メチルシクロペンタジエニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム等を挙げることができる。
【0055】
上記ベンゾイン系化合物としては、例えば、ベンゾインエチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等を挙げることができる。
【0056】
上記α−アミノアルキルフェノン系化合物としては、例えば、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン等を挙げることができる。
【0057】
上記チオキサントン系化合物としては、例えば、チオキサントン、1−クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等を挙げることができる。
【0058】
上記アゾ系化合物としては、例えば、2,2’−アゾビス(2−アミノジプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−(1−ヒドロキシブチル))プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)等を挙げることができる。
【0059】
上記アジド系化合物としては、例えば、p−アジドベンズアルデヒド、p−アジドアセトフェノン、p−アジド安息香酸、p−アジドベンザルアセトフェノン、4,4’−ジアジドカルコン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフィド、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、4,4’−ジアジドスチルベン等を挙げることができる。
【0060】
上記アシルホスフィンオキサイド系化合物としては、例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0061】
上記オキシムエステル系化合物としては、例えば、2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチル
オキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等を挙げることが出来る。
【0062】
上記有機過酸化物としては、例えば、過酸化アセチル、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化ジ−tert−ブチル等を挙げることが出来る。
【0063】
上記ベンゾフェノン類としては、例えば、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0064】
上記ビスクマリンとしては、例えば、3,3’−カルボニルビス(7−(ジエチルアミノ)−2H−クロメン−2−オン)等が挙げられ、これはみどり化学株式会社でBC(CAS[63226−13−1])として市販されている。
【0065】
上記ビスイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等を挙げることができる。
【0066】
また、上記バインダー樹脂は、(a)エン化合物及び(b)チオール化合物と相溶性の良いものが好ましく、その具体例としては、塩素化ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの共重合体、塩化ビニルとアクリロニトリルとの共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、エチルセルロース、アセチルセルロース等が挙げられる。
【0067】
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物を用いて体積ホログラム記録媒体を作製するには、(a)エン化合物、(b)チオール化合物及び(c)微粒子又は(d)分岐重合物を、必要に応じ、増感剤及び/又はバインダー樹脂とともに混合し、このまま無溶剤で透明基体上に塗布するか、またはこれらの混合物に溶剤又は添加剤を加えて混合し、これを透明基体上に塗布、乾燥して透明基体上に体積ホログラム記録層が形成した記録媒体を得る。さらに、記録層上に透明基体、あるいは酸素遮断のための保護層を設け、体積ホログラム記録層が2枚の透明基体間、あるいは透明基体と保護層間に配置された構造とすることもできる。
【0068】
溶剤としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル 2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶剤、ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−
ピロリドン等の高極性溶剤、あるいはこれらの混合溶剤、さらには、これらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。
【0069】
上記溶剤の使用量の割合は、本実施形態の体積ホログラム用材料組成物の総量に対して、通常、質量比で1乃至20倍程度の範囲である。
【0070】
上記透明基体としては、透明なガラス板、アクリル板、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム等が用いられる。塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布、カーテン塗布等を用いることができる。
