説明

作業車

【課題】作業を行うときの周囲の明るさにかかわらず、運転者が不快に感じないで表示ランプの動作を適切に視認することが可能となり、異常であることを表示ランプによって運転者が判別し易いものとなる作業車を提供する。
【解決手段】車体運転部Aの操作パネル36に、複数種の異常のいずれかが発生したときにその発生した異常の内容を表示する異常表示部Fが備えられ、異常表示部Fよりも車体前方側に位置する状態で表示ランプ54が備えられ、異常が発生したときにその発生した異常の内容にかかわらず点滅作動させる形態で、且つ、点灯するときの光度を夜用の光度とその夜用の光度よりも大である昼用の光度とに切り換え可能な形態で、表示ランプ54の作動を制御する制御手段が備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体運転部の操作パネルに、複数種の異常のいずれかが発生したときにその発生した異常の内容を表示する異常表示部が備えられている作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
前記作業車の一例としてのコンバインにおいて、従来では、例えば特許文献1に記載されているように、前記異常表示部の一例としての表示パネルユニットの表示画面に異常の内容、例えばエンジン回転数が作業に適した回転数まで上昇していないこと等を文字情報により表示するように構成され、又、そのような表示画面とは別に、異常であることを運転者が判別し易いものにするために、表示ランプとしての警報用ランプが別途備えられ、異常を報知するときは、表示画面に異常の内容を表示すると共に警報用ランプを点灯させるように構成したものがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−248363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンバイン等の作業車では、作業を行うときの周囲の明るさが異なる場合がある。例えば、太陽が照っている昼間に作業を行う場合と、周囲が暗くなっている夜間に作業を行う場合とでは、周囲の明るさが大きく異なることになる。そして、太陽が照っている昼間に作業を行う場合であっても、表示ランプの点灯状態を視認することができるようにする必要がある。
【0005】
しかしながら、例えば、表示ランプが点灯するときの光度を、太陽が照っている場合であっても視認が可能なように大きめの光度に設定しておくと、周囲が暗くなっている夜間に作業を行う場合には、表示ランプの光度が大き過ぎて、運転者が眩しくて不快に感じるおそれがあり、この点で改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、作業を行うときの周囲の明るさにかかわらず、運転者が不快に感じないで表示ランプの動作を適切に視認することが可能となり、異常であることを表示ランプによって運転者が判別し易いものとなる作業車を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車は、車体運転部の操作パネルに、複数種の異常のいずれかが発生したときにその発生した異常の内容を表示する異常表示部が備えられているものであって、その第1特徴構成は、前記異常表示部よりも車体前方側に位置する状態で表示ランプが備えられ、異常が発生したときにその発生した異常の内容にかかわらず点滅作動させる形態で、且つ、点灯するときの光度を夜用の光度とその夜用の光度よりも大である昼用の光度とに切り換え可能な形態で、前記表示ランプの作動を制御する制御手段が備えられている点にある。
【0008】
第1特徴構成によれば、複数種の異常のいずれかが発生したときには、その発生した異常の内容が、車体運転部の操作パネルに備えられた異常表示部にて表示されるとともに、表示ランプが点滅作動することになる。
【0009】
車体運転部にて運転操作を行っている運転者は、車体前方側を目視しながら作業を行うものであるが、表示ランプは異常表示部よりも車体前方側に位置するので、車体前方側を目視する運転者の視界に入り易く、しかも、表示ランプが点滅することから、異常であることを表示ランプによって運転者が判別し易いものとなる。そして、異常の内容は異常表示部の表示によって認識することができ、その異常に対する対策が可能となる。
【0010】
又、制御手段は、点灯するときの光度を夜用の光度とその夜用の光度よりも大である昼用の光度とに切り換え可能な形態で表示ランプの作動を制御するものであるから、夜間に作業を行うときは、点灯するときの光度を夜用の光度に切り換えて表示ランプの作動を制御することで、運転者が眩しくて不快になることのない状態で、表示ランプの点滅状態を視認することが可能となる。一方、昼間に作業を行うときは、点灯するときの光度を昼用の光度に切り換えて表示ランプの作動を制御することで、太陽が照っている場合であっても表示ランプの点滅状態を視認することが可能となる。
【0011】
従って、作業を行うときの周囲の明るさにかかわらず、運転者が不快に感じないで表示ランプの動作を適切に視認することが可能となり、異常であることを表示ランプによって運転者が判別し易いものとなる作業車を提供できるに至った。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成に加えて、夜間作業用の照明灯と、その照明灯を点灯状態と消灯状態とに切り換える切換操作具とが備えられ、前記制御手段が、前記切換操作具の操作状態に基づいて、前記点灯状態に切り換えられたときは前記表示ランプが点灯するときの光度を前記夜用の光度に切り換え、且つ、前記消灯状態に切り換えられたときは前記表示ランプが点灯するときの光度を前記昼用の光度に切り換えるように構成されている点にある。
【0013】
第2特徴構成によれば、夜間に作業を行うときは、運転者が切換操作具を点灯状態に切り換えて照明灯を点灯させた状態で作業を行うことができ、昼間に作業を行うときは、照明は必要ないので、運転者が切換操作具を消灯状態に切り換えることになる。
【0014】
そして、制御手段が、切換操作具の操作状態に基づいて、照明灯の点灯状態に切り換えられたときは表示ランプが点灯するときの光度を夜用の光度に切り換え、且つ、照明灯の消灯状態に切り換えられたときは表示ランプが点灯するときの光度を昼用の光度に切り換えられるようにしたので、例えば、昼間であるか夜間であるかを判別するために特別な光センサを設ける等の構成の複雑化を招くことなく、この種の作業車では一般に備えられる照明灯の点灯状態と消灯状態とを切り換えるための切換操作具を利用して、簡易な構成で表示ランプの光度を切り換えることができる。
【0015】
本発明の第3特徴構成は、第1特徴構成又は第2特徴構成に加えて、警報音を発生するブザーが備えられ、前記制御手段が、異常が発生したときに設定周期で間欠的に前記ブザーを作動させるように構成され、且つ、発生した異常の内容の違いに応じて前記設定周期を異ならせるように構成されている点にある。
【0016】
第3特徴構成によれば、異常が発生したときは、異常表示部が異常の内容を表示すること、及び、表示ランプが点滅作動することに加えて、ブザーが作動して警報音を発生することになる。そして、発生した異常の内容の違いに応じて設定周期を異ならせて間欠的にブザーが作動するので、例えば、緊急な対策を要する異常であるか否かにより設定周期を異ならせることにより、発生した異常の内容を警報音により判断することが可能となる。
【0017】
その結果、ブザーという簡易な装置により警報を発生するものでありながら、例えば、緊急な対策を要する異常であるか否かをすぐに判断できるようにすることが可能となる。
【0018】
本発明の第4特徴構成は、第1特徴構成〜第3特徴構成のいずれかに加えて、作業装置に対する動力伝達を入り切り自在な作業クラッチと、エンジンの出力を変更調整自在なアクセル手段と、前記作業クラッチ及び前記アクセル手段を切り換え操作する切換操作用駆動手段と、作業開始指令を指令する手動操作式の作業指令手段と、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、前記エンジンの出力が前記作業装置に伝達している駆動状態であるか否かを検出する駆動状態検出手段とが備えられ、前記制御手段が、前記作業指令手段にて前記作業開始指令が指令されると、前記アクセル手段を定格回転状態にし且つ前記作業クラッチを入り状態にすべく前記切換操作用駆動手段の作動を制御するように構成され、且つ、前記作業指令手段にて前記作業開始指令が指令されたのち、前記回転数検出手段にて検出されるエンジン回転数が定格回転数であり且つ前記駆動状態検出手段にて前記駆動状態であることが検出されると、前記表示ランプを点灯作動させるように構成されている点にある。
