説明

作業工具

【課題】挟持された先端工具を駆動させる作業工具の大型化を抑制する技術を提供する。
【解決手段】スピンドル120の外側に配置されたOリング132もしくはコイルバネ134の付勢力によって、スピンドル120の内側に配置されたクランプシャフト123が保持される電動式振動工具100が構成される。そして、カムレバー150を旋回させることで移動するスラストピン140によって、クランプシャフト123に作用しているOリング132もしくはコイルバネ134の付勢力を解除し、クランプシャフト123が取り外し可能となる。その結果、特別な工具を用いることなく、ブレード200が交換可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挟持された先端工具を駆動させる作業工具に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2007−533472号公報には、作業スピンドルと締結要素に挟持された工具を駆動させる作業工具が記載されている。この作業工具は、締結要素が作業スピンドルに対して、工具を保持するクランプ位置と、作業スピンドルから取り外される開放位置の間で摺動可能に構成されている。そして、クランプ位置において、作業スピンドルの内側に設けられた止めアセンブリで、締結要素のクランプシャフトを保持し、作業スピンドルの内側に設けられたバネ要素により与えられるクランプ力によって、作業スピンドルと締結要素の間に工具を挟持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2007−533472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特表2007−533472号公報に記載された作業工具においては、止めアセンブリやバネ要素等が配置される場所によっては、作業工具が大型化してしまうおそれがある。そこで、本発明は、上記に鑑み、作業工具の大型化を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る作業工具の好ましい形態によれば、第1クランプ部を有する第1シャフトと、第2クランプ部を有する第2シャフトとを有し、第1クランプ部と第2クランプ部で挟持された先端工具を駆動させる作業工具が構成される。第1シャフトと第2シャフトは、軸方向が互いに平行に配置され、第2シャフトは、第1シャフトの内側に配置されている。そして、第1シャフトの外側に、第2シャフトを保持するための付勢力を生じさせる付勢部材が設けられている。なお、第2シャフトは、少なくとも一部が第1シャフトの内側に配置されていればよい。
【0006】
本発明によれば、第1シャフトの外側に、第2シャフトを保持するための付勢力を生じさせる付勢部材が設けられているため、第1シャフトを細くすることができる。これにより、第1シャフトの重量が軽くなり、作業工具が軽量化される。さらに、第1シャフトを細くすることができるため、第1シャフトを駆動するための駆動機構を小型化することができる。その結果、作業工具を小型化することができる。
【0007】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、第1シャフトは、軸方向における中間領域に当該軸方向と交差する交差方向に向かって開口する開口部を有し、開口部を介して付勢部材の付勢力を第2シャフトに伝達する保持部材を有している。
【0008】
本形態によれば、第1シャフトの開口部に配置されている保持部材によって付勢力を第2シャフトに伝達することができる。したがって、第1シャフトの内側に保持部材を配置する構成に比べて、第1シャフトを細くすることができ、その結果、作業工具を小型化することができる。
【0009】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、付勢部材は、付勢力を第1シャフトの軸方向と平行に作用させる構成である。そして、保持部材は、付勢力を交差方向における第2シャフトに向かう方向の力に変換して第2シャフトを保持している。
【0010】
本形態によれば、付勢部材の付勢力を第1シャフトの軸方向と平行に作用させるため、第1シャフトの軸方向に交差する方向に付勢部材が伸縮して付勢力を付与する構成に比べて、作業工具の第1シャフトの軸方向に交差する方向への大型化を抑制することができる。
