作用機序スクリーニング法
本明細書の特定の様態は、スクリーニング方法に関する。一般論として、スクリーニングアッセイには、試験細胞を試験化合物と接触させて、接触試験細胞を提供すること、前記接触試験細胞の多数の細胞学的特性に対する値を得ること、および前記値を用いて細胞をスコア化し、多数の分類子の少なくとも1つに対する可能性スコアを提供することが含まれ、そこで、多数の分類子は、公知の作用機序の化合物と接触させた細胞から得た細胞学的特性に対する値を用いて定義される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2010年1月12日に出願された、米国特許仮出願第61/335,897号の利益を請求し、そのすべてが本明細書に参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野で現在実施されている創薬は、特定の疾患標的の工程、特定の標的に基づくアッセイの開発、アッセイの検証、スクリーンを産するためのアッセイの最適化と自動化、「ヒット」を同定するために、アッセイを用いた化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニング、ヒット検証およびヒット化合物最適化を含む、長期で、多重の段階工程である。この工程のアウトプットは、前臨床に進み、もし有効とされた場合、最終的には臨床試験まで進む、リード化合物である。この工程において、スクリーニング段階は、アッセイ開発段階とは異なり、生きている生体系において、化合物効果を試験することが含まれる。創薬の取り組みはしばしば、未知であるか、もしくは部分的にしか全身的作用が理解されていない、生物活性薬剤の同定を導く。これらの薬剤がどれくらい働くのかを決定することは、通常労働集約的工程であり、結論は不確かである。
【0003】
本明細書の特定の様態は、創薬において利用可能な細胞に基づくハイスループットスクリーニングアッセイに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の特定の態様は、スクリーニング法に関する。一般論として、スクリーニング法には、試験細胞を試験化合物に接触させて、接触試験細胞を提供すること、多数の前記試験細胞の細胞学的特性に対する値を得ること、およびこの値を用いて細胞をスコア化し、多数の分類子の少なくとも1つに対する可能性スコアを提供することが含まれ、そこで、多数の分類子は、公知の作用機序の化合物と接触した細胞の細胞学的特性に対する値を用いて定義される。特定の実施形態において、方法には、分類子に対する集団内の個々の細胞から得られる値を比較すること、個々の細胞が分類子によって、分類されるか、または分類されないか決定すること、および分類子によって分類された個々の細胞の数と、分類子によって分類されない細胞数を用いて可能性スコアを計算すること、が含まれてよい。
【0005】
細胞集団の画像を取り込むための装置、この装置に動作可能に連結したコンピュータを含み、i.画像を解析し、細胞の多数の細胞学的特性に対する値を提供すること、およびii.この値を用いて細胞をスコア化し、多数の分類子の少なくとも1つに関する可能性スコアを提供すること、のためのコンピュータプログラミングを含む顕微鏡システムもまた提供され、そこで、多数の分類子は、公知の作用機序の化合物と接触させた細胞から得られた細胞学的特性に対する値を用いて定義される。
【0006】
画像標準化法もまた提供される。一般論として、本方法には、a)マルチ−ウェルプレートの第一ウェル中に存在し、試験薬剤と接触した細胞の、第一画像の中央値バックグラウンドピクセル値を、画像のピクセル値から差し引き、第二画像を提供すること、およびb)マルチ−ウェルプレートの第二ウェル中の未処理細胞の中央値フェアグラウンドピクセル値によって、第二画像のピクセル値を除し、それによって第三画像を提供すること、が含まれる。本方法において、第三画像のピクセル値を再調整してよい。本方法を実施するための、実行可能な指令を含む、コンピュータが読み込み可能なメディアがまた提供される。
【0007】
表現型分類子を提供するための方法もまた提供される。一般論として、本方法には、a)第一細胞集団を、第一の公知の作用機序を持つ第一化合物と接触させ、接触細胞第一集団を提供すること、およびb)第二細胞集団を、第二の公知の作用機序を持つ第二化合物と接触させ、接触細胞第二集団を提供すること、c)第一および第二接触細胞ならびに未処理細胞集団の多数の細胞学的特性に対する値を得ること、およびd)全体で、接触細胞第一集団を、接触細胞第二集団と未処理細胞集団から見分けるそれぞれの細胞学的特性に対する値の範囲を同定すること、が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】方法における1つの実施形態を概略的に図示している図である。
【図2】染色強度が、アッセイ変動の主要な供給源であることを示している図である。
【図3】図3は、画像が標準化される方法を提供している。
【図4】0.01のオフセットと3マルチプルが、許容可能な結果を提供することを図示している図である。
【図5】イメージ標準化方法が、偽陽性予想を減少させることを示している図である。
【図6】分類子が、対照トレーニングセットの数を増加させることによって、分類子がより強固に作成されうることを示している図である。
【図7】典型的な用量計算を概略的に図示している図である。
【図8】方法における1つの実施形態を概略的に図示している図である。
【図9】ベイズアプローチを用いた良好な分類を図示している図である。
【図10】分類子の性能が再現率および精度測定基準によって査定されうることを示している図である。
【図11】典型的なアッセイを図示している図である。
【図12】典型的な結果のグラフである。
【図13】典型的な結果の表である。
【図14】いくつかの分類子の平均再現率性能を図示しているグラフを示している。
【図15】いくつかの分類子の平均性能を図示しているグラフである。
【図16】典型的な化合物とそれらの作用機序を示しているグラフである。
【図17】表現型パターンを公開するヒートマップを示している。
【図18】図17にて示したヒートマップの一部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(定義)
用語「決定すること(determining)」、「測定すること(measuring)」、「評価すること(evaluating)」、「査定すること(assessing)」および「アッセイすること(assaying)」は、本明細書にて、要素が存在するかしないかを決定することを含む、任意の形態の測定を言及するために交互に使用される。これらの用語には、定量的および/または定性的決定両方が含まれる。アッセイすることは、相対的または絶対的であってよい。「存在を決定すること(determining the presence of)」には、存在する量を決定すること、ならびに存在するかしないかを決定することが含まれる。
【0010】
用語「接触すること(contacting)」は、一緒に運ぶかまたは置くことを意味する。そのようなものとして、例えば、同一の溶液中で、互いに触れさせること、または混合することによって、2つの品目が一緒に運ばれるか、または置かれる時に、第一品目が第二品目に接触する。他に指摘がない限り、薬剤と接触する細胞は、in vitroでの細胞、すなわち培養細胞である。「細胞内に導入すること(Introducing into a cell)」、例えば細胞内に核酸を導入することは、用語「接触すること」によって包含される。
【0011】
用語「候補薬剤(candidate agent)」および「試験化合物(test compounds)」は、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、(shRNAとして投与されうる)阻害RNA、遺伝子産物、ポリペプチド、例えば大きさにして2500ダルトン(Da)までの低分子、および薬剤が生物学的活性をもつかどうか決定するために、アッセイ中の細胞と結合する任意の薬理学的化合物を意味するために使用する。特定の場合において、候補薬剤は、例えば阻害RNA分子またはポリペプチドのような、候補薬剤を提供するために転写および/または翻訳される核酸として伝達されうる。
【0012】
用語「細胞学的特性(cytological attribute)」は、細胞またはその細胞内構造、例えば細胞の核またはアクチン染色パターンのような細胞学的特性を意味する。大きさ、染色強度、形態、楕円率および構造が、細胞学的特性の例である。用語「細胞学的特性」は、特定の他の刊行物(例えば、Young et al,Nature Chemical Biology 2007 4:59−68、Feng et al,Nature Reviews 2009 8:567−578)中の「表現型特性(phenotypic attribute)」、「パラメータ(parameter)」または「特徴(feature)」として意味してよい。細胞学的特性は、染色によって同定されてよい。細胞学的特性の多くの例が、以下に引用する参考文献中で記述されている。
【0013】
「細胞学的特性」に関連して、(例えば表現「多数の細胞学的特性に対する値を得ること」のように)、用語「値(value)」は、細胞学的特性の数学的評価(例えば測定)、または多数の数学的評価の統計的派生物(例えば平均、平均値またはばらつき)を意味する。細胞学的特性に対する値の例には、細胞または細胞核のいずれかに対する大きさ測定が含まれ、面積、長さ、幅、直径等の測定、細胞またはその核の染色強度の合計、平均値またはばらつき、形態の異常度、楕円率および構造の程度などの測定が含まれうる。一般論として、単一の細胞に対して得られた値の数は、20〜500以上の範囲内であってよく、望む複雑性のレベルに依存する。
【0014】
用語「分類子(classifier)」は、全体で、細胞を生物活性薬剤に接触させることによって産出される表現型を定義する、細胞学的特性の値の範囲の集合を意味する。生物活性薬剤が、定義された作用機序を持つ場合、接触細胞の表現型、したがって分類子は、生物活性薬剤の作用機序を定義する。例えば、生物活性薬剤の作用機序を定義する特定の表現型が、異なる100を超える異なる値の範囲を用いて定義されてよく、範囲は、接触細胞の表現型を、対照細胞の表現型、または異なる作用機序を持つ他の生物活性薬剤と接触した他の細胞の表現型から区別する。
【0015】
用語「可能性(likelihood)スコア」は、予測の確かさの推定を意味する。可能性スコアは、二項式ではない。正しくは、連続した変数であり、比、奇数または目盛り付き数字、例えばパーセンテージであってよい。
【0016】
用語「ベイズの定理(Bayesian theorem)」は、(観察された証拠を与える仮説の確率のような)1つの条件確率が、その逆数(この場合、仮説を与えた証拠の確率)に依存する定理である。ベイズの定理は、両方とも本明細書にて参照により組み込まれる、Howson(Scientific Reasoning:The Bayesian Approach 1993 Open Court)およびJaynes(Probability theory:the logic of science 2003.Cambridge University Press)にて記述されている。
【0017】
用語「可能性スコアのプロファイル(profile of likelihood scores)」は、異なる分類子に対する一組の可能性スコアを意味し、各可能性スコアは、予測の確かさの推定を提供する。
【0018】
用語「作用機序(mode of action)」は、それを通して生物活性薬剤が薬理学的効果を提供する、特定の生化学相互作用を意味する。
【0019】
用語「ピクセル値(pixel value)」は、ピクセルの強度を意味する。例えば、16−ビットイメージングシステムによって取り込まれた画像に対して、ピクセル値は、0〜65,536の範囲の自然数であってよい。ピクセル値は、例えば、16−ビットイメージの場合、65,536によってピクセル値を除すことによって、0〜1の範囲内に収まるように再スケール化してもよい。
【0020】
用語「多数(plurality)」は、2つ以上、例えば少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも1,000、10,000まで、または100,000以上を意味する。
【0021】
細胞の画像を参照して、用語「バックグラウンド(background)」は、細胞間のエリアに相当する画像の部分を意味する。
【0022】
細胞の画像を参照して、用語「フォアグラウンド(foreground)」は、画像中の各細胞の外部周辺内である、画像の部分を意味する。
【0023】
本発明をさらに記述する前に、本発明が記述した特定の実施形態に限定はされず、もちろん変動してよいことが理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の請求項によってのみ限定されることから、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を記述する目的のためのみであり、限定をする意図はないことも理解されるべきである。
【0024】
値の範囲が提供される場合、各途中の値、文脈が明確に指示していない限り、より低い制限のユニットの10分の1まで、範囲の上限制限と下限制限の間、そして言及した範囲内での任意の他に言及されるか、途中の値が本発明内に包含されることが理解されるべきである。
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を持つ。本明細書で記述したものと同様かまたは等価の任意の方法および材料が、本発明の実施または試験で使用可能であるけれども、好ましい方法および物質が本明細書で記述されている。本明細書で言及されたすべての刊行物が、刊行物が引用されるものに関連して、方法および/または材料を開示し、記述するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本明細書および付随する請求項にて使用されるように、単数形形態「a」、「and」および「the」には、文脈上明確に他に指示していない限り、複数形指示対象が含まれることが留意されなければならない。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への言及には、多数の細胞が含まれ、「候補薬剤(a candidate agent)」には当業者に公知の1つ以上の候補薬剤およびその等価物が含まれ、「値(a value)」には、2つ以上の試料にわたる平均化された値に対する言及が含まれる、などである。請求項は、任意の選択要素を排除するために下書きされうることもさらに留意される。そのようなものとして、本声明は、請求要素の記述、または「負の(negative)」制限の利用に関連して、「単に(solely)」、「のみ(only)など」のような排他用語の利用に対する先行詞として役割を果たす意図がある。
【0027】
本明細書で議論した刊行物は、単に本明細書の申請日以前のそれらの開示物に対して提供される。本明細書には、先行発明によって本発明がそのような刊行物に先行する権利が与えられないことの承認として解釈されるべきものはない。さらに、提供した刊行物の日付は、個々に確認される必要がありうる、実際の発行日とは異なる可能性がある。
【0028】
本明細書で引用されるすべての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、まるで特異的に、そして個々に、参照により組み込まれることが示唆され、引用された刊行物に関して、方法および/または材料を開示し記述するために、参照により本明細書に組み込まれるように、参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、申請日の前のその開示物であり、本発明が、先行発明のよってそのような刊行物に先行する権利が与えられないことの承認として解釈されるべきでない。さらに、提供された刊行物の日付は、個々に確認される必要がありうる、実際の発行日とは異なる可能性がある。
【0029】
本開示物を読む際に当業者に対して明らかであるように、本明細書で記述され、図示される個々の実施形態それぞれが、本発明の範囲または精神から逸脱することなしに、任意の他の数個の実施形態の特徴から簡単に分離されえ、または混合されうる、個々の要素および特徴を持つ。任意の引用された方法を、引用された事象の順番で、または論理的に可能である任意の他の順番で、実施可能である。
【0030】
図1を参照して、方法には一般的に、培養液中で増殖した細胞を試験薬剤と接触させること、および細胞を撮像して画像を提供すること、が含まれる。画像中の細胞の細胞学的特性を解析して、各細胞に対する多数の値を得、その各細胞の値を、細胞を分類するか、または分類しないかいずれかの分類子と比較する。この段階によって、細胞の各集団に対して、集団中の個々の細胞が、分類子によって分類されたか、または分類されないかを示唆する、二項アウトプットが産出される。分類子は、細胞学的特性に対する値が、公知の作用機序を持つ化合物と接触した細胞から得られる場合を除いて、試験細胞に関して解析したものと同一の細胞学的特性に対する値を用いて定義される。分類子は、公知の作用機序を持つ生物学的薬剤に曝露した細胞の表現型を、他の細胞から区別する。二項アウトプット、ならびに陽性対照を用いた分類子の性能の推測を用いて、試験薬剤が、公知の作用機序を持つ薬剤と同一の作用機序を持つ可能性スコアを計算する。本方法は、多数の細胞集団を、マルチ−ウェルプレートのウェル中で増殖させ、各マルチ−ウェルプレート上に対照(例えば任意の薬剤と接触しない細胞の集団)をおき、画像化と解析を、自動化顕微鏡システムを用いて実施する、「ハイスループット」様式にて利用してもよい。
【0031】
以下の刊行物が、本方法にて利用可能であり得る、典型的なアッセイ段階およびハードウェアの記述のために、参照により組み込まれる。Catalano (Discovery and Development of an Aurora Kinase Inhibitor Clinical Candidate Using an Image−Based Assay for Measuring Proliferation, Apoptosis, and DNA Content Assay Drug Development Technologies 2009 7: 105−109), McLaughlin (Preclinical characterization of Aurora kinase inhibitor R763/AS703569 identified through an image−based phenotypic screen J. Cancer Res. Clin. Oncol. 2009 136: 99−113; Boland (Automated Recognition of Patterns Characteristic of Subcellular Structures in Fluorescence Microscopy Images Michael Cytometry 1998 33: 366−375); Perlman (Multidimensional Drug Profiling By Automated Microscopy Science 2004 306: 1194−8), Loo (Image−based multivariate profiling of drug responses from single cells Nat. Methods 2007 4: 445−53); Young (Integrating high−content screening and ligand−target prediction to identify mechanism of action Nat. Chem. Biol. 2008 4: 59−68; Feng et al (Multi−parameter phenotypic profiling: using cellular effects to characterize small−molecule compounds Nat. Chem. Biol. 2008 4:59−68)およびKauvar(Affinity Fingerprinting A novel approach to quantitative chemical classification proves useful in drug discovery Bio/Technology 1995 13, 965 − 966)。これらの刊行物は、とりわけ、一般的な細胞培養方法、生物活性薬剤、染色方法、細胞画像化方法、細胞学的特性およびそれを測定するための方法、画像処理方法およびダウンストリームデータ処理方法の開示に関して組み込まれる。
