説明

体組成測定装置

【課題】ギャッチアップ座位時の上体の角度を変数として考慮し、前記腹部インピーダンスに基づいて体組成に関する指標を算出する体脂肪測定装置を提供する。
【解決手段】少なくとも1対の電流印加電極及び電圧測定電極を用いて腹部のインピーダンスを測定する腹部インピーダンス測定手段と、ギャッチアップ座位時の上体の角度を入力する角度入力手段と、少なくとも前記腹部インピーダンスと前記上体の角度とに基づいて体組成に関する指標を演算する演算手段とを備えたことにより、仰向け姿勢時と同様に体組成に関する指標を算出可能であり、例えば、リクライニングベッドや椅子などによるギャッチアップ座位姿勢で、個人が測定しやすいような上体の角度をもった姿勢での測定が可能であり、身障者、健常者問わず、簡便に且つ精度の高い測定が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腹部のインピーダンスを測定し、体脂肪に関する指標を算出する体組成測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の腹部のインピーダンス測定を用いた体組成測定装置おいては、腹部周囲表面におけるインピーダンス測定に基づいて、予め設定してある腹部インピーダンスに基づく体脂肪に関する指標を算出するための回帰式により、前記体組成に関する指標を算出する技術が数多く開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−1356998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来の体組成測定装置においては、一定姿勢でのインピーダンス測定を前提としているものであり、被験者の姿勢変化に伴う腹部インピーダンス変化の影響まで言及しているものはなかった。例えば、寝たきりの方であっても仰向けに寝ることが困難な場合に、リクライニング機能付きベッドにより仰向けの姿勢から上体を起こした姿勢、すなわち、腹部を含め身体的にはほとんど力を加えることなく上体を起こした座位(以下、ギャッチアップ座位という)の姿勢で生活する場合があり得る。この場合、ギャッチアップ座位の上体の角度には個人差があり、上体を起こすほど身体がくの字型に曲げられるため、腹部は圧迫され形状が変化する。これに伴い腹部のインピーダンス値が変化することになるが、前記従来の体組成測定装置で用いられている回帰式では誤差となってしまうことが明らかである。
【0004】
また、健常者であっても、腹部インピーダンス測定時には仰向けまたは直立の状態で測定しなければ成らず、リクライニング椅子などに座った状態で測定することができなかった。また仰向けに寝た状態では、腹部に表示部を設けた装置だった場合、表示が見づらい場合があった。
【0005】
従って本発明は上述の問題点を解決し、ギャッチアップ座位時の上体の角度を変数として考慮し、前記腹部インピーダンスに基づいて体組成に関する指標を算出する体脂肪測定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、少なくとも1対の電流印加電極及び電圧測定電極を用いて腹部のインピーダンスを測定する腹部インピーダンス測定手段と、ギャッチアップ座位時の上体の角度を入力する角度入力手段と、少なくとも前記腹部インピーダンスと前記上体の角度とに基づいて体組成に関する指標を演算する演算手段とを備えた体組成測定装置を提供する。
【0007】
また、前記腹部インピーダンス測定手段は、前記電流印加電極及び電圧測定電極間の距離を腹部の大きさに則した所定範囲に接触させるように可変する電極支持手段を備えて成る。
【0008】
また、前記腹部インピーダンス測定手段は、前記電流印加電極及び電圧測定電極間の距離を固定して支持する電極支持手段を備え、腹部の横幅距離を入力する横幅距離入力手段とを更に有し、前記演算手段は、前記腹部インピーダンス、前記上体の角度及び前記横幅距離とに基づいて体組成に関する指標を演算するものである。
【0009】
また、前記角度入力手段は、ギャッチアップ座位時の上体の角度を計測して入力する角度センサを更に備えて成る。
【0010】