【0011】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、保持部材は、付勢部材の付勢力を受けて第1シャフトの軸方向に移動する軸方向移動部材と、軸方向移動部材に係合し、交差方向に移動する交差方向移動部材とを有している。そして、保持部材が、付勢力を交差方向における第2シャフトに向かう方向の力に変換して、交差方向移動部材が第2シャフトを保持している。
【0012】
本形態によれば、保持部材を軸方向移動部材と交差方向移動部材の2つの部材を係合させるだけの簡単な構成で形成することができる。
【0013】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、第1シャフトもしくは第2シャフトの軸方向と平行に移動可能に配置され、第1シャフトと前記第2シャフトを軸方向に相対移動させる変移部材と、変移部材に係合し、変位部材の移動に伴って移動する付勢力解除部材を有している。そして、付勢力解除部材は、第1シャフトと第2シャフトを軸方向に離隔する方向に相対移動させるように変移部材が移動する際に、保持部材による第2シャフトの保持を解除するように、付勢部材を移動させるよう構成されている。
【0014】
本形態によれば、変移部材が第1シャフトと第2シャフトを軸方向に離隔する方向に相対移動させるように移動する際に、保持部材による第2シャフトの保持を解除するように、付勢力解除部材が付勢部材を移動させるため、第1シャフトと第2シャフトの相対移動と同時に付勢力による第2シャフトの保持を解除することができる。そのため、第1シャフトと第2シャフトの相対移動と、第2シャフトの保持の解除を異なる操作で行う必要がなく、先端工具の取り外しを簡単に行うことができ、さらに特別な工具を用いることなく先端工具を交換することができる。
【0015】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、第1シャフトを回転可能に支持する支持部材を有している。そして、第1シャフトは、軸方向における2箇所で支持部材に支持されている。さらに、付勢部材は、一端が支持部材と当接して、第1シャフトとともに回転可能に保持されている。
【0016】
本形態によれば、第1シャフトを支持する支持部材を、付勢部材を保持する台座として利用することができる。そのため、作業工具の部品点数を減らすことができ、その結果、作業工具を小型化することができる。
【0017】
本発明に係る作業工具の別の好ましい形態によれば、第1クランプ部を有する第1シャフトと、第2クランプ部を有する第2シャフトと、第1クランプ部と第2クランプ部が近接する方向に付勢する付勢部材とを有し、第1クランプ部と第2クランプ部で挟持された先端工具を駆動させる作業工具が構成される。第1シャフトと第2シャフトは、軸方向が互いに平行に配置され、第2シャフトは、第1シャフトの内側に配置されている。そして、第1シャフトは、軸方向における2箇所で2つの支持部材によって回転可能に支持されており、当該軸方向における2つの支持部材の間に付勢部材が配置されている。なお、第2シャフトは、少なくとも一部が第1シャフトの内側に配置されていればよい。
【0018】
本発明によれば、付勢部材が第1シャフトの軸方向における2つの支持部材の間に配置されている。回転する部材において、軸方向における支持部材の間は、とかくデッドスペースとなりやすい。そのため、本発明では、デッドスペースを有効に利用することにより、作業工具を小型化することができる。
【0019】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、付勢部材は、第1シャフトの外側に配置されている。
【0020】
本形態によれば、付勢部材が第1シャフトの外側に配置されていることで、第1シャフトの内側に付勢部材が配置されている構成に比べて、第1シャフトを細くすることができる。これにより、第1シャフトの重量が軽くなり、作業工具が軽量化される。さらに、第1シャフトを細くすることができるため、第1シャフトを駆動するための駆動機構を小型化することができる。その結果、作業工具を小型化することができる。
【0021】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、付勢部材は、一端が支持部材と当接して、第1シャフトとともに回転可能に保持されている。
【0022】
本形態によれば、第1シャフトを支持する支持部材を、付勢部材を保持する台座として利用することができる。そのため、作業工具の部品点数を減らすことができ、その結果、作業工具を小型化することができる。
【0023】
本発明に係る作業工具の更なる形態によれば、付勢部材は、第2シャフトを保持するための付勢力を生じさせるよう構成されている。
