説明

使い捨ておむつ

【課題】着用者の排泄した尿と便を確実に分離して吸収・保持させることができ、軟便及び水様便の広がりと、その肌との接触とを効果的に防止することが可能である使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】吸収体と、吸収体の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、吸収体の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備えた使い捨ておむつであって、トップシートの上部に配置され、便を通過させ得る開口部として便通過用開口部28が形成されたスキンコンタクトシート24を備え、そのスキンコンタクトシート24が多孔シートによって構成されたものである使い捨ておむつ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体、トップシート及びバックシートを備え、トップシートの上部に前身頃から後身頃にかけて配置されるとともに後身頃側に便通過用開口部が形成されたスキンコンタクトシートを更に備えた使い捨ておむつに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、乳幼児用、或いは高齢者・障害者用のおむつとして、吸収体と、吸収体の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、吸収体の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備えた使い捨ておむつが汎用されている。この使い捨ておむつは、トップシートの表面を着用者の肌に接するように宛がって使用することにより、着用者の排泄した尿はトップシートを透過して、吸収体によって吸収・保持されるとともに、防漏性に優れたバックシートによって、排泄物のおむつ外部への漏洩が防止されるというものである。
【0003】
しかしながら、前記のような構成の使い捨ておむつでは、尿についてはトップシートを透過するものの、便についてはその殆どがトップシートを透過せず、トップシート上に残存することになる。トップシート上に残存した便は、着用者の股下部や臀部に付着するため、煩瑣な払拭作業が必要となり、育児負担や介護負担を増大させる原因となる他、着用者のスキントラブルの原因ともなっていた。このような問題は、着用者の排泄した便が軟便であった場合等には、一層顕在化することになる。
【0004】
そこで、トップシートの上部に更にもう1枚のシート体(本明細書では、「スキンコンタクトシート」と称することにする)が配置された使い捨ておむつが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。これらの使い捨ておむつでは、スキンコンタクトシートに、便を通過させ得る開口部として便通過用開口部及び尿を通過させ得る開口部として尿通過用開口部が形成されており、その便通過用開口部や尿通過用開口部を通って着用者の排泄した便や尿がトップシート上に落下するように構成されている。
【0005】
これらの使い捨ておむつでは、着用者の肌には、まずスキンコンタクトシートが接触するため、スキンコンタクトシートの下部に配置されるトップシートは着用者の肌と直接接触し難くなる。即ち、着用者の肌とトップシートとが離隔されることになる。また、トップシートと着用者の肌との間にスキンコンタクトシートという遮蔽層が介在していることにもなる。従って、着用者の排泄した便は、スキンコンタクトシートに形成された便通過用開口部を通過してトップシート上に落下し、その便と着用者の肌とが直接接触しにくくなり、おむつかぶれを防止することができる。
【特許文献1】実用新案登録第2559050号公報
【特許文献2】特開2007−130446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の使い捨ておむつでは、着用者の排泄した便が軟便や水様便である場合には、その軟便や水様便がスキンコンタクトシートの表面上に広範囲に広がり、その一部が便通過用開口部を通過することなく、スキンコンタクトシートの表面上に残存し、着用者の肌が軟便や水様便に直接接触しておむつかぶれの原因になるという問題があった。また、便通過用開口部を通ってトップシート上に落下した軟便や水様便がトップコートの表面上を伝って後身頃側から前身頃側に流れて尿通過用開口部を通してスキンコンタクトシートの表面上に露出し、着用者の肌が尿通過用開口部を通して軟便や水様便に直接接触しておむつかぶれの原因となるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであって、着用者の肌が軟便や水様便に直接接触してしまう事態を効果的に防止することが可能な使い捨ておむつを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記のような従来技術の課題を解決するために鋭意検討した結果、スキンコンタクトシートに複数の排泄液流入孔を形成することによって、着用者の肌が軟便や水様便に直接接触してしまう事態を効果的に防止し得ることに想到し、本発明を完成させた。具体的には、本発明により、以下の使い捨ておむつが提供される。
【0009】
[1] 吸収体と、前記吸収体の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、前記吸収体の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備えた使い捨ておむつであって、前記トップシートの上部に前身頃から後身頃にかけて配置され、前記前身頃側から前記後身頃側にかけて複数の排泄液流入孔が形成されるとともに前記後身頃側に便通過用開口部が形成されたスキンコンタクトシートを更に備え、前記後身頃側の前記排泄液流入孔の平均孔径が前記前身頃側の前記排泄液流入孔の平均孔径よりも大きく設定されているとともに、前記前身頃側の前記排泄液流入孔の占有面積率が前記後身頃側の前記排泄液流入孔の占有面積率よりも大きく設定されている使い捨ておむつ。
【0010】