また、前記角度センサは、被験者の上半身の所定の部位に貼付するものである。
【0011】
また、前記角度センサは、被験者の首から吊り下げて上半身所定の部位に位置させるものである。
【0012】
また、前記腹部インピーダンス測定手段は、前記電流印加電極に印加する交流電流の周波数を切り替え、高周波数領域及び低周波数領域から少なくとも各1周波数を含む複数の周波数によりインピーダンス測定を行なう周波数切り替え手段を更に有する。
【0013】
更に、前記体組成に関する指標は、皮下脂肪厚、皮下脂肪面積、腹筋厚、内臓脂肪面積、腹部全脂肪面積、体幹部脂肪率、全身脂肪率及び皮下脂肪と内臓脂肪との割合の内、少なくとも一つである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の体組成測定装置は、少なくとも1対の電流印加電極及び電圧測定電極を用いて腹部のインピーダンスを測定する腹部インピーダンス測定手段と、ギャッチアップ座位時の上体の角度を入力する角度入力手段と、少なくとも前記腹部インピーダンスと前記上体の角度とに基づいて体組成に関する指標を演算する演算手段とを備えたことにより、仰向け姿勢時と同様に体組成に関する指標を算出可能であり、例えば、リクライニングベッドや椅子などによるギャッチアップ座位姿勢で、個人が測定しやすいような上体の角度をもった姿勢での測定が可能であり、身障者、健常者問わず、簡便に且つ精度の高い測定が可能である。
【0015】
また、前記腹部インピーダンス測定手段は、前記電流印加電極及び電圧測定電極間の距離を腹部の大きさに則した所定範囲に接触させるように可変する電極支持手段を備えて成るものや、前記電流印加電極及び電圧測定電極間の距離を固定して支持する電極支持手段を備え、腹部の横幅距離を入力する横幅距離入力手段とを更に有し、前記演算手段は、前記腹部インピーダンス、前記上体の角度及び前記横幅距離とに基づいて体組成に関する指標を演算するものであることから、前記電極の接触位置の位置決めが不要であり、簡便な測定が可能である。
【0016】
また、前記角度入力手段は、ギャッチアップ座位時の上体の角度を計測して入力する角度センサを更に備えて成ることから、入力の手間が無く、より簡便に精度の高い測定が可能である。
【0017】
また、前記角度センサは、被験者の上半身の所定の部位に貼付するものであったり、被験者の首から吊り下げて上半身所定の部位に位置させるものであることから、簡便に角度の計測が可能である。また、例えば、前記所定の部位を胸骨と鎖骨とを繋ぐ胸骨柄と呼ばれる骨付近の胸部皮膚表面とした場合、この部位は胸部形状による個人差が少ない部位であり、個人間の誤差を少なくすることも可能である。
【0018】
また、前記腹部インピーダンス測定手段は、前記電流印加電極に印加する交流電流の周波数を切り替え、高周波数領域及び低周波数領域から少なくとも各1周波数を含む複数の周波数によりインピーダンス測定を行なう周波数切り替え手段を更に有することから、各周波数により脂肪組織や筋肉組織等一部の生体組織に寄与したインピーダンスを得ることが可能であり、複数周波数により測定することで、より精度の高い前記体脂肪に関する指標を得ることができる。
【0019】
更に、前記体組成に関する指標は、皮下脂肪厚、皮下脂肪面積、腹筋厚、内臓脂肪面積、腹部全脂肪面積、体幹部脂肪率、全身脂肪率及び皮下脂肪と内臓脂肪との割合の内、少なくとも一つであることから、CT法やDXA法等を用いた高価な装置によって測定していた前記体脂肪に関する指標を安価な装置により簡便に測定可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の体組成測定装置は、少なくとも1対の電流印加電極及び電圧測定電極を用いて腹部のインピーダンスを測定する腹部インピーダンス測定手段と、ギャッチアップ座位時の上体の角度を入力する角度入力手段と、少なくとも前記腹部インピーダンスと前記上体の角度とに基づいて体組成に関する指標を演算する演算手段とを備えて構成する。
【0021】
また、前記腹部インピーダンス測定手段は、前記電流印加電極及び電圧測定電極間の距離を腹部の大きさに則した所定範囲に接触させるように可変する電極支持手段を備えて成る。
