説明

作業用走行車

【課題】 簡単な構造で、掘削作業、運搬作業の少なくともいずれか一つが行えるようにし、製作費用、修理費用、維持管理費用を大幅に低減できるようにする。
【解決手段】 二つのクローラ式走行装置4,4と、両クローラ式走行装置4,4を支持する基台5と、基台5に設置された両クローラ式走行装置4,4のエンジン6と、発電機7と、運転操作装置8と、座席9とを有する走行車輌1を設け、巻掛伝動装置によって駆動する掘削装置50及び荷台60の少なくともいずれか一つを支持する枠体10を、走行車輌1に着脱可能に取り付ける。そして、枠体10に掘削装置50の旋回軸としての直立支柱12bを回動可能に設け、巻掛伝動装置を、ドリル36の動力と、手動式チェーンブロック20a,20bと、最少ギア数の伝動スプロケット26とから構成し、ショベル54の底板54a及び荷台60の側板60b,…を開閉可能な構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業や土木作業における掘削作業や運搬作業に使用される作業用走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の作業用走行車としては、二つのクローラ式走行装置と、該両クローラ式走行装置を支持する基台と、該基台の前部に配設された運転操作装置や座席と、基台の後部に配設された傾動可能な荷台とから構成されている(特許文献1参照)。
【0003】
そして、掘削装置、運転操作装置及び座席は、施回軸によって360度回動可能に構成されている。さらに、ブーム、アーム、ショベルのそれぞれが油圧シリンダーによって駆動し、掘削作業できるように構成されている。一方、掘削した土を荷台に積載して運搬作業が行えると共に、荷台を傾動させて積載した土の排出作業も行える。
【特許文献1】特公平7−6216号公報(第1―4頁、図1乃至図12)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の作業用走行車の場合、油圧シリンダーによって駆動する掘削装置と、傾動可能な荷台とが走行車輌に配設されているので、構造が複雑で、製作費用、修理費用、維持管理費用が高価であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、簡単な構造で、掘削作業、運搬作業の少なくともいずれか一つが行えるようにし、製作費用、修理費用、維持管理費用を大幅に低減できる安価な作業用走行車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の作業用走行車は、請求項1に示す如く、二つのクローラ式走行装置と、該両クローラ式走行装置を支持する基台と、該基台に設置された両クローラ式走行装置のエンジンと、発電機と、運転操作装置と、座席とを有する走行車輌が設けられ、しかも、該走行車輌の基台には、巻掛伝動装置によって駆動する掘削装置、及び、荷台の少なくともいずれか一つを支持するための枠体が着脱可能に取り付けられてなるものである。
【0007】
したがって、走行車輌がクローラ式走行装置を有することで、軟弱な湿地や荒地における農耕作業や土木作業をするのに有効である。さらに、掘削装置を巻掛伝動装置によって駆動させるので、油圧シリンダーを使用することがなく、購入費や修理費などにおいて大幅なコスト削減に繋がる。加えて、枠体が走行車輌の基台に着脱可能であることから、掘削作業のみ、運搬作業のみ、掘削と運搬の両方の作業が可能になり、用途範囲が大きく、農耕作業や土木作業に大きく貢献できる。
【0008】
また、請求項2に示す如く、枠体は、走行車輌の基台に着脱可能な環状の底枠のみ、又は、該底枠と、底枠に着脱可能に立設された前後の直立支柱と、該両直立支柱の上端部に架設された水平支柱と、両直立支柱に斜めに架設された補強支柱との骨組みによって構成され、さらに、該骨組み構造の枠体においては、両直立支柱の少なくともいずれか一つが回動可能に支持されてなるものである。
【0009】
例えば、底枠のみの枠体であれば、荷台を取り付けることで運搬車として使用できる。さらに、骨組み構造の枠体であれば、直立支柱が掘削装置の旋回軸となる。
【0010】
さらに、請求項3に示す如く、掘削装置は、その基端部が骨組み構造の枠体の一方の直立支柱に回動可能に支持された昇降アームと、その中央部が昇降アームの先端部に回動可能に支持された掘削アームと、該掘削アームの下端部に設けられたショベルと、該ショベルの支持手段とを具備してなるものである。
【0011】