[2] 前記後身頃側の前記排泄液流入孔及び前記前身頃側の前記排泄液流入孔は、貫通孔である前記[1]に記載の使い捨ておむつ。
【0011】
[3] 前記後身頃側の前記排泄液流入孔は有底孔であり、前記前身頃側の前記排泄液流入孔は貫通孔である前記[1]に記載の使い捨ておむつ。
【0012】
[4] 前記スキンコンタクトシートと前記トップシートとの間の空間に配置され、前記空間を前記前身頃側と前記後身頃側とに仕切る尿便分離壁を更に備え、前記尿便分離壁が、通気撥水性シートによって構成されたものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の使い捨ておむつ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の使い捨ておむつは、着用者の排泄した尿とあらゆる状態の便を分離して吸収・保持させることができ、軟便及び水様便の広がりによるそれらの肌との接触を効果的に防止することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の使い捨ておむつを実施するための最良の形態について、2ピースタイプのパンツ型おむつを例として具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える使い捨ておむつを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。なお、作図の都合上、図3及び図4については、スキンコンタクトシートに形成された排泄液流入孔を、図4については、開口部伸縮材、腹周り伸縮材及びウエスト周り伸縮材を、図面から捨象した形で作図を行った。
【0015】
なお、本明細書において「パンツ型おむつ」というときは、図1及び図2に示す使い捨ておむつ1のように、前身頃2と後身頃6の対応する側縁部同士(側縁部2a,6a、側縁部2b,6b)を接合することによって、接合部8、一つのウエスト周り開口部10及び一対の脚周り開口部12a,12bが形成され、予めパンツ型に構成されたおむつを意味するものとする。そして、「2ピースタイプ」とは、図2に示す使い捨ておむつ1のように、着用者の排泄物を吸収し、保持する機能(吸収・保持機能)を担う吸収性本体14が、着用者の身体を被包する機能(装着機能)を担う外装部材16から分離された別部材として構成されたタイプのおむつを意味するものとする。図3及び図4に示すように、吸収性本体14は吸収体22、トップシート18及びバックシート20を構成要素として備えた部材である。
【0016】
また、本明細書において、「前身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の腹側(身体前方)を覆う部分を意味し、「後身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の背側(身体後方)を覆う部分を意味するものとする。
【0017】
[1]本発明の使い捨ておむつの構成:
本発明の使い捨ておむつは、図3に示す使い捨ておむつ1のように、吸収体22と、トップシート18と、バックシート20とを備えた使い捨ておむつであり、トップシート18の上部に前身頃から後身頃にかけて配置され、前身頃側から後身頃側にかけて複数の排泄液流入孔が形成されるとともに後身頃側に便を通過させ得る開口部(便通過用開口部28)が形成されたスキンコンタクトシート24を更に備えたものである。又、図4に示す使い捨ておむつ1のように、スキンコンタクトシート24とトップシート18との間の空間46に配置され、その空間46を前身頃2側と後身頃6側とに仕切る尿便分離壁48とを更に備えてもよい。
【0018】
[1−1]スキンコンタクトシート:
スキンコンタクトシートは、着用者の肌とトップシートとを離隔、遮蔽するための部材であり、トップシートの上部に前身頃から後身頃にかけて配置され、前身頃から後身頃にかけて複数の排泄液流入孔が形成されるとともに後身頃側に便を通過させ得る開口部として便通過用開口部が形成されたシート状部材である。このスキンコンタクトシートを備えることによって、着用者の肌には、まずスキンコンタクトシートが接触するため、スキンコンタクトシートの下部に配置されるトップシートは、着用者の肌と直接接触し難くなる。つまり、トップシートと着用者の肌との間にスキンコンタクトシートという遮蔽層が介在していることになり、たとえトップシート上に便が残存していたとしても、その便と着用者の肌とが直接接触する機会を大幅に減少させる効果を有する。
【0019】
本発明の使い捨ておむつにおいて、スキンコンタクトシートには、複数の排泄液流入孔が形成されており、具体的には、図5に示す多孔のスキンコンタクトシート24の様に、前身頃側から後身頃側にかけて多数の排泄液流入孔71が形成された多孔シートから構成されている。すなわち、スキンコンタクトシート24では、軟便や水様便が便通過用開口部28を通らずに表面上に広がってしまった場合であっても、その軟便や水様便が排泄液流入孔71に流入することにより、軟便や水様便と着用者の肌との直接の接触を大幅に減少させることができる。また、便通過用開口部28を通って流入した軟便や水様便がトップシート18の表面上を伝って後身頃側から前身頃側に流れても、その軟便や水様便と着用者の肌との直接の接触を大幅に減少させることができる。
【0020】
スキンコンタクトシート24の断面図である図6(a)及び図6(b)に示す通り、本発明の使い捨ておむつにおいて、スキンコンタクトシート24の前身頃側領域F(股下部すなわちスキンコンタクトシート24の長手方向中央部を境として前身頃側に位置する領域)に形成された排泄液流入孔71は、貫通孔71aであり、排泄液としての尿の流入用として機能する。また、従来、尿がスキンコンタクトシートを通過しないことによって引き起こされていた横漏れやかぶれを防止する効果を持つとともに、従来、スキンコンタクトシートに尿通過用開口部及び便通過用開口部が形成され、便通過用開口部を通って流入した軟便や水様便がトップシートの表面上を伝って後身頃側から前身頃側に流れて尿通過用開口部を通してスキンコンタクトシートの表面上に露出し、着用者の肌が尿通過用開口部を通して軟便や水様便に接触することによって引き起こされていたおむつかぶれを防止する効果をも併せ持つ。一方、スキンコンタクトシート24の後身頃側領域B(股下部を境として後身頃側に位置する領域)に形成された排泄液流入孔71は、図6(a)に示す様に、貫通孔71aであっても良いし、図6(b)に示す様に、くぼみ形状の有底孔71bであっても良い。なお、このような有底孔71bを形成するには、例えば、複数枚の不織布を用い、そのうちの表面側に配置される不織布に貫通孔を形成すればよい。いずれの場合も、排泄液としての軟便や水様便の流入用として機能し、従来ならばスキンコンタクトシート24の表面上に広がったままになっていた軟便及び水様便を、排泄液流入孔71へと流入させ、肌と直接接触する面積を減少させる効果を持つ。
