説明

使い捨て着用物品

【課題】吸収性能を確保しつつ、体液を吸収した際における装着感の悪化や漏れの発生を抑制することができる使い捨て着用物品を提供する。
【解決手段】 本発明に係る使い捨て着用物品1は、着用者の排尿部に当接する領域である排尿領域S3と、着用者の臀部に当接する領域である後胴回り領域S2と、を有し、吸収性ポリマーが液透過性シート間に挟持された吸収性シート90が設けられている。排尿領域には、吸収性シートが配置されておらず、後胴回り領域には、吸収性シートが配置されており、排尿領域に位置する吸収体には、排尿領域から後胴回り領域に向かって延びる中央開口部45が設けられており、後胴回り領域には、前後方向と幅方向のうち少なくとも前後方向に伸縮する前脚回り弾性材5F及び後脚回り弾性材5Rが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液を吸収する吸収性ポリマーを有する使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
パンツ型おむつなどの使い捨て着用物品は、近年、高い吸収性能が求められており、体液を吸収する吸収性ポリマーを有する使い捨て着用物品が種々提供されている。例えば、特許文献1には、吸収性ポリマーとしての超吸収性材材料を有する使い捨て用着用物品が記載されている。
【0003】
この使い捨て用着用物品は、裏面シートと、裏面シート上に配置された吸収性構造と、を有する。吸収性構造は、前端部と後端部とを含む吸収性層と、吸収性層上に配置されたサージ層とを含んでいる。吸収層の前端部には、吸収性パネルが積層されており、吸収性構造の前端部には、吸収性層と吸収性パネルとが積層されて肉厚となった前部吸収性領域が形成されている。この前部吸収性領域を構成する吸収層及び吸収性パネルは、前述の超吸収性材料を含んでいる。このように構成された使い捨て用着用物品によれば、着用者の前側に当接する前部吸収性領域に多くの超吸収性材料を配置して吸収性能を確保し、着用者から排泄された体液を前部吸収性領域において吸収することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−66426号公報(図3、図5、段落0011、0015、0016等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の使い捨て用着用物品においては、以下の問題があった。
【0006】
前部吸収性領域に多くの超吸収性材料が配置されており、この前部吸収性領域によって体液を集中的に吸収する。よって、体液の吸収に伴って前部吸収性領域のみが部分的に重くなり、前部吸収性領域のみが引き下がることがある。よって、前部吸収性領域と身体との隙間が生じ、横漏れが発生したり、フィット性の低下により装着感が悪化したりするおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、吸収性能を確保しつつ、体液を吸収した際における装着感の悪化や漏れの発生を抑制することができる使い捨て着用物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る使い捨て着用物品(使い捨ておむつ1)は、液透過性の表面シート(表面シート10)と、裏面シート(吸収体裏面被覆シート30)と、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置され、かつ着用者の身体前側と身体後側とに延びる前後方向及び前記前後方向に直交する幅方向を有する吸収体(吸収体40)と、を備え、着用者の排尿部に当接する領域である排尿領域(排尿領域S3)と、前記排尿領域よりも後方に配置され、前記着用者の臀部に当接する領域である臀部領域(後胴回り領域S2)と、を有し、前記表面シートと前記裏面シートとの間に、吸収性ポリマーが液透過性シート間に挟持された吸収性シート(吸収性シート90)が設けられた使い捨て着用物品であって、前記排尿領域には、前記吸収性シートが配置されておらず、前記臀部領域には、前記吸収性シートが配置されており、前記排尿領域と前記臀部領域のうち少なくとも前記排尿領域に位置する前記吸収体には、前記排尿領域から前記臀部領域に向かって延びる案内部(中央開口部45、第1サイドスリット46)が設けられており、前記臀部領域には、前記前後方向と前記幅方向のうち少なくとも前記前後方向に伸縮する臀部伸縮性部材(前脚回り弾性材5F、後脚回り弾性材5R)が設けられていることを要旨とする。
【0009】
