説明

作用因子に対する生細胞の応答を媒介する遺伝子を同定する方法

一側面において、本発明は、遺伝子が作用因子に対する生細胞の応答を媒介するかどうかを決定するための方法を提供する。別の側面において、本発明は、KSP阻害剤に対して応答性の哺乳動物対照を同定するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療的薬物分子に対する生細胞の応答など、作用因子に対する生細胞の応答を媒介する遺伝子を同定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作用因子に対する生細胞の応答を媒介する遺伝子の同定によって、作用因子に対する細胞の応答の望ましい変化をもたらす組成物及び方法の開発が可能となる。例えば、哺乳動物の疾病に対する新規治療を開発するための1つのアプローチは、まず、疾病の開発及び/又は維持に寄与する、哺乳類中で発現されている遺伝子を同定することである。このような遺伝子は、例えば、該遺伝子の正常な発現パターン及び発現レベルと比べて、過剰発現され、過少発現され、及び/又は不適切な場所又は時間に発現され得る。同じく一例として、変異を受けた遺伝子は、その正常な遺伝子産物(例えば、タンパク質又は生物学的に活性なRNA分子)のバリアントを発現する場合があり得、バリアント遺伝子産物は、1又は複数の生物学的プロセスに対して不適切に影響を与え得る。例えば、変異を受けた遺伝子は、哺乳類細胞種中で発現されているバリアント受容体タンパク質をコードすることによって、該受容体に関連する1又は複数の生化学的シグナル伝達経路の恒常的活性化を引き起こし得る。恒常的に活性化された経路は、罹患した哺乳動物での疾病の発症を引き起こし得る。
【0003】
このため、変異を受けた遺伝子産物、又は不適切な水準、時間若しくは場所で発現されており、若しくは何らかの点で異常である発現パターンを有する遺伝子産物は、遺伝子産物と相互作用し、その生物学的活性を阻害する分子を使用する薬物療法に対する標的となり得る可能性を秘めている。新しい薬物分子を同定及び検査することは、時間とコストがかかるプロセスであるため、遺伝子産物と相互作用し、それらの生物学的活性を阻害する分子を同定しようと試みる前に、まず、哺乳動物の疾病の発症及び/又は維持に寄与する遺伝子を正しく同定することが重要である。このため、ある遺伝子が、該遺伝子によってコードされる産物の作用を通じて、化学的作用因子に対する生細胞の応答を媒介するかどうかを決定する方法に対する持続的な要求が存在する。より一般的には、ある遺伝子が、化学的(例えば、治療薬)、エネルギー的(例えば、紫外線照射)又は物理的(例えば、血管の細胞に対して及ぼされる剪断力などの物理力)であってもよい作用因子に対する生細胞の応答を媒介するかどうかを測定する方法に対する持続的な要求が存在する。
【発明の開示】
【0004】
第一の側面において、本発明は、(a)ある細胞種の生細胞中に干渉RNA分子を導入することによって、前記細胞中の遺伝子を機能的に不活化する工程(前記遺伝子は、前記細胞種の生細胞の作用因子に対する応答と相関する発現パターンを有し、前記遺伝子のコピーは、前記細胞種の全ての生細胞中に存在する。);(b)前記干渉RNA分子を含む前記生細胞を、前記作用因子と接触させる工程;及び(c)前記作用因子に対する前記生細胞の応答が、前記干渉RNA分子を含まない前記細胞種の生細胞の前記作用因子に対する応答と異なっているかどうかを測定し、これにより、前記遺伝子が前記細胞種の生細胞の前記作用因子に対する応答を媒介しているかどうかを決定する工程;を含む、遺伝子が、生細胞の作用因子に対する応答を媒介しているかどうかを決定する方法を提供する。本発明の本側面の方法は、前記干渉RNA分子を使用して前記遺伝子を機能的に不活化させる前に、前記細胞種の生細胞の、作用因子に対する応答と相関する発現パターンを有する遺伝子を同定する工程を必要に応じて含む。
【0005】
本発明の第一の側面の方法は、任意の遺伝子が、任意の作用因子に対する任意の生細胞の任意の応答を媒介するかどうかを決定するために有用である。例えば、本発明の第一の側面の方法は、ある遺伝子が、(該遺伝子によってコードされる産物を通じて)治療薬に対する生きた哺乳類細胞の有益な又は有害な応答を媒介するかどうかを決定するために使用することが可能である。治療薬に対する生きた哺乳類細胞の有益な又は有害な応答を媒介する遺伝子によってコードされる産物(例えば、タンパク質)は、それ自体、治療薬の有効性を増強するように(又は有害な副作用を減少するように)適合された薬物に対する標的となり得る可能性を秘めている。例えば、本発明の第一の側面の方法は、ある遺伝子が、化学療法薬に対する哺乳類癌細胞の耐性を媒介するかどうか(すなわち、癌細胞は、薬物への反復曝露後に薬物への感受性が低下する。)を決定するために使用することが可能である。化学療法薬に対する癌細胞の耐性を媒介する遺伝子によってコードされる産物(典型的にはタンパク質)は、癌細胞中での遺伝子産物の活性を阻害し、これにより、化学療法薬に対して耐性がある状態となる癌細胞の傾向を低減する薬物に対する標的となり得る。同じく一例として、本発明の第一の側面の方法は、生きた哺乳動物の細胞、組織、臓器及び/又は生物体の、治療薬に対する有益な応答(例えば、病状の改善)を媒介する遺伝子を同定するために使用することが可能である。遺伝子産物は、病状をさらに改善するために使用することが可能な新薬に対する標的となり得る。このように、本発明の第一の側面の方法は、例えば、疾病を治療するための新薬、又はヒト及び/又は他の哺乳動物中の疾病を治療するための公知の薬物の有効性を増加させる新薬の開発に寄与するために使用することが可能である。
【0006】
別の側面において、本発明は、ある遺伝子が、生細胞の、作用因子に対する応答に寄与していることを確認する方法を提供する。本発明の本側面の方法は、各々、(a)ある細胞種の生細胞中に干渉RNA分子を導入することによって、前記細胞中の遺伝子を機能的に不活化する工程(前記遺伝子は、前記細胞種の生細胞の、作用因子に対する応答と相関する発現パターンを有し、前記遺伝子のコピーは、前記細胞種の全ての生細胞中に存在する);及び(b)前記作用因子に対する、前記生細胞の応答が、前記干渉RNA分子を含まない前記細胞種の生細胞の前記作用因子に対する応答と異なっていることを決定することによって、前記遺伝子が前記生細胞の前記作用因子に対する応答に寄与していることを確認する工程;を含む。本発明の本側面の方法は、任意の遺伝子が、任意の作用因子に対する生細胞の任意の応答に寄与していることを確認するために使用することが可能である。例えば、本発明の本側面の方法は、ある遺伝子が、治療薬に対する生きた哺乳類細胞の望ましい又は有害な応答に寄与していることを確認するために使用することが可能である。
【0007】
さらなる側面において、本発明は、KSP阻害剤に対して応答性の哺乳類対象を同定する方法を提供する。これらの方法は、各々、20番染色体の部分20qが癌細胞中で増幅されているかどうかを測定するために哺乳類対象の癌細胞から得た20番染色体を分析する工程を含み、20番染色体の部分20qが前記癌細胞中で増幅されていなければ、前記哺乳類対象がKSP阻害剤に対して応答性であると同定される。このように、本発明の該側面の方法は、例えば、KSP阻害剤を用いた治療が有益と思われるヒト癌患者を同定するのに有用である(すなわち、KSP阻害剤に対して応答性であると同定されたヒト癌患者は、KSP阻害剤を用いた治療に対する候補である可能性がある。)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本明細書において具体的に定義されていなければ、本明細書で使用されている全ての用語は、本発明の分野における当業者に対する意味と同じ意味を有する。実行者は、本分野の定義及び用語について、特に、「Sambrook et al.(1989) Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Press, Plainsview, New York(1989), and Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology(Supplement 47), John Wiley & Sons, New York(1999)」を参考にされたい。
【0009】
本明細書で使用される「作用因子」という用語は、インビボ及び/又はインビトロでの生細胞における生物学的応答を誘導する任意の物理作用因子、化学作用因子又はエネルギー作用因子を包含する。このため、例えば、「作用因子」という用語は、哺乳動物(例えば、ヒト)などの生きた生物中で1又は複数の疾病を治療するのに有用であり得る候補治療用分子などの化学的分子を包含する。「作用因子」という用語は、紫外線光などのエネルギー的刺激も包含する。「作用因子」という用語は、生細胞に与えられる力(例えば、圧力、伸縮又は剪断力)などの物理的刺激も包含する。「作用因子」という用語は、生細胞に感染することができるウイルスも包含する。「作用因子」という用語は、KSPタンパク質の阻害剤を包含する。代表的なKSP阻害剤には、セミカルバゾン及びチオセミカルバゾンなどの小分子有機化合物が含まれる。例えば、KSP阻害剤は、アリールチオセミカルバゾンであってもよい。典型的なアリールチオセミカルバゾンKSP阻害剤には、1、1’−ビフェニル−4−カルバルデヒドチオセミカルバゾン、4−イソプロピルベンズアルデヒドチオセミカルバゾン(例えば、米国特許第3,849,575号参照)、4−シクロヘキシルベンズアルデヒドチオセミカルバゾン及び4−イソプロピル−3−ニトロベンズアルデヒドチオセミカルバゾン(例えば、Saripinar et al.(1996)Arzneimittel−Forschung46(II):824−8)が含まれるが、これらに限定されない。他の典型的なKSP阻害剤は、以下の公開された国際特許出願に記載されており、それぞれ、参照により、本明細書に組み込まれる。WO 2003/106417A1、WO 2003/105855A1、WO 2003/099211A2、WO 2003/079973A2、WO 2003/050122A2、WO 2003/050064A2、WO 2003/049679A2、WO 2003/049678A2、WO 2003/049527A2及びWO 2003/039460A2。
【0010】
KSPは、キネシンスピンドルタンパク質の略称である。KSPは、時々、hsKSP、KNSL−I又はキネシン様−1と文献で称される。KSPは、BimCキネシンサブファミリーのメンバーであり、細胞中での有糸分裂に不可欠である有糸分裂キネシンタンパク質である。キネシンは、細胞内で作業を実行するために、アデノシン三リン酸(ATP)の加水分解によって放出されたエネルギーを、細胞内繊維に沿って機械的力へと変換する酵素である。有糸分裂キネシンは、有糸分裂(細胞分裂中のDNAの分裂)を促進するために、秩序だった様式で機能するキネシンの機能的サブグループである。これらの細胞骨格運動タンパク質は、紡錘体の形成と機能を実施するために、機械的カスケード中で協同して作用する。KSPは、「Miki et al., Proc. Nat’l. Acad. Sci 98:7004−7011(2001)」及び「Dagenbach and Endow, J. Cell ScL 117:3−7(2004)」中に概説されている。典型的には、KSPは、配列番号1に記載されている代表的なKSPアミノ酸配列と少なくとも90%同一である。
【0011】
STK6は、Auroraキナーゼファミリーのメンバーであるセリン/スレオニンキナーゼ6の略称である。Auroraキナーゼファミリーのメンバーは、有糸分裂の間、染色体の分離及び細胞質分裂の制御に寄与している。STK6タンパク質は、例えば、「Kimura, M.; et al., J. Biol. Chem. 272:13766−13771(1997)」及び「Kimura, M., et al., Cytogenet. Cell Genet. 79:201−203(1997)」に記載されている。典型的には、STK6タンパク質をコードする遺伝子は、配列番号2に記載されている代表的なSTK6遺伝子配列と少なくとも90%同一である。典型的には、STK6タンパク質をコードする遺伝子は、55℃で12時間の5×SSC、次いで55℃で1時間の5×SSC中での洗浄という条件下で、配列番号2に記載されている代表的なSTK6遺伝子配列の相補物にハイブリダイズする。STK6タンパク質をコードする遺伝子の中には、65℃で12時間の5×SSC、次いで65℃で1時間の5×SSC中での洗浄という条件下で、配列番号2に記載されている代表的なSTK6遺伝子配列の相補物にハイブリダイズするものがある。代表的なハイブリダイゼーションプロトコールは、上記Sambrookらのページ9.52−9.55に記載されている。
【0012】
