説明

作業車両のステアリングおよび作業機の制御装置

【課題】 ステアリング制御系の応答性を向上させるとともにエネルギーロスを少なくする。しかもステアリング機構と作業機を駆動する駆動源を、共通の油圧ポンプとして、油圧ポンプの搭載スペースがかさまないようにする。またシンプルな回路構成で低コスト化を図る。
【解決手段】 分流回路30(31〜40)は、プライオリティ弁6から分流された圧油を、作業機用制御弁20を通過させて、タンク9に排出させる回路である。分流回路30には、出口側がタンク9に連通された絞り36が設けられている。分流回路30には、絞り36と並列に配置された弁であって、作業機操作信号が入力されることにより、当該弁の通路を開放するように動作するバイパス手段140が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラック等の作業車両に関し、特に車両のステアリングおよび作業機を制御する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダンプトラックには、ステアリング機構が搭載されている。ステアリングハンドルの操作に応じて車両のステアリング機構が駆動制御され、車両の走行方向が変化される。
【0003】
また、ダンプトラックには、ホイスト機構が搭載されている。作業機操作レバーの操作に応じてホイスト機構が駆動制御されダンプボディ(ベッセル)の前部が上昇して、ダンプボディ内の荷が車両の後方にすべり落とされる。
【0004】
ステアリング機構およびホイスト機構は、ともにダンプトラックに搭載された油圧ポンプを駆動源として駆動制御される。すなわち、油圧ポンプから吐出された圧油がステアリング用制御弁を介してステアリング用油圧シリンダに供給され、これによりステアリング用油圧シリンダが作動され、これによりステアリング用油圧シリンダに連結されたステアリング機構が駆動されることにより、車両の走行方向が変化される。また、油圧ポンプから吐出された圧油がホイスト用制御弁を介してホイスト用油圧シリンダに供給され、これによりホイスト用油圧シリンダが作動され、これによりホイスト用油圧シリンダに連結されたホイスト機構が駆動されることにより、ダンプボディの前部が上昇する。
【0005】
こうした2種類の異なるステアリング機構および作業機(ホイスト機構)を駆動制御しようとするときに、油圧ポンプを各機構それぞれに設け各機構を独立して駆動制御するという考え方と、両機構で共通の油圧ポンプを設け必要に応じて油圧ポンプの吐出流量を配分するという考え方とがある。
【0006】
(従来技術1)
特許文献1には、主としてホイールローダを対象として、油圧ポンプをステアリング機構、作業機それぞれに設けステアリング機構、作業機(ブーム、バケット)を独立して駆動制御するという技術思想が開示されている。
【0007】
ステアリング機構を駆動制御するための油圧回路には、ステアリングの応答性を向上させるための制御装置が組み込まれている。すなわち、可変容量型の油圧ポンプの吐出油路には、フローコントロール弁とステアリング用制御弁とが設けられている。
【0008】
油圧ポンプの容量は、フローコントロール弁を介してタンクへ排出される通路の絞りの前後差圧が一定となるように、すなわちこの絞りの通過流量が常時一定になるように調整される。一方で、フローコントロール弁は、ステアリング用制御弁の前後差圧が一定に保持されるように動作して、ステアリング操作時は、ステアリング側へ必要流量を供給する。これにより油圧ポンプからステアリング用油圧シリンダに必要な流量に加えてこの絞り通過分の余剰流量が供給される。ステアリング操作が通常の操作速度の範囲内では、ステアリング用制御弁の前後差圧はほぼ一定に保持されており、フローコントロール弁を介して常時、必要最小限の流量の圧油が余剰流量として絞りを介してタンクに排出されている。ステアリングハンドルが急操作されるなどしてステアリング用制御弁の前後差圧が急激に小さくなると、フローコントロール弁は、ステアリング用制御弁の前後差圧を一定に保持すべく、タンクに排出されていた余剰分の流量の圧油をステアリング用油圧シリンダ側に供給されるように動作する。
【0009】
このように特許文献1に記載された発明は、ステアリングの急操作に対する応答が非常に高いという効果がある。油圧ポンプから吐出される圧油の流量は、ステアリングの急操作時の応答性を加味した必要最小限の流量である。直進走行時などステアリングが操作されていない中立状態のときでも、油圧ポンプから吐出される圧油の流量は、タンクに排出される必要最小限の余剰流量だけである。このため良好な応答性を保ちつつ油圧ロスが最小限に抑制されるという効果がある。
【0010】
(従来技術2)
特許文献2には、主としてフォークリフトを対象として、ステアリング機構、作業機(リフト機構、チルト機構)の両機構で共通の油圧ポンプを設け必要に応じて油圧ポンプの吐出流量を配分するという技術思想が開示されている。
【0011】
この特許文献2においても、ステアリング急操作時の応答性を確保するための制御装置が油圧回路に組み込まれている。すなわち、可変容量型の油圧ポンプの吐出油路には、油圧ポンプの吐出圧油をステアリング回路と、作業機用制御弁に分流する分流弁が設けられている。作業機が操作されていないときは、可変容量型の油圧ポンプの容量は、常時、ステアリングハンドルを所望最大速度で回転させるために必要な流量が吐出されるように調整される。分流弁は、ステアリング操作に必要な流量をステアリング回路に供給し、残りの流量を作業機用操作弁のセンターバイパス回路を介してタンクに排出される。作業機が操作されると、可変容量型の油圧ポンプの容量は、最大容量に調整される。
【特許文献1】特開2005−170178号公報
【特許文献2】特開平3−86684号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述の特許文献1記載の発明は、ステアリングの急操作に対する応答が非常に高いという効果があり、かつ油圧ロスが最小限に抑制されるという効果がある。しかし、油圧ポンプが2つ必要であることから、搭載スペースがかさむという問題がある。
【0013】
これに対して、上述の特許文献2記載の発明は、油圧ポンプを1つ設けるだけでよく搭載スペースをとらないという利点がある。しかし、直進走行時などステアリングハンドルが中立位置にあるときでも、油圧ポンプから、ステアリングハンドルを所望の最大速度で回転させるために必要な流量が吐出されており、特に積荷が重くかつゆっくりすえ切りする等のハンドル低速かつ高負荷では油圧ロスが甚大であるという問題がある。
【0014】
一方で、ダンプトラックの場合には、特許文献1や特許文献2で想定しているホイールローダやフォークリフトの作業機と異なり、ステアリング操作に比して作業機(ホイスト機構)が操作される頻度は低い。しかも作業機の操作には微操作などの細かな制御は不要であり、むしろ作業効率を高めるために作業機(ホイスト機構)は最大の速度で作動させることが望ましい。このため作業機(ホイスト機構)を駆動制御する油圧回路を構築するにあたって、費用対効果の点で制御が複雑となり高コストとなる回路は不要であり、シンプルで低コストな回路が望ましい。
本発明は、従来技術1のステアリング制御系の応答性がよくエネルギーロスが少ないという利点を取り入れ、しかも従来技術2の油圧ポンプが1つで搭載スペースをとらないという利点を取り入れつつ、さらにシンプルな回路構成で低コスト化を図ることを解決課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1発明は、
ステアリング機構を作動させるためのステアリング操作信号に応じてステアリング機構を駆動制御するとともに、作業機を作動させるための作業機操作信号に応じて作業機を駆動制御する油圧回路が備えられた作業車両のステアリングおよび作業機の制御装置であって、
圧油を吐出する可変容量型油圧ポンプと、
ステアリング機構を作動させるステアリング用油圧アクチュエータと、
作業機を作動させる作業機用油圧アクチュエータと、
ステアリング操作信号に応じた流量の圧油が前記ステアリング用油圧アクチュエータに供給されるように動作するステアリング用制御弁と、
作業機操作信号に応じた流量の圧油が前記作業機用油圧アクチュエータに供給されるように動作する作業機用制御弁と、
前記可変容量型油圧ポンプと前記ステアリング用制御弁との間に設けられ、前記ステアリング用制御弁の前後差圧が設定値になるように前記可変容量型油圧ポンプの吐出圧油を前記ステアリング用制御弁に供給するとともに、前記作業機用制御弁側に分流するプライオリティ弁と、
前記プライオリティ弁から分流された圧油を、前記作業機用制御弁を通過させて、タンクに排出させる分流回路と、
前記分流回路に設けられ、出口側がタンクに連通された絞りと、
前記絞りの前後差圧が設定値になるように前記可変容量型油圧ポンプの容量を制御する容量制御手段と、
前記分流油路にあって、前記絞りと並列に配置された弁であって、作業機操作信号が入力されることにより、当該弁の通路を開放するように動作するバイパス手段と
を備えたことを特徴とする。
【0016】
第2発明は、第1発明において、
前記バイパス手段は、切換弁であること
を特徴とする。
【0017】
第3発明は、第1発明において、
前記バイパス手段は、
前記絞りと並列に配置され、リリーフ圧が変更可能なリリーフ弁と、
作業機操作信号が入力されることにより前記リリーフ弁のリリーフ圧を低い側に変更するように動作する制御弁と
を備えたこと特徴とする。
【0018】
