説明

使い捨ておむつ

【課題】スキンコンタクトシートとトップシートとの間に大きい空間を形成することができ、便の収容能力に優れ、スキンコンタクトシートがトップシートの後身頃側の領域のみを被覆するように配置された場合でも、スキンコンタクトシートを着用者の肌に密着させることが可能な使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】トップシート18の表面には、立体的に起立可能な一対のスキンコンタクトシート支持壁26a,26bが付設され、スキンコンタクトシート24は、前端部がトップシート18の股下部4の上方に、後端部がトップシート18の後身頃6の上方に位置するように配置されるとともに、一対のスキンコンタクトシート支持壁26a,26bの間を架橋するように固定されて、トップシート18の股下部4領域及び後身頃6領域の少なくとも一部を被覆している使い捨ておむつ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体、トップシート、バックシートに加えて、トップシートの上方に配置されるスキンコンタクトシートを備えた使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、乳幼児用、或いは高齢者・障害者用のおむつとして、吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体の上面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、吸収体の下面を被覆するように配置されたバックシートとを備えた使い捨ておむつが汎用されている。この使い捨ておむつは、トップシートの表面を着用者の肌に接するように宛がって使用することにより、着用者の排泄した尿はトップシートを透過して、吸収体によって吸収・保持されるとともに、防漏性に優れたバックシートによって、排泄物のおむつ外部への漏洩が防止されるものである。
【0003】
しかしながら、前記のような構成の使い捨ておむつでは、尿はトップシートを透過するものの、便はその殆どがトップシートを透過せず、トップシート上に残存してしまう。トップシート上に残存した便は、着用者の股下部や臀部に付着するため、煩瑣な払拭作業が必要となり、育児負担や介護負担を増大させる原因となる他、着用者のスキントラブルの原因ともなっていた。このような問題は、着用者の排泄した便が軟便であった場合等には、一層顕在化することになる。
【0004】
そこで、トップシートの上方に更にもう1枚のシート体(本明細書では、「スキンコンタクトシート」と称することにする。)が配置された使い捨ておむつが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。これらの使い捨ておむつでは、スキンコンタクトシートに便を通過させ得る開口部(便通過用開口部)が形成されている。従って、使用時において、着用者の排泄した便は、スキンコンタクトシートの便通過用開口部を通過して、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間に落下するように構成されている。
【0005】
前記のような使い捨ておむつでは、着用者の肌には、まずスキンコンタクトシートが接触するため、スキンコンタクトシートの下方に配置されるトップシートは着用者の肌と直接接触し難くなる。即ち、着用者の肌とトップシートとが離隔されることになる。また、トップシートと着用者の肌との間にスキンコンタクトシートという遮蔽層が介在していることにもなる。従って、たとえトップシート上に便が残存していたとしても、その便と着用者の肌とが直接接触する機会を大幅に減少させる効果を期待することができる。
【0006】
最近では、スキンコンタクトシートがトップシートの後身頃側の領域のみを被覆するように配置された使い捨ておむつも開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第2559050号公報
【特許文献2】特開2002−11044号公報
【特許文献3】特開2007−125259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従前のスキンコンタクトシートを備えた使い捨ておむつは、スキンコンタクトシートとトップシートとの間に大きい空間が形成され難いという問題があった。即ち、便の収容能力という点においては十分に満足できるものではないという問題があった。
【0009】
また、特許文献3に記載の使い捨ておむつのように、スキンコンタクトシートがトップシートの後身頃側の領域のみを被覆するように配置された場合、スキンコンタクトシートを着用者の肌に密着させることが困難であるという問題があり、未だ解決すべき課題を残すものであった。
【0010】
このように、現在のところ、スキンコンタクトシートとトップシートとの間に大きい空間を形成することができ、便の収容能力に優れ、スキンコンタクトシートがトップシートの後身頃側の領域のみを被覆するように配置された場合でも、スキンコンタクトシートを着用者の肌に密着させることが可能な使い捨ておむつは開示されておらず、そのような使い捨ておむつが切望されている。
【0011】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであって、スキンコンタクトシートとトップシートとの間に大きい空間を形成することができ、便の収容能力に優れ、スキンコンタクトシートがトップシートの後身頃側の領域のみを被覆するように配置された場合でも、スキンコンタクトシートを着用者の肌に密着させることが可能な使い捨ておむつを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、従前の使い捨ておむつにおいては、スキンコンタクトシートをトップシートに対して直接固定することが多く、この構成に起因して、スキンコンタクトシートとトップシートとの間に十分な空間を形成し難い場合があるという知見を得た。そして、スキンコンタクトシートを支持する一対の壁状部材(スキンコンタクトシート支持壁)を付設し、その一対の支持壁の間を架橋するように、スキンコンタクトシートを固定することによって、上記課題が解決されることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の使い捨ておむつが提供される。
【0013】
[1] 前身頃、股下部、後身頃の各部から形成され、吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の上面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の下面を被覆するように配置されたバックシートと、便通過用開口部が形成され、前記トップシートの上方に配置されたスキンコンタクトシートとを備え、前記トップシートの表面には、前記吸収体の各側縁に沿って、立体的に起立可能な一対のスキンコンタクトシート支持壁が付設され、前記スキンコンタクトシートは、前端部が前記トップシートの股下部の上方に、後端部が前記トップシートの後身頃の上方に位置するように配置されるとともに、前記一対のスキンコンタクトシート支持壁の間を架橋するように固定されて、前記トップシートの股下部領域及び後身頃領域の少なくとも一部を被覆している使い捨ておむつ。
【0014】
