説明

作業用器具

【課題】先端部において回動支持される工具を、手元の操作によって所望の角度位置で固定して、所要の作業を確実に行えるようにする。
【解決手段】筒状の操作棒2と、該操作棒2の先端部2aに同一軸線上に配置されるとともに、作業に使用される工具6が直接又は間接的に接続される接続体3と、操作棒2の先端部2bおよび接続体3の基端部3aが互いに離間する方向に付勢された状態で、操作棒2および接続体3を相対回動自在に連結する連結部4と、相対回動する操作棒2および接続体3を所望の角度位置で固定する位置固定操作、該位置固定を解除する解除操作が手元で行えるように構成される操作機構部5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、間接活線作業に使用される操作棒の先端部に、ベンダー、圧縮ペンチ、接地短絡器具などの工具が接続される作業用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の作業用器具としては、例えば、作業者が操作する絶縁操作棒に接続される一方のロッドと、間接活線作業に使用される工具が接続される他方のロッドとが連結されて構成される絶縁操作棒用接続補助具が公知になっている(特許文献1参照)。該絶縁操作棒用接続補助具は、一方のロッドの先端部に凹状の受け部を形成するとともに、該受け部の曲面に複数の凹部を形成し、他方のロッドの先端部に、受け部に嵌入される球状体を形成するとともに、該球状体の外面に、各凹部に嵌合する複数の凸部を形成している。
【0003】
そして、一方のロッドの受け部に、他方のロッドの球状体を嵌入すると、受け部の各凹部に、球状体の凸部が嵌合するようになり、一方のロッドに対して他方のロッドが回動自在に支持されるようになり、工具を回動操作することで、被処理物に対して所要の作業が行えるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−71911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の前記作業用器具の場合、他方のロッドの先端部に接続される工具の実際の使用態様は、目的とする作業が行えるように、被処理物に対して所定の角度を持って固定されることが必須要件となる。この工具の固定について言えば、作業者にとっては、絶縁操作棒の手元の操作によって、他方のロッド(工具)を所望の角度位置に固定することが望ましい。しかしながら、従来の前記作業用器具は、一方のロッドと他方のロッドの連結部において位置固定できる構成にはなっているが、絶縁操作棒の手元の操作によって、他方のロッドを所望の角度位置で位置固定できる構成にはなっていない。
【0006】
そこで、本発明は、前記問題を鑑み、操作棒の先端部に回動支持される工具を手元の操作によって所望の角度位置で確実に位置固定して、所要の作業を円滑に且つ確実に行うことができる作業用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業用器具は、筒状の操作棒2と、該操作棒2の先端部2bに同一軸線上に配置されるとともに、作業に使用される工具6が直接または間接的に接続される接続体3と、操作棒2の先端部2bおよび接続体3の基端部3aが互いに離間する方向に付勢された状態で、操作棒2および接続体3を相対回動自在に連結する連結部4と、相対回動する操作棒2および接続体3を所望の角度位置で固定する位置固定操作、該位置固定を解除する解除操作が手元で行えるように構成される操作機構部5とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この場合、操作棒2の先端部2bおよび接続体3の基端部3aが互いに離間する方向に付勢された状態で、操作棒2および接続体3が相対回動自在に連結されるため、操作棒2が固定された状態で、接続体3の基端部3aを支点にして接続体3の先端部3cが円運動、揺動、回転したり、接続体3が固定された状態で、操作棒2の先端部2bを支点にして操作棒2の基端部2aが円運動、揺動、回転したり、操作棒2および接続体3が、互いに円運動、揺動、回転したりすることができるようになる。すなわち、操作棒2および接続体3を自在に回動操作できるようになり、種々の作業に対処できるようになる。
【0009】
