説明

体調改善支援システム

【課題】登録された利用者が抱えた慢性の体調不良を、家庭内において改善可能な、通信手段を利用した改善支援システムを提供する。
【解決手段】多くの体調不良は軽度の慢性的なもので、簡便な器具を用いて、ストレッチ体操を併用する等により改善できることが多い。本システムは利用者に適したガイダンスを、利用者からのリクエストに応じて、中央処理装置から通信ネットを介して、利用者の手元にあるパーソナルコンピュータや携帯電話等の端末装置に提供するものである。更に光線治療器との組合せることにより、一層の治療効果が得られる。一例として、低出力の光線治療器具を用いて人体頚部に光線を照射して頭部の血行を改善することにより、体調不良を解消できる。また美肌回復トリートメントにも適用できる。更に利用料金を通信費用として課することにより、料金の決済を簡便化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明に関わるシステムの利用者が、日常的に抱える慢性の肩こりや疲れ等の不定愁訴を改善してQOL(Quality Of Lifc:生活の質)の向上を図るためのシステムであり、ネットワークを使って、利用者自らが実施することが可能な施療のガイダンスの送信から、利用代金の決済までを簡便にできるようになした体調改善支援システムを提供するものである。更には体調不良の改善効果に優れ、かつ安全な治療法である光線治療を、在宅で可能にするものである。なお本発明で言う体調不良(不全)とは、いわゆる不定愁訴以外にも打身や捻挫や創傷の回復治療を含み、更にはニキビやシミ・アザの除去や肌の若返り化等、内面的・外面的を問わず、利用者が自分の身体について何かの異常・不具合を感じている点を総称するものである。また体調改善支援システムとは、在宅で利用者が自ら実施可能な、軽度ではあるが治療期間を要する不具合の治療や美容回復トリートメントを言い、専門医師による治療や手術が必要とされる疾病的なものは含まれない。
【背景技術】
【0002】
社会の高度化や高齢化に伴い、肩こりや疲れ、いらいら等の不定愁訴を抱える人が増えている。また更には皮膚の老化等の身体的な不具合の改善を希望する人も増えている。これらに対してネットワークを利用して改善ガイダンスを提供しようとする試みがなされてきた。例えば特許文献1では、利用者の健康管理に関わる情報をデータ処理センターで解析し、その解析結果に医師の判断を加えて利用者に健康指導を行う健康管理システムが提示されている。このシステムにおいては、医師を有する医療機関とデータ処理センターと利用者との間で通信ネットワークを構築し、この通信ネットワークを利用して利用者の健康管理を行うことを特徴としている。
【特許文献1】特開2002−163369号公報。
【0003】
また利用者のQOLの向上を図るものとして、特許文献2では、利用者端末と通信する通信手段と、利用者端末から送られて来る個人情報及びトレーニングに関するデータを蓄積するデータベース手段と、利用者端末から送られて来るトレーニング結果情報をデータベースに蓄積されたデータを参照して分析し、分析結果に基づいて次回のトレーニングメニューを作成し利用者端末に送るメニュー作成手段と、各手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするトレーニングシステムが開示されている。
【特許文献2】特開2002−197193号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、多くの体調不全は早急の処置を必要とするものではないが、回復に期間を要するものである。一方簡便な改善器具を使用し、場合によっては軽度のストレッチ体操等を併用して利用者自らが処置すれば、在宅のままで回復できるレベルのものであることが多い。
【0005】
これに対し前述の特許文献1にみられる医療機関を介するシステムは、毎回の指導に医師の判断を必要とする慢性的な疾病を対象としており、時間的或いは経済的な負担を強いるものである。従って利用者は日常生活に高度の不都合を感じる病人でない限り利用し難い。また特許文献2は専門のトレーニング事業者の管理下で専用のトレーニング器具を使用するシステムであり、時間的あるいは経済的な制約に加え、高齢者には利用し難いものである。本発明は上述した旧来のシステムと異なり、軽度の不具合を抱えた利用者に対し、在宅のままで時間的・経済的制約を伴わずにQOLを改善できるシステムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(請求項1の手段)本発明の体調改善支援システムは、利用者の手元に置かれ、利用者の体調に関する情報を送信しかつ体調を改善するための体調改善ガイダンス(以降ガイダンスと呼ぶ)を受信するための端末装置と、前記ガイダンスを作成する中央処理装置と、前記端末装置と前記中央処理装置との間で双方向にデータを送受信する通信手段からなり、利用者から送信された体調に関する前記情報を前記中央処理装置に記憶内蔵された手順で解析し、解析された結果が予め決められた一定水準以内であれば前記中央処理装置に予め記憶内蔵されたデータを基に利用者に適した前記ガイダンスを作成し、前記通信手段を介して前記端末装置に送信することを特徴として構成される。
