説明

作業機械の燃料タンク取付装置

【課題】合成樹脂製の燃料タンクを機械のフレームに対し十分な固定力によって安定良く固定できるようにする。
【解決手段】合成樹脂製の燃料タンク15を、前後両側で押えプレート20と締め付けロッド21とによってアッパーフレーム底板12に上から押え込んで固定する。これを前提として、タンク下面側においてアッパーフレーム底板12上に受けパッド33を設けるとともに、タンク上面側において押えプレート20とタンク上面との間に押えパッド24を設け、この両パッド33,24をタンク側の凹部32,24に凹凸嵌合させることによって水平方向に固定する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の作業機械において燃料タンクを機械のフレームに固定する燃料タンク取付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルを例にとって背景技術を説明する。
【0003】
図7はミニショベルと称される小形の油圧ショベルを示している。
【0004】
この油圧ショベルは、クローラ式の下部走行体1上に上部旋回体2が地面に対して鉛直な軸のまわりに旋回自在に搭載され、この上部旋回体2に、ブーム3、図示しないアーム、バケット及びこれらを駆動するブーム、アーム、バケット各シリンダ(ブームシリンダ4のみを示す)から成る作業装置Aが装着されて構成される。
【0005】
上部旋回体2は、アッパーフレーム5にエンジン等の機器類及びこれらを覆うガードパネル6、運転席7等を取付けて構成される。
【0006】
アッパーフレーム5は底板8を有し、この底板8と、底板8上に図示しない支柱によって取付けられたフロアプレート9との間に空間Sが形成され、燃料を貯蔵する燃料タンク10がこの空間Sに設置される。
【0007】
従来、この燃料タンク10として全体を合成樹脂によって一体成形したものが公知である。
【0008】
この合成樹脂製の燃料タンクは、金属製のものと比較して強度が低く、金属製タンクのようにアッパーフレーム底板8に直接ボルト止めできない。
【0009】
そこで、合成樹脂製タンク固有の取付方式として、
(i) 特許文献1に示されているように、一端がアッパーフレーム底板に止め付けられたバンドをタンクの一側面から上面にかけての半周部分に巻き付け、このバンドを他端側から締め込んでタンクをアッパーフレーム底板に押え込み固定するバンド方式、
(ii) 特許文献2に示されているように、タンク側面をアッパーフレーム底板上に設けられた垂直壁に接触させた状態で、反対側からバンドで締め込んで垂直壁に押し付ける押し付け方式
が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開平5−22342号公報
【特許文献2】特開2001−90112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、これら公知の方式によると、
(イ) タンクを、アッパーフレーム底板(バンド方式)、または垂直壁(押し付け方式)との摩擦力のみによって固定すること、
(ロ) タンクの外形が、曲面と段差を含んだ複雑な形状となっているため、バンドからの締め付け力がタンク全体に均等に作用し難いこと
の二点により、とくに水平各方向のタンク固定力が不足し、油圧ショベル等の作業機械特有の激しい振動や衝撃によってタンクがずれ動くおそれがあった。
【0012】
そこで本発明は、合成樹脂製の燃料タンクを機械のフレームに対し十分な固定力によって安定良く固定することができる作業機械の燃料タンク取付装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、合成樹脂製の燃料タンクを機械のフレーム上に載置した状態で固定する作業機械の燃料タンク取付装置であって、燃料タンクの上面側に配置した押えプレートと、燃料タンクの側面側でこの押えプレートを下向きに締め付ける締め付けロッドとによって、燃料タンクを上からフレーム上に押え込み、かつ、上記燃料タンクにおける上記押えプレートに対面する上面側、及び上記機械のフレームに対面する下面側のうち少なくとも下面側において燃料タンク側に凹部を設ける一方、この凹部が対面する相手側に動き止め部材を突設し、この動き止め部材を上記凹部に嵌合させることによって燃料タンクを水平方向に固定するように構成したものである。