【0022】
また、前記腹部インピーダンス測定手段は、前記電流印加電極及び電圧測定電極間の距離を固定して支持する電極支持手段を備え、腹部の横幅距離を入力する横幅距離入力手段とを更に有し、前記演算手段は、前記腹部インピーダンス、前記上体の角度及び前記横幅距離とに基づいて体組成に関する指標を演算するものである。
【0023】
また、前記角度入力手段は、ギャッチアップ座位時の上体の角度を計測して入力する角度センサを更に備えて成る。
【0024】
また、前記角度センサは、被験者の上半身の所定の部位に貼付するものである。
【0025】
また、前記角度センサは、被験者の首から吊り下げて上半身所定の部位に位置させるものである。
【0026】
また、前記腹部インピーダンス測定手段は、前記電流印加電極に印加する交流電流の周波数を切り替え、高周波数領域及び低周波数領域から少なくとも各1周波数を含む複数の周波数によりインピーダンス測定を行なう周波数切り替え手段を更に有する。
【0027】
更に、前記体組成に関する指標は、皮下脂肪厚、皮下脂肪面積、腹筋厚、内臓脂肪面積、腹部全脂肪面積、体幹部脂肪率、全身脂肪率及び皮下脂肪と内臓脂肪との割合の内、少なくとも一つである。
【実施例1】
【0028】
本発明の体組成測定装置の実施例を図面用いて説明する。図1は体組成測定装置の外観図であり、図2は図1の腹部接触面側の側面図であり、図3は使用時の状態を示す図であり、図4は電気ブロック図である。
【0029】
本実施例において例示する体組成測定装置1は大別すると、インピーダンス測定のための電流印加電極2a及び2bと電圧測定電極3a及び3bを腹部前面に接触させて測定する腹部インピーダンス測定部4と、前記腹部インピーダンス測定部4とは別体で設けられた角度センサ5とがコード6によって電気的に接続されて成る。前記インピーダンス測定部4は、前記電流印加電極2a及び前記電圧測定電極3aを備えた半U字型アーム部7aと、同様に前記電流印加電極2b及び前記電圧測定電極3bを備えた半U字型アーム部7bとにより、図1に示すように、電圧測定電極3a及び3bを電流印加電極2a及び2bに挟まれる位置に配して成り、前記半U字型アーム部7a及び7b間は、図2の双方向矢印にて示すように、腹部横幅を挟み込むように、腹部の大きさに合わせて摺動可能な機構を有して構成され、各々把持部8a及び8bを備えて成る。
【0030】
また、前記腹部インピーダンス測定部4は、図4の電気ブロック図にて後述する電気回路を構成する回路基板を内部に配した操作ボックス9を備え、操作ボックス9は測定結果や各種ガイダンスなどを表示する表示部10及び各種設定の入力操作などを行なう操作部11とを備えて成る。
【0031】
これにより、図3のギャッチアップ座位姿勢における使用状態を示す略図のように、前記腹部インピーダンス測定部4を腹部前面に押し当てることにより、電流印加電極2a及び2bと電圧測定電極3a及び3bとを腹部表面に密接させて保持することが可能であり、また腹部横幅に合わせた前記半U字型アーム部7a及び7bの摺動に伴い、前記電流印加電極2a及び2b間と電圧測定電極3a及び3b間の距離も腹部の大きさに合わせて可変するため、ウエストや腹部横幅距離などによる腹部の大きさに対する電極接触位置の補正が不要である。
【0032】
また、前記角度センサ5は、例えば胸部に貼り付けるものであり、図3において角度Θで示した、水平方向を基準とした上体の角度を検出可能な公知の角度センサである。
【0033】
続いて、図4の電気ブロック図を用いて電気回路構成を説明する。前記電流印加電極2a及び2bがインピーダンス測定のための所定の電流を印加する電流印加部21に接続され、前記電圧測定電極3a及び3bがインピーダンス測定電圧を測定する電圧測定部22に接続され、インピーダンス検出部23を成し、更に前記電流印加部21及び電圧測定部22は各々制御部24に接続されて成る。また、前記制御部24は、前記角度センサ5、表示部10及び操作部11に接続し、更に各種演算式や測定及び設定データ等を記憶しておく記憶部25、前記各種体組成に関する指標の演算などを行なう演算部26及び体組成測定装置1に電力を供給する電源27を接続して構成している。
