説明

作業機械の作動油タンク

【課題】作業等に伴って収容された作動油の油面が大きく変化したときでも、油面を覆うフィルムを安定した展開状態に保つことができる作業機械の作動油タンクの提供。
【解決手段】旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置とを有する油圧ショベルに設けられ、旋回体上に搭載され、作業装置の駆動に使用される作動油が収容されるタンク本体11と、このタンク本体11内に配置される機器と、タンク本体11に収容された作動油の油面18aを覆うフィルム21を含み作動油の油面18a上に浮遊する浮き部材20とを備えるとともに、浮き部材20は、フィルム21の全周縁に設けられ、フィルム21よりも高い剛性と、タンク本体11の内面に対する滑動性と、変形時に自己形状復帰が可能な弾性とを有する枠体22を備えた構成にしてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械に備えられ、内部に収容された作動油の油面を覆う浮き部材を備えた作業機械の作動油タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
車体例えば旋回体と、この旋回体に取り付けられる作業装置とを有する油圧ショベルなどの作業機械には、旋回体上に作業装置等の駆動に使用される作動油が収容される作動油タンクが備えられている。この作動油タンクに収容された作動油は、油圧ポンプによって作業装置等に含まれる各油圧アクチュエータへ供給され、これらの油圧アクチュエータから排出された作動油、すなわち戻り油が作動油タンクに戻されるようになっている。作動油タンク内の油量は、油圧アクチュエータの動作に応じて変化し、作動油タンク内の作動油の油面も油圧アクチュエータの動作によって変化する。この油面の変化により作動油タンクの内圧が変動するが、このような内圧変動は、作動油タンク及び作動油に悪影響を及ぼす。このようなことから、通常、上述した内圧変動幅を小さく抑えるために、作動油タンク内の作動油の上方に空気室を形成することが行われている。また、このような作動油タンクに収容された作動油に空気室内の空気の巻き込み等によって形成される大きな気泡、あるいは微細な気泡が混入すると、作動油が供給される油圧機器や、作動油の寿命に悪影響を与えることが知られている。
【0003】
このような不具合に対して、特許文献1に、作動油タンクの油面に浮力を有して浮遊し、油面を覆うシート、すなわちフィルムから成る浮き部材を備え、この浮き部材によって作動油層と空気層を隔離して気泡の作動油内への混入を防ぐ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−19686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術は、作業装置によって実施される作業に伴って作動油タンクに収容された作動油の油面が大きく変動したときなどに、シートが作動油タンク内に配置される配管、フィルタ等の機器に引っ掛かり、あるいは、まくれて折り重なることが生じる。このように、シートが機器に引っ掛かったり、まくれて折り重なったりした場合には、作動油の油面が空気室に大きく開放されてしまい、作動油内に気泡が混入する虞を生じる。また、上述のようにして変形したシートが強い力で作動油タンク内の機器に押し付けられることから、作動油タンク内の機器の損傷、あるいはシートすなわちフィルムの損傷を生じてしまうことが懸念される。
【0006】
本発明は、上述した従来技術における実状からなされたもので、その目的は、作業等に伴って収容された作動油の油面が大きく変化したときでも、油面を覆うフィルムを安定した展開状態に保つことができる作業機械の作動油タンクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、本発明は、車体と、この車体に取り付けられる作業装置とを有する作業機械に設けられ、上記車体に搭載され、上記作業装置の駆動に使用される作動油が収容されるタンク本体と、このタンク本体内に配置される機器と、上記タンク本体に収容された作動油の油面を覆うフィルムを含み上記作動油の上記油面上に浮遊する浮き部材とを備えた作業機械の作動油タンクにおいて、上記浮き部材は、上記フィルムの全周縁に設けられ、上記フィルムよりも高い剛性と、上記タンク本体の内面に対する滑動性と、変形時に自己形状復帰が可能な弾性とを有する枠体を備えていることを特徴としている。