[2] 前記スキンコンタクトシートは、その両側縁が、前記スキンコンタクトシート支持壁の起立線と上端縁との間の部分に固定されている前記[1]に記載の使い捨ておむつ。
【0015】
[3] 前記スキンコンタクトシートは、その両側縁が、前記トップシートの表面に固定されるとともに、起立線と前記便通過用開口部の間の部分が、前記スキンコンタクトシート支持壁の起立線と上端縁との間の部分に固定されている前記[1]に記載の使い捨ておむつ。
【0016】
[4] 前記スキンコンタクトシート支持壁が、おむつの前後方向に沿って、起立用伸縮材が配置されたものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の使い捨ておむつ。
【0017】
[5] 通気撥水性シートからなり、前記スキンコンタクトシートと前記トップシートとの間に形成される空間を前身頃側の空間から仕切る尿便分離壁を有し、前記尿便分離壁は、前記通気撥水性シートの一端が前記スキンコンタクトシートの前端部に接合され、他端が前記トップシートの表面まで垂下されることによって形成されたものである前記[1]〜[4]のいずれかに記載の使い捨ておむつ。
【0018】
[6] 前記スキンコンタクトシートの前端部が、前記トップシートの表面に接合され、前記スキンコンタクトシートと前記トップシートとの間に形成される空間が、前身頃側の空間から仕切られている前記[1]〜[4]のいずれかに記載の使い捨ておむつ。
【0019】
[7] 前記スキンコンタクトシートが、前記便通過用開口部の外縁に開口部伸縮材が配置されたものである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の使い捨ておむつ。
【0020】
[8] 前記スキンコンタクトシートが、伸縮性シートからなるものである前記[1]〜[6]のいずれかに記載の使い捨ておむつ。
【0021】
[9] 前記トップシートの表面のうち、前記一対のスキンコンタクトシート支持壁の起立線より更に外側の領域に、立体的に起立可能な防漏壁である、一対の立体ギャザーが付設されている前記[1]〜[8]のいずれかに記載の使い捨ておむつ。
【発明の効果】
【0022】
本発明の使い捨ておむつは、スキンコンタクトシートとトップシートとの間に大きい空間を形成することができ、便の収容能力に優れる。そして、スキンコンタクトシートがトップシートの後身頃側の領域のみを被覆するように配置された場合でも、スキンコンタクトシートを着用者の肌に密着させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の使い捨ておむつを実施するための最良の形態について、2ピースタイプのパンツ型おむつを例として具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える使い捨ておむつを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、作図の都合上、図3〜図10については脚周り伸縮材を、図4及び図9についてはスキンコンタクトシートと通気撥水性シートとの接合部を捨象した形で作図を行った。
【0024】
本明細書において「パンツ型おむつ」というときは、図1及び図2に示す使い捨ておむつ1のように、前身頃2と後身頃6の対応する側縁部同士(側縁部2a,6a、側縁部2b,6b)を接合することによって、接合部8、一つのウエスト周り開口部10及び一対の脚周り開口部12a,12bが形成され、予めパンツ型に構成されたおむつを意味するものとする。
【0025】
そして、「2ピースタイプ」とは、図1及び図2に示す使い捨ておむつ1のように、着用者の排泄物を吸収し、保持する機能(吸収・保持機能)を担う吸収性本体14と、着用者の身体を被包する機能(装着機能)を担う外装部材16とから構成され、外装部材16の内側に吸収性本体14が配置されたタイプのおむつを意味するものとする。図3に示すように、吸収性本体14は吸収体22、トップシート18及びバックシート20を構成要素として備えた部材である。
【0026】
更に、「前身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の腹側(身体前方)を覆う部分、「股下部」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の股下を覆う部分、「後身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の背側(身体後方)を覆う部分を意味するものとする。
【0027】
[1]使い捨ておむつ:
本発明の使い捨ておむつは、図1〜図7に示す使い捨ておむつ1のように、トップシート18の表面に、吸収体22の各側縁に沿って、立体的に起立可能な一対のスキンコンタクトシート支持壁26(26a,26b)が付設され、スキンコンタクトシート24は、前端部がトップシート18の股下部4の上方に、後端部がトップシート18の股下部4又は後身頃6の上方に位置するように配置されるとともに、一対のスキンコンタクトシート支持壁26(26a,26b)の間を架橋するように固定されて、トップシート18の股下部4領域及び後身頃6領域の少なくとも一部を被覆しているものである。
【0028】
このように、一対のスキンコンタクトシート支持壁を付設し、この支持壁の間に架橋するようにスキンコンタクトシートを固定することによって、スキンコンタクトシートを上面、トップシートを底面、スキンコンタクトシート支持壁を側面とする箱型の内部空間を形成することができる。また、スキンコンタクト支持壁を高く構成し、かつ、スキンコンタクトシートをスキンコンタクトシート支持壁の高い位置に固定することで、その内部空間の空間容積を大きくすることも可能となる。従って、従前の使い捨ておむつと比較して、スキンコンタクトシートとトップシートとの間に大きい空間を形成することができ、便の収容能力に優れる。
【0029】
[1−1]スキンコンタクトシート支持壁:
スキンコンタクトシート支持壁(以下、単に「支持壁」という場合がある。)は、スキンコンタクトシートを架橋するように配置・固定するための壁状部材である。
【0030】
支持壁は、不織布等のシート材(以下、「支持壁形成シート」という場合がある。)によって構成することができる。スキンコンタクトシートを支持し得るものである限り、シート材の種類について特に制限はない。例えば、液透過性の不織布シート等を用いることができる。但し、撥水性材料からなるシート材等を用いることによって、支持壁に立体ギャザーとしての機能を付与することができる。このような構成により、軟便や水様便に対する防漏性を向上させることも可能となる。撥水性材料としては、スパンボンドやカードエンボス等の不織布を用いることができる。中でも、SMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)、SMMS(スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド)等の不織布は耐水圧が高いという利点があり、好適に用いることができる。
【0031】
例えば、図3に示す使い捨ておむつ1のように、スキンコンタクトシート支持壁26a,26bは、トップシート18に対し、支持壁形成シート32a,32bを貼り合わせ、固定することにより形成することができる。但し、トップシートやバックシート等、他の部材を構成するシート材の一部を折り返して形成してもよい。
【0032】