【0032】
本方法の特定の様態を、より詳細に以下で記述する。
【0033】
標準化方法
本明細書は、画像標準化方法を提供する。本方法において、マルチ−ウェルプレートのウェル中の細胞の画像を使用して、同一のマルチ−ウェルプレートの異なるウェル中の細胞の画像を標準化する。本方法において、細胞の第一集団を、マルチ−ウェルプレートの試験ウェル中で培養して、試験薬剤と接触させる。これらの細胞の画像をついで、試験ウェルと同一のプレート上に存在する対照ウェル中で増殖させた細胞の集団の画像に対して標準化する。本方法において、細胞の第一集団の画像を構成するピクセルの値を調節する。まず、試験細胞の画像(すなわち「第一」画像)を解析して、フォアグラウンドおよびバックグラウンドピクセルを同定し、バックグランドピクセルの中央値強度を計算する。第一画像のバックグランドピクセルの中央値強度を、第一画像のピクセル値から差し引き、第二「バックグラウンド−差分」画像を得る。第二画像に対するピクセル値をついて、同一のマルチ−ウェルプレートの第二ウェル中の未処理細胞の画像の中央値フォアグラウンドピクセル値によって除し、これによって、第三画像が得られる。特定の実施形態において、試験ウェル中の細胞を、不活性賦形剤、例えば水、エタノールまたはDMSOのような二極性非プロトン性溶媒中に存在する試験薬剤と接触させ、対照ウェル中の細胞を、不活性賦形剤のみと接触させる。1つの実施形態において、試験ウェル中の細胞を、DMSO中に溶解した薬剤と接触させ、対照ウェル中の細胞をDMSOのみと接触させる。簡単に理解されうるように、多数の対照ウェルからの結果を、例えば、その結果を平均化することによって、本方法で利用してよい。
【0034】
特定の実施形態において、第三画像を構成するピクセル値をさらに調整し、それによって、ゼロ以上にし、おおよそ他の画像に対してと同一のスケールとなる。これらの実施形態において、第三画像を構成するピクセル値を、再見積して、ピクセル値が、第三画像値/マルチプル*(1−オフセット)に対して、オフセット+ピクセル値と等しくなる、見積もった画像を得、そこで、オフセットは、ゼロ以上の第三画像中のすべてのピクセルに対する値を提起し、マルチプルは少なくとも1である。1つの実施形態において、オフセットは0.1以下であり、マルチプルは少なくとも1(例えば1〜10の範囲)である。このような方法を図3に図示している。
【0035】
本方法を、マルチ−ウェルプレートの他のウェル中の細胞の画像に対して繰り返してよい。特定の実施形態において、他のウェル中の少なくともいくつかの細胞を、さらに試験薬剤と接触させた。本方法を使用して、試験ウェルの画像のさらなる処理の前に、マルチ−ウェルプレートのそれぞれの試験ウェルを標準化してよい。
【0036】
本方法を実施するための実行可能な指令を含むコンピュータ読み込み可能メディアもまた提供される。そのようなコンピュータ読み込み可能メディアを、以下により詳細に記述する。
【0037】
分類子を定義するための方法
上述したように、一緒に生物活性化合物によって産出される表現型を定義する、細胞学的特性の値の範囲の集団である、表現型分類子を定義するための方法がまた、本明細書で提供される。以下で記述するようなスクリーニング方法にて使用される場合、分類子は、細胞を、それらの表現型に基づいて他と区別されることを許容するのみでなく、分類子を定義するために使用する細胞の表現型と同様または同一であるように、細胞の表現型を同定することを許容する。いったん公知の作用機序を持つ生物活性薬剤のそのような「表典型フィンガープリント(phenotypic fingerprint)」が定義されたならば、薬剤を、同様のフィンガープリントを産出するものに対して、スクリーニング可能である。したがって、公知の作用機序を持つ化合物のものと同様の作用機序を持つ化合物を同定可能である。
【0038】
本方法には、第一生物活性薬剤、例えば、定義された作用機序を持つ薬剤に対して曝露された細胞に関する、多数の細胞学的特性に対する値の範囲を同定することが含まれ、そこで、値の範囲は、そのような細胞を、賦形剤のみに曝露した他の細胞および/または、第一生物活性薬剤に対して異なる表現型を産する生物活性薬剤、例えば、第一生物活性薬剤に対して異なる作用機序を持つ薬剤に曝露された細胞から区別する。
【0039】
特定の実施形態において、本方法の第一段階には、細胞の第一集団を、第一の公知の作用機序を持つ第一化合物と接触させ、接触細胞の第一集団を提供すること、および第二細胞集団を、第二の公知の作用機序を持つ化合物と接触させて、接触細胞の第二集団を提供することが含まれる。接触細胞第一集団に対する、接触細胞第二集団に対する、そして賦形剤にのみ曝露した対照細胞に対する、多数の細胞学的特性に対する値が、細胞の画像より得られ、接触細胞の第二集団および未処理細胞集団から、接触細胞の集団を全体で区別する、細胞学的特性それぞれに対する値の範囲が同定される。本方法において、細胞の集団は、同一または異なるマルチ−ウェルプレート上であってよく、特定の実施形態において、第一細胞集団と、未処理細胞集団は、第一マルチ−ウェルプレート中に存在する。本方法にはさらに、第二マルチ−ウェルプレート上で増殖した他の細胞の未処理集団に対する値を得ること、および、全体で接触細胞第一集団を、接触細胞第二集団、第一マルチ−ウェルプレート上で増殖する細胞の未処理集団、および第二未処理細胞集団から区別する、細胞学的特性それぞれに対する値の範囲を同定すること、が含まれる。さらに、異なるマルチ−ウェルプレート上で増殖したか、異なる時に増殖した(例えば、第一細胞集団が増殖した時点より少なくとも1週間、1ヶ月、または1年以内で早く、または遅く増殖した)、未処理細胞集団もまた利用してよい。
【0040】
同様に、本方法には、第三細胞集団を、第三の公知の作用機序を持つ第三化合物と接触させ、接触細胞の第三集団を得ること、接触細胞第三集団の多数の細胞学的特性に対する値を得ること、および全体で、接触細胞第一集団を、接触細胞第二および第三集団および未処理細胞集団から区別する、細胞学的特性のそれぞれに対する値の範囲を同定すること、が含まれる。異なる作用機序を持つ他の生物活性薬剤に曝露した細胞集団のさらなる画像も利用してよい。未処理細胞でのように、これらの細胞は、異なるマルチ−ウェルプレート上で増殖してよく、または異なる時(例えば、第一細胞集団が増殖した時点より少なくとも1週間、1ヶ月、または1年以内で早く、または遅く増殖した)に増殖してもよい。図5で図示するように、分類子は、より多くの未処理細胞集団と、異なる作用機序を持つ生物活性薬剤に曝露したより多くの細胞集団を、分類子を構築するために使用したとき、より強固になる。各生物活性薬剤に対する分類子は、新規データを用いて、定期的に再計算してよい。
【0041】
一般論として、分類子を定義するために使用する生物活性薬剤を、表現型を算する濃度で使用する。例えば、生物活性薬剤は、それらのEC50にて、以上の濃度で使用してよい。
【0042】
本方法で使用可能な生物活性薬剤の例とそれらの作用機序を、図16にて示している。がんの処置のための化学療法剤および抗炎症薬剤がとりわけ興味深い。薬剤は、例えば、細胞表面受容体(例えばGPCRまたは細胞表面チロシンキナーゼ受容体)、または細胞質タンパク質を標的としてよい。いくつかの実施形態において、生物活性薬剤は、(直接細胞に投与するか、または例えばRNAをコードしているベクターを用いて細胞に間接的に投与してよい)アンチセンスRNA、または阻害RNA分子であってよい。
【0043】
本方法で使用可能な薬剤の例には、以下が含まれる。
【0044】
(i)アルキル化剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、窒素マスタード、メルファラン、クロテムブシル、ブスルファン、テモゾルアミドおよびニトロソ尿素)、抗代謝剤(例えば、ゲムシタビン、およびフルオロピリミジン様5−フルオロウラシルおよびテガフールのような抗葉酸剤、ラルチトレキセド、メトトレキサート、システインアラビノシド、およびヒドロキシ尿素)、抗腫瘍抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C、ダクチノマイシンおよびミスラマシンのようなアントラサイクリン類)、抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンのようなビンカアルカロイド類、およびタキソールおよびタキソテールのようなタキソイド類およびポロキナーゼ阻害剤類)、およびトポイソメラーゼ阻害剤類(例えば、エトポシドおよびテニポシドのようなエピポドフィロトキシン類、アムサクリン、トポテカンおよびカンプトテシン)のような、抗増殖/抗新生物薬;
【0045】
(ii)抗エストロゲン剤類(例えばタモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロキソキシフェンおよびヨードキシフェン)、抗アンドロゲン剤類(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、リュープリンおよびブセレリン)、プロゲストゲン類(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤類(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ヴォラゾールおよびエキセメスタン)およびフィナステリドのような5α−リダクターゼの阻害剤、のような細胞増殖抑制剤;
【0046】
(iii)抗侵害薬剤(例えば、4−(6−クロロ−2,3−メチレンジオキシアニリノ)−7−[2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エレキシ]−5−テトラヒドロピラン−4−イルオキシキナゾリン(AZD0530、国際特許明細書国際公開第WO01/94341号パンフレット)、N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−{6−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]2−メチルピペリミジン−4−イルアミノ}チアゾール−5−カルボキシアミド(ダサチニブ、BMS−354825、J.Med.Chem.,2004,47,6658−6661)、およびボスチニブ(SKI−606)のようなc−Srcキナーゼファミリー阻害剤類、およびマリマスタットのようなメタロプロテイナーゼ阻害剤類、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化体受容体機能の阻害剤類、またはへパラナーゼに対する抗体);
【0047】
(iv)増殖因子機能の阻害剤類、例えば、増殖因子抗体および増殖因子受容体抗体(例えば抗−erbB2抗体トラスツズマブ[Herceptin(登録商標)]、抗−EGFR抗体パニツムマブ、抗−erbB1抗体セツキシマブ[Erbitux、C225]、およびStem et al.,Cirtical reviews in oncology/hematology,2005,Vol.54,pp11−29によって開示された増殖因子または増殖因子受容体抗体)、を含む阻害剤。そのような阻害剤はまた、チロシンキナーゼ阻害剤類、たとえば、上皮増殖因子ファミリーの阻害剤(例えば、N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ、ZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI−774)、および6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)−キナゾリン−4−アミン(CI1033)のような、EGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤類、およびラパチニブのようなerbB2チロシンキナーゼ阻害剤)、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤、インスリン増殖因子ファミリーの阻害剤、イマチニブおよび/またはニロチニブ(AMN107)のような血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼの阻害剤類(例えば、ソラフェニブ(BAY43−9006)、チピファルニブ(R115777)およびロナファルニブ(SCH66336)のような、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤類のようなRas/Rafシグナル伝達阻害剤類)、MEKおよび/またはAKTキナーゼを介する細胞シグナル伝達の阻害剤類、c−kit阻害剤類、ab1キナーゼ阻害剤類、PI3キナーゼ阻害剤類、Plt3キナーゼ阻害剤類、CSF−1Rキナーゼ阻害剤類、IGFレセプター(インスリン−様増殖因子)キナーゼ阻害剤類、オーロラキナーゼ阻害剤類(例えばAZD1152、PH739358、VX−680、MLN8054、R763、MP235、MP529、VX−528およびAX39459)およびCDK2および/またはCDK4阻害剤のようなシクリン依存キナーゼ阻害剤類を含む;
【0048】
(v)例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ(アバスチン(Avastin))および例えば、バンデタニブ(ZD6474)、バタラニブ(PTK787)、スニチニブ(SU11248)、アキシチニブ(AG−013736)、パゾパニブ(GW786034)および4−(4−フルオロ−2−メチルインドール−5−イルオキシ)−6−メトキシ−7−(3−ピロリジン−1−イルプロポキシ)−キナゾリン(AZD2171、国際公開第00/47212号の実施例240)のようなVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、国際公開第97/22596号、国際公開第97/30035号パ、国際公開第97/32856号および国際公開第98/13354号にて開示されているような化合物、および他の機構によって働く化合物(例えば、リノマイド、インテグリンαvβ3機能の阻害剤およびアンジオスタチン)のような、血管内皮細胞増殖因子の効果を阻害する抗血管新生剤;
【0049】
(vi)コンブレタスタチンA4および国際公開第99/02166号、国際公開第00/40529号、国際公開第00/41669号、国際公開第01/92224号、国際公開第02/04434号および国際公開第WO02/08213号にて開示された化合物のような、血管障害性薬剤;
【0050】
(vii)例えばジボテンタン(ZD4054)またはアトラセンタンのような、エンドセリン受容体アンタゴニスト;
【0051】
(viii)例えば、ISIS2503、抗rasアンチセンスのような、以上で列記した標的を指向する、アンチセンス治療;
【0052】
(ix)例えば、異常p53または異常BRCA1またはBRCA2、GDEPT(遺伝子指向酵素プロドラッグ治療)のような異常遺伝子を置換するためのアプローチ、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌ニトロリダクターゼ酵素を用いるようなアプローチ、および多剤耐性遺伝子治療のような、化学療法または放射線療法に対する患者耐性を増加させるためのアプローチを含む、遺伝子治療アプローチ。
【0053】
本方法にて使用する生物活性薬剤は、抗腫瘍アルキル化剤、抗腫瘍抗代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、血小板由来抗腫瘍剤、抗腫瘍白金錯体、抗腫瘍カンプトテシン誘導体、抗腫瘍チロシンキナーゼ阻害剤、モノクローナル抗体、インターフェロン、生物学的応答改変剤、ホルモン抗腫瘍剤、抗腫瘍ウイルス剤、血管新生阻害剤、分化剤、PI3K/mTOR/AKT阻害剤、細胞周期阻害剤、アポトーシス阻害剤、hsp90阻害剤、チューブリン阻害剤、DNA回復阻害剤、抗血管新生薬剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、タキサン、Her−2標的剤、ホルモンアンタゴニスト、増殖因子標的薬剤、またはそれらの薬理学的に許容可能な塩であってよい。いくつかの実施形態において、抗腫瘍剤は、シタラビン、カペシタビン、バロピシタビンまたはゲムシタビンである。いくつかの実施形態において、薬剤は、アバスチン(Avastin)、スーテント(Sutent)、ネクサバール(Nexavar)、レセンチン(Recentin)、ABT−869、アキシチニブ(Axitinib)、イリノテカン(Irinotecan)、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、ラパチニブ、ハーセプチン(Herceptin)、ラパチニブ、タモキシフェン、ステロイド性アロマターゼ阻害剤、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、フルベストラント(Fulvestrant)、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、セツキシマブ(Cetuximab)、パニツミマブ(Panitumimab)、インスリン様増殖因子1受容体(IGF1R)の阻害剤、およびCP−751871からなる群より選択される。
【0054】
1つの実施形態において、分類子の性能は、さらなる細胞集団を、試験化合物(第一細胞集団と接触させたものと同一の化合物)に接触させること、それらの細胞集団中の個々の細胞の細胞学的特性に対する値を得ること、およびその値が個々の細胞を正確に分類するかどうか決定すること、によって評価してよい。これらのアッセイからの結果を要約して、分類子の正しい陽性/正しい陰性比を示唆する、その新規分類子に対する性能特性を提供可能である。予想されるように、公知の作用機序を持つ薬剤に曝露した集団中のいくつかの細胞は、「野生型(wild−type)」外見を維持し、薬剤と接触しない対照と似ていてもよい。この性能特性はとりわけ、集団内の個々の細胞における表現型の変動に対して適合する。本方法は、以下で記述するように、例えばベイズの定理を用いて、可能性スコアを計算するために使用してよい、分類子性能の測定基準を提供する。
【0055】
スクリーニング方法
以上で言及したように、細胞集団を試験薬剤に接触させ、細胞学的特性に対する値を得、その値を分類子と比較し、分類子によって細胞を分類可能かどうか決定する、スクリーニング方法が提供される。比較により、分類子を産出するために使用したものと同一の表現型を産する薬剤の可能性のスコアを提供する。本方法にはさらに、望む作用機序を持つ試験化合物を同定することが含まれる。
【0056】
特定の実施形態において、本方法には、試験細胞の集団を試験化合物と接触させ、接触試験細胞を提供すること、接触試験細胞の多数の細胞学的特性に対する値を提供すること、およびその値を使用して、接触試験細胞をスコア化し、多数の分類子の少なくとも1つに対する可能性スコアを得ることが含まれ、そこで、多数の分類子は、公知の作用機序の化合物と接触した細胞から得られた細胞学的特性に対する値を用いて定義される。多数のアッセイを、異なる薬剤濃度で平行して走らせ、種々の濃度に対する異なる応答を得てもよい。濃度は、薬剤の予測EC50を達成するように選択してよい。特定の実施形態において、薬剤のEC50よりすぐ上(すなわち薬剤の「EC50+1」)であるアッセイにて使用する濃度を本方法で使用してよい。