【0007】
(請求項2の手段)また本発明の体調改善支援システムは、前記端末装置がパーソナルコンピュータ(以降パソコンと呼ぶ)であり、前記通信手段は通信ネットワークであり、利用者は予め定められた方法により、前記中央処理装置と通信した回数および内容に応じて利用代金を電子決済されることを特徴として構成される。
【0008】
(請求項3の手段)また本発明の体調改善支援システムは、前記端末装置が携帯電話であり、前記通信手段は無線電話回線網であり、利用者は予め定められた方法により、前記中央処理装置と通信した回数および内容に応じて利用代金を電子決済されることを特徴として構成される。
【0009】
(請求項4の手段)また本発明の体調改善支援システムは、更に利用者の特定部位へ光を照射する低反応レベル光線治療(以降光線治療と呼ぶ)装置を含み、前記ガイダンスの内容が、前記光線治療装置への条件設定値を含むことを特徴として構成される。
【0010】
(請求項5の手段)また本発明の体調改善支援システムは、前記光線治療装置が、光を照射する半導体発光素子を有したプローブを備え、前記半導体発光素子は、低出力半導体レーザー素子或いは/及び発光ダイオード素子であることを特徴として構成される。
【0011】
(請求項6の手段)また本発明の体調改善支援システムは、更に前記光線治療装置が人体頚部に巻きつけるための装着バンドとそれに連結された光照射器とからなり、前記光照射器は前記プローブを有し、前記プローブは前記光線治療装置を人体頚椎に装着した状態で人体頚椎に向かって光を照射することを特徴として構成される。
【0012】
(請求項7の手段)また本発明の体調改善支援システムは、前記ガイダンスの内容が、更に利用者が実施する体操の画像を含むことを特徴として構成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、次のような優れた効果を発揮できる。
1.本発明の請求項1の発明によれば、利用者は治療或いは修復したい自分の不具合部位に最も適したガイダンスを、手元の端末装置を通して得ることができる。従って「病院に行く程でもないが、何か体調が慢性的にもう一つ」といった不定愁訴を抱える利用者は、在宅のままで適切な処置を実施することができる。
【0014】
2.本発明の請求項2の発明によれば、利用者は手元にあるパソコンによりインターネット等のネットワークを通してガイダンスを得ることができ、毎回の利用代金も事前に取り決めた方法で自動的に精算でき、利用者にとってもまたシステムの管理・運用機関にとっても決済を簡便に行うことができる。
3.本発明の請求項3の発明によれば、利用者は手元にある携帯電話を端末装置として利用でき、毎回の利用代金を通話料金に含める等の事前に取り決めた方法で自動的に精算できるため、2項と同様な利便性を得ることができる。
4.本発明の請求項4の発明によれば、簡便で治療効果が大きい低反応レベル光線治療を、自宅にいながら自分自身で施療することができる。
【0015】
5.本発明の請求項5の発明によれば、光線治療装置の発光素子は低出力半導体レーザー或いは/及び発光ダイオードからなるため、副作用や医療危険性の少ない光線治療を、利用者自ら容易に施療することができる。
6.本発明の請求項6の発明によれば、光線治療装置を利用者の頚部に装着して人体頚椎に光照射することができるため、本発明者が見出した後述の“中枢優先治療”を利用者が自ら施療することができる。
7.本発明の請求項7の発明によれば、利用者は簡易なストレッチ体操等の実施法を、端末装置上に表示された動画、アニメ、イラストあるいは漫画等の判り易い情報として入手できるので、上述の光線治療との併用により効率的な施療を実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の体調改善支援システムの実施形態の一例としての、不定愁訴改善支援システム20の全体構成を示す模式図である。
【0017】
