説明

併用医薬

【課題】癌の予防・治療に有用でありかつ優れた薬効を有する医薬を提供する。
【解決手段】6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミドまたはその塩と、ラパマイシンもしくはその誘導体またはその塩を組み合わせてなる、癌を予防または治療するための医薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミドまたはその塩と、ラパマイシンもしくはその誘導体またはその塩を組み合わせてなる、癌を予防または治療するための医薬、ならびにこのような組み合わせ医薬による、癌の予防または治療方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
特許文献1(WO2009/107850)は、Hedgehogシグナル伝達系阻害活性を有し、癌の予防または治療に有用な化合物として、6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミドを記載している。
【0003】
ラパマイシン(CAS登録番号53123-88-9;シロリムス(Sirolimusu)とも呼ばれる)は、Streptomyces hygroscopicsにより産生されるマクロライド系抗生物質である。特許文献2(WO02/066019)には、ラパマイシンまたはその誘導体が固形腫瘍の治療に有用であることが記載されている。また、特許文献3(WO2007/059106)には、ラパマイシン、AP23573(デフォロリムス(Deforolimus)とも呼ばれる)、CC1779(テムシロリムス(Temsirolimus)とも呼ばれる)、RAD001(エベロリムス(Everolimus)とも呼ばれる)などのmTOR阻害剤で癌を治療する方法が記載されている。
非特許文献1(GASTROENTEROLOGY, 2009, 137, 1102-1113)は、Hedgehogシグナル伝達阻害剤であるシクロパミン(cyclopamine)またはCUR199691と、ラパマイシンと、ゲムシタビン(gemcitabine)の組み合わせによる処理が、in vitroとin vivoの両方で膵癌幹細胞を除去したことを記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2009/107850号
【特許文献2】国際公開第02/066019号
【特許文献3】国際公開第2007/059106号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】GASTROENTEROLOGY, 2009, 137, 1102-1113
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
癌の予防・治療に有用でありかつ優れた薬効を有する医薬の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミドとラパマイシンとの組み合わせが、優れた抗腫瘍活性を有することを見出し、鋭意研究を行い、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、
[1] 6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミドまたはその塩と、ラパマイシンもしくはその誘導体またはその塩を組み合わせてなる、癌を予防または治療するための医薬;
[2] 6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミドまたはその塩の治療有効量と、ラパマイシンもしくはその誘導体またはその塩の治療有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする、該哺乳動物における癌の予防または治療方法;
等に関する。
【発明の効果】
【0009】
6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミドまたはその塩と、ラパマイシンもしくはその誘導体またはその塩を組み合わせることにより、それぞれを単独で用いた場合と比べて、癌の予防または治療効果の向上や副作用の低減等の優れた効果を得ることができる。
【0010】
[発明の詳細な説明]
本明細書中、「6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミドまたはその塩と、ラパマイシンもしくはその誘導体またはその塩を組み合わせてなる、癌を予防または治療するための医薬」を、「本発明の医薬」と称する場合がある。
本明細書中、「6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミドまたはその塩」を「化合物(A)」と称する場合がある。
本明細書中、「6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミド」を「化合物(Aa)」と称する場合がある。
本明細書中、「ラパマイシンもしくはその誘導体またはその塩」を「化合物(B)」と称する場合がある。
【0011】
本明細書中、「金属塩」とは、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩を意味する。
本明細書中、「有機塩基」とは、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6−ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン等との塩を意味する。
