説明

作業機械

【課題】エンジン始動直後のエンジンストールを防止し、かつ、作業員の違和感を低減できる作業機械を提供する。
【解決手段】エンジン10により駆動される油圧ポンプ20と、油圧ポンプ20により動作する油圧アクチュエータ30と、油圧アクチュエータ30の動作を指示する操作手段40と、エンジン10が始動直後に操作手段40から動作が指示されたときに油圧アクチュエータ30に供給される作動油の流量を制御する作動速度制御装置とを備える。エンジン始動直後に作業員が作業機械の操作を行っても、エンジンストールすることを防止できる。作業機械は作業員の操作に従って低速で動作するため、作業員の違和感を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。さらに詳しくは、エンジン始動直後にアクチュエータの操作があったとしてもエンジンストールしない作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、高所作業車やクレーン等の作業機械は、エンジンを始動した直後、あるいはアイドリングストップ状態からエンジンを再始動した直後には、エンジン回転が安定しておらず、直ぐにブームの伸縮等の作業機械の操作を行うと、エンジンにかかる負荷が高くなりエンジンストールする恐れがある。
【0003】
これに対して特許文献1には、操作レバーや操作スイッチの操作信号を遅延させ、エンジンが始動して一定時間経過するまで、作業機械が動作しないように制御する技術が記載されている。
このようにすることで、エンジン始動直後のエンジン回転が安定していないときに、作業員が作業機械の操作を行っても、その操作を受け付けないため、エンジンに負荷がかからず、エンジンストールすることを防止できる。
【0004】
しかるに、上記従来技術では、作業員は操作をしたものの作業機械が動作しないため、違和感を覚えるという問題がある。
例えば、高所作業車の場合、作業員はエンジンから遠く離れたバケットの中からエンジンを始動しブームの伸縮等の操作をするため、操作をしてもブーム等が動作しないと、エンジンが始動していないものと勘違いする場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−84475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、エンジン始動直後のエンジンストールを防止し、かつ、作業員の違和感を低減できる作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の作業機械は、エンジンと、該エンジンの駆動により動作するアクチュエータと、該アクチュエータの動作を指示する操作手段と、該操作手段から前記アクチュエータの動作が指示されているとき、前記エンジンが始動してからエンジン回転が安定するまでの間、前記エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、前記アクチュエータの作動速度を制御する作動速度制御装置とを備えることを特徴とする。
第2発明の作業機械は、エンジンと、該エンジンにより駆動される油圧ポンプと、該油圧ポンプにより供給される作動油により動作する油圧アクチュエータと、該油圧アクチュエータの動作を指示する操作手段と、該操作手段から前記油圧アクチュエータの動作が指示されているとき、前記エンジンが始動してからエンジン回転が安定するまでの間、前記エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、前記油圧アクチュエータに供給される前記作動油の流量を制御する作動速度制御装置とを備えることを特徴とする。
第3発明の作業機械は、第2発明において、前記エンジンが回転しているか否か検知するエンジン回転検知手段を備え、前記作動速度制御装置は、前記操作手段から前記油圧アクチュエータの動作が指示されているとき、前記エンジン回転検知手段がエンジン回転を検知してから所定時間経過するまでの間、前記エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、前記油圧アクチュエータに供給される前記作動油の流量を制御するものであることを特徴とする。
第4発明の作業機械は、第3発明において、前記作動速度制御装置は、前記油圧アクチュエータに供給される前記作動油の流量を制御する流量制御バルブと、前記操作手段から前記油圧アクチュエータの動作が指示されているとき、前記エンジン回転検知手段がエンジン回転を検知してから所定時間経過するまでの間、前記エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、前記油圧アクチュエータの作動速度を算出する作動速度算出手段と、前記油圧アクチュエータの作動速度が、前記作動速度算出手段で算出した作動速度となるように前記流動制御バルブを駆動するバルブ駆動手段とを備えることを特徴とする。