図1において、当該システム20は利用者1とシステム運用機関2と中央処理装置3と双方向通信手段A4と医療機関5から構成される。利用者1は、当該システムの利用者である。システム運用機関2はシステム全体のオーガナイザーであり、中央処理装置3に記憶内蔵された診断手順(プログラム)や各種ガイダンスに関するデータや、システム全体の設計・管理・更新を実施する機関である。更にシステム運用機関2は、利用者1の適性を判断してシステムの会員に登録したり、利用料金の決済方法を設定したり、本システムに関与する医療機関5を選定・指導したり、必要な器具・装置を利用者に販売あるいは貸与する機関である。中央処理装置3は各種のプログラムやデータを記憶内蔵したコンピュータを中核としたデータ処理装置であり、例えば日常的な運営管理はシステム運用機関2からの委託により通信手段A4を管理する、インターネットプロバイダー等の組織が実施することもできる。
【0018】
双方向通信手段A4はデータの送信および受信が双方向で可能な通信手段で、例えば電話回線(インターネット、ISDN、ブロードバンド等)、CATV回線、その他の有線通信手段や、移動体通信(携帯電話、PHS、放送媒体、衛星電話等)、その他の無線通信手段がある。この中で特に、一般に普及しているパソコンによるインターネットや携帯電話の利用が便利であり、前者はプロバイダー等のデータ通信管理会社、後者はNTTドコモ等の携帯電話通信管理会社により管理・運用される。
【0019】
医療機関5は当該システムに不可欠なものではないが、中央処理装置3が「当該利用者は専門の医療機関を受診すべき。或いは具体的な処置について専門の医療機関のアドバイスを受けるべき」と判定した時に、利用者の端末に紹介する専門的な医療機関である。それに基づき利用者が訪院するもので、事前にシステム運用機関2により中央処理装置3に登録することができる。なお中央処理装置3が個々のガイダンス作成を作成するに際して、通信手段B6を介して医療機関5とデータをやり取りしてもよい。
【0020】
中央処理装置3との通信手段A4を介した各種データの双方向伝送は、利用者1の手元に設置される表示・入力用端末装置10によってなされる。表示用端末装置は液晶パネルやCRT等のディスプレーやプリンタ等の、情報を表示或いは印刷する装置である。これには一旦通信手段A4からの情報を受信し、適切な処理を経て改めて治療のための各種器具類へ出力するものも含み、中央処理装置3から発信された全ての情報を利用者1側が一旦受取るためのインターフェイス装置を総称する。入力用端末装置はキーボードやマウス(パソコンの場合)や操作キー(携帯電話の場合)である。また上記の治療器具類から施療結果データを中央処理装置3へ直接送信するための機能を有するものも含まれ、利用者1側からの全ての情報を中央処理装置3へ送信するためのインターフェイス装置を総称する。
【0021】
中央処理装置3のデータ記憶部11は典型的にはハードディスクであり、多数の利用者1の特性データ(過去に実施した治療結果データを含む)が記憶されている。また体調改善支援ガイダンス提示に先立って、まず利用者に質問する(中央装置から送信される)利用者の不定愁訴状況の具体的な問合せ事項や、種々の状況に対応した不定愁訴改善のためのガイダンスを作成するための基礎データが記憶されている。
【0022】
データ解析部12は、利用者から送信されてきた症状データや上記の間合せ事項に対する回答データを元に、プログラム部13に内蔵された各種処理プログラムの手順に従って、現時点の利用者の状況を診断・解析し、最も適するガイダンスを記憶部11の基礎データを基に編集・作成し、通信手段A4を介して端末装置10に伝送する。なおこの際、利用者に対して過去に送信したガイダンスやそれに基づいて実施された利用者の治療結果も参照される。
【0023】
図2は全体の操作手順や情報の流れを示すステップ図である。当該システムへの加入を希望する利用者1は、利用者登録100を行う。この時利用者の個人データ(各種の身体測定値、血液データ、過去の病歴、現在の症状や不具合箇所・内容等)や使用端末装置の種類(携帯電話、パソコン等)、更には費用の支払方法等の関連データを中央処理装置3へ送信する。これによりシステム運用機関2は、例えばパソコン利用の場合は、支払方法に関して電子決済の代行を委託する機関(図示せず)へ連絡する。上記の利用者の症状に関するデータ及び決済代行機関からの返答を基に、システム運用機関は「当該利用者はシステムへの会員登録が適切かどうか」を判断し、またこれらの情報がステップ101でデータ記憶部11に記憶される。
【0024】
登録を完了した利用者はガイダンスの提示を受けたい時に、利用者リクエスト102により当該システムに要求を出す。すると既にデータ記憶部11に記憶された利用者データに基づき、ステップ103において中央処理装置内で当該利用者に対する不定愁訴状況の問合せ事項が作成され、ステップ104において利用者の端末装置10に表示される。ステップ105において利用者は不定愁訴回答データを端末装置10で作成し、ステップ106で中央処理装置3に伝送する。
【0025】