この場合、掘削装置の昇降アームが、旋回軸となる枠体の直立支柱に回動可能に支持されることで、昇降アームの上下方向及び水平方向の回動が可能になる。さらに、枠体の直立支柱を利用して、巻掛伝動装置のチェーンを昇降アーム及び掘削アームに連結すれば、チェーンを介して昇降アーム及び掘削アームに力と運動を伝達できるようになる。即ち、掘削作業が可能になる。
【0012】
加えて、請求項4に示す如く、ショベルを、その一側に刃を有する平面視略四角形状の底板と、該底板の他側に設けられた開閉板と、該開閉板に固着された操作レバーと、底板に平行して立設された二枚の側板と、該両側板の間に立設された背板とから構成し、開閉板及び背板の少なくともいずれか一方に網体を使用するようにしてもよい。
【0013】
よって、開閉板や背板が網体によって構成されることで、例えば、軟弱な湿地の土を掘削した場合には、開閉板や背板の面と土との接触面積が少ないため、土が開閉板や背板から離脱しやすくて容易に排出できる。
【0014】
また、請求項5に示す如く、ショベルの支持手段を、掘削アームの下端部に固着され、且つ、ショベルの両側板の一方の上端部に回動可能に支持された支軸と、掘削アームの下部に回動可能に設けられた伸縮可能な保持アームと、該保持アームの先端部に設けられたクランパと、該クランパに着脱可能に挟持され、且つ、ショベルの両側板の他方の上端部に貫設された被挟持軸とから構成するのが好ましい。
【0015】
そうすれば、掘削アームの支軸を支点としてショベルが回動可能になる。さらに、保持アームの長さを変えることによって、掘削するショベルの角度調整が行える。加えて、クランパからショベルの被挟持軸が離脱することで、ショベルの回動と共に、土の排出が容易になる。
【0016】
さらに、請求項6に示す如く、巻掛伝動装置は、昇降用及び掘削用の二つの手動式チェーンブロックと、該両手動式チェーンブロックの近傍に設けられた伝動スプロケットと、該両伝動スプロケットを回転駆動させるドリルと、掘削装置の昇降アームが回動支持される枠体の一方の直立支柱の上端部に設けられたローラとから構成され、しかも、両手動式チェーンブロックは、チェーンブロック本体と、該チェーンブロック本体に回動可能に設けられた原動スプロケット及び従動スプロケットと、原動スプロケット及び伝動スプロケットに捲回された原動チェーンと、従動スプロケットに捲回された従動チェーンとが設けられ、さらに、昇降用手動式チェーンブロックの従動チェーンの一端部が、昇降用手動式チェーンブロックのチェーンブロック本体に連結されると共に、他端部が前記ローラを介して掘削装置の昇降アームの先端部に連結され、加えて、掘削用手動式チェーンブロックの従動チェーンの一端部が、掘削装置の掘削アームの上端部に連結されると共に、他端部がショベルに連結されてなるものである。
【0017】
つまり、本発明の巻掛伝動装置においては、既製の手動式チェーンブロックに既製の部材を付加するだけで、電動式チェーンブロックとしての使用が可能になる。即ち、既製のドリルで回転駆動する伝動スプロケットを手動式チェーンの原動スプロケットの近傍に設けて、原動チェーンを両スプロケットに捲回し、ドリルの動力を、伝動スプロケット、原動チェーン、原動スプロケットを介して、従動スプロケットに伝達し、所望の作業動作を得るのである。また、原動チェーンを取り替えることで、通常の手動式チェーンブロックとしても使用できる。さらに、原動スプロケットの近傍に伝動スプロケットが設けられているので、原動スプロケット及び伝動スプロケットの二軸間の距離が小さく、ドリルの動力を確実に伝達できる利点がある。
【0018】
加えて、請求項7に示す如く、伝動スプロケットは、平行して設けられた二枚の正三角形状のガイド体と、該両ガイド体の間に、その各頂点が両ガイド体の各辺の中央に位置するように配された両ガイド体と同一形状の歯車と、両ガイド体及び歯車の重心位置に貫設された伝動回転軸とから構成され、しかも、両ガイド体の一辺の長さが原動チェーンのリングの長軸と略同一長さであると共に、両ガイド体の間隔が原動チェーンのリングの太さよりも若干大きく、伝動回転軸がドリルのチャックに着脱されてなるものである。
【0019】
この場合、原動チェーンに係止する歯車のギア数が最少であるため、原動チェーンが小さな入力で駆動することになる。つまり、伝動スプロケットの歯車が原動チェーンに確実に係止すれば、油圧シリンダーを使用しなくても、ドリルでも充分な掘削作業が可能になる。
【0020】
また、請求項8に示す如く、従動チェーンのテンション調整部材を、昇降用手動式チェーンブロック、及び、掘削用手動式チェーンブロックに設けるのがよい。
【0021】
