余剰霧化塗料捕集システム
【課題】水などの液体を用いることなく、排気体に含まれる余剰霧化塗料を効率よく捕集することができる余剰霧化塗料捕集システムを提供すること。
【解決手段】塗装室4の塗装空間3に自動車部品2が収納され、塗装機13から塗料ミストP1を噴射することにより自動車部品2の塗装が行われる。塗装空間3において自動車部品2に付着しなかった塗料ミストP1を含む汚染空気は、空気集合部材21により集合されて増速された後、排気用配管22から塗料捕集器23に向けて排出される。塗料捕集器23は、排気用配管22から排出された汚染空気が略直角に衝突しうる底部25と、さらにその底部によって偏向された汚染空気の気流に対し略直角になるよう折り返された側壁26とを有する。
【解決手段】塗装室4の塗装空間3に自動車部品2が収納され、塗装機13から塗料ミストP1を噴射することにより自動車部品2の塗装が行われる。塗装空間3において自動車部品2に付着しなかった塗料ミストP1を含む汚染空気は、空気集合部材21により集合されて増速された後、排気用配管22から塗料捕集器23に向けて排出される。塗料捕集器23は、排気用配管22から排出された汚染空気が略直角に衝突しうる底部25と、さらにその底部によって偏向された汚染空気の気流に対し略直角になるよう折り返された側壁26とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物に塗料を噴霧して塗装を行う塗装ブースに適用され、被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料を捕集するための余剰霧化塗料捕集システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、塗装ブースの塗装室内にて被塗物に対する霧化塗装を行うと、オーバースプレーにより、塗料ミストや揮発性有機溶剤などを含んだ汚染空気(排気体)が塗装室内に充満してしまう。その結果、塗料ミストのカブリによって被塗物の品質が損なわれたり、揮発性有機溶剤によって作業者の健康が害されたりする可能性がある。これらの問題を解決するために、汚染空気を吸引して塗装室外に排出する構造を備えた塗装ブースが従来提案されている。
【0003】
ところが、公害防止の観点から、塗装室の汚染空気をそのまま大気中に放出することはできない。そのため、従来の塗装ブースでは、塗装室の下部に排気室を設置し、塗装室から吸引した汚染空気を排気室にて浄化処理するように構成している。
【0004】
具体的には、自動車ボディや自動車部品の塗装を行う塗装ブースでは、排気室において、汚染空気を水などの液体に接触させて混合し、その汚染空気に含まれる塗料ミストを液体に捕捉させることで、汚染空気から塗料ミストを分離除去している(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
自動車ボディや自動車部品の塗装は、一般に耐水性、耐薬品性、耐候性、耐久性、および高級感を確保する必要があり、従来は、有機溶剤を含む溶剤型塗料を用いて塗装が行われてきた。しかし、近年では、塗装工程での排出有機溶剤規制や塗料のVOC規制が高まってきているため、有機溶剤を使用しない水性塗料が開発され、自動車ボディや自動車部品の塗装に用いられるようになってきている。
【特許文献1】特開2006−142208号公報
【特許文献2】特許第3656229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水性塗料を噴霧して塗装を行う塗装ブースにおいて、従来のように水を使用して汚染空気の塗料ミストを捕捉する場合、捕捉した塗料が水に溶け込んでしまうため、その排水の浄化処理(具体的には、水と塗料とを分離するための固液分離処理)が困難となる。また、塗料が腐敗して異臭を発するなどの問題が生じる。そのため、水を用いた湿式法ではなく、乾式法によって塗料ミストを効率よく捕集する捕集システムが検討されている。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水などの液体を用いることなく、排気体に含まれる余剰霧化塗料を効率よく捕集することができる余剰霧化塗料捕集システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、外部から取り入れた空気が流通されるとともに被塗物が収容される塗装空間を有する塗装室と、一定条件に調整された空気を所定方向から前記塗装空間内に取り入れる吸入経路と、空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料を前記被塗物に噴射する塗料霧化手段と、前記塗料霧化手段の下流側に設置され、前記吸入経路から取り入れた空気と前記被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料との混合気体である排気体を、徐々に小断面積となる経路に集合させつつ増速させる集合手段と、前記集合手段で増速させた排気体を、前記吸入経路の反対側となる方向へ排出する排気経路と、前記排出経路の直下流側に設置され、増速させた排気体に含まれる前記余剰霧化塗料を付着させて分離する余剰霧化塗料捕集手段とを備える余剰霧化塗料捕集システムにおいて、前記余剰霧化塗料捕集手段は、前記集合手段で集合され前記排気経路から排出された排気体が略直角に衝突しうる壁部材と、さらにその壁部材によって偏向された排気体の気流に対し略直角になるよう折り返された折り返し壁とを有することを特徴とする余剰霧化塗料捕集システムをその要旨とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、一定条件に調整された空気が吸入経路から塗装室の塗装空間に取り入れられ、その空気が塗装空間内に流通される。この塗装空間において、塗料霧化手段により、空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料が噴射されて被塗物の塗装が行われる。また、塗料霧化手段の下流側に集合手段が設置されており、吸入経路から取り入れられた空気と余剰霧化塗料との混合気体である排気体は、その集合手段によって徐々に小断面積となる経路に集合されて増速される。そして、集合手段よって増速された排気体は、排気経路により吸入経路の反対側となる方向へ排出される。この場合、余剰霧化塗料を含む排気体を塗装空間の外部にスムーズに排気することができるため、被塗物の塗装品質を十分に確保することができる。また、排気経路の直下流側には、壁部材と折り返し壁とを有する余剰霧化塗料捕集手段が設置されており、排気経路から排出された排気体が壁部材に対して略直角に吹き付けられる。このとき、排気体に含まれる空気は壁部材の表面に沿って流れるが、排気体に含まれる余剰霧化塗料は空気よりも重いためその慣性力により壁部材に衝突する。これによって、余剰霧化塗料が壁部材に付着することで空気から塗料が分離される。さらに、その壁部材によって偏向された排気体の気流が折り返し壁に略直角に吹き付けられるので、その排気体に残存する余剰霧化塗料が折り返し壁に衝突する。これにより、折り返し壁に塗料が付着して空気から分離される。このように、余剰霧化塗料捕集システムを構成すれば、従来技術のように水などの液体を用いることなく、排気体に含まれる余剰霧化塗料を効率よく捕集することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記余剰霧化塗料捕集手段には、前記折り返し壁が複数段設けられていることをその要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、複数段の折り返し壁によって、余剰霧化塗料を確実に付着分離させることができ、塗料の捕集効率を高めることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記余剰霧化塗料捕集手段は、前記排気体を壁部材及び折り返し壁に衝突させ、前記排気体に含まれる余剰霧化塗料を前記壁部材及び折り返し壁に付着させて液体状の塗料として捕集するものであり、下側に位置する底面が傾斜を有し、その底面の最下端部となる位置に、塗料溜まりまたは塗料排出用のドレインを設けたことをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、余剰霧化塗料捕集手段の壁部材及び折り返し壁に排気体を衝突させることにより、その排気体に含まれる余剰霧化塗料が壁部材及び折り返し壁に付着して液体状の塗料となる。そして、その液体状の塗料は、余剰霧化塗料捕集手段の底面の傾斜に沿って流れ、その最下端部となる位置に設けられた塗料溜まりまたは塗料排出手段を介して確実に回収される。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記余剰霧化塗料捕集手段を複数備え、各余剰霧化塗料捕集手段は、前記排気体を通気可能な間隔を有して配置され、下流側の余剰霧化塗料捕集手段には、上流側の余剰霧化塗料捕集手段で最終的に偏向された前記排気体の気流に対し、対向する壁部材を略直角に設けたことをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、複数の余剰霧化塗料捕集手段が排気体を通気可能な間隔を有して配置され、上流側の余剰霧化塗料捕集手段で最終的に偏向された排気体の気流が下流側の余剰霧化塗料捕集手段の壁部材に略直角に吹き付けられる。