第5発明の作業機械は、第4発明において、前記作動速度制御装置は、前記油圧アクチュエータの作動速度が、前記作動速度算出手段で算出した作動速度となるように前記エンジンの回転数を制御するエンジン回転数制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、エンジンが始動してからエンジン回転が安定するまでの間、エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、アクチュエータの作動速度を制御するので、エンジン始動直後に作業員が作業機械の操作を行っても、エンジンにかかる負荷が過大とならず、エンジンストールすることを防止できる。また、作業機械は作業員の操作に従って低速で動作するため、作業員の違和感を低減できる。
第2発明によれば、エンジンが始動してからエンジン回転が安定するまでの間、エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御するので、油圧アクチュエータの作動速度が制御され、エンジン始動直後に作業員が作業機械の操作を行っても、エンジンにかかる負荷が過大とならず、エンジンストールすることを防止できる。また、作業機械は作業員の操作に従って低速で動作するため、作業員の違和感を低減できる。
第3発明によれば、エンジン回転検知手段がエンジン回転を検知してから所定時間経過すればエンジン回転が安定していると判断するので、エンジン回転の様子を直接検出する場合に比べて判断が容易である。
第4発明によれば、流量制御バルブと作動速度算出手段とバルブ駆動手段とで、エンジンが始動してから所定時間経過するまでの間、エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御するので、油圧アクチュエータの作動速度が制御され、エンジン始動直後に作業員が作業機械の操作を行っても、エンジンにかかる負荷が過大とならず、エンジンストールすることを防止できる。また、作業機械は作業員の操作に従って低速で動作するため、作業員の違和感を低減できる。
第5発明によれば、流量制御バルブと作動速度算出手段とバルブ駆動手段とエンジン回転数制御手段とで、エンジンが始動してから所定時間経過するまでの間、エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、油圧アクチュエータに供給される作動油の流量を制御するので、油圧アクチュエータの作動速度が制御され、エンジン始動直後に作業員が作業機械の操作を行っても、エンジンにかかる負荷が過大とならず、エンジンストールすることを防止できる。また、作業機械は作業員の操作に従って低速で動作するため、作業員の違和感を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業機械のブロック図である。
【図2】同作業機械のタイミングチャートである。
【図3】同作業機械の他の条件におけるタイミングチャートである。
【図4】同作業機械のさらに他の条件におけるタイミングチャートである。
【図5】同作業機械のさらに他の条件におけるタイミングチャートである。
【図6】本発明の他の実施形態に係る作業機械のタイミングチャートである。
【図7】本発明のさらに他の実施形態に係る作業機械のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る作業機械は、エンジン10と、エンジン10により駆動される油圧ポンプ20と、油圧ポンプ20により供給される作動油により動作する複数の油圧アクチュエータ30A、30B、30Cと、その複数の油圧アクチュエータ30A、30B、30Cのそれぞれの動作を指示する操作手段40A、40B、40Cと、油圧アクチュエータ30A、30B、30Cの作動速度を制御するコントローラ50とを備えている。
【0011】
ここで、作業機械とはエンジンの駆動により可動部に取り付けられたアクチュエータを動作させ所定の作業をする機械をいい、例えば、高所作業車やクレーン、橋梁点検車、掘削機、油圧ショベル、ホイールローダ等が含まれる。また、油圧アクチュエータは、油圧シリンダや油圧モータであり、例えば、高所作業車の場合にはブームの伸縮、起伏、旋回体の旋回、アウトリガの張出、格納、ホイールやクローラ等の走行体の走行等に用いられるものであり、クレーンの場合にはブームの伸縮、起伏、ジブのチルト、ウインチの巻き上げ、巻き下げ、旋回体の旋回、アウトリガの張出、格納等に用いられるものである。