また、本発明に係る使い捨て着用物品(使い捨ておむつ1)は、液透過性の表面シート(表面シート10)と、裏面シート(吸収体裏面被覆シート30)と、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置され、かつ着用者の身体前側と身体後側とに延びる前後方向及び前記前後方向に直交する幅方向を有する吸収体(吸収体40)と、を備え、着用者の排尿部に当接する領域である排尿領域(排尿領域S3)と、前記排尿領域よりも後方に配置され、前記着用者の臀部に当接する領域である臀部領域(後胴回り領域S2)と、を有する使い捨て着用物品であって、前記吸収体は、吸収性ポリマーを有する第1領域と、前記第1領域よりも吸収性ポリマーの目付が低い第2領域と、を有しており、前記臀部領域の前記吸収体には、前記第1領域が設けられており、前記排尿領域の前記吸収体には、前記第2領域が設けられており、前記排尿領域と前記臀部領域のうち少なくとも前記排尿領域に位置する前記吸収体には、前記排尿領域から前記臀部領域に向かって延びる案内部(中央開口部45、第1サイドスリット46)が設けられており、前記臀部領域には、前記前後方向と前記幅方向のうち少なくとも前記前後方向に伸縮する臀部伸縮性部材(前脚回り弾性材5F、後脚回り弾性材5R)が設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る使い捨て着用物品によれば、排尿領域から臀部領域に延びる案内部が形成されているため、排尿領域によって吸収した体液を臀部領域の吸収性シートに円滑に導くことができる。排尿領域から臀部領域に体液を導くことにより、吸収された体液は、排尿領域の吸収体のみならず、臀部領域に配置された吸収性シートや第1領域の吸収性ポリマーによっても保持することができる。吸収面積を確保して、吸収性能を確保することができる。よって、吸収能力を有効に使用して、吸収性物品全体の吸収能力を高めることができる。
【0011】
また、排尿された尿が股間部において集中的に保持されると、股間部において吸収体が膨らみ、脚が閉じにくくなり大きな違和感を生じたり、歩きにくくなったりする。しかし、排尿領域から離間した遠い位置の吸収性シートに尿を誘導して集中的に保持することにより、股間部において尿吸収後に吸収性ポリマーが膨らんで吸収体の厚みが増大することによる違和感を低減させながら、吸収効率を高めて漏れを低減させることができる。
【0012】
また、臀部領域には、少なくとも前後方向に伸縮する臀部伸縮性部材が設けられているため、吸収性ポリマーによって体液を吸収し、臀部領域が重くなった場合であっても、臀部伸縮性部材によって引き上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る使い捨ておむつ1の概略斜視図である。
【図2】実施の形態に係る使い捨ておむつ1の展開平面図である。
【図3】図2に示すX1-X’1線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。
【図4】図2に示すX2-X’2線に沿った使い捨ておむつ1の前後方向断面図である。
【図5】図2に示すX3-X’3線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。
【図6】実施の形態に係る吸収体の平面図である。
【図7】実施の形態に係る使い捨ておむつ1の着用状態を模式的に示すX1-X’1線に沿った断面図である。
【図8】変形例に係る使い捨ておむつの吸収体の平面図及び断面図である。
【図9】変形例に係る使い捨ておむつの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る使い捨ておむつ1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0015】
本実施形態に係る使い捨て着用物品は、体液を吸収する吸収性ポリマーの目付の高い領域が臀部領域に設けられていることを特徴とする。
【0016】
(1)使い捨て着用物品の全体概略構成
図1は、本実施形態において使い捨て着用物品を構成する使い捨ておむつ1の概略斜視図である。図2は、本実施形態に係る使い捨ておむつ1の展開平面図である。図3は、図2に示すX1−X’1線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。図4は、図2に示すX2−X’2線に沿った使い捨ておむつ1の前後方向断面図である。図5は、図2に示すX3−X’3線に沿った使い捨ておむつ1の幅方向断面図である。使い捨ておむつ1は、パンツ型の使い捨ておむつである。
【0017】
使い捨ておむつ1は、図2に示すように、吸収性物品1の前後方向において、着用者の前胴回りに対応する前胴回り領域S1と、着用者の後胴回りに対応する後胴回り領域S2と、着用者の股下に対応し、着用者の排尿部に当接する領域である排尿領域S3と、を有する。排尿領域S3は、吸収体の前後方向における中央を含む前側寄りの領域であり、後胴回り領域S2は、吸収体の前後方向における中央よりも後方の領域であり、かつ排尿領域S3よりも後方に配置され、着用者の臀部に当接する領域である臀部領域となる。
【0018】
なお、長方形の吸収体の場合には、吸収体の前後を把握し易くするために、吸収性シートを着色したり、バックシートやズレ止めテープに前後の表示を印刷したりして、前後方向を識別し易くすることが望ましく、特に、パッドタイプのおむつにおいては好適である。
【0019】
前胴回り領域S1の吸収性物品1の幅方向W外側に位置する前胴回り縁部 4が、後胴回り領域S2の幅方向Wの外側に位置する後胴回り縁部6と接合され、かつ前胴回り縁部4’が、後胴回り縁部6’と接合されることによって、使い捨ておむつ1がパンツ型に形成される。
【0020】