【0021】
また、本発明の使い捨ておむつにおいては、スキンコンタクトシートは、後身頃側領域Bの排泄液流入孔71の平均孔径が前身頃側領域Fの排泄液流入孔71の平均孔径よりも大きく設定されているとともに、前身頃側領域Fの排泄液流入孔71の占有面積率(前身頃側領域Fに位置する排泄液流入孔71全ての孔開口部分の総面積/前身頃側領域F全体の面積)が後身頃側領域Bの排泄液流入孔71の占有面積率(後身頃側領域Bに位置する排泄液流入孔71全ての孔開口部分の総面積/後身頃側領域B全体の面積(便通過用開口部28の開口面積を除く))よりも大きく設定されている。このことにより、スキンコンタクトシート上に尿通過用開口部が設けられていない場合でも、尿がスキンコンタクトシート上に広がることなく、素早く吸収され、尿と便とが混ざる事態を効果的に防ぐことができるとともに、便通過用開口部28を通って流入した軟便や水様便がトップシートの表面上を伝って後身頃側から前身頃側に流れたときの着用者の肌と軟便や水様便との直接接触面積を大幅に減少させることができ、着用者の肌が軟便や水様便と直接接触するのを効果的に防止することができる。
【0022】
本発明の使い捨ておむつにおいて、スキンコンタクトシート24には、以下のように多孔が形成されていることが好ましい。
【0023】
スキンコンタクトシート24の前身頃側領域Fにおいては、尿の流入を妨げず、しかも便通過用開口部28を通って流入した軟便や水様便がトップシートの表面上を伝って後身頃側から前身頃側に流れたときの着用者の肌と軟便や水様便との直接接触面積を減少させるという観点から、排泄液流入孔71が真円の場合には、排泄液流入孔71の平均孔径が直径0.5〜11mmであり、且つ全排泄液流入孔71の前身頃側領域Fに対しての占有面積率が30〜80%となるように排泄液流入孔71を設けることが好ましい。
【0024】
スキンコンタクトシートの後身頃側領域Bにおいては、軟便や水様便が便通過用開口部28を通らずにスキンコンタクトシート24の表面上に広がってしまった場合であっても、その軟便や水様便が排泄液流入孔71に流入して着用者の肌と軟便や水様便との直接接触面積を減少させるという観点から、排泄液流入孔71が真円の場合には、排泄液流入孔71の平均孔径が直径2〜20mmであり、排泄液流入孔71が楕円の場合には、排泄液流入孔71の平均孔径が短径2〜20mm、長径5〜20mmであり、且つ全排泄液流入孔71の後身頃側領域Bに対しての占有面積率が20〜70%となるように排泄液流入孔71を設けることが好ましい。
【0025】
また、スキンコンタクトシート24の後身頃側領域Bに複数の有底孔71bを形成する場合には、その深さはスキンコンタクトシート24の表面上に広がった軟便や水様便が流入してその流れを阻止できる深さであればよく、例えばスキンコンタクトシート24の厚みの1/2程度に設定することができる。
【0026】
スキンコンタクトシートを構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の樹脂からなる不織布、メッシュシート、フィルム等を用いることができる。中でも、肌触りが良好である点において、不織布を用いることが好ましい。これらの材料は、液透過性であっても、液不透過性であっても、撥水性であってもよい。但し、長時間着用した際にもさらっとした触感の続くドライ性を維持することができるという点において、撥水性の不織布等の材料を用いることが好ましい。
【0027】
スキンコンタクトシートには、着用者の排泄した便を通過させ得る開口部(便通過用開口部)が形成されている必要がある。このような構造とすることによって、着用者の排泄した便がスキンコンタクトシートを通過してトップシート上に落下することになり、便と着用者の肌とが直接接触する機会を大幅に減少させることが可能となる。
【0028】
開口部は便を通過させ得る形状である限り、その形状について特に制限はない。即ち、便を通過させ得る「開口部」には、円形開口部、楕円形開口部、菱形開口部等のいわゆる開口部(孔)の他、直線状スリット、十字状スリット、3本以上のスリットを交差させた星型スリット等のスリットも含まれる。中でも、おむつの前後方向(長手方向)を長軸方向とする楕円形開口部、或いは星型スリットが好ましい。楕円形開口部には、便がスキンコンタクトシートの開口部を通過し易いという利点があり、星型スリットには、一旦、スキンコンタクトシートの開口部を通過してトップシート上に落下した便が、再びスキンコンタクトシートの開口部から露出し、着用者の臀部を汚してしまうことを有効に防止することができるという利点がある。
【0029】
例えば、図2に示す使い捨ておむつ1は、便通過用開口部28として、おむつの前後方向に長く、その6つの角がラウンド形状である略六角形状の開口部を形成した例である。なお、孔やスリットのサイズについては、「便を通過させる」という機能を考慮した上で適宜決定すればよい。
【0030】
前記開口部にはその外縁に伸縮材(開口部伸縮材)を配置することが好ましい。開口部伸縮材を配置すると、スキンコンタクトシートに張力がかかるので、スキンコンタクトシートにコシを持たせることができる。従って、スキンコンタクトシートがへたってトップシート側に落ち込む事態を防止することができ、スキンコンタクトシートを着用者の肌に接触し易くさせるという利点がある。また、開口部伸縮材を配置すると、スキンコンタクトシートを収縮させ、トップシート、吸収体、バックシートは下側(外装部材側)に向かって撓ませる力を作用させることができる。従って、スキンコンタクトシートをトップシートから浮かせた状態を維持することができ、スキンコンタクトシートとトップシートとを確実に離隔させることが可能となる。更に、スキンコンタクトシートが収縮することによって、スキンコンタクトシートやトップシートと尿便分離壁となる通気撥水性シートとの間に空隙があった場合でもその空隙を埋めることができる。従って、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間を確実に仕切ることが可能となる。