【0008】
このように構成した本発明は、作業等に伴ってタンク本体内に収容された作動油の油面が大きく変化したときには、作動油の油面を覆うフィルムよりも剛性の高い枠体が、タンク本体内に配置された機器やタンク本体の内面に当接する。この際に、枠体がわずかに変形することがあっても、この枠体は自身の保有する弾性により自己形状復帰するように変化し、フィルム及び枠体を含む浮き部材は、作動油の油面の変化が少ないときの当初の配置形態に速やかに戻される。したがって、枠体に保持され、油面を覆うフィルムを安定した展開状態に保つことができ、このフィルムによって作動油層と空気層を隔離して作動油への気泡の混入を防ぐことができる。また、枠体がタンク本体内に配置される機器に押し付けられることがあっても、上述のように枠体は速やかに当初の形状に復帰するので、枠体から機器に与えられる押し付け力の影響を少なくすることができる。
【0009】
また本発明は、タンク本体内に収容される作動油の量が少なくなったときでも、枠体の有する滑動性により、少なくなった作動油の油面をフィルムで覆った状態を保ちながら、枠体を円滑に下降させることができ、作動油に対する浮き部材の配置形態を当初の配置形態に維持させることができる。したがって、このように作動油の油量が減少したときでも、油面を覆うフィルムを安定した展開状態に保つことができ、このフィルムによって作動油層と空気層を隔離して作動油への気泡の混入を防ぐことができる。
【0010】
また本発明は、上記発明において、上記フィルムから垂下するガイドを備え、このガイドに上記タンク本体内に形成される作動油層と、この作動油層の上方の上記タンク本体内に形成される空気層とを連通させる小孔を設けたことを特徴としている。
【0011】
このように構成した本発明は、作動油の揺れの大きい油面付近において、揺れに伴って流速が速くなった作動油をガイドに衝合させることによってその流速を低下させ、揺れを少なくすることができ、比較的短時間のうちに油面を安静化することができる。また、フィルム上に作動油が溜まったときには、その作動油をガイドの小孔から滴下させて作動油内に戻すことができる。なお、作動油の油面から離れたガイドの下端付近は、油面付近に比べて作動油の流速が遅く、揺れが少なくなるので、このガイドの小孔を通して作動油が上昇するエネルギが小さくなり、これに伴ってガイドの小孔を通して作動油がフィルム上まで上昇することを抑えることができる。
【0012】
また本発明は、上記発明において、上記機器は、上記タンク本体の底部に配置される下部機器と、上記タンク本体内の上方に配置される上部機器とを含み、上記枠体から垂下し、上記タンク本体に収容された作動油の量が所定量以下となったときに下端が上記タンク本体の底部に当接する複数本のテンションロッドを備え、このテンションロッドの上記下端が上記タンク本体の上記底部に当接したときに、上記ガイドを上記下部機器よりも上方に位置させ、また、上記枠体を上記上部機器の下端よりも上方に位置させる寸法に設定したことを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、タンク本体内の作動油の量が少なくなってテンションロッドの下端がタンク本体の底部に当接した状態でも、このときテンションロッドに保持される枠体及びフィルムは、タンク本体の底部に配置される下部機器に接触することを防止できるので、油面を覆うフィルムを安定した展開状態に保つことができる。また、このような状態において、タンク本体内に配置される上部機器の下方に枠体及びフィルムが潜り込むことを防止でき、このような状態にあって作業等に伴って浮き部材が動いたときでも、枠体及びフィルムを上部機器に当接可能に保つことができる。枠体が上部機器に当接したときには、枠体がわずかに変形することがあっても、この枠体は自身の保有する弾性により自己形状復帰するように変化し、フィルム及び枠体を含む浮き部材を、当初の配置形態に速やかに戻すことができる。
【0014】
また本発明は、上記発明において、上記枠体は、内部に空気が収容されるチューブ状部材から成ることを特徴としている。このように構成した本発明は、枠体及びフィルムを含む浮き部材を安定して作動油の油面上に浮遊させることができる。
【0015】
