説明

使い捨て式の接線流濾過装置保持器

【課題】接線流れ濾過装置において、濾過媒体を交換する際に上記の清浄化及びその確認工程を必要としない濾過装置を提供することが望まれる。
【解決手段】濾過要素と頂部保持板及び底部保持板との間にライナーを設けた接線流れ濾過装置において、従来マニホールドに存在していた流れチャンネルと、入口と、出口の代わりに、ライナーが流れチャンネルと入口と出口を有する。ライナーは安価な素材から形成されており、そのため一回の使用後に処分でき、従来のマニホールドを清浄化するよりもライナーを廃棄する方がより費用効率が高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濾過装置に関し、特に接線流れ濾過に使用するための濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
接線流れ濾過(TFF)は膜を使用して分子寸法や分子重量の差に基づいて溶液又は分散液中の成分を分離する分離方法である。その用途にはタンパク質、核酸、抗原、モノクローナル抗体、その他の生分子の濃縮、清澄化、脱塩;バッファ交換;プロセス開発;膜選択の研究;コロイド粒子の除去のための前清澄化;デキストローゼや抗生物質のような小分子の脱熱;細胞培養物、溶解物、コロイド懸濁物、ウイルス培養物等の集菌、洗浄、又は清澄化;或いは試料調製等がある。
【0003】
接線流れ濾過(TFF)では、濾過すべき溶液又は分散液を膜表面に沿って交差流方向に通過させる。濾過に対する駆動力は膜の両側の圧力差であり、通常はポンプにより圧力差を発生する。濾液が膜表面に沿って通過する速度はまた濾過速度を規制し、膜の目詰まりを防止する助けとなる。接線流れ濾過は膜表面に沿って濾過残液を循環させるので、膜汚染は抑制され、高い濾過率が維持され、精製物回収量が向上する。
【0004】
従来の接線流れ濾過装置は、ポンプ、供給溶液貯槽、濾過モジュール、及びこれらの部材を接続する回路を含む複数の部材から構成されている。使用において、供給溶液は供給溶液貯槽から濾過モジュールに供給され、濾過残液は、所定の他濾過残液体積が得られるまで濾過モジュールから供給液貯槽へ再循環される。膜は頂部マニホールド又はホルダと底部マニホールド又はホルダの間にサンドイッチされている。これらのマニホールドは装置の内部液圧に対する正確な機械的拘束を行うとともに、濾過流を装置内の多数の流路に分配する作用を行う。これらのマニホールド又はホルダは典型的にはステンレス鋼から製作され、特に特定の生物薬品その他の衛生的な用途においては、各使用に先だって清浄化及びその確認を行わなければならない。この方法には費用と時間がかかる。(例えば、特許文献1参照。)
【0005】
【特許文献1】特開2006−88152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
濾過媒体を交換する際に上記の清浄化及びその確認工程を必要としない濾過装置を提供することが望まれる。本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に従って、濾過要素と頂部保持板及び底部保持板との間にライナーを設けた接線流れ濾過装置が提供される。従来マニホールドに存在していた流れチャンネルと、入口と、出口の代わりに、ライナーが流れチャンネルと入口と出口を有する。ライナーは安価な素材から形成されており、そのため一回の使用後に処分でき、従来のマニホールドを清浄化するよりもライナーを廃棄する方がより費用効率が高くなる。加えて、ライナーは予め滅菌することが可能である。動作条件の下での十分な強度及び剛性を与えるために、ライナーは、ライナーが締め付け力の下で回転力を受ける(または、回転する)ことを防止するために保持板に隣接する格子パターン状のリブを有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1には本発明の実施例による濾過装置10の分解斜視図が示されている。濾過装置10は頂部保持板12とそれから離間した底部保持板13を含む。保持板12、13は好ましくはステンレス鋼から製作され、例えば50〜60psi(0.35〜0.41MPa)の内圧に対して装置を構成する組立体の正確且つ効果的な機械的拘束を行うに充分な剛性と耐久性を提供する。保持板12、13にはそれぞれ開口28が設けられ、また組立体を構成する各層にも開口28が設けられ、それらには結合ロッドまたはねじ付きピン又はボルト14が挿通されて各層が互いに一体に締着される。あるいは他の締着手段が使用されてもよい。スペーサ15が設けられ、またスペーサにはばねを装着してもよい。保持板12、13には濾過流通路は存在しない。