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、上記締め付けロッドをロッド本体と同本体の上端側に連設したねじ部とによって構成し、上記ロッド本体の下端部を上記フレームに係止させる一方、上記ねじ部を上記押えプレートの端部に挿通させ、このねじ部にナットをねじ込むことによって燃料タンクをフレーム上に押え込み固定するように構成し、かつ、上記締め付けロッドのねじ部をロッド本体よりも小径とすることによって両者の境界部分に段部を形成し、上記押えプレートの締め付け代をこの段部によって規制するように構成したものである。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2の構成において、上記燃料タンクにおける上記締め付けロッドに対面する側面部に、締め付けロッドに対する逃げ用の凹溝を上下方向に設けたものである。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかの構成において、上記フレーム上にフロアプレートを、互いの間に空間が形成されるとともにこの空間の一側面がタンク出し入れ口として外部に開口する状態で設け、上記燃料タンクを外部から出し入れ可能な状態で上記空間に設置するとともに、上記締め付けロッドを上記タンク出し入れ口側の燃料タンク側面部に着脱自在に配置したものである。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかの構成において、上記動き止め部材として、ゴム等の摩擦係数の高い弾性材料から成る受けパッドを上記フレームの上面に取付け、この受けパッドには上面に凸部を設け、この凸部を含めた受けパッド上面を燃料タンクの下面に接触させた状態で、上記凸部を、燃料タンク下面に設けた凹部に嵌合させるように構成したものである。
【0018】
請求項6の発明は、請求項5の構成において、上記フレームの上面に金属製の止め板を取付け、上記受けパッドをこの止め板に嵌着したものである。
【0019】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかの構成において、上記動き止め部材として、ゴム等の摩擦係数の高い弾性材料から成る押えパッドを上記燃料タンクと押えプレートとの間に挟み込む一方、燃料タンクの上面に凹部を設け、上記押えパッドをこの凹部に嵌合させるように構成したものである。
【0020】
請求項8の発明は、請求項7の構成において、上記押えプレートを、水平な本体部分の幅方向両側に立ち上がり壁を備えた断面U字形に形成するとともに、上記押えパッドをこの押えプレートに下側から外嵌する断面U字形に形成したものである。
【0021】
請求項9の発明は、請求項7または8の構成において、上記押えパッドにおける燃料タンクに接触する面を多数のディンプルを備えた凹凸状に形成したものである。
【0022】
請求項10の発明は、請求項7〜9のいずれかの構成において、上記押えパッドの上面に上向きに突出する突起を一体に設ける一方、上記押えプレートに係合穴を設け、上記突起をこの係合穴に係合させることによって押えパッドを押えプレートに結合するように構成したものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、合成樹脂製の燃料タンクを、押えプレートと締め付けロッドとによって機械のフレームに上から押え込むのに加えて、タンク上面側及び下面側のうち少なくとも下面側(請求項7〜10では上面側と下面側の双方)において、タンク側の凹部と相手側(下面側の場合はフレーム、上面側の場合は押えプレート)の動き止め部材の凹凸嵌合によって水平方向に固定する構成としたから、燃料タンクをフレームに対し、上下方向の主固定力と水平方向の動き止め力とを合わせた十分な固定力によって安定良く固定することができる。
【0024】
このため、激しい振動や衝撃によっても燃料タンクがずれ動くおそれがなくなる。
【0025】
また、タンク下面側の凹部と動き止め部材の凹凸嵌合部分によって燃料タンク取付時の位置決めが容易となる。
【0026】