【0019】
第4特徴構成によれば、作業を開始する場合に、運転者が作業開始指令手段にて作業開始指令が指令するだけで、エンジンが定格回転数にて回転する状態となり、しかも、作業クラッチが入り状態に切り換えられるので、手動操作にてエンジン回転数を変更調整したり、作業クラッチを入り操作する等の操作が不要となり、操作の煩わしさを解消することができる。
【0020】
又、作業指令手段にて作業開始指令が指令されたのち、回転数検出手段にて検出されるエンジン回転数が定格回転数であるという条件、及び、駆動状態検出手段にて前記駆動状態であることが検出されているという条件の2つの条件が夫々成立していれば、表示ランプを点灯作動させるようにしたので、運転者は、表示ランプが点灯作動することによって、エンジン回転数が定格回転数になっており、しかも、作業クラッチが入り状態になっていることを確認することができる。
【0021】
その結果、運転者が、作業指令手段にて作業開始指令が指令したのちに、表示ランプの点灯状態を確認してから、車体を走行させて作業を開始させるようにすることで、車体を走行させて作業を開始するときには、エンジン回転数が定格回転数になっており且つ作業クラッチが入り状態に切り換わっていることになる。
【0022】
従って、表示ランプを利用することにより、作業指令手段にて作業開始指令が指令されたときから、エンジン回転数が定格回転数になり且つ作業クラッチが入り状態になるまでの間に、運転者が誤って車体を走行させて作業を開始させることを回避させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】伝動装置の概略図である。
【図3】制御構成を示すブロック図である。
【図4】操縦部の平面図である。
【図5】表示装置の平面図である。
【図6】サイドパネルの斜視図である。
【図7】スイッチユニットを示す図である。
【図8】クラッチ切り換え部の脱穀クラッチと刈取クラッチとを切り操作した状態での側面図である。
【図9】クラッチ切り換え部の脱穀クラッチを入り操作し、刈取クラッチを切り操作した状態での側面図である。
【図10】クラッチ切り換え部の脱穀クラッチと刈取クラッチとを入り操作した状態での側面図である。
【図11】脱穀クラッチ操作体と刈取クラッチ操作体の操作域を示す説明図である。
【図12】アクセル操作部のアクセル操作具が設定低速位置に操作された状態での側面図である。
【図13】アクセル操作部の縦断正面図である。
【図14】アクセル操作部の分解斜視図である。
【図15】アクセル操作部の揺動操作体の操作過程での側面図である。
【図16】制御作動を示すフローチャート図である。
【図17】制御作動を示すフローチャート図である。
【図18】制御作動を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、作業車の一例としてのコンバインは、左右一対のクローラ式走行装置1、及び、運転座席2を備える車体運転部Aを装備した走行機体Bの前部に昇降操作自在に刈取部4が連結され、機体フレーム3の後部側箇所に機体横幅方向に並べる状態で脱穀装置5と穀粒タンク6とを備えて、圃場を走行しながら、稲、麦などの穀稈を刈取り、その刈取穀稈を脱穀処理するように構成されている。
【0025】
説明を加えると、刈取部4は、刈取り部フレーム4aが刈取部昇降用の油圧シリンダ(以下、刈取昇降シリンダという)7によって機体フレーム3に対して横軸芯X1周りで上下に揺動操作されることにより、刈取部4の前端部に位置する複数の分草具4bが地面付近に下降した下降作業状態と、分草具4bが地面から上昇した上昇非作業状態とに昇降するように構成されている。そして、刈取部4を下降作業状態にして走行機体Bを走行させると、刈取部4が、刈り取り対象の複数の植付け条に位置する植立穀稈を対応する分草具4bによって隣接する植付け条の植立穀稈と分草し、各分草具4bからの植立穀稈を対応した引起し装置4cによって引起し処理するとともに一つのバリカン形の刈取装置4dによって刈取り処理し、刈取り装置4dからの刈取穀稈を搬送装置4eによって後方に搬送して脱穀装置5の脱穀フィードチェーン5aの始端部に供給するように構成されている。
刈取部4の機体フレーム3に対する揺動支点位置には、刈取部4の走行機体Bに対する高さを検出する高さ検出用センサ51が設けられている。
【0026】
脱穀装置5は、脱穀フィードチェーン5aによって刈取穀稈の株元側を挟持して後方に搬送しながら穂先側を扱室(図示せず)に供給し、刈取穀稈を回動する扱胴(図示せず)によって脱穀処理するように構成されている。又、脱穀装置5から搬送された穀粒を穀粒タンク6にて回収して貯留するように構成され、穀粒タンク6にて貯留する穀粒は穀粒排出装置8により外部に排出するように構成されている。
【0027】
穀粒排出装置8は、穀粒タンクの底部に備えられた底スクリューコンベア(図示せず)から排出される穀粒を縦向き搬送経路に沿って上方に搬送する縦スクリューコンベア8Aと、その縦スクリューコンベア8Aの上端部から受渡される穀粒を横向き搬送経路に沿って横送り搬送する横スクリューコンベア8Bとを備えて構成され、この横スクリューコンベア8Bが、縦スクリューコンベア8Aの下部に備えられた旋回用の電動モータ55(以下、旋回モータという)にて縦軸芯Y周りで旋回自在に、且つ、油圧シリンダ56(穀粒排出昇降用シリンダという)により縦スクリューコンベア8Aの上端部の水平軸芯X2周りで昇降揺動自在に構成されている。これらの旋回モータ55と穀粒排出昇降用シリンダ56に対する制御弁56Aは、後述する制御部42により制御されるように構成されている。
【0028】
尚、詳述はしないが、搬送装置4 eの刈取穀稈の株元側の挟持位置を稈長方向に変更することにより、扱室における刈取穀稈の扱深さを変更調整自在な扱深さ調節装置(図示せず)が設けられ、扱深さが設定値になるように刈取穀稈の扱深さを自動調節する扱深さ調節を行うことができるように構成されている。又、左右のローリング用の油圧シリンダ(図示せず)の操作により、左右のクローラ式走行装置1の接地部の走行機体Bに対する高さを各別に変更調節自在に構成され、後述する制御部42が、走行機体Bの水平基準面からの左右傾斜角が設定値になるようにローリング用の油圧シリンダを制御するローリング制御を実行するように構成されている。
【0029】
図2に示すように、運転座席2の下方に設けたエンジン10の出力が、作業クラッチとしての脱穀クラッチ14を介して作業装置としての脱穀装置5に伝達される一方、エンジン10の出力が、ベルトテンション式の伝動装置11を介してミッションケース12の入力軸13に伝達され、入力軸13の動力が刈取変速装置15を介して刈取用出力軸16及び刈取クラッチ17を介して刈取部4に伝達される。尚、刈取変速装置15は刈取変速レバー44(図4参照)にて標準速度と低速状態とに切り換え可能に構成されている。又、エンジン10の出力がベルトテンション式の排出入切クラッチ9を介して入り切り自在に穀粒排出装置8に伝達されるようになっている。
【0030】
入力軸13に伝達される動力は、静油圧式の無段変速装置M及び副変速装置19にて変速したのち、左右の多板摩擦式のクラッチブレーキ26R,26Lを介して左右のクローラ式走行装置1の駆動スプロケット1aに伝達されるように構成されている。無段変速装置Mは、前進走行速度及び後進走行速度を無段階に変速する走行変速装置として機能するものであり、中立位置から前進操作域及び後進操作域の夫々に操作自在な走行変速操作具としての主変速レバー24(図4参照)にて操作されるように構成されている。又、副変速装置19は、副変速レバー20にて作業用変速状態、移動用変速状態、中立状態に切り換え操作可能に構成されている。
【0031】
左右のクラッチブレーキ26R,26Lは夫々油圧ピストン27R,27Lにて操作され、左右のクローラ式走行装置1に対して各別に走行用動力を断続し且つ動力遮断状態でブレーキとして機能するように構成されている。
【0032】
図4に示すように、車体運転部Aにおける運転座席2の前方に位置するフロントパネル35には、前後方向並びに左右方向に揺動操作自在な操縦レバー18、警報ホーンを作動させるホーンスイッチ28、刈取クラッチ17に対する自動操作(以下、刈取オートクラッチ操作という場合がある)を行なう自動操作指令と自動操作を行なわない自動停止指令を指令する自動操作スイッチ52、キーKを挿入されて操作されるメインスイッチJが備えられている。