中央処理装置では、返信されてきた上記不定愁訴回答データと、既にデータ記憶部11に内蔵されている個人データとを、プログラム部13の手順に基づいて、ステップ107に示すようにデータ解析部12で処理する。次いで、データ解析部12では解析処理結果を点数化するようになしておき、その点数に対応するガイダンスデータを前もってデータ記憶部11に作成しておき、上記解析処理結果に基づいてデータ記憶部11からデータを引き出して編集し、最も適するガイダンスをステップ108で作成し、ステップ109で通信手段A4を介して端末装置10に伝送することができる。利用者は端末装置10に表示された方法で、図1の光線治療装置30等の予め決められた治療器具・装置の装着や条件設定を実施し、ステップ110で施療する。更にはガイダンスに基づきストレッチ体操等の簡単な運動を実施する。施療実施結果はステップ111で中央処理装置へ伝送される。このデータはデータ記憶部11に記憶され、必要な場合は医療機関5に送信される。また次回のガイダンス作成時の参考データとされる。同時に当該システムが利用されたことを、中央処理装置3は決済代行機関へ自動的に連絡する。
【0026】
なおステップ107での状況解析において、「医療機関で個別に診断して貰った方がよい」と判断されれば、ステップ108で作成されるガイダンスの内容は応急の処置法と、接触すべき専門医療機関5の連絡先となる。この時医療機関5は、図1の通信手段B6を介して、当該利用者のデータを中央処理装置3から得ることもできる。また通信手段C7により、利用者1と医療機関5の間で双方向通信を実施できるようにしてもよい。情報の表示・入力用端末装置10には特別な制約はなく、パソコンや携帯電話等の既に利用者が保有しているものが利用できる。また中央処理装置との間でデータを双方向に通信できるものであれば、ゲーム機等の端末でもよいし、また当該システムのための専用の表示・操作端末であってもよい。
【0027】
システムの利用者はシステム運用機関との間で、登録に関わる費用を別途支払うことができる。システム利用料金の支払いは、周知の有料での情報取得の際の方法によることができる。例えば端末装置がパソコンの場合は、利用者はシステム運用機関から当該システムの運用・管理を委託されたプロバイダーと契約し、通信手段A4を介して中央処理装置3にアクセスした都度、あるいはガイダンスを得た都度に、電子決済によりプロバイダーに引き落とされる。また携帯電話の場合には、システムにアクセスした都度料金が積算され、毎月の通話料金と一緒に携帯電話の通信管理会社に支払われる。システム運用機関には、代金回収を代行したプロバイダーや携帯電話通信管理会社から料金が支払われる。
【0028】
更に利用者に提示されるガイダンスは、肩・腰・足等の簡便な運動が含まれることもある。特に後述する光線治療においては、これを頚部の運動と並行して実施すると、一層高い治療効果が得られる。この場合には端末装置に表示されるガイダンスには、漫画やアニメ等の静止画や動画等の画像データも含まれる。しかし端末装置が携帯電話であれば充分な指導が難しい。従ってこのような時には別途ビデオテープやDVD等の映像媒体を事前に利用者に配布し、その中から今回実施する体操の番号を携帯電話に指示し、利用者は指示された番号の映像を見て、該当する運動を実施することもできる。更に表示端末がパソコンである場合は、ガイダンスがパソコンの画面上に表示される装置の装着部位、装着方法や使い方に関する動画情報であることも含まれる。
【0029】
更に本発明に関わるシステム中に、図1に例示した低出力半導体レーザー素子或いは発光ダイオード素子からなる光線治療装置30を組み入れることができる。既に「人体が光を浴びると、酵素やホルモンが特定の波長の光によって刺激を受け、体内にダイナミックな反応を引き起こして生物学的な機能を向上することができる」ことは知られており(非特許文献1)、この優れた治療法を本システムに組み入れようとするものである。
【非特許文献1】ジェイコブ・リバーマン著、飯村大助訳「光の医学」日本教文社、平成12年5月25日、p.8。
【0030】
本発明者は、生体手術における組織を破壊・切除・焼灼するような高反応レベルのレーザー治療と違って、低反応レベルのレーザー照射によって生体細胞が活性化することを見出しており、低反応レベルレーザー治療(Low reactive Level Laser Trcatment:LLLT)と命名し、現在は国際的な慣用語となっている。このような低反応レベルのレーザー照射治療は、適切に施療されれば大きな効果を発揮する。一方眼への照射のみを回避し得れば、健全な生体部位に照射されても特別な副作用は無く、本質的に安全な治療法であるため、在宅での施療も可能である。このような光線治療装置は、発光素子の普及により安価に入手でき、かつその使用には高度のスキルを必要としない。
【0031】