さらに、タンク上面側に配置した押えプレートを、タンク側面側に配置した締め付けロッドで締め付ける構成であって、タンク側面側の固定部品が嵩張らない締め付けロッドのみとなるため、限られたスペース内で水平方向のタンクサイズを大きくし、タンク容量を大きくとることができる。
【0027】
ここで、請求項2の発明によると、締め付けロッドのロッド本体の下端部をフレームに係止させた状態でねじ部を押えプレートに挿通させてナットで締め込む構成とし、これを前提としてロッド本体とねじ部の境界部分に段部に形成し、押えプレートの締め付け代をこの段部によって規制する構成としたから、タンク締め付け力(押え付け力)を正確に管理し、締め付け不足や締め付け過ぎを防止することができる。
【0028】
請求項3の発明によると、燃料タンクにおける締め付けロッドに対面する側面部に同ロッドに対する逃げ用の凹溝を設けたから、タンク側面を外向きに最大限拡張してタンク容量を増やすことができる一方で、凹溝部分がリブとして補強効果を発揮し、タンク側面部の強度を高めることができる。
【0029】
請求項4の発明によると、前記した小型油圧ショベルのようにフレームとフロアプレートとの間に燃料タンクを外部から出し入れ可能に設置する機械において、締め付けロッドをタンク出し入れ口側のタンク側面部に着脱自在に配置したから、同ロッドを取り外すことによって燃料タンクを簡単に出し入れすることができる。
【0030】
請求項5,6の発明によると、請求項1における動き止め部材としてゴム等の摩擦係数の高い弾性材料から成る凸部付きの受けパッドをフレーム上面に取付け、凸部を含めた受けパッド上面を燃料タンクの下面に接触させた状態で、凸部を、燃料タンク下面に設けた凹部に嵌合させるため、凹凸嵌合による水平方向の固定力に受けパッドによる摩擦作用と緩衝作用がプラスされることで、固定力をさらに高めることができるとともに、振動や衝撃から燃料タンクを保護し、その破損を防止することができる。
【0031】
この場合、請求項6の発明によると、フレーム上面に金属製の止め板を取付け、受けパッドをこの止め板に嵌着したから、受けパッドそのものがずれ動いたり外れたりするおそれがない。
【0032】
請求項7〜10の発明によると、燃料タンクの上下両面側でタンクと相手側とを凹凸嵌合させて燃料タンクを水平方向に固定すること、上面側の動き止め部材としてゴム等の摩擦係数の高い弾性材料から成る押えパッドを用いたことにより、水平方向のタンク固定力を一層高め、ずれ動きをより確実に防止することができる。
【0033】
この場合、請求項8の発明によると、押えプレートを断面U字形に形成し、同じく断面U字形の押えパッドをこの押えプレートに下側から外嵌させる構成としたから、この両者の強度と剛性を高めて、上下方向の主固定力と水平方向の動き止め力の双方を強化することができる。
【0034】
請求項9の発明によると、押えパッドにおける燃料タンクに接触する面を多数のディンプルを備えた凹凸状に形成したから、水平方向の動き止め力をさらに高めることができる。
【0035】
請求項10の発明によると、押えパッドと押えプレートを互いの突起と係合穴で結合するため、両者の相対移動(ずれ動き)を防止し、タンクの動き止め作用をより確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態にかかる燃料タンク取付装置によって燃料タンクを取付けた状態の油圧ショベルのアッパーフレームの概略平面図である。
【図2】同一部拡大斜視図である。
【図3】図1のIII−III線拡大断面図である。
【図4】図3のIV−IV線拡大断面図である。
【図5】押えプレートと押えパッドの分解斜視図である。
【図6】押えプレートに押えパッドを取付け、かつ、締め付けロッドをセットした状態で押えプレートの一端部を下側から見た斜視図である。
【図7】本発明の適用対象である小型油圧ショベルを一部切り欠いて示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施形態を図1〜図6によって説明する。
【0038】
実施形態は、背景技術の説明に合わせて、図7に示す小型油圧ショベルの上部旋回体2に合成樹脂製の燃料タンクを設置する場合を例にとっている。
【0039】
実施形態において、
(i) アッパーフレーム11にエンジン等の機器類及びこれらを覆うガードパネル、運転席(いずれも図示しない)等を取付けて上部旋回体を構成する点、