TPX2タンパク質は、有糸分裂の間に、染色体が付随した微小管の形成に寄与する(例えば、Grass, et al., Nature Cell. Biol. 4:871−879(2002), Heidebrecht, H. J. et al., Blood 90:226−233(1997), Kufer, T. A., J. Cell Biol. 158:617−623(2002), Manda, R., et al., Genomics 61:5−14(1999) and Zhang, Y., et al., Cytogenet. Cell Genet. 84:182−183(1999)を参照)。典型的には、TPX2タンパク質をコードする遺伝子は、配列番号3に記載されている代表的なTPX2遺伝子配列と少なくとも90%同一である。典型的には、TPX2タンパク質をコードする遺伝子は、55℃で12時間の5×SSC、次いで55℃で1時間の5×SSC中での洗浄という条件下で、配列番号3に記載されている代表的なTPX2遺伝子配列の相補物にハイブリダイズする。TPX2タンパク質をコードする遺伝子の中には、65℃で12時間の5×SSC、次いで65℃で1時間の5×SSC中での洗浄という条件下で、配列番号3に記載されている代表的なTPX2遺伝子配列の相補物にハイブリダイズするものがある。代表的なハイブリダイゼーションプロトコールは、上記Sambrookらのページ9.52−9.55に記載されている。
【0013】
「パーセント同一性」又は「パーセント同一の」という用語は、最大のパーセント同一性を達成するために候補物と対象配列の並列を行った後における、対象ポリペプチド分子配列と同一である候補ポリペプチド配列中のアミノ酸残基のパーセントであり、又は対象核酸分子配列と同一である候補核酸配列中の核酸残基のパーセントである。比較を行う場合、対象配列との最良の並列を達成するために、候補配列中にギャップは導入されない。
【0014】
配列同一性は、例えば、TBLASTN、BLASTP、FASTA、TFASTA及びCLUSTALWなど、類似性を決定するためのコンピュータプログラムを使用することによって決定することが可能である(Pearson and Lipman, 1988, Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 85:2444−2448; Altschul et al., 1990, J. MoI. Biol. 215:403−410; Thompson et al., 1994, Nucleic Acids Res. 22:4673−4680;及びHiggins et al., 1996, Methods Enzymol. 266:383−402)。具体的には、Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al., 1990, J. MoI. Biol. 215:403−410, “The BLAST Algorithm”; Altschul et al., 1997, Nucl. Acids Res. 25:3389−3402)は、Karlin及びAltschulの統計学的方法(1990, Proc. Nat’l Acad. Sci U.S.A., 87:2264−2268; 1993, Proc. Nat’l Acad. Sci U.S.A. 90:5873−5877)を使用して有意度を帰属させる配列同一性検索のために誂えた発見的検索アルゴリズムである。以下の作業を行うために、5つの具体的なBLASTプログラムが使用されている。(1)WU−BLASTPプログラムは、タンパク質配列データベースに対してアミノ酸クエリー配列を比較する;(2)WU−BLASTNプログラムは、ヌクレオチド配列データベースに対してヌクレオチドクエリー配列を比較する;(3)BLASTXプログラムは、タンパク質配列データベースに対して、ヌクレオチドクエリー配列(両鎖)の6フレーム概念的翻訳産物を比較する;(4)TBLASTNプログラムは、全ての6つのリーディングフレーム(両鎖)中で翻訳されたヌクレオチド配列データベースに対してタンパク質クエリー配列を比較する;及び(5)TBLASTXプログラムは、ヌクレオチド配列データベースの6フレーム翻訳に対して、ヌクレオチドクエリー配列の6フレーム翻訳を比較する。先述のBLASTツールは、「National Center for Biotechnology Information, National Library of Medicine, Building 38 A, Bethesda, MD 20894, U.S.A.」のホームページから入手できる。
【0015】
Smith−Waterman(Smith−Waterman, 1981, J. MoI. Biol. 147:195−197)は、配列アラインメントのための数学的に厳格なアルゴリズムである。FASTA(Pearson et al., 1988, Proc.Nat’l Acad. Sci U.S.A., 85:2444−2448参照)は、Smith−Watermanアルゴリズムに対する発見的近似である。BLAST、Smith−Waterman及びFASTAアルゴリズムの手順及び利点についての一般的な考察については、「Nicholas et al., 1998, “A Tutorial on Searching Sequence Databases and Sequence Scoring Methods”」及びこの中に引用されている参考文献を参照されたい。
【0016】
本発明の第一の側面:第一の側面において、本発明は、(a)ある細胞種の生細胞中に干渉RNA分子を導入することによって、前記細胞中の遺伝子を機能的に不活化する工程(前記遺伝子は、作用因子に対する前記細胞種の生細胞の応答と相関する発現パターンを有し、前記遺伝子のコピーは、前記細胞種の全ての生細胞中に存在する);(b)前記干渉RNA分子を含む前記生細胞を、前記作用因子と接触させる工程;及び(c)前記作用因子に対する前記生細胞の応答が、前記干渉RNA分子を含まない前記細胞種の生細胞の前記作用因子に対する応答と異なっているかどうかを測定し、これにより、前記遺伝子が前記細胞種の生細胞の前記作用因子に対する応答を媒介するかどうかを決定する工程;を含む、遺伝子が、作用因子に対する生細胞の応答を媒介しているかどうかを決定する方法を提供する。本発明の本側面の方法は、干渉RNA分子を使用して前記遺伝子を機能的に不活化させる前に、前記細胞種の生細胞の、作用因子に対する応答と相関する発現パターンを有する遺伝子を同定する工程を必要に応じて含む。
【0017】
本発明の第一の側面の方法は、インビボで生細胞を用いて、又はインビトロで培養細胞を用いて実施することが可能である。典型的には、複数の生細胞(例えば、複数の細胞を含む培養された動物組織など、又は個別の細胞の培養など、インビトロで培養された細胞の集団)は、本発明の第一の側面の方法に従って処理される。
【0018】
本発明を実施する際には、微生物、ショウジョウバエ(Drosophila)などの昆虫、線虫などの他の無脊椎動物、植物、哺乳動物、ヒト、ヒト以外の霊長類、ネコ、イヌ及び家畜(例えば、ウシ)から得られる細胞種を含む、あらゆる細胞種を使用することが可能である。本発明の本側面を実施する際には、哺乳動物の癌細胞のあらゆる種類を使用することが可能である。
【0019】
本発明の本側面において、作用因子に対する生細胞の応答が、遺伝子によってコードされる産物に完全に又は部分的に依存すれば、遺伝子は、作用因子に対する生細胞の応答を媒介する。このため、作用因子に対する細胞の応答は、遺伝子産物の不存在下では起こらず、又は、遺伝子産物の存在下での応答の規模及び/又は期間と比べて、遺伝子産物の不存在下では、応答の規模及び/又は期間は減少する。遺伝子産物には、タンパク質、ペプチド及び核酸分子(例えば、RNA分子のあらゆる種類)が含まれる。
【0020】
作用因子に対する生細胞の応答は、例えば、生化学的若しくは生理学的応答のレベル、強度及び/又は時間の増加若しくは減少、又は、例えば、遺伝子発現パターンの何らかの変化など、応答のあらゆる種類であり得る。
【0021】
本発明の本側面を実施する際に機能的に不活化される遺伝子は、ある細胞種の生細胞の作用因子に対する応答と相関する発現パターンを有する。この相関は統計学的に有意でなければならず、正の相関又は負の相関であることが可能である。
【0022】
干渉RNA分子を使用した機能的不活化:本発明の本側面の方法を実施する際には、遺伝子は、ある種類の生細胞中に干渉RNA分子を導入することによって、該細胞中で機能的に不活化される。この関係において使用される遺伝子の「機能的不活化」とは、遺伝子から転写されたRNAを完全に破壊し、若しくは部分的に破壊すること、及び/又は、遺伝子から転写されたRNAの翻訳を完全に抑制し、若しくは部分的に抑制することを意味する。このように、細胞中に導入される干渉RNA分子によって、遺伝子の機能は、実質的に廃止され、又は完全に廃止される。
【0023】
干渉RNA分子は、生細胞中のメッセンジャーRNA(mRNA)の全部又は一部と完全に相補的(又は実質的に相補的)であり、RNA干渉(RNAi)のプロセスを通じて、mRNAの分解を促進する二本鎖RNA分子である。RNA干渉は、RNAウイルスによる侵入から細胞を保護する上で機能すると考えられる天然現象である。理論に拘泥するものではないが、現在、RNA干渉のプロセスでは、細胞が二本鎖RNAウイルス(dsRNAウイルスと略称される)によって感染された場合に、dsRNAは、Dicerと称されるRNアーゼIII型酵素によって認識され、切断のための標的とされると考えられている。Dicer酵素は、siRNA又は低分子干渉RNAと名付けられた21ヌクレオチドの短い二重鎖(完全に対形成したリボヌクレオチドの19ntと、各鎖の3’末端上の2つの不対ヌクレオチドから構成される。)へと、RNAを「さいの目に切断」する。これらの短い二重鎖は、RISCと名付けられた多タンパク質複合体と会合し、該複合体を、siRNAと配列類似性を有するmRNA転写物へと誘導する。その結果、RISC複合体中に存在するヌクレアーゼはmRNA転写物を切断し、これにより、遺伝子産物の発現を喪失させる。ウイルス感染の場合には、この機序は、ウイルスの転写物の破壊をもたらすため、ウイルス合成を抑制する。
【0024】
siRNAは二本鎖であるので、何れの鎖も、RISCと会合して、配列類似性を有する転写物のサイレンシングを誘導する能力を秘めている。RNA干渉は、あらゆる外来二本鎖RNA分子に対して作用し、RNAウイルスのゲノムに対する作用に限定されない。
【0025】
干渉RNA分子のクラスには、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)及び長い二本鎖RNA並びに干渉RNA分子の先述した種類の全ての化学的に修飾された誘導体が含まれる。低分子干渉RNA(siRNA)は、メッセンジャーRNA(mRNA)分子の分解を媒介することによって、分解されたmRNA分子をコードする遺伝子を機能的に不活化させる21〜23ヌクレオチド長の二本鎖RNA分子である。分解されるmRNA分子には、siRNA分子の2つの鎖の1つに相補的(又は少なくとも部分的に相補的)である核酸配列が含まれる。siRNA分子の中には、標的mRNA分子の一部に対して相補的である核酸残基の配列を形成する9、10、11、12、13、14、15、16、17、18又は19の連続する核酸残基を含むものがある。
【0026】
siRNA分子は、常にではないが、典型的には、標的RNA分子の19ヌクレオチド領域に対して完全に相補的(又は少なくとも部分的に相補的)である19ヌクレオチド領域と、19ヌクレオチド領域の各末端に存在する2ヌクレオチドの3’突出部を含む。On−TargetTM siRNA製品又はSMARTM siRNA製品などの所定の核酸配列を有する特別設計のsiRNA分子が市販されており、「Dharmacon, Inc., 2650 Crescent Drive, #100, Lafayette, CO 80026」によって販売されている。
【0027】
標的mRNA分子の分解を媒介するのに有用なsiRNA分子を選択するための代表的な方法は、2003年10月27日に出願された米国仮特許出願60/515,180号に記載されており、その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。哺乳動物細胞中の標的mRNA分子の分解を促進するためにsiRNA分子を使用する代表的な方法は、2003年10月27日に出願された米国仮特許出願60/515,223号に記載されており、その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0028】