【0057】
特定の実施形態において、値を、接触試験細胞の画像を取り込むこと、およびその画像を解析して値を得ることによって得てよい。画像は、自動化顕微鏡を用いて取り込んでよく、解析は、自動化顕微鏡に動作可能に接続されたコンピュータによって実施してよい。
【0058】
スコア化は、分類子に対して、集団中の個々の細胞から得た値を比較すること、個々の細胞が分類子によって分類されるか、または分類されないかを決定すること、それによって、細胞が、分類されるか、または分類されないか示唆する二項アウトプットを得ること、および分類子によって分類される集団内の個々の細胞の数と、分類子によって分類されない集団内の個々の細胞の数を用いて、可能性スコアを計算することによって実施してよい。特定の実施例において、かつ図9にて図示するように、スコア化は、入力として分類子の性能の測定基準を用いるベイズの定理を利用する。以上で述べたように、この測定基準は、試験細胞を、分類子を産出するために細胞と接触させるために使用したのと同一の化合物と接触させること、ついで試験細胞が分類子によって分類されるかどうか決定することによって、実験的に決定可能である。よりしっかりした分類子は、しっかりしていない分類子よりも、試験薬剤を正しく分類する。特定の場合に、可能性スコアが、(分類子によって分類される集団中の個々の細胞の数と、分類子によって分類されない集団内の個々の細胞の数を示唆する)比較の二項アウトプットを入力すること、および分類子の性能スコアによって計算される。
【0059】
いくつかの実施形態において、細胞の集団を試験薬剤と接触させ、細胞の集団に対する値を、多数の異なる分類子の少なくとも1つの分類子(例えば1つの分類子、2以上の分類子、またはすべての分類子)と比較し、そこで各分類子は、公知の作用機序を持つ薬剤を用いて決定される。例えば、値を、少なくとも2つ、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、50または100以上までの分類子と比較してよく、そこで、各分類子は、公知の作用機序を持つ異なる薬剤を用いて決定される。
【0060】
特定の実施形態において、かつ図17および18で図示するように、本方法は、各試験化合物に対して、多数の異なる分類子の各々に対する可能性スコアを産出するために使用してよい。可能性スコアのプロファイルを、互いに交差比較して、同様の可能性スコアプロファイルを持つ薬剤を同定してよい。そのような階層的クラスター解析法は、例えばEisen(Cluster analysis and display of genome−wide expression patterns Proc.Natl.Acad.Sci.1998 95:14863−14868)およびLing(A computer generated aid for cluster analysis.Communications of the ACM 1973 16:355−361)にて一般的に記述される方法より適応してよい。1つの実施形態において、クラスター解析を使用して、「ヒートマップ(heat map)」と呼ばれるもの、すなわち可能性スコアが、異なる色および/または異なる強度によって表される、データの二次元グラフ表現を生成してよく、そこで、化合物が、1つの次元で列挙され、分離子が他の次元で列挙される。ツリーマップもまた生成してよい。本方法を用いて、試験薬剤をその作用機序によってクラスター化してよく、公知の作用機序を持つ薬剤に対する同一の可能性スコアプロファイルを持つ試験薬剤を同定してよい。
【0061】
特定の実施形態において、そのような解析は、他の作用機序、すなわち分類子によって提示されるものとは異なる作用機序を持つ化合物を同定するために使用してよい。これらの実施形態において、特定の試験化合物は、多数の分類子に対する新しいスコアパターンを提供してよく、これによって、試験化合物が第三の作用機序を持つことが示唆される。例えば、試験化合物は、2つ以上の分類子の組み合わせに対して、強力に、または中程度陽性であってよく、この場合、試験化合物は、分類子を定義するために使用したものとは異なる作用機序を持ってよい。したがって、分類子を定義するために使用したものと異なる作用機序を持つ化合物がやはり同定されうる。特定の実施形態において、アッセイした異なる試験化合物の数、および公知の作用機序の化合物によって産出されたパターンに対して、一貫して異なるパターンが同定された後にのみ新規作用機序が同定されてよい。これらの実施形態において、異なるパターンを持つ化合物を、その化合物の作用機序をさらに定義するために試験してよい。
【0062】
分類子性能をまた、図10で図示するように、他の統計学的方法を用いて、例えば、(正確さの測定、すなわちどれくらいの頻度で、方法が偽陽性および偽陰性を産出するか、である)精度および(完全性の測定、すなわちどれくらいよく方法が望む化合物を同定するか、である)再現率測定基準を使用して評価してもよい。図10にて図示するように、本方法において、精度は、陽性クラスに属している要素の総数によって除した、陽性クラスに依存していると正しくラベルされた品目の数として定義されてよく、一方で再現率は、陽性クラスに実際に属している要素の総数で除した真の陽性の数として定義してよい。精度および再現率を計算するための方法は、Makhoul et al(Performance measures for information extraction.In:Proceeding of DARPA Broadcast News Workshop,Hermdon,VA,February 1999)にて記述されている。
【0063】
特定の実施形態において、試験薬剤は、未知の作用機序を持つ。特定の実施形態において、試験薬剤は、生物活性薬剤またはその派生物であってよく、異なるスクリーンを用いて同定され、そこで、本明細書で使用される用語「薬剤(agent)」は、任意の分子、例えばタンパク質または非タンパク質有機または無機化合物を記述している。試験薬剤には、多数の化学クラス、例えば、合成、半合成、または天然に存在する無機または有機分子が包含される。候補薬剤には、合成または天然化合物の大ライブラリー中で見られるものが含まれる。例えば、合成化合物ライブラリーは、メイブリッジ ケミカル社(Maybridge Chemical Co.)(Trevillet,Cornwall,UK)、コムジェニックス(ComGenex)(Sounth San Francisco,CA)およびミクロソース(MicroSource)(New Mildford、CT)より市販されている。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態での天然の化合物のライブラリーは、パン ラボズ(Pan Labs)(Bothell,WA)から入手でき、または容易に生産できる。
【0064】
候補薬剤は、分子量が50以上であって約2,500Da以下の低分子有機または無機化合物であってよい。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、とりわけ水素結合のために必須の官能基を含んでよく、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基が含まれてよく、少なくとも2つの官能化学基を含んでよい。候補薬剤は、1つ以上の上記官能基で置換された、環状炭素またはヘテロ環状構造および/または芳香族またはポリ芳香族構造を含んでよい。候補薬剤はまた、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体、構造類似体または組み合わせを含む生体分子においてもみられる。
【0065】
候補薬剤は、合成または天然化合物のライブラリーを含む広く種々の供給源より得られる。例えば、無作為抽出オリゴペプチドの発現を含む、広く種々の有機化合物および生体分子の無作為および有向合成のための多数の方法が利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態での天然の化合物のライブラリーが利用可能であり、または容易に生産される。さらに、天然または合成産出ライブラリーおよび化合物を、従来の科学的、物理的および生化学的方法を介して容易に改変し、コンビナトリアルライブラリーを産出するために使用してよい。公知の薬理学的薬剤を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような、有向または無作為化学改変にかけ、構造類似体を産出してよい。新規の可能性ある治療薬剤をまた、合理的な薬物デザインまたはコンピュータモデリングのような方法を用いて創造してもよい。
【0066】
スクリーニングは、公知の薬理学的に活性な化合物およびその化学的類似物に、または合理的な薬物デザインを介して創造されるような未知の特性を持つ新規薬剤に対して指向されてよい。
【0067】
表現型を調節する薬剤は、薬剤に曝露していない対照に比べて、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%、以上まで表現型を減少させてよい。
【0068】
対象の薬剤を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような無作為および/または有向化学改変にかけ、構造類似体を産出してよい。そのような構造類似体には、バイオアベイラビリティを増加させる、および/または細胞毒性を減少させるものが含まれる。当業者は、広い範囲の種々の構造類似体を容易に想像し、作り出すことが可能であり、それらを、バイオアベイラビリティの増加および/または細胞毒性の減少などのような望む特性に関してそれらを試験可能である。
【0069】
アッセイで使用した培養細胞は、抗がん剤および抗炎症剤をそれぞれ同定するためにスクリーニング可能な、不死化細胞および炎症系細胞を含む、任意の細胞であってよい。例えば培養哺乳動物細胞のような任意の動物からの培養細胞を使用してよく、サル腎臓細胞(COS細胞)、SV40によって形質導入されたサル腎臓CVI細胞(COS−7、ATCC CRL 165 1)、ヒト胚腎臓細胞(HEK−293、Graham et al.Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO、Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)77:4216,(1980)、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reporod.23:243−251(1980))、サル腎臓細胞(CVI ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA,ATCC CCL2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34)、バッファーロラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(hep G2、HB 8065)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL 51)、TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci 383:44−68(1982))、NIH/3T3細胞(ATCC CRL−1658)、およびマウスL細胞(ATCC CCL−1)が含まれるが、限定はされない。さらなる細胞株が、当業者に明らかになるであろう。広く種々の細胞株が、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、10801 University Boulevard,Masassas,Va.20110−2209より入手可能である。特定の実施形態において、培養細胞は、例えば骨格筋、平滑筋または心筋由来の培養細胞のような、培養筋細胞であってよい。そのような細胞を培養するための方法は公知である。
【0070】
特定の実施形態において、本方法を、例えば細胞への望まない表現型変化のような、「副作用(side−effects)」を産しない薬剤を同定するために使用してよい。特定の場合において、望む作用機序を持つ試験薬剤は、公知の作用機序の薬剤のものと同様の可能性スコアのプロファイルを持つ。以上で記述した方法によって同定された任意の薬剤を、さらにin vitroアッセイにて、または臨床評価の前の動物モデルを用いて試験してよい。
【0071】
顕微鏡システム
以上と一致して、顕微鏡システムも提供される。本システムには、(デジタルカメラ(例えばCMOSカメラ)、適切な光源(例えばレーザーなど)、および光源から光を細胞集団に運ぶため、および細胞から検出器へ光を運ぶためのビームスプリッター、偏光子、プリズム、フィルターおよびレンズを含んでよい光学系を含んでよい)細胞集団の画像を取り込むための器具、および前記器具に、例えばケーブルまたはワイヤレス接続で動作可能に連結した、コンピュータが含まれ、コンピュータは、i.細胞の画像を解析して、画像中の細胞の多数の細胞学的特性に対する値を得ること、およびii.前記値を用いて細胞をスコア化して、多数の分類子の少なくとも1つに対する可能性スコアを得ることを含み、そこで以上で言及したように、多数の分類子は、公知の作用機序の化合物と接触した細胞から得た細胞学的特性に対する値を用いて定義される。顕微鏡システムの器具は自動化顕微鏡であってよい。
【0072】
1つの実施形態において、コンピュータの物理的メモリは、上記方法を実施するための、指令(すなわち「プログラミング(programming)」を含む物理的なコンピュータが読み込み可能なメディアを含む。プログラミングは、物理的ストレージまたはトランスミッションメディアにて提供されうる。指令を受領するコンピュータがついで、本方法から得たアルゴリズムおよび/またはプロセスデータを実行可能である。コンピュータ読み込み可能なストレージメディアの例には、フロッピーディスク、磁気テープ、DVD、CD−ROM、ハードディスクドライブ、ROMまたは集積回路、光磁気学ディスク、またはPCMCIAカードのようなコンピュータ読み取り可能カードが含まれ、そのような器具はコンピュータ内蔵であるかまたは外付けである。情報を含むファイルは、コンピュータ読み込み可能メディア上で「保存(stored)」可能であり、ここで、「保存すること」には、ローカルまたはリモートネットワーク上のコンピュータで、後日アクセス可能であり、検索可能なように、情報を記録する方法を意味する。
【0073】
一つの実施形態において、顕微鏡上からのデータを回収し、分類子を含むプログラミングを実行する。上記方法は、試料を走らせたそれぞれの時間で、(自動的または手動で)実行可能である。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態および様態を明示し、さらに図示するために提供され、その範囲を制限すると解釈されるべきでない。
【0075】
材料
活性化合物を、粉末より10mMの濃度まで、DMSO中に懸濁させる。
【0076】
対照:DMSO(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)(St.Louis,MO),D2650)、タキソール(T7402)およびエトポシド(E1383)(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)(St.Louis,MO)。
【0077】
細胞株:腫瘍細胞株をATCCから得、推奨された培地を用いて培養した。細胞分裂を、メディアテック(Mediatech)より得た、カルシウムおよびマグネシウムフリーリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)およびトリプシン−EDTA(25−052−CI)で実施した。
【表1】
【0078】
機器:細胞を、10X S Fluor対物、キセノン(Xenon)光源、Dapi およびTexas Redに対するクロマ フィルターズ(Chroma Filters)およびCCDカメラを備えるMDS IX5000蛍光顕微鏡上で像を取得した。ハードウェア部品を、Win2000オペレーションシステムを用いたPCに連結し、MetaXソフトウェア(MDSモレキュラー・デバイセス(MDS Molecular Devices)、Sunnyvale,CA USA)で制御した。画像を、セルプロファイラー(CellProfiler)画像解析ソフトウェア(ブロード研究所(Broad Institute) Boston,MA USA)内に含まれる、セグメンテーションおよび形態学的ルーティンを用いて、16−ビットフォーマットで取り込みおよび解析した。同定した核を計数し、実験条件とともに、各細胞に対するピクセルデータを、MySQL5.0データベースに保存した。実験結果の続く解析と、EC50曲線フィッティングを含むグラフ作成を、MatLab R2007b(Math Works Inc.Natick,MA USA)で実施した。
【0079】
方法
NCI:国立癌研究所(National Cancer Institute)
ATCC:アメリカン・ティシュー・カルチャー・コレクション(American Tissue Culture Collection)
PAD:96−ウェルプレート中のプレーティング濃度(×1000細胞/ウェル)
aa:アミノ酸
Glc:グルコース
Gln:グルタミン
PS:ペニシリン/ストレプトマイシン
FBS:ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum)
BSA:ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin)
【0080】
実験を、L−グルタミン(メディアテック(Mediatech)10−040−CM)と5% FBSおよびPen/Strepを含む、RPMI1640改変培地中で実施した。細胞を、PackardからのViewPlate96 96−ウェルプレート中、経験的に決定された濃度で、Labsystems Multidrop 384を用いてプレートし、二重複製にて、化合物の添加の前に24時間増殖させた。6点に対する化合物希釈を、Beckman FX上で実施した。化合物との48時間のインキュベーションに続いて、細胞を、PBS(Ca++/Mg++−フリー)中、2.0%パラホルムアルデヒド(Alf Aesar 16%溶液)で1時間固定し、PBS 2×で洗浄し、Invitrogenからの1:1000ファロイジン−アレキサ(Alexa)568にて一晩染色し(A12380)、ついで1×で洗浄し、InvitrogenからのPBS(D−1306)中4’6−ジアミニド−2−フェニルインドール、ジヒドロクロライド(DAPI)の6ng/mL溶液で60分間染色し、PBSにて洗浄した。固定、洗浄および染色を、Beckman FXと一体化したBio−Tek Elx405プレートウォッシャーを用いて実施した。
【0081】
ウェルあたり9つの画像を、処置腫瘍細胞の96ウェルプレートの各ウェル中、隣接グリッドパターンにて取得した。通常すべての条件を各プレートにて二重に実施した。用量反応を、三倍連続にて、曲線あたり(各濃度二重で)6濃度にて実施した。
【0082】
ウェルあたり9つの画像に対する結果を、各ウェルに対して合計し、ついで、二重にわたって平均化した。EC50を、Trust−Regionアルゴリズムで、非線形最小二乗法を用いて、細胞数を勾配変化法面四パラメータシグモイド用量反応曲線に適合させることによって産出した。用量反応点におけるエラーバーは標準偏差を反映する。データを、上または底から、各プレートに含まれた陰性または陽性(またはゼロ)対照(タキソール20nM、エトポシド5μM)まで推し進める5つの異なるデータ組を用いて適合させた。異なるパラメータ組は、底からゼロまで、底から陽性対照のいずれかの最も高い強度まで、底から陽性対照までと上から陰性対照まで、底からゼロまで、および上から陰性対照まで、であり、1つの曲線を、上および底を浮かせることによって適合した。すべての適合によって、傾きを浮かせた。各化合物に対して最適な適合を、適合の品質と、適合結果の生物学的妥当性を考慮させた後、手動検査によって査定した。不活性化合物は、EC50に対して9999を指定された。
