説明

作業車

【課題】より簡便に油圧ホースの配設を行うことができる作業車を提供すること。
【解決手段】シャシフレーム10と、シャシフレーム10の上方に配置されるサブフレーム20と、シャシフレーム10に配置される走行用エンジンと、走行用エンジンに接続されシャシフレーム10の下部に配設される動力取出機構(PTO軸)を備えた作業車(トラッククレーン1)であって、前記動力取出機構からの動力が、サブフレーム20に配設されサブフレーム20の下端より上方に配置された油圧ポンプ40に対して動力伝達機構(下部プーリー43、上部プーリー47、ベルト48等)を介して伝達されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車に関し、特に走行用エンジンの動力によって駆動される油圧アクチュエータを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような作業車として、例えば、特許文献1に開示されるように、シャシフレームの上部に対して、内部を中空としたサブフレームを設置し、該サブフレーム上に旋回ベアリングを介して旋回台を設置し、前記シャシフレームの下部に設けた油圧ポンプと前記旋回台側に設けたスイベルジョイントとを油圧ホースで接続したトラッククレーンが知られている。ここで、油圧ポンプは、PTO軸によって取り出される走行用エンジンの動力によって駆動されるものであり、走行用エンジンと同様にシャシフレームの下部に設けられている。そのため、油圧ポンプとスイベルジョイントとの間に配設される油圧ホース類がシャシフレームの下側からサブフレームにかけて配置されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−222073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、油圧ホースを小さな曲率半径で曲げてしまうと、油圧ホースが破損等を起こしやすくなるため、所定の曲率半径を維持して油圧ホース類が曲がるように配置されることが求められる。また、シャシフレームには、車体側の架装物が設けられているため、油圧ホース類がシャシフレーム側の架装物に干渉しないように配置されることが求められる。そのため、シャシフレームの種類ごとにホース類の配置に関する設計を綿密に行う必要があった。
【0005】
また、作業車に対する油圧ホース類の取付作業は、上述のように油圧ホース類がシャシフレーム側の架装物に干渉しないように配置される必要があるため、シャシフレームの上部にサブフレームが設置された後でなければ行うことができなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、より簡便に油圧ホース類の配設を行うことができる作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、シャシフレームと、該シャシフレームの上方に配置されるサブフレームと、前記シャシフレームに配設される走行用エンジンと、該走行用エンジンに接続され前記シャシフレームの下部に配設される動力取出機構とを備えた作業車であって、前記動力取出機構からの動力が、前記サブフレームに配設され該サブフレームの下端より上方に配置された油圧ポンプに対して動力伝達機構を介して伝達されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、前記動力伝達機構は、前記動力取出機構に接続されるプロペラシャフトと該プロペラシャフトに固定される下部回転体と該下部回転体の回転が伝達され前記サブフレームの下端より上方に配置される上部回転体とによって構成され、該上部回転体が前記油圧ポンプに接続されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明では、前記上部回転体は、油圧ポンプに接続された状態のまま、サブフレームの前後方向に対して所定の範囲で移動可能であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明では、前記油圧ポンプは、前記上部回転体が接続された状態のまま、サブフレームの左右方向に対して所定の範囲で移動可能であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明では、前記サブフレームは、内側に空間を有する中空状に形成され、前記油圧ポンプは、前記サブフレームの内側の空間に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、サブフレームに配設された油圧ポンプが、サブフレームの下端より上方に配置されていることにより、油圧ポンプとスイベルジョイントとの間に配設される油圧ホース類をサブフレームの下端より上方(例えばサブフレーム内部)に配置することができ、油圧ホース類がシャシフレーム側の架装物に干渉することがない。また、これにより、例えばサブフレームに油圧ポンプ、油圧ホース等が配置された状態で、一時的にサブフレームを保管等する場合に、サブフレームを積み重ねて保管することが可能となる。また、シャシフレームの下方に油圧ホース類が露出しないため、走行中の石はね等により油圧ホース類が損傷することがない。
【0013】