このように構成すると、複数の余剰霧化塗料捕集手段で余剰霧化塗料を確実に付着分離させることができ、塗料の捕集効率を高めることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記余剰霧化塗料捕集手段の上側に、前記排気体を受ける面を傾斜させた壁部材を有する余剰霧化塗料捕集手段をさらに設け、その上側の壁部材に前記排気体の余剰霧化塗料が衝突して液化した液体状の塗料を下側の前記余剰霧化塗料捕集手段に落下させて捕集するように構成したことをその要旨とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、排気経路から排出された排気体は、下側の余剰霧化塗料捕集手段において壁部材や折り返し部材に沿って偏向された後、上方に舞い上がる。この排気体は上側の余剰霧化塗料捕集手段における壁部材に吹き付けられ、排気体に含まれる余剰霧化塗料が液化する。壁部材は排気体を受ける面が傾斜しているため、液体状の塗料はその壁部材の傾斜面に沿って流れ、下側の余剰霧化塗料捕集手段に落下して捕集される。このように構成しても、塗料を確実に捕集することができ、塗料の捕集効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、水などの液体を用いることなく、排気体に含まれる余剰霧化塗料を効率よく捕集することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
【0020】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施の形態における余剰霧化塗料捕集システムを構成する塗装ブースの概略構成を示す斜視図である。
【0021】
図1に示されるように、塗装ブース1は、自動車部品2(被塗物)に水性塗料を吹き付けることにより、その自動車部品2の表面に塗膜を形成させるためのものである。この塗装ブース1には、ダウンフロー(上方から下方に向かう一定方向)の空気が流通されるとともに、自動車部品2が収納される塗装空間3を有する塗装室4と、塗装室4の上側に設けられ塗装室4にダウンフローの空気を供給するための給気室5と、塗装室4の下側に設けられその塗装室4内の空気を排気するための排気室6とが設けられている。なお、図1の塗装ブース1においては、塗装室4及び排気室6における前面側の壁を省略して示している。
【0022】
塗装室4の床部7は簀子状の部材(グレーチング)で形成され、その床部7の略中央部には、自動車部品2が載せられた塗装用テーブル8が設けられている。また、塗装室4において、塗装用テーブル8の近傍には塗装ロボット11が設けられ、該塗装ロボット11のアーム12に取り付けられた塗装機13(塗料霧化手段)で自動車部品2が塗装される。本実施の形態で用いられる塗装機13は、回転霧化式の塗装機であり、空気と微粒化塗料とを混合した塗料ミストP1(霧化塗料)を噴射することで自動車部品2の塗装を行う。
【0023】
給気室5には、フィルタ等を含んで構成された空調ユニット15が設けられている。そして、給気ダクト16を通じて給気室5に圧送された空気が空調ユニット15により整流された後、空調空気として塗装室4に流下させられる。本実施の形態では、給気ダクト16や空調ユニット15によって吸気経路が構成され、この吸気経路を通じて風量、湿度、温度などが一定条件に調整された空調空気が塗装室4に供給されるようになっている。
【0024】
排気室6は、塗装室4内の汚染空気(排気体)を排気ファン(図示略)の吸引力によって吸引し、吸引した汚染空気の処理を行うようになっている。汚染空気には、塗装室4内の塗装機13からオーバースプレーされ、自動車部品2に付着しなかった塗料ミストP1(余剰霧化塗料)が含まれている。また、排気室6の一方の側壁には、排気室6内にて浄化された空気を外部に排出する排気ダクト18が設けられている。そして、排気ダクト18から排出された空気は、図示しないファンによって圧送され、排気される。なお、排気ダクト18から排出された空気の一部が再び給気室5に導かれるようになっていてもよい。
【0025】
また、塗装機13の下流側であって排気室6の上部となる位置には、汚染空気を集めるために角錐状に形成された空気集合部材21(集合手段)が設けられている。この空気集合部材21は、下側に行くほど徐々に小断面積となる経路が形成されており、塗装室4の汚染空気をその経路に集合させつつ増速させる。また、空気集合部材21の下端部には、排気用配管22(排気経路)が接続されており、その排気用配管22により、空気集合部材21で増速させた汚染空気を下側(吸入経路とは反対側となる方向)の排気室6へ排出する。
【0026】
排気室6において、排気用配管22の直下流側には、汚染空気に含まれる塗料ミストP1を付着させて分離する塗料捕集器23(余剰霧化塗料捕集手段)が配置されている。図2に示されるように、本実施の形態の塗料捕集器23は、上端に開口部24を有する釜状の容器であり、塗料の付着性が低い材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂材料や、表面にポリテトラフルオロエチレンなどのコーティングを施した材料)を用いて形成されている。この塗料捕集器23は、排気用配管22から排出された汚染空気A1が略直角に衝突しうる底部25(壁部材)と、その底部25によって偏向された汚染空気A1の気流に対し略直角となるよう折り返された側壁26(折り返し壁)とを備える。さらに、塗料捕集器23において、側壁26の上端となる位置には、容器内側に向けて略直角に折り返された縁部27(折り返し壁)が設けられている。また、塗料捕集器23において、側壁26の内側折り返し部28は、なだらかな曲面状に形成されている。
【0027】
次に、本実施の形態の塗装ブース1の作用について説明する。
【0028】
まず、塗装機13から水性塗料を噴霧して自動車部品2の塗装を行うと、オーバースプレーされた塗料ミストP1を含む汚染空気A1が空気集合部材21で増速され、排気用配管22を通して排気室6に排出される。そして、排気室6において、その汚染空気A1は塗料捕集器23の底部25に略直角に吹き付けられる。
【0029】
このとき、汚染空気A1に含まれる空気は底部25の表面に沿って流れるが、塗料ミストP1は空気よりも重いためその慣性力により底部25に衝突する。これによって、塗料ミストP1が底部25に付着することで汚染空気A1から塗料が分離される。
【0030】
また、塗料捕集器23の底部25で偏向された汚染空気A1は、底部25に沿って流れた後、側壁26に略直角に吹き付けられるので、汚染空気A1に残存する塗料ミストP1が側壁26に衝突する。これにより、側壁26に塗料が付着して汚染空気A1から分離される。さらに、側壁26で偏向された汚染空気A1が縁部27に吹き付けられることにより、汚染空気A1に残存する塗料ミストP1がその縁部27に衝突する。これにより、縁部27に塗料が付着して汚染空気A1から分離される。
【0031】
そして、塗料捕集器23において、汚染空気A1から塗料が分離されることで浄化された空気A2が排気ダクト18を通して排気室6から排出される。
【0032】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0033】
(1)本実施の形態の塗装ブース1において、塗装室4の塗装空間3には給気室5から取り入れられた空調空気が下方に向けて流通されている。この塗装空間3において、その空気と塗料とを混合した塗料ミストP1が塗装機13から自動車部品2に噴射されることでその塗装が行われる。また、給気室5から取り入れられた空気と自動車部品2に付着しなかった塗料ミストP1との混合気体である汚染空気A1は、空気集合部材21によって徐々に小断面積となる経路に集合され増速された後、排気用配管22を介して排気室6の塗料捕集器23に向けて排出される。このようにすれば、塗装空間3の汚染空気A1をスムーズに排気することができ、自動車部品2の塗装品質を十分に確保することができる。また、本実施の形態の塗料捕集器23は、排気用配管22から排出された汚染空気A1が略直角に衝突しうる底部25と、その底部25によって偏向された汚染空気A1の気流に対し略直角になるよう折り返された側壁26とを備えているので、それら底部25と側壁26とに汚染空気A1を衝突させることで塗料を確実に付着分離させることができる。従って、本実施の形態によれば、従来技術のように水などの液体を用いることなく、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1を効率よく捕集することができる。
【0034】
(2)本実施の形態の塗料捕集器23では、折り返し壁として、側壁26に加えてその側壁26の上端に縁部27を設けたので、これら側壁26や縁部27に汚染空気A1を衝突させることでその汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1を確実に付着分離することができる。
【0035】