第4発明は、第1発明において、
前記作業機用制御弁は、オープンセンタ方式のバルブであること
を特徴とする。
【0019】
第5発明は、第1発明ないし第4発明において、作業車両は、ダンプトラックであって、前記作業機は、ボディをダンプ作動させるホイスト機構であること
を特徴とする。
【0020】
図1に示すように、本発明の装置は、ステアリング機構を作動させるためのステアリング操作信号に応じてステアリング機構を駆動制御するとともに、作業機を作動させるための作業機操作信号に応じて作業機100を駆動制御する油圧回路が備えられた作業車両のステアリングおよび作業機の制御装置である。
【0021】
圧油を吐出する可変容量型油圧ポンプ2と、ステアリング機構を作動させるステアリング用油圧アクチュエータ5と、作業機を作動させる作業機用油圧アクチュエータ21と、ステアリング操作信号に応じた流量の圧油が前記ステアリング用油圧アクチュエータ5に供給されるように動作するステアリング用制御弁4と、作業機操作信号に応じた流量の圧油が作業機用油圧アクチュエータ21に供給されるように動作する作業機用制御弁20とが設けられている。
【0022】
可変容量型油圧ポンプ2とステアリング用制御弁4との間には、ステアリング用制御弁4の前後差圧Pp´−PLが設定値になるように可変容量型油圧ポンプ2の吐出圧油をステアリング用流量制御弁4に供給するとともに、作業機用制御弁20側に分流するプライオリティ弁6が設けられている。
【0023】
分流回路30(31〜40)は、プライオリティ弁6から分流された圧油を、作業機用制御弁20を通過させて、タンク9に排出させる回路である。
【0024】
分流回路30には、出口側がタンク9に連通された絞り36が設けられている。
【0025】
容量制御手段10は、絞り36の前後差圧PR−PTが設定値ΔPになるように可変容量型油圧ポンプ2の容量を制御する。
【0026】
分流回路30には、絞り36と並列に配置された弁であって、作業機操作信号が入力されることにより、当該弁の通路を開放するように動作するバイパス手段140が設けられている。
【0027】
以上のように構成された本発明はつぎのように動作する。
【0028】
(ステアリング操作信号、作業機操作信号が出力されておらずステアリング用制御弁14および作業機用制御弁20がともに中立位置にあるとき)
ステアリング操作信号が出力されていないときには、ステアリング用制御弁4は中立位置4cに位置されており、負荷検出ポート4fではタンク圧とほぼ同圧が検出されている。このため、ステアリング用制御弁4の前後差圧(Pp′−PL)がほぼPp′となり、ステアリング側に油がいかないようにプライオリティ弁6は弁位置6aに調整される。
【0029】
プライオリティ弁6から分流された圧油は、分流回路30に分流される。分流された圧油は作業機用操作弁20を通過して絞り36およびバイパス手段140に導かれる。
【0030】
ここで作業機操作信号がバイパス手段140に入力されていないためバイパス手段140は開放していない。
【0031】
このため、分流回路30に分流された圧油は、バイパス手段140に並列に配置された絞り36を介してタンク9に排出される。
【0032】
容量制御手段10は、絞り36の前後差圧(PR−PT)が設定値ΔPに一致するように油圧ポンプ2の斜板2aを調整する。このため、分流回路30には、エンジン1の回転数や負荷に左右されずに、設定値ΔPに対応する一定の余裕分の流量αが流れることになる。
【0033】
一方で、上述のようにステアリング用制御弁4には、ステアリング用油圧アクチュエータ5の最低負荷圧PLに見合った最低流量が供給されている。
【0034】
このためダンプトラックが直進走行しているときなどには、必要最小限の流量しか油圧ポンプ2から吐出されないこととなり、エネルギーロスの低減およびエンジンの燃費の低減が図られることになる。
【0035】
(ステアリング操作信号が出力され、作業機操作信号が出力されておらず、ステアリング用制御弁14が中立位置から動き、作業機用制御弁20が中立位置にあるとき)
ステアリング操作信号が出力されており、操作が通常の操作速度であれば、プライオリティ弁6で、ステアリング用制御弁4の前後差圧(Pp′−PL)は設定圧にほぼ一致するように保持されており、ステアリング用制御弁4の開口面積に見合った必要な流量がステアリング用油圧アクチュエータ5に供給されている。
【0036】
プライオリティ弁6から分流された圧油は、分流回路30に分流される。分流された圧油は作業機用操作弁20を通過して絞り36およびバイパス手段140に導かれる。
【0037】
ここで作業機操作信号がバイパス手段140に入力されていないためバイパス手段140は開放していない。
【0038】
このため、分流回路30に分流された圧油は、バイパス手段140に並列に配置された絞り36を介してタンク9に排出される。
【0039】
容量制御手段10は、絞り36の前後差圧(PR−PT)が設定値ΔPに一致するように油圧ポンプ2の斜板2aを調整して、絞り36を通過する流量を余裕分の一定の流量αとなる。
【0040】
ここでステアリングハンドル14が急操作されるなどすると、ステアリング用制御弁4の開口面積が急増しステアリング用制御弁4の前後差圧(Pp′−PL)が急激に小さくなる。ステアリング用制御弁4の前後差圧(Pp′−PL)が急激に小さくなると、プライオリティ弁6は、前後差圧(Pp′−PL)を大きくして設定圧に一致させるべく、ばね6fのばね力によって付勢されて、ステアリング用制御弁4側のみに圧油を供給する弁位置6b側に迅速に移動する。このため分流回路30にそれまで流れていた余裕分の流量αの圧油は、プライオリティ弁6からステアリング用制御弁4を経てステアリング用油圧アクチュエータ5に迅速に供給される。
【0041】
分流回路30へ導かれていた圧油がステアリング用油圧アクチュエータ5側に回された結果、分流回路30を流れる圧油の流量が減少する。このため絞り36の前後差圧(PR−PT)が小さくなる。絞り36の前後差圧(PR−PT)が小さくなると、容量制御弁10は、絞り36の前後差圧(PR−PT)を大きくして設定圧ΔPに一致させるべく、可変容量型油圧ポンプ2の吐出容量が大きくなるように調整する。これにより可変容量型油圧ポンプ2の吐出流量Qが増大し、ステアリングハンドル14の急操作に見合った流量がステアリング用油圧アクチュエータ5に供給される。
【0042】
以上のように、ステアリングハンドル14を通常の速度で操作したときには、絞り36の前後差圧(PR−PT)が設定圧ΔPに一致するように制御されて、分流回路30には、設定圧ΔPに対応する余裕分の流量αが常時流れる。また、ステアリング用制御弁4は、プライオリティ弁6により、前後差圧(Pp′−PL)が一定となるように調整され、ステアリング用油圧シリンダ5の負荷にかかわりなく、ステアリング用流量制御弁4の開口面積に応じた必要流量がステアリング用油圧アクチュエータ5に供給されるように制御される。このためダンプトラックをゆっくりと旋回走行させるときなどには、必要最小限の流量しか油圧ポンプ2から吐出されないこととなり、エネルギーロスの低減およびエンジン1の燃費の低減が図られる。
【0043】
しかもステアリングハンドル14がひとたび急操作されたならば、分流回路30に流れていた余裕分の流量αがステアリング用油圧アクチュエータ5に迅速に供給されてステアリング用油圧アクチュエータ5が迅速に作動するため、ステアリング制御系に応答性が向上する。
【0044】
このように本発明によれば、エネルギーロスの低減およびエンジン1の燃費の低減を図りつつ、ステアリング制御系の応答性を向上させることができる。
【0045】
(ステアリング操作信号が出力されておらず、作業機操作信号が出力され、ステアリング用制御弁14が中立位置にあり、作業機用制御弁20が中立位置から動いたとき)
プライオリティ弁6から分流された圧油は、分流回路30に分流される。分流された圧油は作業機用操作弁20を通過して絞り36およびバイパス手段140に導かれる。
【0046】
ここで作業機操作信号がバイパス手段140に入力されるためバイパス手段140は開放する。このため作業機用制御弁20を通過した圧油のほとんどは、バイパス手段140を経由してタンク9に排出され、絞り36を通過する圧油の流量は最小となる。これにより絞り36の前後差圧(PR−PT)が小さくなる。制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)が小さくなると、容量制御弁10は、制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)を大きくして設定圧ΔPに一致させるべく、可変容量型油圧ポンプ2の吐出容量を最大とし吐出流量Qを最大とする。
【0047】
このため作業機用制御弁20を介して作業機用油圧アクチュエータ21に最大の流量が供給され、作業機を最大の速度で動作させることができ、作業効率が向上する。
【0048】
また、浮きを含め、上げ、下げ操作により作業機を操作する場合、シリンダ21L、21Rからの戻り圧油を含め分流回路30に供給された圧油のほとんどがリリーフ弁37を経由してタンク9に戻ることになり、絞り36を通過することによる圧力損失を最少とすることができる。
【0049】