昇降用手動式チェーンブロックと、枠体の一方の直立支柱のローラとの間、或いは、掘削用手動式チェーンブロックと、掘削アームの上端部との間において、従動チェーンに弛みが生じた場合、従動チェーンが昇降用手動式チェーンブロックや掘削用手動式チェーンブロックに噛み込むことになり、昇降アームや掘削アームが円滑に回動できなくなる。この噛み込みを防止すべく、従動チェーンが昇降用手動式チェーンブロックや掘削用手動式チェーンブロックのギアに常時係止するようにテンションを付加するのである。テンション調整部材としては、例えば、つる巻きばねによって棒体を従動チェーンに圧接したり、引っ張りばねによって従動チェーンを一方向に引っ張ったりする。
【0022】
さらに、請求項9に示す如く、荷台を、枠体に着脱可能な底板と、該底板に立設された複数の側板とから構成し、該各側板のうち少なくとも一つを開閉可能に構成するのが望ましい。
【0023】
例えば、荷台が直方体形状の場合において、底板の各側板を開放すれば、荷台の各側面の開口部から積載された土を広範囲に容易に排出できる。さらに、荷台に積載された土を手やスコップですくって、略平坦な盛土を散在させれば、均し作業に要する手間も少なくて済む。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、巻掛伝動装置によって駆動する掘削装置を設けることによって、簡単且つ安価に構成できるようになる。さらに、掘削装置及び荷台の少なくともいずれか一つを支持する枠体が走行車輌の基台に着脱可能に取り付けられることで、一台で掘削・運搬の二役をこなすことになり、用途範囲を拡大できる効果がある。
【0025】
また、枠体の構成としては、環状の底枠と、該底枠の前後に立設された直立支柱と、該両直立支柱の上端部に架設された水平支柱と、両直立支柱に斜めに架設された補強支柱との簡単な骨組みによって構成されているので、分解組立が容易になる。さらに、両直立支柱の少なくともいずれか一つが回動可能に支持されているので、走行車輌の前後のいずれにも掘削装置の旋回軸を設けることができる。
【0026】
さらに、例えば、掘削装置の昇降アームと掘削アームとを管体によって構成すれば、軽量で簡易な掘削装置が容易に得られる。
【0027】
加えて、ショベルの底板の他側を開閉可能にするようにしたので、土の排出に有効である。また、開閉板や背板の少なくともいずれか一方を網体によって構成したため、粘性の有する土の排出にも対応できる。
【0028】
また、ショベルの支持手段によって、掘削するショベルの角度調整が行えるようにしたので、荒地や軟弱な湿地いずれの土質にも適用する。
【0029】
さらに、既製のドリルや手動式チェーンブロックによって電動式巻掛伝動装置を構成したので、簡単且つ安価である。
【0030】
加えて、最少ギア数の伝動スプロケットの構成としたので、ギア比が大きくなり、大きな牽引力が得られる効果がある。
【0031】
また、昇降用手動式チェーンブロック、及び、掘削用手動式チェーンブロックには、従動チェーンのテンション調整部材を設けたため、従動チェーンの円滑な巻き送り、巻き戻しが可能になる。
【0032】
さらに、荷台の各側板のうち少なくとも一つを開閉するようにしたので、荷台を傾動させることなく有効に土を排出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明を実施するための最良の形態につき、図1〜図8を参照して説明する。本発明の作業用走行車の構成は、図1及び図2に示すように、既製のコンバインを改良した走行車輌1と、該走行車輌1に設置された枠体10と、該枠体10に取り付けられた巻掛伝動装置と、枠体10に設けられた掘削装置50と、走行車輌1に搭載された荷台60とから構成されている。なお、枠体10、巻掛伝動装置、掘削装置50、荷台60は着脱可能な構成になっている。
【0034】
走行車輌1は、駆動輪2aや複数個の転輪2b,…、これら車輪2a、2b,…に張架された無端履帯3を有する左右一対のクローラ式走行装置4,4と、該両クローラ式走行装置4,4を支持する平面視略矩形状の基台5と、該基台5の右側前部に搭載されたエンジン6と、該エンジン6の側方に取り付けられた発電機7と、左側前部に設けられた運転操作装置8と、該運転操作装置8の後方に設置された座席9とを有する。なお、エンジン6が搭載されている側を走行車輌1の前側(進出方向)とし、その反対側を後側(後退方向)とする。
【0035】
枠体10は、縦長に取り付けられた外形が平面視略矩形状の底枠11と、該底枠11の二つの短辺の中央にそれぞれ立設された前後の直立支柱12a,12bと、該両直立支柱12a,12bの下端部にそれぞれ設けられた二本の補助支柱13,…と、両直立支柱12a,12bの上端部に架設された水平支柱14と、前側の直立支柱12aの下部から、後側の直立支柱12bと水平支柱14との接続部位に斜めに架設された補強支柱15と、後述する掘削装置50のショベル54の載置台16とから構成されている。