使い捨ておむつ1は、表面シート10、吸収体40、サイドシート60、前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R、外装センターシート100、前側外装バックシート80F及び後側外装バックシート80R等を備えており、これらは互いに、接着剤や熱融着などによって接合されている。
【0021】
前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R、前側外装バックシート80F、後側外装バックシート80R、及び外装センターシート100は、使い捨ておむつ1の外装部分を構成するシートである。前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R、外装センターシート100の内側(肌当接面側)には、綿状パルプと高分子吸水性ポリマーから構成される吸収体40が設けられる。
【0022】
表面シート10は、着用者の肌に直接的に接し得る肌当接面を形成するシートである。表面シート10は、親水性不織布や織物、開口プラスチックフィルム、開口疎水性不織布などの液透過性のシートによって形成されている。本実施の形態に係る表面シート10は、ポリプロピレンからなる目付23g/mの親水性スパンボンド不織布によって形成されている。
【0023】
表面シート10の非肌当接面側には、セカンドシート15が接合されている。セカンドシート15は、表面シート10と吸収体40との間に配置される。セカンドシート15を設けることにより、体液の吸収速度を速くすることができ、かつ吸収後における体液の逆戻りを抑制することができる。
【0024】
本実施の形態に係る使い捨ておむつ1の吸収体は、着用者の股間部に密着する構造であるため、吸収後の体液の逆戻りを抑制することにより、排泄後の快適性を向上させることができる。セカンドシート15は、例えば、エアスルー不織布や、開孔フィルムなどが用いられる。本実施の形態のセカンドシート15は、エアスルー不織布50g/m(親水性)によって形成されている。
【0025】
吸収体40は、表面シート10とセカンドシート15とが接合された複合シートと、吸収体裏面被覆シート30との間に配置されている。吸収体40は、前胴回り領域S1から後胴回り領域S2に向かう前後方向と、前後方向に直交する幅方向Wとを有する。吸収体40は、使い捨ておむつ1を着用する着用者に向かう内方向INと、内方向と反対側に向かう外方向OUTとを有する。吸収体40は、粉砕パルプや高吸収性ポリマーなどの混合粉体で形成される。
【0026】
吸収体40は、着用者との非肌当接面側に位置する第1層41と、第1層41と重ねられ、かつ着用者の肌当接面側に位置する第2層42と、によって構成されている。吸収体40の第1層41には、幅方向Wにおける中央に中央開口部45が形成される。中央開口部45の幅方向における両外側には、一対の第1サイドスリット46が形成される。なお、吸収体40の構成については、後述にて詳細に説明する。中央開口部及び第1サイドスリットは、後述する曲部として機能し、かつ案内部として機能する。
【0027】
後胴回り領域における吸収体の肌当接面側には、吸収性シート90が配置されている。吸収性シートは、セカンドシート15よりも後方に配置されている。吸収性シートは、吸収性ポリマーを挟持した複合シートであり、後胴回り領域において体液を保持し、吸収体によって保持した体液が着用者側に戻ることを防止する。吸収性シートの構成については、後述にて詳細に説明する。
【0028】
吸収性物品1は、吸収性物品1の厚み方向Tにおいて中央開口部45に重なるように配置された中央弾性材44を有する。
【0029】
吸収体40に形成されたこれらの弾性材やスリット等によって、使い捨ておむつ1が着用された際に吸収体40が曲がるように構成されている。本実施形態において、中央弾性材44及び中央開口部45は中央曲部を構成し、第1サイドスリット46は第1曲部を構成する。
【0030】
サイドシート60は、吸収体40の幅方向Wの両側端において、表面シート10、吸収体裏面被覆シートを一体に包むように設けられる。サイドシート60は、液不透過性の不織布などのシートによって形成されている。本実施形態に係るサイドシート60は、ポリプロピレンのSMS不織布15g/m2である。
【0031】
サイドシート60の幅方向における端部は、サイドシート同士が重なり合っている。サイドシート同士が重なり合う部分には、前後方向に沿って伸長した状態で防漏弾性材53(図3参照)が設けられている。サイドシート60と防漏弾性材53とによって排泄物の横漏れを防止する防漏壁が構成される。
【0032】
防漏壁は、吸収体40の幅方向における両端部において、吸収性物品1の前後方向に沿って設けられる。防漏弾性材53は、折り返されるサイドシート60間において、吸収性物品1の前後方向に伸張した状態で吸収性物品1の前後方向に沿って複数設けられる。
【0033】
本実施形態に係る防漏弾性材53は、スパンデックスが用いられており、左右片側において780dtexの太さ、3.0倍の伸長倍率で2本ずつ伸長固定される。サイドシート60は、吸収体裏面被覆シートの非肌当接面側に固定され、吸収体の幅方向両端部より表面シート側に折り返される。サイドシート60は、ホットメルト型接着剤をビード塗工による方法で0.1g/mの量で複数本塗工し、表面シート10に固定されている。
【0034】
