説明

体細胞導入遺伝子免疫および関連方法

【課題】本発明は、リンパ器官中でまたはエキソビボでのいずれかで、リンパ球に、1
以上の異種エピトープをコードする核酸配列に作動可能に連結された造血細胞特
異的発現エレメントを含む核酸分子を投与することによって、免疫応答を刺激す
るための方法を提供する。
【解決手段】その異種エピトープは、免疫グロブリン分子の相補性
決定領域に挿入され得る。本発明はまた、異種ポリペプチドをコードする核酸配
列に作動可能に連結された造血細胞特異的発現エレメントを含む、核酸分子を提
供する。本発明はさらに、異種ポリペプチドをコードする核酸配列に作動可能に
連結された造血細胞特異的発現エレメントを含む核酸分子を投与することによっ
て、状態を処置するための方法を提供し、ここで、この核酸分子は、造血細胞に
標的化される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
以前の研究は、成人の免疫応答性宿主中に導入されたプラスミドDNAが、抗
体応答を誘導し得ることを示している(Tangら、Nature 356:1
52−154(1992))。体液性および細胞媒介性免疫の両方が誘導され得
ることが、インフルエンザウイルスを用いてすぐに実証され、これらは、インビ
ボでの防御のために十分であった(Ulmerら、Science 259:1
745−1749(1993);Fynanら、Proc.Natl.Acad
.Sci.USA 90:11478−11482(1993))。DNAワク
チン(遺伝的ワクチンとも呼ばれる)は、以下に対して免疫するために適用され
てきた:癌(Conryら、Cancer Res.54:1164−1168
(1994));細菌(Tasconら、Nat.Med.2:888−892
(1996);Huygenら、Nat.Med.2:893−898(199
6));ウイルス(Ulmerら、前出、1993);Fynanら、前出、1
993;Razら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9
519−9523(1994);Davisら、Vaccine 12:150
3−1509(1994);Wangら、Proc.Natl.Acad.Sc
i USA 90:4156−4160(1993);および寄生生物(Sed
egahら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:9866
−9870(1994))。
【0002】
遺伝的ワクチンは、感染の恐れなしでウイルス感染を模倣するやり方で、ワク
チン分子についての「青写真」を宿主に導入する。成人の免疫応答性動物中の体
細胞への機能的遺伝子の接種は、天然の感染を模倣しかつ適応性の免疫を開始す
るための単純な方法である(Ulmerら、Curr.Opin.Immuno
l.8:531−536(1996))。
【0003】
抗原をコードする配列およびそれらを発現するための調節エレメントを含むプ
ラスミドDNAは、非経口的注入(Wangら、前出、1993)または粒子ボ
ンバードメント(Tangら、前出、1992)によって組織に導入され得る。
代表的には、筋肉内経路または皮内経路を介するプラスミドDNAの注入は、好
ましくは複数のDNA接種によって誘導される、抗体、および長時間続く免疫を
伴う細胞応答の両方を生じる(Sedagahら、前出、1994;Xiang
ら、Virology、199:132−140(1994))。しかし、導入
遺伝子産物は、循環中でまれにしか見出されず(Davisら、Human G
ene Therapy、4:151−159(1993))、そして抗原提示
がどこで起きるか、そしてそれがどのようにして起きるかについてはほとんど知
られていない。
【0004】
DNA接種を介する免疫は、インビボトランスフェクション、産生、および、
実証された場合には、導入遺伝子産物の分泌、ならびに特定化された細胞による
抗原提示による。しかし、大部分の研究において、インビボでトランスフェクト
された細胞またはこのプロセスに関与する抗原提示細胞のいずれもが同定されて
いない。ウイルスプロモーターの制御下での外来性DNAの発現(Tangら、
前出、1992;Ulmerら、前出、1992;Davisら、前出、199
3;Razら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、91:951
9−9523(1994);Wangら、前出、1993;Huygenら、前
出、1996;Tasconら、前出、1996;Sedegahら、前出、1
994;Doolanら、J.Exp.Med.183:1739−1746(
1996))は、組織特異性を制限する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遺伝的ワクチンは、首尾良く用いられてきたが、その免疫原的な潜在性を開発
するためのより効果的な方法を発展させるための必要性が残ったままである。本
発明は、この必要性を満たし、そして関連する利点もまた提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、例えば、リンパ組織中のリンパ球に、1以上の異種エピトープをコ
ードする核酸配列に作動可能に連結された造血細胞特異的な発現エレメントを含
む核酸分子を、インビボまたはエキソビボで投与することによって、免疫応答を
刺激するための方法を提供する。異種エピトープは、免疫グロブリン分子の相補
性決定領域に挿入され得る。本発明はまた、異種ポリペプチドをコードする核酸
配列に作動可能に連結された造血細胞特異的な発現エレメントを含む核酸分子を
提供し、ここで異種ポリペプチドは、2以上のT細胞エピトープを含む。本発明
はまた、異種ポリペプチドをコードする核酸配列に作動可能に連結された造血細
胞特異的な発現エレメントを含む核酸分子を投与することによって状態を処置す
る方法を提供し、ここで、この核酸分子は、B細胞に標的化される。したがって、
本発明は以下をも提供する。
(1)免疫応答を刺激するための方法であって、該方法は、1位以
上の異種エピトープをコードする核酸配列に作動可能に連結された造血細胞特異
的発現エレメントを含む核酸分子をリンパ球にエキソビボ投与する工程を包含す
る、方法。
(2)項目1に記載の方法であって、ここで前記リンパ球が、血
液、または、脾臓、リンパ節、粘膜関連リンパ組織(MALT)、扁桃、パイア
ー斑、鼻腔関連リンパ組織(NALT)、ヴァルダイアー環、および尿生殖器リ
ンパ組織からなる群より選択されるリンパ組織に由来する、方法。
(3)項目1に記載の方法であって、前記発現エレメントが、B
細胞およびT細胞からなる群より選択される細胞中で機能する、方法。
(4)前記エピトープが抗体応答を刺激する、項目1に記載の方
法。
(5)前記エピトープがCD4 T細胞応答を刺激する、項目1
に記載の方法。
(6)前記エピトープがCD8 T細胞応答を刺激する、項目1
に記載の方法。
(7)前記エピトープがCD4 T細胞応答およびCD8 T細胞
応答を刺激する、項目1に記載の方法。
(8)項目1に記載の方法であって、前記エピトープのうちの1
つが抗体応答を刺激し、そして1以上の第2のエピトープがCD4 T細胞応答
およびCD8 T細胞応答を刺激する、方法。
(9)前記エピトープがサイトカインとの融合物として発現される
、項目1に記載の方法。
(10)前記サイトカインが、顆粒球マクロファージコロニー刺激
因子、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターフェロン−γ、
インターロイキン−5、インターロイキン−6、インターロイキン−10、およ
びインターロイキン−12からなる群より選択される、項目9に記載の方法。
(11)前記核酸分子が、前記異種エピトープを含む免疫グロブリ
ン分子をコードし、ここで該エピトープは、該免疫グロブリン分子の相補性決定
領域(CDR)中に挿入されている、項目1に記載の方法。
(12)前記免疫グロブリンが可変領域を含む、項目11に記載
の方法。
(13)前記可変領域が重鎖可変領域である、項目12に記載の
方法。
(14)前記可変領域が軽鎖可変領域である、項目12に記載の
方法。
(15)前記免疫グロブリン分子が重鎖を含む、項目11に記載
の方法。
(16)前記免疫グロブリン分子が軽鎖を含む、項目11に記載
の方法。
(17)免疫応答を刺激するための方法であって、該方法は、1位
以上の異種エピトープをコードする核酸配列に作動可能に連結された造血細胞特
異的発現エレメントを含む核酸分子をリンパ球に投与する工程を包含し、ここで
該リンパ球が、血液に由来するか、または、リンパ節、粘膜関連リンパ組織(M
ALT)、扁桃、パイアー斑、鼻腔関連リンパ組織(NALT)、ヴァルダイア
ー環、および尿生殖器リンパ組織からなる群より選択されるリンパ組織に由来す
る、方法
(18)項目17に記載の方法であって、前記発現エレメントが
、B細胞およびT細胞からなる群より選択される細胞中で機能する、方法。
(19)前記エピトープが抗体応答を刺激する、項目17に記載
の方法。
(20)前記エピトープがCD4 T細胞応答を刺激する、項目
17に記載の方法。
(21)前記エピトープがCD8 T細胞応答を刺激する、項目
17に記載の方法。
(22)前記エピトープがCD4 T細胞応答およびCD8 T細
胞応答を刺激する、項目17に記載の方法。
(23)項目17に記載の方法であって、前記エピトープのうち
の1つが抗体応答を刺激し、そして1以上の第2のエピトープがCD4 T細胞
応答およびCD8 T細胞応答を刺激する、方法。
(24)前記エピトープがサイトカインとの融合物として発現され
る、項目17に記載の方法。
(25)前記サイトカインが、顆粒球マクロファージコロニー刺激
因子、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターフェロン−γ、
インターロイキン−5、インターロイキン−6、インターロイキン−10、およ
びインターロイキン−12からなる群より選択される、項目24に記載の方法

(26)前記核酸分子が、前記異種エピトープを含む免疫グロブリ
ン分子をコードし、ここで該エピトープは、該免疫グロブリン分子の相補性決定
領域(CDR)中に挿入されている、項目17に記載の方法。
(27)前記免疫グロブリンが可変領域を含む、項目26に記載
の方法。
(28)前記可変領域が重鎖可変領域である、項目27に記載の
方法。
(29)前記可変領域が軽鎖可変領域である、項目27に記載の
方法。
(30)前記免疫グロブリン分子が重鎖を含む、項目26に記載
方法。
(31)前記免疫グロブリン分子が軽鎖を含む、項目26に記載
方法。
(32)核酸分子であって、異種ポリペプチドをコードする核酸配
列に作動可能に連結された造血細胞特異的発現エレメントを有し、ここで、該異
種ポリペプチドは2以上のT細胞エピトープを含む、核酸分子。
(33)前記T細胞エピトープが、CD4およびCD8エピトープ
、2つのCD4エピトープ、ならびに2つのCD8エピトープからなる群より選
択される、項目32に記載の核酸分子。
(34)前記異種ポリペプチドが、1以上のB細胞エピトープをさ
らに含む、項目32に記載の核酸分子。
(35)前記発現エレメントが、B細胞およびT細胞からなる群よ
り選択される細胞中で機能する、項目32に記載の核酸分子。
(36)前記核酸配列が、サイトカインとの融合物として発現され
るポリペプチドをコードする、項目32に記載の核酸分子。
(37)前記サイトカインが、顆粒球マクロファージコロニー刺激
因子、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターフェロン−γ、
インターロイキン−5、インターロイキン−6、インターロイキン−10、およ
びインターロイキン−12からなる群より選択される、項目36に記載の核酸
分子。
(38)核酸分子であって、1以上の異種エピトープをコードする
核酸配列に作動可能に連結された造血細胞特異的発現エレメントを含み、ここで
、該核酸配列は、該1以上のエピトープ含む免疫グロブリン分子をコードし、そ
して該1以上のエピトープは、該免疫グロブリン分子の相補性決定領域(CDR
)中に挿入されており、ここで該異種ペプチドが2以上のT細胞エピトープを含
む、核酸分子。
(39)前記T細胞エピトープが、CD4およびCD8エピトープ
、2つのCD4エピトープ、ならびに2つのCD8エピトープからなる群より選
択される、項目38に記載の核酸分子。
(40)1以上のB細胞エピトープをさらに含む、項目38に記
載の核酸分子。
(41)前記免疫グロブリンが可変領域を含む、項目38に記載
の核酸分子。
(42)前記可変領域が重鎖可変領域である、項目41に記載の
核酸分子。
(43)前記可変領域が軽鎖可変領域である、項目41に記載の
核酸分子。
(44)前記1以上のエピトープが2つのCDR中に挿入されてい
る、項目38に記載の核酸分子。
(45)前記エピトープが、サイトカインとの融合物として発現さ
れる、項目38に記載の核酸分子。
(46)前記サイトカインが、顆粒球マクロファージコロニー刺激
因子、インターロイキン−2、インターロイキン−4、インターフェロン−γ、
インターロイキン−5、インターロイキン−6、インターロイキン−10、およ
びインターロイキン−12からなる群より選択される、項目45に記載の核酸
分子。
(47)状態を処置するための方法であって、異種ポリペプチドを
コードする核酸配列に作動可能に連結した、B細胞特異的発現エレメントを含む
核酸分子を含む非ウイルスベクターを投与する工程を包含し、ここで、該核酸分
子が、B細胞に標的化されかつ該異種ポリペプチドを発現する、方法。
(48)前記造血細胞がエキソビボで標的化される、項目47に
記載の方法。
(49)前記造血細胞がインビボで標的化される、項目47に記
載の方法。
(50)前記異種ポリペプチドが、ホルモン、サイトカイン、凝固
因子、および免疫グロブリンからなる群より選択される、項目47に記載の方
法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明は、免疫に対する合理的かつ効果的なアプローチを提供し、そして造血
細胞(例えば、リンパ球)へと標的化された核酸分子(例えば、免疫グロブリン
H鎖遺伝子)によってコードされるポリペプチドの接種後の抗体応答(B細胞免
疫)および細胞性応答(T細胞免疫)の誘導に基づく。免疫は、例えば、リンパ
器官への直接注射によってリンパ球をトランスフェクトすることによって、また
は例えば、インビトロでトランスフェクトされたリンパ球の静脈内注射によって
エキソビボで得られ得る。本発明の方法は、プラスミドDNAのような核酸分子
の1回の接種から再現可能な方法で、免疫を開始するために、免疫学的記憶を確
立するために、そして免疫応答をプログラムするために、用いられ得る。
【0008】
本発明の方法は、ワクチンとして役立ち得る核酸分子を、インビボまたはエキ
ソビボで主に(しかし非排他的に)B細胞へと送達するための効果的方法に基づ
く。トランスフェクトされたB細胞は、ある量の免疫原性分子を産生し、そして
免疫系を免疫応答に対してプログラムする。主に(しかし非排他的に)B細胞へ
と核酸分子(例えば、DNAワクチン)を送達するための方法は、体細胞性導入
遺伝子免疫(STI)と呼ばれる。
【0009】
詳細には、STIは、2つの目的を達する:Bリンパ球を抗原性物質の強力な
ミニ工場(minifactory)として利用すること、およびこれらを抗原
提示細胞(APC)として使用すること。STIは、免疫原性分子の長引いた製
造のためにB細胞を用いて免疫を誘導する(B細胞は、103分子の抗体/秒を
産生し得る(LangmanおよびCohn、Mol.Immunol.24:
675−697(1987))。それゆえ、導入遺伝子を保有するまさにその細
胞による外来DNAおよび抗原提示の効率的な利用は、1つの操作上の事象にお
いて取り組まれる。従って、異種エピトープをコードする核酸分子の、リンパ組
織に対する標的化は、Bリンパ球における免疫グロブリンの天然の高レベル発現
を利用する。
【0010】
本発明の方法は、免疫応答を刺激する際に効果的である。なぜなら、核酸分子
は、造血細胞(例えば、Bリンパ球)に対して標的化されるからである。この方
法の有効性は、Bリンパ球に保有される抗原化(antigenization
)抗体遺伝子の自己再生特性および活性化されたBリンパ球が多くのコピーの導
入遺伝子産物を合成する構成的な能力に由来する。
【0011】
1つの実施形態では、抗体の可変領域は、抗体抗原化と呼ばれる、分子に新た
な抗原性特性および免疫原性特性を付与するように異種抗原の別個の配列をコー
ドするように再操作され得る。このアプローチは、抗原化後、抗体が、B細胞免
疫およびT細胞免疫の誘導を導くような様式で抗原の構造的模倣物になるような
、免疫グロブリンの可変ドメインの相補性決定領域(CDR)の改変を可能にす
る。その結果、抗原化H鎖遺伝子の接種およびSTIの間の宿主によるトランス
ジェニックIgの合成は、異種B細胞エピトープおよびT細胞エピトープを有す
る生物を提供する方法である。抗原化免疫グロブリンを生成する方法は、例えば
、1996年12月10日に発行された米国特許第5,583,202号および
1997年8月19日に発行された同第5,658,762号に記載されている