【0083】
細胞周期結果を、PAD解析プラットフォームによって、DNA含有量1D頻度ヒストグラムアウトプットの手動検査によって決定した。DNA含有量プロットをLowess法を用いて平滑化した。一般的に、結果を、G1、G2、G1/G2停止、なし、または「決定不可能」とコード化した。アポトーシスをまた、断片化核に対する試料画像の手動検査によって査定した。有意な断片化核が最初に観察された濃度が、アポトーシス対する記録する値である。観察を、各化合物に対して、コメント項で書き留めた。
【0084】
Z’結果を、DMSO陰性対照と、高用量の陽性対照タキソールおよびエトポシドを用いて、プレートごとに計算した。
【0085】
アッセイ生物学、顕微鏡および画像解析:ATCCからの腫瘍細胞株を、10%胎児ウシ血清を含み、Pen−Strepを含まない培地中で培養した。細胞を、18K/mlの密度にて、96−ウェル コーニング(Corning)プレート上で、マルチドロップ(Multidrop)を用いてプレートし、化合物の添加前24時間増殖させた。細胞プレーティングおよびさらなる実験を、5%FBSおよび1%P/Sを含むRPMI中で実施した。化合物希釈を、Span−8ポッドを備えるBeckman FX上で、DMSO中で実施した。48時間のインキュベーションの後、細胞を固定し、2%PAFにて1時間染色し、ついでElx405プレートウォッシャーにて洗浄し、18時間、1:1000にてAlexa−568 Phaloidinとともにインキュベートし、再び洗浄し、DAPIの7ng/mL溶液で1時間染色した。アッセイを毎週実施した。ウェルあたり5つの化合物を、二重で、3倍連続希釈にて6点投与した。各プレートはDMSO陰性対照と、単一濃度での陽性対照タキソールおよびエトポシドを含んだ。ウェルあたり5領域を、20X Plan Apo対物を用いて、MDS IX5000Aで、それぞれ35msおよび150ms、DAPIおよびActin両方で撮った。画像をtiffとして出力し、CellProfiler(CP)を用いて解析した。核領域を、Otsu法を用いてDAPI中でみつけ、細胞質領域を、CP Propagationアルゴリズムで、Actin中で見つけた。CPにて得られるすべての強度、位置、面積、形態および構造(3ピクセル距離)特徴測定を、MySQLデータベースへ収集した。相関情報は含まれていなかった。色に対してそれぞれ70の特徴が、細胞あたり140の特徴を与えた。化合物を試験したように、用量反応曲線を調査して、正確なEC50決定を想定した。画像を調査し、形態学的カテゴリーまたはQCコメントを、適切な場合に書き留めた。
【0086】
実施例1
トレーニングセット生成戦略
トレーニングセットを、化合物に対するEC50に関連した濃度で、処置ウェルから取り出した。図7は、6点用量反応の3つのウェルからの画像を示しており、1つのウェルが、推定EC50以下であり、2つが以上である。1つの処置トレーニングセットを、EC50以上の第一濃度から取り出し、異なる1つを第二段階より取り出した。これらのトレーニングセットに対して生成された分類子を、これらそれぞれの濃度に適用した。この戦略により、比較されるべき異なるEC50反応範囲の化合物の比較が可能になる。対照(DMSO)処置細胞を、各プレートに含まれる陰性対照ウェルから無作為に取り出した。トレーニングセットは一般的に、可能であれば1000細胞であった。図6によって図示したように、分類子は、他のプレートからのDMSO対照と、異なる作用機序を持つ化合物のトレーニングセットを加えることによってより強力となった。
【0087】
実施例2
分類子生成戦略
図8は、どのように分類子を訓練し、どのように新規データを分類し、解析して、予測値を得るかを示している。トレーニングセットにおけるすべての細胞に対する特徴値を標準化し、特徴空間にマッピングした後、各ウェルに対して測定した140の特徴を用いて、分類子を、DMSO処理ウェルと、MOA対照化合物の1つに暴露したウェル間で差別化するために訓練した。これらの新規分類子をついで、新規にアッセイした化合物の100化合物試験組からの結果を分類するために使用した。svmアルゴリズムの二元分類性質のために、各ウェル中のすべての細胞を、対照(DMSO)か、2項分布を産出している試験(化合物)いずれかとして分類した。分類子を訓練して、性能特性を得た。ウェルのラベルした結果に対してたいがい応答性である工程が、その工程が観察された結果を与える試験である可能性の、工程が対照である可能性に対する比をとることによって発見することが可能である。これは、ベイズの定理の形態で記述可能な可能性比である。分類子の性能特性と、試験または対照いずれかとして分類された細胞の数を考慮して、2項係数を使用して、可能性比を発見した。この値は、典型的には、多くの分類子、細胞株および数千の化合物にわたり、−2000〜+500の範囲である図中に報告された予測値であり、陰性値は、相性に対する類似性を予測し、陽性値は、試験に対する類似性を意味する。
【0088】
分類子を、各ウェルに関して140の特徴に対して作り出した。回収した特徴に対する範囲を、各特徴の平均および標準偏差を用いて標準化した。パラメータを、ラジカルカーネルを用いて、SVMに対する可能性あるパラメータ値の「グリッド」を試験することによって選択した。Cおよびガンマは、それぞれ、0.01〜10の間、および0.001〜1の間の範囲であった。各方向で5段階を選択し、25の可能背あるパラメータ対を得た。各パラメータ対に対して、3倍交差検証精度を計算した。SVMを、完全「対照」および「実験」トレーニングセットを用いて訓練し、ついで、標準化「対照」および「実験」試験設定上で試験し、ウェルあたり偽陽性と陰性率を含む基礎品質制御測定を計算した。対照トレーニングセットの比較は様々であり、以下で記述するように精度を上げるために変更される。
【0089】
トレーニングセットを、1年半にわたりスクリーンした、〜1000の96−ウェルプレートにわたる処置ウェルから作成した。公知の作用機序(MOA)をもつ化合物を同定し、当該トレーニングのための特定の処置を超えて一般化する分類子の能力を調査するために使用した。これらの群には、AuroraB、26Sプロテオソーム、チューブリン、アクチン、トポイソメラーゼIおよび抗生物質DNA合成に対する阻害剤が含まれた。これらの群のために作成された分類子は、同様のMOAではない化合物で処理したウェルからの20%に加えて、試験と同一のプレートからの40%各DMSO、および任意の他のプレートからの40%を含むトレーニングセットを利用した。たとえば、R769分類子対照トレーニングセットは、MG132、タキソール、ラトルンクリンAおよびカンプトテシン(および他の同様の化合物)で処理した細胞を含むが、公知のAuroraB活性を持つ任意の「AS」化合物は含まなかった。これらの分類子を作成した後、公知の不活性化合物および他の対照と一緒に、上述したものを含む100の化合物を、PAD_48時間アッセイで再試験した。示された分類子結果は、再試験した100化合物に対してのものである。
【0090】
実施例3
ウェル分類戦略
目標の1つは、該当するウェルからの細胞を見て、どの工程が細胞を産出するかを推論することである。二項分類子は、細胞が試験または対照を介して産出される可能性が高かったかどうかを述べるために、細胞レベルで使用するツールである。分類子を試験した時に、性能特性を得た。これらの特性と、分離子によって試験または対照としてラベルされた該当ウェルの画分を考慮して、ウェルのラベルされた結果に最も関与する工程を、
P(工程=Xまたは「試験」|データ)−工程が、観察された結果を以下の式に与える試験である可能性
P(工程=Yまたは「対照」|データ)
の比をとることによって見いだす。これは可能性比である。
【0091】
第二条件p(工程=X)/p(工程=Y)は、事前オッズであり、いずれかの可能性が等しくあり得るという推定下無視される。分類子の性能特性と、試験または対照いずれかとして分類された細胞の数を考慮して、二項係数を使用して可能性比を見いだした。
【0092】
aおよびbは、それぞれ細胞試験または対照とラベルされている概分類子の可能性であり、xおよびyは、試験または対照と分類された細胞の数である。非常に小さな数を除すことに関する問題を避けるために、対数を使用して、各モデルに対する可能性を計算し、2つの対数間の差を報告する。この値は、図中に報告した予測値である。予測値は典型的には、多くの分類子、細胞株および数千の化合物にわたり、−2000〜+500の範囲であり、陰性値は、対照に対する類似性を予測し、陽性値は、試験に対する類似性を意味している。本戦略を図9に図示している。
【0093】
svm分類子は、化合物のmoa対照組に対して作成される。トレーニングセット試料を得た実験(本質的にはプレート)の数はNである。分類子検証統計を一覧表にし(True Posなど)、各svmの100化合物の試験組に対する精度と再現性を同様に一覧表にする。+1svm組および+2組両方に対して実施する。
【0094】
実施例3
データ組
アッセイを、一群として、細胞を播種し、投与し、固定し、染色したすべてのプレートで毎週実施した。化合物を各96ウェルプレートに対して二重に、6点用量反応で、5〜96ウェルに投与した。各プレート上で、DMSOの陰性対照を、投与する化合物と同一の濃度割合で加え、陽性対照タキソールおよびエトポキシドを単一濃度で加えた。これらの対照を用いて、各プレートに対するZプライム因子を計算し、細胞周期プロットからの染色強度を査定した。
【0095】
DAPI染色核のデジタル画像を取り込み、核を見つけるために分割し、各核に対して、強度、面積、形状および構造のような特徴を測定した。本発明者らは、画像と品質特徴を分割するために、CellProfilerを使用した。化合物を試験するときに、用量反応の各濃度からの試料画像を、視覚的に点検し、適切ならば、形態学的カテゴリーを割り当てた。適切なEC50決定と、用量の正しくない濃度範囲のような品質対照査定が注釈がつけられることを確実にした。個々の細胞データ、実験特性および手動検査結果を、化合物名、濃度および細胞株のような実験特性によって個々の細胞データを参照可能で、不十分な品質の実験からのデータを除去可能な特注ソフトウェアシステム内に保存した。
【0096】
図11は、増殖−アポトーシス−DNA含有量(PAD)アッセイからの実験データを図示しており、図12は、本方法によってスクリーンした不活性化合物に対して得た結果のグラフである。真の陰性および偽陽性に対する可能性スコアを示唆している。
【0097】
図13は、選択した分類子に対する再現率と精度を示している表である。分類子の堅牢性を増加させるまたは減少させるために、再現性および精度両方に対して、閾値を選んでよい。図14は、いくつかの分類子の平均再現率性能を図示しているグラフであり、一方図15は、いくかの分類子の平均精度性能を図示しているグラフである。
【0098】
実施例4
画像標準化
アッセイパラメータをできる限り一定に維持することによって、本アッセイにおける変動の第一供給源が、細胞密度と、細胞染色強度であることが究明された(図2を参照のこと)。本アッセイは、各週、バルクにて実施され、したがって、アッセイ強度と細胞密度は通常、各週内のアッセイ内で非常に類似であるが、週間では潜在的に異なる。
【0099】
多数の継代にわたる細胞増殖の比と、個々の細胞の播種における上下が、細胞密度における変動に寄与する。細胞継代値は、最終的には、5より大きく25より小さく制限された。細胞密度における他の変動の供給源は、制御することが難しいとわかったが、しかし細胞密度が相当最小の値である限り、EC50決定の品質と、パターン認識技術へ適用する能力は、細胞密度の差によって影響を受けないことが究明された。
【0100】
器具ランプ強度と染色の長さを含むいくつかの要素が、染色強度における変化に寄与した。この変動に対して埋め合わせをするために、画像を、各プレート内に含まれる対照に対して、各プレート内で標準化した。本技術によって、分類子識別における有意な改善がもたらされた。
【0101】
画像を、DMSO陰性対照の中央値フォアグラウンド強度をまず見つけることによって、各プレート内で標準化した。ついで、各処理画像に対して、その画像の中央値バックグランドを差し引き、結果を、対照中央値フォアグラウンドで除した。次いで、各画像を、以下の式、画像+オフセット/(マルチプル*(1−オフセット)=「標準化画像」にしたがって改変し、式中「オフセット」は、ゼロ以上の画像を取り上げ、「マルチプル」はDMSO対照以上であると合理的に推定されうる処置あたりの回数である。本方法は図3および図4にて図示しており、実験結果は、図2および図5にて示している。
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2010年1月12日に出願された、米国特許仮出願第61/335,897号の利益を請求し、そのすべてが本明細書に参照により組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野で現在実施されている創薬は、特定の疾患標的の工程、特定の標的に基づくアッセイの開発、アッセイの検証、スクリーンを産するためのアッセイの最適化と自動化、「ヒット」を同定するために、アッセイを用いた化合物ライブラリーのハイスループットスクリーニング、ヒット検証およびヒット化合物最適化を含む、長期で、多重の段階工程である。この工程のアウトプットは、前臨床に進み、もし有効とされた場合、最終的には臨床試験まで進む、リード化合物である。この工程において、スクリーニング段階は、アッセイ開発段階とは異なり、生きている生体系において、化合物効果を試験することが含まれる。創薬の取り組みはしばしば、未知であるか、もしくは部分的にしか全身的作用が理解されていない、生物活性薬剤の同定を導く。これらの薬剤がどれくらい働くのかを決定することは、通常労働集約的工程であり、結論は不確かである。
【0003】
本明細書の特定の様態は、創薬において利用可能な細胞に基づくハイスループットスクリーニングアッセイに関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の特定の態様は、スクリーニング法に関する。一般論として、スクリーニング法には、試験細胞を試験化合物に接触させて、接触試験細胞を提供すること、多数の前記試験細胞の細胞学的特性に対する値を得ること、およびこの値を用いて細胞をスコア化し、多数の分類子の少なくとも1つに対する可能性スコアを提供することが含まれ、そこで、多数の分類子は、公知の作用機序の化合物と接触した細胞の細胞学的特性に対する値を用いて定義される。特定の実施形態において、方法には、分類子に対する集団内の個々の細胞から得られる値を比較すること、個々の細胞が分類子によって、分類されるか、または分類されないか決定すること、および分類子によって分類された個々の細胞の数と、分類子によって分類されない細胞数を用いて可能性スコアを計算すること、が含まれてよい。
【0005】
細胞集団の画像を取り込むための装置、この装置に動作可能に連結したコンピュータを含み、i.画像を解析し、細胞の多数の細胞学的特性に対する値を提供すること、およびii.この値を用いて細胞をスコア化し、多数の分類子の少なくとも1つに関する可能性スコアを提供すること、のためのコンピュータプログラミングを含む顕微鏡システムもまた提供され、そこで、多数の分類子は、公知の作用機序の化合物と接触させた細胞から得られた細胞学的特性に対する値を用いて定義される。
【0006】
画像標準化法もまた提供される。一般論として、本方法には、a)マルチ−ウェルプレートの第一ウェル中に存在し、試験薬剤と接触した細胞の、第一画像の中央値バックグラウンドピクセル値を、画像のピクセル値から差し引き、第二画像を提供すること、およびb)マルチ−ウェルプレートの第二ウェル中の未処理細胞の中央値フェアグラウンドピクセル値によって、第二画像のピクセル値を除し、それによって第三画像を提供すること、が含まれる。本方法において、第三画像のピクセル値を再調整してよい。本方法を実施するための、実行可能な指令を含む、コンピュータが読み込み可能なメディアがまた提供される。
【0007】
表現型分類子を提供するための方法もまた提供される。一般論として、本方法には、a)第一細胞集団を、第一の公知の作用機序を持つ第一化合物と接触させ、接触細胞第一集団を提供すること、およびb)第二細胞集団を、第二の公知の作用機序を持つ第二化合物と接触させ、接触細胞第二集団を提供すること、c)第一および第二接触細胞ならびに未処理細胞集団の多数の細胞学的特性に対する値を得ること、およびd)全体で、接触細胞第一集団を、接触細胞第二集団と未処理細胞集団から見分けるそれぞれの細胞学的特性に対する値の範囲を同定すること、が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】方法における1つの実施形態を概略的に図示している図である。
【図2】染色強度が、アッセイ変動の主要な供給源であることを示している図である。
【図3】図3は、画像が標準化される方法を提供している。
【図4】0.01のオフセットと3マルチプルが、許容可能な結果を提供することを図示している図である。
【図5】イメージ標準化方法が、偽陽性予想を減少させることを示している図である。
【図6】分類子が、対照トレーニングセットの数を増加させることによって、分類子がより強固に作成されうることを示している図である。
【図7】典型的な用量計算を概略的に図示している図である。
【図8】方法における1つの実施形態を概略的に図示している図である。
【図9】ベイズアプローチを用いた良好な分類を図示している図である。
【図10】分類子の性能が再現率および精度測定基準によって査定されうることを示している図である。
【図11】典型的なアッセイを図示している図である。
【図12】典型的な結果のグラフである。
【図13】典型的な結果の表である。
【図14】いくつかの分類子の平均再現率性能を図示しているグラフを示している。
【図15】いくつかの分類子の平均性能を図示しているグラフである。
【図16】典型的な化合物とそれらの作用機序を示しているグラフである。
【図17】表現型パターンを公開するヒートマップを示している。
【図18】図17にて示したヒートマップの一部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(定義)
用語「決定すること(determining)」、「測定すること(measuring)」、「評価すること(evaluating)」、「査定すること(assessing)」および「アッセイすること(assaying)」は、本明細書にて、要素が存在するかしないかを決定することを含む、任意の形態の測定を言及するために交互に使用される。これらの用語には、定量的および/または定性的決定両方が含まれる。アッセイすることは、相対的または絶対的であってよい。「存在を決定すること(determining the presence of)」には、存在する量を決定すること、ならびに存在するかしないかを決定することが含まれる。
【0010】
用語「接触すること(contacting)」は、一緒に運ぶかまたは置くことを意味する。そのようなものとして、例えば、同一の溶液中で、互いに触れさせること、または混合することによって、2つの品目が一緒に運ばれるか、または置かれる時に、第一品目が第二品目に接触する。他に指摘がない限り、薬剤と接触する細胞は、in vitroでの細胞、すなわち培養細胞である。「細胞内に導入すること(Introducing into a cell)」、例えば細胞内に核酸を導入することは、用語「接触すること」によって包含される。
【0011】
