説明

作業機械

【課題】小型化した場合でもキャブ内に空調装置を設置できる作業機械を提供する。
【解決手段】キャブ16内の前部であって作業装置側の側面部16sに、温度調整した風をキャブ16内に吹出可能な空調装置34を、密着させて配置する。この空調装置34は、縦方向偏平形に形成し、空調装置本体(図示せず)を、樹脂成形の空調装置カバー35で覆ったものである。空調装置カバー35には、キャブ内空気を吸込む吸込口36と、キャブ内上部に風を吹出可能な上部吹出口37と、キャブ内下部に風を吹出可能な下部吹出口38とを開口する。空調装置34から、キャブ16内の作業装置側の側面部16sに沿って第1側面部ダクト44および第2側面部ダクト45を配設し、キャブ16内の背面部16rに沿って背面横断ダクト46を配設し、背面横断ダクト46の一側部および他側部からキャブ16内の背面一側および他側の角部に沿って背面塔形ダクト47,48を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置を備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機械は、機体の後部にエンジンを有する動力装置が搭載され、機体の前部に運転室形成用のキャブが搭載され、キャブ内には、温度調整された風をキャブ内に吹出可能な空調装置が設置されている。この空調装置は、キャブ内に設置された運転席の後側に本体部分が配置され、この後側の空調装置からキャブ内の前側などにわたって風を供給する配管装置が設置されている(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【特許文献1】特開平7−47835号公報(第2−3頁、図1−2)
【特許文献2】特開平5−221236号公報(第2頁、図1−2)
【特許文献3】特開2004−299678号公報(第4−5頁、図2−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、従来のキャブ内の空調装置は、運転席の後側に配置され、機体の後部に搭載されたエンジンに近いため、相互の熱影響が大きく、冷却効率が低下するなどの問題がある。特に、小型機では、空調装置を運転席の後側に配置すると、エンジンと空調装置とが異常に接近するため、キャブ内に空調装置を設置できない小型機種もある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、小型化した場合であってもキャブ内に空調装置を設置できる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、機体と、機体の後部に搭載されたエンジンを有する動力装置と、機体上に設置された運転室形成用のキャブと、キャブの一側部で機体に搭載された作業装置と、キャブ内の前部に配置され温度調整された風をキャブ内に吹出可能な空調装置とを具備した作業機械である。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の作業機械における空調装置が、キャブ内上部に風を吹出可能な上部吹出口と、キャブ内下部に風を吹出可能な下部吹出口とを具備したものである。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の作業機械において、空調装置の上面部に設けられた収納凹部を具備したものである。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか記載の作業機械における空調装置が、縦方向偏平形に形成されるとともに、キャブ内の前部であって作業装置側の側面部に密着されて配置され、この空調装置からキャブ内の作業装置側の側面部および背面部に沿って配設されキャブ内の異なる場所に風を供給する配管装置を具備した作業機械である。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の作業機械における配管装置が、キャブ内の背面部に沿って横断方向に配置された背面横断ダクトと、この背面横断ダクトの一側部および他側部からキャブ内の背面一側および他側の角部に沿ってそれぞれ塔形に立上げられ上端部に背面吹出口を有する複数の背面塔形ダクトとを具備したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、機体の後部にエンジンを有する動力装置が搭載され、機体上にキャブが設置され、そのキャブ内の前部に空調装置が配置されたので、空調装置を動力装置から離間させて、熱影響による冷却効率などの低下を防止できることから、作業機械を小型化した場合であってもキャブ内に空調装置を設置できる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、上部吹出口からオペレータの顔面などに風を効率良く供給できるとともに、下部吹出口からオペレータの足