(ii) アッパーフレーム11は底板12を有し、この底板12上の左側(図1の左側を機械の前方とした場合の左側であって図3では右側。以下にいう前後、左右の方向性について同じ)にフロアプレート13(図2,3参照)が設けられる点、
(iii) このフロアプレート13は、アッパーフレーム底板12との間に空間Sが形成されるとともにこの空間Sの左側面がタンク出し入れ口として外部に開口する状態で、支柱14(左側前部の1本のみ図示する)によって底板12上に取付けられる点、
(iv) 合成樹脂製の燃料タンク15は、空間Sに外部から出し入れ口を介して出し入れ可能な状態で設置される点
は、図7に示す従来技術と同じである。
【0040】
なお、アッパーフレーム11には、前端部にアタッチメント取付ブラケット16が設けられるとともに、左右方向の中間左右両側に前後方向に延びる縦板17,18、前後方向の中間部に縦板17,18と交差して左右方向に延びる仕切り壁19がそれぞれ底板12から垂直に立ち上がる状態で設けられ、仕切り壁19で仕切られたアッパーフレーム後部にエンジンとその関連機器類が設置される。
【0041】
燃料タンク15は、図1,2に示すように左側縦板17と仕切り壁19で区画されたアッパーフレーム左側の前部に大部分が収容され、後端部のみが仕切り壁19の後方に位置する状態で前記空間Sに設置される。
【0042】
なお、タンク後端部の上面に、先端に給油口を供えた給油管が取付けられるが、本発明とは直接関係ないため図示省略している。
【0043】
燃料タンク15は、空間Sにおいて前後一対の押えプレート20,20と、タンク左右の側面側でこの押えプレート20,20を下向きに締め付ける左右の締め付けロッド21,21とによって上からアッパーフレーム底板12上に押え込まれ、かつ、上下両側で凹凸嵌合によって水平方向に固定される。
【0044】
この点を詳述する。
【0045】
押えプレート20及び締め付けロッド21による押さえ込み構造と、タンク上下両側での凹凸嵌合による水平固定構造はタンク左右両側で同じであって、かつ、前後両側のタンク取付部分でも同じであるため、以下の説明は一組または一個所のみについて行う。
【0046】
押えプレート20は、図示のように水平な本体部分の前後両側に垂直な立ち上がり壁を備えた断面U字形に形成され、燃料タンク15の上面に左右方向の全幅に亘って配置される。
【0047】
この押えプレート20には、左右両端部にロッド挿通穴22,22が設けられるとともに、このロッド挿通穴22,22よりも内側に係合穴23,23が設けられている(図5参照)。
【0048】
また、同プレート20の左右両側の下面と燃料タンク上面との間に、ゴム等の摩擦係数の高い弾性材料から成る上側動き止め部材部材としての押えパッド24,24が挟み込まれる。
【0049】
この押えパッド24,24は、押えプレート20の断面形状に対応する断面U字形に形成され、押えプレート20に下側から外嵌される。
【0050】
ここで、押えパッド24,24の上面に上向きに突出する突起25,25が設けられ、この突起25,25が押えプレート20の係合穴23,22に係合することによって押えパッド24,24が押えプレート20に結合される。
【0051】
また、燃料タンク上面に対する摩擦力を高める工夫として、図6に示すように押えパッド24,24の下面が多数のディンプル24a…を備えた凹凸状に形成されている。
【0052】
一方、燃料タンク15の上面における押えプレート20の両端部に対応する部分(左右両端部)に凹部26,26が設けられ、押えパッド24,24がこの凹部26,26に嵌合する(図3,4参照)。
【0053】
これにより、タンク上面側において燃料タンク15が前後及び左右方向に位置固定される。
【0054】
締め付けロッド21は、ロッド本体27と、同本体27の上端側に連設されたねじ部28とによって構成されている。
【0055】
ロッド本体27の下端部はフック状に曲げられ、このフック部分27aが、アッパーフレーム底板12の上面に取付けられたL字形のロッド止め具29に着脱自在に引っ掛け係止される。
【0056】
この状態で、ねじ部28が押えプレート20のロッド挿通穴22に挿通され、これにナット(図ではダブルナットとしている)30がねじ込まれる。
