説明

作業車の照明装置

【課題】作業車の補助ステップの周辺を照らす照明装置の構造を簡素化しつつ、補助ステップの上方及び下方を広く照らすようにした作業車の照明装置を提供する。
【解決手段】走行車体に運転部を備えるとともに、運転部への乗降用の補助ステップ50を設けた作業車において、補助ステップ50の踏み部51に上下に貫通する孔部52を設け、踏み部51の孔部52の最上部分の高さよりも低い位置で、且つ、孔部52に臨む位置に、上方及び下方を照らすライト60を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の作業車において、運転部への乗降用の補助ステップ近くを照らす作業車の照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラクタ等の作業車は、通常、昼間作業に用いられることが多いが、作業が夜間にまで及ぶことも少なくない。こうしたことを考慮して、作業車には、ヘッドライトの他に、運転部への乗降用の補助ステップ近くを照らす照明装置を備えるものが存在する。例えば、キャビンタイプの作業車において、キャビンのフレームに運転席の側方の前後輪間の路面を照らすサイドライトを設けたもの(特許文献1参照)や、補助ステップの上部であって、運転席のフロアの前下部にライトを設けたもの(特許文献2参照)等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−338566号公報
【特許文献2】特開2002−347437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業車のサイドライトはキャビンのフレームに設けられており、運転席の側方全体を照射できる。しかし、サイドライトと照射対象である補助ステップとはかなり離れているので、それだけ照度の高いライトが必要となるとともに、サイドライトも大型になる。また、特許文献2の作業車では、補助ステップに近い位置にライトが設けられているものの、補助ステップの上方から照らすので、補助ステップの下方に補助ステップ自体の影ができてしまい、その部分がどうしても暗くなっていた。
本発明は、作業車の補助ステップの周辺を照らす照明装置の構造を簡素化しつつ、補助ステップの上方及び下方を広く照らすようにした作業車の照明装置を提供することを目的とある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[I]
本発明の第1の特徴は、作業車の照明装置を次のように構成することにある。
走行車体に運転部を備えるとともに、前記運転部への乗降用の補助ステップを設けた作業車において、前記補助ステップの踏み部に上下に貫通する孔部を設け、前記踏み部の孔部の最上部分の高さよりも低い位置で、且つ、前記孔部に臨む位置に、上方及び下方を照らすライトを備えてある。
【0006】
(作用)
補助ステップの踏み部に上方及び下方を照らすライトを備えたので、このライトによって、補助ステップの上方及び下方が照らされることとなり、作業車の夜間の作業の際にも、作業者が作業車に対して容易に乗降を行うことができる。また、ライトが補助ステップ自体に備えられてあるので、照度の低い小型のライトでも十分に補助ステップの踏み部の上方及び下方を照らすことができる。さらに、ライトが補助ステップに設けた孔部の最上部分の高さより低い位置に備えられているので、補助ステップの踏み部を踏み付ける作業者の足がライトに触れることがない。
【0007】
(効果)
作業車の夜間等の作業時において、作業者の作業車への乗降を容易に行うことができ、乗降性を向上させることができた。また、補助ステップの上下を照らす照明装置の簡素化を図ることができ、照明装置の上面が補助ステップの踏み部によって保護される。
【0008】
[II]
本発明の第2の特徴は、作業車の照明装置を次のように構成することにある。
走行車体に運転部を備えるとともに、前記運転部への乗降用の補助ステップを設けた作業車において、前記補助ステップの踏み部に上下に貫通する孔部を設け、前記踏み部の孔部の最上部分の高さと前記踏み部の最下部分の高さとの間で、且つ、前記孔部に臨む位置に、上方及び下方を照らすライトを備えてある。
【0009】
(作用)