本発明を実施する際には、生細胞中に合成siRNA分子を導入することにより、Dicer切断の産物を模倣することが可能である(例えば、Elbashir et al., Nature 411:494−498, 2001; Elbashir et al., Genes Dev. 15:188−200, 2001、これらの各刊行物の全内容が、参照により、本明細書中に組み込まれる。)。siRNAは、化学的に合成することが可能であり、又は、例えば、組換えDicerによる二本鎖RNAの切断によって、インビトロで作製することが可能である。
【0029】
siRNAは、インビボで遺伝子を機能的に不活化するために使用可能であることが示されている。例えば、Fasによって媒介されるアポトーシスは、アポトーシスによる肝細胞の死滅を阻害することによって生命を救済することが可能な広範な肝臓疾患に関与していると推測されている。Song(Song et al., Nat. Medicine P:347−351, 2003)は、Fas受容体へ標的誘導されるsiRNAを、マウスに静脈内注射した。Fas遺伝子は、mRNA及びタンパク質レベルで、マウス肝細胞中で発現停止されており、これによって、アポトーシスを抑え、肝炎によって誘導された肝臓の損傷を保護する。別の例として、Sorensenら(J.Mol.Biol. 327:761−766(2003))は、TNFαを標的とするsiRNAを、マウスに腹腔内注射した。リポ多糖によって誘導されたTNF−α遺伝子発現が阻害され、これらのマウスは敗血症から保護された。
【0030】
低分子ヘアピンRNA(shRNA)とは、同一RNA分子の2つの相補的部分が互いにハイブリダイズして、二本鎖の幹(典型的には、19〜29塩基対)と一本鎖ループとを形成する短いRNA分子である。shRNAが生細胞中に導入されると、二本鎖の幹が加工されて、19〜23bpからなる短い二本鎖RNA分子が残る。例えば、所望のshRNA配列は、ベクター(例えば、プラスミド又はウイルス)から発現されることが可能であり、逆方向反復が一緒にハイブリダイズするときに、一本鎖ループを形成する介在配列を有する逆方向反復(自身とハイブリダイズして、ヘアピン構造を形成することが可能である。)を含む。shRNAは、細胞中に導入され、又はベクターから細胞中に発現され、細胞中で、Dicerによって加工されて、一本鎖ループを除去することによって、siRNAを生じる。プラスミドによってコードされたshRNAは、細胞中で安定に発現されることが可能であり、インビトロ及びインビボの両方で、細胞中の遺伝子の長期的な機能的不活化を可能とする(例えば、動物では、McCaffrey et al., Nature 418:38−39, 2002; Xia et al., Nat. Biotech. 20:1006−1010, 2002; Lewis et al., Nat. Genetics 32:107−108, 2002; Rubinson et al., Nat. Genetics 33:401−406, 2003; Tiscornia et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 100:1844−1848, 2003を参照。これらの全てが、参照により、その全内容を本明細書中に組み込まれる。)。遺伝子を機能的に不活化するためのshRNAの使用は、以下の代表的な文献:Paddison et al., Genes Dev. 16:948−958(2002); Brummelkamp et al., Science 296:550−553(2002); Sui, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci USA 99:5515−5520(2002); Paddison, et al, Nature 428:427−431(2004); and Berns et al., Nature 428:431−437(2004)に記載されている(全て、参照により、その全内容が本明細書中に組み込まれる。)。
【0031】
長い二本鎖RNAとは、23bpより長く(典型的には、100bpより長い)、生細胞内で加工されて1又は複数のsiRNA分子を生じる二本鎖RNA分子である。
【0032】
干渉RNA分子を使用して遺伝子を機能的に不活化するための他の代表的な方法は、それぞれ、参照により全内容が本明細書中に組み込まれる以下の同時係属米国仮特許出願:2003年10月27日に出願された米国仮特許出願60/515,223号及び2003年10月27日に出願された米国仮特許出願60/515,180号に記載されている。干渉RNA分子を使用して遺伝子を機能的に不活化するための他の代表的な方法は、それぞれ、参照により全内容が本明細書中に組み込まれる以下の特許及び公開された特許出願:米国特許第6,506,559号;米国特許出願US2002/0086356号;PCT公開WO02/44321号;及びPCT公開WO03/006477号に記載されている。
【0033】
干渉RNA分子(又は干渉RNA分子をコードするベクター)は、任意の有用な方法によって細胞中に導入することが可能である。例えば、干渉RNA分子(又は干渉RNA分子をコードするベクター)は、リポフェクタミン若しくはオリゴフェクタミンなどの脂質試薬を用いたリポフェクションによって、又は電気穿孔によって、哺乳動物細胞中に導入することが可能である。同じく一例として、干渉RNA分子は、ショウジョウバエ細胞及び線虫によって(例えば、ショウジョウバエ培地に干渉RNA分子を添加することによって、又は干渉RNA分子を含む培地中に線虫を浸すことによって)、自発的に取り込まれることが可能である。さらに、例えば、ベクターによってコードされるshRNAは、線虫の餌と混合されたE.コリ中にクローニングすることが可能であり、干渉RNA分子は、線虫の腸内細胞によって取り込まれる。
【0034】
より一般的には、核酸分子は、Graham及びVan der Ebによって最初に記載され(Virology, 52:546[1978])、上記Sambrookらの16.32−16.37節に記載されているように修飾を施されたリン酸カルシウム法を用いて、哺乳動物細胞及び厳格な細胞壁を持たない他の細胞の培養物中に導入することが可能である。細胞中にDNAを導入するための他の典型的な方法には、Polybrene(Kawai and Nishizawa, MoI. Cell. Biol, 4:1172[1984])及び電気穿孔(Neumann et al., EMSO J, 1:841 [1982])の使用が含まれる。
【0035】
植物細胞中に核酸分子を導入するための多くの方法が、本分野で公知である。代表的な例には、電気パルスが細胞膜を一過性に透過状態とし、核酸分子を含む様々な生物分子の取り込みを可能とする、電気穿孔によって促進された、プロトプラストによるDNA取り込み(Rhodes et al., Science, 240:204−207[1988]);ポリエチレングリコールによるプロトプラストの処理(Lyznik et al., Plant Molecular Biology, 13:151−161[1989]);細胞壁を貫通するための、爆発力又は圧縮気体によって推進されるDNA搭載微粒子による細胞の爆撃(Klein et al., Plant Physiol. 91:440−444[1989]及びBoynton et al., Science, 240:1534−1538[1988])が含まれる。さらに、核酸分子を植物細胞に伝達するためのベクターとして、植物ウイルスを使用することが可能である。ベクターとして使用できる植物ウイルスの例には、カリフラワー・モザイク・ウイルス(Brisson et al., Nature 310:511−514(1984))が含まれる。さらに、植物の形質転換戦略及び技術は、「Birch, R. G., Ann Rev Plant Phys Plant Mol Biol, 48:297(1997); Forester et al., Exp. Agric, 33:15−33(1997)」に概説されている。
【0036】
干渉RNA分子は、ヒトなどの動物中の臓器又は組織へと、インビボで送達されることも可能である(例えば、Song et al., Nat. Medicine 9:347−351, 2003; Sorensen et al., J. MoI. Biol. 327:761−766, 2003; Lewis et al., Nat. Genetics 32:107−108, 2002、全て、その全内容が、参照により本明細書注に組み込まれる。)。例えば、干渉RNA分子の溶液を動物中に静脈内注射することが可能であり、その後、臓器又は組織の細胞によって干渉RNA分子がそこで取り込まれる目的の臓器又は組織へ輸送されることが可能である。
【0037】
遺伝子発現パターンを測定するための転写物アッセイ:機能的に不活化された遺伝子は、作用因子に対する前記細胞種の生細胞の応答と相関する発現パターンを有する。本発明の幾つかの実施形態では、遺伝子の発現パターンは公知であり、本発明を実施するために決定しなくてもよい。別の実施形態では、作用因子に対する前記細胞種の生細胞の応答と相関する発現パターンを有する遺伝子は、作用因子に対して応答する少なくとも1つの遺伝子(典型的には、何百又は何千の遺伝子)の発現パターンを分析し、該作用因子と接触させていない細胞の同じ種類における同じ遺伝子の発現パターンを比較することによって同定されなければならない。
【0038】
本発明の第一の側面を実施する際に有用な遺伝子は、作用因子に対する細胞の応答と相関する発現パターンを有する。このような遺伝子は、例えば、作用因子によって接触されたときに特定の応答を示す(例えば、該応答は、細胞(例えば、インビトロで培養された細胞)が化学的作用因子と接触されたときの細胞死である。)生細胞の異なる種類(例えば、哺乳動物の癌細胞の異なる種類)を同定することによって同定することができる。(作用因子で処理されたときに応答を惹起する)非処理細胞において、作用因子で処理されたときに応答を惹起しない非処理細胞中で観察されない発現パターンを有する遺伝子が同定される。
【0039】
本明細書中の実施例1は、同じくKSP阻害剤L’962に対して耐性である大腸癌細胞株中で高度に発現されている遺伝子の例を提供する(すなわち、遺伝子の発現のレベルは、L’962に対する応答(耐性)を示す癌細胞株中で上昇する。)。
【0040】
同じく一例として、作用因子に対する細胞の応答と相関する発現パターンを有する遺伝子は、作用因子と接触された細胞中で、同じ作用因子と接触させていない同じ細胞種における同じ遺伝子の発現パターンと統計的に有意に異なる発現パターンを有する遺伝子であることが可能である。発現パターンの比較は、一方の細胞(又は細胞の集団)が作用因子と接触され、他方の細胞(又は細胞の集団)が作用因子と接触されないことを除き、同一の条件下で培養された同一細胞種の細胞を用いて行われる。
【0041】
遺伝子中のヌクレオチド配列の発現レベルは、例えば、任意の高処理量技術によって測定することが可能である。遺伝子発現レベルを測定するために使用される方法に関わらず、結果は、転写物又は応答データの絶対量又は相対量(存在量比を表す値を含むが、これに限定されない。)のいずれかである。
【0042】
発現パターンの測定は、転写物アレイへのハイブリダイゼーションによって行うことが可能である。例えば、発現パターンは、細胞中に存在するmRNA転写物中のヌクレオチド配列を代表する検出可能に標識されたポリヌクレオチド(例えば、全細胞mRNAから合成された、蛍光標識されたcDNA)を、マイクロアレイにハイブリダイズすることによって得られる。マイクロアレイとは、細胞又は生物のゲノム中のヌクレオチド配列の多く、好ましくは遺伝子のほとんど又はほとんど全てを代表する、位置的に指定可能な支持体上の結合(例えば、ハイブリダイゼーション)部位のアレイである。このような結合部位の各々は、支持体上の所定領域に結合されたポリヌクレオチドプローブからなる。マイクロアレイは、多数の方法で作製することが可能であり、そのうち幾つかは、以下に記載されている。どのようにして作製されたものであれ、マイクロアレイは、ある種の特性を共有する。アレイは再生可能であり、所定のアレイの複数コピーを作製し、互いに簡単に比較することが可能である。好ましくは、マイクロアレイは、結合(例えば、核酸ハイブリダイゼーション)条件下で安定である材料から作製される。マイクロアレイは、好ましくは小さく、例えば、約1cmと25cmの間、好ましくは約1〜3cmの間である。しかしながら、これより大きなアレイ及びこれより小さなアレイが何れも想定され、例えば、極めて多数の異なるプローブを同時に評価するために好ましいかもしれない。
【0043】
好ましくは、マイクロアレイ中の所定の結合部位又は結合部位のユニークなセットが、細胞又は生物から得られる単一遺伝子(又は該遺伝子に由来する転写物)中のヌクレオチド配列に特異的に結合(例えば、ハイブリダイズ)するであろう。