また本発明は、上記発明において、上記浮き部材は、単一部材、または複数の部材から成ることを特徴としている。浮き部材を単一部材とするときには、部品数を少なく抑え、この浮き部材の管理が容易になる。また、浮き部材を複数の部材とするときには、作動油の油面上に浮き部材を配置しやすく、この配置作業を能率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、タンク本体内に収容された作動油の油面を覆うフィルムを有する浮き部材が、フィルムの全周縁に設けられ、フィルムよりも高い剛性と、タンク本体の内面に対する滑動性と、変形時に自己形状復帰させる弾性とを有する枠体を備えていることから、作業等に伴って収容された作動油の油面が大きく変化したときでも、枠体を当初の形態に速やかに復帰させることができ、油面を覆うフィルムを安定した展開状態に保つことができる。これにより、フィルムによって作動油層と空気層を隔離して作動油内への気泡の混入を従来よりも高い精度で防ぐことができる。また、枠体がタンク本体内に配置される機器に押し付けられることがあっても、上述のように枠体は速やかに当初の形態に復帰するので、枠体から機器に与えられる押し付け力の影響を少なくすることができる。これによって、作業等に伴う作動油の揺れに起因するタンク本体内の機器の損傷、あるいは浮き部材のフィルムの損傷を防ぐことができ、これらのタンク本体内の機器、あるいは浮き部材のフィルムの耐久性を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る作動油タンクが備えられる作業機械の一例として挙げた油圧ショベルの側面図である。
【図2】本発明に係る作動油タンクの第1実施形態を示す横断面図である。
【図3】図2のA−A矢視に相応する縦断面図である。
【図4】第1実施形態においてタンク本体内に収容された作動油の量が少なくなった状態を示す縦断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る作業機械の作動油タンクの実施の形態を図に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明に係る作動油タンクが備えられる作業機械の一例として挙げた油圧ショベルの側面図である。
【0020】
この図1に示す油圧ショベルは、走行体1と、この走行体1上に配置され、車体を構成する旋回体2と、この旋回体2に取り付けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置3とを備えている。作業装置3は、旋回体2に上下方向の回動可能に取り付けられるブーム4と、このブーム4の先端に上下方向の回動可能に取り付けられるアーム5と、このアーム5の先端に上下方向の回動可能に取り付けられるバケット6とを含んでいる。また、この作業装置3は、ブーム4を駆動するブームシリンダ4a、アーム5を駆動するアームシリンダ5a、及びバケット6を駆動するバケットシリンダ6aを含んでいる。旋回体2上の前側位置には運転室7を設けてあり、後側位置には重量バランスを確保するカウンタウエイト9を設けてある。また、運転室7とカウンタウエイト9の間には、エンジン及び油圧ポンプ等が収容される機械室8を設けてある。また、例えば運転室7と機械室8との間の旋回体2上の設置空間に、本発明の第1実施形態を構成する作動油タンク10を備えている。
【0021】
図2は本発明に係る作動油タンクの第1実施形態を示す横断面図、図3は図2のA−A矢視に相応する縦断面図、図4は第1実施形態においてタンク本体内に収容された作動油の量が少なくなった状態を示す縦断面図である。
【0022】
図2,3に示すように、第1実施形態に係る作動油タンク10は、旋回体2に搭載されて、作業装置3のブームシリンダ4a等の油圧シリンダ、旋回体2を旋回させる図示しない旋回モータ、走行体1を走行させる図示しない走行モータなどの油圧アクチュエータの駆動に使用される作動油が収容され、例えば円筒状のタンク本体11を備えている。このタンク本体11内には、油圧アクチュエータからの戻り油が導かれるリターンポート13、このリターンポート13が連結され、戻り油中のゴミを除去するフルフローフィルタ12と、タンク本体11の底部に設けられ、油圧アクチュエータへの作動油の供給ポートであるサクションポート14と、このサクションポート14を囲むように配置され、油圧アクチュエータへ供給される作動油を清浄化するサクションフィルタ15を配置してある。サクションフィルタ15には、上下方向に延設されるサクションロッド16が取り付けられ、このサクションロッド16の上端には、タンク本体11の上面に形成されサクションロッド16が挿入される孔を塞ぐ蓋部17を配置してある。