【0033】
運転座席2の横側に位置する操作パネルとしてのサイドパネル36には、主変速レバー24、副変速レバー20、アクセル手段としての調速装置(ガバナ)63を操作するためのアクセル操作具60、刈取変速レバー44が備えられ、又、ローリング制御の入り切り等を指令するローリング制御用操作部45、扱深さ制御の入り切り等を指令する扱深さ制御用操作部46、車体運転部Aの前部に機体前方側を照明可能に設けられた照明灯の一例としての上下2個の前照灯21、穀粒排出用の横スクリューコンベア8Bの先端に備えられた排出口用ライト100、横スクリューコンベア8Bの途中部に設けられて脱穀装置5の扱室入口を照らす扱口用ライト101の入切、及び、方向指示器(図示せず)の入切を指令するコンビネーションスイッチ47、刈取クラッチ17の入切を指令する手動操作式のクラッチ操作指令手段としての掻込み指令スイッチ50が備えられている。
【0034】
コンビネーションスイッチ47について説明を加えると、前照灯21や各部に備えられる他の作業灯の入切を指令するための照明用スイッチ部47aと、方向指示器(図示せず)の入切を指令するための方向指示用スイッチ部47bとを備え、それらは共に上下軸芯周りで回動操作させるものであり、照明用スイッチ部47a(切換操作具の一例)は、切位置「0」、1段操作位置「1」、2段操作位置「2」の3段階に回動操作自在であり、切位置「0」に操作されると、上下2個の前照灯21、排出口用ライト100、扱口用ライト101は全ては消灯状態となり、1段操作位置「1」に操作されると、上下2個の前照灯21のうちの上部側の前照灯21だけを点灯し、下部側の前照灯21、排出口用ライト100、及び、扱口用ライト101は消灯状態となり、2段操作位置「2」に操作されると、上下2段の前照灯21、排出口用ライト100、及び、扱口用ライト101が全て点灯状態となる。
【0035】
図6に示すように、サイドパネル36には、ローリング制御用操作部45、扱深さ制御用操作部46、コンビネーションスイッチ47、掻込み指令スイッチ50が備えられる箇所は、主変速レバー24や副変速レバー20等の各レバーが備えられる箇所よりも運転座席側に向けて立ち上がる斜め姿勢に形成され、操作し易いように構成されている。
【0036】
又、サイドパネル36の前部に位置する縦向きパネル部36Aには、種々の情報を表示するための表示装置F、作業開始指令および作業停止指令を指令する手動操作式の作業指令手段としての作業指令スイッチ25、異常状態であることを表示するとともに、刈取作業を実行することが可能な状態であることを報知する表示ランプ54が備えられている。
【0037】
図6に示すように、作業指令スイッチ25は表示装置Fの後方下方側に位置する状態で設けられ、表示ランプ54が表示装置Fの機体前方上方側における縦向きパネル36Aに位置する状態で設けられている。このようにして、刈取作業に伴って機体前方を目視する運転者が表示ランプ54の点灯状態を目視し易くなるように構成されている。
【0038】
図5に示すように、表示装置Fは、エンジン回転数及びエンジン10の稼動時間を累積した累積稼動時間を表示する液晶表示式の情報表示部80と、各種の異常状態を報知する報知表示部81とを備えて構成されている。
つまり、情報表示部80は、左側に図示しない燃料タンク内の燃料貯留量を表示する燃料表示部82が備えられ、右側にエンジン10の冷却水の温度を表示する水温表示部83が備えられ、左右中央部にエンジン回転数及び累積稼動時間を表示する数値表示部84が備えられている。又、数値表示部84の上側には、数値表示部84にて表示しているのが累積稼動時間であることを模様で示す時間表示識別部85と、数値表示部84にて表示しているのがエンジン回転数であることを模様で示す回転数表示識別部86とを備えて構成されている。数値表示部84は、4桁の数字を表示する4つの数字と小数点を表示するように構成されている。
【0039】
前記報知表示部81には、エンジン10の負荷が過大であることを報知する負荷異常表示部87、穀粒タンク6の穀粒の貯留量が満杯になっていることを表示する貯留量満杯表示部88、排ワラ搬送経路中にて排ワラ詰まりが発生していることを表示する排ワラ異常表示部89、脱穀装置5内の2番回収部にて搬送詰まりが発生していることを表示する2番回収部異常表示部90、エンジン10の潤滑用に供給されるオイルの圧力が低下している状態であることを表示する油圧異常表示部91、バッテリーの充電量が少ない状態であることを表示するバッテリー異常表示部92、前照灯21や他の作業灯の点灯作動が指令されていることを表示する作業灯表示部93、方向指示器の作動が指令されていることを表示する方向指示表示部94が備えられている。
ちなみに、作業灯表示と方向指示器の作動は、異常状態ではないので、それ以外の他のものを表示する色(警告を意味する赤色)とは異なる色(黄色)で表示するようになっている。
【0040】
報知表示部81における各表示部87〜94は、下方内奥側にランプ(図示せず)が内装され、且つ、表示面部分には、文字又は絵文字がランプにより明るく照らされるようにマスキング処理が施されている。このようにして、ランプが点灯すると運転者が異常の内容をすぐに視認することができるように構成されている。
ちなみに、詳細な説明は省略するが、上記したような各種の異常状態は、対応する箇所に夫々設置される図示しない検出センサ等により検出する構成となっている。
【0041】
従って、表示装置Fが、複数種の異常のいずれかが発生したときにその発生した異常の内容を表示する異常表示部を構成する。
【0042】
サイドパネル36の後部に、そのサイドパネル36のパネル面よりも高い位置に位置させる状態で水平な上部面を備えた後部側パネル部36Bが設けられ、この後部側パネル部36bの上部に、横スクリューコンベア8Bの昇降動作及び旋回動作を指令するためのスイッチユニット57が備えられている。尚、スイッチユニット57の近傍には、排出入切クラッチ9を入り切り操作するためのクラッチレバー58が備えられている。
【0043】
スイッチユニット57は、図7(a)に示すように、横スクリューコンベア8bの上昇を指令する上昇スイッチ57a、横スクリューコンベア8bの下降を指令する下降スイッチ57b、横スクリューコンベア8bの右方向への旋回を指令する右旋回スイッチ57c、横スクリューコンベア8bの左方向への旋回を指令する左旋回スイッチ57d、横スクリューコンベア8Bを機体の右側の張り出し位置まで自動で旋回させる右方排出位置移動スイッチ57e、横スクリューコンベア8Bを機体の後方側の張り出し位置まで自動で旋回させる後方排出位置移動スイッチ57f、横スクリューコンベア8Bを機体上部に設定されている収納位置に自動で移動させる収納スイッチ57g、旋回移動を停止させる停止スイッチ57hの夫々が備えられている。
【0044】
尚、前記各スイッチのうち、上昇スイッチ57a、下降スイッチ57b、右旋回スイッチ57c、及び、左旋回スイッチ57dによる操作があると、制御部42は、押し操作している間、横スクリューコンベア8Bの移動操作を行うよう構成され、右方排出位置移動スイッチ57e、後方排出位置移動スイッチ57f、及び、収納スイッチ57gが、設定時間(例えば数秒間)以上継続して押し操作されると、自動移動を開始させるように構成されている。停止スイッチ57hが操作されると、直ちに移動を停止させるように構成されている。ちなみに、横スクリューコンベア8Bの旋回位置は図示しない旋回位置センサにより検出するようになっている。
【0045】
この実施形態では、排出入切クラッチ9はクラッチレバー58の手動操作により入り切りする構成となっているが、排出入切クラッチ9を電動モータ等のアクチュエータを用いて入り切りしてもよい。このように構成する場合には、例えば、図7(b)に示すように、スイッチユニット57に、排出動作を指令するための排出スイッチ57iを設けることになるが、排出スイッチ57iを備えるものと備えないもののいずれであっても、外形形状が同一のユニット状に構成して機体支持部分を共用する構成とし、仕様変更を容易に行えるようになっている。
【0046】
図2,図8〜図10に示すように、脱穀クラッチ14は、エンジン10の出力軸10aと脱穀装置5の入力軸5bとにわたって巻回された伝動ベルト14aと、テンションアーム14bとを備えて構成されている。刈取クラッチ17は、刈取用出力軸16と刈取部4の入力軸4fとにわたって巻回された伝動ベルト17aと、テンションアーム17bとを備えて構成されている。