【0024】
本形態によれば、付勢部材の付勢力によって、第1クランプ部と第2クランプ部を近接させるとともに、第2シャフトを保持することができる。すなわち、付勢部材が2つの機能を有することにより、作業工具の部品点数を減らすことができ、その結果、作業工具を小型化することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、作業工具の大型化を抑制できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る電動式振動工具の部分断面図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】図1のIII−III線における断面図である。
【図4】クランプシャフトを保持する構造を示す斜視図である。
【図5】図4の分解斜視図である。
【図6】カムレバーがクランプ位置に位置する状態を示す図である。
【図7】カムレバーがリリース位置に位置する状態を示す図である。
【図8】本実施形態の変形例に係る電動式振動工具の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の実施形態につき、図面を参照して詳細に説明する。本実施形態は、作業工具として、電動式振動工具に本発明を適用した例である。
【0028】
図1に示すように、電動式振動工具100は、例えば、ブレードや研磨パッド等の複数種類の工具を選択的に装着し、装着された工具を振動させて、被加工材に対して工具の種類に応じた切断や研磨などの加工を行う作業工具である。本実施形態では、工具の一例としてブレード200を用いて説明する。なお、ブレード200等の工具が、本発明における「先端工具」に対応する実施構成例である。
【0029】
図1、図2に示すように、電動式振動工具100は、本体ハウジング101に収納された駆動機構102、工具保持機構103、工具保持解除機構104等を主体として構成されている。
【0030】
駆動機構102は、モータ110、偏心軸112、ベアリング113、被駆動アーム114、スピンドル接続部115等を主体として構成されている。偏心軸112は、モータ110の出力軸111の先端であって、出力軸111の回転軸に対して偏心した位置に、回転軸と平行な方向に延在して配置されている。ベアリング113は、偏心軸112に取り付けられている。被駆動アーム114は、図3に示すように、スピンドル接続部115からモータ110に向けて延在する2本のアーム部114aで構成されている。そして、被駆動アーム114は、2本のアーム部114aがベアリング113の外側の対向する2箇所において、ベアリング113に当接するように配置されている。なお、図3においては、説明の便宜上、本体ハウジング101の図示を省略している。
【0031】
工具保持機構103は、ブレード200を保持するとともに、モータ110の出力をブレード200に伝達させてブレード200を振動させる機構であり、スピンドル120、クランプシャフト123、クランプシャフト保持機構130等を主体として構成されている。
【0032】
スピンドル120は、中空の円筒状部材であり、モータ110の出力軸111に対して交差する方向に長軸方向が延在するように配置されている。スピンドル120は、長軸方向の2箇所において、長軸方向周りに回転可能にベアリング125,126を介して、本体ハウジング101に支持されている。スピンドル120は、長軸方向におけるベアリング125,126の間の中間領域に、スピンドル120の径方向に貫通する、クランプ部材挿通孔122aが形成されている。さらに、スピンドル120は、長軸方向におけるクランプ部材挿通孔122aとベアリング126の間の中間領域に、クランプ部材挿通孔122aと交差する方向であって、スピンドル120の径方向に貫通する、係合ピン挿通孔122bが形成されている。さらに、本体ハウジング101の外側におけるスピンドル120の先端部には、フランジ121が取り付けられている。このスピンドル120が、本発明における「第1シャフト」に対応し、ベアリング125,126が、本発明における「支持部材」に対応し、クランプ部材挿通孔122aが、本発明における「開口部」に対応する実施構成例である。
【0033】
クランプシャフト123は、略円柱状の部材であり、一方の端部に一体に形成されたクランプヘッド124を有しており、他方の端部にクランプ部材131と係合する周方向に形成された係合溝を有している。クランプシャフト123は、スピンドル120の内側にスピンドル120の長軸方向と平行に配置されており、スピンドル120の内側を長軸方向に摺動可能とされている。また、クランプシャフト123は、スピンドル120に対して着脱可能に構成されている。このクランプシャフト123が、本発明における「第2シャフト」に対応する実施構成例である。