用語「候補薬剤(candidate agent)」および「試験化合物(test compounds)」は、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、(shRNAとして投与されうる)阻害RNA、遺伝子産物、ポリペプチド、例えば大きさにして2500ダルトン(Da)までの低分子、および薬剤が生物学的活性をもつかどうか決定するために、アッセイ中の細胞と結合する任意の薬理学的化合物を意味するために使用する。特定の場合において、候補薬剤は、例えば阻害RNA分子またはポリペプチドのような、候補薬剤を提供するために転写および/または翻訳される核酸として伝達されうる。
【0012】
用語「細胞学的特性(cytological attribute)」は、細胞またはその細胞内構造、例えば細胞の核またはアクチン染色パターンのような細胞学的特性を意味する。大きさ、染色強度、形態、楕円率および構造が、細胞学的特性の例である。用語「細胞学的特性」は、特定の他の刊行物(例えば、Young et al,Nature Chemical Biology 2007 4:59−68、Feng et al,Nature Reviews 2009 8:567−578)中の「表現型特性(phenotypic attribute)」、「パラメータ(parameter)」または「特徴(feature)」として意味してよい。細胞学的特性は、染色によって同定されてよい。細胞学的特性の多くの例が、以下に引用する参考文献中で記述されている。
【0013】
「細胞学的特性」に関連して、(例えば表現「多数の細胞学的特性に対する値を得ること」のように)、用語「値(value)」は、細胞学的特性の数学的評価(例えば測定)、または多数の数学的評価の統計的派生物(例えば平均、平均値またはばらつき)を意味する。細胞学的特性に対する値の例には、細胞または細胞核のいずれかに対する大きさ測定が含まれ、面積、長さ、幅、直径等の測定、細胞またはその核の染色強度の合計、平均値またはばらつき、形態の異常度、楕円率および構造の程度などの測定が含まれうる。一般論として、単一の細胞に対して得られた値の数は、20〜500以上の範囲内であってよく、望む複雑性のレベルに依存する。
【0014】
用語「分類子(classifier)」は、全体で、細胞を生物活性薬剤に接触させることによって産出される表現型を定義する、細胞学的特性の値の範囲の集合を意味する。生物活性薬剤が、定義された作用機序を持つ場合、接触細胞の表現型、したがって分類子は、生物活性薬剤の作用機序を定義する。例えば、生物活性薬剤の作用機序を定義する特定の表現型が、異なる100を超える異なる値の範囲を用いて定義されてよく、範囲は、接触細胞の表現型を、対照細胞の表現型、または異なる作用機序を持つ他の生物活性薬剤と接触した他の細胞の表現型から区別する。
【0015】
用語「可能性(likelihood)スコア」は、予測の確かさの推定を意味する。可能性スコアは、二項式ではない。正しくは、連続した変数であり、比、奇数または目盛り付き数字、例えばパーセンテージであってよい。
【0016】
用語「ベイズの定理(Bayesian theorem)」は、(観察された証拠を与える仮説の確率のような)1つの条件確率が、その逆数(この場合、仮説を与えた証拠の確率)に依存する定理である。ベイズの定理は、両方とも本明細書にて参照により組み込まれる、Howson(Scientific Reasoning:The Bayesian Approach 1993 Open Court)およびJaynes(Probability theory:the logic of science 2003.Cambridge University Press)にて記述されている。
【0017】
用語「可能性スコアのプロファイル(profile of likelihood scores)」は、異なる分類子に対する一組の可能性スコアを意味し、各可能性スコアは、予測の確かさの推定を提供する。
【0018】
用語「作用機序(mode of action)」は、それを通して生物活性薬剤が薬理学的効果を提供する、特定の生化学相互作用を意味する。
【0019】
用語「ピクセル値(pixel value)」は、ピクセルの強度を意味する。例えば、16−ビットイメージングシステムによって取り込まれた画像に対して、ピクセル値は、0〜65,536の範囲の自然数であってよい。ピクセル値は、例えば、16−ビットイメージの場合、65,536によってピクセル値を除すことによって、0〜1の範囲内に収まるように再スケール化してもよい。
【0020】
用語「多数(plurality)」は、2つ以上、例えば少なくとも2、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも1,000、10,000まで、または100,000以上を意味する。
【0021】
細胞の画像を参照して、用語「バックグラウンド(background)」は、細胞間のエリアに相当する画像の部分を意味する。
【0022】
細胞の画像を参照して、用語「フォアグラウンド(foreground)」は、画像中の各細胞の外部周辺内である、画像の部分を意味する。
【0023】
本発明をさらに記述する前に、本発明が記述した特定の実施形態に限定はされず、もちろん変動してよいことが理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の請求項によってのみ限定されることから、本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を記述する目的のためのみであり、限定をする意図はないことも理解されるべきである。
【0024】
値の範囲が提供される場合、各途中の値、文脈が明確に指示していない限り、より低い制限のユニットの10分の1まで、範囲の上限制限と下限制限の間、そして言及した範囲内での任意の他に言及されるか、途中の値が本発明内に包含されることが理解されるべきである。
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者によって共通に理解されるのと同じ意味を持つ。本明細書で記述したものと同様かまたは等価の任意の方法および材料が、本発明の実施または試験で使用可能であるけれども、好ましい方法および物質が本明細書で記述されている。本明細書で言及されたすべての刊行物が、刊行物が引用されるものに関連して、方法および/または材料を開示し、記述するために、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本明細書および付随する請求項にて使用されるように、単数形形態「a」、「and」および「the」には、文脈上明確に他に指示していない限り、複数形指示対象が含まれることが留意されなければならない。したがって、例えば、「細胞(a cell)」への言及には、多数の細胞が含まれ、「候補薬剤(a candidate agent)」には当業者に公知の1つ以上の候補薬剤およびその等価物が含まれ、「値(a value)」には、2つ以上の試料にわたる平均化された値に対する言及が含まれる、などである。請求項は、任意の選択要素を排除するために下書きされうることもさらに留意される。そのようなものとして、本声明は、請求要素の記述、または「負の(negative)」制限の利用に関連して、「単に(solely)」、「のみ(only)など」のような排他用語の利用に対する先行詞として役割を果たす意図がある。
【0027】
本明細書で議論した刊行物は、単に本明細書の申請日以前のそれらの開示物に対して提供される。本明細書には、先行発明によって本発明がそのような刊行物に先行する権利が与えられないことの承認として解釈されるべきものはない。さらに、提供した刊行物の日付は、個々に確認される必要がありうる、実際の発行日とは異なる可能性がある。
【0028】
本明細書で引用されるすべての刊行物および特許は、各個々の刊行物または特許が、まるで特異的に、そして個々に、参照により組み込まれることが示唆され、引用された刊行物に関して、方法および/または材料を開示し記述するために、参照により本明細書に組み込まれるように、参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、申請日の前のその開示物であり、本発明が、先行発明のよってそのような刊行物に先行する権利が与えられないことの承認として解釈されるべきでない。さらに、提供された刊行物の日付は、個々に確認される必要がありうる、実際の発行日とは異なる可能性がある。
【0029】
本開示物を読む際に当業者に対して明らかであるように、本明細書で記述され、図示される個々の実施形態それぞれが、本発明の範囲または精神から逸脱することなしに、任意の他の数個の実施形態の特徴から簡単に分離されえ、または混合されうる、個々の要素および特徴を持つ。任意の引用された方法を、引用された事象の順番で、または論理的に可能である任意の他の順番で、実施可能である。
【0030】
図1を参照して、方法には一般的に、培養液中で増殖した細胞を試験薬剤と接触させること、および細胞を撮像して画像を提供すること、が含まれる。画像中の細胞の細胞学的特性を解析して、各細胞に対する多数の値を得、その各細胞の値を、細胞を分類するか、または分類しないかいずれかの分類子と比較する。この段階によって、細胞の各集団に対して、集団中の個々の細胞が、分類子によって分類されたか、または分類されないかを示唆する、二項アウトプットが産出される。分類子は、細胞学的特性に対する値が、公知の作用機序を持つ化合物と接触した細胞から得られる場合を除いて、試験細胞に関して解析したものと同一の細胞学的特性に対する値を用いて定義される。分類子は、公知の作用機序を持つ生物学的薬剤に曝露した細胞の表現型を、他の細胞から区別する。二項アウトプット、ならびに陽性対照を用いた分類子の性能の推測を用いて、試験薬剤が、公知の作用機序を持つ薬剤と同一の作用機序を持つ可能性スコアを計算する。本方法は、多数の細胞集団を、マルチ−ウェルプレートのウェル中で増殖させ、各マルチ−ウェルプレート上に対照(例えば任意の薬剤と接触しない細胞の集団)をおき、画像化と解析を、自動化顕微鏡システムを用いて実施する、「ハイスループット」様式にて利用してもよい。
【0031】
以下の刊行物が、本方法にて利用可能であり得る、典型的なアッセイ段階およびハードウェアの記述のために、参照により組み込まれる。Catalano (Discovery and Development of an Aurora Kinase Inhibitor Clinical Candidate Using an Image−Based Assay for Measuring Proliferation, Apoptosis, and DNA Content Assay Drug Development Technologies 2009 7: 105−109), McLaughlin (Preclinical characterization of Aurora kinase inhibitor R763/AS703569 identified through an image−based phenotypic screen J. Cancer Res. Clin. Oncol. 2009 136: 99−113; Boland (Automated Recognition of Patterns Characteristic of Subcellular Structures in Fluorescence Microscopy Images Michael Cytometry 1998 33: 366−375); Perlman (Multidimensional Drug Profiling By Automated Microscopy Science 2004 306: 1194−8), Loo (Image−based multivariate profiling of drug responses from single cells Nat. Methods 2007 4: 445−53); Young (Integrating high−content screening and ligand−target prediction to identify mechanism of action Nat. Chem. Biol. 2008 4: 59−68; Feng et al (Multi−parameter phenotypic profiling: using cellular effects to characterize small−molecule compounds Nat. Chem. Biol. 2008 4:59−68)およびKauvar(Affinity Fingerprinting A novel approach to quantitative chemical classification proves useful in drug discovery Bio/Technology 1995 13, 965 − 966)。これらの刊行物は、とりわけ、一般的な細胞培養方法、生物活性薬剤、染色方法、細胞画像化方法、細胞学的特性およびそれを測定するための方法、画像処理方法およびダウンストリームデータ処理方法の開示に関して組み込まれる。
【0032】
本方法の特定の様態を、より詳細に以下で記述する。
【0033】
標準化方法
本明細書は、画像標準化方法を提供する。本方法において、マルチ−ウェルプレートのウェル中の細胞の画像を使用して、同一のマルチ−ウェルプレートの異なるウェル中の細胞の画像を標準化する。本方法において、細胞の第一集団を、マルチ−ウェルプレートの試験ウェル中で培養して、試験薬剤と接触させる。これらの細胞の画像をついで、試験ウェルと同一のプレート上に存在する対照ウェル中で増殖させた細胞の集団の画像に対して標準化する。本方法において、細胞の第一集団の画像を構成するピクセルの値を調節する。まず、試験細胞の画像(すなわち「第一」画像)を解析して、フォアグラウンドおよびバックグラウンドピクセルを同定し、バックグランドピクセルの中央値強度を計算する。第一画像のバックグランドピクセルの中央値強度を、第一画像のピクセル値から差し引き、第二「バックグラウンド−差分」画像を得る。第二画像に対するピクセル値をついて、同一のマルチ−ウェルプレートの第二ウェル中の未処理細胞の画像の中央値フォアグラウンドピクセル値によって除し、これによって、第三画像が得られる。特定の実施形態において、試験ウェル中の細胞を、不活性賦形剤、例えば水、エタノールまたはDMSOのような二極性非プロトン性溶媒中に存在する試験薬剤と接触させ、対照ウェル中の細胞を、不活性賦形剤のみと接触させる。1つの実施形態において、試験ウェル中の細胞を、DMSO中に溶解した薬剤と接触させ、対照ウェル中の細胞をDMSOのみと接触させる。簡単に理解されうるように、多数の対照ウェルからの結果を、例えば、その結果を平均化することによって、本方法で利用してよい。
【0034】
特定の実施形態において、第三画像を構成するピクセル値をさらに調整し、それによって、ゼロ以上にし、おおよそ他の画像に対してと同一のスケールとなる。これらの実施形態において、第三画像を構成するピクセル値を、再見積して、ピクセル値が、第三画像値/マルチプル*(1−オフセット)に対して、オフセット+ピクセル値と等しくなる、見積もった画像を得、そこで、オフセットは、ゼロ以上の第三画像中のすべてのピクセルに対する値を提起し、マルチプルは少なくとも1である。1つの実施形態において、オフセットは0.1以下であり、マルチプルは少なくとも1(例えば1〜10の範囲)である。このような方法を図3に図示している。
【0035】
本方法を、マルチ−ウェルプレートの他のウェル中の細胞の画像に対して繰り返してよい。特定の実施形態において、他のウェル中の少なくともいくつかの細胞を、さらに試験薬剤と接触させた。本方法を使用して、試験ウェルの画像のさらなる処理の前に、マルチ−ウェルプレートのそれぞれの試験ウェルを標準化してよい。
【0036】
本方法を実施するための実行可能な指令を含むコンピュータ読み込み可能メディアもまた提供される。そのようなコンピュータ読み込み可能メディアを、以下により詳細に記述する。
【0037】
分類子を定義するための方法
上述したように、一緒に生物活性化合物によって産出される表現型を定義する、細胞学的特性の値の範囲の集団である、表現型分類子を定義するための方法がまた、本明細書で提供される。以下で記述するようなスクリーニング方法にて使用される場合、分類子は、細胞を、それらの表現型に基づいて他と区別されることを許容するのみでなく、分類子を定義するために使用する細胞の表現型と同様または同一であるように、細胞の表現型を同定することを許容する。いったん公知の作用機序を持つ生物活性薬剤のそのような「表典型フィンガープリント(phenotypic fingerprint)」が定義されたならば、薬剤を、同様のフィンガープリントを産出するものに対して、スクリーニング可能である。したがって、公知の作用機序を持つ化合物のものと同様の作用機序を持つ化合物を同定可能である。
【0038】
本方法には、第一生物活性薬剤、例えば、定義された作用機序を持つ薬剤に対して曝露された細胞に関する、多数の細胞学的特性に対する値の範囲を同定することが含まれ、そこで、値の範囲は、そのような細胞を、賦形剤のみに曝露した他の細胞および/または、第一生物活性薬剤に対して異なる表現型を産する生物活性薬剤、例えば、第一生物活性薬剤に対して異なる作用機序を持つ薬剤に曝露された細胞から区別する。
【0039】
特定の実施形態において、本方法の第一段階には、細胞の第一集団を、第一の公知の作用機序を持つ第一化合物と接触させ、接触細胞の第一集団を提供すること、および第二細胞集団を、第二の公知の作用機序を持つ化合物と接触させて、接触細胞の第二集団を提供することが含まれる。接触細胞第一集団に対する、接触細胞第二集団に対する、そして賦形剤にのみ曝露した対照細胞に対する、多数の細胞学的特性に対する値が、細胞の画像より得られ、接触細胞の第二集団および未処理細胞集団から、接触細胞の集団を全体で区別する、細胞学的特性それぞれに対する値の範囲が同定される。本方法において、細胞の集団は、同一または異なるマルチ−ウェルプレート上であってよく、特定の実施形態において、第一細胞集団と、未処理細胞集団は、第一マルチ−ウェルプレート中に存在する。本方法にはさらに、第二マルチ−ウェルプレート上で増殖した他の細胞の未処理集団に対する値を得ること、および、全体で接触細胞第一集団を、接触細胞第二集団、第一マルチ−ウェルプレート上で増殖する細胞の未処理集団、および第二未処理細胞集団から区別する、細胞学的特性それぞれに対する値の範囲を同定すること、が含まれる。さらに、異なるマルチ−ウェルプレート上で増殖したか、異なる時に増殖した(例えば、第一細胞集団が増殖した時点より少なくとも1週間、1ヶ月、または1年以内で早く、または遅く増殖した)、未処理細胞集団もまた利用してよい。
【0040】
同様に、本方法には、第三細胞集団を、第三の公知の作用機序を持つ第三化合物と接触させ、接触細胞の第三集団を得ること、接触細胞第三集団の多数の細胞学的特性に対する値を得ること、および全体で、接触細胞第一集団を、接触細胞第二および第三集団および未処理細胞集団から区別する、細胞学的特性のそれぞれに対する値の範囲を同定すること、が含まれる。異なる作用機序を持つ他の生物活性薬剤に曝露した細胞集団のさらなる画像も利用してよい。未処理細胞でのように、これらの細胞は、異なるマルチ−ウェルプレート上で増殖してよく、または異なる時(例えば、第一細胞集団が増殖した時点より少なくとも1週間、1ヶ月、または1年以内で早く、または遅く増殖した)に増殖してもよい。図5で図示するように、分類子は、より多くの未処理細胞集団と、異なる作用機序を持つ生物活性薬剤に曝露したより多くの細胞集団を、分類子を構築するために使用したとき、より強固になる。各生物活性薬剤に対する分類子は、新規データを用いて、定期的に再計算してよい。
【0041】
一般論として、分類子を定義するために使用する生物活性薬剤を、表現型を算する濃度で使用する。例えば、生物活性薬剤は、それらのEC50にて、以上の濃度で使用してよい。