外装トップシートは、前胴回り領域S1に配置される前側外装トップシート70Fと、後胴回り領域S2に配置される後側外装トップシート70Rとを備える。厚み方向Tにおいて、前側外装トップシート70Fは、前側外装バックシート80Fと吸収体40との間に配置される。厚み方向Tにおいて、後側外装トップシート70Rは、後側外装バックシート80Rと吸収体40との間に配置される。前後方向において、前側外装トップシート70Fと後側外装トップシート70Rとの間には、外装センターシート100が配置されている。
【0035】
外装センターシート100の前端部は、前側外装トップシート70Fの後端部と接合され、外装センターシート100の後端部は、後側外装トップシート70Rの前端部と接合される。外装センターシート100は、前側外装トップシート70Fと後側外装トップシート70Rとを跨って配置されている。外装センターシート100は、連続的にスロットコーターで塗工されたホットメルト型接着剤によって、外装トップシートの表面側に対して接合される。
【0036】
外装センターシート100は、不織布などによって構成される。本実施の形態に係る外装トップシートは、ポリプロピレンからなる目付15g/mのSMS不織布によって構成されている。外装センターシート100は、着用時において外装トップシートよりも内側(肌当接面側)に位置する。
【0037】
前側外装トップシート70F及び後側外装トップシート70Rは、前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2において、幅方向Wの幅が排尿領域S3よりも大きく形成されている。前側外装トップシート70F及び後側外装トップシート70Rは、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、防水フィルムなどによって形成できる。本実施の形態に係る外装トップシートは、ポリプロピレンからなる目付15g/mのSMS不織布によって構成されている。
【0038】
前側外装バックシート80Fは、前胴回り領域S1において前側外装トップシート70Fよりも非肌当接面側に設けられる。後側外装バックシート80Rは、後胴回り領域S2において後側外装トップシート70Rよりも非肌当接面側に設けられる。前後方向における前側外装バックシート80F(後側外装バックシート80R)の一端は、肌当接面側に折り返され、前側外装トップシート70F(後側外装トップシート70R)の前後方向における端部を包むように設けられる。
【0039】
前側外装バックシート80F及び後側外装バックシート80Rは、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、防水フィルムなどによって形成できる。本実施の形態に係る前側外装バックシート80F及び後側外装バックシート80Rは、ポリプロピレンからなる目付17g/mのスパンボンド不織布によって構成されている。
【0040】
吸収体裏面被覆シート30は、前側外装トップシート70F、後側外装トップシート70R及び外装センターシート100に対して部分的に接着されている。
【0041】
前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2には、ウエストギャザー3が設けられる。ウエストギャザー3は、吸収体40の幅方向Wに沿って伸縮するように配設される合成ゴムなどの細長いウエスト弾性材3Aを有する。ウエスト弾性材3Aは、使い捨ておむつ1の幅方向Wに対して伸長された状態で接着剤(例えばホットメルト接着剤)によって、前側外装トップシート70Fと前側外装バックシート80F、及び後側外装トップシート70Rと後側外装バックシート80Rとの間に接合されている。
【0042】
腰回り弾性材を配置することにより、使い捨て着用物品を腰回りで保持することができ、使い捨て着用物品全体が引き下がることを防止できる。よって、後述する吸収性シート90によって体液を保持し、吸収体の後部側が重くなった場合であっても、吸収体が引き下がるのを防止し、吸収体40と着用者の身体との間に隙間が生じることを抑制できる。
【0043】
ウエストギャザー3は、前胴回り領域S1における吸収性物品1の幅方向W外側に位置する一方の前胴回り縁部4から他方の前胴回り縁部4‘まで連続し、後胴回り領域S2における吸収性物品1の幅方向W外側に位置する一方の後胴回り縁部6から他方の前胴回り縁部6‘まで連続する。
【0044】
後側外装バックシート80Rには、レッグギャザー5が形成される。レッグギャザー5は、着用者の脚部に沿うように形成される。レッグギャザーは、伸縮するように配設される合成ゴムなどの細長い脚回り弾性材によって形成されている。脚回り弾性材は、前胴回り領域S1に配置された前脚回り弾性材5Fと、後胴回り領域S2に配置された後脚回り弾性材5Rと、によって構成されている。レッグギャザー5は、吸収体40を横断しないように設けられている。
【0045】
脚回り弾性材は、後述する吸収性シート90による臀部領域としての後胴回り領域S2の引き下がりを抑制する臀部伸縮性部材として機能する。吸収性シート90に体液が集中すると、吸収性シート90が配置された後胴回り領域S2が引き下がるおそれがある。しかし、前後方向に伸縮する脚回り弾性材が吸収性シートの幅方向外側に配置されていることにより、後胴回り領域S2が引き下がることを抑制することができる。このような観点において脚回り弾性材は、吸収性シート90の前端部付近に配置されていることが望ましい。