【0036】
底枠11には、荷台60の補助フレーム11aが底枠11に対して直交する方向(横方向)、又は、同一方向(縦方向)のいずれにも取り付けられるように構成されている。さらに、各補助支柱13,…の下端部には、クランパ17,…が溶着され、各クランパ17,…によって、各補助支柱13,…は、底枠11に対して着脱可能な構成になっている。
【0037】
つまり、作業用走行車は、枠体10、掘削装置50、荷台60を設けることで掘削と運搬を行うことが可能となり、底枠11、荷台60を設けることで運搬のみを行うことも可能となる。
【0038】
加えて、枠体10の後側の直立支柱12bは、後側の二本の補助支柱13,13の上端部に固着された筒体18と、底枠11の前後、及び、水平支柱14の後端部にそれぞれ設けられた筒状の受け具19,…によって回動可能に支持されている。これによって、後側の直立支柱12bが後述する掘削装置50の昇降アーム52の旋回軸となる。
【0039】
巻掛伝動装置は、図3及び図4(A)、(B)に示すように、主要部材として、昇降用手動式チェーンブロック20aと、掘削用手動式チェーンブロック20bとを有している。該両チェーンブロック20a,20bの構成は、チェーンブロック本体21と、該チェーンブロック本体21に回動可能に支持された原動回転軸と、該原動回転軸に固着された大径の原動スプロケット22と、原動回転軸に連結された従動回転軸と、該従動回転軸に固着された小径の従動スプロケット23と、該従動スプロケット23の両側方に回動可能に設けられた補助スプロケット24,24と、従動スプロケット23と両補助スプロケット24,24との間を通って導出された従動チェーン25と、原動スプロケット22に動力を伝達するための伝動スプロケット26と、原動スプロケット22及び伝動スプロケット26に捲回された原動チェーン27と、チェーンブロック本体21に固着されたフック28とから構成されている。そして、チェーンブロック本体21のフック28は、後述する下挿通管30bの吊り輪47aに引掛けることでチェーンブロック本体21が固定される。
【0040】
さらに、巻掛伝動装置は、その付属部材として、枠体10の後側の直立支柱12bの上端部に回動可能に設けられたローラ29aと、昇降用手動式チェーンブロック20aのチェーンブロック本体21に吊り下げられたチェーン収納バケット29bとを有している。
【0041】
加えて、昇降用手動式チェーンブロック20aの従動チェーン25は、その一端部が、従動スプロケット23と両補助スプロケット24,24との間を通ってチェーンブロック本体21に連結固定され、従動チェーン25の一部がチェーン収納バケット29bに収納されている一方、他端部が、前記ローラ29aを介して昇降アーム52の吊り輪47bに連結されている。
【0042】
また、掘削用手動式チェーンブロック20bの従動チェーン25は、その一端部が、後述するクランパ59の吊り輪47dに連結される一方、他端部が、引張りばね45を介して掘削装置50の掘削アーム53の吊り輪47cに連結固定されている。
【0043】
伝動スプロケット26は、図4(B)に示すように、三つの三角形状の歯車26a,26a、26bが一体に溶着されており、平行して設けられた二枚の歯車26a,26aと、該両歯車26a,26aの間において、該両歯車26a,26aの各辺の中央部に各頂点が位置するように配された一枚の歯車26bと、各歯車26a,26a、26bの重心位置に貫設された伝動回転軸26cとを具備している。なお、中央部の歯車26bの大きさは、両歯車26a,26aの大きさに比して若干小さくなっている。この理由としては、原動チェーン27の巻掛伝動が、原動チェーン27の複数のリングを中央部の歯車26bの斜辺、及び、両歯車26a,26aの斜辺によってガイドすることで成されているためである。中央部の歯車26bの各頂点の前記各リングへの係止はほんの少しでも原動チェーン27の巻掛伝動は円滑に行える。
【0044】
そして、伝動スプロケット26は、平行する二枚の歯車26a,26aの各辺が原動チェーン27の複数のリングに当接し、両歯車26a,26aの間に介在された一枚の歯車26bの各頂点が、原動チェーン27の複数のリングの穴に挿通されて係止するように構成されている。
【0045】
該両チェーンブロック20a,20bは、枠体10の後側の直立支柱12b、及び、昇降アーム52にそれぞれ固定されている。該固定手段は、上述した後側の直立支柱12bや昇降アーム52に挿通される上挿通管30a、及び、下挿通管30bと、該両挿通管30a,30bを後側の直立支柱12bや昇降アーム52に固定するためのボルト31及びナット32と、上挿通管30aの周面に固着された略矩形状の取付板33と、該取付板33の背面に固着された直角三角形状の補強板34とを備えている。なお、両チェーンブロック20a,20bは、伝動スプロケット26を取り外せば通常の手動式チェーンとして使用できる。