図1においては、油圧アクチュエータ30A、30B、30Cは3つであるが、これより少数もしくは多数の油圧アクチュエータを備えていてもよい。また、エンジン10は、車両エンジンと共通のものでもよいし、車両エンジンとは別のエンジンでもよい。
【0012】
油圧ポンプ20と各油圧アクチュエータ30A、30B、30Cは、それぞれ電磁比例方向流量制御バルブ21A、21B、21Cを介して接続されている。電磁比例方向流量制御バルブは、ソレノイドに供給する電流を制御することで、作動油の方向切り換えと流量制御とを同時に行うことができる制御バルブである。
本実施形態における電磁比例方向流量制御バルブ21A、21B、21Cは、3位置切換弁であり、油圧シリンダ30A、30Bのロッド側あるいは油圧モータ30Cの正転側に油圧ポンプ20からの圧油を流入させるI位置と、油圧シリンダ30A、30Bあるいは油圧モータ30Cからの圧油の流入・流出を停止するII位置と、油圧シリンダ30A、30Bのピストン側あるいは油圧モータ30Cの逆転側に油圧ポンプ20からの圧油を流入させるIII位置とがある。そのため、電磁比例方向流量制御バルブ21A、21B、21Cのソレノイドに供給する電流を制御することで、油圧シリンダ30A、30Bの伸長、収縮を切り換えることができ、その作動速度を制御することができる。また、油圧モータ30Cの正転と逆転とを切り換えることができ、その回転速度を制御することができる。
なお、電磁比例方向流量制御バルブは、特許請求の範囲に記載の「流量制御バルブ」に相当する。また、電磁比例方向流量制御バルブに代えて、流量制御バルブと方向制御バルブとを組み合わせて構成してもよい。
【0013】
油圧ポンプ20と各油圧アクチュエータ30A、30B、30Cとを接続する油圧回路には、リリーフバルブ22とアンロードバルブ23とが接続されており、油圧回路内の圧力が高圧になるのを防いだり、危険時の作動を規制したりする安全措置が講じられている。
【0014】
操作手段40A、40B、40Cはそれぞれ、操作レバー41A、41B、41Cと、その操作レバー41A、41B、41Cの操作量aを出力する操作出力手段42A、42B、42Cとからなる。
本実施形態における操作出力手段42A、42B、42Cは、操作レバー41A、41B、41Cの操作量aを検出するセンサであり、検出した操作量aを電気信号として出力できるようになっている。操作出力手段42A、42B、42Cは、後述のコントローラ50の操作入力手段51と接続されており、各操作レバー41A、41B、41Cの操作量aを操作入力手段51に出力できるようになっている。
なお、操作レバーに代えて、操作スイッチ等他の操作手段としてもよい。また、操作出力手段42A、42B、42Cと操作入力手段51とは、電気的に接続されるものに代えて、コントロールケーブル等物理的に接続されるものを用いてもよい。
【0015】
コントローラ50は、操作入力手段51と作動速度算出手段52とバルブ駆動手段53とエンジン回転数制御手段54とからなる。
操作入力手段51は、前述の操作出力手段42A、42B、42Cから各操作レバー41A、41B、41Cの操作量aが入力され、その操作量aを作動速度算出手段52に出力するものである。具体的には、操作出力手段42A、42B、42Cと操作入力手段51とが電気的に接続される場合、操作入力手段51にはアナログ‐デジタル変換回路が用いられる。
なお、図1中、操作入力手段51と作動速度算出手段52とは、1本の矢印で接続されているが、作動速度算出手段52には、複数の操作出力手段42A、42B、42Cのそれぞれの操作量が入力されている。
【0016】
エンジン10には、エンジン10が回転しているか否か検知するエンジン回転検知手段61が取り付けられている。エンジン回転検知手段61は作動速度算出手段52と接続されており、その検知結果bを作動速度算出手段52に出力できるようになっている。
具体的には、エンジン回転検知手段61は、エンジン10に接続された発電機から出力される電圧もしくは電流を検知することでエンジン10が回転しているか否か検知するものが挙げられる。そのほか、エンジン回転検知手段61はエンジン回転パルスを検知するものでもよい。また、エンジン10に直接取り付けられるものに限らず、油圧ポンプ20の回転を検知するものでもよいし、油圧回路の油圧を検出するものでもよい。
【0017】
作動速度算出手段52は、CPUやメモリ等から構成されており、操作入力手段51から入力される操作量aと、エンジン回転検知手段61から入力されるエンジン回転の検知結果bとから、各油圧アクチュエータ30A、30B、30Cの作動速度cを算出するものである。より具体的には、作動速度算出手段52は、操作入力手段51から操作量aが入力されているとき、エンジン回転検知手段61からエンジン回転の検知結果bが入力されてからの時間を計測し、所定時間経過するまでの間、エンジン10にかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、各油圧アクチュエータ30A、30B、30Cの作動速度cを算出するものである。その算出方法は後に詳説する。