ここで本発明では、絞り36と並列にバイパス手段140を設けこのバイパス手段140を切り換えることで作業機用油圧アクチュエータ21に最大の流量が供給されるように構成している。このため作業機(ホイスト機構)を駆動制御する油圧回路を、簡素かつ低コストで構築することができる。しかも、ダンプトラックの場合には、ホイールローダやフォークリフトの作業機と異なり、ステアリング操作に比して作業機(ホイスト機構)が操作される頻度は低く、しかも作業機の操作には微操作などの細かな制御は不要であり、むしろ作業効率を高めるために作業機(ホイスト機構)は最大の速度で作動させることが望ましい。このため本発明の油圧回路は、費用対効果の点でも優れている。
(ステアリング操作信号および作業機操作信号が出力され、ステアリング用制御弁14および作業機用制御弁20が中立位置から動いたとき)
作業機操作信号が出力されているため、バイパス手段140は開放され、それにより前述したのと同様に、可変容量型油圧ポンプ2の吐出容量が最大となり吐出流量Qが最大となる。
【0050】
一方で、プライオリティ弁6では、前述したように、ステアリング用油圧アクチュエータ5の負荷にかかわりなく、ステアリング用制御弁4の開口面積に応じた必要な流量がステアリング用油圧アクチュエータ5に供給されるように弁位置を調整している。このため油圧ポンプ2から吐出される最大流量のうち、ステアリング用油圧アクチュエータ5側に優先的に必要な流量が配分され、残りの流量が作業機用油圧アクチュエータ21に配分されることになる。すなわち、プライオリティ弁6から、油圧ポンプ2の最大流量のうちステアリング用油圧アクチュエータ5側に優先的に供給される流量を除いた残りの流量が分流回路30に分流されて作業機用制御弁20を介して作業機用油圧アクチュエータ21に供給される。このため作業機(ホイスト機構)を必要十分な速度で動作させることができる。
【0051】
このように本発明によれば、ステアリング用油圧アクチュエータ5と作業機用油圧アクチュエータ21を同時に作動させるときに油圧ポンプの最大流量を、ステアリング用油圧アクチュエータ5に供給する流量を優先した上で必要十分な量の圧油を作業機用油圧アクチュエータ21側に配分することができる。
【0052】
以上のように、本発明によれば、圧力損失が少なく、ステアリング制御系の応答性がよく、エネルギーロスが少ない。しかもステアリング機構と作業機を駆動する駆動源を、共通の油圧ポンプとすることができ、油圧ポンプが1つで済み搭載スペースをとらない。また本発明によればシンプルな回路構成で低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
以下図面を参照して本発明に係る車両のステアリングおよび作業機の制御装置の実施の形態について説明する。
【0054】
図1は第1実施例のステアリングおよび作業機の駆動制御用油圧回路を示している。図1の油圧回路は、たとえばダンプトラックなどの作業車両に搭載される。
【0055】
ダンプトラックには、ステアリング機構が搭載されている。ステアリングハンドル14の操作に応じて車両のステアリング機構が駆動制御され、車両の走行方向が変化される。ステアリング機構は、左右のステアリング用油圧シリンダ5(5L、5R)の作動によって駆動される。
【0056】
ダンプトラックには、ホイスト機構が搭載されている。作業機操作レバー13の操作に応じてホイスト機構が駆動制御されダンプボディ(ベッセル)100の前部が上昇して、ダンプボディ100内の荷が車両の後方にすべり落とされる。ダンプボディ100は、左右の作業機用油圧シリンダ21(21L、21R)の作動によって駆動される。
【0057】
ステアリング機構およびホイスト機構は、ともにダンプトラックに搭載された油圧ポンプ2を駆動源として駆動制御される。すなわち、油圧ポンプ2から吐出された圧油がステアリング用制御弁4を介してステアリング用油圧シリンダ5(5L、5R)に供給され、これによりステアリング用油圧シリンダ5(5L、5R)が作動され、これによりステアリング用油圧シリンダ5(5L、5R)に連結されたステアリング機構が駆動されることにより、車両の走行方向が変化される。また、油圧ポンプ2から吐出された圧油が作業機(ホイスト)用制御弁20を介してホイスト用油圧シリンダ21(21L、21R)に供給され、これにより作業機(ホイスト)用油圧シリンダ21(21L、21R)が作動され、これにより作業機(ホイスト)用油圧シリンダ21(21L、21R)に連結されたホイスト機構が駆動されることにより、ダンプボディ100の前部が上昇する。
【0058】
このように本実施例では、ステアリング機構と作業機(ホイスト機構)で共通の油圧ポンプ2を設け必要に応じて油圧ポンプ2の吐出流量を配分するようにしている。
【0059】
すなわち、同図1に示すように、油圧ポンプ2は、可変容量型の油圧ポンプであり、エンジン1などの駆動源によって駆動される。可変容量型油圧ポンプ2の吐出口には油路3aが接続している。この油路3aは、プライオリティ弁(フローコントロール弁)6の油圧ポンプ2側からみて上流側の入力ポートに連通している。プライオリティ弁6の油圧ポンプ2側からみて下流側の第1の出口ポート6gは、油路3bに連通し、第2の出口ポート6hは、後述する分流回路30(31〜40)の分流油路31に連通している。油路3bは、ステアリング用制御弁4の油圧ポンプ2側からみて上流側の入力ポートに連通している。また分流油路31はタンク9に連通している。後述するように分流回路30には、制御用の絞り36が設けられている。制御用絞り36は固定絞りで構成されている。
【0060】
プライオリティ弁6は、作業機用制御弁20に優先してステアリング用制御弁4に圧油を供給するとともに、ステアリング用制御弁4に供給される圧油の流量が、負荷によらずに開口面積に応じた大きさになるように制御するために設けられている。プライオリティ弁6は、弁位置6a、6bを有している。弁位置6aは、出口ポート6g、油路3bを介してステアリング用制御弁4に圧油を供給させるとともに出口ポート6h、分流油路31を介してタンク9に圧油を排出させる弁位置である。弁位置6bは、出口ポート6g、油路3bを介してステアリング用制御弁4のみに圧油を供給させる弁位置である。
【0061】
プライオリティ弁6には、設定圧を与えるばね6fが付与されている。
【0062】
ステアリング用制御弁4の下流側の圧つまりステアリング用油圧シリンダ5の負荷圧PLは、ステアリング用制御弁4内の絞り4dの下流側の検出ポート4fの圧として検出することができる。ステアリング用制御弁4の検出ポート4fは、パイロット油路12を介して、プライオリティ弁6のばね6fと同じ側のパイロットポート6eに連通している。
【0063】
ステアリング用制御弁4の上流側の圧つまりプライオリティ弁6の下流側の圧Pp′は油路3b内の圧として検出することができる。油路3bはパイロット油路11を介して、プライオリティ弁6のばね6fとは反対側のパイロットポート6dに連通している。
【0064】
プライオリティ弁6では、パイロット油路11を介して作用するステアリング用流量制御弁4の上流側圧Pp′とパイロット油路12を介して作用するステアリング用流量制御弁4の下流側圧PL(ステアリング用油圧シリンダ5の負荷圧PL)との差圧(Pp′−PL)がばね6fのばね力に応じた設定圧に一致するように、弁位置が調整される。これによりステアリング用油圧シリンダ5の負荷にかかわりなく、ステアリング用流量制御弁4の開口面積に応じた必要流量がステアリング用油圧シリンダ5に供給される。
【0065】
ステアリング用制御弁4は、油圧ポンプ2から吐出された圧油が流入されて、入力回動軸16の入力回動量に応じて、つまりステアリングハンドル14の操作回動量に応じて、開口量が変化し開口量に応じた流量の圧油を出口ポート4g、4hを介してステアリング用油圧シリンダ5L、5Rに供給するように構成されている。
【0066】
本実施例では、ステアリング用制御弁4に加え更にステアリング用油圧モータ15を設け、ステアリング用制御弁4、ステアリング用油圧モータ15を介してステアリング用油圧シリンダ5L、5Rに圧油を供給するように構成している。ステアリング用油圧シリンダ5L、5Rのロッドはステアリング機構に連結されている。ステアリング機構は、図1の図中、ステアリング用油圧シリンダ5L、5Rのロッドが左方向、右方向に移動するにしたがって、車輪の向きがそれぞれ同じ左方向、右方向に変化して、車両(ダンプトラック)が同じ左方向、右方向に旋回するように構成されている。
【0067】
すなわち、ステアリング用制御弁4は、スリーブに対してスプールが相対的に回転移動することで開口量が変化するロータリバルブで構成されている。以下では、ロータリバルブを例にして説明するが、他のタイプの制御弁を適用してもよい。
【0068】
ステアリング用流量制御弁4は、各弁位置4a、4b、4cを有している。弁位置4aは、ステアリング用油圧シリンダ5L、5Rの一方の油室5Lb、5Rtに圧油を供給し他方の油室5Lt、5Rbの圧油をタンク9に排出させる弁位置であり、弁位置4bは、ステアリング用油圧シリンダ5L、5Rの一方の油室5Lt、5Rbに圧油を供給し他方の油室5Lb、5Rtの圧油をタンク9に排出させる弁位置であり、弁位置4cは、ステアリング用油圧シリンダ5への圧油の供給を遮断させる中立の弁位置である。
【0069】
ステアリング用制御弁4の入力回動軸16は、ステアリングハンドル14の回転操作に応じて回動される。ステアリング用制御弁4には、ステアリングハンドル14が左方向、右方向にも回転操作されていないときに、中立位置4cに保持するためのセンタースプリング17が設けられている。
【0070】