【0012】
本発明は、抗体およびT細胞に媒介される抗原特異的免疫を誘導する方法とし
て、STIおよび抗原化抗体遺伝子の組み合わされた使用を提供する。抗原化抗
体に対して、免疫応答を刺激するための本発明の方法は、1以上の異種ポリペプ
チドを発現する核酸(nucelic acid)分子を使用し得る。この異種
(heterologus)ポリペプチドは、リンパ組織内の標的におけるポリ
ペプチドの発現を可能にする発現エレメントに作動可能に(operation
ally)連結される。抗原化抗体と同様に、この方法は、リンパ系細胞への核
酸分子の投与の際の、標的化された造血細胞のポリペプチド発現能を利用する。
この異種ポリペプチドは、免疫応答を惹起し得る1以上のエピトープをコードし
得る。
【0013】
本発明の方法は、例えば、感染性因子、微生物病原体、腫瘍抗原および病理学
的プロセスに対する免疫応答を刺激するために有用である。本発明を用いて、感
染性因子に対する免疫応答を刺激し得る。このような感染性因子としては、以下
が挙げられる:ウイルス(例えば、免疫不全ウイルス1および2、肝炎ウイルス
、パピローマウイルス、インフルエンザウイルス、エプスタイン−バーウイルス
、サイトメガロウイルス、日本脳炎(Japanese encephalit
is)ウイルス、デング熱ウイルスおよび他のレトロウイルス/レンチウイルス
);原生動物(例えば、マラリア、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、フィ
ラリア症、トキソプラスマ症、鉤虫、条虫類を引き起こす寄生生物);酵母(例
えば、Candida albicans);細菌(特に、Mycobacte
rium tuberculosis、Mycobacterium lepr
aeおよびコレラ(colera)を引き起こす細菌、Mycoplasma/
Ureaplasma、ならびにスピロヘータ(例えば、treponema
pallidum)、ボレリア、レプトスピラのような病原性細菌);毒素(例
えば、ボツリヌス菌、炭疽、ヘビ毒素、昆虫毒素および戦争関連化学毒素)。
【0014】
本発明の方法を用いてまた、病理学的状態または疾患状態に対する免疫応答を
刺激し得る。この病理学的状態または疾患状態は、例えば、以下であり得る:抗
原(例えば、前立腺特異的抗原(PSA)、Her−2/neu、p53、MU
C−1、テロメラーゼ、癌胎児抗原(CEA)、黒色腫関連抗原(MAGE)、
チロシナーゼ、gp100)を発現する腫瘍;自己免疫疾患(例えば、糖尿病、
重症筋無力症、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、クローン病、ブドウ膜炎;ア
レルギー(例えば、皮膚炎および喘息(athsma));代謝障害(例えば、
高血圧、糖尿病、高コレステロール血症);内分泌障害(例えば、甲状腺、副腎
、下垂体、卵巣、精巣の内分泌障害);精神障害(例えば、双極性障害、精神分
裂症);疼痛(例えば、神経伝達物質および神経ペプチドの変調);血液障害(
例えば、凝固、貧血、血小板減少症);ならびに歯の障害(例えば、虫歯)。本
発明の方法を用いてまた、生殖を制御し得る(例えば、避妊ワクチン接種)。本
発明の方法はさらに、移植、および骨髄移植、抗HLA免疫を誘導することによ
って移植患者(例えば、固形器官)を処置するために用いられ得る。本発明は、
ウイルス、寄生生物、細菌、アレルギー、自己免疫疾患および腫瘍に対するヒト
および動物のワクチンの産生のために用いられ得る。本発明の方法は、免疫応答
を刺激して、上記のような状態を処置または予防するために有用である。
【0015】
本発明の方法は、1以上の異種エピトープをコードする核酸分子を、二次リン
パ組織における主に(しかし非排他的に)B細胞へとインビトロまたはインビボ
のいずれかで投与する工程を含む。二次リンパ組織は、脾臓、リンパ節、粘膜関
連リンパ組織(MALT)(扁桃およびパイアー斑(Payer’s patc
hes)を含む)、および鼻腔関連リンパ組織(NALT)(例えば、ヴァルダ
イアー環(Waldeyer’s ring))および尿生殖リンパ組織であり
得る。種々の方法を用いて、核酸分子をリンパ組織へと投与し得る。例えば、核
酸分子は、リンパ組織(例えば、リンパ節)へと直接注射され得る。核酸分子は
また、例えば、内視鏡検査に案内される細い針での注射を用いて個体の脾臓へと
直接注射され得る。さらなる方法としては、(免疫)−リポソームまたは時間制
御放出のための種々の化学構造(例えば、ヒアルロン酸)の生分解性ビーズ内に
封入されたDNAの静脈内注射が挙げられる。さらなる方法としては、(免疫)
−リポソームまたは時間制御放出のための種々の化学構造(例えば、ヒアルロン
酸)の生分解性ビーズ内に封入されたDNAの鼻腔(内)送達が挙げられる。さ
らなる方法としては、適切な酸耐性薬学的ビヒクル中の、または生弱毒細菌(例
えば、Salmonella typhi)中に操作された、(免疫)−リポソ
ームまたは時間制御放出のための種々の化学構造(例えば、ヒアルロン酸)の生
分解性ビーズ内に封入されたDNAの経口送達が挙げられる。
【0016】
本明細書中で使用される場合、用語「エピトープ」とは、免疫応答を刺激し得
る、分子またはそのフラグメントをいう。ポリペプチドエピトープは、抗体応答
のためには少なくとも3アミノ酸長であり、そしてT細胞応答のためには少なく
とも8アミノ酸長である。
【0017】
本明細書中で使用される場合、用語「異種ポリペプチド」とは、核酸分子を参
照して使用される場合、そのポリペプチドが、発現エレメントに作動可能に連結
された核酸配列によってコードされ、ここで、そのポリペプチドが天然ではその
発現エレメントに連結して見出されないことを意味する。このように、このポリ
ペプチドは、この発現エレメントに対して異種である。
【0018】
同様に、用語「異種エピトープ」とは、発現エレメントに作動可能に連結され
た核酸配列によってコードされるエピトープであって、ここで、このエピトープ
は天然では、この発現エレメントに連結して見出されない、エピトープをいう。
異種エピトープが免疫グロブリンに含まれる場合、このエピトープは、免疫グロ
ブリンには通常見いだされない。それゆえ、この免疫グロブリンは、異種(he
terolgous)エピトープ配列を含む。このような異種エピトープ配列は
、抗原性エピトープならびにレセプター部位として機能するレセプター様結合ド
メインまたは結合領域(例えば、HIVについてのヒトCD4またはCCR5の
結合ドメイン、ホルモンレセプター結合リガンド、レチノイドレセプター結合リ
ガンド、および細胞接着を媒介するリガンドまたはレセプター)を含み得る。
【0019】
本発明の核酸分子によってコードされるエピトープは、発現エレメントに作動
可能に連結される。本明細書中で使用される場合、「発現エレメント」は、遺伝
子エレメント(例えば、エピトープをコードする核酸)の発現を指向し得る核酸
調節エレメントである。発現エレメントとしては、例えば、作動可能に連結され
た遺伝子エレメント(例えば、ポリペプチドまたはエピトープをコードする遺伝
子エレメント)の発現を可能にし得る、プロモーターおよび/またはエンハンサ
ーが挙げられ得る。特に有用なプロモーターおよびエンハンサーは、造血細胞に
おいて機能するプロモーターおよびエンハンサー(「造血細胞発現エレメント」
と称される)である。このような造血発現エレメントは、造血起源の細胞(例え
ば、B細胞またはT細胞)における発現を可能にし得る。これらのプロモーター
およびエンハンサーは、造血細胞(例えば、B細胞またはT細胞)に特異的であ
り得る。本明細書中で使用される場合、「造血細胞特異的発現エレメント」とは
、造血細胞または特定の造血細胞に特異的である発現エレメント(例えば、B細
胞特異的またはT細胞特異的なプロモーターおよび/またはエンハンサー)をい
う。代表的なB細胞特異的発現エレメントは、実施例に開示される。当業者は、
造血細胞特異的発現エレメントがわかるかまたは容易に決定し得る。造血細胞特
異的発現エレメントは、造血細胞(例えば、B細胞またはT細胞)中で天然に存
在する発現エレメントであり得る。
【0020】
本発明において使用される核酸分子は、1以上の異種エピトープを含む免疫グ
ロブリン分子をコードし得る。このエピトープは、免疫グロブリン分子の相補性
決定領域(CDR)中に挿入され得る(例えば、Kabatら,Protein
s of Immunological Interest、U.S.Depa
rtment of Health and Human Services,
Bethesda MD(1987)を参照のこと)。このエピトープは、CD
R1、CDR2および/またはCDR3内に挿入され得る。さらに、1以上のエ
ピトープが、任意のCDR内に挿入され得る。従って、同じエピトープが、単一
のCDR内に複数回挿入され得るかまたは異なるCDR内に複数回挿入され得る
。異なるエピトープはまた、同じCDR内に挿入され得るかまたは異なるCDR
内に挿入され得る。従って、単一のCDRは、単一のエピトープ、複数コピーの
同じエピトープまたは2以上の異なるエピトープを同じCDRに有し得る。6程
度の(またはおそらくより多くの)エピトープが、Igポリペプチド鎖の可変領
域の3つのCDR内に挿入され得るようである。これらの方法は、米国特許第5
,583,202号および同第5,658,762号に記載される抗原化免疫グ
ロブリンを利用する。
【0021】
一般的に、1より多くのエピトープを投与して免疫(immue)応答を刺激
する場合、複数のエピトープは、同じ核酸分子にコードされる。同じプラスミド
上にコードされる場合、複数のエピトープは、同じ発現エレメントに作動可能に
連結され得、そして融合ポリペプチドとして発現され得るか、または、複数のエ
ピトープは複数コピーの発現エレメントから発現され得る。複数のエピトープは
また、異なる発現エレメントから発現され得る。さらに、同じエピトープは、異
なる核酸分子(例えば、異なるプラスミド)において投与され得る。同様に、異
なるエピトープは、1つの核酸分子において投与され得るか、または複数の核酸
分子において(例えば、異なるプラスミド上で)投与され得る。複数のエピトー
プをコードする異なる核酸分子を用いることにより、単一の核酸分子にコードさ
れ得るよりも多くのエピトープの投与が可能である。
【0022】
本発明において有用な免疫グロブリン分子は、重鎖もしくは軽鎖の可変領域、
またはそれらの機能的フラグメントを含み得る。例えば、単一のCDRは、免疫
グロブリン(本明細書中で抗原化抗体として使用される)が免疫応答を刺激する
ように機能する場合、機能的フラグメントであり得る。この免疫グロブリンはま
た、本明細書中に記載されるような可変領域の2または3のCDRを含み得る。
さらに、本発明において有用な免疫グロブリン分子は、重鎖または軽鎖であり得
る。免疫グロブリン分子のエフェクター機能は、免疫グロブリン分子の定常領域
によって付与され得る。それゆえ、免疫グロブリン分子は、定常領域を含み得る
。定常領域は、所望により、例えば、ヒト、霊長類、マウス、ラット、ニワトリ
またはラクダに由来し得る。しかし、免疫グロブリンの機能的フラグメントが免
疫応答を刺激するように機能する場合、定常領域は本発明の免疫グロブリンには
必要でないことが理解される。
【0023】
本発明はまた、1以上の異種ポリペプチドをコードする核酸配列に作動可能に
連結された発現エレメント(例えば、造血細胞特異的発現エレメント)を含む核
酸分子を提供する。この異種ポリペプチドは、1以上のエピトープとして作用し
得る。さらに、このエピトープは、サイトカインとの融合体として発現され得る
。エピトープが融合ポリペプチド(例えば、サイトカインとの融合体)として発
現される場合、このエピトープは、サイトカインに近接して融合され得るか、ま
たはエピトープとサイトカインとの間に介在配列が存在し得る。このサイトカイ
ンは、例えば、GM−CSF、IL−2、IL−4、INF−γ、IL−5、I
L−6、IL−10およびIL−12であり得る。本発明の核酸分子の発現エレ
メントは、造血発現エレメントであり得る。
【0024】
本発明はさらに、免疫応答を刺激するための方法を提供し、この方法は、1以
上の異種エピトープをコードする核酸配列に作動可能に連結された造血細胞特異
的発現エレメントを含む核酸分子をリンパ系細胞にエキソビボで投与する工程を
包含する。このリンパ系細胞は、脾臓、リンパ節、粘膜関連リンパ組織(MAL
T)、扁桃、パイアー斑、鼻腔関連リンパ組織(NALT)、ヴァルダイアー環
および尿生殖リンパ組織からなる群より選択される、血液またはリンパ組織に由
来し得る。
【0025】
本発明はさらに、免疫応答を刺激するための方法を提供し、この方法は、1以
上の異種エピトープを含む核酸配列に作動可能に連結された造血細胞特異的発現
エレメントを含む核酸分子をリンパ系細胞に投与する工程を包含し、ここで、こ
のリンパ系細胞は、リンパ節、粘膜関連リンパ組織(MALT)、扁桃、パイア
ー斑、鼻腔関連リンパ組織(NALT)、ヴァルダイアー環および尿生殖リンパ
組織からなる群より選択される、血液組織またはリンパ組織に存在する。
【0026】
本発明はまた、免疫応答を刺激するための方法を提供し、この方法は、1以上
の異種エピトープをコードする核酸配列に作動可能に連結された発現エレメント
(例えば、造血細胞特異的発現エレメント)を含む核酸分子をリンパ組織に投与
する工程を包含する。このリンパ組織は、脾臓、リンパ節、粘膜関連リンパ組織
(MALT)、扁桃、パイアー斑、鼻腔関連リンパ組織(NALT)、ヴァルダ
イアー環および尿生殖リンパ組織からなる群より選択される、血液組織またはリ
ンパ組織に由来し得る。
【0027】
本発明の方法を用いて、免疫応答を刺激し得る。惹起された免疫応答は、抗体
応答、CD4 T細胞応答またはCD8 T細胞応答であり得る。2つの主要な
クラスのT細胞(Tヘルパー細胞およびT細胞傷害性細胞と呼ばれる)が区別さ
れ得る。Tヘルパー細胞およびT細胞傷害性細胞へのT細胞の分類は一般に、細
胞表面での、それぞれ、CD4タンパク質またはCD8タンパク質のいずれかの
存在に基づく。本発明の方法を用いて、抗体応答、CD4 T細胞応答もしくは
CD8 T細胞応答、または3つ全ての応答を含む、これらの応答のうちの2以
上の任意の組み合わせを惹起し得る。例えば、本発明の方法を用いて、抗体応答
およびCD4 T細胞応答を刺激し得る。本発明の方法を用いてまた、抗体応答
およびCD8 T細胞応答を刺激し得る。さらに、本発明の方法を用いて、CD
4 T細胞応答およびCD8 T細胞応答を刺激し得る。さらに、本発明の方法
を用いて、抗体応答、CD4 T細胞応答およびCD8 T細胞応答を刺激し得
る。さらに、本発明の方法を用いて、複数のCD4 T細胞応答(例えば、2以
上の、3以上の、または5以上のCD4 T細胞応答)を刺激し得る。同様に、
複数のCD8 T細胞応答は、本発明の方法を用いて刺激され得る。従って、所
定の型の抗原または状態について所望される免疫応答の型に依存して、当業者は
、最も適切な免疫応答、抗体、CD4 T細胞またはCD8 T細胞応答を選択
して、所定の状態または潜在的な状態について最適化された免疫応答を提供し得
る。
【0028】
本発明はまた、異種ポリペプチドをコードする核酸配列に作動可能に連結され
ている、造血細胞特異的発現エレメントを含む、核酸分子を提供する。ここで、
この異種ポリペプチドは、2以上のT細胞エピトープを含む。これらのT細胞エ
ピトープは、CD4エピトープおよびCD8エピトープ、2つのCD4エピトー
プ、ならびに2つのCD8エピトープからなる群より選択され得る。この異種ポ
リペプチドは、1以上のB細胞エピトープをさらに含み得る。
【0029】
本発明はさらに、1以上の異種エピトープをコードする核酸配列に作動可能に
連結されている、造血細胞特異的発現エレメントを含む、核酸分子を提供する。
ここで、この核酸配列は、前記1以上のエピトープを含む免疫グロブリン分子を
コードし、かつこの1以上のエピトープは、この免疫グロブリン分子の相補性決
定領域(CDR)内に挿入されており、この異種ペプチドは、2以上のT細胞エ
ピトープを含む。
【0030】
本明細書中に開示されるように、脾臓リンパ球に標的化されるH鎖遺伝子の単
回接種は、免疫を惹起し(実施例Iを参照のこと)、免疫学的記憶を確立し(実
施例IIIを参照のこと)、そして免疫応答を予測可能および再現可能にプログ
ラムするのに十分である。マウス系における実験(インビトロおよびインビボで
の)は、この導入遺伝子のH鎖ポリペプチドが、内因性軽鎖に会合し(実施例I
V)、そしてトランスジェニックIgが、15ng/mlと30ng/mlとの
間の量で分泌される(実施例I)ことを実証する。トランスジェニックIgの合
成後、5〜7日目までに、トランスジェニックIgの抗原決定基に特異的な抗体
およびT細胞からなる免疫応答を生じる。この抗体応答は、ほぼ無限に検出可能
なまま残存する。適切な抗原でのブースター注射に際して、代表的な二次免疫応
答が誘導される。
【0031】
その最も単純な形態において、STIは、プラスミドDNAがリンパ系器官内
に直接注射され、そこで、プラスミドDNAが、小節および小節内(Bリンパ球
)に到達するモデルによって反映される。あるいは、STIは、エキソビボプロ
セスとして現実化され、ここで、正常なリンパ球が、インビトロでトランスフェ
クトされ、その後インビボで注射される(実施例IX)。いずれかの場合におい
て、導入遺伝子をコードする外来DNAを取り込むBリンパ球は、その導入遺伝
子を機能的なポリペプチド鎖に転写および翻訳する。アセンブルされたポリペプ
チドは、異種エピトープを保持するトランスジェニックIg(抗原化された(a
ntigenized)トランスジェニックIg)を形成する。分泌されたトラ
ンスジェニックIgは、Bリンパ球による、トランスジニックIg上に生じた抗
原決定基に対する免疫応答を誘発する。トランスジェニックIgはまた、T細胞
を活性化し得る。T細胞決定基ペプチドは、この導入遺伝子を保有するBリンパ
球(直接提示)、または樹状細胞(DC)(二次刺激)のいずれかによって、プ
ロセシングおよび提示される。免疫のプロセスは、血流およびリンパ系に到達す
る分泌されたトランスジェニックIgを介して、他の二次リンパ器官に対して迅
速に伝播する(実施例VI)。応答が、時間につれて進化するように、単独の、
または特異的抗体と複合体化されたトランスジェニックIgは、濾胞性樹状細胞
(FDC)によって捕捉され、そして記憶応答の間に再利用されるために樹状突
起に沿って保存される。
【0032】
分泌されたトランスジェニックIgは、二次抗原のプロセシングおよび提示の
ために、Fcレセプターを介してAPCを標的化し得、従って、免疫惹起の部位
から遠位のリンパ系組織のための抗原ペプチド供給源として作用する。このこと
から、免疫が、その惹起部位からどのようにして伝播し得るかが容易に理解され
る。実際に、導入遺伝子を保持する細胞は、他のリンパ系器官をコロニー形成し
ない(実施例IIを参照のこと)。トランスジェニックIgは、接種した器官か
ら遊出し、そして血流およびリンパを介してリンパ系の他の区域に拡散する。こ
こで、それらは、新規に免疫を促進し得る。免疫学的アジュバント中の抗原また
は抗原ペプチドが、リンパ節をドレインする場合においてのみT細胞を活性化す
る(Kearneyら、Immunity 1:327−339(1994))
、従来の免疫化システムとは異なり、STIの間、可溶性トランスジェニックI
gの拡散を伴う活性化されたT細胞の動員は、体内全体のT細胞免疫の伝播を容
易にする(実施例VIIIを参照のこと)。
【0033】
トランスジェニックIgにおいて、B細胞エピトープは、それらが由来するネ
イティブ抗原の形状に近似する、制御された形状的および空間的特性を有して発
現される。B細胞上の抗原レセプターは、抗原の三次元構造を介してそれらの抗
原を認識し、そして立体的および静電気的に相補的な大きい領域にわたって相互
作用を確立して結合するので、抗体ループ中のB細胞エピトープの発現は、ネイ
ティブ構造と交差反応する抗体を誘導する。対して、T細胞の活性化は、抗原が
小さいペプチドの形態で提示されることを必要とする。本明細書中に開示される
ように、CDRループにおいて発現されたT細胞ペプチドは、主要組織適合遺伝
子複合体(MHC)分子の状況下で、容易にプロセシングおよび提示される(実
施例VIおよびVII、ならびにZanettiら、Immunol.Rev.
,130:125−150(1992);Zaghouaniら、Proc.N
atl.Acad.Sci.USA,92:631−635(1995);Za
ghouaniら、Science,259:224−227(1993);B
illettaら、Eur.J.Biochem.25:776−783(19
95)を参照のこと)。従って、体細胞性遺伝子導入(transgenesi
s)の間に、トランスジェニックIgを保持および合成するB細胞は、T細胞ペ
プチドの自己再生供給源となる。
【0034】
哺乳動物におけるタンパク質の素晴らしい微小工場(microfactor
y)であることに加えて、Bリンパ球はまた、Tリンパ球に以下の抗原を提示し
得る:(i)それらの膜Igレセプターを介してインターナライズされた抗原(
Lanzavecchia,Nature,314:537−539(1985
))、および(ii)それら自体のIgを含む分泌タンパク質のペプチド(We
issおよびBogen、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 8
6:282−286(1989);Billettaら、Eur.J.Immu
nol.25:776−783(1995))。これらの特性から、Bリンパ球
は、プラスミドDNAでの遺伝子標的化および免疫のストラテジーのための、理
想的な基質を構成する。
【0035】
本明細書中、実施例VIにおいてに開示されるように、12残基のB細胞エピ
トープと会合した12残基のTh細胞決定基をコードするDNAの単回の脾臓内
接種(体細胞性導入遺伝子免疫と呼ばれるプロセス)の後、細胞性免疫応答をイ
ンビボで分析した。本明細書中で開示されるように、CD4 T細胞は、容易に
活性化され、そしてIL−2、IFN−γおよびIL−4を産生する(限定され
ない(uncommitted)表現型の特性)。脾臓において発生するが、T
細胞応答性は、体内の全てのリンパ節に対して、即座に、かつ類似の特性を有し
て伝播することが見い出された。単回接種はまた、限界希釈分析によって決定さ
れるように、一次エフェクターT細胞とは異なるサイトカインプロフィールを提
示する記憶T細胞による、長期の免疫記憶を確立するのに効果的であった。これ
らの研究は、二次リンパ器官において免疫を直接的に惹起することによって、当
業者が、末梢部位に投与されるアジュバント中の従来のDNAまたはタンパク質
のワクチンを使用する特性とは、異なる特性を有する免疫応答を発生するという
証拠を提供する。
【0036】
強力なTh(CD4)細胞決定基をコードする導入遺伝子をマウスに接種する
場合、活発なCD4 T細胞応答が誘発される(Gerloniら、J.Imm
unol.,162:3782−3789(1999))。Th細胞の活性化は
、再現可能であり、そして多量のIL−2ならびに比例する量のIFN−γおよ
びIL−4の同時産生によって、常に特徴付けられる。従来のDNA免疫は、T
h1応答を支持する(Romanら、前出、1997;Chuら、J.Exp.
Med.186:1623−1631(1997))。STIは、限定されない
CD4 T細胞を活性化する。
【0037】
強力なクラスI MHC制限T(CD8)細胞決定基をコードする導入遺伝子
をマウス内に接種する場合、保護を伴う特異的CD8 T応答を測定した(実施
例VIIを参照のこと)。本明細書中に開示された結果は、STIが、T細胞ペ
プチドの内因性供給源として作用し、インビボでの免疫原性についての基本的な
要件を満足することを示す。
【0038】
本明細書中に開示されるように、使用される、免疫グロブリン重(H)鎖をコ
ードするプラスミドDNAは、組織特異的なプロモーターおよびエンハンサーエ
レメントの制御下にある(Banerjiら、Cell 33:729−740
(1983);Gilliesら、Cell 33:717−728(1983
);GrosschedlおよびBaltimore,Cell 41:885
−897(1985);Masonら、Cell 41:479−487(19
85))。
【0039】
体細胞性の導入遺伝子免疫によって提供される免疫原性刺激の型は、この導入
遺伝子を保持するBリンパ球が、生存し、トランスジェニックIgを合成および
分泌する限り、この生物中に存続し得る。この導入遺伝子は、宿主B細胞の寿命
を通して宿主中で存続し得、このB細胞が死んだ場合に消失する。これは、濾胞
性樹状細胞によって果たされる「デポー効果」と共に、抗原が不在の場合の半減
期が、2〜3週間程度と推定される、記憶B細胞の誘導および維持に重要であり
得る(GrayおよびSkarvall,Nature 336:70−73(
1988))。
【0040】
本明細書中に記載される結果は、微生物病原体に対する抗原特異的免疫を誘導
するための、STIの使用を例示する(実施例IIIを参照のこと)。STIは
、疎水性テトラペプチド配列Asn−Ala−Asn−Pro(NANP)の3
回の反復である、Plasmodium falciparumマラリアスポロ
ゾイトの表面に発現され、H鎖遺伝子のCDR3中に操作されたB細胞エピトー
プに対して免疫した。このアミノ酸配列は、スポロゾイト周辺(CS)タンパク
質の中心部分に複数のタンデムな反復で存在する(Zavalaら、Scien
ce 228:1436−1440(1985))。このエピトープに対する抗
体は、マラリアの地方病領域で生活する人々(Zavalaら、前出、1985
;Nardinら、Science 206:597−601(1979))、
および照射済スポロゾイトをワクチン接種されたボランティア(Clydeら、
Am.J.Med.Sci.266:398−403(1973);Calle
ら、J.Immunol.149:2695−2701(1992);Egan
ら、Am.J.Trop.Med.Hyg.49:166−173(1993)
)において発生する。
【0041】
本明細書中、実施例IIIに開示されるように、ヒトマラリア寄生生物Pla
smodium falciparumに対する免疫は、体細胞導入遺伝子免疫
を使用して誘導された。配列Asn−Ala−Asn−Pro(NANP)の3
回の反復である、P.falciparumスポロゾイトのB細胞エピトープを
CDR3中にコードする、免疫グロブリン重鎖遺伝子を含むプラスミドDNAの
単回接種は、全てのマウスにおいてNANPに対する抗体を誘導した。
【0042】
本発明の方法を使用して、T細胞応答(例えば、CD4 T細胞応答および/
またはCD8 T細胞応答)を刺激し得る。免疫グロブリン(Ig)の超可変ル
ープを使用して、抗原の別個のペプチド配列(抗原化された抗体)を発現し得る
(Zanetti、Nature,355:466(1992))。これらは、
Tリンパ球、CD4+およびCD8+において特異的応答を誘導するエピトープの
アミノ酸配列であり得る。
【0043】
本明細書中、実施例VIにおいて開示されるように、12残基のB細胞エピト
ープと会合した12残基のTh細胞決定基をコードするDNAの単回の脾臓内接
種(体細胞性導入遺伝子免疫と呼ばれるプロセス)の後、細胞性免疫応答をイン
ビボで分析した。本明細書中で開示されるように、CD4 T細胞は、容易に活
性化され、そしてIL−2、IFN−γおよびIL−4を産生する(限定されな
い表現型の特性)。脾臓において発生するが、T細胞応答性は、体内の全てのリ
ンパ節に対して、即座に、かつ類似の特性を有して伝播することが見い出された
。単回接種はまた、限界希釈分析によって決定されるように、一次エフェクター
T細胞とは異なるサイトカインプロフィールを提示する記憶T細胞による、長期
の免疫記憶を確立するのに効果的であった。
【0044】
これらの研究は、体細胞性導入遺伝子免疫が、インビボにおいてTh細胞応答
性を誘導するための有用な方法である証拠を提供する。
【0045】
本発明の方法はまた、T細胞応答(例えば、CD4 T細胞応答)との組合せ
での抗体応答を刺激するために有用である。このような組み合わせられた応答は
、連合認識と称され得る。同じ抗原由来の複数のエピトープを含むこと、または
同じ分子において異なる免疫学的機能を有するエピトープの組み合わせが、本発
明の核酸分子において使用され得る。例えば、タンパク質抗原に対するこの抗体
応答は、B細胞とTヘルパー(Th)細胞が同じ分子の異なる決定基に特異的で
ある場合に生じる最適な条件での、B細胞とTh細胞との間の協調を必要とする
(連合認識)(Mitchison,Eur.J.Immunol.1:18−
27(1971))。
【0046】
本明細書中で開示されるように、P.falciparumマラリア寄生生物
のスポロザイト周辺(CS)タンパク質のB細胞エピトープ(Zavalaら、
Science,228:1436−1440(1985))およびTh細胞エ
ピトープ(Munesingheら、前出、1991;Nardinら、Sci
ence 246:1603−1606(1989))を表す、2つの異なる1
2アミノ酸長のペプチドをコードする、抗原化された抗体の遺伝子を発現させて
、そして試験した。同じVHドメインのCDR3およびCDR2の操作は、この
抗原化された抗体分子のインビボでの分泌を有意にもたらさなかった。脾臓にこ
の遺伝子を接種したマウスは、B細胞エピトープのみをコードする遺伝子を受け
たマウスよりも、高度にB細胞エピトープに対して応答する抗体をマウントした
。インビトロ研究は、この2つのエピトープが、インビボにおいて独立して免疫
原性であることを確証した(実施例IVを参照のこと)。
【0047】
本発明の方法を、連合認識についての方法を同様に使用して、Th/Th応答
を刺激し得る。順応性の免疫応答の発生における連合(連結)認識事象の重要性
は、一般的に認識されるが、同じ概念が、同じ分子上のTh細胞エピトープ間の
協調的相互作用に適用するか否かは、未だ未知である。STIの状況下での抗原
化された抗体遺伝子を使用する実験は、このことがこのケースに当てはまること
を明らかにした(図35および実施例Xを参照のこと)。
【0048】
本明細書中に開示されるように、それぞれ、同じ遺伝子のCDR2およびCD
R3において発現される2つのTh細胞エピトープは、インビボで独立して免疫
原性であった(図36および実施例X)。
【0049】
CDRにおけるIg V領域遺伝子を操作し、そして複数の異種ペプチドを発
現する能力は、ワクチン接種の目的のための、所望の効果に依存する、複雑な予
め決定された抗原特異性および/または相補的免疫原性機能の分子の設計におけ
る新たな可能性を開く(例えば、B/Th、Th/ThまたはTh/CTLエピ
トープ)。
【0050】
STIの重要な特徴は、持続的な免疫記憶の確立である。初回刺激後6週、3
0週または104週での、アジュバント中のγ1NANPタンパク質のブースタ
ー免疫は、真正の記憶応答を生じる。特異的記憶もまた、マウスを、初回刺激後
6週でP.falciparum寄生生物でチャレンジした場合に、存在する(
実施例IIIを参照のこと)。
【0051】
本明細書中で開示されるように、天然の免疫学的アジュバントである、GM−
CSFは、STIによる免疫の能力を増大することが示された(実施例Vを参照
のこと)。DNA/GM−CSFキメラワクチンとして初回刺激時に与えられた
GM−CSFは、その後ブースター免疫で使用される抗原の形態に無関係に、記
憶応答の程度を増強する。
【0052】
本明細書中で開示されるように、抗原化された抗体/GM−CSF DNAワ
クチンでの初回刺激は、その後ブースター免疫で使用される抗原の形態に無関係
に、規定されたドデカペプチドB細胞決定基に対する記憶応答の程度を増強する
(実施例V)。本明細書中に開示される結果は、免疫応答(免疫記憶を含む)の
モジュレーターとしての、インビボでのGM−CSFの活性についての役割を規
定する。
【0053】
本明細書中に開示されるように、本発明の核酸分子は、リンパ系細胞に対して
標的化され得る。このリンパ系細胞は、インビボまたはエキソビボで標的化され
得る。例えば、上記に記載されるように、核酸分子をインビボで個体に投与して
、リンパ系細胞を標的化し得る。例えば、この核酸分子をリンパ組織に投与して
、そのリンパ組織における造血細胞(リンパ系細胞を含む)の標的化を生じ得る
。しかし、本発明の核酸分子が、その核酸分子にコードされるエピトープの発現
のために、造血細胞(例えば、リンパ系細胞)の標的化を生じる任意の方法また
は経路によって投与され得ることが、理解される。
【0054】
本明細書中(実施例IX)で開示されるように、本発明の核酸分子はまた、エ
キソビボで投与され得る。例えば、造血細胞(リンパ系細胞を含む)が、ある個
体または免疫学的に適合性の個体から得られ得、そして本発明の核酸分子が、こ
れらの細胞にエキソビボで投与され得る。核酸分子を細胞にエキソビボで投与す
る方法は、当該分野で周知であり、そして例えば、リン酸カルシウム沈殿および
エレクトロポレーションが挙げられる(例えば、Sambrookら、Mole
cular Cloning a Laboratory Manual Co
ld Spring Harbor Press(1989);Ausubel
ら、Current Protocol in Molecular Biol
ogy,Wiley & Sons(1998)を参照のこと)。核酸分子をエ
キソビボで細胞に投与する方法はまた、実施例Xに記載される。次いで、これら
のリンパ系細胞(ここでは、その核酸分子を含み、そしてそのコードされたエピ
トープを発現する)は、個体に投与され得る。次いで、エピトープを発現するこ
れらのリンパ系細胞は、免疫応答を刺激し得る。
【0055】
本発明はさらに、本発明の核酸分子を投与することによってある状態を処置す
る方法を提供する。ここで、この核酸分子は、造血細胞に標的化される。本発明
はまた、ある状態を処置する方法を提供し、この方法は、異種ポリペプチドをコ
ードする核酸配列に作動可能に連結されている、B細胞特異的発現エレメントを
含む核酸分子を含む、非ウイルスベクターを投与する工程を包含し、ここで、こ
の核酸分子は、B細胞に標的化され、そしてこの異種ポリペプチドを発現する。
同様に、T細胞を、異種ポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結されて
いる、T細胞特異的発現エレメントを含む、非ウイルスベクターで標的化し得る
。本明細書中で使用される場合、「非ウイルスベクター」とは、ベクターとして
機能し得るが、ウイルス中にカプセル化もされず、ウイルスゲノムにコードもさ
れない、核酸分子をいう。免疫応答を刺激するための、エピトープを発現する核
酸分子の投与は、上記の状態を処置するために有用である。造血細胞を標的化す
ることによる、ある状態を処置するための本発明の方法は、B細胞またはT細胞
を標的化することによって使用され得る。ある状態を処置するための本発明のこ
の方法は、B細胞を標的化する場合に特に有用である。
【0056】
本発明はさらに、ある状態を処置する方法を提供し、この方法は、1以上の異
種ポリペプチドをコードする核酸配列に作動可能に連結されている、造血細胞特
異的発現エレメントを含む、核酸分子を投与することによる。ここで、この核酸
分子は、造血細胞に標的化される。この標的化された造血細胞は、ある状態を処
置するための異種ポリペプチドを発現するように作用する。本発明の方法は、あ
る状態を処置するための治療ポリペプチドを投与するのに有利である。本発明の
方法を使用して、例えば、ホルモン、サイトカイン、凝固因子または免疫グロブ
リンを発現させ得る。例えば、個体が、ホルモンまたはサイトカインの発現の増
加が有益である状態を有する場合、このような個体は、ホルモンまたはサイトカ
インのポリペプチドを発現する核酸分子の投与によって処置され得る。例えば、
免疫不全によって特徴付けられる状態を有する個体は、IL−2またはINF−
γのようなサイトカイン、あるいは本明細書中に開示されるような、他のサイト
カインを投与することによって処置され得るか、または免疫グロブリンを投与す
ることによって処置され得る。同様に、血友病のような状態に罹患している個体
は、例えば、第VIII因子または第IX因子のような凝固因子をコードする核
酸を投与することによって処置され得る。当業者は、所定の状態を処置するため
に発現させるのに適切なポリペプチドを容易に決定し得る。
【0057】
本発明の方法を使用して、目的の広範な種々の疾患関連遺伝子産物を発現させ
ることによって状態を処置し得、これは目的の疾患を処置または予防するために
使用され得る。例えば(そして例示目的のためのみであるが)、この遺伝子は、
酵素、ホルモン、サイトカイン、抗原、抗体、凝固因子、アンチセンスRNA、
調節タンパク質、リボザイム、融合タンパク質などをコードし得る。従って、こ
の方法を使用して、以下のような治療用タンパク質を供給し得る:第VIII因
子、第IX因子、第VII因子、エリトロポイエチン(米国特許第4,703,
008号)、α−1−アンチトリプシン、カルシトニン、増殖因子、インスリン
、低密度リポタンパク質、アポリポタンパク質E、IL−2レセプターおよびそ
のアンタゴニスト、スーパーオキシドジスムターゼ、免疫応答変更因子、副甲状
腺ホルモン、インターフェロン(IFNα、β、またはγ)、神経発育因子、グ
ルコセレブロシダーゼ、コロニー刺激因子、インターロイキン(IL)1〜15
、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球、マクロファージコロニー刺
激因子(GM−CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、線
維芽細胞増殖因子(FGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、アデノシンデ
アミナーゼ、インスリン様増殖因子(IGF−1およびIGF−2)、巨核芽球
促進リガンド(magakaryocyte promoting ligan
d)(MPL、すなわちトロンボポエチン)。治療用ポリペプチドは、例えば、
遺伝的障害(例えば、凝固因子障害、筋糖原病およびα−1−アンチトリプシン
欠損)の処置および予防のために有用であり得る。本発明の方法はまた、接着分
子(例えば、インテグリンのような)のリガンドを発現させて、例えば、接着機
能(例えば、新脈管形成)をブロックするために使用され得る。
【0058】
本発明はまた、薬学的に受容可能なキャリアおよび本発明の核酸分子を含む、
薬学的組成物に関する。従って、本発明の方法は、エピトープをコードする本発
明の核酸分子を含む薬学的組成物を利用し得る。薬学的に受容可能なキャリアは
、当該分野において周知であり、そしてこれには、以下が挙げられる:水性また
は非水性の溶液、懸濁液、およびエマルジョン(生理学的緩衝化生理食塩水、ア
ルコール/水性の溶液または他の溶媒もしくはビヒクル(例えば、グリコール、
グリセロール、油(例えば、オリーブ油または注射可能な有機エステル)))。
【0059】
薬学的に受容可能なキャリアは、例えば、投与される核酸分子を安定化させる
ためか、またはその核酸分子の吸収を増加させるために作用する、生理的に受容
可能な化合物を含み得る。このような生理的に受容可能な化合物としては、例え
ば、炭水化物(例えば、グルコース、スクロース、またはデキストラン)、抗酸
化剤(例えば、アスコルビン酸またはグルタチオン)、キレート剤、低分子量ポ
リペプチド、抗菌剤、不活性ガス、または他の安定化剤もしくは賦形剤が挙げら
れる。核酸分子は、さらに、他の成分(例えば、ペプチド、ポリペプチド、およ
び炭水化物)と複合体化され得る。核酸分子はまた、例えば、ワクチン銃を使用
して、個体に投与され得る微粒子またはビーズに複合体化され得る。当業者は、
薬学的に受容可能なキャリア(生理的に受容可能な化合物を含む)の選択が、例
えば、発現ベクターの投与経路に依存することを知る。上述に記載したように、
投与経路は、二次リンパ組織内に直接注射することによる経路であり得る。
【0060】
投与は、リンパ組織以外であるが、リンパ組織を標的化する部位であり得る。
本発明の核酸は、例えば、静脈内注射によって血液を介して全身に投与され得、
そしてリンパ組織内のリンパ系細胞に標的化され得る。鼻腔内投与または経口投
与もまた、使用され得る。例えば、本発明の核酸を含むバクテリア形態中のベク
ターは、経口的に投与され得、そしてパイアー斑を標的化する。
【0061】
本発明のインビボでの方法およびエキソビボでの方法の両方において標的化さ
れるB細胞およびT細胞は、正常な細胞(すなわち、非腫瘍細胞)である。これ
らの細胞は、処理されていなくとも、そして刺激されていなくとも良い。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は、例示するために意図されるが、本発明を制限しない。
【0063】
(実施例I)
(免疫グロブリン重鎖をコードするDNAでの体細胞性導入遺伝子免疫)
本実施例は、脾臓内への直接注射によるプラスミドDNAでの免疫を記載する