【0034】
以上の通り構成されたスピンドル120およびクランプシャフト123は、クランプヘッド124と、クランプヘッド124に対向するスピンドル120の先端部およびフランジ121との間にブレード200を挟持可能とされている。このスピンドル120の先端部およびフランジ121、クランプヘッド124がそれぞれ、本発明における「第1クランプ部」、「第2クランプ部」に対応する実施構成例である。
【0035】
クランプシャフト保持機構130は、図4、図5に示すように、クランプシャフト123のクランプヘッド124と反対側の端部を保持する機構であり、クランプ部材131、Oリング132、環状部材133、コイルバネ134を主体として構成されている。このクランプシャフト保持機構120を構成する部材が、本発明における「保持部材」に対応する実施構成例である。
【0036】
クランプ部材131は、スピンドル120の周方向における対向する2箇所に配置され、スピンドル120のクランプ部材挿通孔に挿通された部材であり、クランプ部材挿通孔を介して、スピンドル120の径方向に移動可能に構成されている。クランプ部材131は、クランプシャフト123と対向する位置に、クランプシャフト123の係合溝と係合可能な複数の凸部が形成されている。また、クランプ部材131は、スピンドル120の長軸方向に対して傾斜する傾斜面131aを有しており、当該傾斜面131aが環状部材133の傾斜面と係合するよう構成されている。
【0037】
クランプ部材131の外側には、Oリング132が配置されており、スピンドル120の中心に向かって径方向にクランプ部材131を付勢している。これにより、クランプ部材131に形成された凸部が、スピンドル120の内側に配置されたクランプシャフト123の篏合溝と篏合して、クランプシャフト123を保持可能とされている。また、Oリング132は、クランプシャフト123を保持するための付勢力をクランプ部材131に作用させるだけでなく、クランプ部材131がクランプシャフト123を保持していない場合においても、クランプ部材131の姿勢を保持するための付勢力をクランプ部材131に作用させている。このクランプ部材131が、本発明における「交差方向移動部材」に対応する実施構成例である。
【0038】
環状部材133は、スピンドル120の径方向におけるクランプ部材131の外側を囲むように配置された環状の部材であり、スピンドル120の長軸方向に移動可能に構成されている。環状部材133は、クランプ部材131の傾斜面131aと係合する傾斜面を有している。また、環状部材133とベアリング126の間には、環状部材133とベアリング126に当接し、スピンドル120の長軸方向に平行に配置されたコイルバネ134が配置されている。環状部材133は、コイルバネ134の付勢力によって、スピンドル120の長軸方向に付勢された状態で保持されており、クランプ部材131の傾斜面131aに係合して、クランプ部材131をスピンドル120の径方向に付勢している。すなわち、クランプ部材131と環状部材133の傾斜面の係合によって、クランプ部材131をスピンドル120の径方向に移動させている。この環状部材133が、本発明における「軸方向移動部材」に対応する実施構成例である。
【0039】
以上の通り構成されたクランプシャフト保持機構130は、Oリング132によってクランプ部材131がスピンドル120の径方向に付勢されて、クランプシャフト123を保持している。一方、コイルバネ134によって付勢された環状部材133がクランプ部材131の傾斜面131に係合することにより、コイルバネ134の付勢力をスピンドル120の径方向の付勢力に変換している。これにより、コイルバネ134がクランプ部材131をスピンドルの径方向に付勢して、クランプシャフト123を保持している。すなわち、Oリング132の付勢力あるいはコイルバネ134の付勢力でクランプシャフト123を保持している。このOリング132およびコイルバネ134が、本発明における「第2シャフトを保持するための付勢力を生じさせる付勢部材」に対応する実施構成例である。
【0040】
また、コイルバネ134は、クランプシャフト保持機構130をスピンドル120の長軸方向におけるブレード200が保持される側(下方)と反対側(上方)に向かって付勢している。すなわち、コイルバネ134は、付勢力によってクランプシャフト123を保持するとともに、クランプシャフト123を上方に向かって付勢している。これにより、クランプヘッド124をスピンドル120およびフランジ121に近接する方向に付勢して、ブレード200をフランジ121とクランプヘッド124の間で挟持している。