【0071】
上記保護層としては、酸素による感度低下や保存安定性の劣化等の悪影響を防止するための公知技術、例えば、水溶性ポリマー等の塗布を用いることもできる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0073】
<参考例1>
[下記式(1)で表される構造単位を有する分岐重合物(HB−TFA29)の製造]
【0074】
【化4】
【0075】
空気下、200mL四口フラスコに9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(Aldrich社製)5.90g(17mmol)を仕込み、ジメチルアセトアミド80mLを加え、溶解させた。その後、この溶液をオイルバスで100℃に加熱し、別途ジメチルアセトアミド20mLに溶解させた2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジン(東京化成工業(株)製)3.69g(20mmol)を加え、重合を開始させた。その5分後、この反応液にアニリン3.35g(36mmol)を加え、さらに10分間撹拌した。その後、室温まで放冷後、炭酸カリウム15g(0.11mol)を溶解させた水溶液1L中にこの反応液を加え再沈殿させた。沈殿物をろ過し、テトラヒドロフラン(THF)50mLに再溶解させた後、ヘキサン540mLとエタノール60mLの混合溶液で再沈殿させた。得られた沈殿物をろ過し、40℃で6時間減圧乾燥し、目的とするHB−TFA29を10.8g得た。得られたHB−TFA29の1H NMRスペクトルを
図1に示す。また、得られた化合物のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは2,900、分散度:Mw/Mnは1.68であった。ここで、Mnは、数平均分子量を表す。
【0076】
[ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)条件]
装置:東ソー(株)製 HLC−8200 GPC
カラム:Shodex KF−804L+KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:UV(254nm)
検量線:標準ポリスチレン
【0077】
<実施例1>
[体積ホログラム記録材料用組成物の調製]
シリカ分散液(メチルイソブチルケトン分散、シリカ微粒子濃度30.5質量%、日産化学工業(株)製、製品名MIBK−ST)1.05gに、(a)エン化合物として、トリメチロールプロパンジアリルエーテル(Aldrich社製)0.16g、及びビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(チバ・ジャパン(株)製、商品名Irgacure784)7.2mg並びに過酸化ベンゾイル9mgを加え溶解させた。次にこの溶液に、(b)チオール化合物として、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(Aldrich社製)0.2gを加え、室温で十分撹拌し、体積ホログラム記録材料用組成物を調製した。
【0078】
波長546nmにおける、シリカ微粒子の屈折率は1.46、エン化合物とチオール化合物との重合体の屈折率は1.52であり、両者の屈折率差は0.06であった。
また、エン化合物の密度は0.955g/cm3、チオール化合物の密度は1.21g
/cm3、シリカ微粒子の密度は2.22g/cm3であるから、その体積はそれぞれ、エン化合物0.16/0.955=0.168cm3、チオール化合物0.2/1.21=
0.165cm3、シリカ微粒子1.05×0.305/2.22=0.144cm3であった。
従って、エン化合物、チオール化合物及びシリカ微粒子の合計体積に占めるシリカ微粒子の体積分率は、0.144/(0.168+0.165+0.144)=0.30、即ち30体積%であった。
【0079】
[体積ホログラム記録媒体の作製]
スライドガラスの両端部に、スペーサとして厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り、スライドガラス中央(スペーサに挟まれた領域)に上記体積ホログラム記録材料用組成物を滴下した。続いて、オーブン中、50℃で20分間乾燥し、体積ホログラム記録層を形成した。その後、形成した体積ホログラム記録層を挟むように別のスライドガラスを被せ、体積ホログラム記録媒体を作製した。
【0080】
[体積ホログラム記録時の各物性値の測定]
本発明の体積ホログラム記録媒体に対し、図2に示す装置によって二光束干渉露光を行い、体積ホログラムの記録を試みた。体積ホログラム記録媒体に対し、波長532nmのNd:YVO4レーザーを用いて、露光パワー密度5mW/cm2で二光束干渉露光(格子間隔1μm)を行った。Nd:YVO4レーザーから出射した光はビームエキスパンダを
経てハーフミラーで2本に分割され、それぞれミラーを経て体積ホログラム記録媒体に照射され、両光の干渉縞が記録され体積ホログラムが形成される。
同時に、体積ホログラム記録媒体が感光しない波長632.8nmのヘリウムネオン(He−Ne)レーザーを体積ホログラム記録媒体に照射し、その回折光を光検出器で検出することによりホログラム形成過程をモニターし回折効率を評価した。また、露光後の回折効率の角度依存性を測定し、試料の露光後の膜厚を算出した。さらに、得られた回折効率と膜厚から屈折率変調量(Δn)を評価した。
【0081】