【0057】
これにより、押えプレート20が下向きに締め付けられて、燃料タンク15がアッパーフレーム底板12に上から押さえ込まれる。
【0058】
ここで、図4に示すように、締め付けロッド21のねじ部28がロッド本体27よりも小径とされることによって両者の境界部分に段部21aが形成され、この段部21aによって押えプレート20の締め付け代が規制される。
【0059】
また、燃料タンク15における締め付けロッド21に対面する左右両側面に、同ロッド21に対する逃げ用の凹溝31(図2,3参照)がタンク全高に亘って設けられ、締め付けロッド21がこの凹溝31内に配置される。
【0060】
次に、タンク下面側の凹凸嵌合構造を説明する。
【0061】
燃料タンク15の下面において、図3に示すように上面側の凹凸嵌合構造にほぼ対応する位置に凹部(以下、これを下側凹部、上面側の凹部26を上側凹部という場合がある)32が設けられる一方、この凹部32に対面するアッパーフレーム底板12の上面に下側動き止め部材としての受けパッド33が取付けられている。
【0062】
この受けパッド33は、上面中央部に上向きの凸部33aを有し、この凸部33aを含めた受けパッド上面が燃料タンク下面に接触する状態で、凸部33aが凹部32に嵌まり込む。
【0063】
これにより、タンク下面側で燃料タンク15が前後及び左右方向に位置固定される。
【0064】
図3中、34はアッパーフレーム底板12の上面にボルト止めされた金属製の皿状の止め板で、受けパッド33はこの止め板34に上から弾性的に嵌着されている。
【0065】
上記のようにこの燃料タンク取付装置によると、合成樹脂製の燃料タンク15を、前後両側の押えプレート20と締め付けロッド21とによってアッパーフレーム底板12に上から押え込むのに加えて、タンク上面側及び下面側の双方において、凹部26,32と動き止め部材(上面側は押えパッド24、下面側は受けパッド33)の凹凸嵌合構造によって水平全方向に固定する構成としたから、燃料タンク15をアッパーフレーム底板12に対し、上下方向の主固定力と水平方向の動き止め力とを合わせた十分な固定力によって安定良く固定することができる。
【0066】
このため、激しい振動や衝撃によっても燃料タンク15がずれ動くおそれがなくなる。
【0067】
また、下側凹部32と受けパッド33の凹凸嵌合部分によって燃料タンク取付時の位置決めが容易となる。
【0068】
さらに、タンク上面側に配置した押えプレート20を、タンク側面側に配置した締め付けロッド21で締め付ける構成であって、タンク側面側の固定部品が嵩張らない締め付けロッド21のみとなるため、限られたスペース内で水平方向のタンクサイズを大きくし、タンク容量を大きくとることができる。
【0069】
また、これらに加えて次の作用効果を得ることができる。
【0070】
(I) 締め付けロッド21のロッド本体27の下端部をアッパーフレーム底板12(ロッド止め具29)に係止させた状態でねじ部28を押えプレート20に挿通させてナット29で締め込む構成を前提として、ロッド本体27とねじ部28の境界部分に段部21aを形成し、押えプレート20の締め付け代をこの段部21aによって規制する構成、つまり、押えプレート20が段部21aに当たるまで締め付け可能で、段部21aを超えて締め付けることができない構成としたから、タンク締め付け力(押え付け力)を正確に管理し、締め付け不足や締め付け過ぎを防止することができる。
【0071】
(II) 燃料タンク15における締め付けロッド21に対面する左側面部に同ロッド21に対する逃げ用の凹溝31を設けたから、タンク左側面を最大限外向きに拡張してタンク容量を増やすことができる。
【0072】
また、この凹溝形成部分がリブとして補強効果を発揮し、タンク側面部の強度を高めることができる。
【0073】
(III) この実施形態で適用対象とした小型油圧ショベルのようにアッパーフレーム底板12とフロアプレート13との間の空間Sに燃料タンク15を外部から出し入れ可能に設置する機械において、締め付けロッド21をタンク出し入れ口側のタンク側面部(左側面部)に着脱自在に配置したから、タンク洗浄等のためのメンテナンス時に、同ロッド21を取り外すことによって燃料タンク15を簡単に出し入れすることができる。
【0074】