【0023】
上述したリターンポート13とフルフローフィルタ12は、タンク本体11内に収容される上部機器を構成し、サクションポート14とサクションフィルタ15は、タンク本体11内に収容される下部機器を構成している。
【0024】
また、この第1実施形態は、タンク本体11に収容され、柔軟性、弾性、及び撥油性を有し、作動油の油面18aの例えば50%〜100%を覆うシート状のフィルム21を含み、作動油の油面18a上に浮遊する単一部材から成る浮き部材20を備えている。タンク本体11内は、図3に示すように、浮き部材20によって作動油層18と、この作動油層18の上に形成される空気層19に分離されている。
【0025】
また、浮き部材20は、フィルム21の全周縁にこのフィルム21と一体に設けられ、フィルム21よりも高い剛性と、タンク本体11の内面に対する滑動性と、変形時に自己形状復帰が可能な弾性とを有し、作動油の油面18a上に浮遊する枠体22を備えている。この枠体22は、例えば内部に空気が収容される合成樹脂製のチューブ状部材から成っている。
【0026】
また、この第1実施形態は、浮き部材20のフィルム21から垂下する複数のガイド23を備え、このガイド23に、図3にも示すようにタンク本体11内に形成される作動油層18と、この作動油層18の上方の空気層19とを連通させる小孔24を設けてある。
【0027】
また、この第1実施形態は、枠体22から垂下し、図4に示すように、タンク本体11に収容された作動油の量が所定量以下となったときに下端がタンク本体11の底部11aに当接する複数のテンションロッド25を備えている。これらのテンションロッド25の長さ寸法は、これらのテンションロッド25の下端がタンク本体11の底部11aに当接したときに、ガイド23のそれぞれを下部機器であるサクションフィルタ15よりも上方に位置させ、また、枠体22を上部機器であるフルフローフィルタ12の下端12aよりも上方に位置させる寸法に設定してある。
【0028】
また、浮き部材20は、フルフローフィルタ12及びリターンポート13を囲むように形成される切り欠き部27、及びサクションロッド16を囲むように形成される切り欠き部28を有している。さらに、この第1実施形態は、枠体22に、図示しないフック部材が係合する係合部26を設けてある。図示しないフック部材を係合部26に係合させた状態で、浮き部材20の作動油の油面18a上への装着作業、及び油面18上からの取り出し作業が行われる。
【0029】
このように構成した第1実施形態は、図示しない油圧ポンプによってタンク本体11内の作動油がサクションポート14から吸い込まれ、作業装置3等に含まれる油圧アクチュエータに供給されることによって該当する油圧アクチュエータが作動し、これに伴って作業装置3等が駆動して、土砂の掘削作業等が実施される。油圧アクチュエータからの戻り油は、リターンポート13及びフルフローフィルタ12を介してタンク本体11内に戻され、このタンク本体11内に蓄えられる。
【0030】
この第1実施形態によれば、作業等に伴ってタンク本体11内に収容された作動油の油面18aが大きく変化したときには、作動油の油面18aを覆うフィルタ21よりも剛性の高い枠体22が、タンク本体11内に配置された上部機器を構成するフルフローフィルタ12、リターンポート13や、タンク本体11の内面に当接する。この際に、枠体22が変形することがあっても、この枠体22は自身の保有する弾性により自己形状復帰するように元の形に戻り、フィルム21及び枠体22を含む浮き部材22は、作動油の油面18aの変化が少ないときの当初の配置形態に速やかに戻される。したがって、枠体22に保持され、油面18aを覆うフィルム21を安定した展開状態に保つことができ、このフィルム21によって作動油層18と空気層19を隔離して作動油への気泡の混入を高い精度で防ぐことができる。
【0031】