【0041】
工具保持解除機構104は、クランプシャフト保持機構130によって保持されたクランプシャフト123の保持を解除することで、スピンドル120とクランプシャフト123に挟持されたブレード200を着脱可能にする機構である。この工具保持解除機構104は、スラストピン140、係合ピン141、クランプシャフト保持解除部材142、カムレバー150等を主体として構成されている。
【0042】
スラストピン140は、スピンドル120の内側に配置され、スピンドル120の長軸方向に摺動可能とされている。係合ピン141は、スピンドル120の係合ピン挿通孔122bに挿通されており、図5に示すように、クランプシャフト保持解除部材142と係合している。そして、係合ピン141は、スラストピン140の移動に伴って、スラストピン140に当接して移動するよう構成されている。このスラストピン140が、本発明における「変移部材」に対応する実施構成例である。
【0043】
クランプシャフト保持解除部材142は、スピンドル120の外周を囲む円筒状の部材であり、係合ピン141と共にスピンドル120の長軸方向に移動可能とされている。また、クランプシャフト保持解除部材142は、クランプシャフト保持機構130の環状部材133と係合して一体になっており、環状部材133と共にスピンドル120の長軸方向に移動可能に構成されている。
【0044】
カムレバー150は、スラストピン140に当接して、スラストピン140をスピンドル120の長軸方向に摺動させる部材であり、レバー部151、旋回軸152、偏心部153を主体として構成されている。
【0045】
カムレバー150は、レバー部151がスピンドル120の長軸方向に対して直交する旋回軸152周りに旋回可能に構成されている。旋回軸152周囲には、スラストピン140と当接可能な偏心部153が設けられている。偏心部153は中心位置が、旋回軸152の軸中心に対して偏心して配置されており、これにより、偏心部153の外周の各箇所において、旋回軸152の軸中心からの距離が異なるように構成されている。
【0046】
具体的には、図6に示すように、レバー部151が旋回軸152からモータ110に向かう方向に位置(以下、クランプ位置と称する)する場合には、偏心部153はスラストピン140と当接していない。一方、図7に示すように、レバー部151を旋回させて、レバー部151が旋回軸152からクランプ位置と反対に向かう方向に位置(以下、リリース位置と称する)する場合には、偏心部153はスラストピン140と当接している。すなわち、レバー部151をクランプ位置からリリース位置に向けて旋回させることで、リリース位置に向かう途中で偏心部153がスラストピン140に当接する。その位置からさらに、レバー部151をリリース位置に向けて旋回させることで、偏心部153がスラストピン140をスピンドル120の長軸方向における下方に向かって移動させるよう構成されている。
【0047】
以上の通り構成された工具保持解除機構104は、カムレバー150をクランプ位置からリリース位置に旋回させて、スラストピン140を摺動させることにより、係合ピン141およびクランプシャフト保持解除部材142がスピンドル120の長軸方向における下方に向かって移動する。このとき、クランプシャフト保持解除部材142は、環状部材133と共にスピンドル120の長軸方向における下方に移動し、クランプ部材131をスピンドル120の長軸方向に移動させる。クランプ部材131がスピンドル120に当接した後は、クランプシャフト保持解除部材142が環状部材133と共にスピンドル120の長軸方向における下方に移動することで、環状部材133とクランプ部材131の傾斜面の係合を解除することができる。これにより、コイルバネ134の付勢力は、クランプ部材131に伝達されず、クランプシャフト123に作用しているコイルバネ134の付勢力を解除することができる。クランプシャフト123を保持するための付勢力を低減させることで、クランプシャフト123の保持を解除することが可能となり、クランプシャフト123をスピンドル120から取り外し可能となる。これにより、ブレード200を取り外すことができる。この係合ピン141とクランプシャフト保持解除部材142が、本発明における「付勢力解除部材」に対応する実施構成例である。
【0048】