【0064】
プラスミドDNAの調製方法および脾臓内への注射による免疫方法は、(Ge
rloniら、DNA Cell Biol.16:611−625(1997
))、図1に記載されるとおりである。
【0065】
マウスに、1接種あたり100μgのプラスミドDNAを接種した。すべての
DNA接種を、免疫グロブリンアジュバントの非存在下で実施した。4つの基本
的な接種経路を使用した。a)筋内。プラスミドDNAを、滅菌生理食塩水30
μl容量において、四頭に注射した。その後、マウスは、毎週間隔で3回の追加
免疫注射を受けた(合計4回注射)。b)皮下。プラスミドDNAを、滅菌生理
食塩水25〜50μl容量において、背部に注射した。その後、マウスは、毎週
間隔で3回の追加免疫注射を受けた(合計4回注射)。c)静脈内。プラスミド
DNAを、尾静脈を介して、滅菌生理食塩水溶液50〜100μl容量で注射し
た。その後、マウスは、毎週間隔で3回の追加免疫注射を受けた(合計4回注射
)。d)脾臓内。プラスミドDNAを、滅菌生理食塩水溶液30μl容量で注射
した。
【0066】
マウスを、腹腔内で、ミョウバンに吸着されたアフィニティー精製γ1WTタ
ンパク質で免疫した(マウス1匹あたり50μg)。γ1WTタンパク質で追加
免疫されたマウスは、皮下的に、不完全フロイントアジュバント中で乳化された
50μgのタンパク質を受けた。
【0067】
マウスの血清中におけるγ1WT H鎖導入遺伝子ポリペプチドの存在を、E
LISA捕捉アッセイ(BillettaおよびZanetti、Immuno
.Methods 1:41−51(1992))によって検出した。簡潔には
、PBSA中における個々のマウス血清の1:10希釈物を、ヒトγグロブリン
に対するヤギ抗体(10μg/ml)でコーティングされた96ウェルプレート
上でインキュベートした。血清中の免疫グロブリンH鎖導入遺伝子産物の濃度を
、既知量のヒトγグロブリンを用いて作成された検量線に対するO.D.値をプ
ロットすることによって算出した。
【0068】
脾臓組織からのゲノムDNAの抽出およびゲノムDNAの配列決定のために、
DNA接種後17日目に脾臓を回収し、−170℃で凍結させ、そして液体窒素
中で組織を粉砕することによって、細胞を調製した。代表的には、ゲノムDNA
を、QIAamp Tissue Kit(Qiagen Inc.;Chat
sworth CA)を使用して、10mgの脾臓組織から抽出した。マウスV
H62についての2つの特異的プライマーTTATTGAGAATAGAGGA
CATCTGおよびATGCTCAGAAAACTCCATAACを用いて、ゲ
ノムDNAから520bpのセグメントをPCRによって増幅した。このPCR
条件は、以下の通りであった:94℃で45秒間、54℃で45秒間、および7
2℃で45秒間の30回。PCR産物を、pGEM Tベクター(Promeg
a;Madison WI)中にクローン化した。以前に17日目に接種された
脾臓のゲノムDNA由来の6つのクローン、およびトランスフェクトーマB細胞
(Sollazzoら、前出、1989)のゲノムDNA由来の4つのクローン
を、Sequenase 2.0 DNA配列決定キット(USB;Cleve
land OH)を用いるジデオキシターミネーター法により、2つのプライマ
ーAACAGTATTCTTTCTTTGCAGGおよびTTATTGAGAA
TAGAGGACATCTG(それぞれ、FR1の最初のコドンの10bp前方
およびFR4の3’末端にアニーリングする)を用いて、両鎖において配列決定
した。
【0069】
マウスを、脾臓内経路を介して免疫し、そして他の接種経路(例えば、筋内、
皮下、および静脈内)を介する場合と比較した。表1は、種々の経路を通して接
種されたマウスにおいてELISA法により決定された抗免疫グロブリン応答を
、各場合における注射回数と共に示す。顕著な抗体応答は、脾臓内経路を介して
1回接種されたマウスにおいてのみ観察された(I群)。脾臓内経路を介して1
回接種され、そして静脈内で3回追加免疫されたマウス(V群)もまた応答した
が、3回のさらなる静脈内注射は、実質的に類似した抗体力価を生じたので、論
理的に結論付けると、V群において観察された抗体応答は、脾臓内接種の効果を
主に反映しているということである。皮下経路は、2匹のマウスのみにおいて、
弱い応答を生じた(III群)。筋内または静脈内に4回接種されたマウスにお
いて、全く抗体応答は検出されなかった(II群およびIV群)。従って、組織
特異的調節エレメントの制御下における免疫グロブリンH鎖遺伝子の使用は、脾
臓内接種後にのみ免疫を産生した。
【0070】
表1.γ1WT DNAを接種されたC57B1/6マウスにおける、γ1W
Tタンパク質と反応する抗体の産生:接種経路の効果
【0071】
【表1】