ステアリング用制御弁4の一方の出口ポート4gは、ステアリング用油圧モータ15の一方の流入出ポート15Aに連通している。ステアリング用制御弁4の他方の出口ポート4hは、ステアリング用油圧モータ15の他方の流入出ポート15Bに連通している。また、ステアリング用制御弁4のタンクポート4Tは、油路3eを介してタンク9に連通している。
【0071】
ステアリング用油圧モータ15の駆動軸は、その回転動作により、入力回動軸16の回転方向と同じ方向にステアリング用制御弁4を回転移動させることができるように、ステアリング用制御弁4に連結されている。
【0072】
ステアリング用制御弁4の一方の供給・戻りポート4jは、油路3dを介してステアリング用油圧シリンダ5Lのボトム室5Lb及びステアリング用油圧シリンダ5Rのヘッド室5Rtにそれぞれ連通している。また、ステアリング用制御弁4の他方の供給・戻りポート4iは、油路3cを介してステアリング用油圧シリンダ5Lのヘッド室5Lt及びステアリング用油圧シリンダ5Rのボトム室5Rbにそれぞれ連通している。
【0073】
ステアリングハンドル14が左方向に回転操作されると、ステアリング用制御弁4の入力回動軸16が同じ左方向に回動されて、それに応じて、ステアリング用制御弁4は、左旋回位置4aに切り換えられる。このため油圧ポンプ2の吐出圧油は、ステアリング用制御弁4のポンプポート4P、出口ポート4gを介してステアリング用油圧モータ15の流入出ポート15Aに流入される。ステアリング用油圧モータ15は回転作動しステアリング用油圧モータ15の他方の流入出ポート15Bから圧油を流出してステアリング用制御弁4のポート4hに流入される。ステアリング用制御弁4のポート4hに流入された圧油は、供給・戻りポート4jから、油路3dを介してステアリング用油圧シリンダ5Lのボトム室5Lb及びステアリング用油圧シリンダ5Rのヘッド室5Rtにそれぞれ供給される。一方、ステアリング用油圧シリンダ5Lのヘッド室5Lt及びステアリング用油圧シリンダ5Rのボトム室5Rbの圧油は、油路3cを介してステアリング用制御弁4の供給・戻りポート4iに戻され、タンクポート4T、油路3eを介してタンク9に排出される。このためステアリングシリンダ5L、5Rのロッドは図中左方向に移動して、車輪の向きが同左方向に変化しダンプトラックは左旋回する。
【0074】
ステアリングハンドル14が右方向に回転操作されると、ステアリング用制御弁4の入力回動軸16が同じ右方向に回動されて、それに応じて、ステアリング用制御弁4は、右旋回位置4bに切り換えられる。このため油圧ポンプ2の吐出圧油は、ステアリング用制御弁4のポンプポート4P、出口ポート4hを介してステアリング用油圧モータ15の流入出ポート15Bに流入される。ステアリング用油圧モータ15は回転作動しステアリング用油圧モータ15の他方の流入出ポート15Aから圧油を流出してステアリング用制御弁4のポート4gに流入される。ステアリング用制御弁4のポート4gに流入された圧油は、供給・戻りポート4iから、油路3cを介してステアリング用油圧シリンダ5Lのヘッド室5Lt及びステアリング用油圧シリンダ5Rのボトム室5Rbにそれぞれ供給される。一方、ステアリング用油圧シリンダ5Lのボトム室5Lb及びステアリング用油圧シリンダ5Rのヘッド室5Rtの圧油は、油路3dを介してステアリング用制御弁4の供給・戻りポート4jに戻され、タンクポート4T、油路3eを介してタンク9に排出される。このためステアリングシリンダ5L、5Rのロッドは図中右方向に移動して、車輪の向きが同右方向に変化しダンプトラックは右旋回する。
【0075】
可変容量型油圧ポンプ2の斜板2aは、容量制御弁10によって駆動制御される。可変容量型油圧ポンプ2の斜板2aは、最小傾転角MINから最大傾転角MAXの範囲で変化し同ポンプ2の容量は最小容量から最大容量の間で変化する。
【0076】
容量制御弁10には、設定圧ΔPを与えるばね10aが付与されている。
【0077】
分流回路30の制御用絞り36の上流側は、パイロット油路41に分岐している。パイロット油路41は、容量制御弁10のばね10aとは反対側のパイロットポートに連通している。制御用絞り36の下流は、タンク9に連通している。制御用絞り36の下流側は、パイロット油路42に分岐している。パイロット油路42は、容量制御弁10のばね10aと同じ側のパイロットポートに連通している。
【0078】
制御用絞り36の流量は、この制御用絞り36の前後差圧つまり制御用絞り36の上流側の圧PRと下流側の圧PT(タンク9の圧)との差圧(PR−PT)として検出することができる。容量制御弁10は、制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)がばね10aのばね力に応じた設定圧ΔPとなるように、可変容量型油圧ポンプ2の斜板2a(容量)を制御する。
【0079】
したがって容量制御弁10によって、制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)が設定圧ΔPに一致するように制御されることで、分流回路30には、設定圧ΔPに対応する余裕分の流量αが常時流れることになる。一方で、前述したように、ステアリング用制御弁4は、プライオリティ弁6により、前後差圧(Pp′−PL)が一定となるように調整されており、ステアリング用油圧シリンダ5の負荷にかかわりなく、ステアリング用流量制御弁4の開口面積に応じた必要流量がステアリング用油圧シリンダ5に供給されるように制御されている。このため油圧ポンプ2からは、ステアリング駆動に必要な流量に加えて、余裕分の流量αを加えた流量が常時吐出されていることになる。
【0080】
つぎに、分流回路30および作業機に圧油を供給、排出する回路の構成について説明する。
【0081】
分流回路30は、プライオリティ弁6より分流された圧油がオープンセンタ方式の作業機用制御弁20を経由してタンク9に導かれるように構成されている。
【0082】
作業機用制御弁20は、上げ位置20a、中立位置20c、浮き位置20b、下げ位置20dを備え、パイロットポート20kに加えられる「上げ」指令油圧信号、「中立位置」指令油圧信号、パイロットポート20mに加えられる「浮き」指令油圧信号、「下げ」指令油圧信号に応じて、各弁位置に移動するように動作する制御弁である。
【0083】
作業機用制御弁20には、第1入口ポート20e、第2入口ポート20f、戻りポート20g、センタバイパス連通ポート20h、給排出ポート20i、20jが設けられている。
【0084】
分流油路31は、作業機用制御弁20の第1入口ポート20eに連通しているとともに、第2入口ポート20fに連通している。作業機用制御弁20のセンタバイパス連通ポート20hは、センタバイパス油路33に連通している。
【0085】
作業機用制御弁20の戻りポート20gは、戻り油路32に連通している。
【0086】
センタバイパス油路33および戻り油路32は、第1排出油路34に連通している。第1排出油路34には、前述の固定絞りで構成された制御用絞り36が設けられている。第1排出油路34は、制御用絞り36の出口を介してタンク9に連通している。
【0087】
センタバイパス油路33および戻り油路32は、また、第1排出油路34に並列に配置された第2排出油路35に連通している。第2排出油路35には、安全弁として機能するリリーフ弁37が設けられている。第2排出油路35は、リリーフ弁37の出口を介してタンク9に連通している。
【0088】
リリーフ弁37の入口は、絞りを備えたパイロット油路38を介して他のリリーフ弁39の入口および制御用電磁切換弁40の入口に連通している。リリーフ弁39の出口はタンク9に連通されているとともに、制御用電磁切換弁40の出口はタンク9に連通している。
【0089】
このように制御用電磁切換弁40は、その入口と出口がそれぞれ、制御用絞り36の入口と出口と共通となるように、制御用絞り36と並列に配置されている。
【0090】
制御用電磁切換弁40には、電磁ソレノイド40dが設けられているとともに、この電磁ソレノイド40dに対向してばね40cが設けられている。制御用電磁切換弁40は、パイロット油路38とタンク9との連通を遮断する遮断位置40aと、パイロット油路38をタンク9に開放する開放位置40bとの2位置を有する切換弁である。制御用電磁切換弁40は、電磁ソレノイド40dに加えられる電気信号がオフであるときには、ばね40cのばね力によって開放位置40bに切り換えられ、電磁ソレノイド40dに加えられる電気信号がオンであるときには、電磁ソレノイド40dによる付勢力がばね40cのばね力に打ち勝ち遮断位置40aに切り換えられるように、構成されている。
【0091】
油路38は、リリーフ弁37のリリーフ圧を規定する。すなわち、油路35と油路38の圧が等しくなっており、リリーフ弁37は閉じているが、圧が上昇してリリーフ弁39のリリーフ圧を超えると、油路38は、リリーフ弁39のリリーフ圧を維持し、その圧よりも高圧となった油路35の圧によりリリーフ弁37がリリーフする。この油路38とタンク9とを制御用電磁切換弁40により連通させることにより、油路38はタンク圧まで低圧となり、リリーフ弁37はタンク圧に近い低圧でリリーフする。すなわち、圧力損失を最小に抑えたリリーフ弁37により絞り36をバイパスさせている。
【0092】
リリーフ弁37、39、制御用電磁切換弁40は、バイパス手段140を構成している。
【0093】
作業機用油圧シリンダ21L、21Rのロッドは、ダンプボディ100の前部に連結されている。ホイスト機構は、図1の図中、作業機用油圧シリンダ21L、21Rのロッドが上方向(伸張方向)、下方向(縮退方向)に移動するにしたがって、ダンプボディ100の前部がそれぞれ同じ上方向、下方向に移動して、ダンプボディ100が上げ動作(ダンプ動作)、下げ動作するように構成されている。