【0042】
本方法で使用可能な生物活性薬剤の例とそれらの作用機序を、図16にて示している。がんの処置のための化学療法剤および抗炎症薬剤がとりわけ興味深い。薬剤は、例えば、細胞表面受容体(例えばGPCRまたは細胞表面チロシンキナーゼ受容体)、または細胞質タンパク質を標的としてよい。いくつかの実施形態において、生物活性薬剤は、(直接細胞に投与するか、または例えばRNAをコードしているベクターを用いて細胞に間接的に投与してよい)アンチセンスRNA、または阻害RNA分子であってよい。
【0043】
本方法で使用可能な薬剤の例には、以下が含まれる。
【0044】
(i)アルキル化剤(例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、窒素マスタード、メルファラン、クロテムブシル、ブスルファン、テモゾルアミドおよびニトロソ尿素)、抗代謝剤(例えば、ゲムシタビン、およびフルオロピリミジン様5−フルオロウラシルおよびテガフールのような抗葉酸剤、ラルチトレキセド、メトトレキサート、システインアラビノシド、およびヒドロキシ尿素)、抗腫瘍抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C、ダクチノマイシンおよびミスラマシンのようなアントラサイクリン類)、抗有糸分裂剤(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンのようなビンカアルカロイド類、およびタキソールおよびタキソテールのようなタキソイド類およびポロキナーゼ阻害剤類)、およびトポイソメラーゼ阻害剤類(例えば、エトポシドおよびテニポシドのようなエピポドフィロトキシン類、アムサクリン、トポテカンおよびカンプトテシン)のような、抗増殖/抗新生物薬;
【0045】
(ii)抗エストロゲン剤類(例えばタモキシフェン、フルベストラント、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロキソキシフェンおよびヨードキシフェン)、抗アンドロゲン剤類(例えば、ビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えば、ゴセレリン、リュープリンおよびブセレリン)、プロゲストゲン類(例えば、酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤類(例えば、アナストロゾール、レトロゾール、ヴォラゾールおよびエキセメスタン)およびフィナステリドのような5α−リダクターゼの阻害剤、のような細胞増殖抑制剤;
【0046】
(iii)抗侵害薬剤(例えば、4−(6−クロロ−2,3−メチレンジオキシアニリノ)−7−[2−(4−メチルピペラジン−1−イル)エレキシ]−5−テトラヒドロピラン−4−イルオキシキナゾリン(AZD0530、国際特許明細書国際公開第WO01/94341号パンフレット)、N−(2−クロロ−6−メチルフェニル)−2−{6−[4−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン−1−イル]2−メチルピペリミジン−4−イルアミノ}チアゾール−5−カルボキシアミド(ダサチニブ、BMS−354825、J.Med.Chem.,2004,47,6658−6661)、およびボスチニブ(SKI−606)のようなc−Srcキナーゼファミリー阻害剤類、およびマリマスタットのようなメタロプロテイナーゼ阻害剤類、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化体受容体機能の阻害剤類、またはへパラナーゼに対する抗体);
【0047】
(iv)増殖因子機能の阻害剤類、例えば、増殖因子抗体および増殖因子受容体抗体(例えば抗−erbB2抗体トラスツズマブ[Herceptin(登録商標)]、抗−EGFR抗体パニツムマブ、抗−erbB1抗体セツキシマブ[Erbitux、C225]、およびStem et al.,Cirtical reviews in oncology/hematology,2005,Vol.54,pp11−29によって開示された増殖因子または増殖因子受容体抗体)、を含む阻害剤。そのような阻害剤はまた、チロシンキナーゼ阻害剤類、たとえば、上皮増殖因子ファミリーの阻害剤(例えば、N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ、ZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI−774)、および6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)−キナゾリン−4−アミン(CI1033)のような、EGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤類、およびラパチニブのようなerbB2チロシンキナーゼ阻害剤)、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤、インスリン増殖因子ファミリーの阻害剤、イマチニブおよび/またはニロチニブ(AMN107)のような血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、セリン/スレオニンキナーゼの阻害剤類(例えば、ソラフェニブ(BAY43−9006)、チピファルニブ(R115777)およびロナファルニブ(SCH66336)のような、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤類のようなRas/Rafシグナル伝達阻害剤類)、MEKおよび/またはAKTキナーゼを介する細胞シグナル伝達の阻害剤類、c−kit阻害剤類、ab1キナーゼ阻害剤類、PI3キナーゼ阻害剤類、Plt3キナーゼ阻害剤類、CSF−1Rキナーゼ阻害剤類、IGFレセプター(インスリン−様増殖因子)キナーゼ阻害剤類、オーロラキナーゼ阻害剤類(例えばAZD1152、PH739358、VX−680、MLN8054、R763、MP235、MP529、VX−528およびAX39459)およびCDK2および/またはCDK4阻害剤のようなシクリン依存キナーゼ阻害剤類を含む;
【0048】
(v)例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ(アバスチン(Avastin))および例えば、バンデタニブ(ZD6474)、バタラニブ(PTK787)、スニチニブ(SU11248)、アキシチニブ(AG−013736)、パゾパニブ(GW786034)および4−(4−フルオロ−2−メチルインドール−5−イルオキシ)−6−メトキシ−7−(3−ピロリジン−1−イルプロポキシ)−キナゾリン(AZD2171、国際公開第00/47212号の実施例240)のようなVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害剤、国際公開第97/22596号、国際公開第97/30035号パ、国際公開第97/32856号および国際公開第98/13354号にて開示されているような化合物、および他の機構によって働く化合物(例えば、リノマイド、インテグリンαvβ3機能の阻害剤およびアンジオスタチン)のような、血管内皮細胞増殖因子の効果を阻害する抗血管新生剤;
【0049】
(vi)コンブレタスタチンA4および国際公開第99/02166号、国際公開第00/40529号、国際公開第00/41669号、国際公開第01/92224号、国際公開第02/04434号および国際公開第WO02/08213号にて開示された化合物のような、血管障害性薬剤;
【0050】
(vii)例えばジボテンタン(ZD4054)またはアトラセンタンのような、エンドセリン受容体アンタゴニスト;
【0051】
(viii)例えば、ISIS2503、抗rasアンチセンスのような、以上で列記した標的を指向する、アンチセンス治療;
【0052】
(ix)例えば、異常p53または異常BRCA1またはBRCA2、GDEPT(遺伝子指向酵素プロドラッグ治療)のような異常遺伝子を置換するためのアプローチ、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌ニトロリダクターゼ酵素を用いるようなアプローチ、および多剤耐性遺伝子治療のような、化学療法または放射線療法に対する患者耐性を増加させるためのアプローチを含む、遺伝子治療アプローチ。
【0053】
本方法にて使用する生物活性薬剤は、抗腫瘍アルキル化剤、抗腫瘍抗代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、血小板由来抗腫瘍剤、抗腫瘍白金錯体、抗腫瘍カンプトテシン誘導体、抗腫瘍チロシンキナーゼ阻害剤、モノクローナル抗体、インターフェロン、生物学的応答改変剤、ホルモン抗腫瘍剤、抗腫瘍ウイルス剤、血管新生阻害剤、分化剤、PI3K/mTOR/AKT阻害剤、細胞周期阻害剤、アポトーシス阻害剤、hsp90阻害剤、チューブリン阻害剤、DNA回復阻害剤、抗血管新生薬剤、受容体チロシンキナーゼ阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、タキサン、Her−2標的剤、ホルモンアンタゴニスト、増殖因子標的薬剤、またはそれらの薬理学的に許容可能な塩であってよい。いくつかの実施形態において、抗腫瘍剤は、シタラビン、カペシタビン、バロピシタビンまたはゲムシタビンである。いくつかの実施形態において、薬剤は、アバスチン(Avastin)、スーテント(Sutent)、ネクサバール(Nexavar)、レセンチン(Recentin)、ABT−869、アキシチニブ(Axitinib)、イリノテカン(Irinotecan)、トポテカン、パクリタキセル、ドセタキセル、ラパチニブ、ハーセプチン(Herceptin)、ラパチニブ、タモキシフェン、ステロイド性アロマターゼ阻害剤、非ステロイド性アロマターゼ阻害剤、フルベストラント(Fulvestrant)、上皮増殖因子受容体(EGFR)阻害剤、セツキシマブ(Cetuximab)、パニツミマブ(Panitumimab)、インスリン様増殖因子1受容体(IGF1R)の阻害剤、およびCP−751871からなる群より選択される。
【0054】
1つの実施形態において、分類子の性能は、さらなる細胞集団を、試験化合物(第一細胞集団と接触させたものと同一の化合物)に接触させること、それらの細胞集団中の個々の細胞の細胞学的特性に対する値を得ること、およびその値が個々の細胞を正確に分類するかどうか決定すること、によって評価してよい。これらのアッセイからの結果を要約して、分類子の正しい陽性/正しい陰性比を示唆する、その新規分類子に対する性能特性を提供可能である。予想されるように、公知の作用機序を持つ薬剤に曝露した集団中のいくつかの細胞は、「野生型(wild−type)」外見を維持し、薬剤と接触しない対照と似ていてもよい。この性能特性はとりわけ、集団内の個々の細胞における表現型の変動に対して適合する。本方法は、以下で記述するように、例えばベイズの定理を用いて、可能性スコアを計算するために使用してよい、分類子性能の測定基準を提供する。
【0055】
スクリーニング方法
以上で言及したように、細胞集団を試験薬剤に接触させ、細胞学的特性に対する値を得、その値を分類子と比較し、分類子によって細胞を分類可能かどうか決定する、スクリーニング方法が提供される。比較により、分類子を産出するために使用したものと同一の表現型を産する薬剤の可能性のスコアを提供する。本方法にはさらに、望む作用機序を持つ試験化合物を同定することが含まれる。
【0056】
特定の実施形態において、本方法には、試験細胞の集団を試験化合物と接触させ、接触試験細胞を提供すること、接触試験細胞の多数の細胞学的特性に対する値を提供すること、およびその値を使用して、接触試験細胞をスコア化し、多数の分類子の少なくとも1つに対する可能性スコアを得ることが含まれ、そこで、多数の分類子は、公知の作用機序の化合物と接触した細胞から得られた細胞学的特性に対する値を用いて定義される。多数のアッセイを、異なる薬剤濃度で平行して走らせ、種々の濃度に対する異なる応答を得てもよい。濃度は、薬剤の予測EC50を達成するように選択してよい。特定の実施形態において、薬剤のEC50よりすぐ上(すなわち薬剤の「EC50+1」)であるアッセイにて使用する濃度を本方法で使用してよい。
【0057】
特定の実施形態において、値を、接触試験細胞の画像を取り込むこと、およびその画像を解析して値を得ることによって得てよい。画像は、自動化顕微鏡を用いて取り込んでよく、解析は、自動化顕微鏡に動作可能に接続されたコンピュータによって実施してよい。
【0058】
スコア化は、分類子に対して、集団中の個々の細胞から得た値を比較すること、個々の細胞が分類子によって分類されるか、または分類されないかを決定すること、それによって、細胞が、分類されるか、または分類されないか示唆する二項アウトプットを得ること、および分類子によって分類される集団内の個々の細胞の数と、分類子によって分類されない集団内の個々の細胞の数を用いて、可能性スコアを計算することによって実施してよい。特定の実施例において、かつ図9にて図示するように、スコア化は、入力として分類子の性能の測定基準を用いるベイズの定理を利用する。以上で述べたように、この測定基準は、試験細胞を、分類子を産出するために細胞と接触させるために使用したのと同一の化合物と接触させること、ついで試験細胞が分類子によって分類されるかどうか決定することによって、実験的に決定可能である。よりしっかりした分類子は、しっかりしていない分類子よりも、試験薬剤を正しく分類する。特定の場合に、可能性スコアが、(分類子によって分類される集団中の個々の細胞の数と、分類子によって分類されない集団内の個々の細胞の数を示唆する)比較の二項アウトプットを入力すること、および分類子の性能スコアによって計算される。
【0059】
いくつかの実施形態において、細胞の集団を試験薬剤と接触させ、細胞の集団に対する値を、多数の異なる分類子の少なくとも1つの分類子(例えば1つの分類子、2以上の分類子、またはすべての分類子)と比較し、そこで各分類子は、公知の作用機序を持つ薬剤を用いて決定される。例えば、値を、少なくとも2つ、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、50または100以上までの分類子と比較してよく、そこで、各分類子は、公知の作用機序を持つ異なる薬剤を用いて決定される。
【0060】
特定の実施形態において、かつ図17および18で図示するように、本方法は、各試験化合物に対して、多数の異なる分類子の各々に対する可能性スコアを産出するために使用してよい。可能性スコアのプロファイルを、互いに交差比較して、同様の可能性スコアプロファイルを持つ薬剤を同定してよい。そのような階層的クラスター解析法は、例えばEisen(Cluster analysis and display of genome−wide expression patterns Proc.Natl.Acad.Sci.1998 95:14863−14868)およびLing(A computer generated aid for cluster analysis.Communications of the ACM 1973 16:355−361)にて一般的に記述される方法より適応してよい。1つの実施形態において、クラスター解析を使用して、「ヒートマップ(heat map)」と呼ばれるもの、すなわち可能性スコアが、異なる色および/または異なる強度によって表される、データの二次元グラフ表現を生成してよく、そこで、化合物が、1つの次元で列挙され、分離子が他の次元で列挙される。ツリーマップもまた生成してよい。本方法を用いて、試験薬剤をその作用機序によってクラスター化してよく、公知の作用機序を持つ薬剤に対する同一の可能性スコアプロファイルを持つ試験薬剤を同定してよい。
【0061】
特定の実施形態において、そのような解析は、他の作用機序、すなわち分類子によって提示されるものとは異なる作用機序を持つ化合物を同定するために使用してよい。これらの実施形態において、特定の試験化合物は、多数の分類子に対する新しいスコアパターンを提供してよく、これによって、試験化合物が第三の作用機序を持つことが示唆される。例えば、試験化合物は、2つ以上の分類子の組み合わせに対して、強力に、または中程度陽性であってよく、この場合、試験化合物は、分類子を定義するために使用したものとは異なる作用機序を持ってよい。したがって、分類子を定義するために使用したものと異なる作用機序を持つ化合物がやはり同定されうる。特定の実施形態において、アッセイした異なる試験化合物の数、および公知の作用機序の化合物によって産出されたパターンに対して、一貫して異なるパターンが同定された後にのみ新規作用機序が同定されてよい。これらの実施形態において、異なるパターンを持つ化合物を、その化合物の作用機序をさらに定義するために試験してよい。
【0062】
分類子性能をまた、図10で図示するように、他の統計学的方法を用いて、例えば、(正確さの測定、すなわちどれくらいの頻度で、方法が偽陽性および偽陰性を産出するか、である)精度および(完全性の測定、すなわちどれくらいよく方法が望む化合物を同定するか、である)再現率測定基準を使用して評価してもよい。図10にて図示するように、本方法において、精度は、陽性クラスに属している要素の総数によって除した、陽性クラスに依存していると正しくラベルされた品目の数として定義されてよく、一方で再現率は、陽性クラスに実際に属している要素の総数で除した真の陽性の数として定義してよい。精度および再現率を計算するための方法は、Makhoul et al(Performance measures for information extraction.In:Proceeding of DARPA Broadcast News Workshop,Hermdon,VA,February 1999)にて記述されている。
【0063】
特定の実施形態において、試験薬剤は、未知の作用機序を持つ。特定の実施形態において、試験薬剤は、生物活性薬剤またはその派生物であってよく、異なるスクリーンを用いて同定され、そこで、本明細書で使用される用語「薬剤(agent)」は、任意の分子、例えばタンパク質または非タンパク質有機または無機化合物を記述している。試験薬剤には、多数の化学クラス、例えば、合成、半合成、または天然に存在する無機または有機分子が包含される。候補薬剤には、合成または天然化合物の大ライブラリー中で見られるものが含まれる。例えば、合成化合物ライブラリーは、メイブリッジ ケミカル社(Maybridge Chemical Co.)(Trevillet,Cornwall,UK)、コムジェニックス(ComGenex)(Sounth San Francisco,CA)およびミクロソース(MicroSource)(New Mildford、CT)より市販されている。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態での天然の化合物のライブラリーは、パン ラボズ(Pan Labs)(Bothell,WA)から入手でき、または容易に生産できる。
【0064】
候補薬剤は、分子量が50以上であって約2,500Da以下の低分子有機または無機化合物であってよい。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、とりわけ水素結合のために必須の官能基を含んでよく、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基が含まれてよく、少なくとも2つの官能化学基を含んでよい。候補薬剤は、1つ以上の上記官能基で置換された、環状炭素またはヘテロ環状構造および/または芳香族またはポリ芳香族構造を含んでよい。候補薬剤はまた、ペプチド、サッカライド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、それらの誘導体、構造類似体または組み合わせを含む生体分子においてもみられる。