なお、特許請求の範囲における「操作手段から油圧アクチュエータの動作が指示されているとき」とは、動作の指示の開始時点に加えて、操作入力手段51から操作量aが入力されている期間(後述の図2〜図7におけるt以降の期間)も含む概念である。
【0018】
また、作動速度算出手段52は、算出した作動速度cをバルブ駆動手段53およびエンジン回転数制御手段54に出力する。
なお、図1中、操作入力手段51とバルブ駆動手段53およびエンジン回転数制御手段54とは、1本の矢印で接続されているが、バルブ駆動手段53およびエンジン回転数制御手段54には、複数の油圧アクチュエータ30A、30B、30Cのそれぞれの作動速度が入力されている。
【0019】
バルブ駆動手段53は、各電磁比例方向流量制御バルブ21A、21B、21Cのソレノイドと電気的に接続されており、ソレノイドに供給する電流を制御できるようになっている。
バルブ駆動手段53は、作動速度算出手段52から入力された作動速度cに基づいて、各油圧アクチュエータ30A、30B、30Cの作動速度が、その作動速度cと一致するように、各電磁比例方向流量制御バルブ21A、21B、21Cのソレノイドに電流を供給して流量制御を行う。電磁比例方向流量制御バルブ21A、21B、21Cで流量制御を行うことで、各油圧アクチュエータ30A、30B、30Cの作動速度を制御することができる。
【0020】
エンジン回転数制御手段54は、作動速度算出手段52から入力された作動速度cに基づいて、各油圧アクチュエータ30A、30B、30Cの作動速度が、その作動速度cで動作できるように、エンジン10の回転数を制御するものである。換言すれば、エンジン回転数制御手段54は、油圧ポンプ20の回転数を制御して、各油圧アクチュエータ30A、30B、30Cが目的の作動速度cで動作するのに必要な流量の作動油を油圧回路に供給するためのものである。
エンジン10には、エンジンコントロールユニット62が接続されており、エンジン回転数制御手段54は、そのエンジンコントロールユニット62と接続されている。そのため、エンジン回転数制御手段54がエンジンコントロールユニット62にアクセル信号を出力することにより、エンジンコントロールユニット62を介してエンジン10の回転数を制御できるようになっている。
【0021】
エンジン10には、エンジン始動装置63が接続されており、そのエンジン始動装置63は、エンジン始動操作手段64と接続されている。
エンジン始動操作手段64は、例えば押しボタンスイッチであり、作業員が押下してエンジン10を始動するためのものである。エンジン始動操作手段64が操作されると、エンジン始動操作手段64から操作信号dがエンジン始動装置63に入力される。
エンジン始動装置63は、入力された操作信号dをきっかけにエンジン始動出力eをエンジン10に出力し、エンジン10を始動するものである。具体的には、エンジン始動装置63としては、セルモータが用いられる。
なお、エンジン始動操作手段64は、物理的なスイッチに限らず、ソフトウェアによるスイッチでもよい。具体的には、ソフトウェアによりアイドリングストップ状態からエンジン10を再始動する条件を判断し、再始動する条件を満たした時にエンジン始動装置63に操作信号dを出力するようにしてもよい。
さらになお、コントローラ50でエンジン10を再始動する条件の判断を行い、再始動する条件を満たした時にコントローラ50からエンジン始動装置63に操作信号dを出力するようにしてもよい。
【0022】
なお、特許請求の範囲に記載の「作動速度制御装置」は、本実施形態におけるコントローラ50および電磁比例方向流量制御バルブ21に相当する。
【0023】
つぎに、図2に基づき、本実施形態に係る作業機械の動作について説明する。なお、以下では、説明を簡単にするため、1つの油圧アクチュエータ30とそれに対応する1つの操作手段40のみで説明するが、これらの数が増えても動作は同様となる。
【0024】
まず、作業員がエンジン始動操作手段64を操作すると、もしくはエンジン始動操作手段64がアイドリングストップ状態からエンジン10を再始動する条件を満たしたと判断すると、操作信号dがエンジン始動装置63に出力される(t)。
エンジン始動装置63は、入力された操作信号dの立ち上がりをきっかけにエンジン始動出力eをエンジン10に出力し、エンジン10を始動させる(t)。
【0025】
エンジン10が始動すると、エンジン回転検知手段61がエンジン回転を検知し、エンジン10が回転している旨の検知結果bを作動速度算出手段52に出力する(t)。
そうすると作動速度算出手段52は、エンジン回転の検知結果bが入力されてからの時間を計測しはじめ、所定時間が経過しているか否かを随時判断するようになる。以下、この所定時間を不安定時間と称する。
不安定時間としては、エンジン10が始動してからエンジン回転が安定するまでに要する時間が設定され、例えば2秒間である。この不安定時間は予め作動速度算出手段52に記憶されている。
【0026】
エンジン回転検知手段61がエンジン回転を検知してから不安定時間が経過する前に、作業員が操作レバー41を操作すると、操作入力手段51から作動速度算出手段52に操作量aが出力される(t)。
そうすると、作動速度算出手段52は、エンジン10にかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、油圧アクチュエータ30の最大限の作動速度である不安定時間最大作動速度c1を算出する。そして、作動速度算出手段52は、時間の経過とともに不安定時間最大作動速度c1に近づくように作動速度cを除々に上昇させつつ、その作動速度cをバルブ駆動手段53およびエンジン回転数制御手段54に出力する。
これにより、油圧アクチュエータ30は、不安定時間内であっても緩起動される。
なお、不安定時間最大作動速度c1は、所定の定数として予め作動速度算出手段52に記憶しておいてもよいし、エンジン10の回転数等種々の条件から算出するようにしてもよい。
【0027】
作動速度算出手段52は、作動速度cが上昇して不安定時間最大作動速度c1と一致すると(t)、それ以上作動速度cを上昇させないようにする。そして、不安定時間が経過するまで不安定時間最大作動速度c1を超えない範囲で作動速度cを出力する。
そのため、エンジン開始直後の不安定時間内に作業員が作業機械の操作を行っても、エンジン10にかかる負荷が過大とならず、エンジンストールすることを防止できる。また、作業機械は作業員の操作に従って低速で動作するため、作業員の違和感を低減できる。
【0028】
なお、不安定時間内に油圧アクチュエータ30が動作している間(t〜t)、ランプや音で警報を発してもよい。不安定時間内では油圧アクチュエータが通常よりも低速で動作しているため、ランプや音で警報を発することで、通常よりも低速であることを認識できるからである。
【0029】
不安定時間が経過すると(t)、作動速度算出手段52は、操作量aに対応する通常の作動速度である通常作動速度c2を算出する。そして、作動速度算出手段52は、時間の経過とともに通常作動速度c2に近づくように作動速度cを除々に上昇させつつ、その作動速度cをバルブ駆動手段53およびエンジン回転数制御手段54に出力する。
そのため、油圧アクチュエータ30は、不安定時間を経過すれば再度緩起動され、その後、操作量aに応じた作動速度で動作するようになる。
【0030】
本実施形態では、油圧アクチュエータ30は、不安定時間内および不安定時間経過後に緩起動されるが、これに代えて通常の起動としてもよい。ただし、緩起動とすることにより、荷揺れを防止することができる。また、高所作業車の場合には、緩起動とすることにより作動のショックが軽減され、作業者にとっての安全性が向上できる。
【0031】
つぎに、図3に基づき、本実施形態に係る作業機械の他の条件における動作について説明する。
図3は、作業員がエンジン始動操作手段64を操作してから(t)、エンジン回転検知手段61がエンジン回転を検知する(t)までの間に、作業員が操作レバー41を操作して操作入力手段51から作動速度算出手段52に操作量aが出力された(t)場合を示す。
【0032】
この場合、作動速度算出手段52は、操作量aが入力されたとしても、エンジン回転検知手段61がエンジン回転を検知する(t)までは、作動速度cを出力しない。すなわち、エンジン10の回転が検知されるまで、油圧アクチュエータ30は動作しないように制御されている。
【0033】
作動速度算出手段52は、エンジン回転検知手段61がエンジン回転を検知する(t)と、エンジン10にかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、油圧アクチュエータ30の最大限の作動速度である不安定時間最大作動速度c1を算出する。そして、作動速度算出手段52は、時間の経過とともに不安定時間最大作動速度c1に近づくように作動速度cを除々に上昇させつつ、その作動速度cをバルブ駆動手段53およびエンジン回転数制御手段54に出力する。
これにより、油圧アクチュエータ30が緩起動される。
【0034】
その後、作動速度算出手段52は、作動速度cが上昇して不安定時間最大作動速度c1と一致すると(t)、それ以上作動速度cを上昇させないようにする。そして、不安定時間が経過するまで不安定時間最大作動速度c1を超えない範囲で作動速度cを出力する。そして、不安定時間が経過すると(t)、作動速度算出手段52は、操作量aに対応する通常の作動速度である通常作動速度c2を算出する。そして、作動速度算出手段52は、時間の経過とともに通常作動速度c2に近づくように作動速度cを除々に上昇させつつ、その作動速度cをバルブ駆動手段53およびエンジン回転数制御手段54に出力する。
【0035】
そのため、エンジン開始直後の不安定時間内に作業員が作業機械の操作を行っても、エンジン10にかかる負荷が過大とならず、エンジンストールすることを防止できる。また、作業機械は作業員の操作に従って低速で動作するため、作業員の違和感を低減できる。
【0036】
つぎに、図4に基づき、本実施形態に係る作業機械のさらに他の条件における動作について説明する。
図4は、作業員がエンジン始動操作手段64を操作し(t)、エンジン回転検知手段61がエンジン回転を検知し(t)、さらに不安定期間が経過した後に(t)、作業員が操作レバー41を操作して操作入力手段51から作動速度算出手段52に操作量aが出力された(t)場合を示す。
【0037】
この場合、作動速度算出手段52は、操作量aに対応する通常の作動速度である通常作動速度c2を算出する。そして、作動速度算出手段52は、時間の経過とともに通常作動速度c2に近づくように作動速度cを除々に上昇させ、その作動速度cをバルブ駆動手段53およびエンジン回転数制御手段54に出力する。すなわち、作業機械は操作量aに従った動作を行うのみである。
【0038】
つぎに、図5に基づき、本実施形態に係る作業機械のさらに他の条件における動作について説明する。
図5は、図2に示す条件において、作業員が操作した操作レバー41の操作量aが小さい場合を示す(t)。
【0039】
この場合、作動速度算出手段52は、エンジン10にかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、油圧アクチュエータ30の最大限の作動速度である不安定時間最大作動速度c1を算出する。また、作動速度算出手段52は、操作量aに対応する通常の作動速度である通常作動速度c2を算出する。
操作量aが小さく、不安定時間最大作動速度c1よりも通常作動速度c2の方が低速の場合には、作動速度算出手段52は、時間の経過とともに通常作動速度c2に近づくように作動速度cを除々に上昇させつつ、その作動速度cをバルブ駆動手段53およびエンジン回転数制御手段54に出力する。
これにより、油圧アクチュエータ30は、緩起動され、通常と同様の動作を行うことができる。
【0040】
そのため、エンジン開始直後の不安定時間内に作業員が作業機械の操作を行っても、エンジン10にかかる負荷が過大とならず、エンジンストールすることを防止できる。また、作業機械は作業員の操作に従って動作するため、作業員の違和感がない。
【0041】
(他の実施形態)
上記実施形態では、操作量aが出力された後(t)および不安定期間が経過した後等に(t)、作動速度cは除々に上昇させられるが、これに代えて、図6に示すように、作動速度cを階段状に変化させてもよい。上記実施形態では、油圧アクチュエータ30は緩起動されるが、速度cを階段状に変化させれば、油圧アクチュエータ30の応答を速くすることができる。
なお、作動速度算出手段52からバルブ駆動手段53およびエンジン回転数制御手段54へ出力する作動速度cは、それぞれ徐々に上昇するようにしてもよいし、徐々に上昇するものと階段状に上昇するものとを組み合わせてもよい。例えば、バルブ駆動手段53へ出力する作動速度cを徐々に上昇させ、エンジン回転数制御手段54へ出力する作動速度cを階段状に変化させるようにしてもよい。
【0042】
また、上記実施形態では、エンジン回転検知手段61がエンジン回転を検知した後(t)、操作入力手段51から操作量aが出力されたときに(t)、作動速度cを上昇させたが、これに代えて、図7に示すように、エンジン始動装置63からのエンジン始動出力eが立ち下がった後(t)、操作入力手段51から操作量aが出力されたときに(t)、作動速度cを上昇させるようにしてもよい。
このようにすれば、エンジン10が確実に始動しているので、より安定してアクチュエータを動作させることができる。
【0043】
また、上記実施形態では、エンジン10が始動してからエンジン回転が安定するまでの間を、エンジン回転検知手段61がエンジン回転を検知してから不安定時間が経過するまでとして判断したが、これに代えて、エンジン回転の様子を直接的あるいは間接的に検出する手段を用いてもよい。例えば、エンジン10の出力トルクを検出する手段やエンジン10の振動を検出する手段を用いてもよい。
ただし、上記実施形態のようにすれば、エンジン回転の様子を検出する場合に比べて判断が容易であるので、好ましい。
【0044】
また、上記実施形態では、アクチュエータとして油圧アクチュエータを用いた作業機械について説明したが、本発明は、作動速度を抑えることによりエンジンの負荷を抑えることのできる種々のアクチュエータを用いる場合にも適用できる。例えば、ハイブリッド作業車にも適用できる。ここで、ハイブリッド作業車とは、エンジン駆動とモータ駆動のハイブリッドであって、エンジンで発電機を駆動し、発電機で発生した電力を蓄電池に蓄え、蓄電池に蓄えられた電力でモータを動かす作業車である。この場合、発電機が上記アクチュエータに相当する。
【0045】
また、油圧ポンプ20を可変容量ポンプとし、可変容量ポンプの吐出量を制御することで、作業負荷を抑えると共にエンジンの負荷を抑えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
10 エンジン
20 油圧ポンプ
21 電磁比例方向流量制御バルブ
30 油圧アクチュエータ
40 操作手段
50 コントローラ
51 操作入力手段
52 作動速度算出手段
53 バルブ駆動手段
54 エンジン回転数制御手段
61 エンジン回転検知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
該エンジンの駆動により動作するアクチュエータと、
該アクチュエータの動作を指示する操作手段と、
該操作手段から前記アクチュエータの動作が指示されているとき、前記エンジンが始動してからエンジン回転が安定するまでの間、前記エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、前記アクチュエータの作動速度を制御する作動速度制御装置とを備える
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
エンジンと、
該エンジンにより駆動される油圧ポンプと、
該油圧ポンプにより供給される作動油により動作する油圧アクチュエータと、
該油圧アクチュエータの動作を指示する操作手段と、
該操作手段から前記油圧アクチュエータの動作が指示されているとき、前記エンジンが始動してからエンジン回転が安定するまでの間、前記エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、前記油圧アクチュエータに供給される前記作動油の流量を制御する作動速度制御装置とを備える
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
前記エンジンが回転しているか否か検知するエンジン回転検知手段を備え、
前記作動速度制御装置は、
前記操作手段から前記油圧アクチュエータの動作が指示されているとき、前記エンジン回転検知手段がエンジン回転を検知してから所定時間経過するまでの間、前記エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、前記油圧アクチュエータに供給される前記作動油の流量を制御するものである
ことを特徴とする請求項2記載の作業機械。
【請求項4】
前記作動速度制御装置は、
前記油圧アクチュエータに供給される前記作動油の流量を制御する流量制御バルブと、
前記操作手段から前記油圧アクチュエータの動作が指示されているとき、前記エンジン回転検知手段がエンジン回転を検知してから所定時間経過するまでの間、前記エンジンにかかる負荷がエンジンストールしない負荷となる範囲内で、前記油圧アクチュエータの作動速度を算出する作動速度算出手段と、
前記油圧アクチュエータの作動速度が、前記作動速度算出手段で算出した作動速度となるように前記流動制御バルブを駆動するバルブ駆動手段とを備える
ことを特徴とする請求項3記載の作業機械。
【請求項5】
前記作動速度制御装置は、
前記油圧アクチュエータの作動速度が、前記作動速度算出手段で算出した作動速度となるように前記エンジンの回転数を制御するエンジン回転数制御手段とを備える
ことを特徴とする請求項4記載の作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−162952(P2012−162952A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25577(P2011−25577)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(000148759)株式会社タダノ (419)
【Fターム(参考)】