説明

作業機械の空調装置

【課題】土ぼこり等の粉塵の影響を抑制することができるようにした、作業機械の空調装置を提供する。
【解決手段】作業機械のキャブ1内に設置された空調装置2について、その吸気口2bを、キャブ1の床3よりも天井4に近い位置に設置する。そして、その装置本体2aは床上に設置されるとともに、装置本体2aと吸気口2bとは空調用配管2cで接続されている。なお、キャブ1は、リヤウィンドウ用のワイパと、ワイパを駆動するワイパモータと、ワイパモータを保護するガード部材とを有しており、吸気口2bの形成される有開口部材10が、キャブ1の後壁に対してガード部材と共にボルトで共締めされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事現場等の土ぼこりの多い環境下で使用される作業機械に好適な空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事に適した作業機械として、図7に示すようなダンプトラック100がある。
このダンプトラック100には、オペレータ室としてキャブ101が設置されているとともに、図8に示すように、オペレータの居住性を高めるためにキャブ101内にエアコン(空調装置)102が設置されている。このエアコン102のエアコン本体(エアコンユニット)102aの設置位置は、オペレータシート103後方のキャブフロア104上、且つ、乗降用ドアが開閉するキャブ101の乗降口105近傍であり、また、エアコン102の吸気口102bも、エアコン本体102aに近接して、キャブフロア104近傍、且つ、乗降口105近傍の位置に設置されているのが一般的である。なお、図8中の符号102eはエアコン本体102aからキャブ101内に空調風を吹き出すための空調風吹出用配管を示し、符号106は吸気口102bに取り付けられた防塵用のフィルタを示している。
【0003】
ここで、例えば特許文献1に、吸気口102bがこのような位置に設置された技術が開示されている(特許文献1に記載された「空気取入口10」が吸気口102bに相当すると考えられる)。
【特許文献1】特開2001−295319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トンネル内は土ぼこりが特に多い環境下にある。したがって、従来、図8に示すように、吸気口102bがキャブフロア104近傍、且つ、乗降口105近傍に位置していたために、オペレータの乗降による土ぼこりを吸い込みやすく、フィルタ106が早期に詰まってしまい、フィルタ106の清掃作業を頻繁に行なう必要が生じたり、また、フィルタ106を頻繁に交換する必要が生じたりするという課題があった。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みて案出されたもので、土ぼこり等の粉塵の影響を抑制することができるようにした、作業機械の空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の作業機械の空調装置は、作業機械のキャブ内に設置された空調装置であって、その吸気口が、該キャブの床よりも天井に近い位置に設置されていることを特徴としている。
そして、その装置本体は該床上に設置されるとともに、該装置本体と該吸気口とは空調用配管で接続されていることを特徴としている。
【0007】
なお、該キャブは、リヤウィンドウ用のワイパと、該ワイパを駆動するワイパモータと、該ワイパモータを保護するガード部材とを有しており、該吸気口の形成される有開口部材が、該キャブの後壁に対して該ガード部材と共にボルトで共締めされていることが好ましい。
また、該作業機械がダンプトラックであればより好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の作業機械の空調装置によれば、その吸気口がキャブの床よりも天井に近い位置に設置されているので、オペレータの乗降の際にも土ぼこり等の粉塵が吸気口に吸い込まれ難く、土ぼこり等の粉塵の影響を抑制することができる。
また、吸気口の形成される有開口部材がワイパモータを保護するガード部材と共にキャブの後壁にボルトで共締めされていれば、吸気口を天井に近い位置に設置するための部品点数の増加を抑制することができる。
【0009】
また、有開口部材が後壁に取り付けられていれば、有開口部材や吸気口と床上に設置された装置本体とを接続する空調用配管が、オペレータの前方視界を遮らないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
[一実施形態]
本発明の一実施形態について図1〜図6により説明する。図1〜図5は本発明の一実施形態に係る作業機械の空調装置を模式的に示す図であって、図1はその全体を機体左側から見た側面図、図2は図1の円Wで囲まれたエアコン本体周辺を機体左側から見た斜視図、図3は図1のX−X方向から見た吸気口と吸気口周辺の正面図、図4は図3のZ−Z方向から見た吸気口と吸気口周辺の断面図、図5は図1のY−Y方向から見た吸気口とエアコン本体とをまとめて示す背面図である。図6は図5に示す本発明と対比するために、図8に示す従来技術の吸気口とエアコン本体とを示す背面図である。
【0011】
<構成>
本発明は、図1に示すように、ダンプトラック(図7参照)のキャブ1内に設置されたエアコン(空調装置)2の吸気口2bが、上述の従来技術ではキャブフロア(床)3近傍の位置に設置されていたのに対し、ルーフパネル(天井)4近傍という高い位置に設置されているものである。
【0012】
キャブフロア3の略中央には、オペレータシート5が設置されており、このオペレータシート5後方且つキャブフロア3上に、エアコン2のエアコン本体2aが設置されている。
そして、図3に示すように、エアコン2の吸気口2bが、ルーフパネル4近傍である、リヤウィンドウ7用のワイパ(図示略)を駆動するワイパモータ(図示略)の横に設置されている。ワイパモータはワイパモータガード(ガード部材)8で覆われ保護されている。
【0013】
具体的には、図4に示すように、箱状のボックス(有開口部材)10の前面10Fに吸気口2bとしての開口が形成されるとともに、ボックス10の後面10Bの右端部及び左端部にブラケット11a,11bが固着されている。そして、右端部のブラケット11aは、ワイパモータガード8に固着されたブラケット12と共に、リヤパネル(後壁)9に溶接されたネジ付きボス13にボルト13a(図3参照)で共締めされている。また、左端部のブラケット11bは、キャブ1のリヤパネル9に溶接されたネジ付きボス14にボルト(図示略)で固定されている。