元などに風を効率良く供給できる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、空調装置の上面部に設けられた収納凹部をカップホルダなどの物入れとして利用できる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、縦方向偏平形に形成された空調装置が、キャブ内の前部であって作業装置側の側面部に密着されて配置され、この空調装置からキャブ内の作業装置側の側面部および背面部に沿って配管装置が配設された空調構造物は、小型のキャブ内にもコンパクトに設置できる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、背面横断ダクトの一側部および他側部からキャブ内の背面一側および他側の角部に沿ってそれぞれ塔形に立上げられた複数の背面塔形ダクトは、小型のキャブ内にコンパクトに設置でき、さらに、これらの背面塔形ダクトの背面吹出口より、オペレータの首すじなどに左右部後方から風を効率良く供給できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を図1乃至図3に示された一実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図2は、作業機械としての油圧ショベル11を示し、その機体12は、下部走行体13上に上部旋回体14が旋回可能に設けられて構成され、その上部旋回体14の後部に、エンジンを有する動力装置15が搭載され、上部旋回体14上には、その前部から動力装置15上にわたって、運転室形成用のキャブ16が設置されている。下部走行体13には、昇降シリンダ17により昇降可能なプッシュアーム18を介してブレード19が取付けられている。
【0017】
キャブ16の左側面部には、ドア21により開閉される搭乗口22が設けられ、キャブ16の右側部で上部旋回体14の前部には作業装置23が搭載されている。
【0018】
この作業装置23は、上部旋回体14のブラケット部24に、ブームシリンダ25により上下方向に回動されるブーム26が軸支され、このブーム26の先端部に、アームシリンダ27により回動されるアーム28が軸支され、このアーム28の先端部にバケットシリンダ29により回動されるバケット30が軸支されている。
【0019】
図1に示されるように、キャブ16内には運転席31が配置され、この運転席31の左右両側には、作業装置23を操作するための作業用操作レバー装置32が設けられ、運転席31の前側には、走行用操作レバー装置33が設けられている。
【0020】
キャブ16内の前部であって作業装置23側の側面部16sには、温度調整または湿度調整された風をキャブ16内で吹出可能な空調装置34が、密着されて配置されている。
【0021】
この空調装置34は、縦方向偏平形に形成され、冷房用のエバポレータまたは暖房用のヒータなどを送風ファンとともに備えた空調装置本体(図示せず)を、樹脂成形された空調装置カバー35で覆ったものである。
【0022】
この空調装置カバー35には、キャブ内空気を吸込む吸込口36と、キャブ内上部に風を吹出可能な上部吹出口37と、キャブ内下部に風を吹出可能な下部吹出口38と、カバー上側後部の吹出口(図示せず)とが開口され、また、空調装置カバー35の上面部には、飲料容器などを収納するための収納凹部39が設けられている。
【0023】
上部吹出口37は、運転席31に座ったオペレータの顔面などに風を供給し、下部吹出口38は、そのオペレータの足元などに風を供給するものであるが、これらの上部吹出口37および下部吹出口38には、風の向きを調整するための可動ルーバ41,42が設置されているので、フロントガラスデフロストとしてキャブ前窓のフロントガラスに風を吹付けることもできる。
【0024】
この空調装置34のカバー上側後部に開口された吹出口(図示せず)には、キャブ内の異なる場所に風を供給する空調用の配管装置43が、キャブ16内の作業装置23側の側面部16sおよび背面部16rに沿って配設されている。
【0025】
図3に示されるように、この配管装置43は、空調装置34に接続された樹脂成形の第1側面部ダクト44および第2側面部ダクト45が、キャブ16内の作業装置23側の側面部16sに沿って固定され、第2側面部ダクト45に接続された樹脂成形の背面横断ダクト46が、キャブ16内の背面部16rに沿って横断方向に固定され、この背面横断ダクト46の一側部および他側部に接続された樹脂成形の複数の背面塔形ダクト47,48が、キャブ16内の背面一側および他側の角部に沿って、それぞれ塔形に立上げられ固定されている。
【0026】
これらの背面塔形ダクト47,48の上端部には、オペレータに対し後方から風を供給する吹出口としての背面吹出口51,52がそれぞれ設けられ、これらの背面吹出口51,52には、風の向きを調整するための可動ルーバ53,54が設置されている。