補助ステップの踏み部に上方及び下方を照らすライトを備えたので、このライトによって、補助ステップの上方及び下方が照らされることとなり、作業車の夜間の作業の際にも、作業者が作業車に対して容易に乗降を行うことができる。また、ライトが補助ステップ自体に備えられてあるので、照度の低い小型のライトでも十分に補助ステップの踏み部の上方及び下方を照らすことができる。さらに、ライトが補助ステップに設けた孔部の最上部分の高さより低い位置に備えられているので、補助ステップの踏み部を踏み付ける作業者の足がライトに触れることがない。
さらに、ライトが補助ステップの踏み部の最上部分と最下部分との間に収納されて備えられ、ライトが補助ステップの踏み部の最下部分から下方に出ない。したがって、ライトが補助ステップによって保護されて、ライトと外部の障害物との接触が避けられる。
【0010】
(効果)
作業車の夜間等の作業時において、作業者の作業車への乗降を容易に行うことができ、乗降性を向上させることができた。また、補助ステップの上下を照らす照明装置の簡素化を図ることができ、ライトの上面が補助ステップの踏み部によって保護される。さらに、補助ステップの踏み部にライトがコンパクトに収納されることとなり、補助ステップの外観をほとんど変えることがなく、補助ステップに備えられたライトの破損等も未然に防ぐことができる。
【0011】
[III]
本発明の第3の特徴は、本発明の第1又は第2特徴の作業車の照明装置において、次のように構成することにある。
前記ライトを、前記踏み部の長手方向中央部から長手方向の一方に偏位して配置してある。
【0012】
(作用)
作業者の足は通常、補助ステップの踏み部の中央部を踏み付ける。このとき、ライトが補助ステップの長手方向中央部に配置されていると、作業者の足がライトの上部に位置してライトによる上方への照射を遮ることや、靴底に付着した泥等がライトの上部を覆ってしまうことがある。そうなると、ライトが補助ステップの踏み部の上方を照らすことができない。こうしたことに備えて、前記ライトを、前記踏み部の長手方向中央部から長手方向の一方に偏位して配置しておくと、作業者の足がライトの上方に位置する回数が減って、前述の不具合の発生を少なくすることができる。
【0013】
(効果)
補助ステップに備えられたライトの照射の妨げを未然に防ぎ、補助ステップの上方を確実に照らすことができる。また、補助ステップに備えられている照明装置の故障の発生を抑えることができる。
【0014】
[IV]
本発明の第4の特徴は、本発明の第1〜第3特徴のいずれかの作業車の照明装置において、次のように構成することにある。
前記補助ステップの上面に、外縁が上向きに曲げられて設けられる滑り止め用孔部を前記孔部とし、前記滑り止め用孔部の外縁の上端を前記孔部の最上部分とした。
【0015】
(作用)
補助ステップに備えられたライトの光が踏み部の滑り止め用孔部を通過して、補助ステップの上方を照らすこととなる。滑り止め用孔部は補助ステップでは既存の構成であり、これをライト用の孔部として有効に利用できる。
【0016】
(効果)
滑り止め用孔部をライト用の孔部として利用することができるので、補助ステップの踏み部にライト用専用の孔部を設ける必要がない。補助ステップの踏み部の下方であって、滑り止め用孔部を臨む位置にライトを取り付けるだけで、簡易に補助ステップの上下を照らす照明装置を構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トラクタの全体側面図
【図2】実施形態1における補助ステップ付近の斜視図
【図3】図2のIII−III断面図
【図4】実施形態2における補助ステップ付近の斜視図
【図5】図4のV−V断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施形態1]
[トラクタの全体構成]
図1に基づいて作業車の一例であるトラクタの全体構成について説明する。図1は、トラクタの全体側面図を示す。図1に示すように、このトラクタは、左右一対の操向操作及び駆動自在な前輪1と、左右一対の駆動自在な後輪2とを走行車体3に備えた四輪駆動仕様に構成されている。走行車体3の前部に、エンジン4等が内装されたボンネット部5を備え、走行車体3の後部に、ステアリングハンドル6、運転座席7等が装備されたキャビン8(運転部に相当)を備える。