支持壁は、スキンコンタクトシートを架橋するように固定する必要から、少なくとも一対が付設される。但し、二対以上形成されていてもよい。
【0033】
支持壁は、トップシートの表面に、吸収体の各側縁に沿って付設される。「トップシート」とは、吸収体の上面(おむつの装着時において着用者の肌側に位置する面)を被覆するように配置されるシートを意味し、おむつの中央部に配置される液透過性材料からなるトップシート(センターシート)は勿論のこと、おむつのサイドフラップ部分に配置される撥水性材料等からなるトップシート(サイドシート)を含む。
【0034】
例えば、図3に示す使い捨ておむつ1は、トップシート18とバックシート20とが、吸収体22の外縁よりも外側の領域で貼り合わされてフラップ部が形成されており、そのフラップ部におけるトップシート18の表面に、スキンコンタクトシート支持壁26(26a,26b)が付設されている例である。但し、スキンコンタクトシート支持壁は、吸収性本体14を構成するトップシート18の吸収体22上方に相当する位置に固定してもよい。
【0035】
「吸収体の各側縁に沿って」とは、概ね吸収体の側縁と同方向に付設されていることを意味する。但し、吸収体の側縁は、脚周り開口部に沿って曲線的に形成される場合もあり、直線的に形成されているとは限らない。従って、必ずしも吸収体の側縁に接するように付設されている必要はなく、吸収体の側縁と同一の軌跡を描くように付設されている必要もない。通常は、吸収体の形状に拘らず、直線的に支持壁を配置することが多い。例えば、図2に示す使い捨ておむつ1のように、スキンコンタクトシート支持壁26(26a,26b)を、おむつの前後方向に直線的に配置する。
【0036】
支持壁は、スキンコンタクトシートとトップシートを大きく離間させ、スキンコンタクトシートとトップシートとの間に大きい空間を形成する必要から、立体的に起立可能な構造に形成される。
【0037】
立体的に起立可能な構造である限り、その構造に特に制限はないが、おむつの前後方向に沿って、起立用伸縮材が配置されたものが好ましい。支持壁に起立用伸縮材を伸張状態で固定・配置すると、その収縮力によって、支持壁が立体的に起立する。起立用伸縮材は、一つの支持壁につき、単数配置しても複数配置してもよい。そして、支持壁を確実に起立させるために、起立用伸縮材は支持壁の上端縁近傍に配置することが好ましい。
【0038】
例えば、図2及び図3に示す使い捨ておむつ1は、スキンコンタクトシート支持壁26(26a,26b)の上端縁34近傍に起立用伸縮材36を配置した例であり、支持壁形成シート32a,32bの自由端部(トップシート18に固定されていない側の端部)を折り返し、その折り返し部分に2本の起立用伸縮材36a,36b(36c,36d)を挟み込むように配置したものである。
【0039】
起立用伸縮材としては、従来の使い捨ておむつで使用されてきた伸縮材を好適に用いることができる。具体的には、天然ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性材からなる糸ゴム、平ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を挙げることができる。
【0040】
前記のような起立用伸縮材は、支持壁形成シートに対して、接着剤その他の手段により固定される。固定方法としては、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着であってもよいし、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着であってもよい。
【0041】
起立用伸縮材は、支持壁に十分な伸縮力を作用させるため、伸長状態で固定することが好ましい。起立用伸縮材が天然ゴムや合成ゴムから構成される場合には、120〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することがより好ましい。このような範囲の伸長状態で固定することにより、十分な伸縮力を作用させ、かつ、支持壁を確実に起立させることができる。
【0042】
支持壁は、スキンコンタクトシートを固定するという目的から、少なくともスキンコンタクトシートの長さ(おむつ前後方向の長さ)に対応する長さに形成する必要がある。但し、スキンコンタクトシートの長さよりも長く形成することもできる。例えば、図2に示す使い捨ておむつ1は、スキンコンタクトシート支持壁26を吸収体22の長手方向全域をカバーする長さに形成した例である。このような構成は、支持壁に立体ギャザーの機能をも付与することができ、排泄物の横漏れを防止することができるという利点がある。
【0043】
また、図2に示す使い捨ておむつ1では、スキンコンタクトシート支持壁26a,26bの長手方向全域に渡って起立用伸縮材36a,36bが連続的に配置されている。このように、おむつの前身頃2から後身頃6にかけて伸縮力が作用する部材(支持壁)に対して、スキンコンタクトシート24を固定することで、スキンコンタクトシート24に前身頃2方向に引っ張る力を作用させることができる。これにより、スキンコンタクトシート24がトップシート18の後身頃6側の領域のみを被覆するように配置された場合であっても、スキンコンタクトシート24に対し、前身頃2方向、後身頃6方向の双方に引っ張る力が作用することになり、スキンコンタクトシート24を着用者の肌に密着させることが可能となる。
【0044】
支持壁の高さ(下端縁から上端縁までの長さ)は、20〜60mmとすることが好ましく、30〜50mmとすることが更に好ましい。20mm以上とすることにより、スキンコンタクトシートとトップシートとの間に大きい空間を形成することができ、便の収容能力を向上させることができる。60mm以下とすることによって、支持壁がスキンコンタクトシートやトップシートの表面を覆ってしまい、吸収効果を阻害する不具合を防止することができる。
【0045】
[1−2]スキンコンタクトシート:
スキンコンタクトシートは、着用者の肌とトップシートとを離隔するための部材であり、トップシートの上方に配置され、便を通過させ得る開口部(便通過用開口部)が形成されたシート状部材である。
【0046】
スキンコンタクトシートを構成するシート材としては、例えば、不織布、メッシュシート、フィルム等を用いることができる。中でも、肌触りが良好な不織布を好適に用いることができる。これらの材料は、液透過性であっても、液不透過性であっても、撥水性であってもよい。但し、撥水性の材料(撥水性の不織布等)は、長時間着用してもさらっとした触感(ドライ性)を維持することができるため好ましい。
【0047】
[1−2A]固定方法:
本発明の使い捨ておむつは、スキンコンタクトシートの両側縁が、スキンコンタクトシート支持壁の起立線と上端縁との間の部分に固定されているものが好ましい。このような構成は、スキンコンタクトシートを上面、トップシートを底面、スキンコンタクトシート支持壁を側面とする箱型の内部空間を形成することができ、トップシートに直接スキンコンタクトシートを固定した場合と比較して、内部空間の空間容積を大きくすることが可能となる。
【0048】
例えば、図2〜図4に示す使い捨ておむつ1は、スキンコンタクトシート24の両側縁が、スキンコンタクトシート支持壁26a,26bの内側の面、より具体的には、スキンコンタクトシート支持壁26a,26bの上端縁34と起立線38との間の部分に固定されている。なお、図示の例では、スキンコンタクトシートを支持壁の内側の面に固定しているが、上端縁と起立線の間の部分である限り、支持壁の外側の面に固定してもよい。