【0034】
また図示しないが、前記電流印加部21の内部には、電流印加電極2a及び2b間に印加する電流の周波数を切り替える周波数切替部を備え、複数の所定の周波数によりインピーダンス測定を可能とするものである。
【0035】
ここで、体組成は周波数に依存して電流経路が変化する特性を有していることから、前記複数の所定の周波数によるインピーダンス測定を行なうことにより、単一の周波数によるインピーダンス測定に比べて体組成に関する指標を精度良く算出可能となる。この測定原理を図5乃至図7を用いて説明する。図5は腹部前面の電流経路を示す電気的等価回路であり、図6は図5の等価回路に低周波電流を印加した場合の電流経路を示す図であり、図7は図5の等価回路に高周波電流を印加した場合の電流経路を示す図である。まず図5によると、腹部皮膚表面に接触した電流印加電極2a及び2b間に電流が印加され、電圧測定電極3a及び3b間において電圧が測定される場合において、各電極が皮膚表面に接触した際の接触インピーダンスRc1、Rc2、Rc3及びRc4が発生する。また各電極間は、皮膚表面に相当する抵抗Rs1、Rs2及びRs3なる抵抗群があり、更に内部の皮下脂肪層においては、皮下脂肪組織の特性を踏まえ、各電極各々に、C1とRf1、C2とRf2、C3とRf3及びC4とRf4からなるコンデンサ成分と抵抗成分との並列回路が並ぶ。更に前記皮下脂肪層を超えた内部には、細胞膜に相当するコンデンサ成分Cm、細胞内液に相当する抵抗Ri及び細胞外液に相当する抵抗Reとを備えた公知の電解質組織からなる腹筋層を成し、腹部前面の等価回路を構成している。
【0036】
なお、本実施例においては、前記低周波電流は、周波数が4kHz以上12.5kHz以下の範囲のうちのいずれかの周波数であるとして、5kHzの周波数の電流を用いるものとし、高周波電流は50kHz以上512kHz以下の範囲のうちのいずれかの周波数であるとして、50kHzの周波数の電流を用いるものとした。
【0037】
前記低周波電流を印加した場合、電流経路は図6に示すように皮下脂肪層において、コンデンサ成分C1、C2、C3及びC4に電流が流れず、抵抗成分Rf1、Rf2、Rf3及びRf4に流れ、前記腹筋層においても、前記コンデンサ成分Cmに電流が流れず、前記細胞外液抵抗Reにのみ電流が流れる。これにより、皮下脂肪組織を反映したインピーダンスZlowが得られる。
【0038】
また、前記高周波電流を印加し場合、電流経路は図7に示すように皮下脂肪層において、コンデンサ成分C1、C2、C3及びC4に電流が流れることから、抵抗成分Rf1、Rf2、Rf3及びRf4には流れない。また前記腹筋層においては、コンデンサ成分Cmに電流が流れることから、細胞内液抵抗Ri及び細胞外液抵抗Reを含む腹筋層全体に電流が流れる。これにより、皮下脂肪組織を反映せず、腹筋層のみを反映したインピーダンスZhighが得られることになる。
【0039】
よって、前記Zlow及びZhighに基づき、体組成に関する指標を精度良く求めることが可能となる。
【0040】
また、姿勢変化による腹部形状の変化に伴い、前記皮下脂肪層と腹筋層の抵抗成分が変化していくため、測定姿勢において腹部の形状に影響を与える上体の角度変化を前記角度センサ5を用いて検出し、角度補正を加えた体組成に関する指標を演算する回帰式を用いて被験者の体組成を精度良く測定するものである。
【0041】
ここで、前記前記記憶部25は前記回帰式を予め記憶しておくものであり、体組成に関する指標(本実施例においては、皮下脂肪厚、腹筋厚、皮下脂肪面積、内臓脂肪面積、腹部全脂肪面積、体幹部脂肪率及び全身脂肪率であるとする)に対して、各々次に示す各種の回帰式((1)〜(7)式)を記憶する。
【0042】
皮下脂肪厚=11.1×Zlow−0.31×Zhigh+0.02Θ・・・(1)
【0043】
皮下脂肪面積=23.1×Zlow−19.3×Zhigh+0.01Θ・・・(2)
【0044】
腹筋厚=−0.029×Zlow+0.1×Zhigh+0.01Θ・・・(3)
【0045】
内臓脂肪面積=−4.1×Zlow+28.1×Zhigh+5.36Θ・・・(4)
【0046】