また、油圧ホース類をシャシフレーム側に配置しなくて済むため、シャシフレームを含めて油圧ホース類の配置設計を行う必要がない。また、これにより、シャシフレームにサブフレームを取り付ける工程の前に、予め、サブフレーム側のみで油圧ホース類の取付作業が完結できる。また、上部プーリーを前後方向に移動可能となるように構成することにより、シャシフレーム側の架装態様の変更に柔軟に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一の実施の形態に係るトラッククレーンにおける油圧ポンプ等の配置を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。なお、同一又は同等の構成要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。なお、本発明は、走行用エンジンが配置されたシャシフレームと、シャシフレームの上方に配置されるサブフレームと、走行用エンジンに接続されシャシフレームの下部に配設される動力取出機構を備えた作業車に広く適用可能であるが、ここでは上記構成を備えたトラッククレーンに本発明を適用した場合の一例について説明する。
【0016】
図1に示すように、トラッククレーン1は、車体3の前後方向に延びるシャシフレーム10に前輪11F及び後輪11R(総称するときは「車輪11」とする)を有しており、前輪11Fの上方には、トラッククレーン1の走行操作を行うためのキャブ5が設けられている。シャシフレーム10の上部にはシャシフレーム10と略同じ幅で前後方向に延びるサブフレーム20が固定されており、このサブフレーム20の前後には、作業時に車幅方向に張出してトラッククレーン1をジャッキアップするアウトリガ装置29F,29Rが設けられている。なお、例えば、サブフレームは、上板と下板とこれらの左右に設けられる側板とによって形成されるものであり、中空状に形成されるものである。
【0017】
サブフレーム20の上部には、旋回ベアリングを介して、旋回モータ(図示省略)により旋回自在に構成された旋回台25が設けられ、該旋回台25には、クレーンの操作を行うクレーン操作用キャビン28と起伏自在に設けられるブーム26とが枢支されている。このブーム26と旋回台25との間には起伏シリンダ27が接続されており、この起伏シリンダ27を伸縮させることで、ブーム26が起伏するようになっている。また、ブーム26は、内部に設けられた伸縮シリンダ(図示省略)を伸縮させることで伸縮自在となるように多段式に構成されている。
【0018】
起伏シリンダ27等の旋回台側に設けられる各種油圧アクチュエータは、旋回台に設けられたスイベルジョイント30を介して油圧ポンプ40からの作動油が供給されるようになっている。以下、詳しく説明する。
【0019】
シャシフレーム10の前方側に配置された走行用エンジン(図示省略)からの動力は、動力取出機構としてのPTO機構50を介して車両前後方向に向けて配置される第1プロペラシャフト41に伝達される。そして、第1プロペラシャフト41に伝達された動力は、第1プロペラシャフト41に連続して車両後方側に接続される第2プロペラシャフト42に伝達されることで、該第2プロペラシャフト42の後端部に固定された下部回転体としての下部プーリー43に伝達される。これら第1プロペラシャフト41、第2プロペラシャフト42及び下部プーリー43は、いずれもシャシフレーム10から下方に向かって突設される支持部44a,44b,44cによって回転自在に支持されており、シャシフレーム10の下部側に配置されるものである。
【0020】
一方、サブフレーム20の下端面より上方には、油圧ポンプ40が設けられている。実施例において、サブフレーム20の内部を部分的に表す図1に示されるように、油圧ポンプ40は、中空状に形成されたサブフレーム20の内側空間に配置されるものであり、図示例ではサブフレーム20の下板から上方に突設される支持部45a,45bによって支持されるものである。油圧ポンプ40から車体前方側に向かって突出して設けられる駆動軸40aは、サブフレーム20の下板から上方に突設される支持部46a,46bによって回転自在に支持されている。そして、駆動軸40aには、上部回転体としての上部プーリー47が締結手段等により固定されており、この上部プーリー47及び下部プーリー43には、動力伝達帯としてのベルト48が掛け回されている。油圧ポンプ40における作動油の出入口である接続口49にはサブフレーム20の内側空間に配設される油圧ホース(図示省略)の一端が接続されており、これら油圧ホースの他端がスイベルジョイント30の接続口(図示省略)に接続されるものである。また、駆動軸40aに対する上部プーリー47の固定位置は、車体前後方向に移動可能となるように、例えば、長さの異なる駆動軸40aが複数用意されていたり、駆動軸40aに上部プーリー用の固定部位が複数設けられていたりするものである。
【0021】
上記構成により、シャシフレーム10側において、走行用エンジンから第1プロペラシャフト41、第2プロペラシャフト42を介して下部プーリー43に伝達された動力は、ベルト48によって、シャシフレーム10の上端より上方(サブフレーム20の下端面より上方)であるサブフレーム20内部に配置された上部プーリー47に伝達され、油圧ポンプ40の駆動に用いられる。そして、油圧ポンプ40によって吐出される作動油は、サブフレーム20の下端面より上方であるサブフレーム20内部に配置された油圧ホースを流通してスイベルジョイント30に送られるものである。なお、下部プーリー43、ベルト48及び上部プーリー47によって、シャシフレーム10の下方から上方に動力を伝達する動力伝達機構が構成されるものである。
【0022】
このように、油圧ポンプ40が、中空状に形成されたサブフレーム20の内部空間に配置されているため、油圧ポンプ40とスイベルジョイント30との間に配設される油圧ホースをシャシフレーム10の上端より上方(サブフレーム20の下端より上方)に配置することができ、従来のように、油圧ホースがシャシフレーム10側の架装物に干渉することがない。これにより、油圧ホースの配置に関して、シャシフレーム10の構成を考慮する必要が殆どなく、シャシフレーム10とサブフレーム20とを含めた車体フレームとして油圧ホースの配置設計を行う必要がない。