(3)本実施の形態の塗料捕集器23では、側壁26の内側折り返し部28がなだらかな曲面状に形成されているので、塗料捕集器23のメンテナンス作業をする際には、その内側折り返し部28や底部25に付着した塗料を容易に除去することができる。
[第2の実施の形態]
【0036】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を図3に基づき説明する。
【0037】
本実施の形態の余剰霧化塗料捕集システムでは、塗料捕集器31の構成が第1の実施の形態と異なり、他の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0038】
図3に示されるように、本実施の形態の塗料捕集器31は、底部32(壁部材)及び側壁33(折り返し壁)を有し上端に開口部34を有する釜状の容器である。また、この塗料捕集器31の底面35は傾斜しており、その底面35の最下端部となる位置に塗料排出用のドレイン36が接続されている。本実施の形態の塗料捕集器31は、汚染空気A1に塗料ミストP1が比較的多く含まれる場合に用いられる。この場合、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1は、底部32や側壁33に衝突することで液化する。そして、液体状の塗料P2は、側壁33の壁面や底部32の傾斜した底面35に沿って流れて塗料捕集器31の下部に蓄えられ、さらに、塗料排出手段としてのドレイン36を介して確実に回収される。このように、塗料捕集器31を構成することにより、塗料P2の捕集効率を高めることができる。
[第3の実施の形態]
【0039】
次に、本発明を具体化した第3の実施の形態を図4に基づき説明する。
【0040】
本実施の形態の余剰霧化塗料捕集システムでは、複数の塗料捕集器41,42,43を備える点が上記第1の実施の形態と異なり、他の構成は上記第1の形態と同じである。
【0041】
図4に示されるように、排気室6において、3つの塗料捕集器41,42,43が設けられている。各塗料捕集器41〜43は、底部44〜46(壁部材)と底部44〜46に対して略直角に折り返された側壁47〜49(折り返し壁)とを備え、汚染空気A1を通気可能な間隔を有して配置されている。詳しくは、第1の塗料捕集器41は、第1の実施の形態と同様に釜状の容器であり、排気用配管22の直下流側において開口部を上側(排気用配管22側)に向けた状態で設けられている。第2の塗料捕集器42は、円環状に形成された溝型の容器であり、第1の塗料捕集器41及び第3の塗料捕集器43と対向するようその開口部を下方に向けた状態で配置されている。第3の塗料捕集器43は、円環状に形成された溝型の容器であり、第1の塗料捕集器41の周囲において、その開口部を上方に向けた状態で配置されている。
【0042】
より詳しくは、第1の塗料捕集器41の側壁47とその側壁47に隣接する第3の塗料捕集器43の側壁49との上端に対して所定の間隔をあけた状態でその上端を覆うように第2の塗料捕集器42が配置されている。そして、それら塗料捕集器41〜43の底部44〜46及び側壁47〜49によって汚染空気A1が流れる通路が形成されている。
【0043】
本実施の形態において、排気用配管22から排出された汚染空気A1は、第1の塗料捕集器41の底部44に吹き付けられると、その底部44に沿って流れる。そして、汚染空気A1は、側壁47に衝突して偏向された後、第2の塗料捕集器42の底部45に吹き付けられる。また、第2の塗料捕集器42の底部45で偏向された汚染空気A1は、第2の塗料捕集器42の側壁48に衝突することより偏向された後、第3の塗料捕集器43の底部46に吹き付けられる。さらに、第3の塗料捕集器43の底部46で偏向された汚染空気A1は、その側壁49に衝突することにより偏向された後、第3の塗料捕集器43の外部に排出される。
【0044】
このように本実施の形態では、上段側の塗料捕集器41,42で最終的に偏向された汚染空気A1が下流側の塗料捕集器42,43の底部45,46に略直角に吹き付けられるようになっている。この場合、汚染空気A1に含まれる空気は、底部45,46に沿って流れるが、塗料ミストP1はその底部45,46に慣性衝突して付着分離される。また、各塗料捕集器41〜43において、底部44〜46で偏向された汚染空気A1はその側壁47〜49に略直角に吹き付けられるので、この側壁47〜49においても汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1が慣性衝突して付着分離される。従って、本実施の形態のように、複数の塗料捕集器41〜43を設けることにより、塗料を効率よく捕集することができる。
【0045】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0046】
・上記第1の実施の形態では、塗料捕集器23において側壁26の上端に縁部27が形成されるものであったが、図5の塗料捕集器51のように、その縁部27を省略してもよい。また、図6の塗料捕集器52のように、縁部27の先端に、下方に向けて略直角に折り返された折り返し壁53を形成してもよい。さらに、図7に示すような塗料捕集器54を用いることもできる。この塗料捕集器54では、底部25及び側壁26に加えて蓋部55が設けられている。蓋部55は、上端の開口部24を覆う部材であって、排気用配管22に対応する中央部分のみが開口している。また、側壁26の一部には、浄化した空気A2を外部に排出する排出口56が形成されている。このような塗料捕集器51,52,54を用いた場合でも、塗料を効率よく捕集することができる。
【0047】
・上記第3の実施の形態では、排気室6内に3つの塗料捕集器41〜43を備えるものであったが、これら捕集器41〜43の形状や個数は適宜変更することができる。例えば、図8のような各塗料捕集器61,62や図9のような各塗料捕集器61,63,64に変更してもよい。具体的には、図8に示されるように、排気室6には2つの塗料捕集器61,62が設けられている。塗料捕集器61は、底部66及び側壁67を有し上端に開口部68を有する釜状の容器であり、排気用配管22の直下流側に設けられている。塗料捕集器62は、塗料捕集器61の側壁67に沿って吹き上がった汚染空気A1を衝突させる壁部材であり、塗料捕集器61の上方において所定の間隔をあけて配置されている。この塗料捕集器62の基端は、排気室6の側壁に固定され、先端側が塗料捕集器61の開口部68の一部を塞ぐよう配設されている。このように各塗料捕集器61,62を構成した場合でも、それら塗料捕集器61,62によって塗料を確実に捕集することができる。
【0048】
また、図9に示されるように、排気室6には3つの塗料捕集器61,63,64が設けられている。塗料捕集器61は、図8の塗料捕集器61と同一形状の容器であり、排気用配管22の直下流側に設けられている。塗料捕集器63は、塗料捕集器61の側壁67に沿って吹き上がった汚染空気A1を衝突させる壁部材であり、塗料捕集器61の上方において所定の間隔をあけて配置されている。この塗料捕集器63の基端は、排気室6の側壁に固定され、先端側が塗料捕集器61の開口部68の一部を塞ぐよう配設されている。そして、その塗料捕集器63の先端部には、折り返し壁69が略直角に設けられている。塗料捕集器64は、塗料捕集器63の上方において所定の間隔をあけて配置されている。この塗料捕集器64は、底部70及び側壁71を備える釜状の容器であり、塗料捕集器61と対向するよう開口部72を下方に向けた状態で配置されている。より詳しくは、塗料捕集器64は、その底部70の中央に貫通穴73が形成され、その貫通穴73に排気用配管22の先端が挿入されることでその配管22に固定されている。このように各塗料捕集器61,63,64を構成した場合でも、それら塗料捕集器61,63,64によって塗料を確実に捕集することができる。
【0049】
・上記第2の実施の形態の塗料捕集器31は、液体状の塗料P2を蓄えて塗料排出用のドレイン36から排出するものであったが、図10〜図12に示すように、その塗料捕集器31に加えて、液体状の塗料P2を捕集するための傾斜板75,76,77(壁部材)を塗料捕集器31の上側に設けてもよい。
【0050】
具体的には、図10に示されるように、傾斜板75は、排気室6の側壁に固定され、排気室6の中央部に向かって下方に傾斜している。この傾斜板75における下側の傾斜面78が汚染空気A1を受ける面となり、この傾斜面78に塗料ミストP1が衝突することで液化する。そして、液体状の塗料P2は、傾斜面78に沿って下方に流れ、傾斜板75の最下端部から落下して塗料捕集器31で捕集される。また、傾斜板75と排気用配管22との間には、所定の隙間が形成されており、排気室6においてその傾斜板75よりも上側に排気ダクト18が接続されている。そして、塗料捕集器31と傾斜板75とによって塗料ミストP1が捕集され浄化された空気A2は、傾斜板75と排気用配管22との隙間を通過して排気ダクト18から排出される。
【0051】
図11の傾斜板76は、排気室6の側壁に固定されるともに、排気用配管22に固定されている。つまり、傾斜板76と排気用配管22との間には、図10のような隙間は形成されていない。この傾斜板76も排気室6の中央部に向かって下方に傾斜しており、下側の傾斜面79が汚染空気A1を受ける面となっている。この傾斜面79に塗料ミストP1が衝突することで液化する。そして、液体状の塗料P2は、傾斜面79に沿って下方に流れ、傾斜板76の最下端部及び排気用配管22の先端から落下して塗料捕集器31で捕集される。また、排気室6においてその傾斜板76よりも下側に排気ダクト18が接続されており、塗料捕集器31と傾斜板76とによって塗料ミストP1が捕集され浄化された空気A2は、その排気ダクト18から排出される。