本明細書中、「無機酸」とは、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩を意味する。
本明細書中、「有機酸」とは、例えば、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等との塩を意味する。
本明細書中、「塩基性アミノ酸」とは、例えば、アルギニン、リジン、オルニチン等との塩を意味する。
本明細書中、「酸性アミノ酸」とは、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸等との塩を意味する。
本明細書中、「薬学的に許容し得る塩」とは、例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合には、アルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩)等の無機塩、アンモニウム塩を意味し、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等の無機酸との塩、または酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸との塩を意味する。
【0012】
本明細書中、「プロドラッグ」とは、生体内における生理条件下で酵素や胃酸等による反応により活性本体(例えば、化合物(A)、化合物(B))に変換する化合物(すなわち、酵素的に酸化、還元、加水分解等を起こして活性本体に変化する化合物、胃酸等により加水分解等を起こして活性本体に変化する化合物)を意味する。
プロドラッグの具体例としては、活性本体のアミノがアシル化、アルキル化、リン酸化された化合物(例えば、活性本体のアミノがエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、tert-ブチル化された化合物);活性本体のヒドロキシがアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、活性本体のヒドロキシがアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、スクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化された化合物);活性本体のカルボキシがエステル化、アミド化された化合物(例えば、活性本体のカルボキシがエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化された化合物);等が挙げられる。
このようなプロドラッグ化合物は、自体公知の方法によって活性本体から製造することができる。
また、プロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻分子設計163頁から198頁に記載されているような生理的条件で活性本体に変化するものであってもよい。
【0013】
本明細書中、化合物(A)における塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性アミノ酸との塩、酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。これらのうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。
【0014】
化合物(A)は、WO2009/107850の記載に従い、自体公知の方法によって製造することができる。
【0015】
化合物(B)におけるラパマイシンの誘導体としては、例えば、WO94/09010に記載されるエベロリムス(Everolimus)(CAS登録番号159351-69-6)などの誘導体、WO95/28406に記載されるテムシロリムス(Temsirolimus)(CAS登録番号162635-04-3)などの誘導体、US7,091,213に記載されるデフォロリムス(Deforolimus)(CAS登録番号572924-54-0)などの誘導体、WO95/16691に記載される誘導体、WO96/41807に記載される誘導体などが挙げられる。
ラパマイシンおよびその誘導体は、自体公知の方法により製造することができる。例えば、ラパマイシンはUS3,929,992に従って、エベロリムスはWO94/09010に従って、テムシロリムスはWO95/28406に従って、デフォロリムスはUS7,091,213に従って製造することができる。
【0016】
化合物(B)における塩としては、例えば、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性アミノ酸との塩、酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。
【0017】
一つの実施形態では、化合物(B)は、好ましくは、ラパマイシン、エベロリムス、テムシロリムス、デフォロリムスまたはその塩である。
【0018】
化合物(A)および化合物(B)は、結晶であってもよく、結晶形が単一であっても結晶形混合物であってもよい。
化合物(A)および化合物(B)はまた、共結晶であってもよい。
化合物(A)および化合物(B)はまた、水和物であっても、非水和物であっても、溶媒和物であっても、無溶媒和物であってもよい。
化合物(A)および化合物(B)はまた、同位元素(例、H、H、14C、35S、125I)で標識されていてもよい。