一方、ブレード200を装着する場合には、ブレード200をフランジ121とクランプヘッド124の間に配置して、クランプシャフト123をスピンドル120に挿入した状態で、カムレバー150をリリース位置からクランプ位置に旋回させる。カムレバー150の旋回に伴って、コイルバネ134の付勢力によってスラストピン140と環状部材133がスピンドル120の長軸方向における上方に移動する。そして、環状部材133の傾斜面とクランプ部材131の傾斜面131aが係合し、コイルバネ134の付勢力がスピンドル120の径方向への付勢力に変換される。これにより、クランプ部材131をスピンドル120の径方向の中心に向かって移動されて、クランプ部材131の凸部とクランプシャフト123の係合溝が係合して、クランプシャフト123を保持する。このとき、コイルバネ134の付勢力は、クランプ部材131を介してクランプシャフト123を保持するとともに、保持されたクランプシャフト123を上方に移動させることで、クランプヘッド124をフランジ121に近接する方向に移動させる。これにより、フランジ121とクランプヘッド124の間にブレード200を保持する。
【0049】
以上の通り構成された電動式振動工具100は、モータ110が通電駆動されると、図3に示すように、出力軸111の回転運動は、偏心軸112およびベアリング113によって、矢印Aで示される方向(以下、A方向)への往復運動に変換される。A方向への往復運動は、被駆動アーム114に伝達されて、スピンドル接続部115を中心とした矢印Bで示されるスピンドル120周りの円周方向(以下、B方向)への所定の角度をなす回転運動に変換される。これにより、スピンドル接続部115に接続されたスピンドル120がB方向に往復駆動される。その結果、フランジ121とクランプヘッド124で挟持されたブレード200を振動させて、被加工材に対して切断等の加工をすることができる。
【0050】
以上の本実施形態によれば、カムレバー150を旋回させるだけで、クランプシャフト123を取り外し、ブレード200を交換することができる。すなわち、特別な工具を用いることなく、ブレード200を簡単に交換することができる。また、スラストピン140が移動して、クランプシャフト123をスピンドル120の長軸方向の下方に移動させる際に、スラストピン140と係合するクランプシャフト保持解除部材142によりクランプシャフト123の保持を解除することができる。そのため、カムレバー150をクランプ位置からリリース位置に移動させるだけで、クランプシャフト123の取り外し、すなわち、ブレード200の交換をより簡単な操作によって行うことができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、スピンドル120の内側に配置されたクランプシャフト123を、スピンドル120の外側に配置されたOリング132もしくはコイルバネ134の付勢力で保持することができるため、スピンドル120を細くすることができる。そのため、スピンドル120が軽量化されて、電動式振動工具100を軽量化することができる。また、スピンドル120を細くすることによりスピンドル120の重量が軽くなるため、小さな回転出力でスピンドル120を駆動させることができ、モータ110を小型化することができる。
【0052】
また、本実施形態によれば、Oリング132の付勢力とコイルバネ134の付勢力によってクランプシャフト123を保持しているため、Oリング132とコイルバネ134のそれぞれに必要な付勢力を適宜定めることができ、作業工具の設計の自由度が高めることができる。また、コイルバネ134の付勢力をスピンドル120の軸方向に平行に作用させているため、コイルバネ134の付勢力がスピンドル120の径方向に直接作用するように、コイルバネ134の伸張方向をスピンドル120の径方向に一致させた場合に比べて、スピンドル120の径方向における電動式作業工具100の大型化を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態によれば、クランプ部材131と環状部材133の傾斜面を係合させる簡単な構成によって、スピンドル120の軸方向と平行に作用するコイルバネ134の付勢力をスピンドル120の径方向に変換することができる。さらに、コイルバネ134の付勢力は、クランプシャフト123を保持するだけでなく、クランプシャフト123のクランプヘッド124をスピンドル120のフランジ121に近接する方向にスピンドル120の長軸方向に付勢している。すなわち、コイルバネ134がクランプシャフト123の保持と、クランプシャフト123の長軸方向への付勢の2つの機能を有することにより、電動式振動工具100の部品点数を減らすことができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、コイルバネ134は、ベアリング125に保持されているため、コイルバネ134を保持するための部材を別に設ける必要がなく、電動式振動工具100の部品点数を減らすことができる。すなわち、電動式振動工具100を小型化することができる。