また、操作機構部5によって、相対回動する操作棒2および接続体3を手元の操作で所望の角度位置に固定するようにしたので、作業を行うにあたって、操作棒2と接続体3が所定の角度を維持して形成される好適な姿勢、すなわち、目的とする作業が行えるように、被処理物に対して所定の角度を持って固定される姿勢、つまり、作業に適した作業用器具としての姿勢が容易に確保できるようになる。さらに、操作棒2と接続体3の位置固定および該位置固定の解除を手元操作で行うことで、所要の作業を円滑に且つ確実に行えるようになる。つまり、作業者にとって簡便で作業効率を向上できる作業用器具を提供できる。
【0010】
また、本発明によれば、前記連結部4を、操作棒2の先端部2bおよび接続体3の基端部3aの各外面に形成される外面突起40,41と、各外面突起40,41に当接するように、操作棒2の先端部2bおよび接続体3の基端部3aの間に介装される弾性部材42と、操作棒2の先端部2b、操作棒側の外面突起40、弾性部材42、接続体側の外面突起41、接続体3の基端部3aを覆うとともに、弾性部材42を圧縮する方向から各外面突起40,41を係止する内面突起430,430が内面に形成される被覆体43とで構成するようにしてもよい。
【0011】
この場合、操作棒2の先端部2b、弾性部材42、接続体3の基端部3a、被覆体43が同一軸線上に配置された状態において、操作棒2の先端部2bと接続体3の基端部3aとが、操作棒2の先端部2bおよび接続体3の基端部3aの間に介装される弾性部材42の弾性作用によって互いに離間する方向に付勢されて、各外面突起40,41と内面突起430,430とが係止した状態に維持される。そして、弾性部材42の弾性力よりも大きい力が外部から加わった場合、被覆体43の内面突起430,430から操作棒2および接続体3の各外面突起40,41が離間しつつも、弾性部材42の弾性作用(反発力)によって、各外面突起40,41が内面突起430,430に係止する方向に付勢されるので、外部からの力と弾性部材42の弾性力とのつり合いによって、操作棒2および接続体3が相対回動できるようになる。すなわち、操作棒2および接続体3が連結された状態を維持しつつ、操作棒2の先端部2bおよび接続体3の基端部3aを支点にして、操作棒2および接続体3が自在に回動できるようになる。つまり、操作棒2の先端部2bと接続体3の基端部3aとがユニバーサルジョイントによって連結されたようになっている。
【0012】
また、本発明によれば、前記操作機構部5を、接続体3の基端部3aに対して進退するように、操作棒2に進退自在に内挿される可動係止軸50と、進出位置の可動係止軸50に対して係止するように、接続体3の基端部3aから操作棒2の先端部2bに向かって延出される固定係止軸30と、操作棒2の基端部2aに配置されるとともに、可動係止軸50に連結されて、可動係止軸50の進退操作および進出状態の維持が行えるように構成されるロック解除機構部51とを備えるようにしてもよい。
【0013】
この場合、可動係止軸50を操作棒2の先端部2bから接続体3の固定係止軸30に進出させて、可動係止軸50と固定係止軸30とを互いに係止させることによって、基端部3aを支点して先端部3cが回動する接続体3、および、先端部2bを支点にして基端部2aが回動する操作棒2を、所望の角度位置で確実に固定できるようになる。さらに、可動係止軸50の進出状態が維持されることで、可動係止軸50と固定係止軸30との係止状態が維持される。加えて、可動係止軸50を固定係止軸30から後退させることで、可動係止軸50と固定係止軸30との係止状態が容易に解除されるようになる。
【0014】
また、本発明によれば、操作棒2の先端部2b、または、接続体3の基端部3aのいずれか一方の端面の周縁部に沿って、操作棒2および接続体3の回動をガイドするガイド体70が配置されるとともに、他方の端面にガイド体70に沿って移動する移動体71が複数配置される回動機構部7を備えるようにしてもよい。
【0015】