化合物(A)および化合物(B)はまた、プロドラッグであってもよい。
化合物(A)および化合物(B)が、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体等の異性体を有する場合には、いずれか一つの異性体であっても、異性体の混合物であってもよい。
【0019】
本発明の医薬は、哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、サル、ヒト)における、癌(例、大腸癌(例、結腸癌、直腸癌、肛門癌、家族性大腸癌、遺伝性非ポリポーシス大腸癌、消化管間質腫瘍)、肺癌(例、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、悪性中皮腫)、中皮腫、膵癌(例、膵管癌、膵内分泌腫瘍)、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、食道癌、胃癌(例、乳頭腺癌、粘液性腺癌、腺扁平上皮癌)、十二指腸癌、小腸癌、乳癌(例、浸潤性乳管癌、非浸潤性乳管癌、炎症性乳癌)、卵巣癌(例、上皮性卵巣癌、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣性胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍)、精巣腫瘍、前立腺癌(例、ホルモン依存性前立腺癌、ホルモン非依存性前立腺癌)、肝臓癌(例、肝細胞癌、原発性肝癌、胆管癌、肝外胆管癌)、甲状腺癌(例、甲状腺髄様癌)、腎臓癌(例、腎細胞癌、腎盂と尿管の移行上皮癌)、子宮癌(例、子宮頚部癌、子宮体部癌、子宮肉腫)、脳腫瘍(例、髄芽細胞腫、神経膠腫、松果体星細胞腫瘍、毛様細胞性星細胞腫、びまん性星細胞腫、退形成性星細胞腫、下垂体線腫)、網膜芽細胞腫、皮膚癌(例、基底細胞腫、悪性黒色腫)、肉腫(例、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、軟部肉腫)、悪性骨腫瘍、膀胱癌、血液癌(例、多発性骨髄腫、白血病、悪性リンパ腫、ホジキン病、慢性骨髄増殖性疾患)、原発不明癌)の増殖阻害剤、癌の転移抑制剤、アポトーシス促進剤等の医薬として用いられる。
特に、本発明の医薬は、脳腫瘍、皮膚癌、肺癌、膵癌、肝臓癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、肉腫および乳癌に対して有効であり、なかでも、神経膠腫、髄芽細胞腫、基底細胞腫、小細胞肺癌、膵癌、胆管癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、大腸癌、横紋筋肉腫および乳癌に有効である。
【0020】
本発明の医薬の投与形態は、特に限定されず、化合物(A)と化合物(B)とが生体内で共存するように投与されればよい。
このような投与形態としては、例えば、
(1)化合物(A)と化合物(B)とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与;
(2)化合物(A)と化合物(B)とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与;
(3)化合物(A)と化合物(B)とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与(例えば、化合物(A)、次いで、化合物(B)の順序での投与、あるいはこの逆の順序での投与);
(4)化合物(A)と化合物(B)とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与;
(5)化合物(A)と化合物(B)とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、化合物(A)、次いで、化合物(B)の順序での投与、あるいはこの逆の順序での投与)などが用いられる。
【0021】
本発明の医薬は、化合物(A)および化合物(B)をそのままあるいは薬理学的に許容される担体を配合し、経口的または非経口的に投与することができる。
化合物(A)および化合物(B)を経口投与する場合の剤形としては、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、マイクロカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。
また、化合物(A)および化合物(B)を非経口投与する場合の剤形としては、例えば、注射剤、注入剤、点滴剤、坐剤等が挙げられる。
また、化合物(A)および化合物(B)を、適当な基剤(例、酪酸の重合体、グリコール酸の重合体、酪酸−グリコール酸の共重合体、酪酸の重合体とグリコール酸の重合体との混合物、ポリグリセロール脂肪酸エステル)と組み合わせ徐放性製剤とすることも有効である。
【0022】
本発明の医薬を上記の剤形に製造する方法としては、当該分野で一般的に用いられている公知の製造方法を適用することができる。また、上記の剤形に製造する場合には、必要に応じて、その剤形に製造する際に製剤分野において通常用いられる賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤等の添加剤を適宜、適量含有させて製造することができる。
【0023】
例えば、化合物(A)と化合物(B)を、