【0065】
候補薬剤は、合成または天然化合物のライブラリーを含む広く種々の供給源より得られる。例えば、無作為抽出オリゴペプチドの発現を含む、広く種々の有機化合物および生体分子の無作為および有向合成のための多数の方法が利用可能である。あるいは、細菌、真菌、植物および動物抽出物の形態での天然の化合物のライブラリーが利用可能であり、または容易に生産される。さらに、天然または合成産出ライブラリーおよび化合物を、従来の科学的、物理的および生化学的方法を介して容易に改変し、コンビナトリアルライブラリーを産出するために使用してよい。公知の薬理学的薬剤を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような、有向または無作為化学改変にかけ、構造類似体を産出してよい。新規の可能性ある治療薬剤をまた、合理的な薬物デザインまたはコンピュータモデリングのような方法を用いて創造してもよい。
【0066】
スクリーニングは、公知の薬理学的に活性な化合物およびその化学的類似物に、または合理的な薬物デザインを介して創造されるような未知の特性を持つ新規薬剤に対して指向されてよい。
【0067】
表現型を調節する薬剤は、薬剤に曝露していない対照に比べて、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%、以上まで表現型を減少させてよい。
【0068】
対象の薬剤を、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化などのような無作為および/または有向化学改変にかけ、構造類似体を産出してよい。そのような構造類似体には、バイオアベイラビリティを増加させる、および/または細胞毒性を減少させるものが含まれる。当業者は、広い範囲の種々の構造類似体を容易に想像し、作り出すことが可能であり、それらを、バイオアベイラビリティの増加および/または細胞毒性の減少などのような望む特性に関してそれらを試験可能である。
【0069】
アッセイで使用した培養細胞は、抗がん剤および抗炎症剤をそれぞれ同定するためにスクリーニング可能な、不死化細胞および炎症系細胞を含む、任意の細胞であってよい。例えば培養哺乳動物細胞のような任意の動物からの培養細胞を使用してよく、サル腎臓細胞(COS細胞)、SV40によって形質導入されたサル腎臓CVI細胞(COS−7、ATCC CRL 165 1)、ヒト胚腎臓細胞(HEK−293、Graham et al.Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO、Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)77:4216,(1980)、マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reporod.23:243−251(1980))、サル腎臓細胞(CVI ATCC CCL 70)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA,ATCC CCL2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34)、バッファーロラット肝細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75)、ヒト肝細胞(hep G2、HB 8065)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL 51)、TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci 383:44−68(1982))、NIH/3T3細胞(ATCC CRL−1658)、およびマウスL細胞(ATCC CCL−1)が含まれるが、限定はされない。さらなる細胞株が、当業者に明らかになるであろう。広く種々の細胞株が、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)、10801 University Boulevard,Masassas,Va.20110−2209より入手可能である。特定の実施形態において、培養細胞は、例えば骨格筋、平滑筋または心筋由来の培養細胞のような、培養筋細胞であってよい。そのような細胞を培養するための方法は公知である。
【0070】
特定の実施形態において、本方法を、例えば細胞への望まない表現型変化のような、「副作用(side−effects)」を産しない薬剤を同定するために使用してよい。特定の場合において、望む作用機序を持つ試験薬剤は、公知の作用機序の薬剤のものと同様の可能性スコアのプロファイルを持つ。以上で記述した方法によって同定された任意の薬剤を、さらにin vitroアッセイにて、または臨床評価の前の動物モデルを用いて試験してよい。
【0071】
顕微鏡システム
以上と一致して、顕微鏡システムも提供される。本システムには、(デジタルカメラ(例えばCMOSカメラ)、適切な光源(例えばレーザーなど)、および光源から光を細胞集団に運ぶため、および細胞から検出器へ光を運ぶためのビームスプリッター、偏光子、プリズム、フィルターおよびレンズを含んでよい光学系を含んでよい)細胞集団の画像を取り込むための器具、および前記器具に、例えばケーブルまたはワイヤレス接続で動作可能に連結した、コンピュータが含まれ、コンピュータは、i.細胞の画像を解析して、画像中の細胞の多数の細胞学的特性に対する値を得ること、およびii.前記値を用いて細胞をスコア化して、多数の分類子の少なくとも1つに対する可能性スコアを得ることを含み、そこで以上で言及したように、多数の分類子は、公知の作用機序の化合物と接触した細胞から得た細胞学的特性に対する値を用いて定義される。顕微鏡システムの器具は自動化顕微鏡であってよい。
【0072】
1つの実施形態において、コンピュータの物理的メモリは、上記方法を実施するための、指令(すなわち「プログラミング(programming)」を含む物理的なコンピュータが読み込み可能なメディアを含む。プログラミングは、物理的ストレージまたはトランスミッションメディアにて提供されうる。指令を受領するコンピュータがついで、本方法から得たアルゴリズムおよび/またはプロセスデータを実行可能である。コンピュータ読み込み可能なストレージメディアの例には、フロッピーディスク、磁気テープ、DVD、CD−ROM、ハードディスクドライブ、ROMまたは集積回路、光磁気学ディスク、またはPCMCIAカードのようなコンピュータ読み取り可能カードが含まれ、そのような器具はコンピュータ内蔵であるかまたは外付けである。情報を含むファイルは、コンピュータ読み込み可能メディア上で「保存(stored)」可能であり、ここで、「保存すること」には、ローカルまたはリモートネットワーク上のコンピュータで、後日アクセス可能であり、検索可能なように、情報を記録する方法を意味する。
【0073】
一つの実施形態において、顕微鏡上からのデータを回収し、分類子を含むプログラミングを実行する。上記方法は、試料を走らせたそれぞれの時間で、(自動的または手動で)実行可能である。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、本発明の特定の実施形態および様態を明示し、さらに図示するために提供され、その範囲を制限すると解釈されるべきでない。
【0075】
材料
活性化合物を、粉末より10mMの濃度まで、DMSO中に懸濁させる。
【0076】
対照:DMSO(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)(St.Louis,MO),D2650)、タキソール(T7402)およびエトポシド(E1383)(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)(St.Louis,MO)。
【0077】
細胞株:腫瘍細胞株をATCCから得、推奨された培地を用いて培養した。細胞分裂を、メディアテック(Mediatech)より得た、カルシウムおよびマグネシウムフリーリン酸塩緩衝生理食塩水(PBS)およびトリプシン−EDTA(25−052−CI)で実施した。
【表1】
【0078】
機器:細胞を、10X S Fluor対物、キセノン(Xenon)光源、Dapi およびTexas Redに対するクロマ フィルターズ(Chroma Filters)およびCCDカメラを備えるMDS IX5000蛍光顕微鏡上で像を取得した。ハードウェア部品を、Win2000オペレーションシステムを用いたPCに連結し、MetaXソフトウェア(MDSモレキュラー・デバイセス(MDS Molecular Devices)、Sunnyvale,CA USA)で制御した。画像を、セルプロファイラー(CellProfiler)画像解析ソフトウェア(ブロード研究所(Broad Institute) Boston,MA USA)内に含まれる、セグメンテーションおよび形態学的ルーティンを用いて、16−ビットフォーマットで取り込みおよび解析した。同定した核を計数し、実験条件とともに、各細胞に対するピクセルデータを、MySQL5.0データベースに保存した。実験結果の続く解析と、EC50曲線フィッティングを含むグラフ作成を、MatLab R2007b(Math Works Inc.Natick,MA USA)で実施した。
【0079】
方法
NCI:国立癌研究所(National Cancer Institute)
ATCC:アメリカン・ティシュー・カルチャー・コレクション(American Tissue Culture Collection)
PAD:96−ウェルプレート中のプレーティング濃度(×1000細胞/ウェル)
aa:アミノ酸
Glc:グルコース
Gln:グルタミン
PS:ペニシリン/ストレプトマイシン
FBS:ウシ胎児血清(Fetal Bovine Serum)
BSA:ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin)
【0080】
実験を、L−グルタミン(メディアテック(Mediatech)10−040−CM)と5% FBSおよびPen/Strepを含む、RPMI1640改変培地中で実施した。細胞を、PackardからのViewPlate96 96−ウェルプレート中、経験的に決定された濃度で、Labsystems Multidrop 384を用いてプレートし、二重複製にて、化合物の添加の前に24時間増殖させた。6点に対する化合物希釈を、Beckman FX上で実施した。化合物との48時間のインキュベーションに続いて、細胞を、PBS(Ca++/Mg++−フリー)中、2.0%パラホルムアルデヒド(Alf Aesar 16%溶液)で1時間固定し、PBS 2×で洗浄し、Invitrogenからの1:1000ファロイジン−アレキサ(Alexa)568にて一晩染色し(A12380)、ついで1×で洗浄し、InvitrogenからのPBS(D−1306)中4’6−ジアミニド−2−フェニルインドール、ジヒドロクロライド(DAPI)の6ng/mL溶液で60分間染色し、PBSにて洗浄した。固定、洗浄および染色を、Beckman FXと一体化したBio−Tek Elx405プレートウォッシャーを用いて実施した。
【0081】
ウェルあたり9つの画像を、処置腫瘍細胞の96ウェルプレートの各ウェル中、隣接グリッドパターンにて取得した。通常すべての条件を各プレートにて二重に実施した。用量反応を、三倍連続にて、曲線あたり(各濃度二重で)6濃度にて実施した。
【0082】
ウェルあたり9つの画像に対する結果を、各ウェルに対して合計し、ついで、二重にわたって平均化した。EC50を、Trust−Regionアルゴリズムで、非線形最小二乗法を用いて、細胞数を勾配変化法面四パラメータシグモイド用量反応曲線に適合させることによって産出した。用量反応点におけるエラーバーは標準偏差を反映する。データを、上または底から、各プレートに含まれた陰性または陽性(またはゼロ)対照(タキソール20nM、エトポシド5μM)まで推し進める5つの異なるデータ組を用いて適合させた。異なるパラメータ組は、底からゼロまで、底から陽性対照のいずれかの最も高い強度まで、底から陽性対照までと上から陰性対照まで、底からゼロまで、および上から陰性対照まで、であり、1つの曲線を、上および底を浮かせることによって適合した。すべての適合によって、傾きを浮かせた。各化合物に対して最適な適合を、適合の品質と、適合結果の生物学的妥当性を考慮させた後、手動検査によって査定した。不活性化合物は、EC50に対して9999を指定された。
【0083】
細胞周期結果を、PAD解析プラットフォームによって、DNA含有量1D頻度ヒストグラムアウトプットの手動検査によって決定した。DNA含有量プロットをLowess法を用いて平滑化した。一般的に、結果を、G1、G2、G1/G2停止、なし、または「決定不可能」とコード化した。アポトーシスをまた、断片化核に対する試料画像の手動検査によって査定した。有意な断片化核が最初に観察された濃度が、アポトーシス対する記録する値である。観察を、各化合物に対して、コメント項で書き留めた。
【0084】
Z’結果を、DMSO陰性対照と、高用量の陽性対照タキソールおよびエトポシドを用いて、プレートごとに計算した。
【0085】
アッセイ生物学、顕微鏡および画像解析:ATCCからの腫瘍細胞株を、10%胎児ウシ血清を含み、Pen−Strepを含まない培地中で培養した。細胞を、18K/mlの密度にて、96−ウェル コーニング(Corning)プレート上で、マルチドロップ(Multidrop)を用いてプレートし、化合物の添加前24時間増殖させた。細胞プレーティングおよびさらなる実験を、5%FBSおよび1%P/Sを含むRPMI中で実施した。化合物希釈を、Span−8ポッドを備えるBeckman FX上で、DMSO中で実施した。48時間のインキュベーションの後、細胞を固定し、2%PAFにて1時間染色し、ついでElx405プレートウォッシャーにて洗浄し、18時間、1:1000にてAlexa−568 Phaloidinとともにインキュベートし、再び洗浄し、DAPIの7ng/mL溶液で1時間染色した。アッセイを毎週実施した。ウェルあたり5つの化合物を、二重で、3倍連続希釈にて6点投与した。各プレートはDMSO陰性対照と、単一濃度での陽性対照タキソールおよびエトポシドを含んだ。ウェルあたり5領域を、20X Plan Apo対物を用いて、MDS IX5000Aで、それぞれ35msおよび150ms、DAPIおよびActin両方で撮った。画像をtiffとして出力し、CellProfiler(CP)を用いて解析した。核領域を、Otsu法を用いてDAPI中でみつけ、細胞質領域を、CP Propagationアルゴリズムで、Actin中で見つけた。CPにて得られるすべての強度、位置、面積、形態および構造(3ピクセル距離)特徴測定を、MySQLデータベースへ収集した。相関情報は含まれていなかった。色に対してそれぞれ70の特徴が、細胞あたり140の特徴を与えた。化合物を試験したように、用量反応曲線を調査して、正確なEC50決定を想定した。画像を調査し、形態学的カテゴリーまたはQCコメントを、適切な場合に書き留めた。
【0086】
実施例1
トレーニングセット生成戦略
トレーニングセットを、化合物に対するEC50に関連した濃度で、処置ウェルから取り出した。図7は、6点用量反応の3つのウェルからの画像を示しており、1つのウェルが、推定EC50以下であり、2つが以上である。1つの処置トレーニングセットを、EC50以上の第一濃度から取り出し、異なる1つを第二段階より取り出した。これらのトレーニングセットに対して生成された分類子を、これらそれぞれの濃度に適用した。この戦略により、比較されるべき異なるEC50反応範囲の化合物の比較が可能になる。対照(DMSO)処置細胞を、各プレートに含まれる陰性対照ウェルから無作為に取り出した。トレーニングセットは一般的に、可能であれば1000細胞であった。図6によって図示したように、分類子は、他のプレートからのDMSO対照と、異なる作用機序を持つ化合物のトレーニングセットを加えることによってより強力となった。
【0087】
実施例2
分類子生成戦略
図8は、どのように分類子を訓練し、どのように新規データを分類し、解析して、予測値を得るかを示している。トレーニングセットにおけるすべての細胞に対する特徴値を標準化し、特徴空間にマッピングした後、各ウェルに対して測定した140の特徴を用いて、分類子を、DMSO処理ウェルと、MOA対照化合物の1つに暴露したウェル間で差別化するために訓練した。これらの新規分類子をついで、新規にアッセイした化合物の100化合物試験組からの結果を分類するために使用した。svmアルゴリズムの二元分類性質のために、各ウェル中のすべての細胞を、対照(DMSO)か、2項分布を産出している試験(化合物)いずれかとして分類した。分類子を訓練して、性能特性を得た。ウェルのラベルした結果に対してたいがい応答性である工程が、その工程が観察された結果を与える試験である可能性の、工程が対照である可能性に対する比をとることによって発見することが可能である。これは、ベイズの定理の形態で記述可能な可能性比である。分類子の性能特性と、試験または対照いずれかとして分類された細胞の数を考慮して、2項係数を使用して、可能性比を発見した。この値は、典型的には、多くの分類子、細胞株および数千の化合物にわたり、−2000〜+500の範囲である図中に報告された予測値であり、陰性値は、相性に対する類似性を予測し、陽性値は、試験に対する類似性を意味する。
【0088】
分類子を、各ウェルに関して140の特徴に対して作り出した。回収した特徴に対する範囲を、各特徴の平均および標準偏差を用いて標準化した。パラメータを、ラジカルカーネルを用いて、SVMに対する可能性あるパラメータ値の「グリッド」を試験することによって選択した。Cおよびガンマは、それぞれ、0.01〜10の間、および0.001〜1の間の範囲であった。各方向で5段階を選択し、25の可能背あるパラメータ対を得た。各パラメータ対に対して、3倍交差検証精度を計算した。SVMを、完全「対照」および「実験」トレーニングセットを用いて訓練し、ついで、標準化「対照」および「実験」試験設定上で試験し、ウェルあたり偽陽性と陰性率を含む基礎品質制御測定を計算した。対照トレーニングセットの比較は様々であり、以下で記述するように精度を上げるために変更される。
【0089】
トレーニングセットを、1年半にわたりスクリーンした、〜1000の96−ウェルプレートにわたる処置ウェルから作成した。公知の作用機序(MOA)をもつ化合物を同定し、当該トレーニングのための特定の処置を超えて一般化する分類子の能力を調査するために使用した。これらの群には、AuroraB、26Sプロテオソーム、チューブリン、アクチン、トポイソメラーゼIおよび抗生物質DNA合成に対する阻害剤が含まれた。これらの群のために作成された分類子は、同様のMOAではない化合物で処理したウェルからの20%に加えて、試験と同一のプレートからの40%各DMSO、および任意の他のプレートからの40%を含むトレーニングセットを利用した。たとえば、R769分類子対照トレーニングセットは、MG132、タキソール、ラトルンクリンAおよびカンプトテシン(および他の同様の化合物)で処理した細胞を含むが、公知のAuroraB活性を持つ任意の「AS」化合物は含まなかった。これらの分類子を作成した後、公知の不活性化合物および他の対照と一緒に、上述したものを含む100の化合物を、PAD_48時間アッセイで再試験した。示された分類子結果は、再試験した100化合物に対してのものである。
【0090】
実施例3
ウェル分類戦略
目標の1つは、該当するウェルからの細胞を見て、どの工程が細胞を産出するかを推論することである。二項分類子は、細胞が試験または対照を介して産出される可能性が高かったかどうかを述べるために、細胞レベルで使用するツールである。分類子を試験した時に、性能特性を得た。これらの特性と、分離子によって試験または対照としてラベルされた該当ウェルの画分を考慮して、ウェルのラベルされた結果に最も関与する工程を、