【0055】
また、2つのベアリングで支持される回転部材において、軸方向における2つのベアリングの間のスペースは、とかくデッドスペースとなりやすい。そのため、本実施形態によれば、コイルバネ134が、スピンドル120の長軸方向におけるベアリング125,126の間に配置されているため、デッドスペースを有効に利用することができ、これにより、電動式振動工具100を小型化することができる。
【0056】
以上の本実施形態においては、フランジ121は、スピンドル120と別体であり、スピンドル120に取り付けるよう構成されているが、スピンドル120と一体に構成されていてもよい。また、クランプヘッド124は、クランプシャフト123と一体に構成されていたが、クランプヘッド124は、クランプシャフト123と別体にクランプシャフト123に取り付ける構成としてもよい。
【0057】
また、本実施形態においては、スピンドル120の先端部とフランジ121の両方がクランプヘッド124とともにブレード200を挟持していたが、スピンドル120の先端部とフランジ121のいずれか一方がクランプヘッド124と対向してブレード200を挟持すればよい。すなわち、フランジ121とクランプヘッド124でブレード200を挟持するように構成されていてもよく、また一方で、フランジ121が設けられておらず、スピンドル120の先端部とクランプヘッド124でブレード200を挟持するように構成されていてもよい。
【0058】
また、本実施形態においては、Oリング132およびコイルバネ134が、クランプ部材132をスピンドル120の径方向に付勢していたが、Oリング132とコイルバネ134のうちのいずれか一方のみがクランプ部材132を付勢しており、Oリング132とコイルバネ134のうちの他方が設けられていなくてもよい。
【0059】
また、コイルバネ134の付勢力が、クランプシャフト123を保持するように、クランプシャフト保持機構130が設けられている構成には限られない。すなわち、コイルバネ134の付勢力によって、クランプシャフト123を保持することなく、クランプヘッド124をフランジ121に近接する方向にクランプシャフト123を付勢するだけであってもよい。
【0060】
以上においては、先端工具としてブレード200を用いて説明したが、図8に示すように、先端工具として研磨パッド201等の他の種類の先端工具を取り付けてもよい。また、本実施形態においては、付勢部材としてコイルバネ134を用いて説明したが、図8に示すように、付勢部材として複数の皿バネ135を積層してもよい。この場合、皿バネ135は一枚であってもよい。また、付勢部材としては、他の種類のバネを用いてもよい。バネ以外でも、弾性変形による復元力を発生させる部材であれば、ゴムや樹脂などであってもよい。
【0061】
また、作業工具として、電動式振動工具100を用いて説明したが、これには限られず先端工具を挟持する作業工具であれば、例えばグラインダや丸鋸のように先端工具が回転する作業工具にも本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
100 電動式振動工具(作業工具)
101 本体ハウジング
102 駆動機構
103 先端工具保持機構
110 モータ
111 出力軸
112 偏心軸
114 被駆動アーム
120 スピンドル(第1シャフト)
121 フランジ(第1クランプ部)
122a クランプ部材挿通孔(開口部)
122b 係合ピン挿通孔
123 クランプシャフト(第2シャフト)
124 クランプヘッド(第2クランプ部)
125 ベアリング(支持部材)
126 ベアリング(支持部材)
130 クランプシャフト保持機構
131 クランプ部材(保持部材、交差方向移動部材)
132 Oリング(付勢部材)
133 環状部材(保持部材、軸方向移動部材)
134 コイルバネ(付勢部材)
135 皿バネ(付勢部材)
140 スラストピン(変移部材)
141 係合ピン(変移部材、付勢力解除部材)
142 クランプシャフト保持解除部材(付勢力解除部材)
150 カムレバー
200 ブレード(先端工具)