(IV) 下側動き止め部材としてゴム等の摩擦係数の高い弾性材料から成る凸部33a付きの受けパッド33をアッパーフレーム底板12の上面に取付け、凸部33aを含めた受けパッド上面を燃料タンク15の下面に接触させた状態で、凸部33aを、燃料タンク下面に設けた下側凹部32に嵌合させるため、凹凸嵌合による水平方向の固定力に、受けパッド33による摩擦作用と緩衝作用がプラスされることで、固定力をさらに高めることができるとともに、振動や衝撃から燃料タンク15を保護し、その破損を防止することができる。
【0075】
この場合、アッパーフレーム底板12の上面に金属製の止め板34を取付け、受けパッド33をこの止め板34に嵌着したから、受けパッド33そのものがずれ動いたり外れたりするおそれがない。
【0076】
(V) 燃料タンク15の上面側でも同タンク15と押えプレート20とを凹凸嵌合させて燃料タンク15を水平方向に固定すること、上面側動き止め部材として下面側同様、ゴム等の摩擦係数の高い弾性材料から成る押えパッド24を用いたことにより、水平方向のタンク固定力を一層高め、ずれ動きをより確実に防止することができる。
【0077】
(VI) 押えプレート20を断面U字形に形成し、同じく断面U字形の押えパッド24をこの押えプレート20に下側から外嵌させる構成としたから、この両者の強度と剛性を高めて、上下方向の主固定力と水平方向の動き止め力の双方を強化することができる。
【0078】
(VII) 押えパッド24における燃料タンク15に接触する下面を多数のディンプル24a…を備えた凹凸状に形成したから、水平方向の動き止め力をさらに高めることができる。
【0079】
(VIII) 押えパッド24と押えプレート20を互いの突起25と係合穴23で結合するため、両者の相対移動(ずれ動き)を防止し、燃料タンク15の動き止め作用をより確実なものとすることができる。
【0080】
他の実施形態
(1) 上記実施形態では、燃料タンク15の上下両面側で動き止め部材(押えパッド24、受けパッド33)と凹部26,32を凹凸嵌合させる構成をとったが、タンク下面側のみに凹凸嵌合構造を設けてもよい。
【0081】
(2) 上記実施形態のようにタンク上下両面側で凹凸嵌合構造をとる場合に、たとえば下面側では上記実施形態と同様に燃料タンク15の水平全方向の位置固定を行い、上面側では同タンク15の左右、前後両方向のいずれか一方の位置固定のみを行うようにしてもよい。
【0082】
あるいは、タンク上面側で前後、左右両方向のいずれか一方の位置固定、タンク下面側で他方の位置固定を行うようにしてもよい。
【0083】
(3) 押えプレート20に関して、上記実施形態では同プレート20を燃料タンク15の前後二個所に設けたが、タンクサイズ等によっては三個所以上、あるいは一個所のみに設けてもよい。
【0084】
また、上記実施形態では押えプレート20を燃料タンク上面に左右方向に設け、左右両側で締め付けロッド21によって締め付ける構成をとったが、燃料タンク15の前後両側にスペースを確保できることを条件に、同プレート20を前後方向に設け、前後両側で締め付けロッド21によって締め付ける構成をとってもよい。
【0085】
(4) 上記実施形態では、アッパーフレーム11の左側前部においてアッパーフレーム底板12とフロアプレート13との間の空間Sに燃料タンク15を設置する場合を例示したが、この燃料タンク15の設置位置は機械のアッパーフレーム構成や機器レイアウト等に応じて変更可能である。
【符号の説明】
【0086】
11 アッパーフレーム(機械のフレーム)
12 アッパーフレーム底板
13 フロアプレート
15 燃料タンク
20 押えプレート
21 締め付けロッド
21a 締め付けロッドの段部
22 押えプレートのロッド挿通穴
23 同、係合穴
24 押えパッド(動き止め部材)
24a 押えパッドのディンプル
25 同、突起
26 燃料タンク上面の凹部
27 締め付けロッドのロッド本体
27a ロッド本体のフック部分
28 締め付けロッドのねじ部
29 ロッド本体をアッパーフレーム底板に係止させるロッド止め具
30 ナット
31 燃料タンクの締め付けロッドに対する逃げ用の凹溝
32 燃料タンク下面の凹部
33 受けパッド(動き止め部材)
33a 受けパッドの凸部