【0049】
また、本発明の使い捨ておむつは、スキンコンタクトシートの両側縁が、トップシートの表面に固定されるとともに、スキンコンタクトシートの起立線と便通過用開口部の間の部分が、スキンコンタクトシート支持壁の起立線と上端縁との間の部分に固定されているものも好ましい。
【0050】
前記構造について、図8及び図9に示す使い捨ておむつ100を例に説明する。図8は図2に示す使い捨ておむつ1のX−X’断面図(即ち、図3)に対応する図面であり、図9は図2に示す使い捨ておむつ1のY−Y’断面図(即ち、図4)に対応する図面である。
【0051】
例えば、図8及び図9に示す使い捨ておむつ100は、スキンコンタクトシート24の両側縁が、トップシート18の表面に固定されているとともに、スキンコンタクトシート24の起立線70と便通過用開口部28の間の部分が、接合部72によって、スキンコンタクトシート支持壁26a,26bの内側の面に固定されている。
【0052】
このような構造によれば、スキンコンタクトシート支持壁26の起立用伸縮材36の収縮力を利用して、スキンコンタクトシート24を立ち上げることができる。従って、図1〜図7に示す使い捨ておむつ1と同様に、スキンコンタクトシート24を上面及び側面、トップシート18を底面とする箱型の内部空間を形成することができ、スキンコンタクトシートを支持壁に固定しない場合と比較して、内部空間の空間容積を大きくすることが可能となる。
【0053】
図8及び図9に示す使い捨ておむつ100は、図示されてはいないが、スキンコンタクトシート24の両側縁の全域が接合部72によって、スキンコンタクトシート支持壁26a,26bに連続的に固定されているものである。但し、本発明の使い捨ておむつは、このような形態に限られず、スキンコンタクトシートの両側縁を支持壁に対して断続的に固定してもよいし、スキンコンタクトシートの両側縁の一部(例えば、スキンコンタクトシートの両側縁のうち前端部近傍の部分等)のみを支持壁に対して固定してもよい。
【0054】
図8及び図9に示す使い捨ておむつ100は、スキンコンタクトシート24の両側縁を、(a)スキンコンタクトシート支持壁26a,26bを構成する支持壁形成シート32a,32bとフラップ部(トップシート18とバックシート20の貼り合わせ部分)に挟み込むように固定している。
【0055】
但し、スキンコンタクトシート24の両側縁は、(b)前記フラップ部のうち、一対のスキンコンタクトシート支持壁26a,26bの間の領域に固定してもよいし、(c)吸収性本体14を構成するトップシート18の吸収体22上方に相当する位置に固定してもよい。上記(a)〜(c)の方法の中で、吸収体と比較して柔軟なフラップ部にスキンコンタクトシートを固定する、(a)又は(b)の方法が好ましい。これらの方法は、スキンコンタクトシートを立ち上げ易く、着用者の肌に対してスキンコンタクトシートを密着させる効果が高いからである。
【0056】
スキンコンタクトシートは、支持壁の起立線から10mm以上離れた位置に固定することが好ましく、支持壁の上端縁から5mm以上離れた位置に固定されていることが好ましい。起立線から10mm以上離すことによって、内部空間の空間容積を大きくし、便の収容能力を向上させることが可能となる。上端縁から5mm以上離すことによって、支持壁のうち、スキンコンタクトシート固定面より上側に位置する部分が立体ギャザーとして機能し、スキンコンタクトシートの表面に軟便や水様便が乗ってしまった場合でも、その横漏れを防止することができる。
【0057】
本発明の使い捨ておむつにおいては、スキンコンタクトシートを、前端部がトップシートの股下部の上方に、後端部がトップシートの後身頃の上方に位置するように配置する。例えば、図2及び図6に示す使い捨ておむつ1においては、スキンコンタクトシート24の前端はトップシート18の股下部4の上方に、後端部はトップシート18の後身頃6の上方に位置するように配置されている。こうすることにより、スキンコンタクトシートによって、トップシートの股下部領域及び後身頃領域の少なくとも一部を被覆することができる。
【0058】
また、本発明の使い捨ておむつでは、スキンコンタクトシートはトップシートの股下部領域及び後身頃領域の少なくとも一部を被覆している。即ち、トップシートの股下部領域及び後身頃領域の全部又は一部を被覆しており、トップシートの前身頃側の領域については被覆していない。このような構成は、スキンコンタクトシートがトップシートの全面を被覆している場合と比較して、スキンコンタクトシートによって尿の吸収が阻害されることが少ない。また、尿の吸収ゾーンを広く開放することができ、おむつの着用時にズレがあった場合でも尿漏れがし難いという効果を得ることができる。
【0059】
例えば、図2及び図6に示す使い捨ておむつ1は、スキンコンタクトシート24がトップシート18の股下部4に相当する領域の一部及び後身頃6に相当する領域の一部を被覆している例である。
【0060】
[1−2B]尿便分離壁:
本発明の使い捨ておむつは、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間を、便通過用開口部に連通する空間と前身頃側の空間とが区画されていることが好ましい。このような構成により、尿と便が混ざり難くなり、アンモニアの発生によるおむつかぶれを効果的に防止することができる。
【0061】
前記のような空間を区画する形態としては、通気撥水性シートからなり、前記スキンコンタクトシートと前記トップシートの後身頃側表面との間に形成される空間を前身頃側の空間から仕切る尿便分離壁を有し、前記尿便分離壁は、前記通気撥水性シートの一端が前記スキンコンタクトシートの前端部に接合され、他端が前記トップシートの表面まで垂下されることによって形成されたものが好ましい。
【0062】
例えば、図2及び図6に示す使い捨ておむつ1は、通気撥水性シート52からなり、スキンコンタクトシート24とトップシート18との間に形成される空間46を前身頃2側の空間から仕切る尿便分離壁48を有し、尿便分離壁48は、通気撥水性シート52の一端がスキンコンタクトシート24の前端部に接合され(接合部62)、他端がトップシート18の表面まで垂下され、接合される(接合部66)ことによって形成されている。この例では、図4に示すように、通気撥水性シート52の吸収体22側縁からはみ出した部分に関しては、トップシート18の表面に固定(接合)されておらず、単に垂下されている。
【0063】
この例では、通気撥水性シート52は、断面Z字型に折り曲げられ、接合部62,66以外の部分は固定されていないため、図7に示すように、通気撥水性シート52の中途の折り畳み部が自由に伸張する。従って、尿便分離壁48によって、スキンコンタクトシート24の立ち上がりが阻害されることが少ないという利点がある。但し、本発明の使い捨ておむつにおいて、尿便分離壁は必須の部材ではなく、配置しなくてもよい。即ち、スキンコンタクトシートとトップシートとの間に形成される空間が前方に向かって開放されていてもよい。
【0064】
なお、図2及び図6に示す使い捨ておむつ1では、スキンコンタクトシート24とトップシート18との間に形成される空間46が後側に向かって開放されているが、スキンコンタクトシート24後方の空間から仕切ってもよい。これにより、軟便や水様便が着用者の背中側に回り込み、ウエスト周り開口部から漏れる事態を有効に防止することができる。例えば、尿便分離壁と同様の構成で分離壁を形成し、又はスキンコンタクトシートの後端をトップシートに固定することにより、空間を仕切ることが可能である。