この場合、操作棒2の先端部2b、または、接続体3の基端部3aのいずれか一方の端面の周縁部に沿って配置されたガイド体70に沿って、他方の端面に複数配置された移動体71が移動することで、基端部3aを支点して先端部が回動する接続体3の回動、および、先端部2bを支点にして基端部が回動する操作棒2の回動が円滑にかつ確実に行われるようになる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、筒状の操作棒の先端部に同一軸線上に、工具が直接または間接的に接続される接続体を配置し、操作棒の先端部および接続体の基端部が互いに離間する方向に付勢された状態で、操作棒の先端部および接続体の基端部を相対回動自在に連結したので、接続体に接続される工具が回動自在に設けられる。したがって、目的とする作業が行えるように、被処理物に対して、工具によって多方向から力を加えることができる。また、操作機後部によって、相対回動する接続体および操作棒を所望の角度位置で固定する位置固定操作と、該位置固定を解除する解除操作とを手元で行えるようにしたので、回動自在の工具を手元の操作によって所望の角度位置で固定することができる。したがって、作業者の立ち位置や被処理物の位置に関係なく、被処理物に対して所定の角度を持って工具を容易に固定できるようになり、所要の作業を確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る作業用器具を示す正面図。
【図2】(a)は、図1の作業用器具の連結部において、操作棒の可動係止軸が、接続体の固定係止軸から離脱した解除状態を示す図、(b)は、解除状態における操作棒の状態を示す側断面図、(c)は、操作棒の基端部において、「FREE」が表示された状態を示す正面図。
【図3】(a)は、図1の接続体の基端部に配置された被位置決め体を下側から見た図、(b)は、図1の操作棒の先端部に配置された位置決め体を上側から見た図。
【図4】接続体に接続される工具としての接地短絡器具を示す図。
【図5】(a)は、接地短絡器具の接続部を示す側面図、(b)は、図5(a)の正面図。
【図6】(a)は、図1の作業用器具の連結部において、操作棒の可動係止軸が、接続体の固定係止軸に係止したロック状態を示す図、(b)は、ロック状態における操作棒の状態を示す側断面図、(c)は、操作棒の基端部において、「LOCK」が表示された状態を示す正面図。
【図7】接地短絡器具を中央の架線に接続した状態を示す図。
【図8】(a)は、図7の状態において、架線に対して、作業者が斜め下方に位置した状態を示した図、(b)は、接続体が傾斜した状態でロックされているところを示す図。
【図9】接地短絡器具を3相の各架線にそれぞれ接続した状態を示す図。
【図10】操作棒の先端部および接続体の基端部に回動機構部を配置した連結部の変形例を示した斜視図。
【図11】他の実施形態に係る作業用器具を示す正面図。
【図12】(a)は、固定係止軸を下側から見た図、(b)は、可動係止軸を上側から見た図。
【図13】(a)は、固定係止軸と可動係止軸との係止状態が解除された状態を示す図、(b)は、固定係止軸に可動係止軸が係止してロックされた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る作業用器具について図1〜図9を参照しながら説明する。なお、本実施形態では、作業用器具が処理する被処理物を、電柱間に架設された架線とし、作業に使用される工具を、接地短絡器具とする。
【0019】
本実施形態に係る作業用器具1は、図1〜図3に示すように、絶縁性を有する筒状の操作棒2と、該操作棒2の先端部2bに同一軸線上に配置されるとともに、作業に使用される工具が直接または間接的に接続される接続体3と、操作棒2の先端部2bおよび接続体3の基端部3aが互いに離間する方向に付勢された状態で、操作棒2および接続体3が相対回動自在に連結される連結部4と、相対回動する操作棒2および接続体3を所望の角度位置で固定する位置固定操作、該位置固定を解除する解除操作が手元で行えるように構成される操作機構部5とを備えている。
【0020】
操作棒2は、図1に示すように、円筒状を呈しており、吸湿性の少ないエポキシ樹脂系強化プラスチックやポリエステル樹脂系強化プラスチックなどの変形し難くかつ絶縁性が低下しない部材によって形成されている。そして、その内部の両側には詰栓を行い、浸水を防ぐために接着剤にて表面をコーティング処理するなどの防水処理が施されている(図示せず)。そして、操作棒2は、操作棒2の基端部側の開口端部に嵌着されたゴムキャップ20と、操作棒2の基端部2aの開口端部に配置されてゴムキャップ20に被覆された、別の操作棒2を接続して、全長を伸ばすための接続部材21と、操作棒2の中間部に嵌合固定された、感電事故を防止するために把持してよい部分とそれ以外の部分との境界を明確にするための安全限界つば22と、安全限界つば22の上方に降雨時の対策として嵌合固定された水切り用のつば(水切りつば)23と、操作棒2の先端部2bの端面の周縁部に形成された鋸歯状の位置決め体24とを備えている。そして、安全限界つば22および水切りつば23は、いずれも軟質性の合成ゴムから形成されている。また、位置決め体24は、図3(a)に示すように、操作棒2の先端部2bの端面において線対称に配置され、各位置決め体24,24は、先端部2bの端面の中心線に沿って3つ連接された三角形状の突条体24a,…を有している。