腹部全脂肪面積=28.6×Zlow−14.3×Zhigh+0.02Θ・・・(5)
【0047】
体幹部脂肪率=70.1−0.49×Zlow−6011×(1/Zhigh)+0.03Θ・・・(6)
【0048】
全身脂肪率=0.85×(70.1−0.49×Zlow−6011×(1/Zhigh)+0.03Θ)+1.1
【0049】
なお、上記の体組成演算式((1)から(5)式)により求められる皮下脂肪厚、皮下脂肪面積、腹筋厚、内臓脂肪面積及び腹部全脂肪面積は、図8から図12に示すように、一般的に推定精度が良いとされるCT(Computed Tomography)スキャン法により求めた皮下脂肪厚、皮下脂肪面積、腹筋厚、内臓脂肪面積及び腹部全脂肪面積との相関性が高く、又、上記の体組成演算式((6)及び(7)式)により求められる体幹部脂肪率及び全身脂肪率は、図13及び図14に示すように、一般的に推定精度が良いとされるDXA(Dual X−ray absorptiometry)法により求めた体幹部脂肪率及び全身脂肪率との相関性が高い。ただし、上記各体組成演算式((1)から(7)式)は、発明者らの実測及び回帰分析結果から得られた一例を示したものであり、数値及び数式の構成は必ずしもこれに限ったものではない。
【0050】
本発明の体組成測定装置1の一連の動作を、図15のフローチャートを用いて説明する。
【0051】
まず、操作部8に配した電源スイッチにより電源オンすると、ステップS1において、体組成測定装置1の初期設定がなされると共に、表示部7に身体への装着を促すメッセージを表示する。すなわち、腹部インピーダンス測定部を腹部所定の位置にあてがい、角度センサ10を胸部に貼り付けるようメッセージを表示する。続くステップS2においては、前記装着がなされ、操作部8に配した測定開始スイッチが押されたかどうか判断される。前記測定開始スイッチが押されていなければNOに進み前記メッセージの表示を繰り返す。
【0052】
スイッチが押されるとYESに進み、ステップS3において、まず低周電流を用いた腹部インピーダンス測定が行なわれる。すなわち、制御部24により電流印加部21内の周波数切替部を制御し、予め設定されてある低周波電流を電流印加電極2a及び2b間に印加し、電圧測定電極3a及び3bを用いて電圧測定部22により電圧を測定し、演算部26においてインピーダンスが演算され、Zlowを得て、記憶部25に記憶される。続いてステップS4において、前記S3と同様にして、高周波電流を用いた腹部インピーダンス測定が行なわれ、Zhighを得て、記憶部25に記憶される。
【0053】
インピーダンス測定の終了と共にステップS5において、前記角度センサ10を用いて、水平方向を0度とした場合の上体の角度Θが検出され、コード6を介して前記操作ボックス9内の回路基板に送られ、制御部24を介して記憶部25に記憶される。
【0054】
ステップS6からステップS12は、測定した前記Zlow、Zhigh及び角度Θを用いて、前述の回帰式((1)〜(7)式)に基づき各種体組成に関する指標を演算するステップである。
【0055】
すなわち、ステップS6において、制御部24により記憶部25から皮下脂肪厚演算用回帰式((1)式)を読み込み、演算部26において、測定した前記Zlow、Zhigh及び角度Θを代入して皮下脂肪厚を求め、記憶部25に記憶する。
【0056】
以降ステップS7からステップS12まで前記ステップS6と同様にして、ステップS7において皮下脂肪面積を求め、ステップS8において腹筋厚を求め、ステップS9において内臓脂肪面積を求め、ステップS10において腹部脂肪面積を求め、ステップS11において体幹部体脂肪率を求め、ステップS12において全身体脂肪率を求め、前記各ステップ毎に記憶部25に記憶する。
【0057】
ステップS13においては、前記算出した皮下脂肪面積と内臓脂肪面積との差分より、脂肪型を判定し記憶部25に記憶する。例えば、X=皮下脂肪面積−内臓脂肪面積として、X>0の場合皮下脂肪型と判定され、X≦0の場合内臓脂肪型と判定する。
【0058】
ステップS14において、表示部7に前述の測定及び演算結果を表示する。すなわち、前記演算により記憶部25に記憶した、脂肪型、皮下脂肪厚、皮下脂肪面積、腹筋厚、内臓脂肪面積、腹部全脂肪面積、体脂肪率及び体幹部脂肪率などを表示する。