【0065】
また、図2及び図6に示す使い捨ておむつ1では、通気撥水性シート52の他端56をトップシート18の表面に固定しているが、本発明の使い捨ておむつは、このような形態に限定されるものではない。例えば、スキンコンタクトシートに一端を固定した通気撥水性シートをトップシートの表面の一部を覆う程度に垂下させるのみでも空間を仕切ることは可能であり、他端を固定した場合と同様の効果を得ることができる。
【0066】
また、スキンコンタクトシートの前端部が、トップシートの表面に接合され、スキンコンタクトシートとトップシートとの間に形成される空間が、前身頃側の空間から仕切られているものも好ましい。
【0067】
前記構造について、図10に示す使い捨ておむつ110を例に説明する。図10は図2に示す使い捨ておむつ1のA−A’断面図(即ち、図6)に対応する図面である。
【0068】
図10に示す使い捨ておむつ110は、スキンコンタクトシート24の前端部が、断面Z字型に折り曲げられた上で、トップシート18の表面に接合され、スキンコンタクトシート24とトップシート18との間に形成される空間46が、前身頃2側の空間から仕切られている。
【0069】
但し、本発明の使い捨ておむつは、図10のような形態に限定されるものではない。例えば、スキンコンタクトシートの前端部をトップシートの表面の一部を覆う程度に垂下させるのみでも空間を仕切ることは可能であり、当該前端部を固定した場合と同様の効果を得ることができる。
【0070】
なお、図10に示す使い捨ておむつ110は、スキンコンタクトシート24の後端部が、断面Z字型に折り曲げられた上で、トップシート18の表面(フラップ部)に接合され、スキンコンタクトシート24とトップシート18との間に形成される空間46が、スキンコンタクトシート後方の空間からも仕切られている。但し、このような構成は必須ではなく、採用してもよいし、採用しなくてもよい。例えば、既に述べた尿便分離壁と同様の構造で分離壁を形成してもよいし、図6に示す使い捨ておむつ1と同様に、スキンコンタクトシートとトップシートとの間に形成される空間を後側に向かって開放する構成としてもよい。
【0071】
[1−2C]便通過用開口部:
便通過用開口部は便を通過させ得る形状である限り、その形状について特に制限はない。例えば、円形、楕円形、菱形等のいわゆる開口部(孔)の他、スリットであってもよい。スリットとしては、直線状(1本)、十字状(2本)、星形(3本以上)等をあげることができる。これらの中では、便が通過し易い楕円形開口部、便通過後に閉塞し、着用者の臀部を汚し難い星型スリットが好ましい。
【0072】
例えば、図2に示す使い捨ておむつ1は、スキンコンタクトシート24のおむつの股下部4に相当する部分に、便通過用開口部28として、おむつの前後方向を長軸方向とする楕円形開口部を形成した例である。なお、孔やスリットのサイズについては、「便を通過させる」という機能を考慮した上で適宜決定すればよい。
【0073】
本発明の使い捨ておむつにおいては、スキンコンタクトシートに伸縮材が配置されていることが好ましい。中でも、便通過用開口部の外縁に開口部伸縮材が配置されたものが好ましい。開口部伸縮材を配置すると、スキンコンタクトシートがへたってトップシート側に落ち込み難くなり、スキンコンタクトシートを着用者の肌に接触し易くさせる。また、スキンコンタクトシートをトップシートから浮かせた状態を維持し、スキンコンタクトシートとトップシートとを確実に離隔させることが可能となる。但し、本発明の使い捨ておむつにおいて、開口部伸縮材は必須の部材ではなく、配置しなくてもよい。
【0074】
開口部伸縮材の材質、伸張率、固定方法については、既に述べた起立用伸縮材と同様である。開口部伸縮材の配置パターンは、開口部に確実に伸縮力を作用させるため、開口部伸縮材が開口部の周縁を取り囲むようなパターン(円形、楕円形、菱形等)に配置されていることが好ましい。
【0075】
また、開口部伸縮材として2本の開口部伸縮材を用い、その2本の開口部伸縮材が開口部の前後の少なくとも1点で交差し、開口部の周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置されていることも好ましい形態の一つである。このようなパターンで開口部伸縮材を配置すると、開口部伸縮材をおむつの前後方向に向かって連続的に配置することが可能となるため、使い捨ておむつの連続的な製造が容易になる。
【0076】
例えば、図2に示す使い捨ておむつ1は、開口部伸縮材30として2本の開口部伸縮材30a,30bを用い、その2本の開口部伸縮材30a,30bが便通過用開口部28の前側の点Pで交差し、便通過用開口部28の周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置した例である。このようなパターンで開口部伸縮材30a,30bを配置すると、吸収性本体14が長手方向に向かって連続して配置されたような吸収性本体連続体を容易に製造することが可能となる。
【0077】
また、図2に示す使い捨ておむつ1は、股下部4の中央で開口部伸縮材30a,30bが交差し、かつ、便通過用開口部28の後身頃6側の周縁が開放されたパターンに配置されている。このような配置とすることにより、スキンコンタクトシート24の中でも比較的弛み易い、便通過用開口部28の周縁部を着用者の肌に対してより密着させる効果があり、スキンコンタクトシート24の後身頃6側が着用者の肌に対して過度に密着しないため、通気性を確保することができる。
【0078】
開口部伸縮材の配置方法は特に限定されないが、例えば、図3に示す使い捨ておむつ1のように、スキンコンタクトシート24を2枚のシート材(アッパーシート24a、ライナーシート24b)を貼り合わせることにより構成し、アッパーシート24aとライナーシート24bの間に開口部伸縮材30a,30bを挟みこむように配置することが好ましい。このような配置方法を採用すると、必要最小限の伸縮材によりスキンコンタクトシートに伸縮力を付与することができる。
【0079】
なお、前記のようにスキンコンタクトシートに開口部伸縮材を配置することに代えて、スキンコンタクトシートを伸縮性シートによって構成することも好ましい。このような構成でも、開口部伸縮材を配置したのと同様の効果を得ることができる。この場合、伸縮性シートとしては、市販のエラスチック不織布、エラストマースパンボンド不織布等を用いることができる。より具体的には、以下全て商品名で、ストラフレックス(出光ユニテック社製)、エスパンシオーネ(カネボウ社製)、エラクス(GPF社製)等を好適に用いることができる。
【0080】
[1−3]立体ギャザー:
立体ギャザーは、着用者の排泄した尿の横漏れを防止するための部材であり、立体的に起立可能なように構成された防漏壁である。この立体ギャザーを形成することにより、スキンコンタクトシートの上に尿が排泄され、スキンコンタクトシートを伝って尿が拡散してしまった場合でも、立体ギャザーが防波堤となり、おむつの脚周り開口部等からの漏れ(いわゆる「横漏れ」)を有効に防止することができる。
【0081】
本発明においては、トップシートの表面のうち、前記一対のスキンコンタクトシート支持壁の起立線より更に外側の領域に、立体的に起立可能な防漏壁である、一対の立体ギャザーが付設されていることが好ましい。本発明の使い捨ておむつにおいては、一対の立体ギャザーが形成されていることが好ましいが、二対以上形成されていてもよい。