【0019】
エンジン4の下部から前方に前部フレーム10が延出されており、この前部フレーム10に前輪1を装着する前車軸ケース等(図示せず)が支持されている。エンジン4から後方にクラッチハウジング11が延出されており、このクラッチハウジング11に運転座席7の下方に位置するミッションケース12及び後車軸ケース44が連結されて、エンジン4からの動力が後輪2に伝達されるように構成されている。
【0020】
ミッションケース12の後部に、左右一対のリフトアーム13及び動力取り出し軸14を備えている。リンク機構(図示せず)によりロータリー耕耘装置等(図示せず)をミッションケース12に昇降操作自在に連結し、リフトアーム13とリンク機構を接続して、動力取り出し軸14にロータリー耕耘装置等を連動連結することで、ロータリー耕耘装置等の昇降操作及び駆動ができるように構成されている。
【0021】
キャビン8は、枠状のキャビンフレーム20と、キャビンフレーム20の前面を覆うフロントガラス16と、キャビンフレーム20の両側面の乗降口に設けられた揺動開閉可能な一枚板のガラスで構成された左右のドア17と、キャビンフレーム20の後面を覆うリアガラス18と、合成樹脂製のルーフ19とを備えて構成されている。なお、左右のドア17は、上下及び左右中央部が機体外側に湾曲した球状の曲面ガラスで構成されている。
【0022】
キャビンフレーム20は、キャビンフレーム20のベースとなる下部フレーム21と、左右の後輪フェンダ30と、左右の後輪フェンダ30の間に位置する運転座席支持部材29と、キャビン8の床面となるデッキ板28と、左右の前縦フレーム31と、左右の後縦フレーム36とを備えて、4柱式に構成されている。
【0023】
下部フレーム21の後部は、上方へ屈曲した形状に成形されており、下部フレーム21の後端部の斜め後方上方に傾斜した部分に、キャビンフレーム20の後部を後車軸ケース44側に支持する角パイプ材により成形された左右の支持フレーム26が固着されており、左右の支持フレーム26の下端部に横平板状の支持ブラケット27が固着されている。
【0024】
下部フレーム21の前部上面側には、横平板状のデッキ板28が固着されており、下部フレーム21の後部には、運転座席支持部材29が固定されている。運転座席支持部材29は、平板を下部フレーム21の後部の形状に合わせた屈曲した形状に成形されており、この運転座席支持部材29におけるデッキ板28の面より1段高い位置に位置する面に、運転座席7が配設される。
【0025】
運転座席支持部材29の左右両側部は、左右の後輪フェンダ30が固着されている。左右の後輪フェンダ30は、平板をプレス成形することによって構成されており、その前部内側の縁部がデッキ板28に固着され、その後部内側の縁部が運転座席支持部材29に固定されている。
【0026】
左右の後輪フェンダ30の後端部には、左右の後縦フレーム36の下端部が固着されて、この左右の後縦フレーム36が上方に延出されている。左右の後縦フレーム36の側面視での形状は、その上端部が下端部より少し前方に傾斜するように所定の曲率で湾曲した形状に成形されており、左右の後縦フレーム36の正面視での形状は、その上端部が下端部より少し内側に傾斜するように、上述した前縦フレーム31と略同じ所定の曲率で湾曲した形状に成形されている。
【0027】
デッキ板28前部の左右両側部における下面側には、左右の支持ブラケット(図示せず)が固定されており、クラッチハウジング11から左右両側方にキャビンブラケット42が延出されている。キャビンブラケット42に防振ゴム43を介して支持ブラケットを連結することで、キャビンフレーム20前部の左右両側部がクラッチハウジング11に防振ゴム43を介して支持されている。
【0028】
後車軸ケース44から左右の後部キャビンブラケット45が延出されており、この後部キャビンブラケット45に防振ゴム46を介して支持フレーム26下部の支持ブラケット27を連結することで、キャビンフレーム20後部の左右両側部が後車軸ケース44に防振ゴム46を介して支持されている。
【0029】
[補助ステップの構造]