【0059】
ステップS15において、予め設定された一定時間内に前記操作部8に配された測定スイッチが押されたか否かが判断され、スイッチが押されると、再測定すると見なし再びステップS1に戻る。また、一定時間スイッチが押されなかった場合、自動で電源をオフし前述の一連の動作を終了する。
【0060】
なお、本実施例においては、半U字型アーム部7a及び7bは、腹部横幅を挟み込むように腹部の大きさに合わせて摺動可能な機構を有することにより、前記電流印加電極2a及び2b間と電圧測定電極3a及び3b間の距離も腹部の大きさに合わせて可変とすることにより、ウエストや腹部横幅距離などによる腹部の大きさに対する電極接触位置の補正を不要としたが、前記腹部の大きさを別途入力し、各体組成に関する指標の算出においては前記腹部の大きさの補正項を加えた回帰式を記憶部25に記憶しておき、前記実施例と同様に用いることにより、図16及び図17に示すように、腹部の大きさによらず前記電極間距離を可変させない構成としても良い。また、ここでは図示しないが、腹部の横幅に合わせて可動する前記半U字型アーム部7a及び7bの移動距離を公知のエンコーダ等を用い自動計測して入力する構成とし、前記電極2a、2b、3a及び3bを半U字型アーム部7a及び7bとは別途、前記電極間距離が可変しないよう固定して構成しても良い。
【0061】
また、腹部前面に密接させるため、図16に示すアーム部107を柔軟弾性部材で形成しても良いし、図17に示すように、アーム部57a及び57bがアーム部57cに対して各々回転軸50a及び50bを軸に回動し、アーム部57a及び57bに各々配した電流印加電極52a及び52bを腹部に押し付ける方向(図17中矢印方向)に力が作用するバネ51a及び51bに抗して押し付けることにより、腹部形状に合わせて適切に電極の接触角度をあわせることも可能である。
【0062】
本実施例においては、2つの周波数域の電流により得られる2つのインピーダンスZlow及びZhighに基づいて体組成に関する指標を算出したが、1つの周波数によるインピーダンスのみであっても、予め体組成に関する指標を算出する回帰式を前記1つの周波数に基づいて設定しておくことにより対応可能である。
【0063】
角度センサ5は、胸部に貼り付けるものとしたが、例えば、ストラップなどで首からぶら下げる構成でも良く、ストラップの長さを調整することにより、胸部の所定の位置に前記角度センサ5が置かれるようにしてもよい。また、前記角度センサ5は上体の角度を検出可能に位置させれば良く、胸部に限定されることはない。また、身体に限らず、測定時被験者の上体を起こしているリクライニングベッドや座椅子などの背当て部分に貼り付けても良い。更に、前記角度センサ5を用いなくとも、例えばリクライニングベッドの背上げ角度を操作部11から数値入力しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施例の体組成測定装置の外観図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】ギャッチアップ座位姿勢における本実施例の体組成測定装置の使用状態の略図である。
【図4】本実施例の体組成測定装置のブロック図である。
【図5】腹部前面の電流経路を示す電気的等価回路モデルである。
【図6】図5の等価回路の低周波電流を印加したときの電流経路を示す図である。
【図7】図5の等価回路の高周波電流を印加したときの電流経路を示す図である。
【図8】CTスキャン法により求めた皮下脂肪厚と回帰式から求めた皮下脂肪厚との相関関係を示すグラフである。
【図9】CTスキャン法により求めた腹筋厚と回帰式から求めた腹筋厚との相関関係を示すグラフである。
【図10】CTスキャン法により求めた皮下脂肪面積と回帰式から求めた皮下脂肪面積との相関関係を示すグラフである。
【図11】CTスキャン法により求めた内臓脂肪面積と回帰式から求めた内臓脂肪面積との相関関係を示すグラフである。
【図12】CTスキャン法により求めた腹部全脂肪面積と回帰式から求めた腹部全脂肪面積との相関関係を示すグラフである。