【0052】
図12の傾斜板77は、排気用配管22に固定され、排気室6の中央部から外周部に向かって下方に傾斜している。この傾斜板77における下側の傾斜面80が汚染空気A1を受ける面となる。この傾斜板77(ガイド部材)の傾斜面80(ガイド面)によって、排気用配管22から排出される汚染空気A1が外側に拡散しないようにガイドされている。そして、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1が傾斜面80に衝突することで液化する。また、液体状の塗料P2は、傾斜面80に沿って下方に流れ、傾斜板77の最下端部から落下する。さらに、塗料捕集器31の周囲には、傾斜板77の最下端部から落下した塗料P2を受けるトイ81が設けられている。このトイ81は、塗料排出用のドレイン36に接続されており、トイ81に溜まった塗料P2は塗料排出用のドレイン36を介して回収される。
【0053】
・図10〜図12では、釜状の塗料捕集器31の上側に設ける塗料捕集器として傾斜板75〜77を用いるものであったが、これに限定されるものではない。図13に示されるように、傾斜板76に加えて、複数のボール84を敷き詰めたフィルタ材85を設けるようにしてもよいし、図14に示されるように、傾斜板76に代えて複数のボール84を敷き詰めたフィルタ材85を設けるようにしてもよい。なお、フィルタ材85は、各ボール84が落下しないように保持するための金網などを含んで構成されている。
【0054】
・上記各実施の形態では、塗料の付着性が低い材料を用いて塗料捕集器23,31,41〜43,51,52,54,61〜64を形成していたが、例えば、容器の表面を粘着剤のコート膜(フィルムコートなど)で覆うようにしてもよい。またこの場合、1枚ずつ剥がすことが可能な多層フィルムを容器表面に形成してもよい。このように塗料捕集器23,31,41〜43,51,52,54,61〜64を構成すれば、その表面に付着した塗料粕を分離しやすくなるため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0055】
・上記第2の実施の形態では、塗料捕集器31の底部32に塗料排出用のドレイン36を設けたが、このドレイン36に代えて塗料たまり(図示略)を設け、その塗料たまりに溜まった塗料P2を定期的に回収するよう構成してもよい。あるいは、塗料排出用のドレイン36に代わる塗料排出手段として、例えばポンプを設け、このポンプを用いて、溜まった塗料P2を常時または定期的に排出するようにしてもよい。
【0056】
・上記各実施の形態において、水性塗料を用いて自動車部品2の塗装を行うものであったが、溶剤型塗料を用いて自動車部品2の塗装を行うように構成してもよい。また、被塗物として自動車部品2以外に家電製品などの部品を塗装するものであってもよい。
【0057】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0058】
(1)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記余剰霧化塗料捕集手段における前記折り返し壁の内側折り返し部は、なだらかな曲面状に形成されていることを特徴とする余剰霧化塗料捕集システム。
【0059】
(2)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記余剰霧化塗料捕集手段は、前記排気体を略直角に衝突させる壁部材と対向する位置に設けられ、前記排気経路から排出された前記排気体を外側に拡散させないようにガイドするガイド面が形成されたガイド部材を有することを特徴とする余剰霧化塗料捕集システム。
【0060】
(3)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記余剰霧化塗料捕集手段は、底部及び側壁を有し上端に開口部を有する釜状の容器を有し、その容器の底部が前記壁部材として機能し、その容器の側壁が前記折り返し壁として機能することを特徴とする余剰霧化塗料捕集システム。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態の塗装ブースを示す断面図。
【図2】第1の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図3】第2の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図4】第3の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図5】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図6】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図7】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図8】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図9】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図10】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図11】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図12】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図13】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図14】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【符号の説明】
【0062】
1…余剰霧化塗料捕集システムを構成する塗装ブース
2…被塗物としての自動車部品
3…塗装空間
4…塗装室
13…塗料霧化手段としての塗装機
15…吸入経路を構成する空調ユニット
21…集合手段としての空気集合部材
22…排気経路としての排気用配管
23,31,41〜43,51,52,54,61〜64…余剰霧化塗料捕集手段としての塗料捕集器
25,32,44〜46,66,70…壁部材としての底部
26,33,47〜49,67,71…折り返し壁としての側壁
27…折り返し壁としての縁部
35…底面
36…塗料排出手段としてのドレイン
53,69…折り返し壁
75〜77…折り返し壁としての傾斜板
A1…排気体としての汚染空気
P1…霧化塗料としての塗料ミスト
P2…液体状の塗料
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗物に塗料を噴霧して塗装を行う塗装ブースに適用され、被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料を捕集するための余剰霧化塗料捕集システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、塗装ブースの塗装室内にて被塗物に対する霧化塗装を行うと、オーバースプレーにより、塗料ミストや揮発性有機溶剤などを含んだ汚染空気(排気体)が塗装室内に充満してしまう。その結果、塗料ミストのカブリによって被塗物の品質が損なわれたり、揮発性有機溶剤によって作業者の健康が害されたりする可能性がある。これらの問題を解決するために、汚染空気を吸引して塗装室外に排出する構造を備えた塗装ブースが従来提案されている。
【0003】
ところが、公害防止の観点から、塗装室の汚染空気をそのまま大気中に放出することはできない。そのため、従来の塗装ブースでは、塗装室の下部に排気室を設置し、塗装室から吸引した汚染空気を排気室にて浄化処理するように構成している。
【0004】
具体的には、自動車ボディや自動車部品の塗装を行う塗装ブースでは、排気室において、汚染空気を水などの液体に接触させて混合し、その汚染空気に含まれる塗料ミストを液体に捕捉させることで、汚染空気から塗料ミストを分離除去している(例えば、特許文献1,2参照)。
【0005】
自動車ボディや自動車部品の塗装は、一般に耐水性、耐薬品性、耐候性、耐久性、および高級感を確保する必要があり、従来は、有機溶剤を含む溶剤型塗料を用いて塗装が行われてきた。しかし、近年では、塗装工程での排出有機溶剤規制や塗料のVOC規制が高まってきているため、有機溶剤を使用しない水性塗料が開発され、自動車ボディや自動車部品の塗装に用いられるようになってきている。
【特許文献1】特開2006−142208号公報