光線治療において優れた効果を得るためには、装着部位や装着方法、また光の強度や照射時間について医療専門家からの適切なアドバイスを必要とする。上記から光線治療は本発明の体調改善支援システムへの組み込みに適しており、大きな効果が期待できる。本発明者は既にこの光線治療を発展させ、単色性、可干渉性、指向性に優れた低出力のレーザー光を内科的に頚部付け根に照射すると、全身の種々の部位で発生する痛みやコリ等の不快症状を改善できることを見出している(非特許文献2)。
【非特許文献2】大城俊夫著「中枢優先治療で慢性の痛みが治る」ごま書房、2002年7月27日、p.63−77。
【0032】
これは本発明者により「中枢優先治療」と名づけられているものであるが、全身のどの部位で発生した痛みも、それを感知するのは大脳皮質であり、また各部位に命令を下すのも大脳皮質であるということに基づく。更に慢性的に痛み等の不定愁訴を抱えている個人においては、それが普通の状態であると脳が誤認識しており、元の健康な状態に戻ろうとする働きを忘れているため、単に痛みを感じる部位を治療するだけでなく、この脳の作動を正常の状態にリセットしないと痛みはなくならないというものである。この理論に基づき、本発明者は鋭意研究した結果、頚部付け根にレーザー光を照射することによって頭の血行が促進されまた神経の伝達を改善できることを見出した。これは生体の中枢である頭部と全身を繋ぐ血管及び神経系統は全て頚部を通るという事実から見出したものである。
【0033】
図3に本発明のシステムに組み込まれた光線治療装置30の第一の実施例として、レーザー光照射器具50を示す。レーザー光照射器具50はL字型の携帯用器具である。利用者はグリップ部51を握って操作する。ヘッド部52内に半導体レーザー素子が収納されており(図示せず)、照射先端部53よりレーザー光が利用者の頚部付け根に向けて照射される。操作パネル部54には、電源スイッチや出力設定ダイアル、照射時間設定ダイアルが設けられている(図示せず)。またグリップ部51の前面には手元スイッチ55があり、利用者がレーザーの出力を一時的に停止することができる。ヘッド部52に収納された素子は例えばGaAlAs半導体レーザー素子であり、光の波長は400〜1400nmの可視光線から近赤外線領域である。特に近赤外線は体内でより深くまで光が浸透するため、照射効果の点から好ましい。レーザー素子の出力は20〜1000mWである。利用者は図1の表示端末装置10に表示されたガイダンスに基づき、操作パネル54内の電源スイッチ投入やダイアル設定を行い、表示端末装置10に表示されたイラスト図に基づいて頚部付け根を照射する。
【0034】
当該レーザー光照射器具50は、専門的なトレーニングを受講した利用者を対象としており、比較的高出力の器具である。これは頚の付け根以外の痛みやコリの発生部位にも照射する等により、早期に治療効果が得られるようになしたものである。一方図4に示す第二の実施例におけるレーザー光照射器具60は、本発明者による特許文献3の発明のものであるが、頚部装着専用であり低出力のレーザーを照射する。レーザー素子(図示せず)を内蔵した箱状のケースからなる光照射器63に、人体頚部61に装着するためのバンド62が取り付けられている。利用者は端末装置10に表示されたガイダンスに基づいて、照射器63に設けられた特性設定ダイアル類(図示せず)を設定する。これによりプローブ64からバンド62の内側にレーザー光が照射される。その結果人体頚椎に向かってレーザー光が体内に浸透し、頚椎動脈65の血行を改善し、大脳皮質に作用して痛みに対する脳の認識を改善する。
【特許文献3】特願2005−060347号。
【0035】
更に当該器具60では利用者の両手は開放されるため、次の新たな優れた効果をもたらす。まずこり等を発生している不具合部位のマッサージ等の処置が利用者自身で可能になる。更に頚部の回転・前後・左右運動が自由になるため、適切な頚部のストレッチ体操と併用することが可能になる。これにより頚椎動脈を取り囲む筋肉の硬直が緩和されて当該動脈への圧迫を取り除き、一層血行の改善を図ることができる。また頚椎動脈血管を拡張できることにより、発痛物質を取り除き易くなる。更には運動により頚椎間が拡大することにより、神経系統への圧迫も解除できる。このストレッチ体操の方法や内容も、利用者が抱える不定愁訴に対応するものが中央処理装置3内で選択され、利用者の端末装置10に、静止画或いは動画として表示されるため、利用者は正しい手順で体操を実施できる。
【0036】