【0044】
マイクロアレイは、1又は複数のプローブを含み、その各々が、検出されるべきRNA又はDNAの部分配列に相補的であるポリヌクレオチド配列を有する。各プローブは、好ましくは、異なる核酸配列を有し、アレイの固体表面上での各プローブの位置が好ましくは知られている。実際に、マイクロアレイは、好ましくは指定可能なアレイであり、より好ましくは、位置的に指定可能なアレイである。より具体的には、アレイの各プローブは、各プローブの同一性(すなわち、配列)が、アレイ上(すなわち、支持体又は表面上)のその位置から決定可能であるように、固相支持体上の公知の所定位置に好ましくは存在する。本発明のいくつかの実施形態において、アレイは、秩序化されたアレイ(ordered array)である。
【0045】
好ましくは、マイクロアレイ又はマイクロアレイのセット上のプローブの密度は、1cm以上当たり約100個以上の異なる(すなわち、同一でない)プローブである。より好ましくは、マイクロアレイは、1cm当たり少なくとも550プローブ、1cm当たり少なくとも1,000プローブ、1cm当たり少なくとも1,500プローブ又は1cm当たり少なくとも2,000プローブを有する。特に好ましい実施形態では、マイクロアレイは、高密度アレイであり、好ましくは、1cm当たり少なくとも約2,500個の異なるプローブの密度を有する。従って、本発明において使用されるマイクロアレイは、好ましくは、少なくとも2,500、少なくとも5,000、少なくとも10,000、少なくとも15,000、少なくとも20,000、少なくとも25,000、少なくとも50,000又は少なくとも55,000の異なる(すなわち、同一でない)プローブを含有する。
【0046】
一実施形態において、マイクロアレイは、各位置が、遺伝子によってコードされる転写物のヌクレオチド配列に対する(例えば、mRNAのエキソン又はこれから得られたcDNA)別個の結合部位に相当するアレイである。マイクロアレイ上の結合部位の集合は、複数の遺伝子に対する結合部位の組を含有する。例えば、様々な実施形態において、マイクロアレイは、生物のゲノム中の遺伝子の50%未満によってコードされる産物に対する結合部位を含むことが可能である。あるいは、マイクロアレイは、生物のゲノム中に存在する遺伝子の、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は100%によってコードされる産物に対する結合部位を有することが可能である。他の実施形態では、マイクロアレイは、生物の細胞によって発現される遺伝子の、50%未満、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は100%によってコードされる産物に対する結合部位を有することが可能である。結合部位は、特定のRNAが特定的にハイブリダイズすることが可能なDNA又はDNA類縁体であることが可能である。DNA又はDNA類縁体は、例えば遺伝子に対応する、例えば、合成オリゴマー又は遺伝子断片であり得る。
【0047】
本発明の幾つかの実施形態において、遺伝子又は遺伝子中のエキソンは、該遺伝子又は該遺伝子のエキソンの異なるコード配列セグメントに対して相補的である異なるポリヌクレオチドを有するプローブを含む結合部位の組によって、プロファイリングアレイ中に提示される。このようなポリヌクレオチドは、好ましくは、15〜200塩基の長さであり、より好ましくは20〜100塩基の長さ、最も好ましくは40〜60塩基の長さである。また、各プローブ配列は、その標的配列に対して相補的である配列に加えて、リンカー配列を含んでもよいことが理解されるであろう。本明細書において使用されるリンカー配列とは、その標的配列に対して相補的である配列と支持体の表面との間に存在する配列を表す。例えば、プロファイリングアレイは、各標的遺伝子又はエキソンに対して特異的な1つのプローブを含むことが可能である。しかしながら、所望であれば、プロファイリングアレイは、幾つかの標的遺伝子又はエキソンに対して特異的な少なくとも2、5、10、100、1000プローブを含有してもよい。例えば、アレイは、単一の基礎工程で、遺伝子の最長mRNAイソフォームの配列にわたってタイル張りされたプローブを含有してもよい。
【0048】
例えば、2つの異なる条件から得られた細胞試料からのcDNAは、2色プロトコールを用いて、マイクロアレイの結合部位にハイブリダイズされる。siRNA分子で処理された細胞と、siRNA分子で処理されていない細胞の同じ種類との間で比較する場合、一方の細胞試料はsiRNAに曝露され、同じ種類の別の細胞試料はsiRNAに曝露されない。2つの処理の各々から得られたcDNAは、それらが区別できるように、(例えば、Cy3とCy5で)異なって標識される。一実施形態では、例えば、siRNAで処理された細胞から得られるcDNAは、フルオレセイン標識されたdNTPを用いて合成され、siRNAに対して曝露されていない第2の細胞から得られたcDNAは、ローダミン標識されたdNTPを用いて合成される。2つのcDNAが混合され、マイクロアレイにハイブリダイズされる場合には、各cDNAの組から生じるシグナルの相対強度がアレイ上の各部位に対して測定され、特定遺伝子の存在量の何らかの相対差が検出される。
【0049】
上述した例では、siRNA処理された細胞から得られるcDNAは、フルオロフォアが刺激されたときに緑の蛍光を発し、非処理細胞から得られるcDNAは赤の蛍光を発する。その結果、siRNA処理が、細胞中の特定の遺伝子の転写及び/又は転写後スプライシングに対して、直接的又は間接的に、全く効果を有しない場合には、遺伝子及び/又はエキソン発現パターンは、両細胞中で識別不能であり、逆転写した場合、赤く標識されたcDNAと緑に標識されたcDNAは等しい量で存在するであろう。マイクロアレイにハイブリダイズされたときに、RNAのその種に対する結合部位は、両フルオロフォアに特徴的な波長を発するであろう。これに対して、siRNAに曝露された細胞が、細胞中の特定の遺伝子の転写及び/又は転写後スプライシングを、直接的又は間接的に変化させるsiRNAで処理される場合には、各遺伝子又はエキソン結合部位に対する、緑対赤の蛍光比によって表される遺伝子及び/又はエキソン発現パターンは、変化するであろう。siRNAがmRNAの存在量を増加させる場合には、各遺伝子又はmRNA中の発現されるエキソンに対する比が増加するのに対して、siRNAがmRNAの存在量を減少させる場合には、各遺伝子又はmRNA中の発現されるエキソンに対する比は減少するであろう。
【0050】
遺伝子発現の変化を確定するために2色蛍光標識及び検出スキームを使用することは、例えば、「Shena et al., “Quantitative monitoring of gene expression patterns with a complementary DNA microarray,” Science 270:467−470, 1995」(あらゆる目的のために、その全内容が、参照により組み込まれる。)中に、mRNAの検出に関連して記載されている。このスキームは、遺伝子又はエキソンの標識及び検出に対しても等しく適用可能である。2つの異なるフルオロフォアで標識されたcDNAを使用する利点は、2つの細胞状態にある各アレイ化された遺伝子に対応するmRNA又はエキソン発現レベルの直接的且つ内部対照化された比較ができるということであり、実験条件(例えば、ハイブリダイゼーション条件)の僅かな差に起因する変動がその後の分析に影響を与えないことである。しかしながら、単一細胞から得たcDNAを使用し、例えばsiRNA処理された細胞中及び非処理細胞中の特定遺伝子又はエキソンの絶対量を例えば比較することも可能であることが認識されるであろう。さらに、本発明では、3色以上で標識することも想定される。本発明の幾つかの実施形態では、異なる色の少なくとも5、10、20又は100の色素を、標識のために使用することが可能である。このような標識は、識別可能に標識されたcDNA集団の同じアレイへの同時ハイブリダイズを可能とするため、3以上の試料に由来するmRNA分子の発現レベルを測定し、必要に応じて比較することが可能となる。使用可能な色素には、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、テキサスレッド、5’カルボキシ−フルオレセイン(「FMA」」、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシ−フルオレセイン(「JOE」)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシ−ローダミン(「TAMRA」)、6’カルボキシ−X−ローダミン(「ROX」)、HEX、TET、IRD40及びIRD41、Cy3、Cy3.5及びCy5を含む(但し、これらに限定されない。)シアニン(cyamine)色素;BODIPY−FL、BODIPY−TR、BODIPY−TMR、BODIP Y−630/650及びBODIPY−650/670を含む(但し、これらに限定されない。)BODIPY色素;並びにALEXA−488、ALEXA−532、ALEXA−546、ALEXA−568及びALEXA−594を含む(但し、これらに限定されない。)ALEXA色素;並びに当業者に公知であると思われる他の蛍光色素が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
ハイブリダイゼーションデータは、ハイブリダイゼーションレベルの平衡状態への進展を測定できるように、複数の異なるハイブリダイゼーション時間で測定してもよい。このような実施形態では、混合物が平衡状態に近接し、又は実質的に平衡状態に到達し、二重鎖が、拡散ではなくむしろ、親和性と存在量に依存した濃度であるように、ハイブリダイゼーションレベルは、時間0から、標識されたポリヌクレオチドによる結合されたポリヌクレオチド(すなわち、1又は複数のプローブ)のサンプリングに必要とされる時間を超える時間にわたるハイブリダイゼーション時間で測定されることが最も好ましい。しかしながら、ハイブリダイゼーション時間は、標識されたポリヌクレオチド及びプローブ及び/又は表面間の不可逆的結合相互作用が起こらず、又は少なくとも制限されるほど十分に短いものであることが好ましい。例えば、断片化されたポリヌクレオチドの複雑な混合物をプローブするためにポリヌクレオチドアレイが使用される実施形態では、典型的なハイブリダイゼーション時間は、約0〜72時間であってもよい。その他の実施形態に対する適切なハイブリダイゼーション時間は、使用される具体的なポリヌクレオチド配列及びプローブに依存し、等業者によって決定されてもよい(例えば、Sambrook et al., eds., 1989, Molecular Cloning:A Laboratory Manual, 2nd ed., Vol. 1−3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New Yorkを参照)。
【0052】
一実施形態において、異なるハイブリダイゼーション時間でのハイブリダイゼーションレベルは、同一の別個マイクロアレイ上で別々に測定される。このような各測定に対して、ハイブリダイゼーションレベルが測定されるハイブリダイゼーション時間に、好ましくは室温で、高塩濃度から中塩濃度の水溶液(例えば、0.5〜3Mの塩濃度)中において、全ての非結合ポリヌクレオチドを除去しながら、結合又はハイブリダイズされた全てのポリヌクレオチドを保持する条件下で、マイクロアレイは短時間洗浄される。各プローブ上の、残存する、ハイブリダイズされたポリヌクレオチド分子上に存在する検出可能な標識は、次いで、使用されている具体的な標識方法にとって適切である方法によって測定される。次いで、ハイブリダイゼーション曲線を形成するために、得られたハイブリダイゼーションレベルを組み合わせる。別の実施形態では、ハイブリダイゼーションレベルは、単一のマイクロアレイを用いて、リアルタイムに測定される。本実施形態では、マイクロアレイは、中断なしに、サンプルに対してハイブリダイズされ、マイクロアレイは、各ハイブリダイゼーション時間に、非侵襲的な様式で検査される。さらに別の実施形態では、単一のアレイを短時間ハイブリダイズし、洗浄し、各遺伝子のハイブリダイゼーションの量を測定し、再度、アレイを同じ試料とハイブリダイズし、洗浄し、ハイブリダイゼーション時間曲線を得るために、再びハイブリダイゼーションの量を測定する。
【0053】