【特許文献2】特許第3656229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水性塗料を噴霧して塗装を行う塗装ブースにおいて、従来のように水を使用して汚染空気の塗料ミストを捕捉する場合、捕捉した塗料が水に溶け込んでしまうため、その排水の浄化処理(具体的には、水と塗料とを分離するための固液分離処理)が困難となる。また、塗料が腐敗して異臭を発するなどの問題が生じる。そのため、水を用いた湿式法ではなく、乾式法によって塗料ミストを効率よく捕集する捕集システムが検討されている。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、水などの液体を用いることなく、排気体に含まれる余剰霧化塗料を効率よく捕集することができる余剰霧化塗料捕集システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、外部から取り入れた空気が流通されるとともに被塗物が収容される塗装空間を有する塗装室と、一定条件に調整された空気を所定方向から前記塗装空間内に取り入れる吸入経路と、空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料を前記被塗物に噴射する塗料霧化手段と、前記塗料霧化手段の下流側に設置され、前記吸入経路から取り入れた空気と前記被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料との混合気体である排気体を、徐々に小断面積となる経路に集合させつつ増速させる集合手段と、前記集合手段で増速させた排気体を、前記吸入経路の反対側となる方向へ排出する排気経路と、前記排出経路の直下流側に設置され、増速させた排気体に含まれる前記余剰霧化塗料を付着させて分離する余剰霧化塗料捕集手段とを備える余剰霧化塗料捕集システムにおいて、前記余剰霧化塗料捕集手段は、前記集合手段で集合され前記排気経路から排出された排気体が略直角に衝突しうる壁部材と、さらにその壁部材によって偏向された排気体の気流に対し略直角になるよう折り返された折り返し壁とを有することを特徴とする余剰霧化塗料捕集システムをその要旨とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、一定条件に調整された空気が吸入経路から塗装室の塗装空間に取り入れられ、その空気が塗装空間内に流通される。この塗装空間において、塗料霧化手段により、空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料が噴射されて被塗物の塗装が行われる。また、塗料霧化手段の下流側に集合手段が設置されており、吸入経路から取り入れられた空気と余剰霧化塗料との混合気体である排気体は、その集合手段によって徐々に小断面積となる経路に集合されて増速される。そして、集合手段よって増速された排気体は、排気経路により吸入経路の反対側となる方向へ排出される。この場合、余剰霧化塗料を含む排気体を塗装空間の外部にスムーズに排気することができるため、被塗物の塗装品質を十分に確保することができる。また、排気経路の直下流側には、壁部材と折り返し壁とを有する余剰霧化塗料捕集手段が設置されており、排気経路から排出された排気体が壁部材に対して略直角に吹き付けられる。このとき、排気体に含まれる空気は壁部材の表面に沿って流れるが、排気体に含まれる余剰霧化塗料は空気よりも重いためその慣性力により壁部材に衝突する。これによって、余剰霧化塗料が壁部材に付着することで空気から塗料が分離される。さらに、その壁部材によって偏向された排気体の気流が折り返し壁に略直角に吹き付けられるので、その排気体に残存する余剰霧化塗料が折り返し壁に衝突する。これにより、折り返し壁に塗料が付着して空気から分離される。このように、余剰霧化塗料捕集システムを構成すれば、従来技術のように水などの液体を用いることなく、排気体に含まれる余剰霧化塗料を効率よく捕集することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記余剰霧化塗料捕集手段には、前記折り返し壁が複数段設けられていることをその要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、複数段の折り返し壁によって、余剰霧化塗料を確実に付着分離させることができ、塗料の捕集効率を高めることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2において、前記余剰霧化塗料捕集手段は、前記排気体を壁部材及び折り返し壁に衝突させ、前記排気体に含まれる余剰霧化塗料を前記壁部材及び折り返し壁に付着させて液体状の塗料として捕集するものであり、下側に位置する底面が傾斜を有し、その底面の最下端部となる位置に、塗料溜まりまたは塗料排出用のドレインを設けたことをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、余剰霧化塗料捕集手段の壁部材及び折り返し壁に排気体を衝突させることにより、その排気体に含まれる余剰霧化塗料が壁部材及び折り返し壁に付着して液体状の塗料となる。そして、その液体状の塗料は、余剰霧化塗料捕集手段の底面の傾斜に沿って流れ、その最下端部となる位置に設けられた塗料溜まりまたは塗料排出手段を介して確実に回収される。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記余剰霧化塗料捕集手段を複数備え、各余剰霧化塗料捕集手段は、前記排気体を通気可能な間隔を有して配置され、下流側の余剰霧化塗料捕集手段には、上流側の余剰霧化塗料捕集手段で最終的に偏向された前記排気体の気流に対し、対向する壁部材を略直角に設けたことをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、複数の余剰霧化塗料捕集手段が排気体を通気可能な間隔を有して配置され、上流側の余剰霧化塗料捕集手段で最終的に偏向された排気体の気流が下流側の余剰霧化塗料捕集手段の壁部材に略直角に吹き付けられる。このように構成すると、複数の余剰霧化塗料捕集手段で余剰霧化塗料を確実に付着分離させることができ、塗料の捕集効率を高めることができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項において、前記余剰霧化塗料捕集手段の上側に、前記排気体を受ける面を傾斜させた壁部材を有する余剰霧化塗料捕集手段をさらに設け、その上側の壁部材に前記排気体の余剰霧化塗料が衝突して液化した液体状の塗料を下側の前記余剰霧化塗料捕集手段に落下させて捕集するように構成したことをその要旨とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、排気経路から排出された排気体は、下側の余剰霧化塗料捕集手段において壁部材や折り返し部材に沿って偏向された後、上方に舞い上がる。この排気体は上側の余剰霧化塗料捕集手段における壁部材に吹き付けられ、排気体に含まれる余剰霧化塗料が液化する。壁部材は排気体を受ける面が傾斜しているため、液体状の塗料はその壁部材の傾斜面に沿って流れ、下側の余剰霧化塗料捕集手段に落下して捕集される。このように構成しても、塗料を確実に捕集することができ、塗料の捕集効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上詳述したように、請求項1〜5に記載の発明によると、水などの液体を用いることなく、排気体に含まれる余剰霧化塗料を効率よく捕集することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
【0020】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施の形態における余剰霧化塗料捕集システムを構成する塗装ブースの概略構成を示す斜視図である。
【0021】
図1に示されるように、塗装ブース1は、自動車部品2(被塗物)に水性塗料を吹き付けることにより、その自動車部品2の表面に塗膜を形成させるためのものである。この塗装ブース1には、ダウンフロー(上方から下方に向かう一定方向)の空気が流通されるとともに、自動車部品2が収納される塗装空間3を有する塗装室4と、塗装室4の上側に設けられ塗装室4にダウンフローの空気を供給するための給気室5と、塗装室4の下側に設けられその塗装室4内の空気を排気するための排気室6とが設けられている。なお、図1の塗装ブース1においては、塗装室4及び排気室6における前面側の壁を省略して示している。
【0022】
塗装室4の床部7は簀子状の部材(グレーチング)で形成され、その床部7の略中央部には、自動車部品2が載せられた塗装用テーブル8が設けられている。また、塗装室4において、塗装用テーブル8の近傍には塗装ロボット11が設けられ、該塗装ロボット11のアーム12に取り付けられた塗装機13(塗料霧化手段)で自動車部品2が塗装される。本実施の形態で用いられる塗装機13は、回転霧化式の塗装機であり、空気と微粒化塗料とを混合した塗料ミストP1(霧化塗料)を噴射することで自動車部品2の塗装を行う。
【0023】
給気室5には、フィルタ等を含んで構成された空調ユニット15が設けられている。そして、給気ダクト16を通じて給気室5に圧送された空気が空調ユニット15により整流された後、空調空気として塗装室4に流下させられる。本実施の形態では、給気ダクト16や空調ユニット15によって吸気経路が構成され、この吸気経路を通じて風量、湿度、温度などが一定条件に調整された空調空気が塗装室4に供給されるようになっている。