【0046】
なお、本発明における臀部伸縮性部材は、着用者に装着される前の状態における前後方向に伸縮可能に構成されていればよい。例えば、着用者に装着された状態では、後胴回り領域S2に配置される吸収体40の一部は、装着前の状態における前後方向が上下方向となる。したがって、臀部伸縮性部材は、着用者に装着された後において上下方向に伸縮し、後胴回り領域S2の下方への引き下がりを抑制するように機能する。
【0047】
また、本発明における臀部伸縮性部材は、前後方向と幅方向のうち、少なくとも前後方向に伸縮可能に構成されていればよく、前後方向のみならず、幅方向にも伸縮可能に構成されていてもよい。例えば、前後方向に対して斜めの方向に伸縮し、幅方向において伸縮する成分と前後方向に伸縮する成分とを有する伸縮性部材であってもよい。したがって、本実施の形態のように前後方向に対して傾斜して配置されていてもよいし、前後方向に沿って配置されていてもよい。
【0048】
脚回り弾性材は、前側外装トップシート70Fと前側外装バックシート80F、及び後側外装トップシート70Rと後側外装バックシート80Rとの間に接合されている。
【0049】
本実施の形態に係る脚回り弾性材は、780dtexの太さ、1.5〜3.5倍の伸長倍率で3本伸長固定される。脚回り弾性材は、部分ごとに倍率の勾配をつけた状態で配置されている。
【0050】
脚回り弾性材は、予め外装トップシートに塗工したホットメルト型接着剤によって固定されている。ホットメルト型接着剤は、スパイラルスプレーによって塗工される。脚回り弾性材の塗工量は、7g/mとした。外装トップシートの端部付近(端部から約5mmの位置)の少なくとも脚回り弾性材と重なる位置には、スロットコーターで接着剤が塗工されている。このように接着剤を塗工することにより、外装表面シートの端部から脚回り弾性材が抜けることを防止できる。
【0051】
また、非接触型のスパイラルスプレーで接着剤を塗工すると、外装トップシートの端部付近の接着剤がはみ出して、製造上の不具合が発生するおそれがある。しかし、接触型のスロットコーターで塗工することにより、接着剤のはみ出しを防止することができる。なお、スロットコーターの塗工量は、10g/mとした。
【0052】
中央弾性材44は、前後方向に沿って設けられて、使い捨ておむつ1の厚さ方向Tにおいて中央開口部45と重なる位置に設けられている。中央弾性材44は、内方向INに凸、つまり、吸収体40が着用者に向けて凸に曲がるように、前後方向に沿って吸収体40に重なるように形成されている。中央弾性材44は、吸収性物品の幅方向中心において前後方向に沿って、伸長状態で配置されている。中央弾性材44は、排尿領域S3に配置される。
【0053】
中央弾性材44は、弾性材被覆シート43と、吸収体裏面被覆シート30の間に、伸長された状態で設けられている。中央弾性材44は、1.4〜3.0倍の伸長倍率で配置される。本実施の形態に係る中央弾性材は、幅方向中央に位置する中央弾性部材と、中央弾性部材の幅方向外側に位置する補助中央弾性材と、を有する。
【0054】
中央弾性部材は、1.4〜3.0の伸長倍率で配置される。本実施の形態に係る中央弾性部材は、620dtexの太さ、2.5倍の伸長倍率で3本伸長固定される。中央弾性部材の間隔は、5mmであり、接着長さは全て120mmである。中央補助弾性部材は、1.2〜2.5倍で中央弾性部材よりも低応力で配置される。本実施の形態に係る中央補助弾性部材は、620dtexの太さ、1.8倍の伸長倍率で1本ずつ伸長固定される。中央弾性部材両端から幅方向に5mmの間隔を開けて中央弾性部材と前後方向に同位置に、5mm間隔で配置される。
【0055】
中央弾性材44は、スパンデックスであり、Vスロット方式でホットメルト型接着剤を塗工される。中央弾性材44には、伸縮性不織布など用いてもよい。弾性材被覆シート43は、不織布などのシートで構成され、本実施形態では、ポリプロピレンからなる目付15g/mのSMS不織布(疎水性)を用いた。
【0056】
中央弾性材44の素材には、例えば、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、スパンデックス、発泡ポリウレタン等を挙げることができる。その他、中央弾性材44の材料としては、ウレタン系、ポリスチレン系などのエラストマー繊維と延伸可能なポリオレフィン系、ポリエステル系などの熱可塑性繊維を混合し、延伸加工を施すことによって形成した伸縮不織布などの弾性シートを用いてもよい。
【0057】
側端部弾性材49は、吸収体の幅方向における両側部において、吸収体裏面被覆シート30とサイドシート60との間に接着剤によって接合されている。側端部弾性材49は、前後方向に沿って配置されており、排尿領域S3と、後胴回り領域S2の一部とに跨って配置される。
【0058】
側端部弾性材49の固定手段としては、ホットメルト型接着剤などがある。本実施形態に係る側端部弾性材49は、スパンデックスを用いており、Vスロット方式によりホットメルト型接着剤を直接塗工している。本実施形態に係る側端部弾性材49は、左右両側において、780dtexの太さ、2.3倍の伸長倍率で3本ずつ伸長固定される。