【0009】
組立状態の保持板12の下側には使い捨てできる第1のライナー16が配置される。ライナー16は好ましくは薬物分析に使用可能で(好ましくは政府が承認した)、用途に適した安価な材料から製作される。ライナーに適した構成材料には、ポリスチレン、より好ましくはポリプロピレンやポリエチレンのようなポリオレフィン、それらの共重合体、及びそれらの混合物のようなプラスチック材料が含まれる。それの強度及び剛性の観点から見て特に好ましい材料はポリスルホンである。ライナー16は好ましくは通路と開口が成形で形成されている。別法としては、ライナー16は切削、孔開け、その他の方法により形成しても良いが余り好ましくない。
【0010】
図2に最も良く示されているように、ライナー16は第1のポート17A、5つの副孔17C、第2のポート17B、及び4つの副孔17Dを有する。ポート17Aは組立体内部でのライナーの向きに依存して供給物の導入または残渣液の排出を行い、一方ポート17Bは残渣液または供給物との混合を防止した状態で濾液の排出を行う。ポート17Aはマニホールド配置の5つの副孔17Cに接続されている。同様にポート17Bは4つの副孔17Dに接続されている。ポート17A、17Bは他の部材との干渉を避けて適当な間隔を与えるため、図示のようにライナーの両側に配置されてもよい。しかし、特に間隔が充分取れるか又は干渉が起きない、示されている用途では同じ側に配置されても良い。各ポート17A、17Bは、供給物、残渣液、又は濾液の流れを許容するための各種開口部に連通する通路に接続され、それにより装置内に濾過流のための複数の流路を画定する。
【0011】
通路は好ましくはそれぞれのポートから遠ざかるにつれて先細となり各副孔17C、17Dにおける圧力を等化または正規化する。
【0012】
図1を再び参照するに、ライナー16の下側には濾過要素20が配置されている。濾過要素20は単一の膜であってもよいが、好ましくは積層された限界濾過膜又は精密濾過膜のような、積層された複数の膜であるか、最も好ましくはカセット形態のものである。複数膜を収容した単一カセットが例示されているが、複数のカセットを使用しても良い。適当なカセットの例にはMillipore Corporationから販売されているPELLICON(商品名)がある。
【0013】
濾過要素20の下側には第2のライナー22が配置されている。第2のライナー22は好ましくは第1のライナー16と同一の構造であるが、装置が組み立てられた状態では、図示のように第1のライナー16の姿勢に対して上下反転している。このようにすると、ポート17Aは正規の姿勢(向き)で装置の供給ポートと連絡し、反転の姿勢(向き)で残渣液ポートと連絡する。ライナーのポート17Bは両方の姿勢で濾液ポートに連通する。
【0014】
図3に示したように、好ましくはライナー16、22の片面に複数の相互結合するリブを設ける。リブはライナーに剛性を与える。ライナーは成形法により形成されてもよい。リブは保持板12、13に接触する側に配置されている。リブはポートによって中断されている場所を除いて、ライナーの一方の側から他方の側まで拡張する。示されているリブの構成においては、9個の横方向のリブ25A−25I及び9個の縦方向のリブ26A−26Iを含む、縦方向及び横方向の複数のリブによって格子が形成されている。縦方向リブは好ましくは互いに平行であり、横方向リブも好ましくは互いに平行であり、縦方向リブに対して垂直である。横方向25B−25Hが好ましくは等間隔に配置されるのに対し、横方向リブ25Aと25Bの間、及び25Aとライナーの側壁225の間の間隔、並びに横方向リブ25Hと25Iの間、及び25Iとライナーの反対側の側壁226の間の間隔は小さめになっている。
【0015】
リブを側壁部分及びその周辺でより密集した状態に配置することにより、ライナーに付加的な強度を与えることができる。縦方向リブ26A−26Iは全て等間隔に配置され、その間隔は好ましくは、横方向リブ25B−25Hの間隔と同一または実質的に同一にされる。それによりリブ25B−25H及びリブ26A−26Iの間に画定される格子は複数の正方形を有し、リブ25H、側壁226、及びリブ26A−26Iの間に形成される格子は複数の長方形を有し、そして、リブ25B、側壁225、及びリブ26A−26Iの間に形成される格子も複数の長方形を有する。濾液ポート17Bの周囲にはU型のリブ27Aが形成され、残渣液ポート17Aの周囲にはU型のリブ27Bが形成される。