また、枠体22がタンク本体11内に配置されるフルフローフィルタ12やリターンポート13に押し付けられることがあっても、上述のように枠体22は速やかに当初の形態に復帰するので、枠体22からフルフローフィルタ12やリターンポート13に与えられる押し付け力の影響を少なくすることができる。これによって、作業等に伴う作動油の揺れに起因するタンク本体11内のフルフローフィルタ12やリターンポート13の損傷、あるいは浮き部材20のフィルム21の損傷を防ぐことができ、これらのフルフローフィルタ12やリターンポート13、あるいは浮き部材20のフィルム21の耐久性を向上させることができる。
【0032】
また、この第1実施形態によれば、作動油の揺れの大きい油面18aの付近において、揺れに伴って流速が速くなった作動油を複数のガイド23に衝合させることによってその流速を低下させ、この作動油の揺れを少なくすることができ、比較的短時間のうちに油面18aを安静化することができる。また、フィルム21上に作動油が溜まったときには、その作動油をガイド23の小孔24から滴下させて作動油内に戻すことができる。なお、作動油の油面18aから離れたガイド23の下端付近は、油面18a付近に比べて作動油の流速が遅く、揺れが少なくなるので、このガイド23の小孔24を通して作動油が上昇するエネルギが小さくなり、これに伴ってガイド23の小孔24を通して作動油がフィルム21上まで上昇することを抑えることができる。
【0033】
また、この第1実施形態によれば、図4に示すように、タンク本体11内の作動油の量が少なくなったときでも、枠体22の有する滑動性により、少なくなった作動油の油面18aをフィルム21で覆った状態を保ちながら、枠体22を円滑に下降させることができ、作動油に対する浮き部材20の配置形態を当初の配置形態に維持することができる。また、このようにタンク本体11内の作動油の量が少なくなり、テンションロッド25の下端がタンク本体11の底部11aに当接した状態でも、このときテンションロッド25に保持される枠体22及びフィルム21が、タンク本体11の底部11aに配置される下部機器であるサクションフィルタ15に接触することを防止できるので、油面18aを覆うフィルム21を安定した展開状態に保つことができる。また、サクションフィルタ15によってフィルム21が損傷することを防止することができる。
【0034】
また、このようにテンションロッド25の下端がタンク本体11の底部11aに当接した状態において、タンク本体11内に配置される上部機器であるフルフローフィルタ12の下方に、枠体22及びフィルム21が潜り込むことを防止でき、このような状態にあって作業等に伴って浮き部材20が動いたときでも、枠体22及びフィルム21をフルフローフィルタ12に当接可能に保つことができる。したがって、枠体22がフルフローフィルタ12に当接して変形することがあっても、この枠体22は自身の保有する弾性により自己形状復帰し、フィルタ21及び枠体22を含む浮き部材20を、当初の配置形態に速やかに戻すことができる。
【0035】
また、この第1実施形態によれば、枠体22が、内部に空気が収容されたチューブ状部材から成ることから、枠体22及びフィルム21を含む浮き部材20を安定して作動油の油面18a上に浮遊させることができる。
【0036】
さらに、この第1実施形態は、浮き部材20が単一部材から成るので、部品数を少なく抑え、この浮き部材20の管理が容易である。
【0037】
図5は本発明の第2実施形態を示す横断面図である。この図5に示す第2実施形態は、浮き部材が複数の浮き部材から成っている。すなわち、この第2実施形態は、作動油の油面18a上に浮遊する浮き部材が、例えば第1浮き部材30と第2浮き部材40とから成っている。
【0038】
第1浮き部材30は、上述したフィルム21と同様のフィルム31と、上述した枠体22と同様の枠体32と、上述したガイド23と同様の小孔34を有する複数のガイド
33と、上述したテンションロッド25と同様の複数のテンションロッド35と、上述した係合部26と同様のフック部材が係合する係合部37とを備えている。また、この第1浮き部材30は、フルフローフィルタ12及びリターンポート13を避けるように形成される湾曲部36を備えている。
【0039】
第2浮き部材40も第1浮き部材30と同様に構成され、フィルム41と、枠体42と、小孔44を有する複数のガイド43と、複数のテンションロッド45と、係合部47とを備えている。また、この第2浮き部材40も、フルフローフィルタ12及びリターンポート13を避けるように形成される湾曲部46を備えている。また、第1浮き部材30と第2浮き部材40との間には、間隙48が設けられ、この間隙48にサクションフィルタ15に取り付けられるサクションロッド16が配置されるようになっている。