また、露光後の体積ホログラム記録媒体に、波長632.8nmのヘリウムネオン(He−Ne)レーザーを照射し、入射光と(回折光+透過光)の比から散乱損失を評価した。
さらに、記録する二光束がなす角の二等分線からホログラム記録媒体面の垂線を有限な角度傾けながら複数の体積ホログラムの多重記録を行い、記録されたそれぞれのホログラムを読み出した時のBragg角離調からホログラム記録層の体積収縮率を評価した。この収縮率の測定法の詳細は、L.Dhar, Applied Physics Letters 73, 1337−1339 (1998)に説明されている。以上の結果を表1に合わせて示す。
【0082】
<実施例2>
実施例1と同様の方法で、シリカ微粒子の体積分率5体積%の試料を作成し、体積収縮率を評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0083】
<実施例3>
実施例1と同様の方法で、シリカ微粒子の体積分率10体積%の試料を作成し、各物性値を評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0084】
<実施例4>
実施例1と同様の方法で、シリカ微粒子の体積分率20体積%の試料を作成し、各物性値を評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0085】
<実施例5>
実施例1と同様の方法で、シリカ微粒子の体積分率40体積%の試料を作成し、各物性値を評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0086】
<実施例6>
[体積ホログラム記録材料用組成物の調製]
参考例1で製造したHB−TFA29 25質量部にテトラヒドロフラン75質量部を加え、均一な溶液になるまで室温で撹拌した。得られたHB−TFA29分散液(分岐ポリマー濃度25.0質量%)0.33gに、(a)エン化合物として、ペンタエリトリトールアリルエーテル(テクニカルグレード70%、Aldrich社製)63mg、及びビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(チバ・ジャパン(株)製、商品名Irgacure784)3.2mg並びに過酸化ベンゾイル4.1mgを加え溶解させた。次にこの溶液に、(b)チオール化合物として、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(Aldrich社製)0.1gを加え、室温で十分撹拌し、体積ホログラム記録材料用組成物を調製した。
【0087】
波長546nmにおける、HB−TFA29の屈折率は1.73、エン化合物とチオール化合物との重合体の屈折率は1.53であり、両者の屈折率差は0.20であった。
また、エン化合物の密度は0.985g/cm3、チオール化合物の密度は1.21g
/cm3、HB−TFA29の密度は1.29g/cm3であるから、その体積はそれぞれ、エン化合物0.063/0.985=0.064cm3、チオール化合物0.1/1.
21=0.083cm3、HB−TFA29 0.33×0.250/1.29=0.0
64cm3であった。
従って、エン化合物、チオール化合物及びHB−TFA29の合計体積に占めるHB−TFA29の体積分率は、0.064/(0.064+0.083+0.064)=0.30、即ち30体積%であった。
【0088】
[体積ホログラム記録媒体の作製]
実施例6で得られた体積ホログラム記録材料用組成物を用いて、実施例1と同様の方法で体積ホログラム記録媒体を作製した。
【0089】
[体積ホログラム記録時の各物性値の測定]
実施例6で得られた体積ホログラム記録材料用組成物を用いて作製した体積ホログラム記録媒体に対し、実施例1と同様の方法で各物性値を評価した。結果を表2に合わせて示す。また、回折効率の露光時間変化を図7に、屈折率変調量の露光時間変化を図8にそれぞれ示す。
【0090】
<実施例7>
実施例6と同様の方法で、HB−TFA29の体積分率35体積%の試料を作成し、各物性値を評価した。結果を表2に合わせて示す。また、回折効率の露光時間変化を図9に、屈折率変調量の露光時間変化を図10にそれぞれ示す。
【0091】
<実施例8>
[体積ホログラム記録材料用組成物の調製]
実施例6で調製したHB−TFA29分散液(分岐ポリマー濃度25.0質量%)0.33gに、(a)エン化合物として、ペンタエリトリトールアリルエーテル(テクニカルグレード70%、Aldrich社製)69mg、及びビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(チバ・ジャパン(株)製、商品名Irgacure784)3.3mg並びに過酸化ベンゾイル4.2mgを加え溶解させた。次にこの溶液に、(b)チオール化合物として、ペンタエリトリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(Aldrich社製)0.1gを加え、室温で十分撹拌し、体積ホログラム記録材料用組成物を調製した。
【0092】
波長546nmにおける、HB−TFA29の屈折率は1.73、エン化合物とチオール化合物との重合体の屈折率は1.54であり、両者の屈折率差は0.19であった。
また、エン化合物の密度は0.985g/cm3、チオール化合物の密度は1.28g
/cm3、HB−TFA29の密度は1.29g/cm3であるから、その体積はそれぞれ、エン化合物0.069/0.985=0.070cm3、チオール化合物0.1/1.