【0094】
作業機用制御弁20の給排出ポート20iは、油路22を介して、作業機用油圧シリンダ21L、21Rの各ボトム室21Lb、21Rbに連通している。また、作業機用制御弁20の給排出ポート20jは、油路23を介して、作業機用油圧シリンダ21L、21Rの各ヘッド室21Lt、21Rtに連通している。
【0095】
作業機用制御弁20が中立位置20cに位置されると、第1入口ポート20eとセンタバイパス連通ポート20hとが連通し、プライオリティ弁6より分流された圧油が分流油路31、作業機用制御弁20、センタバイパス油路33、第1排出油路34あるいは第2排出油路35を経由してタンク9に排出される。
【0096】
作業機用制御弁20が上げ位置20aに位置されると、第2入口ポート20fと給排出ポート20iとが連通されるとともに、給排出ポート20jと戻りポート20gとが連通し、プライオリティ弁6より分流された圧油が分流油路31、作業機用制御弁20、油路22を経由して作業機用油圧シリンダ21L、21Rの各ボトム室21Lb、21Rbに供給されるとともに、作業機用油圧シリンダ21L、21Rの各ヘッド室21Lt、21Rtの圧油が油路23、作業機用制御弁20、戻り油路32、第1排出油路34あるいは第2排出油路35を経由してタンク9に排出される。このため、作業機用油圧シリンダ21L、21Rのロッドが上方向(伸張方向)に移動し、ダンプボディ100の前部が同じ上方向に変化して、ダンプボディ100が上げ動作(ダンプ動作)する。
【0097】
作業機用制御弁20が下げ位置20dに位置されると、第2入口ポート20fと給排出ポート20jとが連通されるとともに、給排出ポート20iと戻りポート20gとが連通し、プライオリティ弁6より分流された圧油が分流油路31、作業機用制御弁20、油路23を経由して作業機用油圧シリンダ21L、21Rの各ヘッド室21Lt、21Rtに供給されるとともに、作業機用油圧シリンダ21L、21Rの各ボトム室21Lb、21Rbの圧油が油路22、作業機用制御弁20、戻り油路32、第1排出油路34あるいは第2排出油路35を経由してタンク9に排出される。このため、作業機用油圧シリンダ21L、21Rのロッドが下方向(縮退方向)に移動し、ダンプボディ100の前部が同じ下方向に移動して、ダンプボディ100が下げ動作する。
【0098】
作業機用制御弁20が浮き位置20bに位置されると、下げ位置20dのときと同様に、第2入口ポート20fと給排出ポート20jとが連通されるとともに、給排出ポート20iと戻りポート20gとが連通する。さらに中立位置20cのときと同様に、第1入口ポート20eとセンタバイパス連通ポート20hとが連通する。このためダンプボディ100は、浮き動作する。このとき作業機用制御弁20を通過した圧油は、センタバイパス油路33あるいは戻り油路32を介して、第1排出油路34あるいは第2排出油路35に流れ込み、タンク9に排出される。
【0099】
作業機用操作レバー13には、作業機用操作レバー13の操作方向および操作量を操作信号S1として検出する操作検出センサ13aが設けられている。
【0100】
ダンプボディ100には、ダンプボディ100の前部の上下方向位置S2、つまり作業機用油圧シリンダ21L、21Rのロッドの伸張位置を検出するダンプボディ位置検出センサ100aが設けられている。
【0101】
これらセンサ13a、100aの検出位置S1、S2は、コントローラ50に入力される。コントローラ50は、操作信号S1より、作業機用操作レバー13の操作位置が、作業機用制御弁20の各弁位置に対応した「上げ位置」、「中立位置」、「浮き位置」、「下げ位置」のいずれであるかを判断する。コントローラ50は、検出位置S2より、ダンプボディ100が着座しているか否かを判断する。
【0102】
コントローラ50は、入力されたセンサ13a、100aの検出信号S1、S2に基づいて、作業機用操作レバー13の操作信号S1に対応した方向に、かつ操作信号S1に対応した速度でダンプボディ100が動作するように、指令電気信号を生成し、生成した指令電気信号を電磁比例弁(EPC弁)51に出力する。電磁比例弁51は、加えられた指令電気信号を指令油圧信号に変換して、パイロット油路52あるいはパイロット油路53を介して作業機用制御弁20のパイロットポート20kあるいはパイロットポート20mに加える。パイロット油路52には、上げ位置の指令油圧信号が出力され、パイロット油路53には、下げ位置または浮き位置の指令油圧信号が出力される。
【0103】
また、コントローラ50は、入力されたセンサ13a、100aの検出信号S1、S2に基づいて、制御用電磁切換弁40を遮断位置40aあるいは開放位置40bに切り換えるべきかを判断し、その判断結果に応じて、オンあるいはオフの電気信号を生成し、生成したオンあるいはオフの電気信号を制御用電磁切換弁40の電磁ソレノイド40dに出力する。
【0104】
以下、図1のステアリングおよび作業機の油圧回路の動作について説明する。
【0105】
(ステアリングハンドル14および作業機操作レバー13が中立位置のときの動作)
ステアリングハンドル14が中立位置にあるときには、ステアリング用制御弁4が中立位置4cに位置されており、負荷検出ポート4fではタンク圧とほぼ同圧が検出されている。このため、ステアリング用制御弁4の前後差圧(Pp′−PL)がほぼPp′となり、ステアリング側に油がいかないようにプライオリティ弁6は弁位置6aに調整される。
【0106】
プライオリティ弁6から分流された圧油は、分流油路31を通り作業機用操作弁20に導かれる。
【0107】
作業機用操作レバー13が中立位置であることを示す操作信号S1がコントローラ50に入力されると、コントローラ50は、作業機(ダンプボディ100)を動作させないときであり作業機用制御弁20に供給しておく圧油は最低の余剰流量αで十分であり油圧ポンプ2の容量を大きくする必要はないものと判断して、制御用電磁切換弁40を遮断位置40aに切り換えるべく、オンの電気信号を生成し、生成したオンの電気信号を制御用電磁切換弁40の電磁ソレノイド40dに出力する。これにより制御用電磁切換弁40は遮断位置40aに切り換えられる。
【0108】
作業機用操作レバー13が中立位置にあるときには、作業機用制御弁20は中立位置20cに位置されている。このため分流油路31を通過した圧油は、作業機用制御弁20、センタバイパス油路33を介して第1排出油路34、第2排出油路35に導かれる。
【0109】
ここで制御用電磁切換弁40は遮断位置40aに位置されているため、リリーフ弁37のリリーフ圧はリリーフ弁39に対応する高い状態に規定されており、リリーフ弁37は開状態のままで、第2排出油路35に導かれた圧油はリリーフ弁37の入口でせき止められる。
【0110】
このためバイパス油路33を通過した圧油は、第1吐出油路34の制御用絞り36を通過してタンク9に排出される。なお制御用絞り36の入口の圧力が大きくなりリリーフ弁37の設定リリーフ圧、つまりリリーフ弁39の設定リリーフ圧により規定される圧を超えた場合には、リリーフ弁37が開き、高圧の圧油が第2排出油路35を介してタンク9に排出されることになる。このようにリリーフ弁37、39は、分流回路30を保護する大容量の安全弁として機能する。
【0111】
容量制御弁10は、制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)が設定圧ΔPに一致するように油圧ポンプ2の斜板2aを調整する。このため、分流回路30の分流油路31には、エンジン1の回転数や負荷に左右されずに、設定圧ΔPに対応する一定の余裕分の流量αが流れることになる。一方で、ステアリング用制御弁4に向かう油路3bには、上述したようにステアリング用油圧シリンダ5の最低負荷圧PLに見合った最低流量が供給されている。このためダンプトラックの直進走行時など、作業機用操作レバー13とステアリングハンドル14の両方が中立位置にあるときには、必要最小限の流量しか油圧ポンプ2から吐出されないこととなり、エネルギーロスの低減およびエンジン1の燃費の低減が図られる。
【0112】
(ステアリングハンドル14が中立位置から操作され、作業機操作レバー13が中立位置のときの動作)
ステアリングハンドル14が中立位置から操作されたときには、ステアリング用制御弁4が左旋回位置4aあるいは右旋回位置4bに位置されており、負荷検出ポート4fでは現在のステアリング用油圧シリンダ5の負荷に対応した負荷圧PLが検出されている。
【0113】
プライオリティ弁6では、パイロット油路11を介して作用するステアリング用制御弁4の上流側圧Pp′とパイロット油路12を介して作用するステアリング用制御弁4の下流側圧PL(ステアリング用油圧シリンダ5の負荷圧PL)との差圧(Pp′−PL)がばね6fのばね力に応じた設定圧に一致するように、弁位置が調整される。これによりステアリング用油圧シリンダ5の負荷にかかわりなく、ステアリング用制御弁4の開口面積に応じた流量、すなわちステアリングの回転数に応じた流量がステアリング用油圧シリンダ5に供給される。
【0114】
プライオリティ弁6から分流された圧油は、分流油路31を通り作業機用操作弁20に導かれる。
【0115】