図1に示すように、キャビン8内のデッキ板28における右及び左前下部にトラクタの乗降用の補助ステップ50が備えられている。補助ステップ50は、図2に示すように略矩形の板状部材を側面視略「コ」の字状に曲げ加工して一体的に形成されたものであり、キャビン8への乗降時に足を掛ける踏み部51と、踏み部51の両端側に連続する支持アーム50A,50Bとを有する。支持アーム50A,50Bは、その上端がキャビン8の下部フレーム21に固着されており、下部フレーム21の外側方下方に向けて斜めに延出されている。踏み部51は略矩形の平板状であって、支持アーム50A,50Bの下端から前後方向に連続する。すなわち、補助ステップ50は、前面視においてキャビン8の下部から外側方下方に向けて斜めに延出する縦長の略平行四辺形状に構成されている。
【0030】
図2及び図3に示すように、補助ステップ50の踏み部51には、上下に貫通する孔部52が設けられており、孔部52に上方及び下方を照らす照明装置(ライト60)が埋設されている。照明装置は、リング状のケース61内にライト60が配置されて、ケース61の上下が十分な強度を備えた透明カバー62で覆われて構成されており、ライト60の光を透過しつつ、ライト60が設けられているケース61内への塵や水等の侵入を防止している。透明カバー62をレンズカットにすることで、ライト60の照射方向や照射範囲を調節することができ、デザイン性を向上させることもできる。この場合、照明装置(ライト60)の上側及び下側の透明カバー62が、踏み部51の孔部52の最上部分52A及び踏み部51の最下部分52Bと略同じ高さに位置している。
【0031】
図2に示すように、踏み部51の長手方向中央部のやや外側方寄りに照明装置(ライト60)が配置されており、この照明装置(ライト60)により踏み部51の中央付近から上下が照らされて、夜間作業時の作業者のキャビン8への乗降を容易にする。照明装置(ライト60)の配置はこれに限定されることなく、踏み部51の長手方向中央部から長手方向の一方に偏位して配置してもよい。よって、照明装置(ライト60)を、踏み部51のアーム50A寄りの位置や、踏み部51のアーム50B寄りの位置や、アーム50A寄り及びアーム50B寄りの位置の両方に配置してもよい。また、照明装置(ライト60)を、踏み部51の長手方向の中央部、アーム50A寄り及びアーム50B寄りの位置の全てに配置するようにしてもよい。
【0032】
ライト60は踏み部51の孔部52の最上部分52Aの高さより低い位置に備えられていればよく、ライト60が踏み部51の最下部分52Bから下方に位置してもよい。しかし、図3に示すように、ライト60が踏み部51の孔部52の最上部分52Aの高さと踏み部51の最下部分52Bの高さとの間の高さであって、孔部52に臨む位置に配置されている方が好ましい。このように配置されていると、ライト60の下部は、補助ステップ50の踏み部51の孔部52の最下部分52Bよりも下に位置することがなく、ライト60と外部の障害物との接触を未然に防ぐことができる。
【0033】
ライト60は、補助ステップ50の踏み部51から直接上方及び下方を照らすので、照度が低いものであってもよい。したがって、ライト60として、通常の電球の他、LED等を用いることもできる。
【0034】
[ライトの点灯消灯動作]
本実施例のように、キャビン8を備えた作業車の場合、キャビン8のドア17の開閉に連動して、ライト60が点灯または消灯するように構成してもよい。すなわち、通常は左右の補助ステップ50のライト60は消灯しており、キャビン8の左右いずれかのドア17が開くと、開いたドア側の補助ステップ50のランプ60が点灯する。当該ドア17を閉じると、補助ステップ50のランプ60が消灯する。また、ドア17が開いた際にランプ60が点灯し、ライト60の点灯から一定時間経過後に自動的にランプ60が消灯するように構成してもよい。その他、ランプ60の起動スイッチを例えば運転席7近くに設けて、この起動スイッチがオフの時はドア17の開き操作に関係なくランプ60の消灯を維持するように構成してもよい。
【0035】
[実施形態2]
図4及び図5に示すように、補助ステップ50の踏み部51に滑り止め53が複数設けられている場合の実施形態について以下説明する。尚、補助ステップ50以外の構成は、実施形態1と同様である。
【0036】