好ましくは、2つの異なるハイブリダイゼーション時間での少なくとも2つのハイブリダイゼーションレベルを測定する。第一のハイブリダイゼーションレベルは、クロスハイブリダイゼーション平衡の時間スケールに近いハイブリダイゼーション時間でのレベルであり、第二のハイブリダイゼーションレベルは、第一のハイブリダイゼーション時間より長いハイブリダイゼーション時間で測定されたレベルである。クロスハイブリダイゼーション平衡の時間スケールは、とりわけ、試料の組成及びプローブ配列に依存し、当業者によって決定されてもよい。好ましい実施形態において、第一のハイブリダイゼーションレベルは、1〜10時間の間で測定されるのに対して、第二のハイブリダイゼーション時間は、第一のハイブリダイゼーション時間の約2、4、6、10、12、16、18、48又は72倍長い時間で測定される。
【0054】
マイクロアレイ用プローブを調製する:上述されているように、本発明に従って、遺伝子又はエキソンなどの特定のポリヌクレオチド分子が特異的にハイブリダイズする「プローブ」は、相補的ポリヌクレオチド配列である。好ましくは、1又は複数のプローブが、各標的遺伝子又はエキソンに対して選択される。例えば、プローブの最小数が遺伝子又はエキソンの検出のために使用されるべき場合には、プローブは、通常、約40塩基長を超えるヌクレオチド配列を含む。あるいは、冗長なプローブの大規模な組が遺伝子又はエキソンに対して使用されるべき場合には、プローブは、通常、約40〜60塩基のヌクレオチド配列を含む。プローブは、完全長エキソンに対して相補的な配列を含むことも可能である。エキソンの長さは、50塩基未満から200塩基超までの範囲にわたることが可能である。従って、エキソンより長いプローブ長を使用すべき場合には、標的エキソンを含有する連続的mRNA断片に対してプローブ配列が相補的であるように、恒常的にスプライシングされた隣接するエキソン配列を有するエキソン配列を増強することが好ましい。これによって、エキソンプロファイリングアレイのプローブ間で、同等のハイブリダイゼーションストリンジェンシーが可能となるであろう。また、各プローブ配列は、その標的配列に対して相補的である配列に加えて、リンカー配列を含んでもよいことが理解されるであろう。
【0055】
プローブは、DNA又はDNA「模倣物」(例えば、生物体のゲノム中の遺伝子又は遺伝子のエキソンの一部に対応する誘導体及び類縁体)を含んでもよい。一実施形態において、マイクロアレイのプローブは相補的RNA又はRNA模倣物である。DNA模倣物は、DNAとワトソン−クリック様の特異的なハイブリダイゼーションが可能な、又はRNAと特異的なハイブリダイゼーションが可能なサブユニットから構成されるポリマーである。核酸は、塩基部分において、糖部分において、又はリン酸骨格において修飾することが可能である。典型的なDNA模倣物には、例えば、ホスホロチオアートが含まれる。DNAは、例えば、ゲノムDNA、cDNA(例えば、RT−PCRによる)又はクローニングされた配列から得られる遺伝子又はエキソンセグメントのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって取得することが可能である。PCRプライマーは、好ましくは、ユニークな断片(すなわち、マイクロアレイ上の他の何れの断片とも、連続する同一配列の10塩基超を共有しない断片)の増幅をもたらす遺伝子又はエキソン又はcDNAの公知配列に基づいて選択される。Oligoバージョン5.0(National Biosciences)などの、本分野において周知であるコンピュータプログラムは、必要とされる特異性と最適な増幅特性を有するプライマーの設計に有用である。典型的には、マイクロアレイ上の各プローブは、20塩基長と600塩基長の間にあり、通常、30塩基長と200塩基長の間にある。PCR法は、本分野において周知であり、例えば、「Innis et al., eds., 1990, PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications, Academic Press Inc., San Diego, CA」に記載されている。制御されたロボットシステムが、核酸を単離及び増幅するのに有用であることが当業者に自明であろう。
【0056】
マイクロアレイのポリヌクレオチドプローブを生成するための別の好ましい手段は、例えば、N−ホスホナート又はオホスホルアミダイト化学手法を用いた合成ポリヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドの合成による生成である(Froehler et al., Nucleic Acid Res. 14:5399−5407, 1986; McBride et al., Tetrahedron Lett. 24:246−248, 1983)。合成配列は、典型的には、約15塩基長と約600塩基長の間、より典型的には、約20塩基長と約100塩基長の間、最も好ましくは、約40塩基長と約70塩基長の間である。幾つかの実施形態では、合成核酸には、イノシンなどの(これに限定されない。)非天然塩基が含まれる。上述のように、ハイブリダイゼーション用の結合部位として核酸類縁体を使用してもよい。適切な核酸類縁体の例は、ペプチド核酸である(例えば、Egholm et al., Nature 355:566−568, 1993; 米国特許第5,539,083号を参照)。
【0057】
他の実施形態において、ハイブリダイゼーション部位(すなわち、プローブ)は、遺伝子、cDNA(例えば、発現遺伝子配列断片)のプラスミド若しくはファージクローン、又はそこから得られる挿入断片から作製される(Nguyen et al., Genomics 29:201−209, 1995)。
【0058】
アレイを形成するために固相表面にプローブを付着させる:ポリヌクレオチドプローブは、アレイを形成するために、支持体上に堆積させることが可能である。ポリヌクレオチドプローブは、アレイを形成するために、支持体上に直接合成することも可能である。プローブは、例えば、ガラス、プラスチック(例えば、ポリプロピレン、ナイロン)、ポリアクリルアミド、ニトロセルロース、ゲル又は他の多孔性若しくは無孔性材料から作製してもよい固相支持体又は表面へ付着させる。
【0059】
核酸を表面に付着させるための1つの方法は、「Schena et al., Science 270:467−470, 1995」によって一般的に記載されているように、ガラスプレート上に印刷することによる方法である。この方法は、特に、cDNAのマイクロアレイを調製するのに有用である(DeRisi et al., Nature Genetics 14:457−460, 1996; Shalon et al, Genome Res. 6:639−645, 1996;及びSchena et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. P3:10539−l1286, 1995))。
【0060】
マイクロアレイを作製するための別の方法は、高密度ポリヌクレオチドアレイを作製することによる方法である。インシチュ合成のためのホトリソグラフ技術を使用して、表面上の所定位置に、所定の配列に対して相補的な数千のオリゴヌクレオチドを含有するアレイを作製する技術は公知である(Fodor et al., Science 251:767−773, 1991; Pease et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 91:5022−5026, 1994; Lockhart et al., Nature Biotechnology 14:1675, 1996; 米国特許第5,578,832号;第5,556,752号;及び第5,510,270号を参照)又は所定のオリゴヌクレオチドの迅速な合成及び堆積のためのその他の方法(Blanchard et al., Biosensors & Bioelectronics 11:687−690(1996))が公知である。これらの方法が使用される場合には、公知配列のオリゴヌクレオチド(例えば、60マー)は、誘導化されたガラススライドなどの表面上で直接合成される。遺伝子又はエキソン当たり数個のポリヌクレオチド分子を用いて作製されるアレイは、冗長とすることが可能である。
【0061】
例えばマスキング(Maskos and Southern, Nucl. Acids. Res. 20:1679−1684, 1992)によって、マイクロアレイを作製するための他の方法を使用してもよい。原理的に、上述されているように、任意の種類のアレイ、例えば、ナイロンハイブリダイゼーション膜上のドットブロット(Sambrook et al.,上記参照)を使用することも可能である。しかしながら、当業者によって認識されているように、ハイブリダイゼーション容量がさらに小さいので、極めて小さなアレイがしばしば好ましいであろう。
【0062】
本発明の実施に有用なマイクロアレイは、例えば、「1998年9月24日に公開された国際特許公開WO 98/41531号でBlanchard;Blanchard et al., Biosensors and Bioelectronics 11:687−690, 1996; Blanchard, 1998, in Synthetic DNA Arrays in Genetic Engineering, vol. 20, J.K. Setlow, ed., Plenum Press, New York at pages 111−123;及びBlanchardに対する米国特許第6,028,189号によって記載されている方法及びシステムを用いて、オリゴヌクレオチド合成用のインクジェット印刷装置を用いて製造することが可能である。具体的には、このようなマイクロアレイ中のポリヌクレオチドプローブは、炭酸プロピレンなどの高表面張力溶媒の「微小液滴」中に各ヌクレオチド塩基を連続的に堆積させることによって、例えば、ガラススライド上のアレイ中に合成することが好ましい。微小液滴は小容量(例えば、100pL以下、より好ましくは50pL以下)を有し、アレイ要素(すなわち、異なるプローブ)の位置を規定する円状の表面張力ウェルを形成するために、マイクロアレイ上で(例えば、疎水性ドメインによって)互いに分離される。ポリヌクレオチドプローブは、通常、ポリヌクレオチドの3’末端において、共有結合で表面に付着される。あるいは、ポリヌクレオチドプローブは、ポリヌクレオチドの5’末端において、共有結合で表面に付着されることが可能である(例えば、Blanchard, 1998, in Synthetic DNA Arrays in Genetic Engineering, vol. 20, J.K. Setlow, ed., Plenum Press, New York at pages 111−123参照)。
【0063】
標的ポリヌクレオチド分子:マイクロアレイを使用することによって分析され得る標的ポリヌクレオチドには、メッセンジャーRNA(mRNA)分子、リボゾームRNA(rRNA)分子、cRNA分子(すなわち、インビボで転写されるcDNA分子から調製されるRNA分子)などのRNA分子(これらに限定されない。)及びこれらの断片が含まれる。同じく、マイクロアレイを使用することによって分析され得る標的ポリヌクレオチドには、ゲノムDNA分子、cDNA分子などのDNA分子EST並びにオリゴヌクレオチド、EST及びSTSを含むこれらの断片が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
標的ポリヌクレオチドは、任意の取得源から得てもよい。例えば、標的ポリヌクレオチド分子は、生物体から単離されたゲノム若しくはゲノム外DNA分子又は生物体から単離された、mRNA分子などのRNA分子などの天然に存在する核酸分子であってもよい。あるいは、例えば、cDNA分子などの、インビボ若しくはインビトロで酵素的に合成される核酸分子、又はPCRによって合成されるポリヌクレオチド分子、インビトロ転写によって合成されたRNA分子などのポリヌクレオチド分子を合成してもよい。標的ポリヌクレオチドの試料は、例えば、DNA、RNA又はDNA及びRNAの共重合体の分子を含むことが可能である。好ましい実施形態において、本発明の標的ポリヌクレオチドは、特定の遺伝子又は特定の遺伝子転写物(例えば、細胞中で発現されている特定のmRNA配列又はこのようなmRNA配列に由来する特定のcDNA配列)に対応するであろう。しかしながら、多くの実施形態では、特に、ポリヌクレオチド分子が哺乳動物細胞に由来する実施形態では、標的ポリヌクレオチドは、遺伝子転写物の特定の断片に対応してもよい。例えば、標的ポリヌクレオチドは、例えば、その遺伝子の異なるスプライスバリアントが検出及び/又は分析され得るように、同じ遺伝子の異なるエキソンに対応してもよい。
【0065】
好ましい実施形態において、分析されるべき標的ポリヌクレオチドは、細胞から抽出された核酸からインビトロで調製される。例えば、一実施形態において、RNA(例えば、全細胞RNA、ポリ(A)メッセンジャーRNA又はこれらの画分)は細胞から抽出され、メッセンジャーRNAは、抽出された全RNAから精製される。全RNA及びポリ(A)RNAを調製するための方法は本分野において周知であり、例えば、上記「Sambrook et al.,上記」に一般的に記載されている。一実施形態では、RNAは、グアニジニウムチオシアナート溶解後に、CsCl遠心及びオリゴdT精製を用いて、本発明において興味が持たれる様々な種類の細胞から抽出される(Chirgwin et al., Biochemistry 18:5294−5299, 1979)。別の実施形態では、RNAは、グアニジニウムチオシアナート溶解後に、RNeasyカラム(Qiagen)での精製を使用して、細胞から抽出される。次いで、例えば、オリゴdT又はランダムプライマーを用いて、精製されたmRNAからcDNAが合成される。好ましい実施形態において、標的ポリヌクレオチドは、細胞から抽出された精製メッセンジャーRNAから調製されたcRNAである。本明細書において、cRNAとは、源RNAに対して相補的なRNAと定義される。抽出されたRNAは、アンチセンスRNAの転写を誘導することが可能な方向でRNAポリメラーゼプロモーターに連結されたプライマーを用いて二本鎖cDNAがRNAから合成されるプロセスを用いて増幅される。次いで、RNAポリメラーゼを用いて、二本鎖cDNAの第二鎖からアンチセンスRNA又はcRNAを転写する(例えば、米国特許第5,891,636号、第5,716,785号;第5,545,522号及び第6,132,997号を参照;Linsley及びSchleterによって、1999年10月4日に出願された米国特許出願09/411,074号及びPCT公開WO 02/44399号も参照)。RNAポリメラーゼプロモーター又はこれらの相補物を含有する、オリゴdTプライマー(米国特許第5,545,522号及び第6,132,997号)又はランダムプリマー(PCT公開WO02/44399号)を、ともに使用することが可能である。好ましくは、標的ポリヌクレオチドは、細胞の元の核酸集団を代表する短い及び/又は断片化されたポリヌクレオチド分子である。
【0066】
本発明の方法及び組成物によって分析されるべき標的ポリヌクレオチドは、好ましくは、検出可能に標識される。cDNAは、例えば、ヌクレオチド類縁体を用いて直接的に、又は、例えば、第一鎖をテンプレートとして使用して、第二の標識されたcDNA鎖を作製することによって間接的に標識することが可能である。あるいは、二本鎖cDNAをcRNAへと転写し、標識することが可能である。
【0067】
好ましくは、検出可能な標識は、例えば、ヌクレオチド類縁体の取り込みによる蛍光標識である。本発明での使用に適した他の標識には、ビオチン、イミノビオチン、抗原、補因子、ジニトロフェノール、リポ酸、オレフィン化合物、検出可能なポリペプチド、電子が豊富な分子、基質に対する作用によって検出可能なシグナルを生成することが可能な酵素及び放射性同位体が含まれるが、これらに限定されるものではない。好ましい放射性同位体には、32P、35S、14C、15N及び125Iが含まれる。本発明に適した蛍光分子には、フルオレセイン及びその誘導体、ローダミン及びその誘導体、テキサスレッド、5’カルボキシ−フルオレセイン(「FMA」」、2’,7’−ジメトキシ−4’,5’−ジクロロ−6−カルボキシ−フルオレセイン(「JOE」)、N,N,N’,N’−テトラメチル−6−カルボキシローダミン(「TAMRA」)、6’カルボキシ−X−ローダミン(「ROX」)、HEX、TET、IRD40及びIRD41が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明に適した蛍光分子には、さらに、、Cy3、Cy3.5及びCy5を含む(但し、これらに限定されない。)シアニン色素;BODIPY−FL、BODIPY−TR、BODIPY−TMR、BODIP Y−630/650及びBODIPY−650/670を含む(但し、これらに限定されない。)BODIPY色素;並びにALEXA−488、ALEXA−532、ALEXA−546、ALEXA−568及びALEXA−594を含む(但し、これらに限定されない。)ALEXA色素;並びに当業者に公知であると思われる他の蛍光色素が含まれるが、これらに限定されるものではない。本発明に適した電子が豊富な指示薬分子には、フェリチン、ヘモシアニン及びコロイド金が含まれるが、これらに限定されるものではない。あるいは、より好ましくない実施形態では、ポリヌクレオチドに第一の基を特異的に錯化することによって、標的ポリヌクレオチドを標識してもよい。標的ポリヌクレオチドを間接的に検出するために、指示薬分子に共有結合され、第一の基に対して親和性を有する第二の基を使用することが可能である。このような実施形態では、第一の基として使用するのに適した化合物には、ビオチン及びイミノビオチンが含まれるが、これらに限定されるものではない。第二の基として使用するのに適した化合物には、アビジン及びストレプトアビジンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
マイクロアレイへのハイブリダイゼーション:上述されているように、核酸ハイブリダイゼーション及び洗浄条件は、分析されるべきポリヌクレオチド分子(本明細書において、「標的ポリヌクレオチド分子と称される。」)、アレイの相補的ポリヌクレオチド配列に、好ましくはその相補的DNAが配置された特異的アレイ部位に特異的に結合し、又は特異的にハイブリダイズするように選択される。
【0069】
標的ポリヌクレオチド分子と接触する前にDNAを一本鎖とするために、その上に二本鎖プローブDNAを含有するアレイは、好ましくは、変性条件に供される。一本鎖プローブDNA(例えば、合成オリゴデオキシリボ核酸)を含有するアレイは、例えば、自己相補的配列のために形成するヘアピン又は二量体を除去するために、標的ポリヌクレオチド分子と接触させる前に変性させる必要があるかもしれない。
【0070】
最適なハイブリダイゼーション条件は、プローブ及び標的核酸の長さ(例えば、オリゴマー対200塩基超のポリヌクレオチド)及び種類(例えば、RNA又はDNA)に依存するであろう。核酸用の特異的(すなわち、ストリンジェント)ハイブリダイゼーション条件に対する一般的なパラメータは、「Sambrook et al.,(上記)」及び「Ausubel et al., 1987, Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley−Interscience, New York」に記載されている。SchenaらのcDNAマイクロアレイを使用する場合には、典型的なハイブリダイゼーション条件は、5×SSC+0.2%SDS中、65℃で4時間のハイブリダイゼーション後、低ストリンジェンシー洗浄緩衝液(1×SSC+0.2% SDS)中、25℃での洗浄、続いて、さらに高いストリンジェンシーの洗浄緩衝液(0.1×SSC+0.2% SDS)中、25℃での10分間の洗浄である(Shena et al., 1996, Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 93: 10614)。有用なハイブリダイゼーション条件は、例えば、「Tijessen, 1993, Hybridization With Nucleic Acid Probes, Elsevier Science Publishers B. V. and Kricka, 1992, Nonisotopic DNA Probe Techniques, Academic Press, San Diego, CA」にも記載されている。
【0071】
特に好ましいハイブリダイゼーション条件には、1M NaCl、50mM MES緩衝液(pH6.5)、0.5%サルコシンナトリウム及び30%ホルムアミド中、プローブの平均融解温度又はその付近(例えば、5℃以内、より好ましくは2℃以内)でのハイブリダイゼーションが含まれる。
【0072】
シグナル検出及びデータ解析:細胞のRNAに対して相補的な標的配列、例えば、cDNA又はcRNAが作製され、適切なハイブリダイゼーション条件下でマイクロアレイにハイブリダイズされる場合には、遺伝子又は任意の遺伝子のエキソンに対応するアレイ中の部位へのハイブリダイゼーションのレベルは、その遺伝子のエキソンから転写されるmRNAの細胞中での存在量を反映し得ることが自明であろう。例えば、全細胞mRNAに対して相補的な検出可能に標識されたcDNAがマイクロアレイにハイブリダイズされる場合には、RNAスプライシング中に転写されない又は除去される、細胞中の遺伝子のエキソンに対応するアレイ上の部位は、ほとんど又は全くシグナルを有さず、転写される遺伝子のエキソンは、比較的強いシグナルを有するであろう。次いで、該遺伝子に対してモニターされるエキソンの完全な組にわたるシグナル強度パターンによって、選択的スプライシングによって同じ遺伝子から生成される異なるmRNAの相対的な豊富さを決定する。
【0073】
好ましい実施形態において、2つの異なる細胞から得られる標的配列、例えば、cDNA又はcRNAは、マイクロアレイの結合部位にハイブリダイズされる。例えば、1つの細胞試料はsiRNAに曝露され、同一種の別の細胞試料はsiRNAに曝露されない。2つの試料の各々から得られたcDNA又はcRNAは、それらが区別可能であるように異なって標識される。一実施形態では、例えば、siRNAで処理された細胞から得られるcDNAは、フルオレセイン標識されたdNTPを用いて合成され、siRNAに曝露されていない第2の細胞から得られたcDNAは、ローダミン標識されたdNTPを用いて合成される。2つのcDNAが混合され、マイクロアレイにハイブリダイズされる場合には、各cDNAの組から生じるシグナルの相対強度がアレイ上の各部位に対して測定され、特定のエキソンの存在量の何らかの相対差が検出される。
【0074】
上述した例では、siRNA処理された細胞から得られるcDNAは、フルオロフォアが刺激されたときに緑の蛍光を発し、非処理細胞から得られるcDNAは赤の蛍光を発する。その結果、siRNA処理が、細胞中の特定の遺伝子の転写及び/又は転写後スプライシングに対して、直接的又は間接的に、全く効果を有しない場合には、遺伝子又はエキソン発現パターンは、両細胞中で識別不能であり、逆転写した場合、赤く標識されたcDNAと緑に標識されたcDNAは等しい量で存在するであろう。マイクロアレイにハイブリダイズされたときに、RNAのその種に対する結合部位は、両フルオロフォアに特徴的な波長を発するであろう。これに対して、siRNAに曝露された細胞が、細胞中の特定の遺伝子の転写及び/又は転写後スプライシングを、直接的又は間接的に変化させるsiRNAで処理される場合には、各遺伝子又はエキソン結合部位に対する、緑対赤の蛍光比によって表される遺伝子及び/又はエキソン発現パターンは、変化するであろう。siRNAがmRNAの存在量を増加させる場合には、各遺伝子又はmRNA中に発現されるエキソンに対する比が増加するのに対して、siRNAがmRNAの存在量を減少させる場合には、各遺伝子又はmRNA中に発現されるエキソンに対する比は減少するであろう。
【0075】
遺伝子発現の変化を確定するために2色蛍光標識及び検出スキームを使用することは、例えば、「Shena et al., Science 270:467−470, 1995」(あらゆる目的のために、その内容全体が、参照により組み込まれる。)中に、mRNAの検出に関連して記載されている。このスキームは、エキソンの標識及び検出に対しても等しく適用可能である。2つの異なるフルオロフォアで標識された標的配列(例えば、cDNA又はcRNA)を使用する利点は、2つの細胞状態にある各アレイ化された遺伝子に対応するmRNA又はエキソン発現レベルの直接的且つ内部対照化された比較ができるということであり、実験条件(例えば、ハイブリダイゼーション条件)の僅かな差に起因する変動がその後の分析に影響を与えないことである。しかしながら、単一細胞から得たcDNAを使用し、例えばsiRNA処理された細胞中及び非処理細胞中の特定遺伝子又はエキソンの絶対量を例えば比較することも可能であることが認識されるであろう。
【0076】
例えば、1色蛍光標識を使用する単一チャンネル検出法を使用してもよい(2000年8月25日に出願された米国仮特許出願60/227,966号を参照。その全内容が、参照により、本明細書に組み込まれる。)。本実施形態では、逆相補物(RC;reverse−complement)プローブを含むアレイが設計され、作製される。様々な指標(例えば、GC含量及びGC傾向などの指標が、逆相補物の下では不変である。)に関して、標的配列に相補的な対応するフォワード鎖(FS)プローブと等価であるDNA配列の逆相補物は配列が複雑であるので、対応するFSプローブへの非特異的クロスハイブリダイゼーションのレベルを測定するための対照プローブとしてPCプローブが使用される。標的配列のFSプローブ強度の有意性は、それぞれの測定誤差とともに、FSプローブに対する原強度測定値とRCプローブに対する対応する原強度測定を比較することによって決定される。好ましい実施形態において、FSプローブと対応するRCプローブ間の強度差が有意であれば、遺伝子又はエキソンが存在すると考えられる。より好ましくは、FSプローブ強度がバックグラウンドレベルを有意に上回っていれば、遺伝子又はエキソンが存在すると考えられる。単一チャンネル検出法は、複数色標識とともに使用することが可能である。一実施形態において、各々異なる色で標識された複数の異なる試料がアレイにハイブリダイズされる。対応する試料のハイブリダイゼーションのレベルを決定するために、各色に対するFS及びRCプローブ間の差が使用される。
【0077】
蛍光標識されたプローブが使用される場合には、転写物アレイの各部位における蛍光発光は、好ましくは、走査共焦点レーザー顕微鏡によって検出することが可能である。一実施形態では、適切な励起線を使用して、使用される2つのフルオロフォアの各々に対して別個の走査が実施される。あるいは、2つのフルオロフォアに対して特異的な波長での同時試料照射を可能とするレーザを使用することが可能であり、2つのフルオロフォアからの発光を同時に分析することができる(Shalon et al., Genome Res. 5:639−645, 1996を参照)。アレイは、コンピュータによって制御されたX−Y試料台と顕微鏡対物を備えたレーザー蛍光スキャナーを用いて走査することが可能である。複数線の混合ガスレーザーを用いて、2つのフルオロフォアの順次励起が行われ、発光された光は波長によって分割され、2つの光電子増倍管を用いて検出される。このような蛍光レーザー走査装置は、例えば、「Schena et al., Genome Res. 5:639−645, 1996」に記載されている。あるいは、多数の部位で、mRNA存在量のレベルを同時にモニターするために、「Ferguson et al., Nature Biotech. 14:1681−1684, 1996」によって記載されている光ファイバー束を使用してもよい。
【0078】
シグナルを記録し、例えば、12ビットアナログ−デジタルボードを用いて、コンピュータによって分析することが可能である。一実施形態では、グラフィックスプログラム(例えば、Hijaak Graphics Suite)を用いて、走査された画像のスペックル除去(despeckle)を行った後、各部位で、各波長での平均ハイブリダイゼーションのスプレッドシートを作製する画像格子プログラムを用いて分析する。必要であれば、2つの蛍光に対するチャネル間での「クロストーク」(又は重複)について実験的に測定された補正を施してもよい。転写物アレイ上の全てのハイブリダイゼーション部位に対して、2つのフルオロフォアの発光の比を計算することが可能である。この比は、同族遺伝子の絶対的発現レベルとは無関係であるが、siRNA形質移入、遺伝子欠失又は他の任意の検査される現象によって、その発現が有意に調節される遺伝子に対して有用である。
【0079】
遺伝子発現レベルの比較:各遺伝子の発現のレベルを比較して、ある細胞種の生細胞の、作用因子に対する応答に相関する発現パターンを有する遺伝子を同定するために、本分野で認められている統計的技術を使用することが可能である。例えば、ある遺伝子の発現のレベルの反復測定の平均値が、siRNAで処理され、且つ作用因子と接触された細胞中において、siRNAで処理されずに同じ作用因子と接触された細胞と比べて有意に異なるかどうかを決定するためにt検定を使用することが可能である。
【0080】
以下の文献は、有意に異なる発現レベルを示す遺伝子を同定するために、処理及び非処理哺乳動物細胞中の各遺伝子の発現のレベルを比較するために使用可能な、本分野で認められた技術の例を記載している。Nature Genetics, Vol.32, ps. 461−552(supplement December 2002);Bioinformatics 18(4):546−54(April 2002); Dudoit, et al. Technical Report 578, University of California at Berkeley; Tusher et al., Proc. Nat’l. Acad. Sci U. S. A. 98(9):5116−5121(April 2001);及びKerr, et al., J. Comput. Biol. 7:819−837」。
【0081】
本発明の実施において有用である他の統計的検定の代表的な例には、例えば、2つの因子間の関連性(例えば、哺乳動物細胞中の病状の存在との、遺伝子発現の正又は負の相関)について検定するために使用できるχ二乗検定が含まれる。同じく一例として、測定値の2組みの間に(例えば、遺伝子発現と病状の間に)相関が存在するかどうかを検定するために、本分野で認められた相関解析技術を使用することが可能である。標準的な統計技術は、「Modern Elementary Statistics, John E. Freund, 7th edition, published by Prentice−Hall; 及びPractical Statistics for Environmental and Biological Scientists, John Townend, published by John Wiley & Sons, Ltd.」などの統計学の教科書に見出すことが可能である。
【0082】
遺伝子が、作用因子に対する生細胞の応答に寄与していることを確認する方法:第二の側面において、本発明は、ある遺伝子が、作用因子に対する生細胞の応答に寄与していることを確認する方法を提供する。本発明の本側面の方法は、各々、(a)ある細胞種の生細胞中に干渉RNA分子を導入することによって、前記細胞中の遺伝子を機能的に不活化する工程と(前記遺伝子は、作用因子に対する前記細胞種の生細胞の応答と相関する発現パターンを有し、前記遺伝子のコピーは、前記細胞種の全ての生細胞中に存在する。);及び(b)前記作用因子に対する前記生細胞の応答が、前記干渉RNA分子を含まない前記細胞種の生細胞の、前記作用因子に対する応答と異なっていることを測定することによって、前記遺伝子が生細胞の前記作用因子に対する応答に寄与していることを確認する工程と;を含む。
【0083】
本発明の第一の側面に関する本出願の教示は、本発明の第二の側面の方法についても適用可能である(例えば、干渉RNA分子を用いた遺伝子の機能的不活化に関する教示)。
【0084】
KSP阻害剤に応答する哺乳動物対照を同定する方法:第三の側面において、本発明は、KSP阻害剤に対して応答性の哺乳動物対象を同定する方法を提供する。これらの方法は、各々、20番染色体の部分20qが癌細胞中で増幅されているかどうかを測定するために哺乳類対象の癌細胞から得た20番染色体を分析する工程を含み、20番染色体の部分20qが前記癌細胞中で増幅されていなければ、前記哺乳類対象がKSP阻害剤に対して応答性であると同定される。
【0085】
20番染色体の部分20qが癌性細胞中で増幅されているかどうかを測定するために、任意の有用な方法を使用することが可能である。例えば、20番染色体の部分20qが癌性細胞中で増幅されているかどうかを測定するために、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH;comparative genomic hybridization)を使用することが可能である。典型的なCGH法は、以下の刊行物に記載されており、それぞれ、参照により、全内容が本明細書に組み込まれる。Karhu R, et al., “Quality control of CGH: impact of metaphase chromosomes and the dynamic range of hybridization” Cytometry 28: 198−205(1997);及びTirkkonen M, et al., “Molecular cytogenetics of primary breast cancer by CGH”, Genes Chromosomes Cancer 21:177−184(1998)。
【0086】
以下の実施例は、単に、本発明を実施するために現在想定される最良の態様を例示するものにすぎず、本発明を限定するものと解釈すべきでない。
【実施例】
【0087】
(実施例1)
本実施例は、抗癌剤候補であるKSP阻害剤L’962((1S)−1−{[(2S)−4−(2,5−ジフルオロフェニル)−2−フェニル−2,5−ジヒドロ−1H−ピロル−1−イル]カルボニル}−2−メチルプロピルアミン)に対するヒト大腸癌細胞株の耐性を、遺伝子STK6及びTPX2が媒介するかどうかを決定するための代表的な方法を記載している。
【0088】
KSP阻害剤L’962に関して、用量応答特徴を決定するために、24のヒト大腸癌細胞株をインビトロで分析した。24の細胞株(及び10の基準細胞株)の名称とATCC受託番号が表1に記載されている。
【0089】
【表1】


【0090】
10%FBSを加えたDMEM中、又はRPMI(10%FBS、ペニシリン/ストレプトマイシン、10mM HEPES及び1mMピルビン酸ナトリウムを加えた)中で、大腸癌細胞株を維持した。1500又は3000細胞/ウェルの密度で、96ウェルプレート中に細胞を播種した。播種から24時間後に、同じ培地中のL’962で細胞を処理した。対照細胞には、L’962の代わりにDMSOを与えた。L’962で処理してから72時間後に、Alamarブルーアッセイによって細胞の生存を測定し、バックグラウンドを補正した(細胞なし)。対照細胞増殖のパーセントとして、L’962の存在下での細胞応答(生存)を測定した。L’962に感受性がある細胞株では、細胞生存のレベルは、L’962に対して耐性の細胞株に比べて低かった。
【0091】
遺伝子発現プロファイリングに関して、10%FBSを加えたDMEM又は10%FBSを加えたRPMI中に大腸癌細胞株を維持した。T75フラスコ中に細胞を播種し、70〜80%の集密状態に達するまで培養した。細胞を採集し、RNeasyキット(Qiagen)を用いて全RNAを抽出し、以前に記載したようにハイブリダイゼーションのために加工した。(Hughes, T.R. and Mao, M, Nature Biotech., 19: 342−347(2001))。RNAの基準プールに対して、約21,000個のヒト遺伝子に対応するオリゴヌクレオチドを含有するAgilentマイクロアレイに、各細胞株から得たRNAをハイブリダイズさせた。色素の偏りを除去するために、蛍光標識拮抗(reversal)を用いて比率ハイブリダイゼーションを行った。マイクロアレイは、Agilent Technologiesから購入し、又は記載のとおりに合成した(Hughes, T.R. and Mao, M, 上記)。誤差モデルは、以前に記載されている(Id)。基準プールは、10個の大腸癌細胞株から得たRNAからなった(表1参照)。
【0092】
各細胞株でのL’962に対する細胞増殖阻害の最高量に対する値を得るために、L’962の最高3用量での対照細胞増殖に対するパーセント値を平均した。GraphPad Prism 4ソフトウェア(GraphPad Software Inc.)を用いて増殖対用量曲線を分析することによって、各細胞株のEC50を計算した。EC50値に基づいて、細胞株は、L’962に対する感受性が異なる、明確に識別可能な2つの集団(L’962に対してより感受性である1つの集団及びL’962に対して感受性が低い1つの集団)に分離されることが観察された。
【0093】
マイクロアレイ上には、約21,000遺伝子が存在した。まず、24個の癌細胞株の10個のプールのうち4以上の細胞株中で異なって発現された(p<0.01、プラットフォーム誤差モデルによる)遺伝子を選択した。異なる癌細胞株間で異なって発現されており、この操作がなければ、L’962での細胞株の処理に応答して発現されているとして誤って同定された可能性がある遺伝子がこの操作によって除外された。Pearsonの相関係数を使用して、このようにして選択された遺伝子の各々について、全細胞株にわたり、最大増殖阻害との発現レベルの相関[log(比率)]又はlog(EC50)を計算した。0.5を超える相関の規模を有する遺伝子を、L’962に対する応答性についてのレポーターとして選択した。これらのレポーター遺伝子のうち468が正に相関し(すなわち、L’962耐性細胞株中でさらに高度に発現された。)及び820個の遺伝子は負に相関した(すなわち、L’962耐性細胞株中で、さらに低いレベルで発現された。)。
【0094】