【0047】
そして、脱穀クラッチ14と刈取クラッチ17とは、テンションアーム14b,17bがクラッチ入り姿勢に揺動操作されると、このテンションアーム14b,17bがこれの遊端部に設けてあるテンション輪体14c,17cによって伝動ベルト14a,17aを緊張状態に押圧操作することによって入り状態に切り換わり、テンションアーム14b,17bがクラッチ切り姿勢に揺動操作されると、このテンションアーム14b,17bが伝動ベルト14a,17aの緊張操作を解除することによって切り状態に切り換わる、いわゆる、ベルトテンションクラッチになっている。
【0048】
図8〜図12に示すように、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ14の切り換え操作及び調速装置63の切り換え操作を行う切換操作用駆動手段としての切換操作用の電動モータ(以下、切換操作用モータという)22が設けられている。つまり、単一の切換操作用モータ22にて、脱穀クラッチ14、刈取クラッチ17、及び、調速装置63を操作するように構成されている。
【0049】
説明を加えると、切換操作用モータ22の回動操作に伴って、調速装置63の速度調整レバー64、刈取クラッチ17、脱穀クラッチ14の夫々を連動操作すべく、切換操作用モータ22と脱穀クラッチ14及び刈取クラッチ17とを連動連係するクラッチ切り換え部23、及び、切換操作用モータ22と調速装置63とを連動連係するアクセル操作部Gを備えて構成されている。
【0050】
次に、クラッチ切り換え部23について説明する。
図8〜図11に示すように、クラッチ切り換え部23は、切換操作用モータ22を取り付けた支持枠30が備えるボス部30a(図12参照)に回転自在に支持されたアーム形の脱穀クラッチ操作体31と、この脱穀クラッチ操作体31を脱穀クラッチ14のテンションアーム14bに連動させている脱穀クラッチ連動機構32と、前記ボス部30aに回転自在に支持されたアーム形の刈取クラッチ操作体33と、この刈取クラッチ操作体33を刈取クラッチ17のテンションアーム17bに連動させている刈取クラッチ連動機構34とを備えている。脱穀クラッチ操作体31と刈取クラッチ操作体33とは、前記ボス部30aに回転自在に支持された一本の回転支軸37に一体回転自在に連結されている。支持枠30は、サイドパネル36の下方に配置した操縦部フレーム(図示せず)に取り付けられている。
【0051】
切換操作用モータ22は、電動モータ本体22aと、この電動モータ本体22aに連結された減速出力ケース22bと、この減速出力ケース22bに回転自在に支持された出力ギヤ22cとを備えている。減速出力ケース22bは、電動モータ本体22aの出力をケース内のギヤ減速機構(図示せず)によって出力ギヤ22cに伝達する。
【0052】
脱穀クラッチ操作体31と刈取クラッチ操作体33とを備えた回転支軸37は、これの一端部に一体回転自在に設けた扇形ギヤ38を備えている。扇形ギヤ38は、出力ギヤ22cに噛み合っており、切換操作用モータ22によって正回転方向に回転駆動されて回転支軸37を回転操作することにより、脱穀クラッチ操作体31と刈取クラッチ操作体33とを回転支軸37の軸芯まわりに一体に正回転方向に回転操作する。扇形ギヤ38は、切換操作用モータ22によって逆回転方向に回転駆動されて回転支軸37を回転操作することにより、脱穀クラッチ操作体31と刈取クラッチ操作体33とを回転支軸37の軸芯まわりに一体に逆回転方向に回転操作する。
【0053】
脱穀クラッチ連動機構32は、脱穀クラッチ操作体31の遊端部に一端側が連結された連動杆32aと、この連動杆32aの他端側をテンションアーム14aに一体成形して設けた操作用アーム部14dに連結する連動スプリング32bとを備えて構成されている。前記連動杆32aと脱穀クラッチ操作体31とは、連結ピン31aを介して相対回転自在に連結している。
【0054】
刈取クラッチ連動機構34は、刈取クラッチ操作体33の遊端部に一端側が連結された連動杆34aと、この連動杆34aの他端側を前記テンションアーム17bに連結している連動スプリング34bとを備えて構成されている。前記連動杆34aと刈取クラッチ操作体33とは、連結ピン33aを介して相対回転自在に連結している。
また、この刈取クラッチ連動機構34は、前記連動スプリング34bとテンションアーム17bとにわたって設けた融通付き連動部39を備えている。この融通付き連動部39は、連動スプリング34bの端部34cをフック形に形成することによって連動スプリング34bに設けた長溝34dと、この長溝34dに摺動自在に係入した状態でテンションアーム17bに設けた連動ピン40とを備えて構成してあり、そして、刈取クラッチ操作体33の操作位置により、連動ピン40が長溝34dの内部を移動して連動スプリング34bと連動ピン40とを相対移動させる融通状態と、連動ピン40が長溝34d内の端部に位置して連動スプリング34bに当接することによって連動スプリング34bと連動ピン40とを一体移動させる融通解除状態とに切り換わるようになっている。
【0055】
図8は、クラッチ切り換え部23の脱穀クラッチ14と刈取クラッチ17とを切り操作した状態での側面図であり、図9は、クラッチ切り換え部23の脱穀クラッチ14を入り操作し、刈取クラッチ17を切り操作した状態での側面図であり、図10は、クラッチ切り換え部23の脱穀クラッチ14と刈取クラッチ17とを入り操作した状態での側面図であり、図11は、脱穀クラッチ操作体31と刈取クラッチ操作体33との操作域を示す説明図である。
【0056】
これらの図に示すように、脱穀クラッチ操作体31と刈取クラッチ操作体33とは、切換操作用モータ22によって扇形ギヤ38が回転操作されることにより、正回転方向Z1と逆回転方向Z2とに回転支軸37の軸心周りに一体的に回転操作されることになり、この回転操作により、脱穀クラッチ14と刈取クラッチ17とがともに切り状態となるクラッチ切り位置U1、脱穀クラッチ14が入り状態となり且つ刈取クラッチ17が切り状態となる脱穀クラッチ入り位置U2、及び、脱穀クラッチ14と刈取クラッチ17とがともに入り状態となる刈取クラッチ入り位置U3に回転されることになる。
【0057】
説明を加えると、脱穀クラッチ入り位置U2は、脱穀クラッチ操作体31のデッドポイントDに対して、クラッチ切り位置U1が存在する側に寄った位置にある。脱穀クラッチ操作体31のデッドポイントDは、脱穀クラッチ操作体31の操作位置のうち、脱穀クラッチ操作体31による脱穀クラッチ連動機構32の引っ張り操作ストロークが最大となる操作位置に対応する。
【0058】
脱穀クラッチ操作体31がクラッチ切り位置U1に操作されると、脱穀クラッチ連動機構32は、脱穀クラッチ操作体31による引張り操作が解除されてテンションアーム14bをクラッチ切り姿勢に操作する(図8参照。)。このとき、刈取クラッチ操作体33もクラッチ切り位置U1に位置し、刈取クラッチ連動機構34は、刈取クラッチ操作体33による引張り操作が解除されてテンションアーム17bをクラッチ切り姿勢に操作する。
【0059】
脱穀クラッチ操作体31がクラッチ切り位置U1から正回転方向Xに回転操作されると、これに伴って脱穀クラッチ操作体31は、デッドポイントDの手前の脱穀クラッチ入り位置U2に位置する(図9参照。)。このとき、脱穀クラッチ連動機構32は、脱穀クラッチ操作体31による引張り操作のためにテンションアーム14bをクラッチ入り姿勢に操作し、刈取クラッチ連動機構34は、テンションアーム17bをクラッチ切り姿勢に操作している。
【0060】
脱穀クラッチ操作体31が更に正回転方向に回転操作されると、脱穀クラッチ操作体31は、デッドポイントDを超える(図10参照。)。このとき、脱穀クラッチ連動機構32は、脱穀クラッチ操作体31による引張り操作のためにテンションアーム14bをクラッチ入り姿勢に維持し、刈取クラッチ連動機構34は、刈取クラッチ操作体33による引張り操作のためにテンションアーム17bをクラッチ入り姿勢に操作する。
【0061】
脱穀クラッチ操作体31と刈取クラッチ操作体33とがクラッチ切り位置U1から脱穀クラッチ入り位置U2に向けて正回転方向Xに回転操作される際、融通付き連動部39が融通状態にあり、脱穀クラッチ操作体31と刈取クラッチ操作体33とが脱穀クラッチ入り位置U2から刈取クラッチ入り位置U3に回転操作される際に、融通付き連動部39が融通解除状態に切り換わる。