【0021】
接続体3は、図1に示すように、アルミニウム合金によって中空の円柱状に形成されている。そして、図2(a)に示すように、接続体3の基端部3aにおいて、操作棒2の先端部2bに向かって延出される固定係止軸30と、操作棒2の位置決め体24に係止する鋸歯状の被位置決め体31とを備えている。そして、固定係止軸30の先端部は、略円板状に形成された被係止部300と、該被係止部300に径外方向に形成された複数の係止凸部301,…を有している。被位置決め体31は、図3(b)に示すように、接続体3の基端部3aの端面において線対称に配置され、各被位置決め体31,31は、基端部3aの端面の中心線に沿って4つ連設された三角形状の突条体31a,…を有している。また、位置決め体24と被位置決め体31は、図2(a)を正面視した場合において、可動係止軸50および固定係止軸30を支点にして、操作棒2および接続体3が左右に回動(揺動)した場合に係止するように、操作棒2および接続体3の回動軌跡に沿うように突設されている。具体的には、操作棒2の位置決め体24の突条体24aは、内縁側から外縁側に向かうにしたがって高位置にあり、接続体3の被位置決め体31の突条体31aは、内縁側から外縁側に向かうにしたがって低位置にある。
【0022】
接続体3の中途部3bは、図1に示すように、該中途部3bの外周面に移動自在に外挿され、後述する第1突起32および各第2突起33に連結される工具(後述する接地短絡器具)の接続部に螺合して、工具を先端部に固定するロックナット34を備えている。
【0023】
接続体3の先端部3cは、図1に示すように、その端面に軸線の延長線上に出没自在に配置された第1突起32と、先端部3cの外周面に、軸線に対して直交する方向に出没自在に配置された一対の第2突起33,33とを備えている。第1突起32および各第2突起33,33に工具の接続部が連結される。
【0024】
連結部4は、図2(a)に示すように、操作棒2の先端部2bの外周面に形成される操作棒側外面突起40および接続体3の基端部3aの外周面に形成される接続体側外面突起41と、該各外面突起40,41間に介装されるとともに、操作棒2の先端部2bと接続体3の基端部3aに跨るように外挿される弾性部材としての圧縮バネ42と、内径が圧縮バネ42の外径よりも大きくて、操作棒2の先端部2a、操作棒側外面突起40、圧縮バネ42、接続体側外面突起41、接続体3の基端部3aを覆うとともに、両側の開口周縁部の内面に径内方向に形成された、圧縮バネ42を圧縮する一対の環状の内面突起430,430を有する円筒状の被覆体43とを備えている。
【0025】
そして、通常時、すなわち接続体3に対して外部からの圧力がかからない場合は、圧縮バネ42が、操作棒2の先端部2bおよび接続体3の基端部3aを互いに離間するように各外面突起40,41を押圧しているので、各外面突起40,41は、被覆体43の内面突起430,430に係止した状態になっている。すなわち、図2(a)に示すように、操作棒2および接続体3は同一軸線上に位置している。つまり、この軸線を中心にして多方向に回動できるスタンバイ状態にある。具体的には、操作棒2が固定された状態で、接続体3の基端部3aを支点にして接続体3の先端部3cが円運動、揺動、回転したり、接続体3が固定された状態で、操作棒2の先端部2bを支点にして操作棒2の基端部2aが円運動、揺動、回転したり、操作棒2および接続体3が、互いに円運動、揺動、回転したりすることができる状態にある(図1参照)。
【0026】
そして、前記スタンバイ状態にあって、接続体3が被処理物に固定された状態で、連結部4を支点にして操作棒2の基端部2aが操作されると、圧力が付加された操作棒側外面突起40の部位は、被覆体43の内面突起430から離間する。また、操作棒2が固定された状態で、連結部4を支点にして接続体3が操作されると、圧力が付加された接続体側外面突起41の部位は、被覆体43の内面突起430から離間する。すなわち、外部からの圧力が付加された側の外面突起40,41の部位が、被覆体43の内面突起430から離間することで、操作棒2または接続体3を自由に回動操作できる。つまり、操作棒2および接続体3を自在に回動操作できるようになり、種々の作業に対処できるようになり、作業効率を大幅に改善できるようになる。