【0040】
このように構成した第2実施形態も基本的な構成は第1実施形態と同等である。しがって、第1実施形態と同等の作用効果を得ることができる。また、この第2実施形態は、浮き部材が複数の部材、すなわち第1浮き部材30と第2浮き部材40とから成っているので、作動油の油面18a上に浮き部材を配置しやすく、この配置作業を能率よく行うことができる。
【0041】
なお、浮き部材を複数の浮き部材とする場合、例えば同一形状に形成した3つ以上の浮き部材を設けることもできる。このように構成した場合には、製作コストを低減できるとともに、作動油の油面18a上に配置する際に、配置の自由度が大きくなり、配置作業がさらに容易になる。
【0042】
また、上記各実施形態は、枠体22,32,42が内部に空気が収容されるチューブ状部材から成っているが、油面18aに対する浮遊性を確保できるのであれば、枠体を断面が中実の部材によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0043】
2 旋回体(車体)
3 作業装置
10 作動油タンク
11 タンク本体
11a 底部
12 フルフローフィルタ(上部機器)
13 リターンポート
14 サクションポート
15 サクションフィルタ(下部機器)
16 サクションロッド
18 作動油層
18a 油面
19 空気層
20 浮き部材
21 フィルム
22 枠体
23 ガイド
24 小孔
25 テンションロッド
30 第1浮き部材
31 フィルム
32 枠体
33 ガイド
34 小孔
35 テンションロッド
40 第2浮き部材
41 フィルム
42 枠体
43 ガイド
44 小孔
45 テンションロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、この車体に取り付けられる作業装置とを有する作業機械に設けられ、
上記車体に搭載され、上記作業装置の駆動に使用される作動油が収容されるタンク本体と、このタンク本体内に配置される機器と、上記タンク本体に収容された作動油の油面を覆うフィルムを含み上記作動油の上記油面上に浮遊する浮き部材とを備えた作業機械の作動油タンクにおいて、
上記浮き部材は、上記フィルムの全周縁に設けられ、上記フィルムよりも高い剛性と、上記タンク本体の内面に対する滑動性と、変形時に自己形状復帰が可能な弾性とを有する枠体を備えていることを特徴とする作業機械の作動油タンク。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械の作動油タンクにおいて、
上記フィルムから垂下するガイドを備え、このガイドに上記タンク本体内に形成される作動油層と、この作動油層の上方の上記タンク本体内に形成される空気層とを連通させる小孔を設けたことを特徴とする作業機械の作動油タンク。
【請求項3】
請求項2に記載の作業機械の作動油タンクにおいて、
上記機器は、上記タンク本体の底部に配置される下部機器と、上記タンク本体内の上方に配置される上部機器とを含み、
上記枠体から垂下し、上記タンク本体に収容された作動油の量が所定量以下となったときに下端が上記タンク本体の底部に当接する複数本のテンションロッドを備え、
このテンションロッドの長さ寸法を、このテンションロッドの上記下端が上記タンク本体の上記底部に当接したときに、上記ガイドを上記下部機器よりも上方に位置させ、また、上記枠体を上記上部機器の下端よりも上方に位置させる寸法に設定したことを特徴とする作業機械の作動油タンク。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械の作動油タンクにおいて、
上記枠体は、内部に空気が収容されるチューブ状部材から成ることを特徴とする作業機械の作動油タンク。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業機械の作動油タンクにおいて、
上記浮き部材は、単一部材、または複数の部材から成ることを特徴とする作業機械の作動油タンク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate