説明

作業用ヘルメット

【課題】作業者の顔面を覆う保護シールドを、簡単かつ強固に装着することができる作業用ヘルメットを提供する。
【解決手段】帽体1の中心部よりも前方部分の内面に、殻状のシールド支持板2を配置する。シールド支持板2の後端部は、帽体1の天面部内面の係止突部8に係合させて前後方向の移動を防止するとともに、シールド支持板2の後部両側端部は、帽体1側頭部下端にロックピン3で固定する。ロックピン3による固定構造は、帽体に形成した筒状の支持部6の筒内に、庇7の一部と、シールド支持板の一部を臨ませロックピン3を係合させる。帽体1の前頭部内面とシールド支持板2の前面との間に、保護シールド4を挿入することができる空間を保持し、帽体1前面において出没自在とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、安全のために作業者の顔面前方を覆う保護シールドを設ける作業用ヘルメットに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
作業用のヘルメットでは、作業の種類や作業環境などの条件によって、例えば 透明板やネットといった保護シールドをヘルメットの前頭部に装着し、作業者の顔面を覆って安全を図ることが行われている。
特許文献1や2には、帽体の内面に保護シールド(フェースガード)の支持板を固定し、この支持板に保護シールドのガイド手段を形成し、ガイド手段に沿って保護シールドをヘルメットの前面部において出没させる発明が記載されている。
特許文献3には、帽体の前面部内面に配置したシールドガイド部に貫通孔を穿設し、貫通孔にシールドを挿通させて上下方向に移動させる発明が、特許文献4には、帽体内に配置するハンモックにフェイスシールドを昇降させるホルダーを設ける発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−138506号公報
【特許文献2】特開2009−108428号公報
【特許文献3】特開2007−297743号公報
【特許文献4】特開2009−203569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1や2に記載された発明は、保護シールドを取り付けるための支持板を帽体に対して安定的に固定するため、支持板の一部を帽体の比較的後方位置にまで延長させ、帽体の後方側頭部と前方側頭部で固定させていた。そのため、帽体内部を広く活用することができない、換言すれば帽体が必要以上に大きくなるという欠点があった。特許文献3には、比較的細い幅のシールドガイド部材を帽体内の下端部前頭部に固定し、シールドガイド部材に穿設した挿通孔にシールドを挿通させる発明が記載されている。特許文献3に記載された発明では、シールドガイド部材そのものが安定しないという欠点がある。また、特許文献4に記載された、ハンモックにシールドのホルダーを取り付けるものでは、ハンモックそのものが安定せず装着したシールドが動く可能性があるという欠点があった。
【0005】
上記、従来技術の欠点に鑑み、帽体内部を比較的広く活用することができるとともに、保護シールドを取り付けるためのシールド支持板の安定性に優れた作業用ヘルメットの構造を実現することを目的とするものである。本発明の他の目的は、帽体に装着する庇を含め、シールド支持板の帽体への組立を、簡単かつ強固に行なうことができる構造を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、帽体1の中心部よりも前方部分の内面に殻状のシールド支持板2を配置する。このシールド支持板2の後端部は、帽体1の天面部内面の一部に係合させて前後方向の移動を防止するとともに、帽体1側頭部下端にロックピン3、3で両側端を固定する。
このとき、帽体1の前頭部内面とシールド支持板2の前面との間に保護シールド4を挿入することができる空間5を保持するとともに、シールド支持板2に保護シールド4の上下方向のガイド手段を設け、帽体内面とシールド支持板2との間の空間5に配置した保護シールド4を、帽体前面において出没自在とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、帽体1の側頭部下端に、上下方向に貫通する筒状の支持部6を形成し、この筒状の支持部6内に帽体1とは別体に形成した庇7の一部と、シールド支持板2の一部を臨ませ、筒状の支持部6に挿入するロックピン3を、庇7の一部とシールド支持板2と筒状の支持部6に係合させることによって、帽体1とシールド支持板2と庇7を固定することである。
【0008】
請求項3記載の発明は、帽体1の天面部内面に、シールド支持板2の後端縁を堰き止める係止突部8を形成するとともに前後方向のリブ9を形成し、シールド支持板2に前記前後方向のリブ9が嵌合する溝10を形成したである。
【0009】
請求項4記載の発明は、ハンモック支持部11を、帽体1内面の後方左右両側面部とシールド支持板2の前方左右両側面部に形成し、交差方向の四箇所に配置したハンモック12の係止具13を前記ハンモック支持部11に支持させることである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、保護シールド4を装着するためのシールド支持板2が、帽体1の中心部よりも前方部分の内面にのみ、殻状として配置されるため、帽体1の内面を広く利用することができる。すなわち、帽体を必要以上に大きくする必要がない。そして、殻状のシールド支持板2は、その後端部における帽体の天面部内面との係合と、帽体側頭部下端におけるロックピン3による両側端の固定によって固定されるため、シールド支持板2が帽体の前方部分にのみ配置されるものでありながら、安定よく、強固に固定される効果がある。必然的に、保護シールド4もしっかりと装着することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、帽体1の側頭部下端に形成した支持部6において、一つのロックピン3を帽体1の筒状の支持部に挿入することによって、ロックピン3を帽体の一部、すなわち筒状の支持部6と、帽体とは別体に形成した庇7の一部とシールド支持板2の一部を係合させて、これらを固定するため、全体として強固かつ簡単に組み立てることができる効果がある。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、シールド支持板2の後端部を帽体1の天面部内面に係合させるに際して、帽体1の天面部内面に、シールド支持板2の後端縁を堰き止める係止突部8を形成するとともに、前後方向のリブ9を、シールド支持板2にリブ9が嵌合する溝10を形成したことによって、帽体1のリブ9とシールド支持板2の溝10を嵌合させた状態で、係止突部8によって前後方向の移動を防止することができる。したがって、シールド支持板2の前後方向及び左右方向の移動を確実に防止することができるため、シールド支持板を強固に、しかもガタツクことなく安定的に固定することができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、ハンモック支持部11を、帽体内面の後方左右両側面部とシールド支持板の前方左右両側面部に形成し、交差方向の四箇所に配置したハンモックの係止具を前記ハンモック支持部に支持させる。このとき、シールド支持板2がしっかりと固定されているためハンモックを安定良く装着することができる。すなわち、帽体1内にシールド支持板2を配置するものでありながら、ハンモック12をしっかりと装着し、帽体1内をなるべく広く活用することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、帽体と、保護シールドを装着したシールド支持板の下方斜視図、
【図2】図2は、帽体にシールド支持板を装着した状態の底面図、
【図3】図3は、図2のIII−III線断面図、
【図4】図4は、帽体にシールド支持板を装着した状態の縦断面図、
【図5】図5は、シールド支持板の左側面図、
【図6】図6は、シールド支持板の底面図、
【図7】図7は、図6のVII−VII線断面図、
【図8】図8は、帽体とシールド支持板及び庇の固定部分のみの分解図、
【図9】図9は、図8を組み立てた状態の立面図、
【図10】図10は、図9のX−X線断面図、
【図11】図11は、ハンモックを装着したヘルメットの底面図、
【図12】図12は、ハンモックを装着したヘルメットの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る作業用ヘルメットの実施形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、帽体と、保護シールドを装着したシールド支持板の下方斜視図、図2は、帽体にシールド支持板を装着した状態の底面図、図3は、図2のIII−III線断面図、図4は、帽体にシールド支持板を装着した状態の縦断面図である。
【0016】
本発明に係る作業用ヘルメットは、安全のために作業者の顔面前方を覆う保護シールド4を設ける。保護シールド4は、例えば合成樹脂製の透明なシールドレンズであって、作業の支障とならないものである。
図1、図4に示すように、ヘルメット本体である、帽体1の中心部よりも前方部分の内面に沿う形で殻状のシールド支持板2を配置し、帽体1の前頭部内面とシールド支持板2の前面との間に保護シールド4を挿入することができる空間5を保持する。そして、シールド支持板2に保護シールド4の上下方向のガイド手段、具体的には例えばガイド溝やガイド孔14を設け、帽体1内面とシールド支持板2との間の空間5に配置した保護シールド4を、ガイド孔14に沿って上下動させて帽体1前面において出没自在としている。
【0017】
図示実施形態においては、シールド支持板2に三本の縦方向のガイド孔14を設けるとともに、透明な合成樹脂材で成型した保護シールド4の裏面上端部に、頭部付きの係止突起15を設け、該係止突起15を前記ガイド孔14に貫通させる。さらに、シールド支持板2の内面において、ダルマ孔形状である係止孔17を穿設した係止板16を配置し、前期係止突起15を係止孔17に挿入し、図1の図面上横方向に移動させて係止している。この構成によって、保護シールド4はガイド孔14に沿って自由に上下動させることができるとともに、係止板16の着脱によって保護シールド4自体を自由に交換することができるようにしている。
【0018】
殻状のシールド支持板2の後端部は、帽体1の天面部内面の一部に係合させて前後方向の移動を防止するとともに、帽体1側頭部下端にロックピン3、3を用いてシールド支持板2の両側端を固定している。
帽体1の天面部内面には、図2に示すように幅方向の短い係止突部8と、前後方向のリブ9を形成している。幅方向の係止突部8は、一定間隔Xを隔てて帽体の後方側の係止突部8と前方側の係止突部8’を配置している。そして、シールド支持板2の後端部には、図2に示すように幅Xであって外表面方向に突出する突出部18を形成し、該突出部18を前記係止突部8と8’の間に嵌合させるとともに、図5に示すようにシールド支持板2にリブ9が嵌合する溝10を形成し、図3に示すようにリブ9を溝10に嵌合させている。この、左右及び前後方向の係合構造によって、シールド支持板2の幅方向及び前後方向の妄動を防止することができる。
【0019】
シールド支持板2は、帽体側頭部下端においてロックピン3を用いて両側端を固定している。
帽体1側頭部下端におけるシールド支持板2の固定構造は、図8に示すように、帽体1の側頭部下端に形成した上下方向に貫通する筒状の支持部6と、筒状の支持部6内に挿入する庇7の一部である係止挿入部19と、シールド支持板2の一部であって支持部6内に挿入される係合凹部20及びロックピン3によって構成している。すなわち、図示実施形態では、帽体1と、帽体1とは別体に形成した庇7と、シールド支持板2の三部品を一つのロックピン3に係合させて固定する構造としている。
【0020】
帽体1に形成した、筒状の支持部6は、帽体1の外側面に突出し、筒状の支持部6の側面の一部を前方に向けて開口させるとともに、内面に突出部6aを形成することによって、比較的広い断面の空間を備えた筒状に形成している。庇7は、前方の平面方向の庇主体部7aから左右両側方に延長させて、先端部に垂直方向の係止挿入部19を形成し、該係止挿入部19を帽体の外側面において、支持部6の側面から筒内に挿入し、支持部6内に形成したストッパー21に当接させることによって定位置に挿入されるようにしている。
【0021】
一方、シールド支持板2の係合凹部20は、後端部の左右両側において、殻状の内面から外面方向に突出する態様とし、図7に示すように(図8において点線で示す)突部23を形成している。この突部23を支持部6の突出部6aの下方に形成した切欠部22から挿入し、筒状である支持部6の筒内に臨ませている。現実には、合成樹脂材で成型したシールド支持板2自体の弾性によって、突部23が切欠部22に嵌まり込むように作用する。
【0022】
支持部6内に挿入される庇7の係止挿入部19の下端には、ストッパー21の形状に合わせた当接部24を形成するとともに、係止挿入部19の内面に縦方向の凹凸による噛合面25を形成している。一方、ロックピン3の外側面には庇7の係止挿入部19に形成した噛合面25に噛合する噛合面26を形成するとともに、ロックピン3の内側面には、支持部6の突出部6a下端に係合する係止爪27を形成している。ロックピン3の先端は、シールド支持板2の係合凹部に嵌合する幅に形成されている。
【0023】
帽体1にシールド支持板2と庇7を組み立てるには、シールド支持板2の後端部を帽体1の天面部内面に形成した後方側の係止突部8と、前方側の係止突部8’の間にシールド支持板2の突出部18を嵌入させると同時に、帽体1のリブ9をシールド支持板2の溝10に嵌合させる。この状態で、シールド支持板2の両側に形成した突部23を帽体1の支持部6の切欠部22に嵌め込む。
【0024】
一方、帽体1の支持部6の外側面部分に庇7の係止挿入部19を挿入するとともに、支持部6の開放端にロックピン3を挿入すると、図9に示すようにぴったりと組み立てられる。この状態では、図10に示すように、帽体1の支持部6内において、庇7の係止挿入部19に形成した噛合面25とロックピン3の噛合面26が噛合し、庇7が脱落しないように係止される。さらに、ロックピン3の先端部がシールド支持板2の係合凹部20に嵌り込んでシールド支持板2の抜け出しを阻止し、シールド支持板2の両端部がしっかりと保持されると同時に、ロックピン3の係止爪27が支持部6の突出部6a端縁に係合し、ロックピン自体が妄りに抜け出さないように係止される。結果、帽体1と、シールド支持板2と、庇7の三者は全体として強固且つ簡単に組み立てることができる。
組立状態を分解するには、支持部6の切欠部22に露出しているロックピン3の係止爪27をドライバーなどで押し込みながら、下方(図8ないし図10における上方)に引き抜くと、簡単に分解することができる。
【0025】
以上述べた殻状のシールド支持板2は、帽体1の前方部分にのみ配置されるために、帽体1の内面をなるべく広く利用することができるものであると同時に、非常に強固に固定されるものである。シールド支持板2にヘルメットの内装品を、安定よく支持させることができる。
すなわち、作業用ヘルメットにおいては、ヘルメットに加えられた衝撃から作業者を守るために、図11、図12に示すように帽体1の内部にハンモック12を装着している。
【0026】
図11、図12に示す実施形態のハンモック12は、ハンモックの主体部分を略十字状に形成し、主体部分の延長方向の四箇所にそれぞれ係止具13、13を装着している。ハンモック12の四箇所の係止具13、13は、ハンモック支持部12を、帽体1内面の後方左右両側面部とシールド支持板2の前方左右両側面部に形成している。
本発明では、シールド支持板2を帽体1に強固に装着することができるものであるため、シールド支持板2にハンモックの係止具13を支持させることができる。そして、ハンモックの係止具13を帽体1とシールド支持板2に係止させることによって、帽体1内部をなるべく広く活用することができる。
図面において、28はあご紐、29は、帽体1内面及びシールド支持板2に形成したあご紐係止部である。
【符号の説明】
【0027】
1…帽体、 2…シールド支持板、 3…ロックピン、 4…保護シールド、 5…空間、 6…支持部、 6a…突出部、 7…庇、 8、8’…係止突部、 9…リブ、 10…溝、 11…ハンモック支持部、 12…ハンモック、 13…係止具、 14…ガイド孔、 15…係止突起、 16…係止板、 17…係止孔、 18…突出部、 19…係止挿入部、 20…係合凹部、 21…ストッパー、 22…切欠部、 23…突部、 24…当接部、25、26…噛合面、 27…係止爪、 28…あご紐、 29…あご紐係止部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帽体の中心部よりも前方部分の内面に殻状のシールド支持板を配置し、該シールド支持板の後端部は帽体の天面部内面の一部に係合させて前後方向の移動を防止するとともに、帽体側頭部下端にロックピンで両側端を固定し、帽体の前頭部内面とシールド支持板の前面との間に保護シールドを挿入することができる空間を保持するとともに、シールド支持板に保護シールドの上下方向のガイド手段を設け、帽体内面とシールド支持板との間の空間に配置した保護シールドを、帽体前面において出没自在としたことを特徴とする作業用ヘルメット。
【請求項2】
帽体の側頭部下端に、上下方向に貫通する筒状の支持部を形成し、該筒状の支持部内に帽体とは別体に形成した庇の一部と、シールド支持板の一部を臨ませ、筒状の支持部に挿入するロックピンを、庇の一部とシールド支持板と筒状の支持部に係合させることによって、帽体とシールド支持板と庇を固定することを特徴とする請求項1記載の作業用ヘルメット。
【請求項3】
帽体の天面部内面に、シールド支持板の後端縁を堰き止める係止突部を形成するとともに前後方向のリブを形成し、シールド支持板に前記前後方向のリブが嵌合する溝を形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の作業用ヘルメット。
【請求項4】
ハンモック支持部を、帽体内面の後方左右両側面部とシールド支持板の前方左右両側面部に形成し、交差方向の四箇所に配置したハンモックの係止具を前記ハンモック支持部に支持させたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の作業用ヘルメット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−62601(P2012−62601A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207832(P2010−207832)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(390025667)東洋物産工業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】