a最初の接種後21日目に収集した血清において、抗体力価の値を測定および算
出した。
bマウスの大プールの前接種(preinoculation)値は、2.3(
log)であった。この力価を算出した終点陽性血清希釈物は、0.200以上
のOD値(A492)であった。
【0072】
H鎖導入遺伝子産物は、抗免疫グロブリン抗体との免疫複合体の形成におそら
く起因して、26日目を超えて検出され得なかった。従って、脾臓内経路を介し
た免疫グロブリンH鎖DNAの接種は、26日目まで、100%の場合で、導入
遺伝子免疫グロブリン産物の測定可能な分泌を産生した。
【0073】
表2.DNAの単回脾臓内接種後のC57B1/6マウスの血清における導入
遺伝子免疫グロブリン産物の検出
【0074】
【表2】


提示された血清中の導入遺伝子産物の値は、各個々のマウスについての最大検出
の日に対応する。循環する導入遺伝子免疫グロブリンの決定を、上記のようの実
施した。実験およびELISAを、独立して、異なる時点で実施した。
【0075】
DNA配列決定を使用して、宿主細胞DNA中でのインビボ永続性が、導入遺
伝子に体細胞変異を引き起こさせるか否かを決定した。体細胞変異は、VDJコ
ード領域の特性であるので(Griffithsら、Nature 312:2
71−275(1984))、この領域のみを特徴付けた。このVDJコード領
域(520bp)を、上記のような特異的プライマーを用いて、ゲノムDNAか
ら増幅した。全体で、接種した脾臓のゲノムDNAに由来する6つのクローンお
よび参照として供されたトランスフェクトーマB細胞のゲノムDNAに由来する
4つのクローンにおいて、配列決定を実施した。6つのクローンのヌクレオチド
配列では、クローンSP7のフレームワーク3における単一変換(CからTへの
)変異を除いて、変異は示されなかった。単一の(CからTへの)変異はまた、
トランスフェクトーマB細胞のDNA由来のクローンTR38中のフレームワー
ク2において観察された(図2)。従って、脾臓内接種後17日目の完全な形態
において回収された導入遺伝子のVDJコード領域は、過剰変異の証拠を示さな
かった。従って、インビボでの導入遺伝子における体細胞変異の欠損が観察され
た。
【0076】
これらの結果は、核酸分子が、リンパ組織である脾臓に投与されて、免疫応答
を誘発し得ることを実証する。
【0077】
(実施例II)
(体細胞性導入遺伝子免疫におけるBリンパ球のインビボでの役割)
本実施例は、体細胞性導入遺伝子免疫におけるBリンパ球の役割を記載する。
【0078】
プラスミドの調製および免疫は、以下(Xiongら、Proc.Natl.
Acad.Sci.USA 94:6352−6357(1997))に記載さ
れる。
【0079】
プラスミドγ1NANP(Sollazzoら、Protein Enq.4
:215−220(1990a))(図1)は、キメラH鎖遺伝子を保有し、こ
こで生産的に再配置されたマウスV領域遺伝子は、ヒトγ1 C領域遺伝子に連
結されている。このH鎖遺伝子のV領域を、3つのAsn−Ala−Asn−P
ro反復(Sollazzoら、前出、1990a)をコードするヌクレオチド
配列の導入によって、第3の相補性決定領域(CDR3)中において改変した。
このプラスミド中のプロモーターおよびエンハンサーエレメントは、Ig H鎖
遺伝子中で構成的に存在するものであり、そして以前に記載されている(Sol
lazzoら、前出、1989)。プラスミドpSVneoは、マウスV領域お
よびヒトγ1 C領域遺伝子を欠く、元々のプラスミドベクターである(Mul
liganおよびBerg、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
78:2072−2076(1981))。
【0080】
γ1NANPまたは合成ペプチド(NANP)nに対する抗体を、アフィニテ
ィー精製された抗体γ1NANP(2.5μg/ml)または合成ペプチド(5
μg/ml)でコーティングされた96ウェルのポリビニルマイクロタイタープ
レート上で検出した。血清を、PBSA中で希釈した。結合した抗体を、ヒトγ
−グロブリンと吸着したマウスγ−グロブリンに対するHP結合体化ヤギ抗体を
使用して、明らかにした(Pierce;St.Louis MO)。結合した
ペルオキシダーゼは、o−フェニレンジアミンジヒドロクロリドおよびH22
添加することによって、明らかにした。試験を二連で実施した。血清中の導入遺
伝子H鎖免疫グロブリンの存在は、捕捉ELISA(実施例Iを参照のこと;B
illettaおよびZanetti、前出、1992)を使用して検出した。
【0081】
DNA配列決定のために、VDJコード領域全体を含む566bpのDNAフ
ラグメントを、再配置されたマウスVHに特異的な2つのプライマー(pCLお
よびpCD)を使用して、脾臓ゲノムDNAから増幅した。このフラグメントを
、pGEM−Tベクター(Promega;Madison WI)中にサブク
ローン化した。プラスミドDNAを、形質転換したDH5γ Escheric
hia coliから抽出し、そしてSEQUENASE 2.0 DNA配列
決定キット(USB;Cleveland OH)を用いるジデオキシターミネ
ーター法により、2つのプライマー(pSEおよびpCD)(FR1の前方およ
び反対方向からFR4の末端にアニーリングする)を用いて配列決定した。
【0082】
蛍光細胞分析分離(FACS)のために、脾臓細胞を、接種後15日目、21
日目、および28日目に収集された脾臓組織、ならびに未処理マウスから回収さ
れた脾臓組織を粉砕することによって調製した。細胞懸濁物を、0.5%PBS
Aで2回洗浄し、そして溶解緩衝液(Sigma;St.Louis MO)で
処理することによって赤血球を取り除いた。リンパ球を、フィコエリトリン(P
E)結合体化ラット抗マウスLy−5(B−220)Pan B細胞(Calt
ag;San Francisco CA)、フルオレセインイソチオシアネー
ト(FITC)結合体化ラット抗マウスCD4(Caltag)、およびFIT
C結合体化ラット抗マウスCD8(Caltag)を用いて、4℃にて20分間
示差的に染色した。細胞懸濁物を、0.5%PBSA中で2回洗浄し、そしてD
MEM(Irvine Scientific;Irvine CA)中で5×
106細胞/mlの濃度で再懸濁した。細胞を、FACSTAR(Becton
&Dickinson;San Jose CA)において分類した。ゲノムD
NAを、QIAAMP Bloodキット(Qiagen)を使用して、1×1
6個のBリンパ球またはTリンパ球から抽出した。DNAフラグメントを、P
CRによって増幅し、そして1%アガロースゲル上で、泳動した。引き続いて、
これを、(32P)標識化pNADオリゴヌクレオチドを用いて、サザンブロット
ハイブリダイゼーションのために、ナイロンメンブレンに転写した。
【0083】
Bリンパ球が、導入遺伝子に対するインビボでの標的細胞集団であることを実
証するために、以下の実験を実施した。プラスミドDNAの接種の2週間後から
開始し、脾臓Bリンパ球およびTリンパ球を、FACS分類によって、高純度(
97〜99%)で単離した(図3)。ゲノムDNAを2つの細胞集団から抽出し
、そしてPCRによって増幅した。PCRを、以下のプライマーの合計4つのセ
ットを用いて実施した:pCLおよびpCD;pSEおよびpNAD;pNEL
およびpNED;ならびに、pγA1およびpγA2。pCLγ(−107nt
〜−85nt:5’−TTATTGAGAATAGAGGACATCTG−3’
)およびpCDγ(459nt〜439nt:5’−ATGCTCATAAAA
CTCCATAAC−3’)を使用して、導入遺伝子のVDJ領域全体を増幅し
た。pSEγ(−32nt〜−11nt:5’−AACAGTATTCTTTC
TTTGCAGC−3’)およびpNADγ(352nt〜333nt:5’−
GAGAGTAGGGTACTGGGTTT−3’)は、CDR3における遺伝
マーカー(NANP)3の増幅に特異的であった。pNELγ(169nt〜1
89nt:5’−AGCACCTACTATCCAGACACT−3’)および
pNEDγ(366nt〜346nt:5’−GTAGTCCATACCATG
AGAGTA−3’)は、ネスト化PCR(nested PCR)についての
内部プライマーであった。pγA1γ(184nt〜201nt:5’−TGG
GCCGCCCTAGTCACC−3’)およびpγA2γ(427nt〜40
8nt:5’−CGTTTGGCCTTAGGGTTCAG−3’)を、(Ha
rrisら、Gene 112:265−266(1992))において示され
た配列に従うマウスβ−アクチン遺伝子を増幅するために設計した。PCRは、
94℃で45秒間、58℃で45秒間、および72℃で45秒間の30サイクル
;0.3μMの各プライマー;0.2mMの各デオキシヌクレオチド;1.5m
M MgCl2(20mM Tris−HCl(pH8.4)および50mM
KCl中);および1ユニットのTaq DNAポリメラーゼ(Gibco B
RL;Gaithersburg MD)から構成された。サザンブロット分析
のためのPCR産物を、1% w/vアガロースゲルにおいて分解し、そしてH
YBOND−Nナイロンメンブレン(Amersham;Cleveland、
OH)上にブロットした。このメンブレンを、(γ32P−ATP)の存在下で、
T4ポリヌクレオチドキナーゼ順方向反応を使用して標識されたオリゴヌクレオ
チドpNADとハイブリダイズさせた。15日目の時点で、Bリンパ球およびT
リンパ球の両方において、異なる増幅産物が容易に検出可能であった。しかし、
21日目および28日目の両方の時点では、B細胞においてのみ、特異的増幅が
観察された。サザンブロットハイブリダイゼーションによって、増幅産物の特異
性が確認された。これらの結果は、脾臓中のBリンパ球は、導入遺伝子が長期間
持続する標的細胞集団であることを示唆した。
【0084】
導入遺伝子を、ゲノムDNAから配列決定した。導入遺伝子のVDJ領域を、
脾臓ゲノムDNAから増幅し、サブクローン化し、そしてジデオキシターミネー
ター法によって配列決定した。3ヶ月後においてさえ、インビボで、導入遺伝子
のVDJ領域内に過剰変異の証拠は見出されなかった(表3)。
【0085】
表3.脾臓ゲノムDNA由来のPCRで生成されたクローンにおける導入遺伝
子変異の欠失
【0086】
【表3】