【0031】
開口部伸縮材としては、従来の使い捨ておむつで使用されてきた伸縮材を好適に用いることができる。具体的には、天然ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性材からなる糸ゴム、平ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を挙げることができる。
【0032】
開口部伸縮材の配置パターンは、前記効果を発揮し得るパターンである限り特に制限はないが、開口部に確実に伸縮力を作用させるため、開口部伸縮材が開口部の周縁を取り囲むようなパターンに配置されていることが好ましい。例えば、開口部の周縁を取り囲むように、円形、楕円形、菱形等のパターンで開口部伸縮材を配置すればよい。
【0033】
また、開口部伸縮材として2本の開口部伸縮材を用い、その2本の開口部伸縮材が開口部の前後の少なくとも1点で交差し、開口部の周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置されていることも好ましい形態の一つである。このようなパターンで開口部伸縮材を配置すると、開口部伸縮材をおむつの前後方向に向かって連続的に配置することが可能となるため、使い捨ておむつの連続的な製造が容易になるという利点があり好ましい。
【0034】
例えば、図2に示す使い捨ておむつ1は、開口部伸縮材30として2本の開口部伸縮材30a,30bを用い、その2本の開口部伸縮材30a,30bが便通過用開口部28の直前部分Pで交差し、便通過用開口部28の周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置した例である。このようなパターンで開口部伸縮材30a,30bを配置すると、吸収性本体14が長手方向に向かって連続して配置されたような吸収性本体連続体を容易に製造することが可能となる。
【0035】
また、図2に示す使い捨ておむつ1は、開口部伸縮材30a,30bが交差する配置となっている。このような配置とすることにより、おむつの中心部(即ち、点P近傍)において幅方向(おむつ左右方向)への伸縮力を最も大きく作用させることができる。従って、スキンコンタクトシート24の中でも比較的弛み易い、便通過用開口部28の直前部分を着用者の肌に対してより密着させる効果がある。更に、図2に示す使い捨ておむつ1は、開口部伸縮材30a,30bが便通過用開口部28の直前部分P以外では交差しておらず、便通過用開口部28の後方の周縁が開放されたパターンに配置されている。このような配置とすることにより、スキンコンタクトシート24の前身頃2側や後身頃6側が着用者の肌に対して過度に密着しないため、通気性を確保することができる。従って、スキンコンタクトシートの当接による発汗が抑制され、汗に起因するムレやスキントラブルを効果的に防止することができる。
【0036】
前記のような開口部伸縮材は、スキンコンタクトシートに対して、接着剤その他の手段により固定される。固定方法としては、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着であってもよいし、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着であってもよい。
【0037】
開口部伸縮材は、開口部に十分な伸縮力を作用させるため、伸長状態で固定することが好ましい。例えば、開口部伸縮材が天然ゴムや合成ゴムである場合には、100〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することがより好ましい。このような範囲の伸長状態で固定することにより、開口部に十分な伸縮力を作用させ、かつ、開口部が必要以上に縮小されるのを防止することができる。
【0038】
開口部伸縮材の配置方法は特に限定されないが、例えば、図3に示す使い捨ておむつ1のように、スキンコンタクトシート24を2枚のシート材(アッパーシート24a、ライナーシート24b)を貼り合わせることにより構成し、アッパーシート24aとライナーシート24bの間に開口部伸縮材30a,30bを挟みこむように配置することが好ましい。このような配置方法を採用すると、必要最小限の伸縮材によりスキンコンタクトシートに伸縮力を付与することができるという効果を奏するため好ましい。
【0039】
図2乃至図4に示す使い捨ておむつ1は、スキンコンタクトシート24としてトップシート18の表面全体を覆うような形状のものを用いている。但し、本発明の使い捨ておむつにおけるスキンコンタクトシートは、このようなものに限定されるわけではなく、トップシートの表面よりも上部に配置されるシート体であれば足りる。
【0040】
スキンコンタクトシートの固定方法としては、(1)図3に示されるように、立体ギャザー26a,26bを構成するシート材32a,32bとトップシート18(乃至はバックシート20)との貼り合わせ部分に挟み込むようにスキンコンタクトシート24を固定する方法、(2)立体ギャザーの内側の面であって、立体ギャザーの上端縁と下端縁(起立線)との間の部分にスキンコンタクトシートを固定する方法等を挙げることができる。また、立体ギャザーと接触させることなく、対となる立体ギャザーによって包囲された内側の領域にスキンコンタクトシートを固定してもよい。例えば、(3)立体ギャザーによって包囲された領域のうち、吸収性本体のトップシートとバックシートの貼り合わせ部分(いわゆるフラップ部)にスキンコンタクトシートを固定する方法等を挙げることができる。これらの方法の中では、着用者の肌に対してスキンコンタクトシートを密着させる効果が高いという点で、(1)の方法が好ましい。
【0041】
[1−2]尿便分離壁:
尿便分離壁は、着用者の排泄した尿と便とを隔離するための部材であり、通気撥水性シートによって構成され、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間に配置される。この尿便分離壁を備えることによって、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間が尿便分離壁を境にして前身頃側と後身頃側とに仕切られ、前身頃側の空間に尿が、後身頃側の空間に便が誘導される。また、この尿便分離壁は、通気撥水性シートで構成されているので、シートを透過して前身頃側に誘導された尿が後身頃側に染み出すこともない。従って、尿と便とが混ざり合うことを有効に防止することができ、尿と便が混ざり合ってしまうことに起因するおむつかぶれの発生が効果的に抑制される。
【0042】
通気撥水性シートの構成材料としては、スパンボンドやカードエンボス等の不織布を用いてもよいが、耐水圧が高いという理由から、SMS(スパンボンド/メルトブロー/スパンボンド)、SMMS(スパンボンド/メルトブロー/メルトブロー/スパンボンド)等の不織布を用いることが好ましい。
【0043】
この通気撥水性シートは、その一端をスキンコンタクトシートに接合するとともに、その他端をトップシートの表面まで垂下させることによって、尿便分離壁を形成することができる。このように通気撥水性シートの一端をスキンコンタクトシートに接合することによって、尿便分離壁上部の空間を通過して尿や便が移動することを防止することができる。又、通気撥水性シートの他端については、トップシートに接合されていることが好ましい。通気撥水性シートの他端をトップシートに接合することによって、尿便分離壁が位置ずれすることなく強固に固定されるため、スキンコンタクトシートとトップシートとの間の空間が前身頃側と後身頃側とに確実に仕切られる。
【0044】
例えば、図4に示されているのは、スキンコンタクトシート24を構成するライナーシート24bの表面(下面)に、尿便分離壁48を構成する通気撥水性シート52の一端を接合し、その他端をトップシート18の表面まで垂下させた上で、トップシート18の表面(上面)に接合した例である。
【0045】
なお、尿便分離壁を構成する通気撥水性シートの長さは特に限定されるものではなく、尿便分離壁の高さ(スキンコンタクトシートとトップシートとの間隔)、折り畳み部の大きさ、接合位置等を考慮して所望の長さのものを用いればよい。
【0046】
[1−3]吸収体:
吸収体は、着用者の尿を吸収し、保持するための部材である。吸収体は、着用者の尿や体液を吸収し保持する必要から、吸収性材料によって構成される。
【0047】
吸収体を構成する吸収性材料としては、使い捨ておむつ、その他の吸収性物品に通常使用される従来公知の吸収性材料、例えば、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す)、親水性シート等を挙げることができる。フラッフパルプとしては木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものを、SAPとしてはポリアクリル酸ナトリウムを、親水性シートとしてはティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布を用いることが好ましい。
【0048】
これらの吸収性材料は、通常、単層乃至は複層のマット状として用いられる。この際、前記の吸収性材料のうち1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部程度のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプの各マット中に均一に混合されていてもよいし、複層のフラッフパルプの層間に層状に配置されていてもよい。
【0049】
吸収体は、トップシートとバックシートの間の少なくとも一部に介装されることが好ましい。通常、吸収体は、トップシートとバックシートの間に挟み込まれ、その周縁部が封着されることによって、トップシートとバックシートとの間に介装される。従って、吸収体の周縁部にはトップシートとバックシートの間に吸収体が介装されていないフラップ部が形成されることになる。
【0050】
吸収体は、その全体が親水性シートによって包み込まれていることが好ましい。このような構成は、吸収体からSAPが漏洩することを防止し、吸収体に形状安定性を付与することができるという利点がある。
【0051】
吸収体の形状については特に制限はないが、従来の使い捨ておむつ、その他の吸収性物品において使用される形状、例えば、矩形状、砂時計型、ひょうたん型、T字型等を挙げることができる。
【0052】
[1−4]トップシート:
トップシートは、吸収体の上面(おむつの装着時において着用者の肌側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。トップシートは、その下面側に配置された吸収体に、着用者の尿を吸収させる必要から、少なくとも一部(その全部乃至一部)が液透過性材料により構成される。
【0053】
トップシートを構成する液透過性材料としては、例えば、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0054】
トップシートは単一のシート材によって構成されていてもよいが、複数のシート材によって構成されていてもよい。例えば、後述するテープ型おむつにおいては、おむつの中央部には液透過性材料からなるトップシート(センターシート)を配置し、おむつのサイドフラップ部分には撥水性材料からなるトップシート(サイドシート)を配置する形態がよく利用される。
【0055】
[1−5]バックシート:
バックシートは、吸収体の下面(おむつの装着時において着用者の着衣側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。バックシートは、着用者の尿がおむつ外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。
【0056】