(1)錠剤として製造する場合には、化合物(A)および/または化合物(B)に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を含有させて製造することができ;
(2)丸剤及び顆粒剤として製造する場合には、化合物(A)および/または化合物(B)に、賦形剤、結合剤、崩壊剤等を含有させて製造することができ;
(3)散剤及びカプセル剤として製造する場合には、化合物(A)および/または化合物(B)に賦形剤等を含有させて製造することができ;
(4)シロップ剤として製造する場合には、化合物(A)および/または化合物(B)に甘味剤等を含有させて製造することができ;
(5)乳剤または懸濁剤に製する場合には、化合物(A)および/または化合物(B)に、界面活性剤、懸濁化剤、乳化剤等を含有させて製造することができる。
【0024】
賦形剤の例としては、乳糖、白糖、ブドウ糖、でんぷん、蔗糖、微結晶セルロース、カンゾウ末、マンニトール、炭酸水素ナトリウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
結合剤の例としては、5ないし10重量%デンプンのり液、10ないし20重量%アラビアゴム液またはゼラチン液、1ないし5重量%トラガント液、カルボキシメチルセルロース液、アルギン酸ナトリウム液、グリセリン等が挙げられる。
崩壊剤の例としては、でんぷん、炭酸カルシウム等が挙げられる。
滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、精製タルク等が挙げられる。
甘味剤の例としては、ブドウ糖、果糖、転化糖、ソルビトール、キシリトール、グリセリン、単シロップ等が挙げられる。
界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ステアリン酸ポリオキシル40等が挙げられる。
懸濁化剤の例としては、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ベントナイト等が挙げられる。
乳化剤の例としては、アラビアゴム、トラガント、ゼラチン、ポリソルベート80等が挙げられる。
【0025】
更に、本発明の医薬を上記の剤形に製造する場合には、所望により、製剤分野において通常用いられる着色剤、保存剤、芳香剤、矯味剤、安定剤、粘稠剤等、適宜、適量添加することができる。
【0026】
注射剤としては、静脈注射剤のほか、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等が含まれ、また持続性製剤としては、イオントフォレシス経皮剤等が含まれる。
【0027】
かかる注射剤は、自体公知の方法、すなわち、化合物(A)および/または化合物(B)を、無菌の水性液もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製される。注射用の水性液としては生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウム)等が挙げられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80、HCO−50)等と併用してもよい。油性液としては、ゴマ油、大豆油等が挙げられ、溶解補助剤として、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等と併用してもよい。また、緩衝剤(例、リン酸緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン)、安定剤(例、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコール)、保存剤(例、ベンジルアルコール、フェノール)等と配合してもよい。調製された注射液は、通常、アンプルに充填される。
【0028】
本発明の医薬における化合物(A)と化合物(B)との配合比は、投与対象、投与ルート、疾患等により適宜選択することができる。
例えば、本発明の医薬における化合物(A)の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01ないし99.99重量%、好ましくは約0.1ないし50重量%、さらに好ましくは約0.5ないし20重量%程度である。
本発明の医薬における化合物(B)の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01ないし99.99重量%、好ましくは約0.1ないし50重量%、さらに好ましくは約0.5ないし20重量%程度である。
本発明の医薬における添加剤の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01ないし99.99重量%、好ましくは約10ないし90重量%程度である。
また、化合物(A)と化合物(B)をそれぞれ別々に製剤化する場合も同様の含有量でよい。
【0029】
本発明の医薬は、安定かつ低毒性で安全に使用することができる。その1日の投与量は患者の状態や体重、化合物の種類、投与経路等によって異なるが、例えば、癌治療目的で患者に経口投与する場合には、成人(体重約60kg)1日当りの投与量は、化合物(A)および化合物(B)として、それぞれ、通常、約1ないし約1000mg、好ましくは約3ないし約300mg、さらに好ましくは約10ないし約200mgであり、これらを1回または2ないし3回に分けて投与することができる。
【0030】