作業機用操作レバー13が中立位置であることを示す操作信号S1がコントローラ50に入力されると、コントローラ50は、作業機(ダンプボディ100)を動作させていないときであり作業機用制御弁20に供給しておく圧油の流量は最低の余剰流量αで十分であり油圧ポンプ2の容量を大きくする必要はないものと判断して、制御用電磁切換弁40を遮断位置40aに切り換えるべく、オンの電気信号を生成し、生成したオンの電気信号を制御用電磁切換弁40の電磁ソレノイド40dに出力する。これにより制御用電磁切換弁40は遮断位置40aに切り換えられる。
【0116】
作業機用操作レバー13が中立位置にあるときには、作業機用制御弁20は中立位置20cに位置されている。このため分流油路31を通過した圧油は、作業機用制御弁20、センタバイパス油路33を介して第1排出油路34、第2排出油路35に導かれる。
【0117】
ここで制御用電磁切換弁40は遮断位置40aに位置されているため、リリーフ弁37のリリーフ圧はリリーフ弁39に対応する高い状態に規定されており、リリーフ弁37は開状態のままで、第2排出油路35に導かれた圧油はリリーフ弁37の入口でせき止められる。
【0118】
このためバイパス油路33を通過した圧油は、第1排出油路34の制御用絞り36を通過してタンク9に排出される。なお制御用絞り36の入口の圧力が大きくなりリリーフ弁37の設定リリーフ圧、つまりリリーフ弁39の設定リリーフ圧により規定される圧を超えた場合には、リリーフ弁37が開き、高圧の圧油が第2排出油路35を介してタンク9に排出されることになる。このようにリリーフ弁37、39は、分流回路30を保護する大容量の安全弁として機能する。
【0119】
容量制御弁10は、制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)が設定圧ΔPに一致するように油圧ポンプ2の斜板2aを調整する。このため、分流回路30の分流油路31には、エンジン1の回転数や負荷に左右されずに、設定圧ΔPに対応する一定の余裕分の流量αが流れることになる。
【0120】
いまステアリングハンドル14が通常の操作速度で操作されているものとすると、プライオリティ弁6で、ステアリング用制御弁4の前後差圧(Pp′−PL)は設定圧にほぼ一致するように保持されており、ステアリング用制御弁4の開口面積に見合った必要な流量がステアリング用油圧シリンダ5に供給されている。
【0121】
ここでステアリングハンドル14が急操作されたものとする。ステアリングハンドル14が急操作されると、ステアリング用制御弁4の開口面積が急増しステアリング用制御弁4の前後差圧(Pp′−PL)が急激に小さくなる。ステアリング用制御弁4の前後差圧(Pp′−PL)が急激に小さくなると、プライオリティ弁6は、前後差圧(Pp′−PL)を大きくして設定圧に一致させるべく、ばね6fのばね力によって付勢されて、ステアリング用制御弁4側のみに圧油を供給する弁位置6b側に迅速に移動する。このため分流油路31にそれまで流れていた余裕分の流量αの圧油は、プライオリティ弁6からステアリング用制御弁4を経てステアリング用油圧シリンダ5に迅速に供給される。
【0122】
分流油路31へ導かれていた圧油がステアリング用油圧シリンダ5側に回された結果、センタバイパス油路33を介して第1排出油路34に導かれる圧油の流量が減少する。このため制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)が小さくなる。制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)が小さくなると、容量制御弁10は、制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)を大きくして設定圧ΔPに一致させるべく、ばね10aのばね力によって付勢されて弁位置が最大側に移動し、可変容量型油圧ポンプ2の斜板2aは、最大傾転角側に移動する。これにより可変容量型油圧ポンプ2の吐出容量が大きくなり吐出流量Qが増大し、ステアリングハンドル14の急操作に見合った流量がステアリング用油圧シリンダ5に供給される。なおステアリング用制御弁4の通過流量の増加に伴いステアリング用制御弁4の前後差圧(Pp′−PL)が増加する。このため、ステアリングハンドル14の急操作を終えたときには、プライオリティ弁6は、前後差圧(Pp′−PL)が設定圧に一致する弁位置でバランスし、再びプライオリティ弁6から分流油路31に余裕分の流量αが排出されるようになる。
【0123】
以上のように、ステアリングハンドル14を通常の速度で操作したときには、制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)が設定圧ΔPに一致するように制御されて、分流回路30には、設定圧ΔPに対応する余裕分の流量αが常時流れる。また、ステアリング用制御弁4は、プライオリティ弁6により、前後差圧(Pp′−PL)が一定となるように調整され、ステアリング用油圧シリンダ5の負荷にかかわりなく、ステアリング用流量制御弁4の開口面積に応じた必要流量がステアリング用油圧シリンダ5に供給されるように制御される。このためダンプトラックをゆっくりと旋回走行させるときなど、作業機用操作レバー13が非操作状態でステアリングハンドル14を通常の速度で操作するときには、必要最小限の流量しか油圧ポンプ2から吐出されないこととなり、エネルギーロスの低減およびエンジン1の燃費の低減が図られる。
【0124】
しかもステアリングハンドル14がひとたび急操作されたならば、分流回路30に流れていた余裕分の流量αがステアリング用油圧シリンダ5に迅速に供給されてステアリング用油圧シリンダ5が迅速に作動するため、ステアリング制御系に応答性が向上する。
【0125】
このように本実施例によれば、エネルギーロスの低減およびエンジン1の燃費の低減を図りつつ、ステアリング制御系の応答性を向上させることができる。
【0126】
(ステアリングハンドル14が中立位置にあり、作業機操作レバー13が中立位置から操作されたときの動作)
ステアリングハンドル14が中立位置にあるときには、ステアリング用制御弁4が中立位置4cに位置されており、負荷検出ポート4fではタンク圧とほぼ同圧が検出されている。このため、ステアリング用制御弁4の前後差圧(Pp′−PL)がほぼPp′となり、ステアリング側に油がいかないようにプライオリティ弁6は弁位置6aに調整される。
【0127】
プライオリティ弁6から分流された圧油は、分流油路31を通り作業機用操作弁20に導かれる。
【0128】
作業機用操作レバー13が中立から操作された場合、コントローラ50は、つぎのいずれかの制御パターンにしたがい制御する。
【0129】
1) 制御パターン1
作業機用操作レバー13の操作内容が「上げ」操作のときに制御用電磁切換弁40を開放位置40bにする。
【0130】
作業機用操作レバー13が「上げ」位置であることを示す操作信号S1がコントローラ50に入力されると、コントローラ50は、作業機(ダンプボディ100)を上げ動作(ダンプ動作)させるときであり油圧ポンプ2の容量を最大容量にして作業機用油圧シリンダ21を最大速度で作動させるための圧油を作業機用制御弁20に供給すべきと判断する。この判断結果より制御用電磁切換弁40を開放位置40bに切り換えるためのオフの電気信号を生成し、生成したオフの電気信号(電気信号オフ)を制御用電磁切換弁40の電磁ソレノイド40dに出力する。これにより制御用電磁切換弁40は開放位置40bに切り換えられる。
【0131】
2) 制御パターン2
作業機用操作レバー13の操作内容が「上げ」操作のとき、または「下げ」操作のときまたは「浮き」操作のときに制御用電磁切換弁40を開放位置40bにする。
【0132】
作業機用操作レバー13が「上げ」位置または「下げ」位置または「浮き」位置であることを示す操作信号S1がコントローラ50に入力されると、コントローラ50は、作業機(ダンプボディ100)を上げ動作(ダンプ動作)または下げ動作させるときであり油圧ポンプ2の容量を最大容量にして作業機用油圧シリンダ21を最大速度で作動させるための圧油を作業機用制御弁20に供給すべきと判断する。また、浮きを含め上げ、下げ操作により作業機を操作する場合、タンク9への戻り圧油を、圧力損失が大きく発生する絞り36を通過させず、圧力損失の少ないリリーフ弁37にバイパスすべきと判断する。
【0133】
この判断結果より制御用電磁切換弁40を開放位置40bに切り換えるためのオフの電気信号を生成し、生成したオフの電気信号(電気信号オフ)を制御用電磁切換弁40の電磁ソレノイド40dに出力する。これにより制御用電磁切換弁40は開放位置40bに切り換えられる。
【0134】
作業機用操作レバー13が上げ位置にあるときには、作業機用制御弁20は上げ位置20aに位置されている。また、作業機用操作レバー13が下げ位置にあるときには、作業機用制御弁20は下げ位置20dに位置されている。作業機用操作レバー13が浮き位置にあるときには、作業機用制御弁20は浮き位置20bに位置されている。
【0135】
このため分流油路31を通過した圧油は、作業機用制御弁20から油路22または油路23を介して作業機用油圧シリンダ21L、21Rに供給される。また作業機用油圧シリンダ21、21Rからの戻り圧油は、油路23または油路22、作業機用制御弁20、戻り油路32を介して第1排出油路34、第2排出油路35に導かれる。
【0136】
ここで制御用電磁切換弁40は開放位置40bに位置されているため、パイロット油路38が低圧となりリリーフ弁37のリリーフ圧が低くなる。
【0137】
このため作業機用制御弁20を通過した圧油のほとんどは、リリーフ弁37を経由してタンク9に排出され、第1吐出油路34、つまり制御用絞り36を通過する圧油の流量は最小となる。