【0082】
立体ギャザーの構成は、従来の使い捨ておむつ、その他の吸収性物品に使用される構成を採用することができる。例えば、シート材の一部に伸縮材(立体ギャザー伸縮材)を配置し、その立体ギャザー伸縮材によってシート材にギャザー(襞)を形成したもの等を好適に用いることができる。
【0083】
立体ギャザーを構成するシート材としては、立体ギャザーの防漏性を向上させるという観点から、撥水性材料を用いることが好ましい。立体ギャザーの種類としては、(1)おむつの内側に向かって傾倒する内倒しギャザー、(2)おむつの外側に向かって傾倒する外倒しギャザー、(3)高さ方向の一部に、曲げ部や折り返し部を形成した立体ギャザー(C折りギャザーやZ折りギャザー等)等を挙げることができる。これらの中では、防漏性が高い点において内倒しギャザーが好ましい。
【0084】
なお、立体ギャザーは、吸収体の両側縁全域に渡って形成することが好ましいが、尿の横漏れを防止するという目的から、少なくともおむつの股下部に相当する部分に配置されていればよい。
【0085】
[1−4]吸収体:
吸収体は、着用者の尿を吸収し、保持するための部材である。吸収体は、着用者の尿や体液を吸収し保持する必要から、吸収性材料によって構成される。
【0086】
吸収体を構成する吸収性材料としては、使い捨ておむつ、その他の吸収性物品に通常使用される従来公知の吸収性材料、例えば、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す。)、親水性シート等を挙げることができる。フラッフパルプとしては木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものを、SAPとしてはポリアクリル酸ナトリウムを、親水性シートとしてはティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布を用いることが好ましい。
【0087】
これらの吸収性材料は、通常、単層又は複層のマット状として用いられる。この際、前記の吸収性材料のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部程度のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプの各マット中に均一に混合されていてもよいし、複層のフラッフパルプの層間に層状に配置されていてもよい。
【0088】
吸収体は、トップシートとバックシートの間の少なくとも一部に介装されることが好ましい。通常、吸収体は、トップシートとバックシートの間に挟み込まれ、その周縁部が封着されることによって、トップシートとバックシートとの間に介装される。従って、吸収体の周縁部にはトップシートとバックシートの間に吸収体が介装されていないフラップ部が形成されることになる。
【0089】
吸収体は、その全体が親水性シートによって包み込まれていることが好ましい。このような構成は、吸収体からSAPが漏洩することを防止し、吸収体に形状安定性を付与することができるという利点がある。
【0090】
吸収体の形状については特に制限はないが、従来の使い捨ておむつ、その他の吸収性物品において使用される形状、例えば、矩形状、砂時計型、ひょうたん型、T字型等を挙げることができる。
【0091】
[1−5]トップシート:
トップシートは、吸収体の上面(おむつの装着時において着用者の肌側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。トップシートは、その下面側に配置された吸収体に、着用者の尿を吸収させる必要から、その少なくとも一部(全部又は一部)が液透過性材料により構成される。
【0092】
トップシートを構成する液透過性材料としては、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0093】
トップシートは単一のシート材によって構成されていてもよいが、複数のシート材によって構成されていてもよい。例えば、後述するテープ型おむつにおいては、おむつの中央部には液透過性材料からなるトップシート(センターシート)を配置し、おむつのサイドフラップ部分には撥水性材料からなるトップシート(サイドシート)を配置する形態がよく利用される。
【0094】
[1−6]バックシート:
バックシートは、吸収体の下面(おむつの装着時において着用者の着衣側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。バックシートは、着用者の尿がおむつ外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。
【0095】
バックシートを構成する液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができ、中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは、0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されており、液不透過性ではあるが透湿性を有するため、おむつ内部の蒸れを防止することができるという利点がある。
【0096】
なお、バックシートには、その外表面側にシート材(カバーシート)を貼り合わせてもよい。このカバーシートは、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0097】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0098】
[1−7]吸収性本体:
2ピースタイプのパンツ型おむつにおいては、トップシート、バックシート及び吸収体を、吸収・保持機能を担う「吸収性本体」という一つの部材として構成し、これとは別個に製造された外装部材と接合することにより使い捨ておむつを構成する。この吸収性本体は、生理用ナプキン等と同様に、吸収体の上面側にトップシート、下面側にバックシートが配置されたものであり、トップシートとバックシートとの間に吸収体が介装された構造となっている。例えば、図3に示す使い捨ておむつ1は、トップシート18とバックシート20の間に吸収体22を挟みこみ、吸収体22の周縁部を封着することによって、トップシート18とバックシート20との間に吸収体22が介装された構造の吸収性本体14を構成した例である。
【0099】
吸収性本体は、少なくともおむつの股下部をカバーするサイズに構成される。但し、漏れ防止の効果を確実なものとするため、股下部のみならず前身頃や後身頃の一部をもカバーする大きさに構成することが好ましい。吸収性本体は、例えばホットメルト接着剤等を用いて、外装部材に対して固定することができる。
【0100】
[1−8]外装部材:
外装部材は、着用者の身体を被包するための装着機能を担う部材であり、具体的には、前身頃、股下部及び後身頃の各部を形成するシート状の部材である。
【0101】
2ピースタイプのパンツ型おむつでは、着用者の排泄物を吸収し、保持する吸収・保持機能については、専ら吸収性本体が果たすことになるので、外装部材を構成する材料として液不透過性材料を用いる必要はない。外装部材を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、その他の熱可塑性樹脂からなる合成繊維によって構成された不織布等を挙げることができる。