【0016】
示されている複雑なリブ構成はライナーに強度及び剛性を与える。組み立てられたとき、濾過要素20及びライナーには大きな締め付け力が加えられ、ライナーの平滑側と濾過要素20の間には封止が形成される。リブ構成が存在しない場合、ライナーは平坦でなくなる可能性があり、それによって濾過要素20への適当な封止が得られなくなる。これらのリブは、リブに結合する保持板の対応する溝を必要とせずに、圧力の適用によってライナーが本発明の濾過装置に封止状態の結合で効果的に組み立てられることを可能にする。したがって、ライナーの格子に接する保持板の対応する表面は好ましくは平坦であってもよく、ライナーに結合するための特殊なデザインを必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の濾過装置の分解図である。
【図2】本発明によるライナーの上面図である。
【図3】本発明によるライナーの底面図である。
【符号の説明】
【0018】
10 濾過装置
12 頂部保持板
13 底部保持板
14 ピン(または、ボルト)
15 スペーサ
16 第1ライナー
17A 第1ポート
17B 第2ポート
17C、17D 副孔
20 濾過要素
22 第2ライナー
25A−25I 横方向リブ
26A−26I 縦方向リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頂部保持板;該頂部保持板から離間した底部保持板;前記頂部保持板と底部保持板との間に配置されたフィルタ材とを有する濾過装置において:前記頂部保持板と前記フィルタ材との間には、流体入口と、流体出口と、複数の流体入口開口と、前記頂部保持板に面している片側に設けたリブのパターンとを有する使い捨て可能な第1の裏打ちライナーが配置され;前記底部保持板と前記フィルタ材との間には、流体入口と、流体出口と、複数の流体出口開口と、前記底部保持板に面している片側に設けた複数のリブとを有する使い捨て可能な第2の裏打ちライナーが配置され;前記頂部保持板と底部保持板には流体通路がなく、前記頂部保持板と底部保持板の各々は、前記第1及び第2ライナーの前記複数のリブに結合する実質的に平らな表面を有している濾過装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のライナーの前記リブのパターンが格子パターンを画定する、請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
対応する前記頂部保持板または底部保持板と組み合わされ、圧力を加えられたときに、前記格子パターンが前記ライナーを平らな状態に保持する、請求項2に記載の濾過装置。
【請求項4】
対応するライナーの前記複数のリブが相互結合している、請求項1に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記頂部保持板及び底部保持板がステンレス鋼から構成されている、請求項1に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記ライナーの各々がポリスルホンから構成されている、請求項1に記載の濾過装置。
【請求項7】
保持板と濾過要素の間を封止するために構成された濾過装置のためのライナーであって、前記濾過要素に接するために構成された平らな面、及び前記保持板に接するために構成された複数の相互結合するリブを有する反対側の面を備え、前記ライナーが圧力の下で前記濾過装置内で効果的に封止されるように前記相互結合するリブが前記ライナーに十分な強度を与えるライナー。
【請求項8】
前記リブが格子パターンを画定する、請求項7に記載のライナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−283298(P2007−283298A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−103871(P2007−103871)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】