*塩基対配列の総数あたりの変異の数
**FR3におけるサイレント(CからTへの)変異。
【0087】
これらの結果は、プラスミドDNAでのインビボ接種が少なくとも3ヶ月の間
に脾臓のB細胞においてその導入遺伝子の発現をもたらしたことを示す。
【0088】
(実施例III)
(体細胞導入遺伝子免疫による微生物病原体に対する免疫)
本実施例は、P.falciparumマラリア寄生生物のB細胞エピトープ
をコードする核酸分子を投与して、その寄生生物抗原に対する免疫応答を誘導す
ることを記載する。
【0089】
使用するプロトコルは下記に記載される(Gerloniら、Nature
Biotech.15:876〜881(1997))。
【0090】
γ1NANPおよびpSV2Neoは、図1および実施例IIに記載される。
合成ペプチド(NANP)nに対する抗体の検出を、実施例IIに記載される通
りに行った。他の基質は、このγ1NANPタンパク質およびR32LR抗原を
含んだ。
【0091】
1:50希釈した血清を、種々の希釈(1:25〜1:800)の風乾したP
.falciparumスポロゾイトとの免疫蛍光反応性についてアッセイした
。このアッセイは、以前に記載された通りに実施した(Wirtzら、Exp.
Parasitol.63:166〜172(1987))。蛍光強度を0〜4
+にランク付けした。0は検出可能な蛍光なしを示し、そして4+はそのスポロ
ゾイトの表面全体にわたる強い蛍光を示す。β+蛍光強度を有するサンプルは、
ポジティブとみなした。
【0092】
マウスに、実施例Iにて詳説した通りに、滅菌した生理食塩水30μl中10
0μgのプラスミドDNAを、脾臓内接種した。表4に記載する実験において、
マウスを、生理食塩水中100μgのプラスミドDNA γ1NANPで、尾静
脈を介する静脈内投与によってブーストした。
【0093】
表4.初回刺激免疫およびブースター免疫の後に抗体がNANPペプチドと反
応する場合の力価(log10
【0094】
【表4】


*すべての初回刺激注射を、脾臓内経路を介して行った。ブースター注射を、2
00日目に行った。1つのグループ(グループ1、静脈内で行った)以外のすべ
てにおいて、ブースター注射を皮下にて行った。
【0095】
マウスに、滅菌生理食塩水溶液中のアフィニティー精製したγ1NANPタン
パク質で、脾臓内(i.s.)接種した。外科手順は上記の通りであった。マウ
スに、完全フロイントアジュバント中に乳化した、アフィニティー精製したγ1
NANPタンパク質(50μg/マウス)で皮下免疫した。このγ1NANPタ
ンパク質でブーストしたマウスに、不完全フロイントアジュバント中に乳化した
タンパク質50μgを皮下に与えるか、またはミョウバン上に吸着させたこのγ
1NANPタンパク質50μgを腹腔内に与えた。不完全DMEM中の照射した
105個のスポロゾイトを、0.4ml容積にて腹腔内注射した。マウスを、眼
窩後から採血した。
【0096】
プラスミドγ1NANP DNA γ1NANPの接種は、そのペプチドNA
NPに対する一次応答を誘導する。表4は、抗NANPペプチド抗体がH鎖導入
遺伝子(γ1NANP DNA)で初回刺激したマウスで見出された(グループ
IおよびII)、ELISA抗体応答をまとめる。抗体が14日目までに現れ、
そして28日目までにプラトーに達した(log 2.8)(表4)。マウスに
ブースター注射を与えた場合、循環する抗体が、200日間持続した。インタク
トな抗原化抗体γ1NANPに対する抗体応答は、その合成ペプチドに対する応
答と平行した。50μgのγ1NANPタンパク質を脾臓内接種されたマウス(
グループIV)は、測定可能ないかなる抗ペプチド応答もマウントしなかったが
、そのインタクトなγ1NANP抗体に対する穏やかな力価の上昇が測定された
。pSVneoプラスミドまたはオボアルブミンのいずれかを注射されたコント
ロールグループは、免疫前の値よりも高くバックグラウンドを超えるいかなる抗
体応答も発生しなかった。コントロールとして使用した合成ペプチドDENGN
YPLQCに対して同じ血清を試験した場合、何の結合も観察されなかった。
【0097】
NANPペプチドに対する記憶応答を、γ1NANP DNAにより誘導した
。プラスミドγ1NANP DNA γ1NANPの一回の脾臓内接種が、H鎖
導入遺伝子のCDR3において発現される(NANP)3ペプチドに対する免疫
学的記憶を誘導するに、十分であった。表4は、不完全フロイントアジュバント
中のγ1NANPタンパク質の皮下ブースター注射の後の、二次抗ペプチド応答
を示す(グループIIおよびIV)。合成NANPペプチドに対する抗体力価が
、グループIIにおけるすべての動物において上昇し、そしてインタクトなγ1
NANPタンパク質に対する応答と平行した。対照的に、γ1NANP DNA
の第2の静脈注射でブーストされたマウスにおいて、何の既往性応答も生じなか
った(グループI)。これはおそらく、血漿DNAseによるプラスミドDNA
の迅速な分解が原因である。可溶性γ1NANPタンパク質での脾臓内(i.s
.)接種により初回刺激されそしてγ1NANPタンパク質で皮下にてブースト
されたマウス(グループIV)における抗体応答は、その組換えタンパク質単独
を使用する一次免疫にて観察される抗体応答と同様であった。NANPに対する
何の抗体応答も、コントロールマウス(グループIIIおよびV)にて検出され
なかった。
【0098】
γ1NANP DNAでの免疫は、P.falciparumスポロゾイトに
対する免疫学的記憶応答を誘導した。体細胞導入遺伝子免疫が、この寄生生物の
ネイティブのCSたんぱく質と遭遇する際に免疫学的記憶について初回刺激し得
るか否かを確認するために、マウスに、P.falciparumスポロゾイト
の単回注射によりブーストした。生じた抗体応答を、ELISAにより測定した
。比較のために、マウスを2つのグループに分けた。1つのグループは、プラス
ミドDNA γ1NANP(またはそのコントロールγ1WT)で脾臓内(i.
s.)初回刺激した。第2のグループは、完全フロイントアジュバント中の抗原
化抗体γ1NANPで皮下初回刺激した。初回刺激の45日後、マウスに、10
5個のP.falciparumスポロゾイトの単回腹腔内ブーストをするか、
または皮下注射により不完全フロイントアジュバント中の抗原化抗体γ1NAN
Pでブーストした。コントロールグループは、プラスミドγ1WT DNAまた
は生理食塩水で初回刺激し、その後スポロゾイトでブーストしたマウスを含んだ
。γ1NANP DNAで初回刺激しそしてスポロゾイトでブーストしたマウス
(図4)は、コントロールプラスミドDNAかまたは生理食塩水単独で初回刺激
したマウスには存在しない、NANPに対する二次応答をマウントした。さらに
、スポロゾイトに対する既往性応答は、完全フロイントアジュバント(CFA)
中の抗原化抗体γ1NANPで初回刺激したマウスにおいてよりも、γ1NAN
P DNAで初回刺激したマウスにおいて大きかった(図4Aおよび4C)。同
様の結果は、捕捉抗原として組換えR32LRに対するELISAによって血清
を試験した場合に、得られた(図4Bおよび4D)。
【0099】
これらの血清はまた、間接的免疫蛍光アッセイにより、風乾したスポロゾイト
の表面と強力に反応し(表5)、このことにより、このDNA免疫されたマウス
が、標的病原体の表面上に存在するのと実質的に同様な立体構造を有するB細胞
エピトープで初回刺激されていることが、確認された。
【0100】
表5.IFAによるPlasmodium falciparumスポロゾイ
トと反応する抗体
【0101】
【表5】


*初回刺激注射およびブースター注射は、上記の通りであった。血清を、4匹
のマウス各々のプールとして試験した。値は、最後のポジティブな希釈の逆数を
示す。
【0102】
これらの結果は、微生物病原体P.faiciparumに対する免疫を、P
.falciparumエピトープをコードする核酸分子の投与により誘導し得
ることを示す。
【0103】
(実施例IV)
(免疫グロブリン遺伝子を使用する、異種B細胞エピトープおよびT細胞エピ
トープでのワクチンの操作)
本実施例は、異種B細胞エピトープおよびT細胞エピトープを免疫グロブリン
のCDRに挿入して、プラスミドDNAとして投与した場合に、免疫学的応答を
増強することを記載する。
【0104】
実験手順は、下記に記載される(Xiongら、Nature Biotec
hnology 15:882〜886(1997))。
【0105】
プラスミドγ1NV2NA3を、下記の通りに操作した。生成により再編成され
たマウスVHのEcoRIフラグメント(2.3kb)を、ベクターpBlue
script II KSにクローン化して、プラスミドpVHを生じた。部位
特異的変異誘発を、21マーのオリゴヌクレオチドプライマー2つを使用して実
施した。そのプライマーの1つ
【0106】
【化1】


は、CDR3にてアニーリングして、3bp(TAC、太字)を導入して、As
p718部位を生成し、そしてもう1つ
【0107】
【化2】


は、CDR2にてアニーリングして、3bp(CCA、太字)を導入して、Nc
oI部位を生成する。これらのプライマーは、ウラシル化した、pVHの相補鎖
にアニーリングし、そしてその変異鎖が、T4 DNAポリメラーゼおよびリガ
ーゼの存在下で合成および連結された。2つの特有の部位(1つはCDR3中(
Asp718)およびもう1つはCDR2中(NcoI))を含む、プラスミド
pVH−TAC/CCAを、形質転換、個々のコロニーのスクリーニングおよび
DNA配列決定(SEQUENASE 2.0 DNA Sequencing
Kit;USB;Cleveland OH)による確認の後に得た。(NA
NP)3配列をコードする一対の相補的オリゴヌクレオチド
【0108】
【化3】


(アンチセンス)を合成し、アニーリングし、そしてAsp718部位にクロー
ン化した。NANPNVDPNANP配列をコードする一対の相補的オリゴヌク
レオチド
【0109】
【化4】