P(工程=Xまたは「試験」|データ)−工程が、観察された結果を以下の式に与える試験である可能性
P(工程=Yまたは「対照」|データ)
の比をとることによって見いだす。これは可能性比である。
【0091】
第二条件p(工程=X)/p(工程=Y)は、事前オッズであり、いずれかの可能性が等しくあり得るという推定下無視される。分類子の性能特性と、試験または対照いずれかとして分類された細胞の数を考慮して、二項係数を使用して可能性比を見いだした。
【0092】
aおよびbは、それぞれ細胞試験または対照とラベルされている概分類子の可能性であり、xおよびyは、試験または対照と分類された細胞の数である。非常に小さな数を除すことに関する問題を避けるために、対数を使用して、各モデルに対する可能性を計算し、2つの対数間の差を報告する。この値は、図中に報告した予測値である。予測値は典型的には、多くの分類子、細胞株および数千の化合物にわたり、−2000〜+500の範囲であり、陰性値は、対照に対する類似性を予測し、陽性値は、試験に対する類似性を意味している。本戦略を図9に図示している。
【0093】
svm分類子は、化合物のmoa対照組に対して作成される。トレーニングセット試料を得た実験(本質的にはプレート)の数はNである。分類子検証統計を一覧表にし(True Posなど)、各svmの100化合物の試験組に対する精度と再現性を同様に一覧表にする。+1svm組および+2組両方に対して実施する。
【0094】
実施例3
データ組
アッセイを、一群として、細胞を播種し、投与し、固定し、染色したすべてのプレートで毎週実施した。化合物を各96ウェルプレートに対して二重に、6点用量反応で、5〜96ウェルに投与した。各プレート上で、DMSOの陰性対照を、投与する化合物と同一の濃度割合で加え、陽性対照タキソールおよびエトポキシドを単一濃度で加えた。これらの対照を用いて、各プレートに対するZプライム因子を計算し、細胞周期プロットからの染色強度を査定した。
【0095】
DAPI染色核のデジタル画像を取り込み、核を見つけるために分割し、各核に対して、強度、面積、形状および構造のような特徴を測定した。本発明者らは、画像と品質特徴を分割するために、CellProfilerを使用した。化合物を試験するときに、用量反応の各濃度からの試料画像を、視覚的に点検し、適切ならば、形態学的カテゴリーを割り当てた。適切なEC50決定と、用量の正しくない濃度範囲のような品質対照査定が注釈がつけられることを確実にした。個々の細胞データ、実験特性および手動検査結果を、化合物名、濃度および細胞株のような実験特性によって個々の細胞データを参照可能で、不十分な品質の実験からのデータを除去可能な特注ソフトウェアシステム内に保存した。
【0096】
図11は、増殖−アポトーシス−DNA含有量(PAD)アッセイからの実験データを図示しており、図12は、本方法によってスクリーンした不活性化合物に対して得た結果のグラフである。真の陰性および偽陽性に対する可能性スコアを示唆している。
【0097】
図13は、選択した分類子に対する再現率と精度を示している表である。分類子の堅牢性を増加させるまたは減少させるために、再現性および精度両方に対して、閾値を選んでよい。図14は、いくつかの分類子の平均再現率性能を図示しているグラフであり、一方図15は、いくかの分類子の平均精度性能を図示しているグラフである。
【0098】
実施例4
画像標準化
アッセイパラメータをできる限り一定に維持することによって、本アッセイにおける変動の第一供給源が、細胞密度と、細胞染色強度であることが究明された(図2を参照のこと)。本アッセイは、各週、バルクにて実施され、したがって、アッセイ強度と細胞密度は通常、各週内のアッセイ内で非常に類似であるが、週間では潜在的に異なる。
【0099】
多数の継代にわたる細胞増殖の比と、個々の細胞の播種における上下が、細胞密度における変動に寄与する。細胞継代値は、最終的には、5より大きく25より小さく制限された。細胞密度における他の変動の供給源は、制御することが難しいとわかったが、しかし細胞密度が相当最小の値である限り、EC50決定の品質と、パターン認識技術へ適用する能力は、細胞密度の差によって影響を受けないことが究明された。
【0100】
器具ランプ強度と染色の長さを含むいくつかの要素が、染色強度における変化に寄与した。この変動に対して埋め合わせをするために、画像を、各プレート内に含まれる対照に対して、各プレート内で標準化した。本技術によって、分類子識別における有意な改善がもたらされた。
【0101】
画像を、DMSO陰性対照の中央値フォアグラウンド強度をまず見つけることによって、各プレート内で標準化した。ついで、各処理画像に対して、その画像の中央値バックグランドを差し引き、結果を、対照中央値フォアグラウンドで除した。次いで、各画像を、以下の式、画像+オフセット/(マルチプル*(1−オフセット)=「標準化画像」にしたがって改変し、式中「オフセット」は、ゼロ以上の画像を取り上げ、「マルチプル」はDMSO対照以上であると合理的に推定されうる処置あたりの回数である。本方法は図3および図4にて図示しており、実験結果は、図2および図5にて示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)試験細胞の集団を、試験化合物に接触させて、接触試験細胞を提供すること、
b)前記接触試験細胞の多数の細胞学的特性に対する値を得ること、
c)前記値を用いて、前記接触試験細胞をスコア化し、多数の分類子の少なくとも1つに対して、可能性スコアを提供すること、を含み、
前記多数の分類子が、公知の作用機序の化合物と接触した細胞から得られた前記細胞学的特性に対する値を用いて定義される、
スクリーニング方法。
【請求項2】
前記スコア化が、
前記接触試験細胞の集団中の個々の細胞から得られた値を、分類子と比較すること、
個々の細胞が、前記分類子によって分類されるか、または分類されないかを決定すること、
分類子によって分類される接触試験細胞の前記集団中の個々の細胞の数と、前記分類子によって分類されない接触試験細胞の前記集団中の細胞の数を用いて、前記可能性スコアを計算すること、
によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、所望の作用機序を持つ試験化合物を同定することを含み、そこで所望の作用機序を持つ前記試験化合物が、公知の作用機序の化合物のものと同様である可能性スコアのプロファイルを持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試験化合物が、未知の作用機序を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スコア化が、ベイズの定理を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多数の分類子が、少なくとも10の分類子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞学的特性に、大きさ、染色強度、形態および構造が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記取得段階が、
a)前記接触試験細胞の画像を取り込むこと、および
b)前記画像を解析して、前記値を提供すること、
によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記取り込みが、自動化顕微鏡によって実施され、前記解析が、前記自動化顕微鏡に動作可能に連結したコンピュータによって実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
顕微鏡システムであって、
a)細胞集団の画像を取り込むための装置、および
b)i.前記画像を解析して、前記細胞の多数の細胞学的特性のための値を提供すること、
ii.前記値を用いて前記細胞のスコア化を行い、多数の分類子の少なくとも1つに対する可能性スコアを提供すること、
のためのプログラミングを含む、前記装置に動作可能に連結したコンピュータを含み、
前記多数の分類子を、公知の作用機序の化合物と接触させた細胞から得られた前記細胞学的特性に対する値を用いて定義する、
顕微鏡システム。
【請求項11】
前記装置が自動化顕微鏡である、請求項10に記載の顕微鏡システム。
【請求項12】
マルチ−ウェル培養プレートのウェル中で増殖した細胞の画像を標準化するための方法であって、
a)i.前記マルチ−ウェルプレートの第一ウェルに存在し、
ii.試験薬剤と接触した、細胞の第一画像の中央値バックグラウンドピクセル値を、前記第一画像のピクセル中から差し引き、第二画像を提供すること、
b)前記マルチ−ウェルプレートの第二ウェル中の未処理細胞の中央値フォアグラウンドピクセル値によって、前記第二画像のピクセル値を除し、それによって第三画像を提供すること、
を含む、方法。
【請求項13】
前記第三画像を再見積もりし、第三画像中のすべてのピクセルがゼロ以上であることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記マルチ−ウェルプレートのさらなるウェル中の、細胞画像に対して、前記方法を繰り返すことを含み、そこで前記さらなるウェルには、さらなる試験薬剤と接触した細胞が含まれ、前記方法が、さらなる第三画像を提供する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法を実施するための、実行可能な指令を含むコンピュータが読み込み可能なメディア。
【請求項16】
a)細胞の第一集団を、第一の公知作用機序を持つ第一化合物と接触させて、接触細胞の第一集団を提供すること、
b)細胞の第二集団を、第二の公知作用機序を持つ第二化合物と接触させて、接触細胞の第二集団を提供すること、
c)i.前記接触細胞第一集団、
ii.前記接触細胞第二集団、
iii.未処理細胞集団、
の多数の細胞学的特性に対する値を得ること、および
d)全体で接触細胞第一集団を、接触細胞第二集団および前記未処理細胞集団から区別する、前記細胞学的特性のそれぞれに対する値の範囲を同定すること、
を含む、表現型分類子を提供するための方法。
【請求項17】
さらに、細胞の第三の集団を、第三の公知作用機序を持つ第三化合物と接触させて、接触細胞の第三集団を提供すること、
前記接触細胞第三集団の前記多数の細胞学的特性に対する値を得ること、および
全体で接触細胞第一集団を、接触細胞第二集団、接触細胞第三集団および前記未処理細胞集団から区別する、前記細胞学的特性のそれぞれに対する値の範囲を同定すること、
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第一細胞集団と、前記未処理細胞集団を第一マルチ−ウェル中で増殖させ、さらに、
第二マルチ−ウェルプレート上で増殖する第二未処理細胞集団に対する値を得ること、
全体で第一接触細胞集団を、第二接触細胞集団、第一マルチ−ウェルプレート上で増殖した前記未処理細胞集団、および前記第二未処理細胞集団から区別する、前記細胞学的特性のそれぞれに対する値の範囲を同定すること、
を含む、請求子16に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞学的特性に、大きさ、染色強度、形態および構造が含まれる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
a)第三細胞集団を、前記第一化合物に接触させて、第三接触細胞集団を提供すること、
b)前記第三接触細胞集団の前記多数の細胞学的特性に対する値を得ること、および
c)前記値が、全体で接触細胞第一集団を、接触細胞第二集団および前記未処理細胞集団から区別する、値の範囲内であるかどうかを決定すること、
によって前記分類子の性能を決定することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項1】
a)試験細胞の集団を、試験化合物に接触させて、接触試験細胞を提供すること、
b)前記接触試験細胞の多数の細胞学的特性に対する値を得ること、
c)前記値を用いて、前記接触試験細胞をスコア化し、多数の分類子の少なくとも1つに対して、可能性スコアを提供すること、を含み、
前記多数の分類子が、公知の作用機序の化合物と接触した細胞から得られた前記細胞学的特性に対する値を用いて定義される、
スクリーニング方法。
【請求項2】
前記スコア化が、
前記接触試験細胞の集団中の個々の細胞から得られた値を、分類子と比較すること、
個々の細胞が、前記分類子によって分類されるか、または分類されないかを決定すること、
分類子によって分類される接触試験細胞の前記集団中の個々の細胞の数と、前記分類子によって分類されない接触試験細胞の前記集団中の細胞の数を用いて、前記可能性スコアを計算すること、
によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、所望の作用機序を持つ試験化合物を同定することを含み、そこで所望の作用機序を持つ前記試験化合物が、公知の作用機序の化合物のものと同様である可能性スコアのプロファイルを持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記試験化合物が、未知の作用機序を持つ、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スコア化が、ベイズの定理を用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多数の分類子が、少なくとも10の分類子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞学的特性に、大きさ、染色強度、形態および構造が含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記取得段階が、
a)前記接触試験細胞の画像を取り込むこと、および
b)前記画像を解析して、前記値を提供すること、
によって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記取り込みが、自動化顕微鏡によって実施され、前記解析が、前記自動化顕微鏡に動作可能に連結したコンピュータによって実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
顕微鏡システムであって、
a)細胞集団の画像を取り込むための装置、および
b)i.前記画像を解析して、前記細胞の多数の細胞学的特性のための値を提供すること、
ii.前記値を用いて前記細胞のスコア化を行い、多数の分類子の少なくとも1つに対する可能性スコアを提供すること、
のためのプログラミングを含む、前記装置に動作可能に連結したコンピュータを含み、
前記多数の分類子を、公知の作用機序の化合物と接触させた細胞から得られた前記細胞学的特性に対する値を用いて定義する、
顕微鏡システム。
【請求項11】
前記装置が自動化顕微鏡である、請求項10に記載の顕微鏡システム。
【請求項12】
マルチ−ウェル培養プレートのウェル中で増殖した細胞の画像を標準化するための方法であって、
a)i.前記マルチ−ウェルプレートの第一ウェルに存在し、
ii.試験薬剤と接触した、細胞の第一画像の中央値バックグラウンドピクセル値を、前記第一画像のピクセル中から差し引き、第二画像を提供すること、
b)前記マルチ−ウェルプレートの第二ウェル中の未処理細胞の中央値フォアグラウンドピクセル値によって、前記第二画像のピクセル値を除し、それによって第三画像を提供すること、
を含む、方法。
【請求項13】
前記第三画像を再見積もりし、第三画像中のすべてのピクセルがゼロ以上であることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
さらに、前記マルチ−ウェルプレートのさらなるウェル中の、細胞画像に対して、前記方法を繰り返すことを含み、そこで前記さらなるウェルには、さらなる試験薬剤と接触した細胞が含まれ、前記方法が、さらなる第三画像を提供する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法を実施するための、実行可能な指令を含むコンピュータが読み込み可能なメディア。
【請求項16】
a)細胞の第一集団を、第一の公知作用機序を持つ第一化合物と接触させて、接触細胞の第一集団を提供すること、
b)細胞の第二集団を、第二の公知作用機序を持つ第二化合物と接触させて、接触細胞の第二集団を提供すること、
c)i.前記接触細胞第一集団、
ii.前記接触細胞第二集団、
iii.未処理細胞集団、
の多数の細胞学的特性に対する値を得ること、および
d)全体で接触細胞第一集団を、接触細胞第二集団および前記未処理細胞集団から区別する、前記細胞学的特性のそれぞれに対する値の範囲を同定すること、
を含む、表現型分類子を提供するための方法。
【請求項17】
さらに、細胞の第三の集団を、第三の公知作用機序を持つ第三化合物と接触させて、接触細胞の第三集団を提供すること、
前記接触細胞第三集団の前記多数の細胞学的特性に対する値を得ること、および
全体で接触細胞第一集団を、接触細胞第二集団、接触細胞第三集団および前記未処理細胞集団から区別する、前記細胞学的特性のそれぞれに対する値の範囲を同定すること、
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第一細胞集団と、前記未処理細胞集団を第一マルチ−ウェル中で増殖させ、さらに、
第二マルチ−ウェルプレート上で増殖する第二未処理細胞集団に対する値を得ること、
全体で第一接触細胞集団を、第二接触細胞集団、第一マルチ−ウェルプレート上で増殖した前記未処理細胞集団、および前記第二未処理細胞集団から区別する、前記細胞学的特性のそれぞれに対する値の範囲を同定すること、
を含む、請求子16に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞学的特性に、大きさ、染色強度、形態および構造が含まれる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
a)第三細胞集団を、前記第一化合物に接触させて、第三接触細胞集団を提供すること、
b)前記第三接触細胞集団の前記多数の細胞学的特性に対する値を得ること、および
c)前記値が、全体で接触細胞第一集団を、接触細胞第二集団および前記未処理細胞集団から区別する、値の範囲内であるかどうかを決定すること、
によって前記分類子の性能を決定することを含む、請求項16に記載の方法。
【図1】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2−1】
【図2−2】
【図2−3】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2013−517459(P2013−517459A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548101(P2012−548101)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2011/020262
【国際公開番号】WO2011/087945
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(504294145)ライジェル ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (63)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2011/020262
【国際公開番号】WO2011/087945
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(504294145)ライジェル ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (63)
【Fターム(参考)】
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