【0062】
図12〜図14に示すように、アクセル操作部Gは、サイドパネル36に配置されたアクセル操作具60及び切換操作用モータ22によって調速装置63を操作して、エンジン10の回転速度を調速するように構成されている。
【0063】
説明を加えると、アクセル操作具60の基部が、支持枠30に支持された支軸61に回転自在に外嵌支持され、その支軸61に摩擦板68aが外嵌され、回転支軸37の一端側に揺動操作体69が支持され、支軸61の一端部に操作部70が設けられている。
アクセル操作具60は、支軸61の軸芯まわりに揺動操作するように支持されており、その基部には一体形成した出力アーム部60aを備えている。この出力アーム部60aは、スプリング66とアクセルケーブル62とを介して、エンジン10に設けられた調速装置63の速度調整レバー64に連動されている。
摩擦板68aは、取り付けネジ71による締め付けと皿バネ68bによってアクセル操作具60の基部に圧接されて、アクセル操作具60に摩擦抵抗を付与する。
【0064】
揺動操作体69は、回転支軸37に設けた小判形部37aに取り付け筒部69aによって一体回動自在に連結されている。つまり、揺動操作体69は、回転支軸37を介して脱穀クラッチ操作体31に一体揺動自在に連動している。
【0065】
操作部70は、アクセル操作具60及び揺動操作体69とは別体に構成して支軸61に遊転自在に支持された板体によって構成されており、支軸61の軸芯まわりにアクセル操作具60と相対揺動する。この操作部70は、これの遊端部に支軸72を介して遊転自在に取り付けたローラ73によって形成された受動部70aと伝動部70bとを備えている。ローラ73は、支持枠30に設けた円弧形の長孔74を挿通してその長孔74に沿って移動するよう構成されている。
【0066】
受動部70aは、揺動操作体69の端部69bに当接して揺動操作体69による操作力を受け、操作部70を支軸61の軸芯まわりに揺動させる。伝動部70bは、アクセル操作具60の出力アーム部60aに当接し、操作部70によるアクセル操作具60の増速方向への押圧揺動操作を可能にする。
【0067】
操作部70は、これの基部に一体成形されたバネ受け部70cを備えている。操作部70は、バネ受け部70cに作用する巻きバネ75によって、図15(c),(d)に示す待機位置Tに揺動付勢される。
すなわち、図12に示すように、巻きバネ75は、支軸61に装着されている。そして、巻きバネ75の一対の端部75a,75aは、バネ受け部70cと、支持枠30に設けられた軸状のバネストッパ76とを挟むように配置されている。図15(c),(d)は、前述の如く、操作部70が待機位置Tに位置した状態を示しているが、図15(b)は、操作部70が待機位置Tから作用方向a1に揺動操作された状態を示している。
【0068】
これらの図に示すように、操作部70が待機位置Tから作用方向a1に揺動操作されると、これに伴い、操作部70のバネ受け部70cが巻きバネ75の一方の端部75aを押圧するように移動する。このとき、巻きバネ75の他方の端部75aがバネストッパ76によって受け止め支持される。操作部70が待機位置Tから解除方向b1に揺動操作されると、これに伴い、操作部70のバネ受け部70cが巻きバネ75の他方の端部75aを押圧するように移動する。このとき、巻きバネ75の一方の端部75aがバネストッパ76によって受け止め支持される。これにより、巻きバネ75は、操作部70が作用方向a1と解除方向b1とのいずれの方向に揺動操作された場合も、操作部70の回転に伴って弾性変形され、操作部70を待機位置Tに復帰させるように付勢する。
【0069】
すなわち、アクセル操作部Gは、人為操作によるアクセル操作具60の操作によっても、切換操作用モータ22によるアクセル操作具60の操作によってもエンジン10の回転速度を調節するように構成されている。
説明を加えると、アクセル操作具60が人為操作されると、出力アーム部60aが支軸61の軸芯周りに揺動してアクセルケーブル62を引っ張り操作したり緩め操作したりする。引っ張り操作されたアクセルケーブル62は、調速アーム64をこれの復元力に抗して揺動操作し、エンジン10を回転数が増加するよう調速する。緩め操作されたアクセルケーブル62は、調速アーム64をこれの復元力によって揺動操作し、エンジン10を回転速度が減少するよう調速する。このようにエンジン10の調速操作が行われた場合、アクセル操作具60は、摩擦板68aと皿バネ68bによる摩擦保持力によって調速アーム64の復元力に抗して任意の操作位置に保持され、エンジン10の回転数を調速された回転数に維持する。
【0070】
図15(a)は、アクセル操作部Gのアクセル操作具60がエンジン10のアイドリング回転数に対応する設定低速位置Lに操作され、揺動操作体69がクラッチ切り位置U1に対応する位置に操作された状態での側面図である。図15(b)は、揺動操作体69がクラッチ入り位置U1に対応する位置から脱穀クラッチ入り位置U2に対応する位置に操作される過程での側面図であり、図15(c)は、アクセル操作部Gの揺動操作体69が刈取クラッチ入り位置U3に対応する位置に操作された状態での側面図であり、さらに、図15(d)は、アクセル操作部Gの揺動操作体69がクラッチ切り位置U1に対応する位置に戻し操作された状態での側面図である。
【0071】
これらの図に示すように、切換操作用モータ22が脱穀クラッチ14を入り状態に切り換えるよう脱穀クラッチ操作体31を揺動操作すると、この脱穀クラッチ操作体31が回転支軸37を介して揺動操作体69をクラッチ切り位置U1に対応する位置から正回転方向a2に揺動操作する。揺動操作体69の揺動に伴い、揺動操作体69の端部69bが待機位置Tに位置している操作部70の受動部70aに当接する。すると、受動部70aが揺動操作体69の操作力を受け、操作部70が待機位置Tから作用方向a1に揺動する。このとき、アクセル操作具60が定格回転状態に対応する設定高速位置H以外の位置にあると、例えば、エンジン10の回転数がアイドリンク回転数になっていると、操作部70の伝動部70bがアクセル操作具60の出力アーム部60aに当接する。すると、操作部70が伝動部70bによってアクセル操作具60を押圧して移動操作する。これにより、アクセル操作部Gが作動してエンジン10を増速側に調速する。
【0072】
揺動操作体69が脱穀クラッチ入り位置U2に対応する位置に至るに伴って、操作部70がアクセル操作具60をエンジン10が定格回転数で回転する定格回転状態に対応する設定高速位置Hに操作する。アクセル操作具60が設定高速位置Hに至った後、操作部70の受動部70aが揺動操作体69の端部69bから離間し、切換操作用モータ22が刈取クラッチ17を入り操作するために更に回動して揺動操作体69が刈取クラッチ入り位置U3に対応する位置に揺動しても、操作部70によるアクセル操作具60の移動操作が行われず、アクセル操作具60は、設定高速位置Hに摩擦板68aによって保持され、エンジン10は、アクセル操作具60の設定高速位置Hに対応した定格回転数で回転する。
【0073】
エンジン10が定格回転数で回転する状態になった後、揺動操作体69の端部69bが操作部70の受動部70aから外れ、操作部70が巻きバネ75による揺動付勢によって待機位置Tに復帰する。すると、アクセル操作具60は、操作部70と揺動操作体69とによる揺動規制を受けない状態になる。
【0074】
エンジン10が定格回転数で回転する状態に調速された後、切換操作用モータ22が刈取クラッチ17を切り状態に操作するよう刈取クラッチ操作体33を揺動操作すると、揺動操作体69が脱穀クラッチ操作体31と共に逆回転方向b2に揺動する。すると、揺動操作体69の端部69bが操作部70の受動部70aから外れ、操作部70は、巻きバネ75による揺動付勢によって待機位置Tに復帰し、次に揺動操作体69が正回転方向a2に揺動操作された際、揺動操作体69の端部69bと操作部70の受動部70aとが当接するようになる。すなわち、操作部70が揺動操作体69によって作用方向a1に揺動操作されるようになる。
【0075】
切換操作用モータ22が脱穀クラッチ14を切り状態に切り換えるよう脱穀クラッチ操作体31を揺動操作すると、揺動操作体69が逆回転方向b2にさらに揺動する。このとき、揺動操作体69の端部69bが待機位置Tに位置している操作部70の受動部70aに当接し、操作部70が待機位置Tから解除方向b1に揺動しても、操作部70がアクセル操作具60に押圧作用しない。これにより、アクセル操作具60は、設定高速位置Hに維持され、エンジン10は定格回転数で回転する状態を維持する。
【0076】
図3に示すように、制御部42には、上記したような、作業指令スイッチ25、掻込み指令スイッチ50、高さ検出用センサ51、自動操作スイッチ52の他、主変速レバー24の操作位置を検出する操作位置検出手段としての変速検出用センサ41、脱穀クラッチ操作体31の位置を検出する駆動状態検出手段としての操作体位置検出用センサ43、エンジン回転数を検出する回転数検出手段としてのエンジン回転数センサ53、表示ランプ54、及び、横スクリューコンベア8bを旋回及び昇降操作するためのスイッチユニット57が接続されている。図示はしていないが、コンビネーションスイッチ47の情報も制御部42に入力される。
【0077】
制御部42には、さらに、刈取昇降指令用センサ95、及び、操向指令用センサ96が接続され、これら刈取昇降指令用サンサ95及び操向指令用センサ96は、車体運転部Aの運転座席2の前方に設けた操縦レバー18の操作位置を検出するようになっている。
説明を加えると、操縦レバー18が前後方向並びに左右方向に揺動操作されるようになっており、操縦レバー18が中立操作位置nから前方に揺動されると刈取昇降指令用センサ95が下降指令を指令し、操縦レバー18が中立操作位置nから後方に揺動されると刈取昇降指令用センサ95が上昇指令を指令するように構成され、そして、操縦レバー18が中立操作位置nから左方に揺動されると操向指令用センサ96が左旋回指令を指令し、操縦レバー18が中立操作位置nから右方に揺動されると操向指令用センサ96が右旋回指令を指令するように構成されている。
【0078】
そして、制御部42は、刈取昇降指令用センサ95からの上昇指令及び下降指令に基づいて制御弁7Aを操作して刈取昇降用シリンダ7を作動させることにより、刈取部4を昇降させることになり、また、操向指令用センサ18Bの左旋回指令及び右旋回指令に基づいて制御弁97R,97Lを操作して油圧ピストン27R,27Lを作動させることにより、左旋回や右旋回を行わせるようになっている。
【0079】
制御部42は、作業指令スイッチ25の指令、掻込み指令スイッチ50の指令、自動操作スイッチ52の指令、高さ検出用センサ51の検出情報、変速検出用センサ41の検出情報、操作体位置検出用センサ43の検出情報、エンジン回転数センサ53の検出情報に基づいて、後述する制御作動を実行すべく切換操作用モータ22を作動させ、制御弁7Aに上昇指令及び下降指令を指令して刈取昇降シリンダ7を作動させ、さらに、表示ランプ54を作動させるように構成されている。
【0080】
前記作業指令スイッチ25の指令について説明を加えると、この作業指令スイッチ25は、ランプ付きロック無しスイッチにて構成され、スイッチランプ25Aが内装されており、押し操作される毎に作業開始を指令するON状態と作業停止を指令するOFF状態とに切り換わり、且つ、ON状態に切り換わっているときは、内装するスイッチランプ25Aが点灯し、OFF状態に切り換わっているときは、内装するスイッチランプ25Aが消灯するように、制御部42にて作動が制御される。
【0081】
そして、制御部42は、作業指令スイッチ25にて作業開始指令が指令されたのち、エンジン回転数センサ53にて検出されるエンジン回転数が定格回転数であり且つ操作体位置検出用センサ43にて脱穀装置5がエンジン10の出力にて駆動されている駆動状態すなわち、脱穀クラッチ14が入り状態に操作されている状態であることが検出されると、表示ランプ54を点灯作動させるように構成されている。
【0082】
制御部42は、作業指令スイッチ25にて作業開始指令が指令されて、エンジン10が定格回転状態であり且つ脱穀クラッチ14が入り状態であるときに、運転操作状態検出手段に相当する変速検出用センサ41の検出情報に基づいて、主変速レバー24が前進走行用操作位置でかつ設定速度以上の高速側に操作されると、刈取作業開始条件が満たされたと判別して、刈取クラッチ17を入り状態にし、かつ、上記刈取作業開始条件が満たされていないことを判別すると刈取クラッチ17を切り状態にすべく、切換操作用モータ22の作動を制御するように構成されている。
【0083】
又、制御部42は、表示ランプ54を点灯作動させて刈取作業が行われているときに、上述したように各種の異常状態が発生すると、報知表示部81における複数の表示部87〜94のちの発生した異常に対応する表示部を点灯作動させるとともに、警報音を発生するブザーBZを設定周期で間欠的に作動させるとともに、表示ランプ54を点滅作動させて、異常が発生したことを運転者に報知するように構成されている。
【0084】
そして、制御部42は、点灯するときの光度を夜用の光度とその夜用の光度よりも大である昼用の光度とに切り換え可能な形態で、表示ランプ54の作動を制御するよう構成されている。具体的には、照明用スイッチ部47aの操作状態に基づいて、消灯状態(切位置「0」)に切り換えられたときは表示ランプ54が点灯するときの光度を夜用の光度に切り換え、且つ、点灯状態(1段操作位置「1」又は2段操作位置「2」)に切り換えられたときは表示ランプが点灯するときの光度を昼用の光度に切り換えるように構成されている。
ちなみに、「点灯するときの光度」というのは、表示ランプ54を連続点灯させているときの光度、及び、点灯と消灯とを繰り返す点滅作動において、点灯状態になるときの光度の両方を含むものである。
【0085】
さらに、発生した異常の内容の違いに応じてブザーBZを作動させる設定周期を異ならせるように構成されている。つまり、異常状態として、エンジン10の負荷が過大であり、エンジン回転数が予め設定している設定回転数を下回ると、表示ランプ54を点滅作動させるとともに、ブザーBZを比較的長めの第1設定周期で間欠的に作動させる。そして、さらにエンジン10の負荷が大きくなり、エンジン回転数が設定回転数よりも低く設定されている下限回転数を下回り、これ以上作業を継続するとエンストするおそれがあるような場合には、ブザーBZを第1設定周期よりも短い第2設定周期で間欠的に作動させる。このようにして緊急を要する状況であることを運転者に報知させるようにしている。
【0086】
次に、制御部42の制御作動についてフローチャートに基づいて説明する。
図16〜図18に示すように、メインスイッチJにより電源が投入されて起動されると、操作体位置検出用センサ43の検出情報に基づいて、脱穀クラッチ14が入り状態であるか否かが判断され(♯1)、入り状態であるときには、「脱穀クラッチ切り」の制御を実行する(♯2)。
この「脱穀クラッチ切り」の制御は、操作体位置検出用センサ43の検出情報に基づいて、切換操作用モータ22が脱穀クラッチ操作体31をクラッチ切り位置U1に操作し、脱穀クラッチ連動機構32を介して脱穀クラッチ14を切り状態に操作することになり、これと同時、切換操作用モータ22が刈取クラッチ操作体33をクラッチ切り位置U1に操作し、刈取クラッチ連動機構34を介して刈取クラッチ17を切り状態に操作することになる。
【0087】
次に、エンジン10が始動された否かが判断され(#3)、始動されていないときにはメインスイッチJがOFF位置に操作されたか否かが判断される(#4)。ちなみに、エンジン回転数センサ53にて検出される回転数が始動判定用回転数以上になることにより、エンジン10が始動したと判断される。
【0088】
エンジン10が始動され、作業指令スイッチ25がON状態に切り換わり作業開始指令が指令されると(#5)、スイッチランプ25Aを点灯する(#6)。
そして、照明用スイッチ部47aが点灯状態(1段操作位置「1」又は2段操作位置「2」)に切換えられているか否かを判別し、点灯状態に切り換えられていれば、表示ランプ54を点灯させるときの光度を夜用の光度に設定し、点灯状態に切り換えられていなければ、表示ランプ54を点灯させるときの光度を昼用の光度に設定する(#7,#8,#9)。
【0089】
この表示ランプ54の光度について説明すると、昼用の光度は、昼間に太陽が照っている状態で作業を行う場合であっても、表示ランプ54が点灯していることを運転者が視認することが可能なように大きめの光度が設定されている。一方、夜間に作業を行うときは、表示ランプ54の光度が大き過ぎると、運転者が眩しくて不快に感じるおそれがあるが、前記夜間用の光度として、運転者が不快に感じるおそれが少ない程度に小さめの光度が設定されている。
【0090】
次に、「脱穀クラッチ入り」の制御を実行する(#10)。この「脱穀クラッチ入り」の制御は、操作体位置検出用センサ43の検出情報に基づいて、脱穀クラッチ14を入り状態に切り換えるように、脱穀クラッチ操作体31を脱穀クラッチ入り位置U2に揺動操作すべく切換操作用モータ22を作動させる。
【0091】
ところで、このような脱穀クラッチ入り操作と同時に、切換操作用モータ22が刈取クラッチ操作体33を操作し、刈取クラッチ連動機構34を介して刈取クラッチ17を切り状態ではあるものの入り状態に近くなる状態に操作することになる。
【0092】
さらに、脱穀クラッチ操作体31が脱穀クラッチ入り位置U2に揺動操作される際、アクセル操作具60が設定低速位置Lに位置していると、アクセル操作部Gの操作によってエンジン10が定格回転数に操作されることになる。つまり、脱穀クラッチ操作体31と共に揺動する揺動操作体69の端部69bが、待機位置Tに位置する操作部70の受動部70aに当接し、揺動操作体69が操作部70を作用方向a1に揺動操作する。すると、操作部70の伝動部70bがアクセル操作具60の出力アーム部60aに当接し、操作部70がアクセル操作具60を揺動操作する。これにより、アクセル操作部Gが作動して調速装置63を増速側に操作する。アクセル操作具60が設定高速位置Hになると、揺動操作体69が操作部70から外れ、摩擦板68がアクセル操作具60を設定高速位置Hに保持する。これにより、エンジン10がアクセル操作具60の設定高速位置Hに対応した定格回転数になる。
【0093】
そして、操作体位置検出用センサ43にて、脱穀クラッチ操作体31が脱穀クラッチ入り位置U2に揺動操作されたことが検出され、且つ、エンジン回転数センサ53にて検出されるエンジン回転数が定格回転数になっていることが検出されると、「脱穀クラッチ入り」の制御を終了して表示ランプ54を点灯状態に切り換える(#11,#12,#13)。このとき、表示ランプ54が点灯するときの光度は、夜用の光度又は昼用の光度のうちの選択された HYPERLINK "\\\\\\" 光度が設定される。
【0094】
尚、脱穀クラッチ入り操作が終了するまでに作業指令スイッチ25がOFF状態に切り換えられると(♯14)、スイッチランプ25Aを消灯して(#32)、「脱穀クラッチ切り」の制御を実行し(#33)、表示ランプ54を消灯し(#34)、ブザーBZを作動していれば作動を停止する(#35)。
【0095】
ちなみに、操作部70がアクセル操作具60を設定高速位置Hに操作した後、揺動操作体69の端部69bが操作部70の受動部70aから外れ、操作部70が待機位置Tに復帰してアクセル操作具60の出力アーム部60aと離間し、また、揺動操作体69が操作部70と離間することになる。したがって、アクセル操作具60は、操作部70と揺動操作体69とによる揺動規制を受けず、設定高速位置Hから減速側に人為操作できる状態になる。
【0096】
加えて、エンジン10が定格回転数に操作された後、脱穀装置5を停止させても、エンジン回転数は定格回転数に維持されることになる。つまり、アクセル操作具60が設定高速位置Hに位置している状態で、切換操作用モータ22が脱穀クラッチ操作体31及び刈取クラッチ操作体33をクラッチ切り位置U1に操作すると、揺動操作体69が脱穀クラッチ操作体31と共に揺動して解除方向b2に揺動する。これに伴って揺動操作体69の端部69bが待機位置Tに位置している操作部70の受動部70aに当接して揺動操作体69が操作部70を揺動操作しても、操作部70は、解除方向b1に揺動してアクセル操作具60に押圧作用しない。これにより、アクセル操作具60が摩擦板68によって設定高速位置Hに保持され、エンジン10は、アクセル操作具60の設定高速位置Hに対応した定格回転数を維持する。
【0097】
次に、変速検出用センサ41の検出情報に基づいて、前進操作域Fにおけるクラッチ入り判別用設定位置P1よりも高速側に主変速レバー24が位置する前進走行状態であるか否か(主変速レバー24が前進側でかつ設定速度以上の高速側の範囲にあるか否か)、つまり、刈取クラッチ入り操作域に操作されているか否かが判断され(#15)、主変速レバー24が刈取クラッチ入り操作域でないときには、前進操作域Fにおけるクラッチ入り判別用設定位置P1よりも低速側に定めたクラッチ切り判別用設定位置P2に対して前記主変速レバー24が低速側に位置する走行中立状態であるか及び後進操作域Rに主変速レバー24が位置するか、つまり、主変速レバー24が刈取クラッチ切り操作域に操作されているか否かが判断される(#20)。
【0098】
主変速レバー24が刈取クラッチ入り操作域に操作されている場合、自動操作スイッチ52にて自動操作指令(刈取オートクラッチの入り)が指令されていなければ、直ちに、「刈取クラッチ入り」の制御が行われる(#16,#17)。つまり、操作体位置検出用センサ43の検出情報に基づいて、切換操作用モータ22により脱穀クラッチ操作体31を刈取クラッチ入り位置U3に操作し、脱穀クラッチ連動機構32を介して脱穀クラッチ14を入り状態に継続して操作することになり、これと同時、切換操作用モータ22により刈取クラッチ操作体33を刈取クラッチ入り位置U3に操作し、刈取クラッチ連動機構34を介して刈取クラッチ17を入り状態操作することになる。
【0099】
自動操作スイッチ52にて自動操作指令(刈取オートクラッチの入り)が指令されているときは、高さ検出用センサ51の検出情報に基づいて、刈取部4の高さが設定高さよりも低いと判断されると、前記「刈取クラッチ入り」の制御を実行し、刈取部4の高さが設定高さ以上であると、「刈取クラッチ切り」の制御を実行する(#16,♯18,#19)。
【0100】
この「刈取クラッチ切り」の制御は、操作体位置検出用センサ43の検出情報に基づいて、切換操作用モータ22が脱穀クラッチ操作体31を脱穀クラッチ入り位置U2に操作し、脱穀クラッチ連動機構32を介して脱穀クラッチ14を入り状態に維持する状態に操作することになり、これと同時、切換操作用モータ22が刈取クラッチ操作体33を脱穀クラッチ入り位置U2に操作し、刈取クラッチ連動機構34を介して刈取クラッチ17を切り状態に操作することになる。
【0101】
主変速レバー24が刈取クラッチ切り操作域に操作されているときは、変速検出用センサ41の検出情報に基づいて主変速レバー24が中立位置Nでないことが判別される(#21)とき、及び、主変速レバー24が中立位置Nであっても掻込み指令スイッチ50が刈取クラッチ17の入り操作指令を指令するON状態でないときは(#22)、「刈取クラッチ切り」の制御が実行され(#23)、主変速レバー24が中立位置Nであり、掻込み指令スイッチ50がON状態であれば、「刈取クラッチ入り」の制御を実行する(#21,#22,#17)。
【0102】
「刈取クラッチ入り」の制御が行われて、刈取作業が行われているときに、次のような各種の異常が発生した場合には(#24)、報知表示部81にて対応する異常を表示する(#25)。
例えば、異常の内容がエンジン10の負荷が過大である場合には負荷異常表示部87が点灯し、穀粒タンク6の穀粒の貯留量が満杯になっている場合には貯留量満杯表示部88が点灯し、排ワラ搬送経路中にて排ワラ詰まりが発生している場合には排ワラ異常表示部89が点灯し、脱穀装置5内の2番回収部にて搬送詰まりが発生している場合には2番回収部異常表示部90が点灯し、エンジン10の潤滑用に供給されるオイルの圧力が低下している場合には油圧異常表示部91が点灯し、バッテリーの充電量が少なくなっている場合にはバッテリー異常表示部92を点灯させる。
【0103】
そして、上記したような異常の少なくともいずれかの異常が発生すると、表示ランプ54を点滅作動させて、運転者に異常が発生したことを報知する(#26)。このとき表示ランプ54は点灯と消灯とを繰り返して点滅作動することになるが、そのうち点灯するときの表示ランプ54の光度が、夜用の光度又は昼用の光度のうちの選択された HYPERLINK "\\\\\\" 光度が設定される。
【0104】
上記各異常のうち、エンジン10の負荷が過大である状態というのは、エンジン回転数検出センサ53にて検出されるエンジン回転数が予め設定されている設定回転数以下に低下している状態であるが、このとき、エンジン回転数が設定回転数よりも低く設定された下限回転数よりも高い回転数であるときには、ブザーBZを比較的長めの第1設定周期で間欠的に作動させ(#27,#28,#29)、エンジン回転数が下限回転数以下にまで低下すると、ブザーBZを第1設定周期よりも短い第2設定周期で間欠的に作動させる(#30)。