【0059】
また、側端部弾性材49と前脚回り弾性材5F、及び側端部弾性材49と後回り弾性材5Rは、それぞれ平面視で略連なって配置されている。このように配置することにより、足繰りを囲むように伸縮させることができ、脚繰りのフィット性が向上しおむつのズレや漏れを防止する効果がある。
【0060】
なお、弾性材の伸長応力は、例えば、次のようにして測定することができる。
(1)凸状部分を形成する弾性材を幅方向にすべて含むように、弾性材を挟み込んだ資材ごと切り出す。具体的には、例えば、本実施例に係る着用物品においては、5mm間隔で3本ずつ配置された中央弾性材を挟み込んだ資材をたるみがないように伸長させた状態で、幅13mm×長さ100mmを切り出す。同じく伸長させた状態で前後方向両端部からそれぞれ10mm内側にマーキングする。伸長応力の測定には、インスロンジャパンカンパニィリミテッド社製の引張り試験機(例えば、型式:5564)、又は株式会社島津製作所製オートグラフ(例えば、型式:AGS-1kNG)を使用した。
【0061】
(2) (1)の試料を、マーキング部がチャック内側端部になるように上部チャックで挟むとともに、他方のマーキング部がチャック内端部になるように下部チャックで挟む。チャック間における試料の長さ寸法は、80mmとなる。なお、弾性材のギャザーとして効いている長さが100mmより短い場合は、ギャザーとして効いている弾性材の長さうち最も短い長さより20mm短い長さをチャック間における試料の長さに設定する。初期のチャック間距離は初期に試料のテンションが掛からないようにするため、試料が縮んだときの長さ(自然長)よりも短く設定する。それらチャックが互いに離間するように試料を100mm/minの条件で上下方向へ引っ張り、試料を伸長する。
【0062】
(3) 試料を、弾性材を挟み込んだ資材がたるみなく伸長したときの試料のチャック間における長さ寸法を100%として、試料のチャック間の長さ寸法が90%になるまで試料を伸ばし、そのときの試料の伸長時応力を測定し、弾性材の伸長応力とする。すなわち上記本実施例では試料の100%長さ寸法80mmに対して90%の72mmまで試料を伸ばしたときの伸長時応力を測定する。
【0063】
また、吸収体40の厚さは、吸収体40の製品長及び製品幅に伸ばされた状態(つまり、しわの入らないように平坦な状態)で厚さ測定器に測定したい部分を挟み込んで測定する。使用可能な測定装置としては、例えば、PEACOCK製厚み計(測定部:直径5mm、測定時圧力:163g/cm)を用いることができる。
【0064】
なお、上述した使い捨ておむつ1を構成する各部材は、例えば、特開2006−346439号公報に記載された材料を用いてもよい。
【0065】
(2)吸収性シートの構成
次いで、後胴回り領域S2において吸収体40の肌当接面側に配置される吸収性シート90について説明する。吸収性シート90は、吸収性ポリマー91を2枚の液透過性シート92,93で挟持した複合シートである。液透過性シート92,93には、たとえば不織布が用いられる。なお、吸収性ポリマー91を3枚以上の液透過性シートで挟持して吸収性シートを作製してもよいし、1枚の液透過性シートを折り畳んで、吸収性ポリマーを挟持して吸収性シートを作製してもよい。
【0066】
吸収性ポリマー91は、水を吸収するポリマーであり、たとえば、水溶性高分子が適度に架橋された三次元網目構造を有する吸収性高分子ポリマーである。このような吸収性高分子ポリマーは、水を吸収する前の体積の数百倍〜千倍の水を吸収するが本質的に水不溶性であり、一旦吸収された水は多少の圧力を加えても離水しない。
【0067】
吸収性ポリマー91には、たとえば、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状または繊維状のポリマーが挙げられる。吸収性ポリマー91を2枚の液透過性シート92,93で挟持した後、2枚の液透過性シート92,93を接合することで、吸収性シート90は作製される。吸収性ポリマー91の粒径は、吸収性ポリマー91を2枚の液透過性シート92,93で挟持した後、吸収性ポリマー91がこぼれてしまうのを防ぐために、液透過性シート92,93の繊維間隙に比べて細かくない方が好ましい。
【0068】
液透過性シート92,93には、たとえば、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、エアスルー不織布、SMS不織布などを用 いることができる。液透過性シート92,93は、尿に対して透過性を有することが必要であるので、親水化処理がなされていることが好ましい。本実施例では、液透過性シート92、93として親水化処理がなされた25g/mのエアスルー不織布を用いた。
【0069】
液透過性シート92,93の吸収性ポリマー91を挟持する面には、前後方向に延び、幅方向に複数並ぶ接着部(図示せず)が設けられている。液透過性シート92,93の吸収性ポリマー91を挟持する面には、前後方向に延び、幅方向に複数並ぶ接着部が設けられている。なお、液透過性シート92,93のうちの一方の液透過性シート92,93の吸収性ポリマー91を挟持する面に接着部を設けてもよい。接着部は、たとえば、ホットメルト接着剤を筋状に塗工することによって形成される。