【0138】
第1排出油路34に導かれる圧油の流量が減少すると、制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)が小さくなる。制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)が小さくなると、容量制御弁10は、制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)を大きくして設定圧ΔPに一致させるべく、ばね10aのばね力によって付勢されて弁位置が最大側に移動し、可変容量型油圧ポンプ2の斜板2aは、最大傾転角側に移動する。これにより可変容量型油圧ポンプ2の吐出容量が最大となり吐出流量Qが最大となり、作業機用操作レバー13の「上げ」位置操作(制御パターン1、制御パターン2)または「下げ」位置操作(制御パターン2)に見合った最大の流量がプライオリティ弁6から分流油路31を経由し、作業機用制御弁20を介して作業機用油圧シリンダ21に供給される。このため作業機(ホイスト機構)を最大の速度で動作させることができ、作業効率が向上する。
【0139】
また、浮きを含め、上げ、下げ操作により作業機を操作する場合、シリンダ21L、21Rからの戻り圧油を含め分流回路30に供給された圧油のほとんどがリリーフ弁37を経由してタンク9に戻ることになり、絞り36を通過することによる圧力損失を最少とすることができる。
【0140】
なお、一般的にダンプトラックは、作業機用操作レバー13が「浮き」位置で走行するため、この場合も油圧ポンプ2の吐出流量を必要最小限に抑えることが望ましい。すなわち、コントローラ50は、操作信号S1より、作業機用操作レバー13が「浮き」位置にあると判断し、かつセンサ100aからの検出信号S2よりダンプボディ100が着座していると判断した場合には、走行状態であり油圧ポンプ2の容量を大きくする必要はないものと判断し、作業機用操作レバー13が中立位置のときと同様にオン信号を制御用電磁切換弁40に出力し、制御用電磁切換弁40を弁位置40aに切り換える。これにより油圧ポンプ2の吐出流量が必要最小限となり、エネルギーロス低減、エンジンの燃費低減が図られる。
【0141】
ここで本実施例では、制御用絞り36と並列に制御用電磁切換弁40を設けこの制御用電磁切換弁40を遮断位置40aから開放位置40bに切り換えることで作業機用油圧シリンダ21に最大の流量が供給されるように構成している。このため作業機(ホイスト機構)を駆動制御する油圧回路を、簡素かつ低コストで構築することができる。しかも、ダンプトラックの場合には、ホイールローダやフォークリフトの作業機と異なり、ステアリング操作に比して作業機(ホイスト機構)が操作される頻度は低く、しかも作業機の操作には微操作などの細かな制御は不要であり、むしろ作業効率を高めるために作業機(ホイスト機構)は最大の速度で作動させることが望ましい。このため本実施例の油圧回路は、費用対効果の点でも優れている。
(ステアリングハンドル14が中立位置から操作されると同時に、作業機操作レバー13が中立位置から操作されたときの動作)
ステアリングハンドル14が中立位置から操作されたときには、ステアリング用制御弁4が左旋回位置4aあるいは右旋回位置4bに位置されており、負荷検出ポート4fでは現在のステアリング用油圧シリンダ5の負荷に対応した負荷圧PLが検出されている。
【0142】
プライオリティ弁6では、パイロット油路11を介して作用するステアリング用制御弁4の上流側圧Pp′とパイロット油路12を介して作用するステアリング用制御弁4の下流側圧PL(ステアリング用油圧シリンダ5の負荷圧PL)との差圧(Pp′−PL)がばね6fのばね力に応じた設定圧に一致するように、弁位置が調整される。これによりステアリング用油圧シリンダ5の負荷にかかわりなく、ステアリング用制御弁4の開口面積に応じた流量がステアリング用油圧シリンダ5に供給される。
【0143】
プライオリティ弁6から分流された圧油は、分流油路31を通り作業機用操作弁20に導かれる。
【0144】
作業機用操作レバー13が中立から操作された場合、コントローラ50は、前述の制御パターン1あるいは制御パターン2にしたがい制御する。制御パターン1が選択されているときには作業機用操作レバー13が上げ位置にあるときに制御用電磁切換弁40が開放位置40bに切り換えられ、制御パターン2が選択されているときには作業機用操作レバー13が上げ位置または下げ位置または浮き位置にあるときに制御用電磁切換弁40が開放位置40bに切り換えられる。
【0145】
作業機用操作レバー13が上げ位置にあるときには、作業機用制御弁20は上げ位置20aに位置されている。また、作業機用操作レバー13が下げ位置にあるときには、作業機用制御弁20は下げ位置20dに位置されている。作業機用操作レバー13が浮き位置にあるときには、作業機用制御弁20は浮き位置20bに位置されている。
【0146】
このため分流油路31を通過した圧油は、作業機用制御弁20から油路22または油路23を介して作業機用油圧シリンダ21L、21Rに供給される。また作業機用油圧シリンダ21、21Rからの戻り圧油は、油路23または油路22、作業機用制御弁20、戻り油路32を介して第1排出油路34、第2排出油路35に導かれる。
【0147】
ここで制御用電磁切換弁40は開放位置40bに位置されているため、パイロット油路38が低圧となりリリーフ弁37のリリーフ圧が低くなる。
【0148】
このため作業機用制御弁20を通過した圧油のほとんどは、リリーフ弁37を経由してタンク9に排出され、第1吐出油路34、つまり制御用絞り36を通過する圧油の流量は最小となる。
【0149】
第1排出油路34に導かれる圧油の流量が減少すると、制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)が小さくなる。制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)が小さくなると、容量制御弁10は、制御用絞り36の前後差圧(PR−PT)を大きくして設定圧ΔPに一致させるべく、ばね10aのばね力によって付勢されて弁位置が最大側に移動し、可変容量型油圧ポンプ2の斜板2aは、最大傾転角側に移動する。これにより可変容量型油圧ポンプ2の吐出容量が最大となり吐出流量Qが最大となる。
【0150】
一方で、プライオリティ弁6では、前述したように、ステアリング用油圧シリンダ5の負荷にかかわりなく、ステアリング用制御弁4の開口面積に応じた必要な流量がステアリング用油圧シリンダ5に供給されるように弁位置を調整している。このため油圧ポンプ2から吐出される最大流量のうち、ステアリング用油圧シリンダ5側に優先的に必要な流量が配分され、残りの流量が作業機用油圧シリンダ21に配分されることになる。すなわち、プライオリティ弁6から、油圧ポンプ2の最大流量のうちステアリング用油圧シリンダ5側に優先的に供給される流量を除いた残りの流量が分流油路31を経由し、作業機用制御弁20を介して作業機用油圧シリンダ21に供給される。このため作業機(ホイスト機構)を必要十分な速度で動作させることができる。
【0151】
また、浮きを含め、上げ、下げ操作により作業機を操作する場合、シリンダ21L、21Rからの戻り圧油を含め分流回路30に供給された圧油のほとんどがリリーフ弁37を経由してタンク9に戻ることになり、絞り36を通過することによる圧力損失を最少とすることができる。
【0152】
このように本実施例によれば、ステアリング用油圧シリンダ5と作業機用油圧シリンダ21を同時に作動させるときに油圧ポンプの最大流量を、ステアリング用油圧シリンダ5に供給する流量を優先した上で必要十分な量の圧油を作業機用油圧シリンダ21側に配分することができる。
【0153】
なお、一般的にダンプトラックは、作業機用操作レバー13が「浮き」位置で走行するため、この場合も油圧ポンプ2の吐出流量を必要最小限に抑えることが望ましい。すなわち、コントローラ50は、操作信号S1より、作業機用操作レバー13が「浮き」位置にあると判断し、かつセンサ100aからの検出信号S2よりダンプボディ100が着座していると判断した場合には、走行状態であり油圧ポンプ2の容量を大きくする必要はないものと判断し、作業機用操作レバー13が中立位置のときと同様にオン信号を制御用電磁切換弁40に出力し、制御用電磁切換弁40を弁位置40aに切り換える。これにより油圧ポンプ2の吐出流量が必要最小限となり、エネルギーロス低減、エンジンの燃費低減が図られる。
【0154】
ところで、仮に断線等が発生すると、上述の制御が不能となり制御用電磁切換弁40に対する電気信号はオフされてオンの電気信号が加えられなくなることがある。しかしながら、本実施例では、制御用電磁切換弁40への電気信号がオフのときに制御用電磁切換弁40が開放位置40bとなり、油圧ポンプ2の容量が最大となるように構成されている。このため断線等が発生して上述の制御が不能となったとしても制御用電磁切換弁40は開放位置40bに保持されることになり、油圧ポンプ2の容量が最大となり、ステアリング動作あるいは作業機動作に必要な流量の確保が保証されることになる。これにより故障等が発生したとしても、とりあえず安全に作業を継続することが可能となり作業効率の悪化を防ぐことができる。
【0155】