以下の工程を含むleave−one−out交叉検証アプローチを用いて、このようにして同定されたレポーター遺伝子を検証した。まず、1つの試料を除外し、残りの標本(又は、本明細書に記載されているように残りの訓練標本(training sample))を用いてレポーター遺伝子を選択した。レポーター遺伝子を、以下の3つの亜群に分割した。最大増殖阻害又はlog(EC50)と負に相関したレポーター;最大増殖阻害又はlog(EC50)と正に相関し、且つ染色体20q上に存在するレポーター;及び最大増殖阻害又はlog(EC50)と正に相関するが、染色体20q上に存在しないレポーター。次いで、各細胞株中のレポーターの各亜群の平均log(比)を計算し、残りの標本(又は残りの訓練標本)に基づいて、平均log(比)及び最大増殖阻害又はlog(EC50)間で線形フィッティングを行った。それぞれ、レポーターの3つの亜群の各々によって、除外標本を予測するために、フィッティングパラメータを使用した。各標本を一度除外するために、先述した工程を繰り返した。最後に、測定及び予測された最大増殖阻害及びlog(EC50)との相関を計算することによって、遺伝子の各群の予測力を評価する。
【0095】
訓練標本の選択に関して、EC50レポーター選択のために、以下のように、leave−one−out交叉検証(LOOCV)の追加層(extra−layer)によって、訓練標本をさらに限定した。全ての標本を用いて、レポーターを選択し、除外標本を予測するためにLOOCVプロセスを使用した。レポーターの3つのサブセット、すなわち、log(EC50)と負に相関したレポーター;log(EC50)と正に相関し、且つ染色体20q上に存在するレポーター;及びlog(EC50)と正に相関するが、20q上に存在しないレポーターを用いて、この予測を繰り返した。予測の3つの組に対して予測されたlog(EC50)と測定されたlog(EC50)の間で標準偏差を計算した。2つ又は3つ全ての予測組の中で、1より大きな値の標準偏差を有する標本を除外した。
【0096】
このleave−one−out交叉検証プロセスによって、ベースライン発現が、0.65の相関及び0.02%のP値で、log10EC50を予測することが示された。
【0097】
耐性と正に相関したレポーター遺伝子のうち、染色体20q上の遺伝子の有意な濃縮が存在した。染色体20qから得られたレポーター遺伝子は、正に相関したレポーターの全体の予測力の大半を有していた(データは図示せず。)。染色体20qは、大腸癌、乳癌及び卵巣癌でしばしば増幅されている(Hodgson JG, et al., Breast Cancer Res. Treat. 78(3): 337−45(2003); Tanner MM, et al., Clin Cancer Res. 6(5): 1833−9(2000); Warner SL, et al., MoI Cancer Ther. 2(6): 589−95(2003))。腫瘍発生に関連している染色体20q上に位置する増幅された遺伝子の1つがSTK6(Ewart−Toland A, et al., Nat Genet. 34(4): 403−12(2003))、Xenopus中のKSPをリン酸化するセリン/スレオニンタンパク質キナーゼ(Giet R, et al., J Biol Chem. 274(21): 15005−13(1999))である。STK6は、中心体に局在する発癌遺伝子であり、その過剰発現は、倍数性、中心体増幅及びタキソール耐性をもたらす(Warner SL, et al., Mol Cancer Ther. 2(6): 589−95(2003))。STK6は、予後が不良な乳癌患者で過剰発現されており(van’t Veer LJ, et al., Nature 415(6871):530−6(2002))、大腸癌中で増幅され得る(Bischoff JR, et al., EMBO J. 17(11): 3052−65(1998))。定量的PCR分析(TaqMan)を用いて、24個の大腸癌細胞株中で、STK6 mRNAレベルを測定した。これらの株中でのSTK6 mRNAのレベルは、L’962のlog10EC50と相関した(rは約0.7、データは図示せず。)。このように、STK6発現の増加したレベルとL’962に対する増加した耐性の間には、正の相関が存在する。
【0098】
KSP経路におけるSTK6の役割に鑑みれば、STK6の増幅及び/又は過剰発現は、KSP機能に対する直接又は間接の影響を通じて、KSP機能に対する細胞応答に影響を与えることが可能であろう。しかしながら、染色体増幅は不正確であり、ドライバー遺伝子(driver gene)に隣接する遺伝子の付随的増幅をもたらすかもしれない。従って、STK6の増幅がL’962に対する耐性を媒介するかどうかを決定するために、siRNAを使用した。
【0099】
STK6遺伝子に対して誘導されたsiRNAは、HeLa細胞をL’962に対して感作した約800の異なる遺伝子に対して誘導されたsiRNA分子の約800クラスのライブラリーから得られた、siRNA分子の僅か3つのクラスのうち1つであった。HeLa細胞をL’962に対して感作したsiRNA分子の他の2つのクラスは、KSP自体に対して、及びSTK6自己リン酸化を促進する、KSP経路中の別の遺伝子であるTPX2(Bayliss R, et al., Mol Cell 12(4): 851−62(2003))に対して誘導された。染色体20qから得た17遺伝子がsiRNAライブラリー中に提示されたが、STK6及びTPX2の機能的不活化のみがL’962に対して細胞を感作し、STK6遺伝子発現及び/又はTPX2遺伝子発現の増強されたレベルが、L’962に対する幾つかのヒト癌細胞株の耐性を少なくとも部分的に媒介するという結論を支持する。
【0100】
本発明の好ましい実施形態を例示及び記述してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱せずに、実施形態に様々な変化を加え得ることは自明であろう。
【0101】
独占的財産権又は特権が主張される本発明の実施形態は、以上に規定されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ある細胞種の生細胞中に干渉RNA分子を導入することによって、細胞中の遺伝子を機能的に不活化する工程(前記遺伝子は、前記細胞種の生細胞の作用因子に対する応答と相関する発現パターンを有し、前記遺伝子のコピーは、前記細胞種の全ての生細胞中に存在する。);
(b)前記干渉RNA分子を含む前記生細胞を、前記作用因子と接触させる工程;及び
(c)前記作用因子に対する前記生細胞の応答が、前記干渉RNA分子を含まない前記細胞種の生細胞の前記作用因子に対する応答と異なっているかどうかを測定し、これにより、前記遺伝子が前記細胞種の生細胞の前記作用因子に対する応答を媒介しているかどうかを決定する工程;
を含む、遺伝子が、生細胞の作用因子に対する応答を媒介しているかどうかを決定する方法。
【請求項2】
前記生細胞が哺乳動物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生細胞が植物細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生細胞が線虫細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記生細胞がショウジョウバエ(Drosophila)細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記生細胞がヒト細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記作用因子が化学作用因子である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記作用因子がエネルギー作用因子である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記作用因子がウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記干渉RNA分子がsiRNA分子から本質的になる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記干渉RNA分子がshRNA分子から本質的になる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記干渉RNA分子が長い二本鎖RNA分子から本質的になる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記遺伝子が配列番号2に記載されている核酸配列と少なくとも90%同一であるSTK6遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記遺伝子が配列番号3に記載されている核酸配列と少なくとも90%同一であるTPX2遺伝子である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記相関が正の相関である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記相関が負の相関である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記干渉RNA分子を含む前記生細胞を、前記遺伝子の機能的不活化の間に、及び前記生細胞が前記作用因子と接触している間に、インビトロで培養する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記干渉RNA分子を含む前記生細胞の前記作用因子に対する応答が、前記干渉RNA分子を含まない前記生細胞の前記作用因子に対する応答とは異なっている場合は、前記遺伝子が前記細胞種の前記生細胞の前記作用因子に対する応答を媒介するとの決定を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記干渉RNA分子を含む前記生細胞の前記作用因子に対する応答が、前記干渉RNA分子を含まない前記生細胞の前記作用因子に対する応答とは異なっていない場合は、前記遺伝子が前記作用因子に対する前記細胞種の前記生細胞の応答を媒介しないとの決定を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記作用因子がKSPタンパク質の阻害剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記干渉RNA分子を使用して前記遺伝子を機能的に不活化させる前に、前記細胞種の生細胞の前記作用因子に対する応答と相関する発現パターンを有する遺伝子を同定する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記遺伝子発現パターンを核酸マイクロアレイを用いることによって測定する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
生細胞が前記作用因子と接触させる前に前記遺伝子から転写されたmRNAの量を、前記生細胞を前記作用因子と接触させた後に前記遺伝子から転写されたmRNAの量と比較することによって前記遺伝子発現パターンを測定する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
哺乳動物対象の癌細胞から得た20番染色体を分析して20番染色体の部分20qが癌細胞中で増幅されているかどうかを決定する工程を含み、20番染色体の部分20qが前記癌細胞中で増幅されていなければ、前記哺乳動物対象がKSP阻害剤に対して応答性であると同定される、KSP阻害剤に対して応答性の哺乳動物対象を同定する方法。
【請求項25】
(a)ある細胞種の生細胞中に干渉RNA分子を導入することによって、前記細胞中の遺伝子を機能的に不活化する工程(前記遺伝子は、前記細胞種の生細胞の、作用因子に対する応答と相関する発現パターンを有し、前記遺伝子のコピーは、前記細胞種の全ての生細胞中に存在する);及び
(b)前記作用因子に対する前記生細胞の応答が、前記干渉RNA分子を含まない前記細胞種の生細胞の前記作用因子に対する応答と異なっていることを決定することによって、前記遺伝子が生細胞の前記作用因子に対する応答に寄与していることを確認する工程;
を含む、生細胞の、作用因子に対する応答に前記遺伝子が寄与していることを確認する方法。

【公表番号】特表2007−532136(P2007−532136A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508479(P2007−508479)
【出願日】平成17年4月12日(2005.4.12)
【国際出願番号】PCT/US2005/012452
【国際公開番号】WO2005/100609
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(505441904)ロゼッタ インファーマティックス エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】