201 研磨パッド(先端工具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1クランプ部を有する第1シャフトと、
第2クランプ部を有する第2シャフトとを有し、
前記第1クランプ部と前記第2クランプ部で挟持された先端工具を駆動させる作業工具であって、
前記第1シャフトと前記第2シャフトは、軸方向が互いに平行に配置されているとともに、前記第2シャフトは、前記第1シャフトの内側に配置されており、
前記第1シャフトの外側に、前記第2シャフトを保持するための付勢力を生じさせる付勢部材が設けられていることを特徴とする作業工具。
【請求項2】
請求項1に記載の作業工具であって、
前記第1シャフトは、軸方向における中間領域に当該軸方向と交差する交差方向に向かって開口する開口部を有し、
前記開口部を介して前記付勢部材の付勢力を前記第2シャフトに伝達する保持部材を有することを特徴とする作業工具。
【請求項3】
請求項2に記載の作業工具であって、
前記付勢部材は、前記付勢力を前記第1シャフトの軸方向と平行に作用させる構成であり、
前記保持部材は、前記付勢力を前記交差方向における前記第2シャフトに向かう方向の力に変換して前記第2シャフトを保持することを特徴とする作業工具。
【請求項4】
請求項3に記載の作業工具であって、
前記保持部材は、前記付勢力を受けて前記第1シャフトの軸方向に移動する軸方向移動部材と、前記軸方向移動部材に係合し、前記交差方向に移動する交差方向移動部材とを有し、
前記保持部材が、前記付勢力を前記交差方向における前記第2シャフトに向かう方向の力に変換して、前記交差方向移動部材が前記第2シャフトを保持することを特徴とする作業工具。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記第1シャフトもしくは前記第2シャフトの軸方向と平行に移動可能に配置され、前記第1シャフトと前記第2シャフトを前記軸方向に相対移動させる変移部材と、
前記変移部材に係合し、前記変位部材の移動に伴って移動する付勢力解除部材を有し、
前記付勢力解除部材は、前記第1シャフトと前記第2シャフトを軸方向に離隔する方向に相対移動させるように前記変移部材が移動する際に、前記保持部材による前記第2シャフトの保持を解除するように、前記付勢部材を移動させるよう構成されていることを特徴とする作業工具。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記第1シャフトを回転可能に支持する支持部材を有し、
前記第1シャフトは、軸方向における2箇所で前記支持部材に支持されていることを特徴とする作業工具。
【請求項7】
請求項6に記載の作業工具であって、
前記付勢部材は、一端が前記支持部材と当接して、前記第1シャフトとともに回転可能に保持されていることを特徴とする作業工具。
【請求項8】
第1クランプ部を有する第1シャフトと、
第2クランプ部を有する第2シャフトと、
前記第1クランプ部と前記第2クランプ部が近接する方向に付勢する付勢部材とを有し、
前記第1クランプ部と前記第2クランプ部で挟持された先端工具を駆動させる作業工具であって、
前記第1シャフトと前記第2シャフトは、軸方向が互いに平行に配置されているとともに、前記第2シャフトは、前記第1シャフトの内側に配置されており、
前記第1シャフトは、軸方向における2箇所で2つの支持部材によって回転可能に支持されており、当該軸方向における2つの前記支持部材の間に前記付勢部材が配置されていることを特徴とする作業工具。
【請求項9】
請求項8に記載の作業工具であって、
前記付勢部材は、前記第1シャフトの外側に配置されていることを特徴とする作業工具。
【請求項10】
請求項8または9に記載の作業工具であって、
前記付勢部材は、一端が前記支持部材と当接して、前記第1シャフトとともに回転可能に保持されていることを特徴とする作業工具。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の作業工具であって、
前記付勢部材は、前記第2シャフトを保持するための付勢力を生じさせるよう構成されていることを特徴とする作業工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−86212(P2013−86212A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229572(P2011−229572)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】