当該頚部照射器具60に使われるレーザー素子は、例えばGaAlAs半導体レーザー素子であり、光の波長は400から1400nmの可視光線あるいは近赤外線である。出力は0.1〜5mWと、プレゼンテーションで使用されるレーザーポインタ並みの低レベルである。更に頚部照射器具60は、当該器具が頚部に装着され皮膚に正しく圧着した時のみレーザー光を出射するようにすれば、万一誤ってレーザー光が利用者の眼に入る危険を回避することができる。そのために装着を確認できる検知スイッチ(図示せず)を設けられている。例えば照射プローブ64の近傍および/またはバンド62の内部に皮膚との接触スイッチを設けても良い。或いはバンド部62の両端部に互いに連結可能なマジックテープのような連結部66を設け、該連結部の各々にフックボタンのような構造の電気端子を取付け、両端部が結合された時に電気端子も接触して導通が得られるようになしても良い。或いは装着バンド62は長さ方向に伸縮性のある素材とし、その両先端部はバックルなどによるオス・メス構造の連結部として、オス側のプラグをメス側のジャックに差し込んで相互を機械的に連結させた時、同時に電気的な導通が得られるようにすることもできる。これにより検知スイッチが作動して頚部への装着が確認された時のみレーザー素子を照射させることができる。
【0037】
更に第三の実施例として、上記レーザー素子に代わって発光ダイオード素子を用いることができる。特許文献4は本発明者によるものであるが、照射光の出力ピーク波長が400〜1400nm、スペクトル半値幅が45nm以下、照射光の指向半値角が20度以下、かつ光出力値が3〜10mWであることを特徴とする発光ダイオードを用いた光線治療装置である。発光ダイオードからの照射光はレーザー光に比べて非干渉性でかつ指向性が低いため、人体頚椎へ到達できたエネルギーレベルとしては低くなる。しかし近年利用可能になった高輝度発光ダイオードを用いれば、照射エネルギーレベルを向上させてこれをカバーすることができる。また逆に光が散乱することを利用して適切な拡散角度を有するものを選定すれば、新たな効果を得ることができる。何故なら前述したように当該治療は頚部のストレッチ体操と併用することが望ましいが、その時照射プローブ64の光出射方向がずれる惧れがある。一方発光ダイオードからの光は適度に拡散するため、依然頚椎を射程範囲内に捉えることができる。更に光照射素子として発光ダイオード素子を利用すれば、万一光が人の眼へ照射された時のダメージを無くすことも可能となる。これにより専門医療従事者によるレーザー光線治療並みの効果を、利用者自身が家庭において安全に施療できることとなり、本発明に関わる体調改善支援システムの有効性が更に優れたものとなる。
【特許文献4】特願2005−182550号。
【0038】
更に第二の実施例の頚部照射器具60に代わるものとして、本発明者による別の特許文献5のレーザー治療装置を組み込むことも可能である。これを第四の実施例として図5に示すが、同様に中枢優先説に基づくものであり、利用者の頭部に装着されるヘッドギア的な装着具201である。施療の基本となる前頭部と後頭部と後頚部及び耳部の、適切な治療ゾーンにレーザー光を照射するものである。これにより頭部血管の血流が促進されて脳全体が活性化し、また神経を正常化できる。
【特許文献5】特開2003−225313号公報
【0039】
図5は頭部装着具201の実装外観図で、(A)図は右側面図、(B)図は正面図である。図において、200は利用者の頭部、202は前頭部用治療バンド、203は後頭部用治療バンド、204は後頸部用治療バンド、205は耳部用治療バンド、206は鼻部用治療バンドであり、これらのバンドの内側(人体頭部との接触面)には、内側に向けてその先端よりレーザー光を出射する、1個又は複数個の半導体レーザー素子を有した治療用プローブ(図示せず)が配設されており、利用者頭部の各々の領域にレーザー光を照射する。これらのバンドは、図に示すように適切な締付けベルト類207により相互に結合され、利用者の頭部200へ固定される。211は制御信号用ケーブルを示し、制御装置(図示せず)からの信号を受ける。この制御装置には各種の設定ダイアルやスイッチが配設されており、端末装置10に表示された情報に基づき、利用者は治療に先立ちレーザーを照射すべき治療用プローブ(或いは治療バンド)の選択やそのエネルギーレベル、照射時間の設定を行う。なおこのプローブが配設された各種治療用バンドからなる頭部装着具201は、上記の頭部部位に限定された固定的なものではなく、利用者の症状に合致させて、複数のバンドの中から適切なものを組合せて構成させることもできる。
【0040】
図6に新たな第五の実施例を示すが、本発明者によってなされた特許文献6の低反応レベル光健康器具301を当該システム20に組み込むものである。当該器具301はフレキシブルな基板302と、その基板に支持された複数個の発光ダイオード素子303から構成され、全ての発光ダイオード素子303で面状マトリックス304を構成する。利用者は当該器具301を、端末装置10の指示に基づいて、膝等の患部等に巻き付けて治療することができる。更に面状マトリックス304は異なった光波長を持つ複数種の発光ダイオード素子303で構成することができる。異なる波長の光はそれに対応した効果を生体にもたらすことが知られており、例えば赤色光は皮下にまで浸透して真皮細胞に直接作用し、コラーゲンの生成を促進して細胞の若返りを図ることが知られている。また黄色光は細胞再生を促進する働きを有し、青色光は消炎効果を有する。そのため利用者から送信された情報に基づき、中央処理装置3は照射すべき発光ダイオード素子の色の種類や照射時間・強度を端末装置10に表示する。これに基づき利用者は各種条件を制御装置(図示せず)に設定し、これらの設定信号はケーブル305を経て、個々の発光ダイオード303を制御する。