【0046】
上挿通管30aの取付板33に共通して取り付けられている部材としては、伝動スプロケット26を回動支持するためのL字形状の支持板35と、既製のドリル36を固定するための複数の固定板37,…と、ドリル36の駆動スイッチ36aを手動操作するための切欠部38とが設けられている。なお、取付板33には、雨水や塵埃から保護するためのカバーが、ドリル36を覆うように設けられる(図示せず)。なお、ドリル36の電源は発電機7から供給される(図示せず)。また、固定板37,…から取り外したドリル36は、通常通り使用できることは言うまでもない。
【0047】
ドリル36には、上述した駆動スイッチ36aと、正逆回転の切換スイッチ36bと、伝動スプロケット26の伝動回転軸26cが連結されるチャック36cとが装備されている。
【0048】
枠体10の後側の直立支柱12bに挿通される上挿通管30aのみの付属部材としては、二枚の支持板40,40によって回動支持された支軸41と、基端部が支軸41に固着された付勢杆42と、支軸41に捲回されたつる巻きばね43と、付勢杆42の先端部に取り付けられたローラ44とが装備されている。
【0049】
そして、付勢杆42は、つる巻きばね43によって常に時計方向に付勢されており、ローラ44が従動チェーン25を押圧して、従動チェーン25にテンションを付加している。なお、従動チェーン25は、ローラ44の溝によってガイドされながら移動する。一方、掘削用手動式チェーンブロック20bの従動チェーン25へのテンションの付加は、掘削アーム53の上端部に設けられた引張りばね45によって付与されている。
【0050】
下挿通管30bにおいて、上挿通管30aと共通して取り付けられている部材としては、昇降用手動式チェーンブロック20a、及び、掘削用手動式チェーンブロック20bのチェーンブロック本体21を固定するための固定金具46,46と、両チェーンブロック20a,20bのチェーンブロック本体21のフック28を引っ掛けるための吊り輪47aとが設けられている。
【0051】
掘削装置50は、枠体10の後側の直立支柱12b(旋回軸)に設けられた支持体51aと、基端部が支持体51aに回動可能に支持された昇降アーム52と、該昇降アーム52の先端部に溶着された吊り輪47bと、昇降アーム52の先端部に固着された断面コ字形状の支持体51bと、該支持体51bに回動可能に支持された掘削アーム53と、該掘削アーム53の上端部に溶着された吊り輪47cと、掘削アーム53の下部に設けられた支持体51cと、掘削アーム53の下端部に設けられたショベル54と、該ショベル54の支持手段とから構成されている。
【0052】
ショベル54は、図3、図5(A)、(B)に示すように、平面視略矩形状の底板54aと、該底板54aの両側に立設された略台形状の側板54b,54bと、底板54aの後端部に立設された網体からなる背板54cとを有し、上面及び前面が開口されている。さらに、底板54aの前端部には、櫛歯状の刃54dが形成されている。加えて、底板54aの後部には、網体からなる開閉板54eと、該開閉板54eの操作レバー55とが設けられている。
【0053】
ショベル54の支持手段は、掘削アーム53の軸線に対して直交するように固着され、且つ、ショベル54の背板54cの上部に回動可能に設けられた支軸56と、ショベル54の両側板54b,54bの上部に固着された被挟持軸57と、基端部が掘削アーム53の下端部に回動可能に設けられ伸縮可能な保持アーム58と、該保持アーム58の先端部に設けられたクランパ59とを備えている。
【0054】
保持アーム58は、外管と内管の二重構造となっており、内管が外管に挿通されて進退可能となり、全体が伸縮可能な構成になっている。そして、外管の基端部が支持体51cによって回動可能に支持されている。さらに、外管及び内管には、内管の進退が調整できるように複数の調整穴が形成されており(図示せず)、外管及び内管の一致した調整穴にピン58aを挿通させることで、保持アーム58の長さが伸縮調整されるように構成されている。つまり、保持アーム58においては、外管の回動支持と、内管の進退調整とによって、土面に対するショベル54の刃54dの角度調整が行えるように構成されている。
【0055】
クランパ59は、図5(B)に示すように、それぞれの一側が回動可能に連結された二枚の略円弧状の挟持片59a,59aと、一方の挟持片59aの他側に回動可能に設けられた操作レバー59bと、該操作レバー59bの先端部に螺合されたナット59cと、他方の挟持片59aの他側に形成されたU字形状の係止溝59dと、一方の挟持片59aの他側に固着された吊り輪47dとを有している。