【0024】
排気室6は、塗装室4内の汚染空気(排気体)を排気ファン(図示略)の吸引力によって吸引し、吸引した汚染空気の処理を行うようになっている。汚染空気には、塗装室4内の塗装機13からオーバースプレーされ、自動車部品2に付着しなかった塗料ミストP1(余剰霧化塗料)が含まれている。また、排気室6の一方の側壁には、排気室6内にて浄化された空気を外部に排出する排気ダクト18が設けられている。そして、排気ダクト18から排出された空気は、図示しないファンによって圧送され、排気される。なお、排気ダクト18から排出された空気の一部が再び給気室5に導かれるようになっていてもよい。
【0025】
また、塗装機13の下流側であって排気室6の上部となる位置には、汚染空気を集めるために角錐状に形成された空気集合部材21(集合手段)が設けられている。この空気集合部材21は、下側に行くほど徐々に小断面積となる経路が形成されており、塗装室4の汚染空気をその経路に集合させつつ増速させる。また、空気集合部材21の下端部には、排気用配管22(排気経路)が接続されており、その排気用配管22により、空気集合部材21で増速させた汚染空気を下側(吸入経路とは反対側となる方向)の排気室6へ排出する。
【0026】
排気室6において、排気用配管22の直下流側には、汚染空気に含まれる塗料ミストP1を付着させて分離する塗料捕集器23(余剰霧化塗料捕集手段)が配置されている。図2に示されるように、本実施の形態の塗料捕集器23は、上端に開口部24を有する釜状の容器であり、塗料の付着性が低い材料(例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等の合成樹脂材料や、表面にポリテトラフルオロエチレンなどのコーティングを施した材料)を用いて形成されている。この塗料捕集器23は、排気用配管22から排出された汚染空気A1が略直角に衝突しうる底部25(壁部材)と、その底部25によって偏向された汚染空気A1の気流に対し略直角となるよう折り返された側壁26(折り返し壁)とを備える。さらに、塗料捕集器23において、側壁26の上端となる位置には、容器内側に向けて略直角に折り返された縁部27(折り返し壁)が設けられている。また、塗料捕集器23において、側壁26の内側折り返し部28は、なだらかな曲面状に形成されている。
【0027】
次に、本実施の形態の塗装ブース1の作用について説明する。
【0028】
まず、塗装機13から水性塗料を噴霧して自動車部品2の塗装を行うと、オーバースプレーされた塗料ミストP1を含む汚染空気A1が空気集合部材21で増速され、排気用配管22を通して排気室6に排出される。そして、排気室6において、その汚染空気A1は塗料捕集器23の底部25に略直角に吹き付けられる。
【0029】
このとき、汚染空気A1に含まれる空気は底部25の表面に沿って流れるが、塗料ミストP1は空気よりも重いためその慣性力により底部25に衝突する。これによって、塗料ミストP1が底部25に付着することで汚染空気A1から塗料が分離される。
【0030】
また、塗料捕集器23の底部25で偏向された汚染空気A1は、底部25に沿って流れた後、側壁26に略直角に吹き付けられるので、汚染空気A1に残存する塗料ミストP1が側壁26に衝突する。これにより、側壁26に塗料が付着して汚染空気A1から分離される。さらに、側壁26で偏向された汚染空気A1が縁部27に吹き付けられることにより、汚染空気A1に残存する塗料ミストP1がその縁部27に衝突する。これにより、縁部27に塗料が付着して汚染空気A1から分離される。
【0031】
そして、塗料捕集器23において、汚染空気A1から塗料が分離されることで浄化された空気A2が排気ダクト18を通して排気室6から排出される。
【0032】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0033】
(1)本実施の形態の塗装ブース1において、塗装室4の塗装空間3には給気室5から取り入れられた空調空気が下方に向けて流通されている。この塗装空間3において、その空気と塗料とを混合した塗料ミストP1が塗装機13から自動車部品2に噴射されることでその塗装が行われる。また、給気室5から取り入れられた空気と自動車部品2に付着しなかった塗料ミストP1との混合気体である汚染空気A1は、空気集合部材21によって徐々に小断面積となる経路に集合され増速された後、排気用配管22を介して排気室6の塗料捕集器23に向けて排出される。このようにすれば、塗装空間3の汚染空気A1をスムーズに排気することができ、自動車部品2の塗装品質を十分に確保することができる。また、本実施の形態の塗料捕集器23は、排気用配管22から排出された汚染空気A1が略直角に衝突しうる底部25と、その底部25によって偏向された汚染空気A1の気流に対し略直角になるよう折り返された側壁26とを備えているので、それら底部25と側壁26とに汚染空気A1を衝突させることで塗料を確実に付着分離させることができる。従って、本実施の形態によれば、従来技術のように水などの液体を用いることなく、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1を効率よく捕集することができる。
【0034】
(2)本実施の形態の塗料捕集器23では、折り返し壁として、側壁26に加えてその側壁26の上端に縁部27を設けたので、これら側壁26や縁部27に汚染空気A1を衝突させることでその汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1を確実に付着分離することができる。
【0035】
(3)本実施の形態の塗料捕集器23では、側壁26の内側折り返し部28がなだらかな曲面状に形成されているので、塗料捕集器23のメンテナンス作業をする際には、その内側折り返し部28や底部25に付着した塗料を容易に除去することができる。
[第2の実施の形態]
【0036】
次に、本発明を具体化した第2の実施の形態を図3に基づき説明する。
【0037】
本実施の形態の余剰霧化塗料捕集システムでは、塗料捕集器31の構成が第1の実施の形態と異なり、他の構成は第1の実施の形態と同じである。
【0038】
図3に示されるように、本実施の形態の塗料捕集器31は、底部32(壁部材)及び側壁33(折り返し壁)を有し上端に開口部34を有する釜状の容器である。また、この塗料捕集器31の底面35は傾斜しており、その底面35の最下端部となる位置に塗料排出用のドレイン36が接続されている。本実施の形態の塗料捕集器31は、汚染空気A1に塗料ミストP1が比較的多く含まれる場合に用いられる。この場合、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1は、底部32や側壁33に衝突することで液化する。そして、液体状の塗料P2は、側壁33の壁面や底部32の傾斜した底面35に沿って流れて塗料捕集器31の下部に蓄えられ、さらに、塗料排出手段としてのドレイン36を介して確実に回収される。このように、塗料捕集器31を構成することにより、塗料P2の捕集効率を高めることができる。
[第3の実施の形態]
【0039】
次に、本発明を具体化した第3の実施の形態を図4に基づき説明する。
【0040】
本実施の形態の余剰霧化塗料捕集システムでは、複数の塗料捕集器41,42,43を備える点が上記第1の実施の形態と異なり、他の構成は上記第1の形態と同じである。
【0041】
図4に示されるように、排気室6において、3つの塗料捕集器41,42,43が設けられている。各塗料捕集器41〜43は、底部44〜46(壁部材)と底部44〜46に対して略直角に折り返された側壁47〜49(折り返し壁)とを備え、汚染空気A1を通気可能な間隔を有して配置されている。詳しくは、第1の塗料捕集器41は、第1の実施の形態と同様に釜状の容器であり、排気用配管22の直下流側において開口部を上側(排気用配管22側)に向けた状態で設けられている。第2の塗料捕集器42は、円環状に形成された溝型の容器であり、第1の塗料捕集器41及び第3の塗料捕集器43と対向するようその開口部を下方に向けた状態で配置されている。第3の塗料捕集器43は、円環状に形成された溝型の容器であり、第1の塗料捕集器41の周囲において、その開口部を上方に向けた状態で配置されている。
【0042】
より詳しくは、第1の塗料捕集器41の側壁47とその側壁47に隣接する第3の塗料捕集器43の側壁49との上端に対して所定の間隔をあけた状態でその上端を覆うように第2の塗料捕集器42が配置されている。そして、それら塗料捕集器41〜43の底部44〜46及び側壁47〜49によって汚染空気A1が流れる通路が形成されている。
【0043】
本実施の形態において、排気用配管22から排出された汚染空気A1は、第1の塗料捕集器41の底部44に吹き付けられると、その底部44に沿って流れる。そして、汚染空気A1は、側壁47に衝突して偏向された後、第2の塗料捕集器42の底部45に吹き付けられる。また、第2の塗料捕集器42の底部45で偏向された汚染空気A1は、第2の塗料捕集器42の側壁48に衝突することより偏向された後、第3の塗料捕集器43の底部46に吹き付けられる。さらに、第3の塗料捕集器43の底部46で偏向された汚染空気A1は、その側壁49に衝突することにより偏向された後、第3の塗料捕集器43の外部に排出される。