28=0.078cm3、HB−TFA29 0.33×0.250/1.29=0.0
64cm3であった。
従って、エン化合物、チオール化合物及びHB−TFA29の合計体積に占めるHB−TFA29の体積分率は、0.064/(0.070+0.078+0.064)=0.30、即ち30体積%であった。
【0093】
[体積ホログラム記録媒体の作製]
実施例8で得られた体積ホログラム記録材料用組成物を用いて、実施例1と同様の方法で体積ホログラム記録媒体を作製した。
【0094】
[体積ホログラム記録時の各物性値の測定]
実施例8で得られた体積ホログラム記録材料用組成物を用いて作製した体積ホログラム記録媒体に対し、実施例1と同様の方法で各物性値を評価した。結果を表2に合わせて示す。また、回折効率の露光時間変化を図11に、屈折率変調量の露光時間変化を図12にそれぞれ示す。
【0095】
<実施例9>
実施例8と同様の方法で、HB−TFA29の体積分率35体積%の試料を作成し、各
物性値を評価した。結果を表2に合わせて示す。また、回折効率の露光時間変化を図13に、屈折率変調量の露光時間変化を図14にそれぞれ示す。
【0096】
<比較例>
[体積ホログラム記録材料用組成物の調製]
シリカ分散液(メチルイソブチルケトン分散、固形分濃度30.5質量%、日産化学工業(株)製、製品名MIBK−ST)10.0gに、ビス(シクロペンタジエニル)ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニル)チタニウム(チバ・ジャパン(株)製、商品名Irgacure784)32mgを加え溶解させた。次にこの溶液に、重合性化合物としてp−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)キシリレン3.19gを加え均一溶液とし、感光性組成物を調製した。
【0097】
重合性化合物の密度は1.13g/cm3であるから、その体積は3.19/1.13
=2.82cm3であった。一方、シリカ微粒子の密度は2.22g/cm3であるから、その体積は10.0×0.305/2.22=1.37cm3であった。
従って重合性化合物及びシリカ微粒子の合計体積に占めるシリカ微粒子の体積分率は1.37/(2.82+1.37)=0.33、即ち33体積%であった。
【0098】
[体積ホログラム記録媒体の作製]
乾燥条件を80℃で30分間に変更した以外は実施例1と同様の方法で、体積ホログラム記録媒体を作製した。
【0099】
[ホログラム記録時の各物性値の測定]
露光強度を100mW/cm2に変更した以外は実施例1と同様の方法で、各物性値を
評価した。結果を表1に合わせて示す。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に示したように、本発明の体積ホログラム記録材料用組成物の体積収縮率は極めて低く、微粒子の体積分率が同程度の場合(実施例1対比較例)、従来の組成物のおよそ1/8の体積収縮率となる。
【0102】
【表2】
【0103】
表2に示したように、本発明の体積ホログラム記録材料用組成物の体積収縮率は極めて低く、従来の組成物のおよそ1/10の体積収縮率となる(実施例6対比較例)。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の体積ホログラム記録材料用組成物、及びそれらから得られる体積ホログラム記録媒体は、三次元画像表示や画像、ビット情報の大容量メモリ、及び回折光学素子、その他に使用できる。
【符号の説明】
【0105】
1 ホログラム記録媒体
2 Nd:YVO4レーザー
3 ビームエキスパンダ
4 He−Neレーザー
5,6,7,8,9,10,11 ミラー
12 ビームサンプラー
13 ハーフミラー
14,15 半波長板
16,17 偏光プリズム
18,19,20 光検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可干渉な光の干渉により生じる干渉縞を、屈折率の差によって記録する体積ホログラム記録材料用組成物であって、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物及び(c)粒径が1nm以上、100nm以下である微粒子を含む体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項2】
前記(a)エン化合物と前記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、前記(c)微粒子の屈折率との差が0.01以上、1.3以下である、請求項1に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項3】
前記(c)微粒子が無機微粒子である、請求項1又は請求項2に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項4】
前記(c)微粒子がシリカ微粒子である、請求項3に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項5】
前記(c)微粒子が有機微粒子である、請求項1又は請求項2に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項6】
前記(c)微粒子がハイパーブランチポリマーである、請求項5に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項7】
前記(a)エン化合物、前記(b)チオール化合物及び前記(c)微粒子の合計体積に占める前記(c)微粒子の割合が、3体積%以上、50体積%以下である、請求項1乃至請求項6のうち何れか1項に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項8】