【0056】
そして、操作レバー59bが他方の挟持片59aの係止溝59dに係止し、ナット59cを締め付けることで、両挟持片59a,59aの挟持状態が保持される一方、ナット59cを緩めて、操作レバー59bを他方の挟持片59aの係止溝59dから離脱させることで、両挟持片59a,59aの挟持状態が解除される。なお、クランパの59の構成は、図示に限定されるものではない。要するに、掘削に耐え得る係止強度を有し、且つ、容易に係脱可能な構成であればよい。
【0057】
ショベル54は、スタンバイ状態、及び、掘削時には、保持アーム58のクランパ59によって掘削作業が可能な状態で固定される一方、土の排出時には、クランパ59の挟持状態が解除され、ショベル54が支軸56によって回動することになり、ショベル54の内部の土が荷台60へ排出されるようになる。
【0058】
荷台60は、図6に示すように、上面開口部を有する直方体形状の箱体からなり、平面視矩形状の底板60aと、該底板60aに立設された前後左右の側板60b,…とから構成されている。しかも、左右の側板60b,60bは、その下部が蝶番61,…によって底板60aに回動支持されて開閉可能になっている。さらに、後側の側板60bは、左右の両側部62,62が開閉可能に構成され、中央部63が閉塞されている。加えて、回動可能なフック64と、該フック64が係脱可能な係止ピン65が、各側板60b,…に適宜設けられている。したがって、荷台60に積載された土は、係止ピン65からフック64を離脱させることで、両側板60b,60b、及び、後側の側板60bの左右の側部62,62が開放されるようになり、外部へ排出することができる。なお、各側板60b,…が底板60aに対して着脱可能な構成であってもよい。
【0059】
なお、図1においては、荷台60の両側端部を無端履帯3,3から突出させることなく横方向に設けているが、荷台60からの土の排出を考慮すると、荷台60の両側端部を両無端履帯3,3から突出する程度の大きさにすることが好ましい。さらに、荷台60の取付位置を、枠体10の構成を見やすくするために、便宜上枠体10の後側の直立支柱12bよりも前方に位置させているが、上記と同様に土の排出を考慮すると、枠体10の後側の直立支柱12bに近接させることが望ましい。
【0060】
つぎに本発明の作業用走行車の使用態様について図7及び図8を参照して説明する。まず、図7(A)は、作業用走行車のスタンバイ状態を示し、掘削装置50の昇降アーム52が上昇していると共に、掘削アーム53の下端部が手前に引き寄せられて、ショベル54が枠体10の載置台16に載置されている。この際、昇降アーム52の付勢杆42によって昇降用手動式チェーブロック20aの従動チェーン25にテンションが付与されると共に、引張りばね45によって掘削用手動式チェーンブロック20bの従動チェーン25の先端側が引っ張られて、該従動チェーン25の端部が弛んだ状態になっている。即ち、従動チェーン25の掘削用手動式チェーンブロック20bへの噛み込みを防止すべく、引張りばね45によって、掘削用手動式チェーンブロック20bの従動チェーン25にテンションが付与された状態になっている。さらに、昇降用手動式チェーンブロック20a、及び、掘削用手動式チェーンブロック20bの伝動スプロケット26の伝動回動軸26cがドリル36のチャック36cに連結された状態になっている。
【0061】
この状態において、作業者Mは、作業用走行車に乗車して作業用走行車を作業現場に搬入させる。そして、図7(B)に示すように、作業者Mは、作業用走行車から降車して作業用走行車の後方に移動する。昇降用手動式チェーンブロック20aのドリル36を駆動させて昇降アーム52を下降させる。この際、掘削用手動式チェーンブロック20bの従動チェーン25は、掘削用手動式チェーンブロック20bとショベル54との間において若干緩んだ状態になっている。この従動チェーン25の緩みは、引張りばね45が縮小して従動チェーン25にテンションを付与するためである。
【0062】
続いて、前記と同様に、掘削用手動式チェーンブロック20bのドリル36を駆動させて、図8(A)に示すように、ショベル54によって土を掘削する。この際、図7(A)と同様に、昇降アーム52の付勢杆42によって昇降用手動式チェーブロック20aの従動チェーン25にテンションが付与されると共に、引張りばね45によって、掘削用手動式チェーンブロック20bの従動チェーン25にテンションが付与された状態になっている。
【0063】