【0027】
操作機構部5は、図1に示すように、接続体3の基端部3aに対して進退するように、操作棒2に進退自在に内挿された可動係止軸50と、上述した固定係止軸30、すなわち、進出位置の可動係止軸50に対して係止するように、接続体3の基端部3aから操作棒2の先端部2bに向かって延出される固定係止軸30と、操作棒2の基端部2aに配置されるとともに、可動係止軸50に連結されて、可動係止軸50の進退操作および進出状態の維持が行えるように構成されるロック解除機構部51とを備えている。そして、図2(a)に示すように、可動係止軸50は、固定係止軸30と同様に、その先端部に、円板状の係止部500が形成されるとともに、該係止部500に、固定係止軸30の係止凸部301,…に係止する係止凸部501,…が形成されている。ロック解除機構部51は、図2(b)に示すように、可動係止軸50の基端部に形成されたロック孔510と、操作棒2の基端部2aの背面側の内周面の下部に配置された、可動係止軸50が固定係止軸30から離間した解除状態のロック孔510に係脱する解除側係止体511と、操作棒2の基端部2aの背面側の内周面の上部に配置された、可動係止軸50が固定係止軸30に係止した係止状態のロック孔510に係脱するロック側係止体512と、操作棒2の基端部2aに、軸線に対して直交方向に突設される操作杆513と、操作棒2の基端部2aの正面側の外面に、軸線に平行するように形成され、操作杆513が外部に導出される正面視矩形状の長孔514と、該操作杆513を可動係止軸50が後退する方向に常時付勢する引張バネ515と、操作杆513が略中央部に挿通されるとともに、操作杆513の昇降動作に応じて、可動係止軸50のロック(「LOCK」)および解除(「FREE」)を表示する表示板と516を有している(図2(c)および図6(c)参照)。
【0028】
ここで、本実施形態に係る作業用器具1を用いて架線(被処理物)Cに接続される工具としての接地短絡器具6の構成について図4および図5(a),(b)を参照して説明する。該接地短絡器具6は、先端部側が地中に打ち込まれるとともに、基端部側が地面から露出される接地棒60と、3相の架線Cにそれぞれ接続される3つの架線側挟持体61,…を有する架線側挟持部61Aと、各架線側挟持体61,…を連結する連結部材62と、接地棒60の基端部60aに接続される接地側挟持体63、および、引出線622に一端部が接続されるとともに、他端部が接地側挟持体63に接続された接続導体64を有する接地側挟持部63Aとを備えている。
【0029】
接地棒60は、図4に示すように、後述する接地側挟持体63の接続部630に接続されやすいように、環状(三角形)に折り曲げて形成される基端部60aと、地中に打ち込まれやすいように、尖鋭状に形成される先端部60bとを有している。
【0030】
架線側挟持部61Aの架線側挟持体61は、図5(a)に示すように、架線Cに引っ掛けられるように、凹状(円弧状)に折り曲げられて形成された固定側挟持部610が一端部に配置されるとともに、固定側挟持部610の凹部の内面に対向する位置に雌ねじ部612が他端部に形成された本体部611と、該本体部611の雌ねじ部612に螺合して、固定側挟持部610の内面に対して近接離間する雄ねじ613と、該雄ねじ613の基端部に配置された、作業用器具1の接続体3の先端部3cが接続される接続部614と、雄ねじ613の先端部に配置された、固定側挟持部610に接離する可動側挟持部615とを有している。そして、図4および図5(a)に示すように、各本体部611,…の背面に第1〜第3接続線L1〜L3の一端部が接続されている。また、中央部の架線Cに接続される架線側挟持体61の本体部611には、他の架線Cに接続される残り2つの架線側挟持体61,61を横一列に連結するための連結バー616が取り付けられている。該連結バー616は、架線側挟持体61の雌ねじ部612の両側から外方に延出されており、この延出された両側部にそれぞれ残りの架線側挟持体61,61が接続されて、各架線側挟持体61,…が一体化されている。具体的には、中央部の架線側挟持体61が高位置に、左右の架線側挟持体61,61が同じ低位置になるように一体化されている。
【0031】