可干渉な光の干渉により生じる干渉縞を、屈折率の差によって記録する体積ホログラム記録材料用組成物であって、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物及び(d)ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が500乃至5000000である分岐重合物を含む体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項9】
前記(a)エン化合物と前記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、前記(d)分岐重合物の屈折率との差が0.01以上、1.3以下である、請求項8に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項10】
前記(a)エン化合物、前記(b)チオール化合物及び前記(d)分岐重合物の合計体積に占める前記(d)分岐重合物の割合が、3体積%以上、50体積%以下である、請求項8又は請求項9に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のうち何れか1項に記載の組成物を含む体積ホログラム記録層。
【請求項12】
請求項11に記載の体積ホログラム記録層を含む体積ホログラム記録媒体。
【請求項13】
体積ホログラム記録層が2枚の透明基体間に配置された構造である、請求項12に記載の体積ホログラム記録媒体。
【請求項1】
可干渉な光の干渉により生じる干渉縞を、屈折率の差によって記録する体積ホログラム記録材料用組成物であって、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物及び(c)粒径が1nm以上、100nm以下である微粒子を含む体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項2】
前記(a)エン化合物と前記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、前記(c)微粒子の屈折率との差が0.01以上、1.3以下である、請求項1に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項3】
前記(c)微粒子が無機微粒子である、請求項1又は請求項2に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項4】
前記(c)微粒子がシリカ微粒子である、請求項3に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項5】
前記(c)微粒子が有機微粒子である、請求項1又は請求項2に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項6】
前記(c)微粒子がハイパーブランチポリマーである、請求項5に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項7】
前記(a)エン化合物、前記(b)チオール化合物及び前記(c)微粒子の合計体積に占める前記(c)微粒子の割合が、3体積%以上、50体積%以下である、請求項1乃至請求項6のうち何れか1項に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項8】
可干渉な光の干渉により生じる干渉縞を、屈折率の差によって記録する体積ホログラム記録材料用組成物であって、(a)エチレン性不飽和基を少なくとも2つ有するエン化合物、(b)メルカプト基を少なくとも2つ有するチオール化合物及び(d)ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)が500乃至5000000である分岐重合物を含む体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項9】
前記(a)エン化合物と前記(b)チオール化合物との重合体の屈折率と、前記(d)分岐重合物の屈折率との差が0.01以上、1.3以下である、請求項8に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項10】
前記(a)エン化合物、前記(b)チオール化合物及び前記(d)分岐重合物の合計体積に占める前記(d)分岐重合物の割合が、3体積%以上、50体積%以下である、請求項8又は請求項9に記載の体積ホログラム記録材料用組成物。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のうち何れか1項に記載の組成物を含む体積ホログラム記録層。
【請求項12】
請求項11に記載の体積ホログラム記録層を含む体積ホログラム記録媒体。
【請求項13】
体積ホログラム記録層が2枚の透明基体間に配置された構造である、請求項12に記載の体積ホログラム記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−250246(P2010−250246A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115887(P2009−115887)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
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