つぎに、図8(B)に示すように、枠体10の後側の直立支柱12bを回転させることで、昇降アーム53を後方(荷台側)に回動させ、ショベル54を荷台60の上面開口部に位置させる。そして、操作レバー59bをクランパ59の係止溝59dから離脱させ、クランパ59の挟持状態を解除し、ショベル54の被挟持軸57をクランパ59から離脱させ、ショベル54を下方に回動させて、掘削した土を荷台60に排出して積載する。
【0064】
その後、作業用走行車を土の排出場所に移動させて、荷台60の左右の側板60b,60b、及び、後側の側板60bの左右の側部62,62を開口し、荷台60に積載された土を排出する。
【0065】
なお、前記実施形態の場合、荷台60を枠体10の底枠11に横方向に設置したが、縦方向に設置してもよい。
【0066】
また、枠体10の他の使用例としては、走行車輌1から取り外した枠体10に天幕を装着すれば、鍬や鋤、スコップやドリルなどの作業器具の倉庫としても使用できる。走行車輌1に設置された枠体10に天幕を装着すれば、走行車輌1の倉庫にもなる。この場合、走行車輌1を作業現場に放置することもできる。
【0067】
さらに、前記実施形態の場合、ドリル36の駆動、及び、正逆回転を手動操作したが、遠隔から操作するようにしてもよい。
【0068】
加えて、前記実施形態の場合、掘削装置50及び荷台60を枠体10に設けたが、荷台60のみを枠体10の底枠11に装着して運搬車として使用することもできる。また、ブレードを設けてブルドーザとしても使用できるし、掘削アーム53を取り外して、昇降用手動式チェーンブロック20aの従動チェーン25の他端部にフックを取り付けてクレーンとして使用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の作業用走行車は、零細農家や個人経営の建設会社に貢献できる可能性が充分にある。例えば、零細農家であれば、既製の掘削・運搬車を所用することが難しく、農作業が力仕事であることを理由に離農が進んでいるのが現状であるが、本発明の作業用走行車を使用することで、高齢化の進む零細農家の労力を低減できると共に、営農意欲を継続させることができる。さらに、零細農家が繁栄することで、若者の関心が零細農家に引き付けられ、農業基盤の発展に繋がるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の作業用走行車の全体斜視図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】図1の掘削装置の昇降アーム及び掘削アームの構成を示した概略側面図である。
【図4】(A)は、図3の昇降用手動式チェーンブロックの駆動部位の構成を示した斜視図、(B)は、伝動スプロケットの斜視図である。
【図5】(A)は、ショベルの側断面図、(B)は、ショベルの被挟持軸を挟持するクランパの側断面図である。
【図6】図1の荷台の斜視図である。
【図7】(A)は、本発明の作業用走行車を搬入させる状態を示した概略図、(B)は、掘削作業の状態を示した概略図である。
【図8】(A)は、土をショベルに載せた状態を示した概略図、(B)は、土を荷台に積載した状態を示した概略図である。
【符号の説明】
【0071】
1 走行車輌
2a 駆動輪
2b 転輪
3 無端履帯
4 クローラ式走行装置
5 基台
6 エンジン
7 発電機
8 運転操作装置
9 座席
10 枠体
11 底枠
11a 補助フレーム
12a、12b 直立支柱
13 補助支柱
14 水平支柱
15 補強支柱
16 載置台
17、59 クランパ
18 筒体
19 受け具
20a 昇降用手動式チェーンブロック(巻掛伝動装置)
20b 掘削用手動式チェーンブロック(巻掛伝動装置)
21 チェーンブロック本体
22 原動スプロケット
23 従動スプロケット
24 補助スプロケット
25 従動チェーン
26 伝動スプロケット
26a、26b 歯車
26c 伝動回転軸
27 原動チェーン
28、64 フック
29a、44 ローラ
29b チェーン収納バケット
30a 上挿通管
30b 下挿通管
31 ボルト
32、59c ナット
33 取付板
34 補強板
35、40 支持板
36 ドリル
36a 駆動スイッチ
36b 切換スイッチ
36c チャック
37 固定板
38 切欠部
41、56 支軸
42 付勢杆
43 つる巻きばね
44 ローラ
45 引張りばね
46 固定金具
47a、47b、47c、47d 吊り輪
50 掘削装置
51a、51b、51c 支持体
52 昇降アーム
53 掘削アーム
54 ショベル
54a、60a 底板
54b、60b 側板
54c 背板
54d 刃
54e 開閉板
55、59b 操作レバー
57 被挟持軸
58 保持アーム
58a ピン
59a 挟持片
59d 係止溝
60 荷台