バックシートを構成する液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができ、中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは、0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されており、液不透過性ではあるが透湿性を有するため、おむつ内部の蒸れを防止することができるという利点がある。
【0057】
なお、バックシートには、その外表面側にシート材(カバーシート)を貼り合わせてもよい。このカバーシートは、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0058】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0059】
[1−6]吸収性本体:
2ピースタイプのパンツ型おむつにおいては、トップシート、バックシート及び吸収体を、吸収・保持機能を担う「吸収性本体」という一つの部材として構成し、これとは別個に製造された外装部材と接合することにより使い捨ておむつを構成する。この吸収性本体は、生理用ナプキン等と同様に、吸収体の上面側にトップシート、下面側にバックシートが配置されたものであり、トップシートとバックシートとの間に吸収体が介装された構造となっている。例えば、図3及び図4に示されているのは、トップシート18とバックシート20の間に吸収体22を挟みこみ、吸収体22の周縁部を封着することによって、トップシート18とバックシート20との間に吸収体22が介装された構造の吸収性本体14を構成した例である。
【0060】
吸収性本体は、少なくともおむつの股下周辺をカバーするサイズに構成される。但し、漏れ防止の効果を確実なものとするため、股下周辺のみならず前身頃や後身頃の充分な範囲をもカバーする大きさに構成することが好ましい。吸収性本体は、例えばホットメルト接着剤等を用いて、外装部材に対して固定することができる。
【0061】
[1−7]外装部材:
外装部材は、着用者の身体を被包するための装着機能を担う部材であり、具体的には、前身頃及び後身頃の各部を形成するシート状の部材である。
【0062】
2ピースタイプのパンツ型おむつでは、着用者の排泄物を吸収し、保持する吸収・保持機能については、専ら吸収性本体が果たすことになるので、外装部材を構成する材料として液不透過性材料を用いる必要はない。外装部材を構成する材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、その他の熱可塑性樹脂からなる合成繊維によって構成された不織布等を挙げることができる。
【0063】
そして、外装部材は、脚周り伸縮材等を挟み込んだ状態で固定するために、2枚以上の不織布を貼り合わせて構成されることが多い。例えば、図3及び図4に示されるように、外装部材16を2枚の不織布から構成し、その2枚の不織布の間に図1及び図2に示されるように脚周り伸縮材40、ウエスト周り伸縮材42及び腹周り伸縮材44を挟み込み固定することができる。
【0064】
[1−8]各種伸縮材:
パンツ型の使い捨ておむつにおいては、脚周り伸縮材を配置し、ウエスト周り伸縮材を配置することが一般的であり、更に腹周り伸縮材を配置することが好ましい。
【0065】
脚周り伸縮材は、脚周り開口部に沿って配置される伸縮材である。この脚周り伸縮材を配置することによって、脚周り開口部に伸縮性に富むギャザー(レグギャザー)を形成することができる。従って、脚周りに隙間が形成され難くなり、脚周り開口部からの尿漏れを効果的に防止することができる。
【0066】
ウエスト周り伸縮材は、ウエスト周り開口部に沿って配置される伸縮材である。ウエスト周り伸縮材を配置することによって、ウエスト開口部に伸縮性に富むギャザー(ウエストギャザー)を形成することができる。このウエストギャザーにより、ウエスト周りに隙間が形成され難くなり、ウエスト周りからの尿漏れを防止することができる他、着用者へのおむつのフィット性が良好となり、おむつのずり下がりが防止される。
【0067】
腹周り伸縮材は、ウエスト周り開口部と脚周り開口部との間の部分(即ち、着用者の腹周りに相当する部分)に配置される伸縮材である。腹周り伸縮材を配置することによって、着用者の腹周りに伸縮性に富むタミーギャザーを形成することができる。このタミーギャザーは、ウエストギャザーと相俟って、おむつのフィット性やずり下がり防止効果を一層優れたものとすることができる。
【0068】
なお、図1及び図2に示す使い捨ておむつ1は、脚周り開口部12a,12bの周縁には複数本の脚周り伸縮材40を配置し、ウエスト周り開口部10の周縁にはウエスト周り開口部10を取り囲むように複数本のウエスト周り伸縮材42を配置し、更に、ウエスト周り開口部10と脚周り開口部12a,12bとの間の部分(即ち、着用者の腹周りに相当する部分)には、着用者の腹周りを取り囲むように複数本の腹周り伸縮材44を配置した例である。
【0069】
これらの伸縮材については、既に述べた開口部伸縮材と同様の構成を採用することができる。そして、ギャザーの収縮の程度等を勘案した上で、構成材料、その材料の伸長率、固定時の伸長状態等を決定すればよい。
【0070】
[1−9]立体ギャザー:
着用者の排泄した尿の横漏れを防止するため、立体ギャザーを有してもよい。立体ギャザーは、着用者の排泄した尿の横漏れを防止するための部材であり、立体的に起立可能なように構成された防漏壁である。このような立体ギャザーを形成することにより、スキンコンタクトシートの上に尿が排泄され、スキンコンタクトシートを伝って尿が拡散してしまった場合でも、立体ギャザーが防波堤となり、おむつの脚周り開口部等からの漏れ(いわゆる「横漏れ」)を有効に防止することができる。
【0071】
立体ギャザーの構成は、従来の使い捨ておむつ、その他の吸収性物品に使用される構成を採用することができる。例えば、通気撥水性シートの一部に伸縮材(立体ギャザー伸縮材)を配置し、その立体ギャザー伸縮材によってシート材にギャザー(襞)を形成したもの等を好適に用いることができる。
【0072】