【0102】
そして、外装部材は、脚周り伸縮材等を挟み込んだ状態で固定するために、2枚以上の不織布を貼り合わせて構成されることが多い。例えば、図1〜図3に示す使い捨ておむつ1は、外装部材16を2枚の不織布から構成し、その2枚の不織布の間に脚周り伸縮材40、ウエスト周り伸縮材42及び腹周り伸縮材44を挟み込み固定した例である。
【0103】
[1−9]各種伸縮材:
パンツ型の使い捨ておむつにおいては、脚周り伸縮材を配置し、ウエスト周り伸縮材を配置することが一般的であり、更に腹周り伸縮材を配置することが好ましい。
【0104】
脚周り伸縮材は、脚周り開口部に沿って配置される伸縮材である。この脚周り伸縮材を配置することによって、脚周り開口部に伸縮性に富むギャザー(レグギャザー)を形成することができる。従って、脚周りに隙間が形成され難くなり、脚周り開口部からの尿漏れを効果的に防止することができる。
【0105】
ウエスト周り伸縮材は、ウエスト周り開口部に沿って配置される伸縮材である。ウエスト周り伸縮材を配置することによって、ウエスト開口部に伸縮性に富むギャザー(ウエストギャザー)を形成することができる。このウエストギャザーにより、ウエスト周りに隙間が形成され難くなり、ウエスト周りからの尿漏れを防止することができる他、着用者へのおむつのフィット性が良好となり、おむつのずり下がりが防止される。
【0106】
腹周り伸縮材は、ウエスト周り開口部と脚周り開口部との間の部分(即ち、着用者の腹周りに相当する部分)に配置される伸縮材である。腹周り伸縮材を配置することによって、着用者の腹周りに伸縮性に富むタミーギャザーを形成することができる。このタミーギャザーは、ウエストギャザーと相俟って、おむつのフィット性やずり下がり防止効果を一層優れたものとすることができる。
【0107】
図1及び図2に示す使い捨ておむつ1は、脚周り開口部12a,12bの周縁には複数本の脚周り伸縮材40を配置し、ウエスト周り開口部10の周縁にはウエスト周り開口部10を取り囲むように複数本のウエスト周り伸縮材42を配置し、更に、ウエスト周り開口部10と脚周り開口部12a,12bとの間の部分(即ち、着用者の腹周りに相当する部分)には、着用者の腹周りを取り囲むように複数本の腹周り伸縮材44を配置した例である。なお、図2には示されていないが、脚周り伸縮材40は前身頃2側、後身頃6側で各々U字型を描くように配置されており、股下部4の中央において切断されている。
【0108】
これらの伸縮材については、既に述べた起立用伸縮材と同様の構成を採用することができる。そして、ギャザーの収縮の程度等を勘案した上で、構成材料、その材料の伸長率、固定時の伸長状態等を決定すればよい。
【0109】
[2]製造方法:
以下、本発明の使い捨ておむつを製造する方法の一例を、図1〜図7に示す使い捨ておむつ1(2ピースタイプのパンツ型おむつ)を製造する場合の例により説明する。
【0110】
[2−1]吸収性本体の製造:
バックシート20の上面に、親水性シートに包まれた吸収体22を配置し、更にその上面にトップシート18を配置する。次いで、吸収体22の周縁部をトップシート18とバックシート20とで挟み込むように封着することによって吸収性本体14を得る。
【0111】
[2−2]スキンコンタクトシートの製造:
ライナーシート24bの上面に、2本の開口部伸縮材30a,30bを所定のパターンに配置しつつ、アッパーシート24aを貼り合わせる。この際、2本の開口部伸縮材30a,30bは、後に形成される便通過用開口部28の前側の点Pで交差し、便通過用開口部28の周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置する。
【0112】
次いで、貼り合わされたライナーシート24bとアッパーシート24aに、便通過用開口部28を形成する。こうすることによって、2本の開口部伸縮材30a,30bが便通過用開口部28の前側の点Pで交差し、便通過用開口部28の周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置された2層構造のスキンコンタクトシート24を得る。
【0113】
[2−3]スキンコンタクトシート支持壁の製造:
支持壁形成シート32a(32b)の一方の端部を折り返し、その折り返し部分に、2本の起立用伸縮材36a,36b(36c,36d)を挟み込んだ状態で貼り合わせることによって、スキンコンタクトシート支持壁26a(26b)を得る。
【0114】
[2−4]吸収性本体へのスキンコンタクトシート等の付設:
スキンコンタクトシート支持壁26a,26bに、スキンコンタクトシート24を貼り合わせる。その後、吸収性本体14を構成するトップシート18の表面に、スキンコンタクトシート支持壁26a,26bを固定し、吸収性本体14の側縁を挟み込むように、スキンコンタクトシート支持壁26a,26bを貼り合わせ、吸収性本体14に対し、スキンコンタクトシート24及びスキンコンタクトシート支持壁26a,26bを付設する。
【0115】
[2−5]外装部材の製造:
まず、外装部材16となる不織布を2枚用意し、このうちの1枚の不織布の上面に、ウエスト周り伸縮材42、腹周り伸縮材44及び脚周り伸縮材40を配置し接着固定する。そして、この上面に、更にもう1枚の不織布を積層し固定することにより、2枚の不織布の間に、ウエスト周り伸縮材42、腹周り伸縮材44及び脚周り伸縮材40が介装された外装部材16を得る。なお、脚周り伸縮材40については、股下部4中央の部分のみを非接着の状態としておき、その非接着部分を切断することにより、スナップバックさせる。
【0116】
[2−6]使い捨ておむつの製造:
外装部材16の股下部近傍に、吸収性本体14を配置し固定する。次いで、吸収性本体14を内側にして、前身頃2と後身頃6とを合わせるように二つ折りにし、前身頃2と後身頃6とをヒートシール等の手段により接合し、接合部8を形成することによって、図1〜図3に示す使い捨ておむつ1を製造することができる。
【0117】
前記のような一連の工程は、機械的な手段によって連続的に行うことが可能である。例えば、長尺のシート材や伸縮材をローラーから連続的に送出する等の方法・装置を採用することにより、使い捨ておむつの連続製造が可能となり、生産性の向上に資する。
【0118】
[3]本発明の適用対象:
本発明の使い捨ておむつの適用対象は、前記2ピースタイプのパンツ型おむつに限られるものではなく、例えば、1ピースタイプのパンツ型おむつやテープ型おむつにも適用することができる。即ち、これらの使い捨ておむつにおいても、トップシートの表面よりも上方にスキンコンタクトシートを配置し、少なくとも一対の立体ギャザーを形成することにより、本発明の使い捨ておむつの効果を享受することができる。
【0119】
なお、「1ピースタイプ」とは、2ピースタイプと同様に、トップシート、バックシート、吸収体を備えているが、吸収・保持機能を担う吸収体がトップシートとバックシートの間に介装(内蔵)され、装着機能を担うトップシート及び/又はバックシートと一体的に構成されたタイプのおむつを意味するものとする。
【0120】