図1を用いて説明した上述の第1実施例では、作業機用操作レバー13が電気式のレバーであることを想定し、作業機用操作レバー13で検出された電気信号S1をコントローラ50に入力させ、コントローラ50から電気信号を制御用電磁切換弁40に出力するとともに電磁比例弁51に出力して、制御用電磁切換弁40の弁位置を切り換えるとともに、作業機用制御弁20の弁位置を変化させるようにしている。
【0156】
しかしながら、本発明としては、このような構成のものに限定されるわけではなく、図1の電気的な経路を油圧経路に置き換えて回路を構成する実施も可能である。
【0157】
図2(a)は、作業機用操作レバー13´を油圧式のレバー(PPCレバー)とし、油圧式の作業機用操作レバー13´から出力される油圧信号を電気的な経路を介することなく油路のみを介して制御用切換弁40´に加えるとともに、作業機用制御弁20に加えて、制御用切換弁40´の弁位置を切り換えるとともに、作業機用制御弁20の弁位置を変化させるように構成した第2実施例を示している。
【0158】
以下の第2実施例の説明では、前述の図1と同一の構成要素には同一の符号を付して重複した説明は省略し、図1とは異なる部分について説明する。
【0159】
図2(a)は、前述の制御パターン1を想定した回路図である。制御パターン1では、ダンプボディ100を上げ動作させるときのみに制御用切換弁40´が開放位置40b´に切り換えられる。
【0160】
すなわち、作業機用操作レバー13´は、前述の電気式の作業機用操作レバー13に対応する油圧式の操作レバーであり、その操作方向および操作量を油圧の操作信号S1´として検出する油圧検出回路が設けられている。油圧操作信号S1´の内容は、作業機用制御弁20の各弁位置に対応した「上げ位置」、「中立位置」、「浮き位置」、「下げ位置」である。
【0161】
作業機用操作レバー13´の油圧検出回路は、パイロット油路52、53に連通している。またパイロット油路52は、パイロット油路54に連通している。
【0162】
制御用切換弁40´は、前述の電磁ソレノイド40dを備えた制御用電磁切換弁40に対応するパイロット切換弁であり、パイロットポート40d´に「上げ位置」に対応するオンの油圧信号が加えられると、開放位置40bに切り換えられ、パイロットポート40d´に加えられる油圧信号がオフされている(油圧が低い)ときには、遮断位置40a´に切り換えられる。制御用切換弁40´のパイロットポート40d´は、パイロット油路54に連通している。
【0163】
作業機用操作レバー13´は、上げ位置に操作されると、油圧ポートから上げ位置に対応する圧力の油圧信号がパイロット油路52に出力され、下げ位置に操作されると、油圧ポートから下げ位置に対応する圧力の油圧信号がパイロット油路53に出力され、浮き位置に操作されると、油圧ポートから浮き位置に対応する圧力の油圧信号がパイロット油路53に出力されるように構成されている。このため、第1実施例と同様に、作業機用制御弁20は、作業機用操作レバー13´の操作に応じて、その弁位置が変化される。
【0164】
作業機用操作レバー13´が上げ位置に操作されると、パイロット油路52、パイロット油路54を介して制御用切換弁40´のパイロットポート40d´に「上げ位置」に対応するオンの油圧信号が加えられ、制御用切換弁40´は開放位置40bに切り換えられる。このため、第1実施例の制御パターン1と同様に、作業機用操作レバー13´が上げ位置に操作されたときのみに制御用切換弁40´が開放位置40b´に切り換えられる。
【0165】
図2(b)は、前述の制御パターン2を想定して構築した回路例を示しており、図2(a)と異なる部分のみを示した図である。制御パターン2では、ダンプボディ100を上げ動作させるとき、または下げ操作または浮き操作させるときに制御用切換弁40´が開放位置40b´に切り換えられる。
【0166】
すなわち同図2(b)に示すように、作業機用操作レバー13´の油圧検出回路は、パイロット油路52、53に連通している。またパイロット油路52、53は、シャトル弁55の入口にそれぞれ連通している。シャトル弁55の出口は、パイロット油路54に連通している。
【0167】
このため作業機用操作レバー13´が上げ位置に操作されると、パイロット油路52、シャトル弁55、パイロット油路54を介して制御用切換弁40´のパイロットポート40d´に「上げ位置」に対応するオンの油圧信号が加えられ、制御用切換弁40´は開放位置40b´に切り換えられる。また、作業機用操作レバー13´が下げ位置に操作されると、パイロット油路52、シャトル弁55、パイロット油路54を介して制御用切換弁40´のパイロットポート40d´に「下げ位置」に対応するオンの油圧信号が加えられ、制御用切換弁40´は開放位置40b´に切り換えられる。また、作業機用操作レバー13´が浮き位置に操作されると、パイロット油路52、シャトル弁55、パイロット油路54を介して制御用切換弁40´のパイロットポート40d´に「浮き位置」に対応するオンの油圧信号が加えられ、制御用切換弁40´は浮き位置40b´に切り換えられる。
【0168】
このため、第1実施例の制御パターン2と同様に、作業機用操作レバー13´が上げ位置または下げ位置または浮き位置に操作されたときに制御用切換弁40´が開放位置40b´に切り換えられ、リリーフ弁37のリリーフ圧が低圧となり、作業機用制御弁20を通過した圧油のほとんどは絞り36をバイパスしてリリーフ弁37を通過するようになる。
【0169】
第1実施例、第2実施例では、バイパス手段140として、リリーフ弁37、39、制御用電磁切換弁40(40´)にて構成する例を示したが、図3に示すように、絞り36に並列に設けられた電磁切換弁45を用いてもよく、また図4に示すように、絞り36に並列に設けられた切換弁46を用いてもよく、同様の作用効果が得られる。
【0170】
以上の説明では、作業機としてホイスト機構、つまりダンプトラックのダンプボディを想定して説明したが、本発明は、ホイスト機構以外の作業機を作動させる場合にも適用することができる。またダンプトラック以外の作業車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1は第1実施例の油圧回路図である。
【図2】図2(a)、(b)は第2実施例の油圧回路図で、図2(b)は図2(a)の変形例である。
【図3】図3は第1実施例の別態様の構成図である。
【図4】図4は第2実施例の別態様の構成図である。
【符号の説明】
【0172】
2 可変容量型油圧ポンプ、 4 ステアリング用制御弁、 5 ステアリング用油圧シリンダ、 6、プライオリティ弁、 10 容量制御弁、20 作業機用制御弁、 21 作業機用油圧シリンダ、 30 分流回路、 36 制御用絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリング機構を作動させるためのステアリング操作信号に応じてステアリング機構を駆動制御するとともに、作業機を作動させるための作業機操作信号に応じて作業機を駆動制御する油圧回路が備えられた作業車両のステアリングおよび作業機の制御装置であって、
圧油を吐出する可変容量型油圧ポンプと、
ステアリング機構を作動させるステアリング用油圧アクチュエータと、
作業機を作動させる作業機用油圧アクチュエータと、
ステアリング操作信号に応じた流量の圧油が前記ステアリング用油圧アクチュエータに供給されるように動作するステアリング用制御弁と、
作業機操作信号に応じた流量の圧油が前記作業機用油圧アクチュエータに供給されるように動作する作業機用制御弁と、
前記可変容量型油圧ポンプと前記ステアリング用制御弁との間に設けられ、前記ステアリング用制御弁の前後差圧が設定値になるように前記可変容量型油圧ポンプの吐出圧油を前記ステアリング用制御弁に供給するとともに、前記作業機用制御弁側に分流するプライオリティ弁と、
前記プライオリティ弁から分流された圧油を、前記作業機用制御弁を通過させて、タンクに排出させる分流回路と、
前記分流回路に設けられ、出口側がタンクに連通する絞りと、
前記絞りの前後差圧が設定値になるように前記可変容量型油圧ポンプの容量を制御する容量制御手段と、
前記分流回路にあって、前記絞りと並列に配置された弁であって、作業機操作信号が入力されることにより、当該弁の通路を開放するように動作するバイパス手段と
を備えたことを特徴とする作業車両のステアリングおよび作業機の制御装置。
【請求項2】
前記バイパス手段は、切換弁であること
を特徴とする請求項1記載の作業車両のステアリングおよび作業機の制御装置。
【請求項3】
前記バイパス手段は、
前記絞りと並列に配置され、リリーフ圧が変更可能なリリーフ弁と、
作業機操作信号が入力されることにより前記リリーフ弁のリリーフ圧を低い側に変更するように動作する制御弁と
を備えたこと特徴とする請求項1記載の作業車両のステアリングおよび作業機の制御装置。
【請求項4】
前記作業機用制御弁は、オープンセンタ方式のバルブであること
を特徴とする請求項1記載の作業車両のステアリングおよび作業機の制御装置。
【請求項5】
前記作業車両は、ダンプトラックであって、前記作業機は、ボディをダンプ作動させるホイスト機構であること
を特徴とする請求項1、2、3および4のいずれかに記載の作業車両のステアリングおよび作業機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−162410(P2008−162410A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354210(P2006−354210)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】