補助ステップ50は、図4に示すように略矩形の板状部材を側面視略「コ」の字状に曲げ加工して一体的に形成されたものであり、キャビン8への乗降時に足を掛ける踏み部51と、踏み部51の両端側に連続する支持アーム50A,50Bとを有する。踏み部51は、その外縁を下向きに折り曲げた折り曲げ部55を備え、折り曲げ部55が踏み部51の側面を構成している。支持アーム50A,50Bは、その上端がキャビン8の下部フレーム21に固着されており、下部フレーム21の外側方下方に向けて斜めに延出されている。踏み部51は略矩形の平板状であって、支持アーム50A,50Bの下端から前後方向に連続する。すなわち、補助ステップ50は、前面視においてキャビン8の下部から外側方下方に向けて斜めに延出する縦長の略平行四辺形状に構成されている。
【0037】
滑り止め53は、踏み部51に上下方向に貫通する孔部54を複数設け、この孔部54の外縁54aを上向きに曲げることで構成されている。複数設けられている滑り止め用の孔部54のうち、長手方向の両端部の孔部54に照明装置(ライト60)を夫々配置する。前後の照明装置(ライト60)は、孔部54の外縁54aの上端54Aより低い位置で、且つ、孔部54に臨む位置に配置されている。この場合、孔部54の外縁54aの上端54Aが踏み部51の最上部分となる。照明装置は、リング状のケース61内にライト60が配置されて、ケース61の上部及び下部が十分な強度を備えた透明カバー62で覆われている。
【0038】
ライト60の光は、滑り止め53用の孔部54を通過して踏み部の51の上方を照らすとともに、補助ステップ50の下方を照らす。このように、滑り止め53用の孔部54を照明装置(ライト60)用の孔部として兼用することができる。この場合、照明装置(ライト60)の上側の透明カバー62が、孔部54の上端54Aよりも低い位置に位置し、照明装置(ライト60)の下側の透明カバー62が、折り曲げ部55の下端、つまり踏み部51の最下部分54よりも高い位置に位置している。
【0039】
照明装置(ライト60)の下部は、踏み部51の最下部分54Bよりも下に位置してもよい。しかし、図5に示すように、照明装置(ライト60)が補助ステップの踏み部51の孔部54の最上部分54Aの高さと踏み部51の最下部分54Bの高さとの間であって、孔部54に臨む位置に配置されている方が好ましい。このように配置されると、照明装置(ライト60)の下部は、踏み部51の最下部分54Bよりも下に位置することがない。その結果、照明装置(ライト60)は折り曲げ部55を含む踏み部51によって保護されて、照明装置(ライト60)と外部の障害物との接触を未然に防ぐことができる。
【0040】
照明装置(ライト60)を踏み部51の長手方向中央部に配置すると、乗降時の作業者の足が照明装置(ライト60)の上部を踏み付けることとなり、照明装置(ライト60)の上部に作業者の靴底の泥が付着したり、照明装置(ライト60)の上方への光が遮られたりする。そこで、図4に示すように、照明装置(ライト60)は踏み部51の長手方向中央部から長手方向の一方に偏位して配置する方が好ましい。照明装置(ライト60)を踏み部51の長手方向中央部から長手方向の一方に偏位して配置すると、作業者の足が照明装置(ライト60)の上面を踏み付けることが少なくなり、前述のような不具合の発生を少なくすることができる。
【0041】
[別実施形態]
(1)上記の実施形態はいずれもキャビン8を備える作業車の補助ステップに照明装置を配置する構成であるが、本発明に係る作業車の照明装置は、キャビン8を備える作業車に限定されず、運転部がキャビンを備えない作業車の補助ステップに配置してもよい。
【0042】
(2)上記の実施形態2では、踏み部51の長手方向中央部から長手方向の一方に偏位した位置である、長手方向の両端部の滑り止め用孔54に照明装置(ライト60)を配置したが、踏み部51の長手方向の端部の一方の滑り止め用孔54のみに照明装置(ライト60)を配置してもよいし、踏み部51の長手方向中央部の滑り止め用孔54のみに照明装置(ライト60)を配置してもよい。また、照明装置(ライト60)を、踏み部51の長手方向中央部及び両端部の滑り止め用孔54の全てに配置してもよい。
【0043】