【0070】
これにより、吸収性ポリマー91は、液透過性シート92,93に固定される。接着部が前後方向に延び、幅方向に複数並ぶのは、すなわち、接着部が筋状であるのは、接着部における尿の透過性は低下し易いため、接着部の存在しない領域を設けるためである。したがって、接着部の存在しない領域を設けることができる塗工方法であれば、すなわち、接着部を間欠的に配置できる塗工方法であれば、筋状塗工方法に限定されず、オメガ塗工などの非接触塗工方法でもよい。
【0071】
接着部は、後述の吸収性ポリマー配置領域96に間欠的に設けられているので、吸収性ポリマー91が吸収性ポリマー配置領域96の中で偏るのを防止することができる。吸収体40側の液透過性シート93に設けられた接着部の隣接する接着部同士の間の接着部間距離は、表面シート10側の液透過性シート92に設けられた接着部の接着部間距離に比べて小さい。これにより、吸収性ポリマーが、吸収体40側の液透過性シート93に均等に固定される。
【0072】
液透過性シート92,93に、青色などに着色された筋状の接着部を設けることによって、吸収性物品1に青色などの色の縞状の模様が付されるので、吸収性物品1の外観がよくなる。なお、吸収体40側の液透過性シート93における吸収性ポリマーを挟持する面のみに接着部を設けるようにしてもよい。液透過性シート92および/または93に接着部を設けることによって、吸収性ポリマーが膨潤する前に吸収性ポリマーが吸収性シート90内を移動するのを抑制することができる。吸収性シート90は、排尿領域S3の前後方向の中央から後胴回り領域S2にわたる、少なくとも後胴回り領域S2の一部の領域に配置されることが好ましい。
【0073】
このように、後胴回り領域S2に集中的に吸収性ポリマーを配置することにより、後胴回り領域S2における吸収能力を高めて、特に座位、寝姿勢の場合に多い後胴回り領域からの漏れを、改善することができる。
【0074】
吸収性シート90では、吸収性ポリマーは、複数の吸収性ポリマー配置領域96(以下、吸収性ポリマー配置領域と呼ぶ)に分けて配置され、それぞれの吸収性ポリマー配置領域96の間に吸収性ポリマーが配置されていない領域(以下、吸収性ポリマー非配置領域と呼ぶ)97を設けられている。なお、図2において吸収性ポリマー配置領域96に斜線を付して示す。
【0075】
ポリマー配置領域とポリマー非配置領域と交互に設けることにより、吸収性ポリマー配置領域96の吸収性ポリマーが尿を吸収して膨潤しきってしまい、尿をさらに吸収できなくなった場合でも、尿は吸収性ポリマー非配置領域97を通過して、吸収体40に吸収される。なお、吸収性ポリマー膨潤しきるまで使用し続けることのない吸収性物品については、吸収性シートに吸収性ポリマー非配置領域を設ける必要はない。
【0076】
吸収性ポリマー配置領域96の平面方向の形状は、吸収性物品1の前後方向で前胴回り領域S1から後胴回り領域S2への方向に凸であり、かつ吸収性物品1の幅方向に延びる略V字形状である。すなわち、吸収性ポリマー配置領域96の平面方向の形状は、吸収性物品1の前後方向で前胴回り領域S1から後胴回り領域S2への方向に頂点が向いた略V字形状である。ただし、前胴回り領域S1からもっとも離れている吸収性ポリマー配置領域96は、略V字形状または略円弧形状において幅方向の中央を切り欠いて2つの領域に分けられることによって形成される形状である。吸収性ポリマー配置領域96の略V字形状は、着用者の臀部に沿った形状であるので、吸収性ポリマー配置領域96は着用者の臀部にフィットし、着用者と吸収性物品1との間の隙間が生じにくくなる。なお、吸収性ポリマー非配置領域が存在すれば、吸収性ポリマー配置領域の形状は略V字形状に限定されない。たとえば、吸収性ポリマー配置領域の形状は、円弧形状、円形、矩形形状、三角形などでもよい。
【0077】
上述したように、吸収性ポリマーを2枚の液透過性シート92,93で挟持した後、2枚の液透過性シート92,93を接合することで吸収性シート90は作製される。2枚の液透過性シート92,93の間に吸収性ポリマーが挟持されている領域が吸収性ポリマー配置領域96であり、2枚の液透過性シート92,93の間に吸収性ポリマーが挟持されておらず、2枚の液透過性シート92,93同士が接合されている領域が吸収性ポリマー非配置領域97である。
【0078】
2枚の液透過性シート92,93同士の接合には吸収性ポリマーの膨潤による膨張力に耐えうる強度が必要である。例えば、吸収性ポリマーの膨潤によって、2枚の液透過性シート92,93同士がはがれてしまうと、2枚の液透過性シート92,93の間に隙間が生じ、その隙間に吸収性ポリマーが入り込んで、吸収性ポリマー非配置領域97がなくなってしまう場合がある。この液透過性シート92,93同士の接合には、ヒートシール、ソニックシール、接着剤などを用いることができる。
【0079】