【0105】
前記設定回転数について説明を加えると、脱穀装置5内に刈取穀稈が存在しない状態で脱穀装置5を駆動しながら走行している状態、具体的には、刈取部4に備えられた株元センサ(図示せず)にて刈取穀稈が検出され始めたときのエンジン回転数を無負荷回転数として設定しておき、その無負荷回転数から第1設定量低い回転数が前記設定回転数として設定される。一方、前記下限回転数は、無負荷回転数から第1設定量よりも大きい第2設定量低い回転数が設定されるが、エンジン回転数が下限回転数にまで低下する状態では、エンジン10に掛かる負荷が過大であり、このまま刈取作業を継続するとエンストを起すおそれがあるような回転数である。
【0106】
作業指令スイッチ25がOFF状態に切り換えられると、スイッチランプ25Aを消灯して、「脱穀クラッチ切り」の制御を実行する(#31,#32,#33)。すなわち、切換操作用モータ22が脱穀クラッチ操作体31をクラッチ切り位置U1に操作して、脱穀クラッチ連動機構32を介して脱穀クラッチ14を切り状態に操作すると同時、切換操作用モータ22が刈取クラッチ操作体33をクラッチ切り位置U1に操作し、刈取クラッチ連動機構34を介して刈取クラッチ17を切り状態に操作する。
そして、表示ランプ54を消灯させ(#34)、ブザーBZが作動しているときはブザーBZを停止させて(#35)、メインスイッチJがOFF位置に操作されると処理を終了する(#36)。
【0107】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、照明用スイッチ部47aが点灯状態であるか消灯状態であるかにより、表示ランプ54を点灯するときの光度を昼用の光度と夜用の光度に切り換えるようにしたが、このような構成に代えて、例えば、外部の明るさを検出する光センサ(図示せず)を備えて、光センサの検出値が設定値を越えると昼用の光度に設定し、検出値が設定値を下回ると夜用の光度に設定する構成、あるいは、人為操作に基づいて昼用の光度と夜用の光度のいずれかを設定する構成等、表示ランプ54の光度を昼用の光度と夜用の光度に切り換えるための構成は種々変更して実施することができる。
【0108】
(2)上記実施形態では、異常が発生したときに設定周期で間欠的にブザーBZを作動させるように構成され、エンジン10の負荷が過大であるときにのみ、発生した異常の内容の違いに応じて設定周期を異ならせるようにしたが、その他の異常においても、発生した異常の内容の違いに応じて設定周期を異ならせるようにしてもよい。
【0109】
例えば、穀粒タンク6の穀粒の貯留量が満杯になっている場合、排ワラ搬送経路中にて排ワラ詰まりが発生している場合、脱穀装置5内の2番回収部にて搬送詰まりが発生している場合、エンジン10の潤滑用に供給されるオイルの圧力が低下している場合、バッテリーの充電量が少なくなっている場合の夫々の異常状態において、夫々異なる設定周期でブザーBZを作動させるようにしてもよく、又、これらの異常のうちの少なくとも2つ以上のものにおいて、夫々異なる設定周期でブザーBZを作動させるようにしてもよい。
【0110】
(3)上記実施形態では、作業指令スイッチ25が表示装置Fの下方側に位置する状態で設けられる構成としたが、作業指令スイッチ25を表示装置Fの横側あるいは上方側に位置する状態で設けるようにしてもよく、その配置構成は種々変更して実施してもよい。
【0111】
(4)上記実施形態では、駆動状態検出手段としての操作体位置検出用センサ43の検出情報に基づいて、エンジン10の出力が脱穀装置5に伝達している駆動状態であるか否かを検出するようにしたが、このような構成に代えて、脱穀装置5における2番物回収用スクリューコンベア(図示せず)の回転速度を検出する2番回転センサの検出情報に基づいて、エンジン10の出力が脱穀装置5に伝達している駆動状態であるか否かを検出する構成としてもよく、又、クラッチアーム17aの位置を直接検出するセンサを用いる等、種々の検出手段を用いることができる。
【0112】
(5)上記実施形態では、刈取クラッチ17及び脱穀クラッチ14(作業クラッチ)の切り換え操作に加えて調速装置63(アクセル装置)の切り換え操作をも切換操作用駆動手段としての1つの切換操作用モータ22にて行うようにしたが、刈取クラッチ17、脱穀クラッチ14、調速装置63(アクセル装置)の切り換え操作を夫々各別にアクチュエータ(例えば電動モータ等)により行うように構成してもよい。
【0113】
(6)上記実施形態では、作業車としてのコンバインにおいて脱穀クラッチ14を作業車の作業クラッチとして操作する場合を例示したが、例えば、耕耘ロータを備えたトラクタを作業車として、耕耘ロータの駆動を断続する駆動クラッチを作業クラッチとして操作するのに適用する等、本発明は種々の作業車に適用できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、自脱型や普通型コンバイン、及び、トラクタ等、車体運転部の操作パネルに、複数種の異常のいずれかが発生したときにその発生した異常の内容を表示する異常表示部が備えられている作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0115】
5 作業装置
10 エンジン
14 作業クラッチ
21 照明灯
22 切換操作用駆動手段
25 作業指令手段
36 操作パネル
42 制御手段
43 駆動状態検出手段
47a 切換操作具
53 回転数検出手段
54 表示ランプ
63 アクセル手段
A 車体運転部
BZ ブザー
F 異常表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体運転部の操作パネルに、複数種の異常のいずれかが発生したときにその発生した異常の内容を表示する異常表示部が備えられている作業車であって、
前記異常表示部よりも車体前方側に位置する状態で表示ランプが備えられ、
異常が発生したときにその発生した異常の内容にかかわらず点滅作動させる形態で、且つ、点灯するときの光度を夜用の光度とその夜用の光度よりも大である昼用の光度とに切り換え可能な形態で、前記表示ランプの作動を制御する制御手段が備えられている作業車。
【請求項2】
夜間作業用の照明灯と、その照明灯を点灯状態と消灯状態とに切り換える切換操作具とが備えられ、
前記制御手段が、前記切換操作具の操作状態に基づいて、前記点灯状態に切り換えられたときは前記表示ランプが点灯するときの光度を前記夜用の光度に切り換え、且つ、前記消灯状態に切り換えられたときは前記表示ランプが点灯するときの光度を前記昼用の光度に切り換えるように構成されている請求項1記載の作業車。
【請求項3】
警報音を発生するブザーが備えられ、
前記制御手段が、異常が発生したときに設定周期で間欠的に前記ブザーを作動させるように構成され、且つ、発生した異常の内容の違いに応じて前記設定周期を異ならせるように構成されている請求項1又は2記載の作業車。
【請求項4】
作業装置に対する動力伝達を入り切り自在な作業クラッチと、エンジンの出力を変更調整自在なアクセル手段と、前記作業クラッチ及び前記アクセル手段を切り換え操作する切換操作用駆動手段と、作業開始指令を指令する手動操作式の作業指令手段と、前記エンジンの回転数を検出する回転数検出手段と、前記エンジンの出力が前記作業装置に伝達している駆動状態であるか否かを検出する駆動状態検出手段とが備えられ、
前記制御手段が、前記作業指令手段にて前記作業開始指令が指令されると、前記アクセル手段を定格回転状態にし且つ前記作業クラッチを入り状態にすべく前記切換操作用駆動手段の作動を制御するように構成され、且つ、前記作業指令手段にて前記作業開始指令が指令されたのち、前記回転数検出手段にて検出されるエンジン回転数が定格回転数であり且つ前記駆動状態検出手段にて前記駆動状態であることが検出されると、前記表示ランプを点灯作動させるように構成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の作業車。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2012−90597(P2012−90597A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242317(P2010−242317)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】