【0027】
次に、この実施の形態の作用効果を説明する。
【0028】
空調装置34は、温度調整された風、すなわち夏季は冷風、冬季は温風を発生させ、上部吹出口37から運転席31のオペレータの顔面などに風を供給するとともに、下部吹出口38からオペレータの足元などに風を供給する。
【0029】
同時に、空調装置34で発生した風を、配管装置43の第1側面部ダクト44、第2側面部ダクト45、背面横断ダクト46および左右の背面塔形ダクト47,48により運転席31の後方へ供給して、左右の背面塔形ダクト47,48の背面吹出口51,52よりオペレータの首筋などへ左右後方から冷風を供給する。
【0030】
上部旋回体14の後部にエンジンを有する動力装置15が搭載され、上部旋回体14上にキャブ16が搭載され、そのキャブ16内の前部に空調装置34が配置されたので、この空調装置34を動力装置15から離間させて、熱影響による冷却効率などの低下を防止できることから、油圧ショベル11を図2に示されるように小型化した場合であってもキャブ16内に空調装置34を設置できる。
【0031】
空調装置34は、上部吹出口37からオペレータの顔面などに風を効率良く供給できるとともに、下部吹出口38からオペレータの足元などに風を効率良く供給できる。
【0032】
空調装置34の上面部に設けられた収納凹部39をカップホルダなどの物入れとして利用できる。
【0033】
縦方向偏平形に形成された空調装置34が、キャブ16内の前部であって作業装置23側の側面部16sに密着されて配置され、この空調装置34からキャブ16内の作業装置23側の側面部16sおよび背面部16rに沿って配管装置43が配設された空調構造物は、小型のキャブ16内にもコンパクトに設置できる。
【0034】
背面横断ダクト46の一側部および他側部からキャブ16内の背面一側および他側の角部に沿ってそれぞれ塔形に立上げられた複数の背面塔形ダクト47,48は、小型のキャブ16内にコンパクトに設置でき、さらに、これらの背面塔形ダクト47,48の背面吹出口51,52より、オペレータの首すじなどに左右部後方から風を効率良く供給できる。
【0035】
なお、本発明は、小型機種に好適なものであるが、大型機種または油圧ショベル以外の他の作業機械のキャブ内空調装置にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る作業機械のキャブ内構造の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同上作業機械の一実施の形態を示す斜視図である。
【図3】同上作業機械のキャブ内空調システムを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0037】
12 機体
15 動力装置
16 キャブ
16s 側面部
16r 背面部
23 作業装置
34 空調装置
37 上部吹出口
38 下部吹出口
39 収納凹部
43 配管装置
46 背面横断ダクト
47,48 背面塔形ダクト
51,52 背面吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体と、
機体の後部に搭載されたエンジンを有する動力装置と、
機体上に設置された運転室形成用のキャブと、
キャブの一側部で機体に搭載された作業装置と、
キャブ内の前部に配置され温度調整された風をキャブ内に吹出可能な空調装置と
を具備したことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
空調装置は、
キャブ内上部に風を吹出可能な上部吹出口と、
キャブ内下部に風を吹出可能な下部吹出口と
を具備したことを特徴とする請求項1記載の作業機械。
【請求項3】
空調装置の上面部に設けられた収納凹部
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載の作業機械。
【請求項4】
空調装置は、縦方向偏平形に形成されるとともに、キャブ内の前部であって作業装置側の側面部に密着されて配置され、
この空調装置からキャブ内の作業装置側の側面部および背面部に沿って配設されキャブ内の異なる場所に風を供給する配管装置
を具備したことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載の作業機械。
【請求項5】
配管装置は、
キャブ内の背面部に沿って横断方向に配置された背面横断ダクトと、
この背面横断ダクトの一側部および他側部からキャブ内の背面一側および他側の角部に沿ってそれぞれ塔形に立上げられ上端部に背面吹出口を有する複数の背面塔形ダクトと
を具備したことを特徴とする請求項4記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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