連結部材62は、第1〜第3接続線L1〜L3の他端部が接続される複数の接続端子620,…と、該各接続端子620,…に、一端部が接続されるとともに、他端部が一括接続された複数の導通線621,…と、該各導通線621,…の基端部(共通接続部)から外部に引き出される一本の引出線622と、各接続端子620,…、各導通線621,…、引出線622を覆うカバー623とを備えている。
【0032】
接地側挟持部63Aの接地側挟持体63は、接地棒2の基端部2aに接続される接続部630と、該接続部630を覆う有底筒状のカバー631とを備えている。接続部630は、両端部が互いに内側に折り曲げられた一対の折曲片を有する断面コ字形状の本体6300と、該本体6300の一方の折曲片に形成された固定側挟持部6301と、本体6300の他方の折曲片に貫設されたねじ棒6302と、該ねじ棒6302の先端部に固設された可動側挟持部6303とを有している。カバー631は、ゴムあるいは合成樹脂で作製されている。そして、カバー631の開口部631aを経て固定側挟持部6301と可動側挟持部6303との間に、接地棒60の基端部60aを挿入し、可動側挟持部6303を接地棒60の基端部60a側に移動させて、固定側挟持部6301と可動側挟持部6303とで、接地棒60の基端部60aを挟持する。
【0033】
つぎに本実施形態に係る作業用器具の使用態様について図2,図4〜図9を参照して説明する。まず、3相の電線路の架線Cの被覆を、間接活線用剥離工具(図示せず)を用いて剥離して、芯線を露出させておく。一方、接地短絡器具6の接地側挟持体63の接続部630を接地棒2の基端部2aに接続する。具体的には、固定側挟持部6301と可動側挟持部6303との間に、接地棒2の基端部2aを配置し、ねじ棒6302を操作して、固定側挟持部6301と可動側挟持部6303とで、接地棒2の基端部2aを挟持する。その後、作業用器具1の接続体3に、接地短絡器具6の中央部の架線側挟持体61における接続部614(以下、前記中央部の接続部614という)を予め接続しておくとともに、中央部の架線Cに、前記中央部の架線側挟持体61の固定側挟持部610(以下、前記中央部の固定側挟持部610という)を引っ掛けられるように、可動側挟持部615を固定側挟持部610から離間させておく。この際、作業用器具1の可動係止軸50は、図2(a)に示すように、接続体3の固定係止軸30から離間し、作業用器具1の可動係止軸50の操作杆513の位置は、図2(b),(c)に示すように、長孔514の下端に位置し、操作棒2のロック孔510から解除側係止体511が係止し、解除位置にロックされた状態になっており、表示板516に表示されている「FREE」の文字が長孔514から目視できる状態になっている。すなわち、操作棒2および接続体3のいずれもが回動自在の状態(スタンバイ状態)にある。
【0034】
そして、図7に示すように、作業者Aは、高所作業車(図示せず)のバケットBに搭乗して、3相の架線Cと作業者Aとの近接限界距離を確保できる位置に移動する。この位置において、作業者Aは、バケットBから中央部の架線Cの上側の外周面に、前記中央部の固定側挟持部610の凹部の内面を当接させ、中央部の架線Cに、前記中央部の固定側挟持部610を引っ掛ける。その後、図6(a)〜(c)に示すように、作業用器具1の操作棒2の操作杆513を長孔514に沿って押し上げて、操作棒2の先端部2bから可動係止軸50を進出させて、接続体3の固定係止軸30に係止させると、操作棒2のロック孔510から解除側係止体511が離脱し、ロック側係止体512が操作棒2のロック孔510に係止する。すなわち、可動係止軸50と固定係止軸30との係止状態が維持される。つまり、操作棒2と接続体3とが一体化される。この際、作業用器具1の操作棒2の操作杆513の位置は、図6(b),(c)に示すように、長孔514の上端に位置しており、表示板516に表示されている「LOCK」の文字が長孔514から目視できる。
【0035】
この状態で、作業用器具1の操作棒2を周方向に回動させると、接続体3が操作棒2と同一方向に回動するので、前記中央部の架線側挟持体61の雄ねじ613を回動できるようになる。そして、前記中央部の架線側挟持体61の可動側挟持部615の外面が架線Cの下側の外周面に圧接するまで、雄ねじ613を回動すると、中央部の架線Cに、前記中央部の架線側挟持体61が接続されることになる。
【0036】