本発明の医薬を非経口的に投与する場合は、通常、液剤(例、注射剤)の形で投与する。その1回投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法等によっても異なるが、例えば、注射剤の場合、化合物(A)および化合物(B)として、それぞれ、通常、体重1kgあたり約0.01ないし約100mg、好ましくは約0.01ないし約50mg、より好ましくは約0.01ないし約20mgを、静脈注射により投与することができる。
【0031】
化合物(A)と化合物(B)との組み合わせは、さらに、他の薬物を組み合わせて用いてもよい。
このような、他の薬物としては、ホルモン療法剤、化学療法剤、免疫療法剤または細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤が挙げられる。
あるいは、化合物(A)と複数種の化合物(B)とを組み合わせてもよい。
【0032】
「ホルモン療法剤」としては、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、アリルエストレノール、ゲストリノン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキシフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン)、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、LH−RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害薬(例、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン)、抗アンドロゲン(例、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド)、5α−レダクターゼ阻害薬(例、フィナステリド、エプリステリド)、副腎皮質ホルモン系薬剤(例、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン)、アンドロゲン合成阻害薬(例、アビラテロン)、レチノイドおよびレチノイドの代謝を遅らせる薬剤(例、リアロゾール)、甲状腺ホルモン、およびそれらのDDS(Drug Delivery System)製剤等が用いられる。
【0033】
「化学療法剤」としては、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤等が用いられる。
【0034】
「アルキル化剤」としては、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、クロラムブチル、シクロフォスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロフォスファミド、ジノスタチンスチマラマー、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシンおよびそれらのDDS製剤等が用いられる。
【0035】
「代謝拮抗剤」としては、例えば、メルカプトプリン、6−メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、ペメトレキセド、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5−FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール、カペシタビン)、アミノプテリン、ネルザラビン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチン、ベンダムスチンおよびそれらのDDS製剤等が用いられる。
【0036】
「抗癌性抗生物質」としては、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシンおよびそれらのDDS製剤等が用いられる。
【0037】
「植物由来抗癌剤」としては、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビンおよびそれらのDDS製剤等が用いられる。
【0038】
「免疫療法剤(BRM)」としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン、インターロイキン、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポイエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウムパルブム、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾール、抗CTLA4抗体等が用いられる。
【0039】
「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」における「細胞増殖因子」としては、細胞の増殖を促進する物質であればどのようなものでもよく、通常、分子量が20,000以下のペプチドで、受容体との結合により低濃度で作用が発揮される因子が挙げられ、具体的には、