(アンチセンス)を、NcoI部位に同様にクローン化した。その挿入および適
切な方向を、ジデオキシ配列決定(SEQUENCASE 2.0 DNA S
equencing Kit;USB)により確認した。次いで、この操作した
CDR3およびCDR2を保有する2.3kb EcoRIフラグメントを、発
現ベクターpNγ1(Sollazzoら、前出、1989)に、特有のEco
RI部位を使用してヒトγ1定常(C)領域から上流にサブクローニングして、
プラスミドγ1NV2NA3を得た。プラスミドγ1NANPは、3つのNANP
反復をコードするヌクレオチド配列を導入することによってCDR3のみが改変
された、生成により再編成されたマウスV領域遺伝子を保有する(Sollaz
zoら、前出、1990a)。これらのプラスミド中のプロモーターエレメント
およびエンハンサーエレメントは、Ig H鎖遺伝子中に構成的に存在するもの
である(Sollazoら、前出、1989)。
【0110】
組換え抗体γ1WTおよびγ1NANPを、以前に記載された通りに産生およ
び精製した(BillettaおよびZanetti、前出、1992;Sol
lazoら、前出、1989)。循環する導入遺伝子H鎖Ig中の6個および8
個の軽鎖の検出を、以下のように行った。手短かには、血清導入遺伝子H鎖Ig
を、ヒトIgG1に対するヤギ抗体(10μg/ml)でコートした96ウェル
プレート上に、一晩4℃でインキュベートすることによって捕捉した。マウス軽
鎖の存在を、ヒトIgに吸着したマウス6個または8個の軽鎖に対するHP結合
体化ヤギ抗体(Caltag;San Francisco CA)の1:20
00希釈物を使用して、評価した。このアッセイを、上記の通り継続した。試験
は2連で行った。
【0111】
同じIg V領域遺伝子における2つの別個のエピトープの操作を、それぞれ
、Asp718(Sollazoら、Prot.Engineer.3:531
〜539(1990b))およびNcoI部位を含むCDR3およびCDR2に
て実施した。発現されたタンパク質において、両方のCDRは、Vドメインの同
じβ−シート上のβ鎖を相互連結するループである。これらの2つのCDRの改
変は、適切なVH/VL足場と適合可能であると予期されたが、Vドメインの異
なる2つのシートを連結するCDR1の操作は、このポリペプチドの誤った折り
畳みを生じ得る。使用したB細胞エピトープは、P.falciparum寄生
生物のCS抗原由来のテトラペプチドAsn−Ala−Asn−Pro(NAN
P)の3回反復から構成された(Zavalaら、前出、1985)。
【0112】
使用したTh細胞エピトープは、ペプチドAsn−Ala−Asn−Pro−
Asn−Val−Asp−Pro−Asn−Ala−Asn−Pro(NANP
NVDPNANP)であり、これは、P.falciparumのCS抗原の5
’領域に位置する保存されたペプチド配列である。このペプチドは、免疫ヒトC
D4+Tリンパ球により認識され(Nardinら、Science 246:
1603〜1606(1989))、マウスにおいていくつかのMHCハプロタ
イプについて免疫原性であり(Munesinggheら、前出、1991)、
そしてマラリアに対する多抗原ペプチドワクチンに含まれている。
【0113】
pVHのCDR3およびCDR2を、図5に示されるように操作した。pBl
uescriptにクローン化された生成により再編成されたマウスVHを保有
する2.3kb EcoRI DNA(pVH)を、オリゴヌクレオチド部位特
異的変異誘発により改変して、2つの特有のクローニング部位(CDR3中のA
sp718部位(Sollazzoら、前出、1990a)およびCDR2中の
NcoI)を導入した(pVH−TAC/CCA)。3つのNANP反復をコー
ドする一対の相補的合成オリゴヌクレオチドを、このAsp718部位にクロー
ン化し、一方NANPNVDPNANP配列をコードする対を、pVH−TAC
/CCAのNcoI部位にクローン化した。ヌクレオチドの挿入および正確な方
向を、PCRによりチェックし、そして配列決定により確認した(図5A)。次
いで、操作した2.3kb EcoRIフラグメントを、発現ベクターpNγ1
の特有のEcoRI部位にクローン化して、プラスミドγ1NV2NA3を生じた
(図5B)。従って、プラスミドγ1NV2NA3のV領域遺伝子は、CS抗原の
異なる2つのエピトープ(1つはCDR3中そしてもう1つはCDR2中)をコ
ードする。
【0114】
導入遺伝子H鎖抗体のインビボ発現を決定した。実施例Iにおいて記載される
ように、IgH鎖遺伝子をコードするプラスミドDNAの脾臓内接種後、導入遺
伝子Igを、15ng/mlと30ng/mlとの間の範囲の量で循環において
不変的に検出した 10。類似の量を、CDR3におけるNANPエピトープを
コードする抗原化H鎖遺伝子で接種したマウスにおいて検出した(実施例III
を参照のこと)。プラスミドγ1NV2NA3で接種したマウスは、プラスミドD
NAγ1NANPで接種したマウスによって分泌される導入遺伝子H鎖Igと比
較可能な量で導入遺伝子H鎖Igを分泌した(29.4ng/ml対33.3n
g/ml)。これらの結果は、2つのCDRループにおける改変が、内因性の軽
鎖に関連する導入遺伝子H鎖Igの折り畳みおよび分泌に影響しないことを示す
。これはまた、2つのCDRにおける異種ペプチドの挿入を有する導入遺伝子H
鎖が、従来のIgH鎖遺伝子のようにインビボで操作されることを示唆する。
【0115】
2つの異種エピトープを有する導入遺伝子H鎖Igの免疫原性を、プラスミド
γ1NV2NA3の直接の脾臓内接種によって分析した。プラスミドγ1NANP
で接種したマウスはコントロールとなる。抗(NANP)3抗体を産生する両方
の群のマウスは、両方の例において、このCDR3ループが免疫原性であったこ
とを示している(図6)。しかし、プラスミドγ1NV2NA3で接種されたマウ
スにおける抗NANP応答は、プラスミドγ1NANPで接種されたマウスにお
いてよりも強かった(図6A対6B)。プラスミドγ1NV2NA3で接種したマ
ウスが、(NANP)3およびNANPNVDPNANPペプチドの両方に対し
て反応性である抗体を産生した(図6Bおよび6D)のに対して、プラスミドγ
1NANPで接種したマウスは、(NANP)3のみに対して抗体を産生した(
図6Aおよび6C)。(NANP)3に対する抗体は、NANPNVDPNAN
Pと交差反応しないので、プラスミドγ1NV2NA3で接種されたマウスは、2
つの異なる抗体集団(CDR3における(NANP)3ペプチドに対する抗体お
よびCDR2におけるNANPNVDPNANPペプチドに対する抗体)を産生
した。
【0116】
これらの結果は、2つの操作されたCDRは、独立してインビボで免疫原性で
あったということ、およびCDR2におけるTh細胞決定基の存在が、CDR3
におけるB細胞エピトープに対する抗体の産生を増強したことを実証する。
【0117】
(実施例V)
(体細胞導入遺伝子免疫化後の免疫学的記憶を、GM−CSFでの初回刺激に
よって正に作用する)
本実施例は、投与された核酸分子をGM−CSFで初回刺激した場合の増強さ
れた免疫学的記憶を記載する。
【0118】
使用されるプロトコルを、以下に記載する(Gerloniら、Eur.J.
Immunol.28:1832−1838(1998))。
【0119】
プラスミドγ1NANP/GM−CSF(DNA/GM−CSF)を定常部分
のCH3ドメインの3’末端からGly−Glyリンカーでプラスミドp315
9由来のマウスGM−CSFコード配列をクローニングすることによってプラス
ミドγ1NANP(実施例II)から構築した(Taoら、Nature,36
2:755−758(1993))。
【0120】
DNAワクチン接種は、実施例Iに記載されるように30μlの滅菌生理食塩
水溶液中100μgのプラスミドDNAの単一脾臓内接種からなる。アフィニテ
ィー精製されたγ1NANPタンパク質で免疫したマウスに、フロイント完全ア
ジュバント(CFA)においてタンパク質(50μg/マウス)の皮下注射をし
た。ブースター注射は、フロイント不完全アジュバント(IFA)において乳化
されたアフィニティー精製されたγ1NANPタンパク質(50μg/マウス)
の単一の皮下注射か、または0.4mlのDulbecco最少培地において腹
腔内に注射された105の放射線照射されたP.falciparumスポロゾ
イトかのいずれかからなる。スポロゾイトを、記載のように感染したAnoph
eles freeborni蚊において産生した(Wirtzら、前出、19
87)。
【0121】
合成ペプチド(NANP)nおよびγ1NANPに対する抗体を、実施例11
のように行った。抗体のアイソタイプを、マウスIgMクラスおよびマウスIg
G1クラスに特異的なヤギ抗体を用いて決定した(Caltag;San Fr
ancisco CA)(実施例IIIを参照のこと)。
【0122】
GM−CSFは、IFA中抗原化抗体によって誘導される免疫応答を高める。
この抗NANP応答を、DNA/GM−CSFまたはDNAで初回刺激し、続い
て、IFA中抗原化抗体γ1NANPでブーストしたマウスにおいて測定した。
DNAではなくDNA/GM−CSFの接種は、1次応答の間のIgG1抗体を
誘導した。IFA中の抗体γ1NANPでのブースター注射は、DNA/GM−
CSF初回刺激マウスにおけるIgG1力価を上昇した。この抗体力価は、DN
A単独で初回刺激されたマウスにおいてよりもDNA/GM−CSFで初回刺激
したマウスにおいて平均4倍高かった(4.1〜4.4対3.5〜3.8)(表
6)。
【0123】
【表6】


a)示された2つの実験は、独立して行った。各群は、4匹のマウスからなる。
初回刺激を、DNAまたはDNA/GM−CSFの単一脾臓内接種によって行っ
た。ブースター免疫を、IFA中γ1NANP抗体を用いて35日目に与えた。
プールされた血清を、合成ペプチド(NANP)nまたは示された抗原化抗体全
体に対して試験した。
b)値は、最後の正希釈の逆数として示された抗体力価をいう。対応するlog
10力価を丸括弧において示した。
【0124】
GM−CSFは、P.falciparumスポロゾイトの注射によって誘導
される免疫応答を高めた。プラスミドDNAの接種によって初回刺激されたマウ
スは、代表的な2次応答をともなうP.falciparumスポロゾイトによ
るブースター免疫に対して応答する(実施例IIIを参照のこと)。寄生体によ
るブースターは、DNA単独で初回刺激されたマウスと比較して4倍高いDNA
/GM−CSFで初回刺激したマウスにおけるIgG1抗NANP抗体力価を生
じた(Log4.7対4.1)(図7、左のパネル)。生理食塩水で初回刺激さ
れたかつスポロゾイトでブースターされたマウスにおいて、抗体を検出しなかっ
た(ネガティブコントロール)。IgM抗体に対する効果は、最少であった(図
7、右のパネル)。従って、初回刺激中に与えられたGM−CSFは、ブースタ
ー免疫において使用された抗原の組成物とは関係なくIgG1記憶応答を高める

【0125】
(実施例VI)
(CD4T細胞の体細胞導入遺伝子による活性化は、中立のT細胞の一般化さ
れた免疫および免疫学的記憶を誘導する)
本実施例は、エピトープをコードする核酸分子の投与を用いるCD4 T細胞
の活性化を記載する。
【0126】
使用されたプロトコルは、以下に記載される(Gerloniら、J.Imm
unol.162:3782−3789(1999))。
【0127】
プラスミドγ1NV2NA3を、実施例IVに記載のように操作した。プラスミ
ドγ1NANPは、図1に記載する。組換え抗原化抗体γ1NV2NA3およびγ
1NANPをトランスフェクション細胞において産生し、そして実施例IVにお
いて記載のように精製した(Sollazzoら、前出、1990a)。
【0128】
マウスを、実施例1に先に記載のように50μlの滅菌生理食塩水溶液中10
0μgのプラスミドを用いて脾臓内接種した。フロイント不完全アジュバントに
おいて乳化されたアフィニティー精製されたγ1NV2NA3抗体の単一皮下注射
(50μg/マウス)によって初回刺激した後、ブースター注射を、90日目、
110日目、120日目および150日目で投与した。
【0129】
収集の時点で、マウスを屠殺し、そしてリンパ節および脾臓を取り出した。単
一細胞懸濁物を、Hepes緩衝液、グルタミン、7.5%胎仔ウシ血清および
50μM 2−メルカプトエタノールを補充したRPMI 1640培地(Ir
vine Scientific;Santa Ana CA)において、3連
で合成ペプチドNANPNVDPNANPまたはNANPNANPNANP(5
0μg/ml)の存在下または非存在下で培養した(106細胞/ml)。この
細胞を、10% CO2下で37℃で3日間インキュベートした。(3H)−チミ
ジンを1μCi/ウェルで添加し、そしてこの細胞を、37℃で16〜18時間
インキュベートした。細胞をTomtec cell harvesterを用
いてガラス繊維濾過マット上で収集し、そして放射能を、液体シンチレーション
カウンター(Betaplate;Wallac;Tuku Finland)
において測定した。結果を刺激指数(Stimulation Index)(
S.I)として示した。(合成ペプチドの存在下で培養された細胞の1分あたり
の数)/(ペプチドの非存在下で培養された細胞の1分あたりの数)の比として
計算した。コンカナバリンA(ConA)刺激を、ポリクローナルアクチベータ
ーおよび正コントロールとして使用した。
【0130】
CD4+T細胞およびCD8+T細胞を、DNA接種によって7日前に免疫した
マウスの脾細胞から抗体および補体媒介性枯渇によって単離した。簡潔には、細
胞懸濁液(30×106細胞/ml)を、氷上で30分間CD8(3.155)
またはCD4(RL172)に対するモノクローナル抗体で処置した。洗浄後、
抗T細胞抗体を、氷上で30分間マウス抗ラット(MAR18.5)モノクロー
ナル抗体を用いて交差結合し、そしてウサギ補体を、37℃で30分間で2回添
加した。次いで、この細胞懸濁液を2回洗浄し、そしてRPMI(Irvine
Scientific)において5×106細胞/mlの濃度で再懸濁した。
別個の細胞画分の純度を、フィコエリスリン(PE)−結合体化抗CD4モノク
ローナル抗体および蛍光イソチオシアネート(FITC)結合体化抗CD8モノ
クローナル抗体(Pharmingen,San Diego CA)を用いて
Cellquestソフトウェア(Becton & Dickinson,M
ountain View,CA)を用いるFACScanでの分析によって評
価した。
【0131】
培養上清を、最初の播種から40時間後に収集し、そして−20℃で保存した
。3つの別個の3連培養物由来の上清を、各マウスからプールした。IL−2活
性を、(11B11細胞株、ATCCから精製した)抗IL−4の存在下でIL
−2依存性NK.3細胞およびIL−4依存性NK.3細胞を利用するバイオア
ッセイにおいて決定した。簡潔には、100μl(培地中1:2希釈)の40時
間培養上清を、100μlのNK.3細胞(106/ml)に2連で添加し、そ
して36時間インキュベートした。(3H)−チミジンを、最後の12時間に1
μCi/ウェルで添加した。細胞を、上記のように収集した。結果を、1分あた
りの数として示した。
【0132】
IL−4、IL−5およびIFN−γを、抗体11B11およびビオチン化抗
IL−4(BVD6、Pharmigen)、TRFK5、ならびにビオチン化
TRFK4およびR46A−2およびビオチン−XMG1.2(Pharmig
en)をそれぞれ用いて先に記載のようにELISAによって同一の40時間培
養上清において測定した。標準曲線を、精製したIL−2、IL−4、IL−5
およびIFN−g(それぞれのX63.Ag細胞株由来の上清)を用いて作製し
た。試験は、2連で行った。
【0133】
抗原提示細胞(APC)の供給源として、未初回刺激マウス由来の脾細胞を使
用し、そしてLPS/デキストラン(25μg/ml)で24時間培養し、そし
て25μg/mlのマイトマイシンC(Sigma)を用いて37℃で30分間
処理した。使用の前に、ネイティブマウス、初回刺激マウス、または初回刺激し
、かつブーストしたマウス由来の脾細胞を、50μg/mlの合成ペプチドNA
NPNVDPNANP(−NVDP−)の存在下で96ウェル平底プレートにお
いて2×106/ml APCと混合した。細胞の各希釈を、48回繰り返して
、プレートした。上清を36時間後に収集し、そして各培養物の20μlをNK
.3細胞株を、用いてIL−2活性について試験した。3H−チミジン取り込み
の値が、抗原を含まない複製コントロール培養物の平均+2標準偏差よりも高か
った場合、単一培養上清は、ポジティブとみなした。サイトカイン産生細胞の頻
度を、Waldmanによって記載されたプログラムを用いて計算し、そして最
大尤度分析を用いて計算した。
【0134】
脾細胞を、Th細胞決定基を発現する抗原化抗体または対応する12マーのT
h細胞決定基ペプチド(図8A)での再刺激後の培養物において増大した100
μgのγ1NV2NA3DNAの単一脾臓内接種から7日後に収集した。細胞を、
CDR2における異種ペプチドによる特異的活性化を実証する、B−[(NAN
P)3]細胞ペプチドではなく、T−(−NVDP−)細胞ペプチドを用いて培
養した場合、増殖が起る。−NVDP−を発現する抗原化抗体を用いて培養した
後の増殖はまた、抗体分子内のCDR2ペプチドはAPCによって処理され、か
つ提示されることが示唆される。CFA中抗原化抗体で免疫されたマウス由来の
細胞の増殖性応答を比較した場合、STIは、同様のまたはより大きい規模の応
答を誘導した。T細胞の特異的活性化を、マークされたIL−2の産生によって
達成した(図8B)。−NVDP−ペプチドでインビトロ再刺激した培養物にお
いて測定したIL−2のより低い量は、より高い範囲で増大していたこれらの培
養物における細胞のように、より高い消費をおそらく反映する。
【0135】
7日目と14日目で収集した脾細胞はまた、1型表現型および2型表現型に対
する任意の増殖が起るか否かを評価するために、IFN−γ、IL−4およびI
L−5の産生についてアッセイした(図9)。異なる量であったが、IFN−γ
およびIL−4の両方を検出し、そしてIL−5は非存在であった。IFN−γ
特異的活性はIL−4よりも平均で100倍低く、かつIL−4は代表的には、
IFN−γよりも非常に低い量で分泌されるので、これらの結果は、両方のサイ
トカインは比例的に産生され、そしてSTIを介して活性化された細胞が残存し
ているままである(すなわち、中立(Th0))ことを示した。
【0136】
活性化された細胞を、CD4+Tリンパ球であると決定した。CD4+T細胞を
、増殖およびサイトカインを作製する細胞集団として正式に定義した。7日前に
免疫したマウス由来の脾細胞を、CD8またはCD4および補体に対して特異的
なモノクローナル抗体でインビトロでの処理によってCD4+細胞およびCD8+
細胞を枯渇した。フローサイトメトリーによって、この2つの集団の純度は、そ
れぞれ94%(CD4)および99%(CD8)であった(図10Cおよび10
D)。次いで、この2つの細胞集団を、ネイティブマウス由来の新鮮なAPCお
よび合成ペプチド−NVDP−の添加によってインビトロで培養した。増殖はC
D4+T細胞集団で起ったが、CD8+T細胞集団では起らなかった(図10E)
。同様に、IL−2産生を、CD4+T細胞集団でのみ検出した(図10F)。
これらの結果は、STIが、CD4+Tリンパ球を選択的に活性化することを実
証する。
【0137】
T細胞免疫は、他の2次リンパ系器官に拡散することが見出された。初回刺激
が、一般化されたT細胞活性化を誘導する、範囲を決定することは、本研究と密
接に関係がある。実験の第一のセットにおいて、他の2次リンパ系器官に対する
免疫の拡散は、鼡径細胞、腸間膜細胞および頸部リンパ節細胞のプールにおける
細胞増殖およびIL−2産生を測定することによってモニターした。7日後、リ
ンパ節プールのDNA取り込み細胞は、−NVDP−でのインビトロでの再刺激
の際に特異的に増殖したが、B細胞エピトープ細胞での再刺激の際には増殖しな
かった(図11A)。脾細胞と比較した場合、リンパ節における増殖は、より小
さな規模であった。14日目に、リンパ節細胞における応答の規模は、脾細胞に
対して顕著に達する比較可能な値に上昇した。21日目に、残存する増殖活性の
みが、リンパ節および脾細胞の両方において存在する。増殖性応答の規模および
特異性を、対応する培養上清におけるIL−2のレベルによって反映した(図1
1B)。これらの反応速度論的分析は、リンパ節におけるT細胞活性化が、免疫
のプロセスを開始した器官において平行することを示した。正確な解剖学的分布
に従って収集されたリンパ節の細胞(下部(膝窩の、尾の、坐骨の、および腰部
の)、中部(腸間膜の、腎臓の、および上胃部の)、および上部(腋窩の、上腕
の、深大脳および浅頸))は、類似のT細胞増殖およびIL−2産生を有した(
図11Dおよび11E)。
【0138】
STIの他のパラメーターに対する関係において、これらの応答の速度分析は
、いくつかの興味深い点を明らかにした。リンパ節および脾臓における刺激指数
の間の比が計算された場合、14日まで、リンパ節におけるT細胞応答性が流行
性であったことが、明白になった。さらに、リンパ節における増殖性応答のピー
クは、血清におけるトランスジェニックIgのピーク値に相関するようであった
(図11C)。比例パターンが、トランスジェニックIgの分泌とT細胞免疫伝
播との間に存在することを、この結果は示す。
【0139】
抗体応答に対するThおよびB細胞エピトープの連結された認識の効果が決定
された。Th細胞決定因子およびB細胞エピトープの両方をコードする導入遺伝
子を与えられたマウスは、B細胞エピトープ保有遺伝子で免疫されたマウスより
も高い抗体力価を一貫して産生した(図12)。第2に、NVDP決定因子によ
るTh細胞の特異的活性を、IgG1スイッチに対するIgMを促進するのに十
分であると決定した。Th/Bダブルエピトープ導入遺伝子を与えられたマウス
は、IgMおよびIgG1抗体を発達させた(図12)。これらの結果は、T細
胞免疫が、B細胞エピトープに結合されたTh細胞決定因子によって誘発された
ことを示す。このB細胞エピトープは、抗体力価を強めることによって、かつア
イソタイプの転換を促進することによって、B細胞応答を最適化する。
【0140】
インビボでの抗原に対する2度目の曝露に対する応答を決定した。抗原応答性
T細胞の頻度は、不完全フロイントアジュバント(IFA)中の抗原化抗原γ1
NV2NA3(50μg)でブースター免疫の後により高かった(表7)。比較目
的で、LDA研究もまた、1度のDNA接種後、4日および7日で行われた(表
7)。4日および7日目に、頻度は、それぞれ1/90,200(グループII
)および1/50,500(グループIII)であった。IFA中のタンパク質
抗原で初回刺激した4日間、頻度は、1/60,000(グループVII)であ
った。記憶応答の間の平均頻度は、2.5〜4倍高い1/21,900であった
。表7はまた、DNA初回刺激直後の抗原応答性T細胞が、ネイティブ前駆体よ
りも75倍に高めたが、110日までに1/424,500(グループV)に下
がったことを示す。まとめると、これらの結果は、STIによる初回刺激は、T
細胞記憶を確立することを示す。抗原との再遭遇は、より速い、かつより高度に
特異的な応答を誘導した。
【0141】
(表7.Th決定因子に特異的なCD4 T細胞の頻度)
【0142】
【表7】