【0044】
このように本実施の形態では、上段側の塗料捕集器41,42で最終的に偏向された汚染空気A1が下流側の塗料捕集器42,43の底部45,46に略直角に吹き付けられるようになっている。この場合、汚染空気A1に含まれる空気は、底部45,46に沿って流れるが、塗料ミストP1はその底部45,46に慣性衝突して付着分離される。また、各塗料捕集器41〜43において、底部44〜46で偏向された汚染空気A1はその側壁47〜49に略直角に吹き付けられるので、この側壁47〜49においても汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1が慣性衝突して付着分離される。従って、本実施の形態のように、複数の塗料捕集器41〜43を設けることにより、塗料を効率よく捕集することができる。
【0045】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0046】
・上記第1の実施の形態では、塗料捕集器23において側壁26の上端に縁部27が形成されるものであったが、図5の塗料捕集器51のように、その縁部27を省略してもよい。また、図6の塗料捕集器52のように、縁部27の先端に、下方に向けて略直角に折り返された折り返し壁53を形成してもよい。さらに、図7に示すような塗料捕集器54を用いることもできる。この塗料捕集器54では、底部25及び側壁26に加えて蓋部55が設けられている。蓋部55は、上端の開口部24を覆う部材であって、排気用配管22に対応する中央部分のみが開口している。また、側壁26の一部には、浄化した空気A2を外部に排出する排出口56が形成されている。このような塗料捕集器51,52,54を用いた場合でも、塗料を効率よく捕集することができる。
【0047】
・上記第3の実施の形態では、排気室6内に3つの塗料捕集器41〜43を備えるものであったが、これら捕集器41〜43の形状や個数は適宜変更することができる。例えば、図8のような各塗料捕集器61,62や図9のような各塗料捕集器61,63,64に変更してもよい。具体的には、図8に示されるように、排気室6には2つの塗料捕集器61,62が設けられている。塗料捕集器61は、底部66及び側壁67を有し上端に開口部68を有する釜状の容器であり、排気用配管22の直下流側に設けられている。塗料捕集器62は、塗料捕集器61の側壁67に沿って吹き上がった汚染空気A1を衝突させる壁部材であり、塗料捕集器61の上方において所定の間隔をあけて配置されている。この塗料捕集器62の基端は、排気室6の側壁に固定され、先端側が塗料捕集器61の開口部68の一部を塞ぐよう配設されている。このように各塗料捕集器61,62を構成した場合でも、それら塗料捕集器61,62によって塗料を確実に捕集することができる。
【0048】
また、図9に示されるように、排気室6には3つの塗料捕集器61,63,64が設けられている。塗料捕集器61は、図8の塗料捕集器61と同一形状の容器であり、排気用配管22の直下流側に設けられている。塗料捕集器63は、塗料捕集器61の側壁67に沿って吹き上がった汚染空気A1を衝突させる壁部材であり、塗料捕集器61の上方において所定の間隔をあけて配置されている。この塗料捕集器63の基端は、排気室6の側壁に固定され、先端側が塗料捕集器61の開口部68の一部を塞ぐよう配設されている。そして、その塗料捕集器63の先端部には、折り返し壁69が略直角に設けられている。塗料捕集器64は、塗料捕集器63の上方において所定の間隔をあけて配置されている。この塗料捕集器64は、底部70及び側壁71を備える釜状の容器であり、塗料捕集器61と対向するよう開口部72を下方に向けた状態で配置されている。より詳しくは、塗料捕集器64は、その底部70の中央に貫通穴73が形成され、その貫通穴73に排気用配管22の先端が挿入されることでその配管22に固定されている。このように各塗料捕集器61,63,64を構成した場合でも、それら塗料捕集器61,63,64によって塗料を確実に捕集することができる。
【0049】
・上記第2の実施の形態の塗料捕集器31は、液体状の塗料P2を蓄えて塗料排出用のドレイン36から排出するものであったが、図10〜図12に示すように、その塗料捕集器31に加えて、液体状の塗料P2を捕集するための傾斜板75,76,77(壁部材)を塗料捕集器31の上側に設けてもよい。
【0050】
具体的には、図10に示されるように、傾斜板75は、排気室6の側壁に固定され、排気室6の中央部に向かって下方に傾斜している。この傾斜板75における下側の傾斜面78が汚染空気A1を受ける面となり、この傾斜面78に塗料ミストP1が衝突することで液化する。そして、液体状の塗料P2は、傾斜面78に沿って下方に流れ、傾斜板75の最下端部から落下して塗料捕集器31で捕集される。また、傾斜板75と排気用配管22との間には、所定の隙間が形成されており、排気室6においてその傾斜板75よりも上側に排気ダクト18が接続されている。そして、塗料捕集器31と傾斜板75とによって塗料ミストP1が捕集され浄化された空気A2は、傾斜板75と排気用配管22との隙間を通過して排気ダクト18から排出される。
【0051】
図11の傾斜板76は、排気室6の側壁に固定されるともに、排気用配管22に固定されている。つまり、傾斜板76と排気用配管22との間には、図10のような隙間は形成されていない。この傾斜板76も排気室6の中央部に向かって下方に傾斜しており、下側の傾斜面79が汚染空気A1を受ける面となっている。この傾斜面79に塗料ミストP1が衝突することで液化する。そして、液体状の塗料P2は、傾斜面79に沿って下方に流れ、傾斜板76の最下端部及び排気用配管22の先端から落下して塗料捕集器31で捕集される。また、排気室6においてその傾斜板76よりも下側に排気ダクト18が接続されており、塗料捕集器31と傾斜板76とによって塗料ミストP1が捕集され浄化された空気A2は、その排気ダクト18から排出される。
【0052】
図12の傾斜板77は、排気用配管22に固定され、排気室6の中央部から外周部に向かって下方に傾斜している。この傾斜板77における下側の傾斜面80が汚染空気A1を受ける面となる。この傾斜板77(ガイド部材)の傾斜面80(ガイド面)によって、排気用配管22から排出される汚染空気A1が外側に拡散しないようにガイドされている。そして、汚染空気A1に含まれる塗料ミストP1が傾斜面80に衝突することで液化する。また、液体状の塗料P2は、傾斜面80に沿って下方に流れ、傾斜板77の最下端部から落下する。さらに、塗料捕集器31の周囲には、傾斜板77の最下端部から落下した塗料P2を受けるトイ81が設けられている。このトイ81は、塗料排出用のドレイン36に接続されており、トイ81に溜まった塗料P2は塗料排出用のドレイン36を介して回収される。
【0053】
・図10〜図12では、釜状の塗料捕集器31の上側に設ける塗料捕集器として傾斜板75〜77を用いるものであったが、これに限定されるものではない。図13に示されるように、傾斜板76に加えて、複数のボール84を敷き詰めたフィルタ材85を設けるようにしてもよいし、図14に示されるように、傾斜板76に代えて複数のボール84を敷き詰めたフィルタ材85を設けるようにしてもよい。なお、フィルタ材85は、各ボール84が落下しないように保持するための金網などを含んで構成されている。
【0054】
・上記各実施の形態では、塗料の付着性が低い材料を用いて塗料捕集器23,31,41〜43,51,52,54,61〜64を形成していたが、例えば、容器の表面を粘着剤のコート膜(フィルムコートなど)で覆うようにしてもよい。またこの場合、1枚ずつ剥がすことが可能な多層フィルムを容器表面に形成してもよい。このように塗料捕集器23,31,41〜43,51,52,54,61〜64を構成すれば、その表面に付着した塗料粕を分離しやすくなるため、メンテナンス性を向上させることができる。
【0055】
・上記第2の実施の形態では、塗料捕集器31の底部32に塗料排出用のドレイン36を設けたが、このドレイン36に代えて塗料たまり(図示略)を設け、その塗料たまりに溜まった塗料P2を定期的に回収するよう構成してもよい。あるいは、塗料排出用のドレイン36に代わる塗料排出手段として、例えばポンプを設け、このポンプを用いて、溜まった塗料P2を常時または定期的に排出するようにしてもよい。
【0056】
・上記各実施の形態において、水性塗料を用いて自動車部品2の塗装を行うものであったが、溶剤型塗料を用いて自動車部品2の塗装を行うように構成してもよい。また、被塗物として自動車部品2以外に家電製品などの部品を塗装するものであってもよい。
【0057】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した各実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0058】
(1)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記余剰霧化塗料捕集手段における前記折り返し壁の内側折り返し部は、なだらかな曲面状に形成されていることを特徴とする余剰霧化塗料捕集システム。
【0059】
(2)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記余剰霧化塗料捕集手段は、前記排気体を略直角に衝突させる壁部材と対向する位置に設けられ、前記排気経路から排出された前記排気体を外側に拡散させないようにガイドするガイド面が形成されたガイド部材を有することを特徴とする余剰霧化塗料捕集システム。
【0060】
(3)請求項1乃至5のいずれか1項において、前記余剰霧化塗料捕集手段は、底部及び側壁を有し上端に開口部を有する釜状の容器を有し、その容器の底部が前記壁部材として機能し、その容器の側壁が前記折り返し壁として機能することを特徴とする余剰霧化塗料捕集システム。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態の塗装ブースを示す断面図。
【図2】第1の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図3】第2の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図4】第3の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図5】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図6】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図7】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図8】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図9】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図10】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図11】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図12】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図13】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【図14】別の実施の形態における塗料捕集器を示す断面図。
【符号の説明】
【0062】
1…余剰霧化塗料捕集システムを構成する塗装ブース
2…被塗物としての自動車部品
3…塗装空間
4…塗装室
13…塗料霧化手段としての塗装機
15…吸入経路を構成する空調ユニット
21…集合手段としての空気集合部材
22…排気経路としての排気用配管
23,31,41〜43,51,52,54,61〜64…余剰霧化塗料捕集手段としての塗料捕集器
25,32,44〜46,66,70…壁部材としての底部
26,33,47〜49,67,71…折り返し壁としての側壁
27…折り返し壁としての縁部
35…底面
36…塗料排出手段としてのドレイン
53,69…折り返し壁
75〜77…折り返し壁としての傾斜板
A1…排気体としての汚染空気
P1…霧化塗料としての塗料ミスト
P2…液体状の塗料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から取り入れた空気が流通されるとともに被塗物が収容される塗装空間を有する塗装室と、
一定条件に調整された空気を所定方向から前記塗装空間内に取り入れる吸入経路と、
空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料を前記被塗物に噴射する塗料霧化手段と、
前記塗料霧化手段の下流側に設置され、前記吸入経路から取り入れた空気と前記被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料との混合気体である排気体を、徐々に小断面積となる経路に集合させつつ増速させる集合手段と、
前記集合手段で増速させた排気体を、前記吸入経路の反対側となる方向へ排出する排気経路と、
前記排出経路の直下流側に設置され、増速させた排気体に含まれる前記余剰霧化塗料を付着させて分離する余剰霧化塗料捕集手段と
を備える余剰霧化塗料捕集システムにおいて、
前記余剰霧化塗料捕集手段は、前記集合手段で集合され前記排気経路から排出された排気体が略直角に衝突しうる壁部材と、さらにその壁部材によって偏向された排気体の気流に対し略直角になるよう折り返された折り返し壁とを有することを特徴とする余剰霧化塗料捕集システム。
【請求項2】
前記余剰霧化塗料捕集手段には、前記折り返し壁が複数段設けられていることを特徴とする請求項1に記載の余剰霧化塗料捕集システム。
【請求項3】
前記余剰霧化塗料捕集手段は、前記排気体を壁部材及び折り返し壁に衝突させ、前記排気体に含まれる余剰霧化塗料を前記壁部材及び折り返し壁に付着させて液体状の塗料にして捕集するものであり、下側に位置する底面が傾斜を有し、その底面の最下端部となる位置に、塗料溜まりまたは塗料排出手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の余剰霧化塗料捕集システム。
【請求項4】
前記余剰霧化塗料捕集手段を複数備え、各余剰霧化塗料捕集手段は、前記排気体を通気可能な間隔を有して配置され、下流側の余剰霧化塗料捕集手段には、上流側の余剰霧化塗料捕集手段で最終的に偏向された前記排気体の気流に対し、対向する壁部材を略直角に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の余剰霧化塗料捕集システム。
【請求項5】
前記余剰霧化塗料捕集手段の上側に、前記排気体を受ける面を傾斜させた壁部材を有する余剰霧化塗料捕集手段をさらに設け、その上側の壁部材に前記排気体の余剰霧化塗料が衝突して液化した液体状の塗料を下側の前記余剰霧化塗料捕集手段に落下させて捕集するように構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の余剰霧化塗料捕集システム。
【請求項1】
外部から取り入れた空気が流通されるとともに被塗物が収容される塗装空間を有する塗装室と、
一定条件に調整された空気を所定方向から前記塗装空間内に取り入れる吸入経路と、
空気と微粒化塗料とを混合した霧化塗料を前記被塗物に噴射する塗料霧化手段と、
前記塗料霧化手段の下流側に設置され、前記吸入経路から取り入れた空気と前記被塗物に付着しなかった余剰霧化塗料との混合気体である排気体を、徐々に小断面積となる経路に集合させつつ増速させる集合手段と、
前記集合手段で増速させた排気体を、前記吸入経路の反対側となる方向へ排出する排気経路と、
前記排出経路の直下流側に設置され、増速させた排気体に含まれる前記余剰霧化塗料を付着させて分離する余剰霧化塗料捕集手段と
を備える余剰霧化塗料捕集システムにおいて、
前記余剰霧化塗料捕集手段は、前記集合手段で集合され前記排気経路から排出された排気体が略直角に衝突しうる壁部材と、さらにその壁部材によって偏向された排気体の気流に対し略直角になるよう折り返された折り返し壁とを有することを特徴とする余剰霧化塗料捕集システム。
【請求項2】
前記余剰霧化塗料捕集手段には、前記折り返し壁が複数段設けられていることを特徴とする請求項1に記載の余剰霧化塗料捕集システム。
【請求項3】
前記余剰霧化塗料捕集手段は、前記排気体を壁部材及び折り返し壁に衝突させ、前記排気体に含まれる余剰霧化塗料を前記壁部材及び折り返し壁に付着させて液体状の塗料にして捕集するものであり、下側に位置する底面が傾斜を有し、その底面の最下端部となる位置に、塗料溜まりまたは塗料排出手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の余剰霧化塗料捕集システム。
【請求項4】
前記余剰霧化塗料捕集手段を複数備え、各余剰霧化塗料捕集手段は、前記排気体を通気可能な間隔を有して配置され、下流側の余剰霧化塗料捕集手段には、上流側の余剰霧化塗料捕集手段で最終的に偏向された前記排気体の気流に対し、対向する壁部材を略直角に設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の余剰霧化塗料捕集システム。
【請求項5】
前記余剰霧化塗料捕集手段の上側に、前記排気体を受ける面を傾斜させた壁部材を有する余剰霧化塗料捕集手段をさらに設け、その上側の壁部材に前記排気体の余剰霧化塗料が衝突して液化した液体状の塗料を下側の前記余剰霧化塗料捕集手段に落下させて捕集するように構成したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の余剰霧化塗料捕集システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−28586(P2009−28586A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192694(P2007−192694)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】
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