【特許文献6】特開2001−187159号公告。
【0041】
更には上述の説明から容易に理解されるように、本発明に関わるシステムの狙いは、安全性に優れかつ利便性の高い光線治療を在宅により施療しようとするものであり、その対象とするものはこれまでに挙げて来た不定愁訴等のコリや痛みを発生している患部への回復治療に限らない。図7は第六の実施例を示すが、特許文献7に示す本発明者による顔面等の美肌回復トリートメント装置401も本発明のシステムに組み込むことができる。
【特許文献7】特願2005−112690号。
【0042】
図7は美肌回復トリートメント装置401の正面図であり、図8は図7におけるX−X断面図である。本装置は内側に多数の発光ダイオードを配した半円柱状の照射本体402と縦フレーム404で構成される。本体402は縦列配置された複数列の横フレーム403からなり、横フレーム403は縦フレーム404によって支持されて一体構造をなす。各々の横フレーム403の最内層には透明カバーで保護された複数個の発光ダイオード407が横直線状に配列されたフレキシブルアレイを有する。従って本体402の内面は縦横複数個の発光ダイオードからなる面状発光体を形成し、装置401の内側に挿入された利用者405の顔面に発光ダイオードからの光を照射する。横フレーム403は例えば湾曲されたアルミニウム材からなる基板408を最外層に有し、これはダイオードアレイの支持体であると同時に、発光ダイオードからの熱の冷却機能を兼ねる。個々の横フレームの間には間隙406が設けられており、この間隙406を通して本体内部に流入する空気と、装置401の下面から装置内面を上昇する空気の自然対流で、発光ダイオード及び利用者の顔面を冷却する。更に利用者は間隙406から前部を透視できるので閉塞感を感じない。従って在宅での美肌回復トリートメントを可能にする。
【0043】
本装置の一つの使用形態では、全ての発光ダイオードは赤色光で構成される。赤色光は皺や染みの改善等の美肌効果を有する。またニキビの治癒には青色光が有効なことが見出されている。このように異なった波長の光は異なった美容効果を及ぼす。従って図7の装置401を複数種の波長の発光ダイオードで構成することもできる。この時本発明のシステム20により、利用者はガイダンスを端末装置10から得、それに従って当該装置401の制御装置(図示せず)を設定すれば、在宅で望みの美肌回復トリートメントを得ることができる。このように、ある程度の期間にわたって、1回当り十数分間に亘って顔面への光照射を受けるが、誤操作による利用者への危険性自体は小さい美肌回復トリートメントも、当該システムは適した施療方法である。
【0044】
なお図1において、利用者1が端末装置10を使って中央処理装置3へ送信するデータは、文字情報に制限されない。例えばディジタルカメラで写した利用者の顔面映像写真を、パソコンを通して中央処理装置3に送信することができる。また携帯電話で撮影した患部等の写真を送信してもよい。この時中央処理装置3は既に内蔵されたソフトウェアによりこの画像情報を自動処理してガイダンスを作成することが出来るが、別途映像が送信されたことを受けて予め登録された医療機関5映像データを転送してコメントを得、それを含めたガイダンスを端末装置10に表示すれば、治療の一層の向上を図ることができる。
【0045】
上記の各種の光線治療装置は利用者に販売してもよいが、システムへの登録時に貸与することもできる。この時には、利用代金は毎月の通信費用に上乗せして利用者から回収することができる。
【0046】
また上述した光線治療装置の実施例における各器具・装置類の条件設定は、利用者の手を介することなく、別途専用の端末装置を用いて、中央処理装置3から直接設定されるようにしてもよい。更にはたとえ端末装置であっても、利用者が一つ一つ条件設定する煩雑さを避けることもできる。例えばパソコンへ送信されたガイダンスを、パソコンの入出力ポートに挿入されたUSB(ユニバーサル・シリアル・バス)で一旦受け、このUSBをパソコンから取り外して図3のレーザー光照射器具50の挿入端子56に装着し、内蔵された読取装置でUSBの内容を読み出し、動作条件を設定するようにしてもよい。このような装置を用いれば利用者を介さないため、レーザー出力値のプログラム制御等の木目細かい器具制御を、誤りなく実施することが可能になる。また携帯電話自体にレーザー光を照射する機能を持たせることにより、端末装置と光線治療装置を一体化させてもよい。またレーザー照射部と制御部を物理的に分離し、制御信号を無線により制御部から照射部へ送るようにしてもよい。このように機能を分離すれば、例えば図4の光照射器63を一層小型・軽量化でき、利用者にとっての自由度をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】 本発明に関わる体調改善支援システムの一例としての、不定愁訴改善システムの全体構成を示す図である。