【0014】
吸気口2bには、空気中に含まれる土ぼこり等の粉塵がエアコン本体2aに侵入しないように、防塵用のフィルタ20が取り付けられている。
また、ボックス10の左側面10Lに開口10cが形成され、この開口10cに吸気用の配管(空調用配管)2cの一端が取り付けられている。
【0015】
吸気用配管2cは、キャブ1の壁面に沿って延在し、図5に示すように、エアコン本体2aへと案内されている。エアコン本体2aには開口2dが形成され、吸気用配管2cの他端がこの開口2dにダクト型の部材30を介して接続されている。また、図1に示すように、エアコン本体2aには空調風吹出用配管2eも接続され、エアコン本体2aで空調された空調風が空調風吹出用配管2eを介してキャブ1内に吹き出されるようになっている。
なお、図5に示す本発明のエアコン2と対比するために、図8に示す従来技術のエアコン102の背面図を図6として示すので、参照されたい。
【0016】
<作用・効果>
本発明の一実施形態にかかる作業機械の空調装置は上述のように構成されているので、以下のような作用・効果がある。
エアコン2の吸気口2bがキャブフロア3よりもルーフパネル4に近い位置に設置されているので、オペレータの乗降の際にも土ぼこり等の粉塵が吸気口2bに吸い込まれ難く、土ぼこり等の粉塵の影響を抑制することができる。そして、フィルタ20の清掃及び交換のインターバルを長くすることができるという利点、エアコン本体2aの寿命が長くなるという利点、エアコン2の効き低下を減少させることができるという利点がある。
【0017】
また、吸気口2bの形成されるボックス10がワイパモータガード8と共にリヤパネル9にボルト13aで共締めされているので、吸気口2bをルーフパネル4近傍に設置するための部品点数の増加を抑制することができる。
また、ボックス10がリヤパネル9に取り付けられるので、ボックス10や吸気用配管2cがオペレータの前方視界を遮らないという利点がある。
【0018】
[その他]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
例えば、上記実施形態では、箱状のボックス10に吸気口2bが形成されたが、吸気口2bが形成される部材はボックス10に限らず、開口が形成されるとともに内部が中空に形成され、且つ、開口を吸気口2bとして利用可能な部材(有開口部材)であれば、どのような形状の部材であっても良い。
【0019】
また、上記実施形態では、吸気口2bは、リヤウィンドウ7用のワイパモータの横に設置されているが、キャブフロア3よりもルーフパネル4に近い位置に設置されていれば他の位置であっても良い。
また、上記実施形態では、ダンプトラックに適用された空調装置について説明したが、油圧ショベルやクレーン等のその他の作業機械に適用されても勿論良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業機械の空調装置全体を機体のキャブ内左側から見た側面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る作業機械の空調装置のうちの、図1の円Wで囲まれたエアコン本体周辺を機体左側から見た斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る作業機械の空調装置の吸気口と吸気口周辺を示す、図1のX−X方向から見た正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る作業機械の空調装置の吸気口と吸気口周辺を示す、図3のZ−Z方向から見た断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る作業機械の空調装置の吸気口とエアコン本体とをまとめて示す、図1のY−Y方向から見た背面図である。
【図6】従来技術に係る作業機械の空調装置の吸気口とエアコン本体とを示す背面図である。
【図7】一般的なダンプトラックを示す側面図である。
【図8】従来技術に係る作業機械の空調装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1 キャブ
2 エアコン(空調装置)
2a エアコン本体(装置本体)
2b 吸気口
2c 吸気用配管(空調用配管)
2d 開口
2e 空調風吹出用配管
3 キャブフロア(床)
4 ルーフパネル(天井)
5 オペレータシート
7 リヤウィンドウ
8 ワイパモータガード(ガード部材)
9 リヤパネル(後壁)
10 ボックス(有開口部材)
10c 開口
10B 後面
10F 前面
10L 左側面
11a,11b,12 ブラケット
13 ボス
13a ボルト
14 ボス
20 フィルタ
30 ダクト型部材
100 ダンプトラック(作業機械)
101 キャブ
102 エアコン
102a エアコン本体
102b 吸気口
102e 空調風吹出用配管
103 オペレータシート
104 キャブフロア
105 乗降口
106 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械のキャブ内に設置された空調装置であって、
その吸気口が、該キャブの床よりも天井に近い位置に設置されている
ことを特徴とする、作業機械の空調装置。
【請求項2】
その装置本体は該床上に設置されるとともに、該装置本体と該吸気口とは空調用配管で接続されている
ことを特徴とする、請求項1記載の作業機械の空調装置。
【請求項3】
該キャブは、リヤウィンドウ用のワイパと、該ワイパを駆動するワイパモータと、該ワイパモータを保護するガード部材とを有しており、
該吸気口の形成される有開口部材が、該キャブの後壁に対して該ガード部材と共にボルトで共締めされている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の作業機械の空調装置。
【請求項4】
該作業機械はダンプトラックである
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の作業機械の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−126079(P2010−126079A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304919(P2008−304919)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】