【図13】DXA法により求めた体幹部脂肪率と回帰式から求めた体幹部脂肪率との相関関係を示すグラフである。
【図14】DXA法により求めた全身脂肪率と体幹部脂肪率との相関関係を示すグラフである。
【図15】本実施例の体組成測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図16】本発明の体組成測定装置の別の外観構造を示す図である。
【図17】本発明の体組成測定装置の別の外観構造を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 体組成測定装置
2a 電流印加電極
2b 電流印加電極
3a 電圧測定電極
3b 電圧測定電極
4 腹部インピーダンス測定部
5 角度センサ
6 コード
7a 半U字型アーム部
7b 半U字型アーム部
8a 把持部
8b 把持部
9 操作ボックス
10 表示部
11 操作部
21 電流印加部
22 電圧測定部
23 インピーダンス検出部
24 制御部
25 記憶部
26 演算部
27 電源
47 アーム部
50a バネ
50b バネ
51a 回転軸
51b 回転軸
57a アーム部
57b アーム部
57c アーム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1対の電流印加電極及び電圧測定電極を用いて腹部のインピーダンスを測定する腹部インピーダンス測定手段と、
ギャッチアップ座位時の上体の角度を入力する角度入力手段と、
少なくとも前記腹部インピーダンスと前記上体の角度とに基づいて体組成に関する指標を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする体組成測定装置。
【請求項2】
前記腹部インピーダンス測定手段は、前記電流印加電極及び電圧測定電極間の距離を腹部の大きさに則した所定範囲に接触させるように可変する電極支持手段を備えて成ることを特徴とする請求項1記載の体組成測定装置。
【請求項3】
前記腹部インピーダンス測定手段は、前記電流印加電極及び電圧測定電極間の距離を固定して支持する電極支持手段を備え、腹部の横幅距離を入力する横幅距離入力手段とを更に有し、前記演算手段は、前記腹部インピーダンス、前記上体の角度及び前記横幅距離とに基づいて体組成に関する指標を演算することを特徴とする請求項1記載の体組成測定装置。
【請求項4】
前記角度入力手段は、ギャッチアップ座位時の上体の角度を計測して入力する角度センサを更に備えて成ることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の体組成測定装置。
【請求項5】
前記角度センサは、被験者の上半身の所定の部位に貼付することを特徴とする請求項4記載の体脂肪測定装置。
【請求項6】
前記角度センサは、被験者の首から吊り下げて上半身所定の部位に位置させることを特徴とする請求項4記載の体脂肪測定装置。
【請求項7】
前記腹部インピーダンス測定手段は、前記電流印加電極に印加する交流電流の周波数を切り替え、高周波数領域及び低周波数領域から少なくとも各1周波数を含む複数の周波数によりインピーダンス測定を行なう周波数切り替え手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至6の内いずれか一項に記載の体脂肪測定装置。
【請求項8】
前記体組成に関する指標は、皮下脂肪厚、皮下脂肪面積、腹筋厚、内臓脂肪面積、腹部全脂肪面積、体幹部脂肪率、全身脂肪率及び皮下脂肪と内臓脂肪との割合の内、少なくとも一つであることを特徴とする請求項1乃至7の内いずれか1項に記載の体脂肪測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2006−81601(P2006−81601A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266866(P2004−266866)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000133179)株式会社タニタ (303)
【Fターム(参考)】