【図2】 不定愁訴改善システムの基本動作の流れを示すステップ図である。
【図3】 本発明のシステムで使用される、光線治療装置の第一の実施例である。
【図4】 本発明のシステムで使用される、光線治療装置の第二の実施例である。
【図5】 本発明のシステムで使用される、光線治療装置の第四の実施例である。
【図6】 本発明のシステムで使用される、光線治療装置の第五の実施施例である。
【図7】 本発明のシステムで使用される、光線治療装置の第六の実施例である。
【図8】 図7のX−X断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 利用者 2 システム運用機関
3 中央処理装置 4 通信手段A
5 医療機関 10 表示・入力用端末装置
11 データ記憶部 12 データ解析部
13 プログラム部 20 不定愁訴改善支援システム
30 光線治療装置 50 レーザー光照射器具
53 照射先端部 54 操作パネル部
60 頚部照射器具 61 人体頚部
62 バンド部 63 光照射器
64 プローブ 65 頚椎動脈
200 頭部 201 頭部装着具
301 低反応レベル光健康器具 401 美肌回復トリートメント装置
402 本体 403 横フレーム
405 利用者 406 間隙
407 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の体調に関する情報を送信しかつ体調を改善するための体調改善ガイダンスを受信するための端末装置と、前記体調改善ガイダンスを作成する中央処理装置と、前記端末装置と前記中央処理装置との間で双方向にデータを送受信する通信手段からなり、利用者から送信された体調に関する前記情報を前記中央処理装置に記憶内蔵された手順で解析し、解析された結果が予め決められた一定水準以内であれば前記中央処理装置に予め記憶内蔵されたデータを基に利用者に適した前記体調改善ガイダンスを作成し、前記通信手段を介して前記端末装置に送信することを特徴とする体調改善支援システム。
【請求項2】
前記端末装置がパーソナルコンピュータであり、前記通信手段は通信ネットワークであり、利用者は予め定められた方法により、前記中央処理装置と通信した回数および内容に応じて利用代金を電子決済されることを特徴とする請求項1記載の体調改善支援システム。
【請求項3】
前記端末装置が携帯電話であり、前記通信手段は無線電話回線網であり、利用者は予め定められた方法により、前記中央処理装置と通信した回数および内容に応じて利用代金を電子決済されることを特徴とする請求項1記載の体調改善支援システム。
【請求項4】
前記体調改善支援システムが、更に利用者の特定部位へ光を照射する低反応レベル光線治療装置を含み、前記体調改善ガイダンスの内容が、前記低反応レベル光線治療装置への条件設定値を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の体調改善支援システム。
【請求項5】
前記低反応レベル光線治療装置が、半導体発光素子を有したプローブを備え、前記半導体発光素子は、低出力半導体レーザー素子或いは/及び発光ダイオード素子であることを特徴とする請求項4記載の体調改善支援システム。
【請求項6】
前記低反応レベル光線治療装置が、人体頚部に巻きつけるための装着バンドとそれに連結された光照射器とからなり、前記光照射器は前記プローブを有し、前記プローブは前記光線治療装置を人体頚部に装着した状態で人体頚椎に向かって光を照射することを特徴とする請求項5記載の体調改善支援システム。
【請求項7】
前記体調改善ガイダンスの内容が、更に利用者が実施する体操の画像を含むことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の体調改善支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−252506(P2006−252506A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241802(P2005−241802)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(399098266)
【Fターム(参考)】