また、「テープ型おむつ」とは、トップシートと、バックシートと、両シートの間の少なくとも一部に介装された吸収体と、装着用のテープファスナーとを備え、テープファスナーによっておむつの前身頃と後身頃とを相互に固定し得る使い捨ておむつを意味するものとする。「テープ型おむつ」にも、パンツ型おむつと同様に「1ピースタイプ」と「2ピースタイプ」が存在するが、本発明の使い捨ておむつはいずれのタイプのテープ型おむつにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の使い捨ておむつは、乳幼児用、或いは介護を必要とする高齢者や障害者等の成人用のおむつとして好適に利用することができる。そして、本発明の使い捨ておむつは、排泄された便の収容能力に優れるので、排泄物の量が多い、成人用の使い捨ておむつとして特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を示す概略斜視図であり、おむつの前方から見た状態を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を示す平面図であり、図1に示す使い捨ておむつを展開し、おむつの吸収性本体側から見た状態を示す平面図である。
【図3】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を示す概略断面図であり、図2に示す使い捨ておむつをX−X’線に沿って切断した断面を示す概略断面図である。
【図4】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を示す概略断面図であり、図2に示す使い捨ておむつをY−Y’線に沿って切断した断面を示す概略断面図である。
【図5】本発明の使い捨ておむつの一の使用状態を示す概略断面図であり、図2に示す使い捨ておむつをZ−Z’線に沿って切断した断面を示す概略断面図である。
【図6】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を示す概略断面図であり、図2に示す使い捨ておむつをA−A’線に沿って切断した断面を示す概略断面図である。
【図7】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を示す概略断面図であり、図2に示す使い捨ておむつをA−A’線に沿って切断した断面を示す概略断面図である。
【図8】本発明の使い捨ておむつの別の実施形態を示す概略断面図であり、使い捨ておむつをスキンコンタクトシートの便通過用開口部の部分で横方向に切断した断面を示す概略断面図である。
【図9】本発明の使い捨ておむつの別の実施形態を示す概略断面図であり、使い捨ておむつを尿便分離壁の部分で横方向に切断した断面を示す概略断面図である。
【図10】本発明の使い捨ておむつの更に別の実施形態を示す概略断面図であり、使い捨ておむつを中心線に沿って縦方向に切断した断面を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0123】
1:使い捨ておむつ、2:前身頃、2a,2b:側縁部、4:股下部、6:後身頃、6a,6b:側縁部、8:接合部、10:ウエスト周り開口部、12,12a,12b:脚周り開口部、14:吸収性本体、16:外装部材、18:トップシート、20:バックシート、22:吸収体、24:スキンコンタクトシート、24a:アッパーシート、24b:ライナーシート、26,26a,26b:スキンコンタクトシート支持壁、28:便通過用開口部、30,30a,30b:開口部伸縮材、32,32a,32b:支持壁形成シート、34:上端縁、36,36a,36b,36c,36d:起立用伸縮材、38:起立線、40:脚周り伸縮材、42:ウエスト周り伸縮材、44:腹周り伸縮材、46:空間、48:尿便分離壁、52:通気撥水性シート、54:一端、56:他端、62,66,72:接合部、70:起立線、P:点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前身頃、股下部、後身頃の各部から形成され、
吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の上面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の下面を被覆するように配置されたバックシートと、便通過用開口部が形成され、前記トップシートの上方に配置されたスキンコンタクトシートとを備え、
前記トップシートの表面には、前記吸収体の各側縁に沿って、立体的に起立可能な一対のスキンコンタクトシート支持壁が付設され、
前記スキンコンタクトシートは、前端部が前記トップシートの股下部の上方に、後端部が前記トップシートの後身頃の上方に位置するように配置されるとともに、前記一対のスキンコンタクトシート支持壁の間を架橋するように固定されて、前記トップシートの股下部領域及び後身頃領域の少なくとも一部を被覆している使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記スキンコンタクトシートは、その両側縁が、前記スキンコンタクトシート支持壁の起立線と上端縁との間の部分に固定されている請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記スキンコンタクトシートは、その両側縁が、前記トップシートの表面に固定されるとともに、起立線と前記便通過用開口部の間の部分が、前記スキンコンタクトシート支持壁の起立線と上端縁との間の部分に固定されている請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記スキンコンタクトシート支持壁が、おむつの前後方向に沿って、起立用伸縮材が配置されたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
通気撥水性シートからなり、前記スキンコンタクトシートと前記トップシートとの間に形成される空間を前身頃側の空間から仕切る尿便分離壁を有し、
前記尿便分離壁は、前記通気撥水性シートの一端が前記スキンコンタクトシートの前端部に接合され、他端が前記トップシートの表面まで垂下されることによって形成されたものである請求項1〜4のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記スキンコンタクトシートの前端部が、前記トップシートの表面に接合され、
前記スキンコンタクトシートと前記トップシートとの間に形成される空間が、前身頃側の空間から仕切られている請求項1〜4のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記スキンコンタクトシートが、前記便通過用開口部の外縁に開口部伸縮材が配置されたものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記スキンコンタクトシートが、伸縮性シートからなるものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項9】
前記トップシートの表面のうち、前記一対のスキンコンタクトシート支持壁の起立線より更に外側の領域に、立体的に起立可能な防漏壁である、一対の立体ギャザーが付設されている請求項1〜8のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−17929(P2009−17929A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180864(P2007−180864)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】