(3)上記の実施形態では、補助ステップ50の踏み部51に照明装置(ライト60)を設けた例を示したが、補助ステップ50の踏み部51以外の部分である、支持アーム50A,50Bにその厚み方向に貫通する孔部52を設け、照明装置(ライト60)をこの孔部52に配置して構成してもよい。この場合、照明装置(ライト60)は踏み部51から離間し、作業者の足が照明装置(ライト60)に接触する可能性は低いので、照明装置(ライト60)が支持アーム50A、50Bから多少突出していてもよい。孔部52を縦長にして照明装置(ライト60)を構成すると、補助ステップ50の周囲を照明装置(ライト60)がより広く照らすこととなる。
【0044】
さらに、この場合、側面視「コ」の字状の補助ステップ50に代えて、側面視において支持アーム50Aと支持アーム50Bとの間隔が踏み部51の位置から上方に向けて広くなるように支持アーム50A,50Bを斜めにして構成すると、補助ステップ50の上下が照明装置(ライト60)によって照射され易くなる。補助ステップ50の支持アーム50A、50Bに照明装置(ライト60)が配置されると、作業者の足で照明装置(ライト60)が覆われることもなく、照明装置(ライト60)で補助ステップ50の周囲を確実に照らすことができる。照明装置(ライト60)は、支持アーム50Bのいずれか一方に配置してもよいし、支持アーム50A及び支持アーム50Bの両方に配置してもよい。また、踏み部51と支持アーム50A,50Bの両方に照明装置(ライト60)を配置してもよい。
【0045】
(4)前述の実施形態において、補助ステップ50は、踏み部51と、踏み部51の前後端と運転部下部とを連結する支持体である支持アーム50A,50Bとを有し、側面視において「コ」の字状、前面視において外側方下方斜めに延出する縦長の略平行四辺形状に構成されている。しかし、補助ステップ50の構成はこれに限定されず、例えば、補助ステップ50が踏み部51と、踏み部51の運転部側の端部に一端が連結され、他端が運転部下部に固着される支持体を有し、前面視において略「L」字状等に構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上記実施形態では、本発明を作業車の一例であるトラクタに適用したが、本発明はトラクタ以外の農業機械や建設機械等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
3 走行車体
8 キャビン(運転部)
17 ドア
20 キャビンフレーム
28 デッキ板
30 後輪フェンダ
50 補助ステップ
50A,50B 支持アーム
51 踏み部
52 孔部
52A,54A 最上部分
52B,54B 最下部分
53 滑り止め
54 孔部
54a 外縁
60 ライト
62 透明カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体に運転部を備えるとともに、前記運転部への乗降用の補助ステップを設けた作業車において、前記補助ステップの踏み部に上下に貫通する孔部を設け、前記踏み部の孔部の最上部分の高さよりも低い位置で、且つ、前記孔部に臨む位置に、上方及び下方を照らすライトを備えた作業車の照明装置。
【請求項2】
走行車体に運転部を備えるとともに、前記運転部への乗降用の補助ステップを設けた作業車において、前記補助ステップの踏み部に上下に貫通する孔部を設け、前記踏み部の孔部の最上部分の高さと前記踏み部の最下部分の高さとの間で、且つ、前記孔部に臨む位置に、上方及び下方を照らすライトを備えた作業車の照明装置。
【請求項3】
前記ライトを、前記踏み部の長手方向中央部から長手方向の一方に偏位して配置してある請求項1又は2に記載の作業車の照明装置。
【請求項4】
前記補助ステップの上面に、外縁が上向きに曲げられて設けられる滑り止め用孔部を前記孔部とし、前記滑り止め用孔部の外縁の上端を前記孔部の最上部分とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業車の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−31712(P2011−31712A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179193(P2009−179193)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】