図2及び図3に示す使い捨ておむつ1は、トップシート18やバックシート20とは全く別個のシート材32a,32bを、吸収性本体14の両側縁部に貼り合わせ、起立線38から立体的に起立可能な構造とすることにより、1対の立体ギャザー26a,26bを形成した例である。この例では、シート材32a,32bの端部(立体ギャザー26a,26bの上端縁34に相当する側の端部)を折り返し、その折り返し部分に2本の立体ギャザー伸縮材36a,36b乃至は立体ギャザー伸縮材36c,36dを挟み込むように配置している。
【0073】
[2]製造方法:
以下、本発明の使い捨ておむつを製造する方法の一例を、使い捨ておむつ1(2ピースタイプのパンツ型おむつ)を製造する場合の例により説明する。
【0074】
[2−1]吸収性本体の製造:
バックシート20の上面に、親水性シートに包まれた吸収体22を配置し、更にその上面にトップシート18を配置する。次いで、吸収体22の周縁部をトップシート18とバックシート20とで挟み込むように封着することによって吸収性本体14を得る。
【0075】
[2−2]スキンコンタクトシートの製造:
ライナーシート24bの上面に、2本の開口部伸縮材30a,30bを所定のパターンに配置しつつ、アッパーシート24aを貼り合わせる。この際、2本の開口部伸縮材30a,30bは、後に形成される便通過用開口部28前方側部分の点Pで交差し、便通過用開口部28の周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置する。
【0076】
次いで、一枚に貼り合わされたライナーシート24bとアッパーシート24aを、所定の凸パターンを有するパターンドラムに供給し、排泄液流入孔71として貫通孔71aを形成すると、図6(a)に示されるスキンコンタクトシート24が得られる。
【0077】
また、後身頃側に排泄液流入孔71として有底孔71bを形成する場合には、まずアッパーシート24aの後身頃側領域Bにのみ貫通孔71aを形成し、その後、当該アッパーシート24aにライナーシート24bを貼り合わせ、続いて、一枚に貼り合わされたシートの前身頃側領域Fにのみ貫通孔71aを形成すれば、図6(b)に示されるような、後身頃側に排泄物流入孔71として有底孔71bを有し、前身頃側に排泄液流入孔71として貫通孔71aを有するスキンコンタクトシート24を容易に形成することができる。
【0078】
さらに、多数の排泄液流入孔71を形成したライナーシート24bとアッパーシート24aに、便通過用開口部28を形成する。こうすることによって、2本の開口部伸縮材30a,30bが便通過用開口部28の周縁の一部を取り囲むようなパターンに配置された2層構造の多孔のスキンコンタクトシート24を得る。
【0079】
更に、Z折りされた通気撥水性シート52(後に尿便分離壁48となる)の一端54を、ライナーシート24bの表面(下面)であり、便通過用開口部28の直前部分に貼り付けて接合し、固定する(接合部62)。こうすることにより、後に尿便分離壁48となる通気撥水性シート52が付設されたスキンコンタクトシート24を得る。この際、通気撥水性シートはZ折りのものに限らず、複数回折り畳んだ構造のものを用いてもよい。この固定はホットメルト接着剤等の接着剤による接着や、ヒートシール、超音波シール、エンボスロール等による加熱接着、加圧接着等、使い捨ておむつを製造する際に用いられる従来公知の接合法により行うことができる。図4に示されているのは、通気撥水性シート52の一端54をホットメルト接着剤によってライナーシート24bの表面(下面)に貼り付け、接合・固定した例である。
【0080】
[2−3]立体ギャザーの製造:
シート材32a(32b)の一方の端部を折り返し、その折り返し部分に、2本の立体ギャザー伸縮材36a、36b(36c,36d)を挟み込んだ状態で貼り合わせることによって、立体ギャザー26a(26b)を得る。
【0081】
[2−4]吸収性本体へのスキンコンタクトシート等の付設:
吸収性本体14を構成するトップシート18の表面に、スキンコンタクトシート24(ライナーシート24b)の前端側、後端側、左右側縁側を各々接合し、固定する。この際、通気撥水性シート52の他端56をトップシート18の表面に貼り付けて接合・固定する(接合部66)。これらの固定は、通気撥水性シートをスキンコンタクトシートに接合するのと同様の接合法により行うことができる。この際、通気撥水性シートを、その両端の接合部の間で1回乃至複数回折り畳んだ構造とすると、尿便分離壁の起立高を高くすることができるので好ましい。図4に示されているのは、通気撥水性シート52がZ折りし、2回折り畳んだ構造とした例である。なお、接合部66の前端部は、おむつの着用時に尿便分離壁48の起立線を形成することになる。
【0082】
上記のようにトップシート18の表面に、スキンコンタクトシート24(ライナーシート24b)の前端側、後端側、左右側縁側及び通気撥水性シート52の他端56を貼り合わせた後、吸収性本体14とスキンコンタクトシート24(ライナーシート24b)の側縁を挟み込むように、立体ギャザー26a,26bを貼り合わせる。
【0083】
[2−5]外装部材の製造:
まず、外装部材16となる不織布を2枚用意し、このうちの1枚の不織布の上面に、ウエスト周り伸縮材42、腹周り伸縮材44及び脚周り伸縮材40を配置し接着固定する。そして、この上面に、更にもう1枚の不織布を積層し固定することにより、2枚の不織布の間に、ウエスト周り伸縮材42、腹周り伸縮材44及び脚周り伸縮材40が介装された外装部材16を得る。
【0084】
[2−6]使い捨ておむつの製造:
外装部材16の中心部近傍に、吸収性本体14を配置し固定する。次いで、吸収性本体14を内側にして、前身頃2と後身頃6とを合わせるように二つ折りにし、前身頃2と後身頃6とをヒートシール等の手段により接合し、接合部8を形成することによって、図1乃至図4に示す使い捨ておむつ1を製造することができる。
【0085】
前記のような一連の工程は、機械的な手段によって連続的に行うことが可能である。例えば、長尺のシート材や伸縮材をローラーから連続的に送出する等の方法・装置を採用することにより、使い捨ておむつの連続製造が可能となり、生産性の向上に資する。
【0086】
[3]本発明の適用対象:
本発明の使い捨ておむつの適用対象は、前記2ピースタイプのパンツ型おむつに限られるものではなく、例えば、1ピースタイプのパンツ型おむつやテープ型おむつにも適用することができる。即ち、これらの使い捨ておむつにおいても、トップシートの表面よりも上部にスキンコンタクトシートを配置し、通気撥水性シートによって構成された尿便分離壁を配置することにより、本発明の使い捨ておむつの効果を享受することができる。
【0087】
なお、「1ピースタイプ」とは、2ピースタイプと同様に、トップシート、バックシート、吸収体を備えているが、吸収・保持機能を担う吸収体がトップシートとバックシートの間に介装(内蔵)され、装着機能を担うトップシート及び/又はバックシートと一体的に構成されたタイプのおむつを意味するものとする。
【0088】
また、「テープ型おむつ」とは、トップシートと、バックシートと、両シートの間の少なくとも一部に介装された吸収体と、装着用のテープファスナーとを備え、テープファスナーによっておむつの前身頃と後身頃とを相互に固定し得る使い捨ておむつを意味するものとする。「テープ型おむつ」にも、パンツ型おむつと同様に「1ピースタイプ」と「2ピースタイプ」が存在するが、本発明の使い捨ておむつはいずれのタイプのテープ型おむつにも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の使い捨ておむつは、軟便及び水様便の広がりを有効に防止することができ、育児負担や介護負担を増大させる煩瑣な払拭作業や、便と肌とが直接接触してしまうことに起因するおむつかぶれの発生を効果的に抑制することができるので、介護を必要とする高齢者や障害者等の成人、或いは肌が弱くスキントラブルが多い、乳幼児用のおむつとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を示す概略斜視図であり、おむつの前方から見た状態を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を示す平面図であり、図1に示す使い捨ておむつを展開し、おむつの吸収性本体側から見た状態を示す平面図である。
【図3】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を示す概略断面図であり、図2に示す使い捨ておむつをX−X’線に沿って切断した断面を示す概略断面図である。
【図4】本発明の使い捨ておむつの一の実施形態を示す概略断面図であり、図2に示す使い捨ておむつをY−Y’線に沿って切断した断面を示す概略断面図である。
【図5】本発明の使い捨ておむつのスキンコンタクトシートを示す一部拡大平面図である。
【図6】図5に示すスキンコンタクトシートをZ−Z’線に沿って切断した概略断面図であり、(a)は後身頃側の排泄液流入孔が貫通孔である場合であり、(b)は有底孔である場合である。
【符号の説明】
【0091】
1:使い捨ておむつ、2:前身頃、2a,2b:側縁部、6:後身頃、6a,6b:側縁部、8:接合部、10:ウエスト周り開口部、12,12a,12b:脚周り開口部、14:吸収性本体、16:外装部材、18:トップシート、20:バックシート、22:吸収体、24:スキンコンタクトシート、24a:アッパーシート、24b:ライナーシート、26,26a,26b:立体ギャザー、28:便通過用開口部、30:開口部伸縮材、32,32a,32b:シート材、34:上端縁、36,36a,36b,36c,36d:立体ギャザー伸縮材、38:起立線、40:脚周り伸縮材、42:ウエスト周り伸縮材、44:腹周り伸縮材、46:空間、48:尿便分離壁、52:通気撥水性シート、54:一端、56:他端、58:折り畳み部、62a,62b,62c,62d:接合部、66:接合部、68a,68b,68c,68d:接合部、71:排泄液流入孔、71a:貫通孔、71b:有底孔、P:点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体と、前記吸収体の上面を被覆するように配置され、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、前記吸収体の下面を被覆するように配置され、液不透過性材料からなるバックシートとを備えた使い捨ておむつであって、
前記トップシートの上部に前身頃から後身頃にかけて配置され、前記前身頃側から前記後身頃側にかけて複数の排泄液流入孔が形成されるとともに前記後身頃側に便通過用開口部が形成されたスキンコンタクトシートを更に備え、
前記後身頃側の前記排泄液流入孔の平均孔径が前記前身頃側の前記排泄液流入孔の平均孔径よりも大きく設定されているとともに、前記前身頃側の前記排泄液流入孔の占有面積率が前記後身頃側の前記排泄液流入孔の占有面積率よりも大きく設定されている使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記後身頃側の前記排泄液流入孔及び前記前身頃側の前記排泄液流入孔は、貫通孔である請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記後身頃側の前記排泄液流入孔は有底孔であり、前記前身頃側の前記排泄液流入孔は貫通孔である請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記スキンコンタクトシートと前記トップシートとの間の空間に配置され、前記空間を前記前身頃側と前記後身頃側とに仕切る尿便分離壁を更に備え、
前記尿便分離壁が、通気撥水性シートによって構成されたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の使い捨ておむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−50621(P2009−50621A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222375(P2007−222375)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(390036799)王子ネピア株式会社 (387)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】