a値は、2つの独立した実験の平均を表す。
b値は、3つの独立した実験の平均を表す。ブースター免疫を90日〜110日
に行った。
c脾臓細胞を収集し、そしてブースター免疫後、4日間、培地に配置した。
【0143】
本明細書中に開示された結果は、CD4 T細胞を活性化し、耐久性T細胞記
憶を確立するために、STIが有効な方法であることを示す。抗原反応性T細胞
の頻度は、長期間初回刺激された動物において3〜4倍、そしてブースター免疫
後、再び数倍に増加した。さらに、応答は、第1の応答より速く、免疫性記憶の
機能的な定義に一致した。すべての可能性において、初期のエフェクターT細胞
は、静止記憶細胞を生じた。この細胞は、24〜48時間後、抗原によって再び
分離されるまで、脾臓およびリンパ節を通じたプールとして再循環することが既
知である。
【0144】
(実施例VII)
(体細胞導入遺伝子免疫は、CD8 T細胞を活性化し、そしてウイルスのチ
ャレンジに対して保護する)
この実施例は、インフルエンザウイルスA/PR8由来のエピトープをコード
する核酸分子の投与を用いたCD8 T細胞の活性化を記載する。
【0145】
使用されるプロトコルは、Billettaら、Eur.J.Immunol
.25:776−783(1995)に部分的に記載される。
【0146】
H鎖遺伝子を操作し、第3の相補性決定領域(CDR3)において、A/PR
/8/34インフルエンザウイルス核タンパク質(NP)抗原の配列由来の13
アミノ酸残基を発現した(図13)。このNPペプチドは、H−2bマウス(m
ide)におけるDb対立遺伝子と結合している。
【0147】
マウスを100μgのプラスミドDNA/接種を用いて接種した。すべてのD
NA接種を実施例1に示されるように脾臓内で行った。12週間後、不完全フロ
イントアジュバント内に乳化された50μgの合成ペプチドASNENNETM
ESSTL(アミノ酸残基366−374)(NPペプチド)でマウスのグルー
プをさらにブーストした。コントロールグループは、不完全(concompl
ete)フロイントアジュバント中に乳化された50μgのNPペプチドで2度
免疫されたマウス(ポジティブコントロール)、または処置を受けていない同齢
のグループのマウス(ネガティブコントロール)からなる。
【0148】
マウスは、10×LD50用量の感染性相同ウイルスを用いて鼻腔内でチャレ
ンジされた。チャレンジ後、重量の減少および生存について、マウスをモニター
した。
【0149】
細胞毒性を、4時間51Cr放出アッセイを使用して脾臓細胞について試験し
た。簡単には、RMAS(H2b)標的細胞を、Na51Cro4(150mC
i/1×d106細胞)を用いて、1時間37℃で、5%のCO2の雰囲気下で
、NPペプチド(10μg/ml)を含むか、含まないで標識した。次いで洗浄
し、そして10%FCSを補充した培養培地に再懸濁した。100μlの51C
r標識標的細胞(2.5×105細胞/ml)を、100μl中に、種々の(1
00:1)のエフェクター:標的(E:T)比で、エフェクター細胞と混合した
。このプレートを4時間37℃で、5%CO2中でインキュベートし、次いで5
00gで4分間遠心分離した。100μlの上清を除去し、そしてγカウンター
でカウントした。自発的および最大51Crの放出を、標的細胞を培地のみでか
、または1%Triton100×の存在下で、それぞれインキュベートするこ
とによって決定した。三通りのウェルから以下のように細胞毒性の百分率を算出
した:[実験の放出−自発的放出/最大放出−自発的放出]×100。
【0150】
インビトロでの初期の研究は、Ig H鎖導入遺伝子を保有するB細胞が、プ
ロセスし、そして細胞毒性(CD8)T細胞に対するT細胞ペプチド中に存在し
、そして高い効率で溶解されること実証した(Billettaら、Eur.J
.Immunol.25:776−783(1995))。例えば、第3のCD
R中でNPペプチドASNENNETMESSTLを発現するために操作された
H鎖遺伝子でトランスフェクトされたBリンパ腫細胞(Db)は、用量依存の様
式で特異的CTLによって効率的に殺され、細胞内プロセシングおよび細胞の表
面でのNPペプチドの提示を示す。
【0151】
一連の実験において、この導入遺伝子を接種されたC57BL6マウスは、C
TL応答を発達することが示された。接種されたマウス由来の脾臓細胞を、免疫
後三週間で収集し、そして従来の細胞毒性アッセイにおいて、NPペプチドでパ
ルスされたRMAS標的細胞を殺す能力について試験した。ペプチドを含まない
RMAS細胞は、コントロールとして役立った。このアッセイにおいて、本発明
者らは、60〜75%の間のマウスが、インフルエンザNPペプチドに特異的な
細胞毒性T細胞応答を産生したことを見出した。
【0152】
記憶CTLの保護および誘発はまた、実証された(図14を参照のこと)。示
された実験において、マウス(10/グループ)を、STIを介してか、不完全
フロイントアジュバント中の合成ペプチドを用いてのいずれかで(wither
)ワクチン接種した。マウスの1グループは、未処置のままにし、そしてコント
ロールとして役立てた。ワクチン接種の3月後、マウスは、10×LK50の用
量の感染性インフルエンザウイルスでの鼻腔内チャレンジ(すなわち、10回の
マウスのr50%の致死用量)を受けた。示されるように、アジュバント中の合
成ペプチドでワクチン接種されたすべての未処置のマウスは、11日までに死ん
だ。示されるように、体細胞導入遺伝子免疫でワクチン接種されたマウスの大多
数(50および60%)は、生存した。
【0153】
(実施例VIII)
(体細胞導入遺伝子免疫化の間の2つのTh細胞エピトープ間のポジティブな
相互制御)
この実施例は、腫瘍抗原(それ自体、細胞性応答を誘導し得ない)の決定因子
に対するCD4 T細胞のインビボでの活性化を記載する。これは、マラリア寄
生生物の優性T細胞エピトープに結合した腫瘍エピトープをコードする核酸分子
での免疫化によって得られる。
【0154】
2つのH鎖遺伝子が操作され、CDR3において、腫瘍抗原MUC−1のタン
デム反復由来の2つのアミノ酸配列(VTSAPDTRPAPおよびDTRP3
)を発現した(Gendlerら、Proc Natl Acad Sci U
SA,84:6060−6064(1987))。MUC−1抗原の1つのエピ
トープをコードする各々の遺伝子はまた、操作され、CDR2内でマラリア寄生
生物P.Falciparumの外膜由来のTh細胞決定因子NANPNVDP
NANPをコードした(Nardinら、Science246:1603−1
606(1989))。対応するプラスミドベクターは、γ1NV2VTSA3
(図15)およびγ1NV2DTRP3と呼ばれる。
【0155】
MUC−1−由来ペプチド配列のみをコードするプラスミドDNAは、インビ
ボでの増殖応答を誘発し得ない。しかし、プラスミドγ1NV2VTSA3およ
びγ1NV2DTRP3は、それぞれのMUC−1エピトープに対する強力な応
答を誘発した(図16)。1つのMUC−1エピトープをコードするDNAで免
疫された8匹のマウスは、単独でT細胞応答を発達させなかった。逆に、応答は
、マラリア寄生虫由来のMUC−1エピトープおよび非相同Th細胞決定因子に
結合してコードする遺伝子で免疫されたすべてのマウスにおいて生じた。
【0156】
これらの結果は、弱い免疫原性エピトープが、強力な非相同性Th細胞決定因
子との結合によって免疫原性を与えられ得ることを示す。この発見は、MUC−
1に基づいたワクチンの開発と関連するが、また他の腫瘍抗原に対するT細胞免
疫の発展とも関連する。
【0157】
これらの結果は、2つのTh細胞決定因子T細胞の連結された結合が、開発さ
れ、弱いT細胞決定因子(例えば、腫瘍抗原)に対して免疫することを示す。こ
れらの結果は、体細胞導入遺伝子免疫の原理に沿った免疫化のために使用される
遺伝子における連結されたTh/Th結合が、免疫原性、別の乏しいまたは非免
疫原性Th細胞決定因子を与え得ることを示す。これらの結果は、この原理は、
強力なT細胞免疫が所望されるすべての抗原に対してワクチン接種するために適
用可能であることを示す。
【0158】
(実施例IX)
(エキソビボでの体細胞導入遺伝子免疫化は、T細胞免疫を誘発する。)
この実施例は、エキソビボSTIを使用する抗原特異的なCD4 T細胞の誘
導を記載する。第1のインビトロ工程において、正常脾臓リンパ球はプラスミド
γ1NV2NA3でトランスフェクトされた。トランスフェクションの24時間後
、リンパ球は、正常マウスの静脈内に注射された。
【0159】
示された実験(表8)において、マウスは、200mlの滅菌生理食塩水内の
異なる数のトランスフェクトされたリンパ球を注射された(尾の静脈内に)。ト
ランスフェクトされた細胞の注射後、14日マウスを屠殺した。単一の脾臓細胞
懸濁液を、3通りに培養した。合成ペプチドNANPNVDPNAPまたはNA
NPNANPNANP(50μg/ml)の存在または非存在下で、Hepes
緩衝液、グルタミン、7.5%胎児ウシ血清および50μMの2−メルカプトエ
タノールを補充したRPMI1640培地(Irvine Scientifi
c;Santa Ana、CA)において培養した(106細胞/ml)。細胞
を37℃で、10%CO2中で、3日間インキュベートした。(3H)チミジンを
、1μCi/ウエルで添加し、そして細胞を37℃で16〜18時間インキュベ
ートした。細胞をTomtec細胞回収機を使用してガラスファイバーフィルタ
ーマット上に回収し、そして放射能を液体シンチレーションカウンター(Bet
aplate;Wallac;Tuku Finland)で測定した。結果は
、(合成ペプチドの存在下で培養された細胞のカウント/分)/(ペプチドの存
在下で培養された細胞のカウント/分)の比として算出したStimulati
on Index(S.I.)として表した。コンカナバリンA(ConA)刺
激を、ポリクローナル活性化因子およびポジティブコントロールとして使用した
。血清を使用し、トランスジェニック産物(TgIg)およびTgIgに対する
抗体の存在を検出した。
【0160】
表8に記載される結果は、特異的な増殖応答が、20,000〜70の注射さ
れたポジティブ細胞/マウスの範囲に渡って、すべてのマウスにおいて検出され
たことを示す。この増殖応答は、用量応答曲線に続き、そして応答は特異的であ
った。Th細胞決定因子を欠く導入遺伝子を保有するトランスジェニックリンパ
球を注射されたコントロールマウスは、試験された任意の細胞濃度で応答しなか
った。
【0161】
(表8.エキソビボでのSTIは、CD4 T細胞応答を誘導する。用量応答
分析)
【0162】
【表8】