61 蝶番
62 側部
63 中央部
65 係止ピン
M 作業者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つのクローラ式走行装置と、該両クローラ式走行装置を支持する基台と、該基台に設置された両クローラ式走行装置のエンジンと、発電機と、運転操作装置と、座席とを有する走行車輌が設けられ、しかも、該走行車輌の基台には、巻掛伝動装置によって駆動する掘削装置、及び、荷台の少なくともいずれか一つを支持するための枠体が着脱可能に取り付けられてなることを特徴とする作業用走行車。
【請求項2】
枠体は、走行車輌の基台に着脱可能な環状の底枠のみ、又は、該底枠と、底枠に着脱可能に立設された前後の直立支柱と、該両直立支柱の上端部に架設された水平支柱と、両直立支柱に斜めに架設された補強支柱との骨組みによって構成され、さらに、該骨組み構造の枠体においては、両直立支柱の少なくともいずれか一つが回動可能に支持されてなることを特徴とする請求項1に記載の作業用走行車。
【請求項3】
掘削装置は、その基端部が骨組み構造の枠体の一方の直立支柱に回動可能に支持された昇降アームと、その中央部が昇降アームの先端部に回動可能に支持された掘削アームと、該掘削アームの下端部に設けられたショベルと、該ショベルの支持手段とを具備してなることを特徴とする請求項2に記載の作業用走行車。
【請求項4】
ショベルは、その一側に刃を有する平面視略四角形状の底板と、該底板の他側に設けられた開閉板と、該開閉板に固着された操作レバーと、底板に平行して立設された二枚の側板と、該両側板の間に立設された背板とから構成され、しかも、開閉板及び背板の少なくともいずれか一方が網体からなることを特徴とする請求項3に記載の作業用走行車。
【請求項5】
ショベルの支持手段は、掘削アームの下端部に固着され、且つ、ショベルの両側板の一方の上端部に回動可能に支持された支軸と、掘削アームの下端部に回動可能に設けられた伸縮可能な保持アームと、該保持アームの先端部に設けられたクランパと、該クランパに着脱可能に挟持され、且つ、ショベルの両側板の他方の上端部に貫設された被挟持軸とから構成されてなることを特徴とする請求項3又は4に記載の作業用走行車。
【請求項6】
巻掛伝動装置は、昇降用及び掘削用の二つの手動式チェーンブロックと、該両手動式チェーンブロックの近傍に設けられた伝動スプロケットと、該両伝動スプロケットを回転駆動させるドリルと、掘削装置の昇降アームが回動支持される枠体の一方の直立支柱の上端部に設けられたローラとから構成され、しかも、両手動式チェーンブロックは、チェーンブロック本体と、該チェーンブロック本体に回動可能に設けられた原動スプロケット及び従動スプロケットと、原動スプロケット及び伝動スプロケットに捲回された原動チェーンと、従動スプロケットに捲回された従動チェーンとが設けられ、さらに、昇降用手動式チェーンブロックの従動チェーンの一端部が、昇降用手動式チェーンブロックのチェーンブロック本体に連結されると共に、他端部が前記ローラを介して掘削装置の昇降アームの先端部に連結され、加えて、掘削用手動式チェーンブロックの従動チェーンの一端部が、掘削装置の掘削アームの上端部に連結されると共に、他端部がショベルに連結されてなることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の作業用走行車。
【請求項7】
伝動スプロケットは、平行して設けられた二枚の正三角形状のガイド体と、該両ガイド体の間に、その各頂点が両ガイド体の各辺の中央に位置するように配された両ガイド体と同一形状の歯車と、両ガイド体及び歯車の重心位置に貫設された伝動回転軸とから構成され、しかも、両ガイド体の一辺の長さが原動チェーンのリングの長軸と略同一長さであると共に、両ガイド体の間隔が原動チェーンのリングの太さよりも若干大きく、さらに、伝動回転軸がドリルのチャックに着脱されてなることを特徴とする請求項6に記載の作業用走行車。
【請求項8】
昇降用手動式チェーンブロック、及び、掘削用手動式チェーンブロックには、従動チェーンのテンション調整部材が設けられてなることを特徴とする請求項6又は7に記載の作業用走行車。
【請求項9】
荷台は、枠体に着脱可能な底板と、該底板に立設された複数の側板とから構成され、該各側板のうち少なくとも一つが開閉可能に構成されてなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の作業用走行車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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