34 受けパッド取付用の止め板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の燃料タンクを機械のフレーム上に載置した状態で固定する作業機械の燃料タンク取付装置であって、燃料タンクの上面側に配置した押えプレートと、燃料タンクの側面側でこの押えプレートを下向きに締め付ける締め付けロッドとによって、燃料タンクを上からフレーム上に押え込み、かつ、上記燃料タンクにおける上記押えプレートに対面する上面側、及び上記機械のフレームに対面する下面側のうち少なくとも下面側において燃料タンク側に凹部を設ける一方、この凹部が対面する相手側に動き止め部材を突設し、この動き止め部材を上記凹部に嵌合させることによって燃料タンクを水平方向に固定するように構成したことを特徴とする作業機械の燃料タンク取付装置。
【請求項2】
上記締め付けロッドをロッド本体と同本体の上端側に連設したねじ部とによって構成し、上記ロッド本体の下端部を上記フレームに係止させる一方、上記ねじ部を上記押えプレートの端部に挿通させ、このねじ部にナットをねじ込むことによって燃料タンクをフレーム上に押え込み固定するように構成し、かつ、上記締め付けロッドのねじ部をロッド本体よりも小径とすることによって両者の境界部分に段部を形成し、上記押えプレートの締め付け代をこの段部によって規制するように構成したことを特徴とする請求項1記載の作業機械の燃料タンク取付装置。
【請求項3】
上記燃料タンクにおける上記締め付けロッドに対面する側面部に、締め付けロッドに対する逃げ用の凹溝を上下方向に設けたことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械の燃料タンク取付装置。
【請求項4】
上記フレーム上にフロアプレートを、互いの間に空間が形成されるとともにこの空間の一側面がタンク出し入れ口として外部に開口する状態で設け、上記燃料タンクを外部から出し入れ可能な状態で上記空間に設置するとともに、上記締め付けロッドを上記タンク出し入れ口側の燃料タンク側面部に着脱自在に配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業機械の燃料タンク取付装置。
【請求項5】
上記動き止め部材として、ゴム等の摩擦係数の高い弾性材料から成る受けパッドを上記フレームの上面に取付け、この受けパッドには上面に凸部を設け、この凸部を含めた受けパッド上面を燃料タンクの下面に接触させた状態で、上記凸部を、燃料タンク下面に設けた凹部に嵌合させるように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の作業機械の燃料タンク取付装置。
【請求項6】
上記フレームの上面に金属製の止め板を取付け、上記受けパッドをこの止め板に嵌着したことを特徴とする請求項5記載の作業機械の燃料タンク取付装置。
【請求項7】
上記動き止め部材として、ゴム等の摩擦係数の高い弾性材料から成る押えパッドを上記燃料タンクと押えプレートとの間に挟み込む一方、燃料タンクの上面に凹部を設け、上記押えパッドをこの凹部に嵌合させるように構成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の作業機械の燃料タンク取付装置。
【請求項8】
上記押えプレートを、水平な本体部分の幅方向両側に立ち上がり壁を備えた断面U字形に形成するとともに、上記押えパッドをこの押えプレートに下側から外嵌する断面U字形に形成したことを特徴とする請求項7記載の作業機械の燃料タンク取付装置。
【請求項9】
上記押えパッドにおける燃料タンクに接触する面を多数のディンプルを備えた凹凸状に形成したことを特徴とする請求項7または8記載の作業機械の燃料タンク取付装置。
【請求項10】
上記押えパッドの上面に上向きに突出する突起を一体に設ける一方、上記押えプレートに係合穴を設け、上記突起をこの係合穴に係合させることによって押えパッドを押えプレートに結合するように構成したことを特徴とする請求項7〜9のいずれか1項に記載の作業機械の燃料タンク取付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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