説明

余長線収納ボックス

【課題】壁面、天井、床面等の各種の部分に配置でき、線材の余長線をコンパクトに収納し且つ引き出すことが可能で、ローゼットの取付位置に自由度が持てるようにする。
【解決手段】線材Lの余長線L1を長円形状の収納部5の内周壁面に沿ってループ状にして収納可能としたベース板2と、該ベース板2の収納部5内一端側寄りに回転自在に配設され、ベース板2外方への線材Lの引っ張りにより収納部5内の余長線L1を最小半径を保つように巻き込む台形錘状の巻き取りコマ3と、ベース板2の収納部5上側を塞ぐためのカバー4とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線材の余長線を収納可能とし、且つ余長線を所望の長さに引き出し可能とした余長線収納ボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、局側より工事された線材の余りである余長線は、局側もしくは利用者側が丸める等の処理をして部屋の適当な場所に放置されている。
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来においては、部屋内部で余長線は大きなリング状に丸め込まれた状態で放置されているため、これに手脚や器具等を引っ掛ける等して非常に危険である。しかも、PC等の設置箇所の移動等によるローゼットの取付位置の変更により、この丸め込んだ余長線の必要な長さ部分だけを引き出してローゼットに繋ぐ場合、必要な長さ分を調整して引き出すことが難しい上に、余長線が絡まってしまうことがあり、非常に面倒で時間の掛かる作業になるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、壁面、天井、床面等の各種の部分に配置でき、線材の余長線をコンパクトに収納し且つ引き出すことが可能で、工事の失敗やPC等の設置箇所の移動等によるローゼットの取付位置の変更など当該ローゼットの取付位置に自由度が持てるようにすることができる余長線収納ボックスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、線材の余長線を長円形状の収納部の内周壁面に沿ってループ状にして収納可能としたベース板と、該ベース板の収納部内一端側寄りに回転自在に配設され、ベース板外方への線材の引っ張りにより収納部内の余長線を最小半径を保つように巻き込ませる台形錘状の巻き取りコマと、ベース板の収納部上側を塞ぐためのカバーとを備えてなることを特徴とする。
【0006】
収納部の幅員は、線材の最低曲径で決定され、収納量は線材の重ね段数と、巻き取りコマによる線材の巻き取り半径で決定されるものとなっている。
【0007】
収納部は、ベース板の取り付け背面側に前記線材の引き出し高さが同じになるように形成されてなる。
【0008】
収納部には、収納された線材の当該収納部外方への乗り上げを防止する爪部を備えている。
【0009】
収納部には、巻き取りコマの位置する近傍の内壁面下端側の一部に重り防止用の出っ張り部分を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、壁面、天井、床面等の各種の部分に配置でき、線材の余長線をコンパクトに収納し且つ引き出すことが可能で、工事の失敗やPC等の設置箇所の移動等によるローゼットの取付位置の変更など当該ローゼットの取付位置に自由度が持てるようにすることができる。
【0011】
すなわち、本発明は、ベース板外方への線材の引っ張りにより収納部内の余長線を最小半径を保つように巻き込ませる台形錘状の巻き取りコマを備えたので、ベース板の収納部から余長線を所望の長さだけ引き出すことで、離隔位置にあるローゼットに容易に繋ぐことができ、これにより、工事の失敗やPC等の設置箇所の移動等によるローゼットの取付位置の変更など当該ローゼットの取付位置に自由度を付与することができる。
【0012】
また、収納部の幅員は、線材の最低曲径で決定され、収納量は線材の重ね段数と、巻き取りコマによる線材の巻き取り半径で決定されるものとなっているので、線材の余長線を収納部内にコンパクトに収納することができると同時に、収納部内の余長線を巻き取りコマに最小半径を保つように巻き込ませることができる。
【0013】
収納部は、ベース板の取り付け背面側に前記線材の引き出し高さが同じになるように形成されてなるので、引き出された線材は、ベース板の取り付け背面が当接する部屋の壁面、天井、床面等に沿って引き出されるものとなり、引き出し後の線材は、壁面、天井、床面等に対して離反した状態とならないことから、線材自体の配設固定が容易となる。
【0014】
収納部には、収納された線材の当該収納部外方への乗り上げを防止する爪部を備えたので、収納部内への線材の過度な収納による当該線材の歪みや撓み等の損傷を未然に防止することができる。
【0015】
収納部には、巻き取りコマの位置する近傍の内壁面下端側の一部に重り防止用の出っ張り部分を備えたので、1段目から2段目にかけて余長線を引き出した際に該余長線が1段目に食い込まないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の一形態を説明する。
本発明に係る余長線収納ボックス1は、図8に示すように、線材Lの余長線L1をコンパクトに収納し且つ引き出すことが可能とすることで、ローゼットRの取付位置の変更に自由度が持てるようにしたものであり、図1に示すように、線材Lの余長線L1を収納可能としたベース板2と、該ベース板2外方への線材Lの引っ張りにより内部の余長線L1を最小半径を保つように巻き込ませるための台形錘状の巻き取りコマ3と、ベース板2の上側を塞ぐためのカバー4とから構成されている。
【0017】
すなわち、図2に示すように、ベース板2の内側には、上側開口による長円形状の収納部5が凹設され、収納部5の上側開口縁部における互いに対向する箇所には、収納された線材Lの余長線L1が当該収納部5の上側開口縁部位置よりも外方へ乗り上げてしまうのを防止するための爪部5aが突設されている。
【0018】
さらに、図6に示すように、後述する突起7に回転可能に嵌着された台形錘状の巻き取りコマ3の周面に対向する収納部5内壁面の下端側の一部には、重り防止用の段差状となった出っ張り部分17を備え、収納部5内の1段目から2段目にかけて余長線L1を引き出した際に、該余長線L1が1段目に食い込まないようにしてある。
【0019】
すなわち、図7(d)に示すように、この重り防止用の出っ張り部分17が無い場合には、収納された余長線L1の1段目を引っ張った後で、2段目を引っ張った際には線材Lが下方向に行こうとするために1段目に食い込んで引っ張りが阻止されてしまう。
【0020】
これに対し、図7(a)乃至図7(c)に示すように、この重り防止用の出っ張り部分17の存在によって収納部5の下段側が、巻き取りコマ3の下側において小さくなった外径に対応して狭くなるため、収納された余長線L1の1段目を引っ張った後で、2段目を引っ張った際においては、このような食い込みが防止されるのである。
【0021】
また、収納部5の一端側中央には、図4に示すように、局側からの線材Lを導入させるために、ベース板2の取り付け壁面(ベース板2の背面側)位置に至る深溝状となったスリット部6を設けてある。
【0022】
そして、スリット部6の内側には、図5(b)に示すように、スロープ形状に形成された円弧状の収納部側ガイド溝14に沿わせて線材Lの余長線L1をベース板2の背面側に引き回し配置させるようにしてある。これにより、線材Lの挿入側と引き出し側との高さを互いに揃えることができるのである。
【0023】
さらに、収納部5の背面側には、図4、図5(a)、図5(c)、図5(d)に示すように、局側からの線材Lを導入させるためのガイドとなるよう長孔状の導入開口部13bを設け、図5(d)に示すように、該導入開口部13bを介して前記収納部側ガイド溝14に通じる略S字形蛇行状のガイド溝条部13を設けてある。このとき、図5(d)に示すように、ガイド溝条部13の複数箇所には、線材Lの飛び出し防止のための係止爪13aを設けてある。そして、線材Lの余長線L1は、図2または図7等に示すように、長円形状の収納部5の内周壁面に沿ってループ状にして収納される。
【0024】
図1乃至図4に示すように、この収納部5の内部における一端側寄りには、スリット部6に対向するように、上側開口部分が内側に撓むよう一対の割溝形状となった円柱状の突起7が立設されており、該突起7には台形錘状の巻き取りコマ3の中央の孔3aが回転自在に嵌着されている。
【0025】
このとき、巻き取りコマ3は、図1および図4に示すように、台形錘状が逆倒した状態となって突起7に差し込まれ、これによって巻き取りコマ3の外径が収納部5の内底部から上側開口部に至るに伴って次第に拡径された状態となって配置される。そして、スリット部6からベース板2外方への線材Lの引っ張りにより、収納部5内部の余長線L1を最小半径を保つようにして巻き込ませるものとしている。
【0026】
さらに、この収納部5の幅員は、線材Lの最低曲径で決定されており、また収納部5の収納量は線材Lの重ね段数と、巻き取りコマ3による線材Lの巻き取り半径によって決定されている。
【0027】
図2、図3(b)、図6に示すように、前記した突起7の内側とこれに対称となるベース板2の片側位置にはネジ孔8が形成されており、部屋内の所定の位置にベース板2の背面を当接しておいてから当該ベース板2のネジ孔8にネジ9を挿入してねじ込むことによって固定される。
【0028】
尚、このベース板2は、ネジ9で固定する替わりに、例えば両面粘着テープ等でもって固定しても良い。
【0029】
また、図1、図2(a)、図3(a)に示すように、カバー4の長手方向の両端部には、矩形切欠状の溝部12がそれぞれ一対で合計4つとなって形成されており、該溝部12位置の内壁面側は爪状の突部(不図示)を設けてある。
【0030】
これに対応して、図1、図2に示すように、ベース板2の長手方向の両端部には、開口側にガイド溝15、該ガイド溝15の下端側に穴部16それぞれが、互いに一対で合計4つとなって形成されており、ベース板2の収納部5上側をカバー4で塞いだ際には、前記溝部12内側の突部が、ガイド溝15に案内されながら穴部16に弾性的に係架されることでカバー4はベース板2に固定される。
【0031】
また、ベース板2からカバー4を取り外す際には、ベース板2の外壁面上端側に凹設された溝部12にドライバー等の工具や爪等で引っ掛けてこじ開ける。
【0032】
次に、以上のように構成された最良の形態についての組立、使用、動作の一例について説明する。
【0033】
先ず、図8に示すように、局側からの工事により外部ケーブルKから分岐された線材Lを屋外に設置されている変圧器Pを介して余長線収納ボックス1内に収納する。このとき、線材Lの余長線L1は、図2に示すように、ベース板2に設けられた長円形状の収納部5の内周壁面に沿ってループ状にして収納され、線材Lの挿入側と引き出し側との高さは、互いに揃えられた状態となる。すなわち、ベース板2の取り付け背面側に線材Lの引き出し高さが挿入側と同じになっている。
【0034】
また、収納部5の爪部5aによって、収納された線材Lの余長線L1が当該収納部5の上側開口縁部位置よりも外方へ乗り上げてしまうのを防止している。しかも、図7に示すように、収納部5内においては、巻き取りコマ3を支持する突起7が位置する近傍の内壁面の出っ張り部分17が、収納された余長線L1の重りを防止している。
【0035】
PC等の各種電気機器Sの設置場所が決定されるのに伴い、ローゼットRの位置が決定される。そして、局側作業において、余長線収納ボックス1から余長線L1を引き出し、ローゼットRに繋げる(図8参照)。
【0036】
このとき、余長線L1は、図4(a)および図4(b)に示すように、全てが収納部5の内周にループ状となって巻き込まれている状態から、図4(c)および図4(d)に示すように、ベース板2外方への線材Lの引っ張りにより内部の余長線L1を最小半径を保つようにして、巻き取りコマ3の下段から順次上段に向けて巻き付いて行く。そして、図4(e)および図4(f)に示すように、巻き取りコマ3に全ての余長線L1が巻き取られた状態となる。
【0037】
そして、利用者側において、PC等の各種電気機器SとローゼットRとの接続を行う(図8参照)。このようにして、例えば工事の失敗やPC等の各種電気機器Sの設置箇所の移動等によって、ローゼットの取付位置が変更された場合でも、余長線収納ボックス1内から余長線L1を引き出すことで、これに十分に対処することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における余長線収納ボックスの分解斜視図である。
【図2】同じく余長線収納ボックスの組み付け例を示し、(a)は部屋内にベース板をネジで取り付け後、ベース板にカバーを取り付ける状態の斜視図である。(b)は部屋内にベース板をネジで取り付ける状態の平面図である。
【図3】同じく余長線収納ボックスの組立状態を示すもので、(a)は組立後の斜視図、(b)は(a)のA−A部分の断面図、(c)は(b)のB−B部分の断面図である。
【図4】同じく収納部に収納された余長線をベース板外方に引き出す動作を示すもので、(a)は余長線を全て収納部内周に巻き込み収納した状態の斜視図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は余長線を収納部から外方へ引き出している状態の斜視図、(d)は(c)のD−D断面図、(e)は余長線を全て巻き取りコマに巻き取った状態の斜視図、(f)は(e)のE−E断面図である。
【図5】同じく余長線収納ボックスへの余長線の収納例を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のF−F断面図、(c)は側面図、(d)は背面図である。
【図6】同じく収納部内の壁面に重り防止用の出っ張り部分を設けた例を示すもので、(a)は平面図、(b)は(a)のG−G断面図である。
【図7】同じく重り防止用の出っ張り部分の作用を示すもので、(a)は全ての余長線を収納した状態の縦断面図、(b)は1番下の段にある余長線を引っ張った状態の縦断面図、(c)は更に2段目の余長線を引っ張った状態の縦断面図、(d)は重り防止用の出っ張り部分が無い場合の線材に対する作用を示す縦断面図である。
【図8】同じく余長線収納ボックスの設置例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
L 線材
L1 余長線
R ローゼット
S 各種電気機器
K 外部ケーブル
P 変圧器
1 余長線収納ボックス
2 ベース板
3 巻き取りコマ
3a 孔
4 カバー
5 収納部
5a 爪部
6 スリット部
7 突起
8 ネジ孔
9 ネジ
12 溝部
13 ガイド溝条部
13a 係止爪
13b 導入開口部
14 収納部側ガイド溝
15 ガイド溝
16 穴部
17 出っ張り部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材の余長線を長円形状の収納部の内周壁面に沿ってループ状にして収納可能としたベース板と、該ベース板の収納部内一端側寄りに回転自在に配設され、ベース板外方への線材の引っ張りにより収納部内の余長線を最小半径を保つように巻き込ませる台形錘状の巻き取りコマと、ベース板の収納部上側を塞ぐためのカバーとを備えてなることを特徴とする余長線収納ボックス。
【請求項2】
収納部の幅員は、線材の最低曲径で決定され、収納量は線材の重ね段数と、巻き取りコマによる線材の巻き取り半径で決定されるものとなっている請求項1記載の余長線収納ボックス。
【請求項3】
収納部は、ベース板の取り付け背面側に前記線材の引き出し高さが同じになるように形成されてなる請求項1または2記載の余長線収納ボックス。
【請求項4】
収納部には、収納された線材の当該収納部外方への乗り上げを防止する爪部を備えた請求項1乃至3のいずれか記載の余長線収納ボックス。
【請求項5】
収納部には、巻き取りコマの位置する近傍の内壁面下端側の一部に重り防止用の出っ張り部分を備えた請求項1乃至4のいずれか記載の余長線収納ボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−270513(P2008−270513A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111269(P2007−111269)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(391005581)三和電気工業株式会社 (66)
【Fターム(参考)】