(1)EGF(epidermal growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、TGFα〕、(2)インシュリンまたはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、インシュリン、IGF(insulin-like growth factor)−1、IGF−2〕、(3)FGF(fibroblast growth factor)またはそれと実質的に同一の活性を有する物質〔例、酸性FGF、塩基性FGF、KGF(keratinocyte growth factor)、FGF−10〕、(4)その他の細胞増殖因子〔例、CSF(colony stimulating factor)、EPO(erythropoietin)、IL−2(interleukin-2)、NGF(nerve growth factor)、PDGF(platelet-derived growth factor)、TGFβ(transforming growth factor β)、HGF(hepatocyte growth factor)、VEGF(vascular endothelial growth factor)、ヘレグリン、アンジオポエチン〕が用いられる。
【0040】
「細胞増殖因子の受容体」としては、上記の細胞増殖因子と結合能を有する受容体であればいかなるものであってもよく、具体的には、EGF受容体、ヘレグリン受容体(例、HER3)、インシュリン受容体阻害剤、IGF受容体−1、IGF受容体−2、FGF受容体−1またはFGF受容体−2、VEGF受容体、アンジオポエチン受容体(例、Tie2)、PDGF受容体、c−MET、c−Kit、Trk等が用いられる。
【0041】
「細胞増殖因子ならびにその受容体の作用を阻害する薬剤」としては、EGF阻害剤、TGFα阻害剤、ヘレグリン阻害剤、インシュリン阻害剤、IGF阻害剤、FGF阻害剤、KGF阻害剤、CSF阻害剤、EPO阻害剤、IL−2阻害剤、NGF阻害剤、PDGF阻害剤、TGFβ阻害剤、HGF阻害剤、VEGF阻害剤、アンジオポエチン阻害剤、EGF受容体阻害剤、HER2阻害剤、HER4阻害剤、インシュリン受容体、IGF−1受容体阻害剤、IGF−2受容体阻害剤、FGF受容体−1阻害剤、FGF受容体−2阻害剤、FGF受容体−3阻害剤、FGF受容体−4阻害剤、VEGF受容体阻害剤、Tie−2阻害剤、PDGF受容体阻害剤、Abl阻害剤、Raf阻害剤、FLT3阻害剤、c−Kit阻害剤、Src阻害剤、PKC阻害剤、Trk阻害剤、Ret阻害剤、mTOR阻害剤、MEK(MEK1/2)阻害剤、MET阻害剤、Akt阻害剤、ERK阻害剤等が用いられる。より具体的に例示すると、抗VEGF抗体(例、Bevacizumab)、抗HER2抗体(例、Trastuzumab、Pertuzumab)、抗EGFR抗体(例、Cetuximab、Panitumumab、Matuzumab、Nimotuzumab)、抗VEGFR抗体、Imatinib mesylate、Erlotinib、Gefitinib、Sorafenib、Sunitinib、Dasatinib、Lapatinib、Vatalanib、4-(4-フルオロ-2-メチル-1H-インドール-5-イルオキシ)-6-メトキシ-7-[3-(1-ピロリジニル)プロポキシ]キナゾリン(AZD-2171)、Lestaurtinib、Pazopanib、Canertinib、Tandutinib、3-(4-ブロモ-2,6-ジフルオロベンジルオキシ)-5-[3-[4-(1-ピロリジニル)ブチル]ウレイド]イソチアゾール-4-カルボキサミド(CP-547632)、Axitinib、N-(3,3-ジメチル-2,3-ジヒドロ-1H-インドール-6-イル)-2-(ピリジン-4-イルメチルアミノ)ピリジン-3-カルボキサミド(AMG-706)、Nilotinib、6-[4-(4-エチルピペラジン-1-イルメチル)フェニル]-N-[1(R)-フェニルエチル]-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-アミン(AEE-788)、Vandetanib、Enzastaurin、N-[4-[4-(4-メチルピペラジン-1-イル)-6-(3-メチル-1H-ピラゾール-5-イルアミノ)ピリミジン-2-イルスルファニル]フェニル]シクロプロパンカルボキサミド(VX-680)、リン酸 2-[N-[3-[4-[5-[N-(3-フルオロフェニル)カルバモイルメチル]-1H-ピラゾール-3-イルアミノ]キナゾリン-7-イルオキシ]プロピル]-N-エチルアミノ]エチル エステル(AZD-1152)、4-[9-クロロ-7-(2,6-ジフルオロフェニル)-5H-ピリミド[5,4-d][2]ベンズアゼピン-2-イルアミノ]安息香酸(MLN-8054)、N-[2-メトキシ-5-[(E)-2-(2,4,6-トリメトキシフェニル)ビニルスルホニルメチル]フェニル]グリシン ナトリウム塩(ON-1910Na)、4-[8-シクロペンチル-7(R)-エチル-5-メチル-6-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロプテリジン-2-イルアミノ]-3-メトキシ-N-(1-メチルピペリジン-4-イル)ベンズアミド(BI-2536)、5-(4-ブロモ-2-クロロフェニルアミノ)-4-フルオロ-1-メチル-1H-ベンズイミダゾール-6-カルボヒドロキサム酸 2-ヒドロキシエチル エステル(AZD-6244)、N-[2(R),3-ジヒドロキシプロポキシ]-3,4-ジフルオロ-2-(2-フルオロ-4-ヨードフェニルアミノ)ベンズアミド(PD-0325901)等が用いられる。
【0042】