この際、図8(a)に示すように、架線Cに対して、作業者Aが斜め下方に位置する場合があり、作業用器具1の操作棒2に対する接続体3の角度を調整する必要がある。この場合、操作杆513の位置を、図2(b),(c)に示す位置、すなわち、操作杆513を押し下げて、「FREE」の位置に戻して、操作棒2および接続体3を回動自在の状態にすれば、作業者Aがどのような立ち位置であっても、接続体3を所望の角度に位置させることができる。そして、接続体3を所望の角度位置に回動させた時点で、操作杆513を押し上げて、「LOCK」に位置させる。この場合、図8(b)に示すように、接続体3が斜めになっても、接続体3の被位置決め体31が、操作棒2の位置決め体24に係止するので、接続体3は、所定の角度で維持される。このように、操作棒2に対して接続体3が斜めに位置した場合であっても、所望の角度位置で操作棒2の可動係止軸50を接続体3の固定係止軸30に係止させれば、操作棒2を回動操作できる状態が確保される。また、可動係止軸50と固定係止軸30が係止した状態で、接続体3の被位置決め体31が、操作棒2の位置決め体24に係止すれば、前記と同様に、操作棒2を回動操作できる状態が確保される。すなわち、本実施形態に係る作業用器具1は、作業者Aや被処理物(架線C)の位置に関係なく、被処理物に対して作業に適した姿勢を確保できる。
【0037】
前記中央部の架線側挟持体61を中央部の架線Cに接続した後は、作業用器具1の操作棒2を一旦押し上げて周方向に回動させて、前記中央部の架線側挟持体61の接続部614から、作業用器具1の接続体3を取り外す。そして、前記と同様の操作手順を繰り返し、図9に示すように、接地短絡器具6の残り2つの架線側挟持体61,61を、残りの2本の架線C,Cに順次接続する(図9参照)。
【0038】
このように、本実施形態に係る作業用器具1によれば、操作棒2および接続体3が相対回動自在に連結されるので、作業者Aの立ち位置や被処理物(架線C)の位置に関係なく、所要の作業、すなわち架線Cに接地短絡器具6を着脱する作業を行うことができる。さらに、操作棒2の可動係止軸50の操作を、操作棒2の基端部側、すなわち作業者Aの手元で操作できるように構成されているので、作業者Aにとって使い勝手がよい。
【0039】
なお、本発明に係る作業用器具は、前記実施の形態に限定することなく種々変更することができる。
【0040】
例えば、前記実施形態の場合、操作棒2の可動係止軸50を接続体3の固定係止軸30から離間させて、操作棒2および接続体3を相対回動するようにしたが、この相対回動する際における、接続体3の回動をガイドする回動機構部7を備えるようにしてもよい。該回動機構部7は、例えば、図10に示すように、ガイド体として歯筋70aが曲線状の曲がりばかさ歯車70を操作棒2の先端部2bの端面の周縁部に配置するとともに、曲がりばかさ歯車70に噛合する、移動体としての一対のはすばかさ歯車71を、接続体3の基端部3aに回転自在に支持するようにしてもよい。この場合、はすばかさ歯車71が自転しながら曲がりばかさ歯車70に沿って公転するため、接続体3の基端部3aを支点とする先端部3cの円運動が円滑に行われるとともに、操作棒2に対して斜めに位置する接続体3の位置決めが確実に行われる。
【0041】
また、前記実施形態の場合、操作軸2の可動係止軸50に円板状の係止部500を形成するとともに、接続体3の固定係止軸30に円板状の被係止部300を形成し、係止部500および被係止部300に互いに係止する係止凸部501,301を径外方向に形成するようにしたが、図11〜図13に示すように、操作軸2の可動係止軸50Aに凹状の係止部500Aを形成するとともに、固定係止軸30Aの先端部に、係止部500Aの嵌入される球体状の被係止部300Aを形成するようにしてもよい。そして、係止部500Aの内面および被係止部300Aの表面に複数の係止凸部501A,301Aを形成し、互いの係止凸部501A,301Aを係止させて、操作棒2よび接続体3を回動自在に連結する。この場合、可動係止軸50の各係止凸部501Aの間に、固定係止軸30Aの各係止凸部301Aが嵌入することで、回動する接続体3の位置固定ができるようになる。すなわち、前記実施形態と同様に、操作棒2および接続体3を自在に操作できて、所要の作業を円滑に且つ確実に行えるようになる。
【0042】