ネイティブC57B1/6マウスは、プラスミドγ1NV2NA3をトランスフ
ェクトされた合成リンパ球を、静脈内に注射された。2匹のマウスのグループの
各々は、導入遺伝子を保有する細胞の1度の注射(20,000〜70細胞/マ
ウス)を受けた。細胞の免疫化後、2週間でマウスを屠殺し、そして脾臓細胞を
調製し、そしてコントロールとしての−NVDP−ペプチドまたは(NANP)
3ペプチドの存在下で従来のCD4 T細胞増殖アッセイで試験した。コントロ
ールマウスを、コントロール導入遺伝子、(NANP)3ペプチドをコードする
が、CD4 T細胞決定因子、−NVDPをコードしないプラスミドγ1NA3
を保有する等数の脾臓細胞で同様に免疫した。結果は、−NVDP−ペプチドを
用いてインビトロで再刺激された培養物のcpm − 培地単独での培養物のc
pm、として表される。B細胞エピトープ(NANP)3で3再刺激されたコン
トロール培養物の値(cpm)は、示されない。なぜなら、培地単独での培養物
の値(cpm)に等しいからである。
【0163】
本明細書中に開示される結果は、エキソビボでのSTIは、CD4 T細胞を
活性化するのに有効な方法であることを示す。抗原特異的免疫は、1つのCDR
内で、Th細胞決定因子をコードするIg H鎖遺伝子でトランスフェクトされ
た正常リンパ球の静脈内注射によって容易に誘導された。エキソビボでのSTI
を介した免疫化は、用量応答免疫化の特徴を有する増殖応答を誘導した。
【0164】
(実施例X)
(体細胞導入遺伝子は、ヒトB細胞についてインビトロで機能する。)
この実施例は、免疫グロブリン遺伝子をコードする細菌プラスミドDNAを使
用するヒトB細胞の自発的トランスフェクションを記載する。
【0165】
Raji(MHCクラスII+)およびRJ2.2.5(MHCクラスII-
変体)は、2%グルタミンが補充された10%FCSを含むRPMI−1640
中で培養された。プラスミドDNAγ1NANPおよびPCR方法論は、実施例
IIに記載される。
【0166】
Raji(MHCクラスII+)およびRJ2.2.5(MHCクラスII-
変体)を収集し、そして滅菌生理食塩水で徹底的に(throughly)洗浄
し、カウントし、そして300μlのリン酸緩衝液生理食塩水中に種々の濃度で
再分布した。5μgのプラスミドDNA(γ1NANP)を細胞懸濁液に添加し
、そして37℃で、1時間、5%CO2雰囲気下でインキュベートした。インキ
ュベーション後、細胞を生理食塩水で洗浄し、そして完全培養培地に置き、37
℃で、5%CO2で24時間増殖させた。取り込みおよびトランスフェクション
を、24時間後に収集した細胞において評価した。ゲノムDNAをQIAamp
Blood Kit(Qiagen)を使用して抽出し、そして、VDJ特異
的プライマーを使用する2回のネスト化されたPCRに供した(実施例IIを参
照のこと)。PCR産物を、エチジウムブロマイド染色をした1%アガロースゲ
ルで分析した。24時間後、RajiおよびRJ2.2.5細胞の両方において
導入遺伝子をPCRを用いて検出し、このことは、導入遺伝子の取り込みおよび
統合を示唆する。異なる実験において、105のトランスフェクトされた細胞の
合計のRNAは、チオシアン酸グアニジンフェノールクロロホルムを使用する培
養の7日後に1度の工程で抽出された。マウスのトランスフェクトーマ(tra
nsfectoma)細胞株を、ポジティブコントロールとして使用した。RT
−PCRによって、H鎖導入遺伝子産物をコードするRNAを、トランスフェク
トされたRajiにおいて検出したが、トランスフェクトされていないRaji
細胞において検出しなかった。
【0167】
この適用の全体に渡って、種々の刊行物が参照された。それらのすべてにおい
て、これらの刊行物の開示は、本発明のに関係のある最新技術をより十分に記載
するために本願における参考として本明細書中に援用される。
【0168】
上記の実施例に関連して、本発明が記載されてきたが、本発明の精神から逸脱
しないで種々の変更がなされ得ることを理解されるべきである。従って、本発明
は、請求項のみによって限定される。
【図面の簡単な説明】
【0169】
【図1】図1は、プラスミドDNAγ1WTおよびそのγ1WT−TAC改変体およびγ1NANP改変体の模式図を示す。γ1WT H鎖構築物は、プラスミドベクターpNeoy1中に存在するヒトγ定常(C)領域遺伝子とマウスVH62遺伝子との間の融合産物(2.3kb)である(Sollazzoら、Eur.J.Immunol.19:453−457(1989))。VH領域遺伝子は、生産的に再配列され、そしてC領域遺伝子は、ゲノム配置中にある。改変体γ1WT−TACおよびγ1NANPは、CDR3中の太字で示すヌクレオチドの挿入を含む。各プラスミドDNAは、組織特異的発現に必要とされる、調節配列、プロモーター(Pr)、およびエンハンサー(En)を有する。プラスミドDNA γ1NANPにおいて、ヒトγ1 C領域遺伝子は、3つのAsn−Ala−Asn−Pro反復をコードするヌクレオチド配列の導入によって、第3の相補性決定領域(CDR3)において改変されている、生産的に再配列されたマウス可変(V)領域遺伝子に連結されている。これらのプラスミドにおいて、プロモーターエレメントおよびエンハンサーエレメントは、IgH鎖遺伝子中に構成的に存在するエレメントである。Neor=ネオマイシン耐性遺伝子;Ampr=アンピシリン耐性遺伝子;PR=プロモーター;EN=エンハンサー;CH=重鎖C領域;VH=重鎖可変領域;FR=フレームワーク領域;CDR=相補性決定領域。
【図2】図2は、γ1WT−TAC DNAの生産的に再配列されたVDJ領域に対応するゲノムDNAクローンのヌクレオチド配列を示す。520bpフラグメントを、(1)プラスミドDNAγ1WT−TACを17日前に接種した脾臓から抽出したゲノムDNA、および(2)プラスミドDNA γ1WTを構成的に有するJ558L細胞から増幅した(Sollazzoら、前出、1989)。この増幅された産物を、反対方向からの2つの異なるプライマーを使用して、クローニングおよび配列決定した。一番上のヌクレオチド配列はγ1WT−TACでありれ、参照として役立つ。SP7−SP12は、脾臓ゲノムDNAから産生した6つのクローンを同定する。TR35−TR38は、トランスフェクト細胞に由来する4つのゲノムDNAクローンを同定する。CDRおよびフレームワーク領域(FR)を示す。この研究は、インビボでの注入後に、導入遺伝子が体細胞変異を受けないことを示す。
【図3】図3は、脾臓Bリンパ球およびTリンパ球の単離および精製したリンパ球集団中での導入遺伝子H鎖の検出を示す。DNA接種したマウスの脾臓からのBリンパ球およびTリンパ球を分類し、そして示した時間に、蛍光活性化セルソーターで精製した。
【図4】図4は、P.falciparum sporozoitesでのチャレンジ後の、プラスミドDNA γ1NANPを用いて誘発された既往抗体性応答を示す。マウスを、プラスミドγ1NANPを用いて初回免疫するか、または抗原化抗体γ1NANPもしくはCFA中の抗原化抗体γ1NANPで初回免疫した。コントロールグループには、プラスミドγ1WT DNAまたは生理食塩水を接種した。45日目のマウスには、示されるように、P.falciparumスポロゾイトまたはIFA中の抗原化抗体γ1NANP(50μl)のいずれかを皮下で用いて、ブースター免疫を与えた。P.falciparumスポロゾイトを、不完全DMEM中に腹腔内接種した(109)。血液サンプルを、45日目に収集し(ブースター注入の前に)、そして引き続いて、ブースター15日後および35日後に収集した。合成ペプチド(NANP)n(パネルAおよびC)と反応性の抗体および組換えタンパク質R32LR(パネルBおよびD)と反応性の抗体が、ELISAによって検出された。値は、1:1600の希釈で試験した、プールした血清(4マウス/グループ)の吸光度(A492)を表す。
【図5】図5は、2つの異種エピトープを有する免疫グロブリンH鎖遺伝子の操作および発現を示す。パネルAは、変異誘発ベクターの模式図、(NANP)3の導入、およびNANPNVDPNANPコード配列、ならびに、挿入後の、CDR2およびCDR3の、部分的なヌクレオチド配列を示す。合成オリゴヌクレオチドおよびpVH−TAC/CCAの作製のための変異誘発工程は、実験プロトコルに詳述されている。(NANP)3およびNANPNVDPNANPをコードする相補的合成オリゴヌクレオチドの2対を、pVH−TAC/CCAの、CDR3のAsp718部位およびCDR2中のNcoI部位でクローニングした。挿入物を、ジデオキシ鎖ターミネーション配列決定によって確認した。パネルBは、それぞれ、CDR2およびCDR3において2つの異種エピトープについてのコード配列を有するプラスミドDNA γ1NV2NA3の模式図を示す。ヒトγ1定常(C)領域遺伝子は、ゲノム配置にある。CH1、CH2、およびCH3は、γ1遺伝子のC領域中の対応するドメインである。組織特異的発現のためのプロモーター(Pr)およびエンハンサー(En)エレメントならびにネオマイシン耐性遺伝子(Neor)およびアンピシリン耐性遺伝子(Ampr)を示す。パネルCは、軽鎖と対をなす抗原化H鎖遺伝子産物の模式図を示す。CDR2およびCDR3中の操作されたエピトープを示す(スケールは同一ではない)。
【図6】図6は、CDR3エピトープおよびCDR2エピトープのインビボ免疫原性を示す。マウスを、プラスミドDNA γ1NANP(黒四角)またはγ1NV2NA3(白四角)で免疫した。これらの血清を、合成ペプチド(NANP)n(パネルAおよびB)またはNANPNVDPNANP(パネルCおよびD)でのELISAによって試験した。値は、1:1600希釈で試験された血清の吸光度(492nm)であり、そして平均(±標準誤差)として表現される。各グループは4マウスからなる。(*)は、パネルB対パネルAで示される値の間の統計学的な有意性を示す。有意性は、7日目でp<0.01、14日目でp<0.05であった。時間は、DNA接種後の日数である。
【図7】図7は、GM−CSFが、P.falciparumスポロゾイトを用いるブースター免疫後に、既往抗体性反応の抗NANP抗体応答を強調することを示す。縦軸は抗体力価(Log10)であり、(NANP)nペプチドで測定される。実験グループは、下側に同定される。矢印は、ブースター免疫が与えられた場合の時間(45日目)を示す。値は、同じ時点で収集された血清のプールの結合である。各グループは、4マウスから構成された。
【図8】図8は、STIによるTリンパ球の抗原特異性活性化を示す。パネルAは、B細胞エピトープをコードするプラスミドDNA g1NAP(4マウス)、B細胞およびT細胞エピトープをコードするγ1NV2NA3(4マウス)、またはコントロールプラスミドpSV2neo(2マウス)を接種したC57B1/6マウスからの脾臓細胞の増殖性応答を示し、そして7日目に収集した。細胞を、横座標に沿って示される抗原の存在下で培養した。結果は、平均±S.D.として表現される刺激指数である。結果は、2つの独立した実験に対応する。AgAb=抗原化抗体。試験は3連で行った。パネルBは、パネルAにおいて示される同じC57B1/6マウスからの脾臓細胞培養におけるIL−2産生を示す。結果を、インジケーターであるNK.3細胞の増殖性応答の1分間あたりの計数(cpm)で表現し、そして平均±S.D.として表現される。
【図9】図9は、初回応答の間のIFN−γおよびIL−4のレベルを示す。免疫7日後および14日後に収集した脾臓細胞を、Th細胞決定基に対応する合成ペプチド(50Yg/ml)と40時間インキュベートした。3連の培養からの上清を収集し、そしてIFN−γまたはIL−4に特異的な捕捉ELISAにおいて試験した。
【図10】図10は、活性化細胞がCD4+細胞であることを示す。DNA接種の7日後、脾臓細胞集団を調製し、そして抗体および補体によって、CD8+細胞枯渇(パネルC)またはCD4+細胞枯渇(パネルD)させた。未分離のCD8+細胞(パネルA)および未分離のCD4+細胞(パネルB)を参照として示す。未分画(総計)、分離したCD4およびCD8、ならびに再構築(CD4+CD8)T細胞集団の増殖性応答(パネルE)ならびにIL−2産生(パネルF)を示す。刺激指数およびIL−2産生を決定した。
【図11】図11は、脾臓内DNA接種によって誘導されたT細胞免疫がリンパ節まで広がることを示す。γ1NV2NA3DNA接種の7日後、14日後、または21日後に収集された鼡径部、腸間膜、および頸部リンパ節、ならびに脾臓細胞のプールにおける細胞増殖(パネルA)およびIL−2産生(パネルB)。リンパ節は、4マウス/実験から単離した。血清中の血清トランスジェニックIg(ng/ml)を、各時点での6匹の異なるマウスの平均±SDとして表現する(パネルC)。以下から収集したリンパ節の細胞増殖(パネルD)およびIL−2産生(パネルE):(1)腋窩、上腕、深頸、および浅頸(上部);(2)腸間膜、腎臓、および上腹部(中間部);ならびに(3)膝窩、仙骨、坐骨、および腰椎(下部)、DNA接種14日後のリンパ節。リンパ節を、6匹のマウスから単離した。
【図12】図12は、抗体応答に対する、Th細胞エピトープおよびB細胞エピトープの関連した認識の効果を示す。TエピトープおよびBエピトープ(三角)、B細胞エピトープ(四角)、またはコントロールプラスミド(丸)をコードするプラスミドDNAを接種されたマウスにおけるB細胞エピトープ反応性抗体の力価(Log)(パネルA)。B細胞エピトープのみをコードするプラスミドDNA(パネルB)、またはB細胞エピトープおよびT細胞エピトープをコードするプラスミドDNA(パネルC)を接種したマウスの血清中でのELISAにおいて決定される、IgG1抗体、IgM抗体、およびIgG2a抗体の力価(log)。すべての記号は単一のマウスを示す。すべてのマウスを14日目に試験した。試験を、二連で行った。
【図13】図13は、プラスミドDNA γ1NPの模式図を示す。このH鎖コードプラスミドは、第3の相補性決定領域(CDR3)におけるインフルエンザウイルスヌクレオタンパク質(NP)抗原(366−379)の配列から、13アミノ酸残基を発現するように操作された、ヒトγ1C領域のマウスVHとの融合物の産物である。このNPペプチドは、H−2bマウスにおいてDb対立遺伝子に付随して提示される。CDR3領域のコード鎖を太字で示し、NPコード配列に下線を付す。インフルエンザペプチド366ASNENMETMESSTL379のアミノ酸配列を太字で示す。B、BamHI;RI、EcoRI;Neo、ネオマイシン(G418)耐性;Amp、アンピシリン耐性。H鎖遺伝子を、単一のKpnI/Asp178部位、およびインフルエンザウイルスNP抗原(ASNENMETMESSTL)の残基366−379をコードする、相補的オリゴヌクレオチド(5’GTA CCC GCT TCC AAT GAA AAT ATG GAG ACT ATG GAA TCA AGT ACA,CTT 3’)、5’GTA CAA GTG TAC TTG、ATT、CCA、TAG、TCT、CCA、TAT、TTT、CAT、TGG,AAG、CGG 3’は、変異誘発したVH領域の94Vと95Pとの間に導入した。2.3kb EcoRIフラグメントによってコードされる操作されたVHNPを、12.8kbベクターpNγ1に含まれるヒトγ1定常(C)領域遺伝子から上流にクローニングした。
【図14】図14は、脾臓内接種を介してプラスミドDNA γ1NP(DNA)でワクチン投与し、そして10LD50インフルエンザウイルスでチャレンジしたマウスにおける生存曲線を示す。他のグループは、プラスミドDNAγ1NPで初回免疫し、その後、合成ペプチド(免疫学的アジュバント中のインフルエンザウイルスNP抗原ASNENMETMESSTL)でブーストするか(DNA+ペプチド)、または免疫学的アジュバント中のNP合成ペプチドASNENMETMESSTL、その後、同じ合成ペプチドでブーストした(ペプチド+ペプチド)。ウイルスを用いるチャレンジを、初回免疫3ヶ月後に与えた。
【図15】図15は、免疫グロブリンH鎖遺伝子の、2つの異種Th細胞エピトープでの操作を例証する。H鎖遺伝子は、プラスミドベクターγ1NV2VTSA3によってコ−ドされる。VH領域は、マウスV領域遺伝子のVDJ再配列を含む2.3kb EcoRIゲノムフラグメントである(図1を詳細に参照のこと)。ヒトγ1定常(C)領域遺伝子は、ゲノム配置中にある。CH1、CH2、およびCH3は、γ1遺伝子のC領域中の対応するドメインをいう。組織特異的発現のためのプロモーター(Pr)エレメントおよびエンハンサー(En)エレメントならびにネオマイシン耐性遺伝子(Neor)およびアンピシリン耐性遺伝子(Ampr)を示す。VH領域は、右のパネルに示されるような2つの異種決定基をコードするように変異誘発によって改変される。矢印は、宿主細胞によって提供されるトランスジェニックH鎖および軽鎖(L鎖)から構成される翻訳された他の構造を示す。CDR2およびCDR3におけるアミノ酸配列が示され、そして、マラリア寄生虫P.falciparumの外被由来のTh細胞決定基NANPNVDPNANP(CDR2において)および腫瘍抗原MUC−1のタンデムリピート由来のVTSAPDTRPAPエピトープ(CDR3において)に対応する。CDR=相補性決定領域。H=重(鎖);C=定常領域。スケールは同一ではない。
【図16】図16は、潜在性の/サブドミナントなエピトープに対する増殖性応答への、ドミナントなThエピトープおよび潜在性の/サブドミナントなThエピトープの連結性認識の効果を示す。Th/Th連結性認識が、MUC−1抗原から免疫原性T細胞決定基を与えるために必要である。マウスに、示されるように、プラスミドDNAを接種した。脾臓細胞を、15日目に収集し、そして、50μg/mlの合成ペプチド(DTRP)3およびVTSAPDTRPAP(VTSAと示す)の存在下で、インビトロで4日間再刺激した。両方の配列は、腫瘍抗原MUC−1のPDTRPAPGSTAPタンデムリピートに含まれる。上付き数字は、異種抗原配列が挿入されたCDRを示す。下付き数字は、特定のCDRの状況において、括弧内の配列が反復される回数の数を示す。示された結果は、3回の独立した実験の累積である。各グループは、8〜10マウスから構成される。結果を、刺激指数として表現する。棒は、刺激指数±SEMの平均を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−102369(P2009−102369A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328814(P2008−328814)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【分割の表示】特願2000−613478(P2000−613478)の分割
【原出願日】平成12年4月27日(2000.4.27)
【出願人】(507004761)ネバジェン エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】