上記の薬剤の他に、細胞周期阻害薬(例、Aurora A阻害薬、Aurora B阻害薬、PLK阻害薬、CDK阻害薬)、アポトーシス誘導薬(例、Bcl−2阻害薬、IAP阻害薬、Nedd−8阻害薬)プロテアソーム阻害薬(例、ボルテゾミブ)、ヘッジホッグシグナル阻害薬(例、Vismodegib、LDE225、IPI-926)、Wntシグナル阻害薬(例、β−カテニン/TCF阻害薬、抗Wnt抗体)、Notchシグナル阻害薬(例、抗Notch抗体、γ−セクレターゼ阻害薬)、L−アスパラギナーゼ、アセグラトン、塩酸プロカルバジン、プロトポルフィリン・コバルト錯塩、水銀ヘマトポルフィリン・ナトリウム、トポイソメラーゼI阻害薬(例、イリノテカン、トポテカン)、トポイソメラーゼII阻害薬(例、ソブゾキサン)、分化誘導剤(例、レチノイド、ビタミンD類)、他の血管新生阻害薬(例、フマギリン、さめ抽出物、COX-2阻害薬)、α−ブロッカー(例、塩酸タムスロシン)、ビスホスホン酸(例、パミドロネート、ゾレドロネート)、サリドマイド、5−アザシチジン、デシタビン、抗CD20抗体等の抗腫瘍性抗体、毒素標識抗体等も用いることができる。
【実施例】
【0043】
本発明は更に、以下の実施例によって詳しく説明されるが、これらは本発明を限定するものではなく、また本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
【0044】
実施例1
6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミド(「化合物(Aa)」)とラパマイシンとの併用抗腫瘍効果の評価を、ヒト膵癌株PAN-04(財団法人実験動物中央研究所)のヌードマウス皮下移植モデルを用いて行った。
【0045】
(試験化合物)
化合物(Aa)をWO2009/107850の実施例143に従って合成した。
ラパマイシンをLKBラボラトリーズ(St. Paul, MN, USA)から入手した。
【0046】
(試験化合物の併用抗腫瘍試験)
8週齢の雌ヌードマウスの皮下にPAN-04腫瘍塊(約8 mm3)をトラカールで移植し、マウス皮下で腫瘍を増殖させた。腫瘍サイズが126から236 mm3に達した時点で、マウスを(1)Vehicle投与群(n = 5)、(2)化合物(Aa)投与群(25 mg/kg, PO, QD, n = 5)、(3)ラパマイシン投与群(1 mg/kg, IP, QD, n = 5)、ならびに(4)化合物(Aa)(25 mg/kg, PO, QD)およびラパマイシン(1 mg/kg, IP, QD)併用投与群(n = 5)に群分けした。Vehicleとして、化合物(Aa)には0.5%メチルセルロースを、ラパマイシンには0.5% PEG400, 5% Tween 80を用い、Vehicle投与群にはこれら両方のVehicleを投与した。投与は一日一回で15日間行い、投与前ならびに投与2, 6, 9, 12, 15日目の腫瘍サイズならびに体重を測定した。有意差検定は、Vehicleとそれぞれの試験化合物投与群との間は1-tailed Dunnett’s検定で行い、p≦0.025の場合を有意な差と判定した。また併用投与群と単独投与群との間はStudent’s t-検定で行い、p≦0.05の場合を有意な差として判定した。抗腫瘍活性は、T/C= ((化合物投与群の投与終了時の腫瘍サイズ)−(化合物投与群の投与開始時の腫瘍サイズ))/ ((対照群の投与終了時の腫瘍サイズ)−(対照群の投与開始時の腫瘍サイズ))×100で算出した。
化合物(Aa)およびラパマイシンをそれぞれ単独で投与したところ、有意な抗腫瘍活性が認められた(それぞれT/C = 53%および27%)。化合物(Aa)とラパマイシンを併用した場合、それぞれの単剤よりも強い抗腫瘍活性(T/C = 9%)が認められた。併用時の抗腫瘍活性は、化合物(Aa)単独あるいはラパマイシン単独の抗腫瘍活性のいずれと比較しても有意に向上していた。
これらの結果は、化合物(Aa)とラパマイシンとの併用時の抗腫瘍活性が、それぞれの単剤の抗腫瘍活性と比較して優れていることを示す。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、化合物(A)と化合物(B)とを組み合わせることにより、それぞれを単独で用いた場合と比べて、癌の予防または治療効果の向上や副作用の低減等の優れた効果を得ることができる。従って、化合物(A)と化合物(B)との組み合わせは、新たな併用医薬として、癌の予防または治療方法に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミドまたはその塩と、ラパマイシンもしくはその誘導体またはその塩を組み合わせてなる、癌を予防または治療するための医薬。
【請求項2】
6−エチル−N−[1−(ヒドロキシアセチル)ピペリジン−4−イル]−1−メチル−4−オキソ−5−(2−オキソ−2−フェニルエチル)−3−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−4,5−ジヒドロ−1H−ピロロ[3,2−c]ピリジン−2−カルボキサミドまたはその塩の治療有効量と、ラパマイシンもしくはその誘導体またはその塩の治療有効量を哺乳動物に投与することを特徴とする、該哺乳動物における癌の予防または治療方法。

【公開番号】特開2012−97032(P2012−97032A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245830(P2010−245830)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000002934)武田薬品工業株式会社 (396)
【Fターム(参考)】