【0023】
また、実施例によれば、サブフレーム20の内側空間に油圧ホースが配設されることから、サブフレーム20側のみで油圧ホースの配設が完了するため、油圧ホースが配設されたサブフレーム20をシャシフレーム10に固定することで車体フレームを構成することができる。これにより、従来のように、シャシフレーム10にサブフレーム20を固定してから油圧ホースを配設するという煩雑な作業を行う必要がない。また、製造ラインにおいては、サブフレームをシャシフレームに固定する前の段階で、油圧ポンプ、油圧ホース等が配置された状態のサブフレームを一時的に保管等する場合があるが、このような場合にサブフレームを積み重ねて保管することが可能となるため、保管スペースが少なくて済む。
【0024】
また、サブフレーム20の内側空間に油圧ホースが配設されることから、シャシフレーム10の下面側に油圧ホースが露出することがない。これにより、例えば走行中の車輪11によって跳ね上げられる石等によって油圧ホースが損傷する虞がなくなる。
【0025】
また、実施例によれば、シャシフレーム10の上部から下部にかけてベルト48を貫通させる必要があるため、ベルト48がシャシフレーム10側の架装物と干渉しないように配置されなければならない。そのため、シャシフレーム10側の架装物の配置変更を行う場合や、複数種類のシャシフレームに対応させる場合には、ベルト48の位置を変更する必要が生じるが、実施例によれば、上部プーリー47が前後方向に移動可能となるように構成されていることにより、シャシフレーム10側の架装態様の変更に柔軟に対応できる。
【0026】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、作業車としてトラッククレーンである例を示したが、これに限定されない。油圧ポンプによって駆動するアクチュエータが搭載された作業車であれば、本発明を採用することができ、例えば、高所作業車であっても構わない。
【0027】
また、上部回転体及び下部回転体としてプーリーを、動力伝達帯としてベルトをそれぞれ例示したが、これに限定されない。シャシフレーム側に設けられた走行用エンジンによる回転の動力をサブフレーム側に設けられた油圧ポンプに伝達できる機構であればよく、例えば、上部回転体及び下部回転体としてスプロケットを、動力伝達帯としてチェーンを用いた機構や、ギヤ等を組み合わせた機構でも構わない。
【0028】
また、油圧ポンプが、サブフレームの下板から上方に突設される支持部によって支持される例を示したが、これに限定されない。油圧ポンプは、シャシフレームの上端より上方(サブフレームの下端より上方)に設けられていればよいため、例えば、サブフレームの上板から下方に突設される支持部によって支持されることで、サブフレームの内側空間内に設けられるものでも構わない。また、油圧ポンプは、シャシフレームの上端より上方であれば、サブフレームの内側空間内に設けられている必要はなく、例えばサブフレームの上面より上方に突出して設けられていても構わない。
【0029】
さらに、油圧ポンプは、サブフレームに対して移動可能に設けられていてもよく、例えば車両前後方向に対して異なる位置に複数の支持部を設けることで前後方向に移動可能に構成したり、車両左右方向に対して異なる位置に複数の支持部を設けることで左右方向に移動可能に構成したりすることができる。このように油圧ポンプを車両の前後又は/及び左右に対して移動可能に構成することにより、シャシフレーム側の架装態様の変更に柔軟に対応できる。なお、このように構成された油圧ポンプの位置を変更する場合は、油圧ポンプと上部回転体とが接続された状態で移動することになる。
【符号の説明】
【0030】
1 トラッククレーン(作業車)
10 シャシフレーム
20 サブフレーム
40 油圧ポンプ
43 下部プーリー(動力伝達機構)
47 上部プーリー(動力伝達機構)
48 ベルト(動力伝達機構)
50 PTO機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャシフレームと、該シャシフレームの上方に配置されるサブフレームと、前記シャシフレームに配設される走行用エンジンと、該走行用エンジンに接続され前記シャシフレームの下部に配設される動力取出機構とを備えた作業車であって、
前記動力取出機構からの動力が、前記サブフレームに配設され該サブフレームの下端より上方に配置された油圧ポンプに対して動力伝達機構を介して伝達されることを特徴とする作業車。
【請求項2】
前記動力伝達機構は、前記動力取出機構に接続されるプロペラシャフトと該プロペラシャフトに固定される下部回転体と該下部回転体の回転が伝達され前記サブフレームの下端より上方に配置される上部回転体とによって構成され、該上部回転体が前記油圧ポンプに接続されていることを特徴とする請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記上部回転体は、油圧ポンプに接続された状態のまま、サブフレームの前後方向に対して所定の範囲で移動可能であることを特徴とする請求項2記載の作業車。
【請求項4】
前記油圧ポンプは、前記上部回転体が接続された状態のまま、サブフレームの左右方向に対して所定の範囲で移動可能であることを特徴とする請求項2又は3記載の作業車。
【請求項5】
前記サブフレームは、内側に空間を有する中空状に形成され、
前記油圧ポンプは、前記サブフレームの内側の空間に配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の作業車。


【図1】
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