また、前記実施形態の場合、ロック解除機構51として、可動係止軸50にロック孔510を形成するとともに、該ロック孔510に係脱するように弾性付勢された一対の係止体511,512を操作棒2の内周面に配置するようにしたが、各係止体511,512を用いることなく、可動係止軸50の操作杆513が導出される長孔を鍵形状(逆L字形状)に形成して、該操作杆513の進出状態をロックするようにしてもよい。具体的には、操作杆513を長孔の直状部に沿って上端まで押し上げた後、長孔の水平部に沿って移動させれば、操作杆513が長孔の水平部の下側縁部に当接するようになり、操作杆513を進出状態にロックできる。
【0043】
また、前記実施形態の場合、操作棒2に進退自在に内挿した可動係止軸50を、該可動係止軸50に対して直交方向に突設された操作杆513によって進退させるようにしたが、レバー操作によって駆動するリンク機構を用いて進退させるようにしてもよい。例えば、間接活線作業用把持具(所謂ヤットコ)のような構成を起用すればよい。
【0044】
また、前記実施形態の場合、間接活線作業に使用される工具(接地短絡器具6)を作業用器具1の接続体3に接続したが、他の作業、例えば、配管作業あるいは建築作業などに使用される工具、例えば、パイプレンチやハンマーなどを接続するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1…作業用器具、2…操作棒、2b…操作棒2の先端部、3…接続体、3a…接続体3の基端部、4…連結部、5…操作機後部、6…工具(接地短絡器具)、7…回動機構部、40,41…外面突起、42…弾性部材(圧縮バネ)、43…被覆体、430…内面突起、50…可動係止軸、51…ロック解除機構部、70…ガイド体(曲がりばかさ歯車)、71…移動体(はすばかさ歯車)、A…作業者、B…バケット、C…架線、L1〜L3…接続線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の操作棒(2)と、
該操作棒(2)の先端部(2b)に同一軸線上に配置されるとともに、作業に使用される工具(6)が直接または間接的に接続される接続体(3)と、
操作棒(2)の先端部(2b)および接続体(3)の基端部(3a)が互いに離間する方向に付勢された状態で、操作棒(2)および接続体(3)を相対回動自在に連結する連結部(4)と、
相対回動する操作棒(2)および接続体(3)を所望の角度位置で固定する位置固定操作、該位置固定を解除する解除操作が手元で行えるように構成される操作機構部(5)を備えたことを特徴とする作業用器具。
【請求項2】
前記連結部(4)は、操作棒(2)の先端部(2b)および接続体(3)の基端部(3a)の各外面に形成される外面突起(40,41)と、各外面突起(40,41)に当接するように、操作棒(2)の先端部(2b)および接続体(3)の基端部(3a)の間に介装される弾性部材(42)と、操作棒(2)の先端部(2b)、操作棒側の外面突起(40)、弾性部材(42)、接続体側の外面突起(41)、接続体(3)の基端部(3a)を覆うとともに、弾性部材(42)を圧縮する方向から各外面突起(40,41)を係止する内面突起(430,430)が内面に形成される被覆体(43)とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の作業用器具。
【請求項3】
前記操作機構部(5)は、接続体(3)の基端部(3a)に対して進退するように、操作棒(2)に進退自在に内挿される可動係止軸(50)と、進出位置の可動係止軸(50)に対して係止するように、接続体(3)の基端部(3a)から操作棒(2)の先端部(2b)に向かって延出される固定係止軸(30)と、操作棒(2)の基端部(2a)に配置されるとともに、可動係止軸(50)に連結されて、可動係止軸(50)の進退操作および進出状態の維持が行えるように構成されるロック解除機構部(51)とを備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の作業用器具。
【請求項4】
操作棒(2)の先端部(2b)、または、接続体(3)の基端部(3a)のいずれか一方の端面の周縁部に沿って配置される、操作棒(2)および接続体(3)を回動するためのガイド体(70)と、他方の端面に配置される、ガイド体(70)に沿って移動する複数の移動体(71)とを有する回動機構部(7)を備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の作業用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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