ヒートシールによって液透過性シート92,93同士を接合する場合、ヒートシールの幅方向の線圧が一定になるほど、全体に均一なシール強度になる。このため、ヒートシールの幅方向の線圧は一定であることが好ましい。ヒートシールの幅方向の線圧を均一にするためには、シールされる領域の幅方向の長さの合計を一定にする必要がある。たとえば、上述のように、吸収性ポリマー配置領域96を略V字形状または略円弧形状にし、前後方向に並べることによって吸収性ポリマー非配置領域97の幅方向の長さの合計をほぼ一定にすることができる。接着剤を用いて液透過性シート92,93同士を接合させる場合、吸収性ポリマーが膨潤しているとき液透過性シート92,93は、湿潤状態であるので、接着剤は、湿潤時においても強度を発揮するタイプが好ましい。
【0080】
吸収性ポリマーは、尿を吸収すると膨潤するので、吸収性ポリマー配置領域96では、吸収性ポリマーは、2枚の液透過性シート92,93の間に、吸収性ポリマーが十分に膨潤できるだけの容積を確保していることが望ましい。2枚の液透過性シート92,93の間に、吸収性ポリマーを稠密に詰め込み過ぎてしまうと、吸収性ポリマーが完全には膨潤できないため、吸収性ポリマーの吸収能を十分に利用できない場合がある。
【0081】
吸収性シート90における吸収性ポリマー配置領域96の数を多くすると、吸収性ポリマー非配置領域97の面積は増えるが、吸収性シート90における吸収性ポリマーの合計量容積が少なくなるので、吸収性シート90が尿を吸収できる量が小さくなる。一方、吸収性シート90における吸収性ポリマー配置領域96の数を少なくすると、吸収性シート90における吸収性ポリマーの合計量容積量が多くなり、吸収性シート90が尿を吸収できる量が大きくなるが、吸収性ポリマー非配置領域97の面積は小さくなり、吸収性ポリマーが膨潤したあと、尿が吸収性シート90を透過して吸収体40に吸収されることが起こらなくなってしまう場合がある。
【0082】
尿の量と、吸収性ポリマーが膨潤した後の吸収性シート90の尿の透過性との間のバランスを考慮して、さらに吸収性ポリマーの種類および投入量からくる膨潤後の容積を考慮して、吸収性ポリマー配置領域96の数を選択する必要がある。たとえば、180mm×130mmの大きさの吸収性シートの場合、1g当たり生理食塩水を60g吸収する吸収性ポリマー2gを、5つの吸収性ポリマー配置領域に分けて配置することによって、尿の吸収性と、吸収性ポリマーが膨潤した後の尿透過性との間のバランスが良好な吸収性シートを得ることができる。
【0083】
吸収性シート90は、吸収体40の非肌面側に配置してもよいが肌面側に配置するのが好ましい。着用者が座位や寝姿勢をとった場合、後胴回り領域S2の領域に吸収体40に吸収された尿は、体重による圧力(体圧)が吸収体40に掛かることによりしみ出すが、しみ出した尿は吸収性シート90によって着用者の肌側に到達しにくくなる。吸収性シート90は、ほぼ吸収性ポリマーで構成されているため、体圧が掛かった場合においても尿はほとんどしみ出さない。したがって、尿が排泄された後も肌がサラッとしており、排泄された尿による着用者の肌のかぶれを抑制することができる。
【0084】
また、脚回り弾性材による吊り上げ効果によって、吸収性シート90が液を吸収して重くなった場合にも吸収体が肌から離れないように構成している。よって、吸収体と肌との隙間が生じにくくなり特に肌伝いにより生じる漏れの発生を低減することができる。吸収体が肌から離れないように構成した場合においては、吸収体40からしみ出した体液が着用者の肌側に到達しやすいと、特に肌のかぶれが生じやすくなる。よって、吸収性シート90を、吸収体40の肌面側に配置するのがより好ましい。
【0085】
(3)吸収体の構造
図6は、吸収体40の平面図である。図6に示すように、吸収体40は、第1層41と、第1層41と重ねられる第2層42とを有する。第1層41は、着用者の非肌当接面側に位置し、第2層42は、着用者の肌当接面側に位置する。
【0086】
第1層41と、第2層42とは、綿状パルプと高分子吸収性ポリマー(SAP)とから構成されている。吸収体40は、例えば、パルプ0〜500g/mとSAP0〜500g/mとを混合させて形成することができる。
【0087】
本実施の形態に係る第1層41は、パルプ280g/mとSAP170g/mとが混合されて形成されており、厚さは約3.1mmである。本実施の形態に係る第2層42は、パルプ260g/mとSAP160g/mとが混合されて形成されており、厚さは約2.9mmである。したがって、吸収体40の厚みは、6.0mmである。
【0088】
第1層41には、中央開口部45と一対の第1サイドスリット46が形成されている。中央開口部45は、幅方向Wの中央部に形成されている。中央開口部45及び第1サイドスリット46は、前後方向に沿って延在する縦長の形状を有する。中央開口部45及び第1サイドスリット46は、排尿領域S3において前後方向に延びて形成されており、排尿領域S3の吸収体40によって吸収した体液を後胴回り領域S2域の吸収性シート90に案内する案内部として機能する。
【0089】
中央開口部45の後端部は、吸収性シート90と重なるように配置されていてもよいし、吸収性シートに重ならないが近接するように配置されていてもよい。また、中央開口部の後方に向かう延長線上に吸収性シートが存在するように配置されていてもよい。
【0090】
中央開口部と吸収性シートを上述のように配置することにより、吸収体の中央部を着用者肌側に屈曲し易くなる。更に、中央開口部45や第1サイドスリット46を介して吸収体によって引き込んだ体液を、中央開口部等を介してスムーズに後胴回り領域S2に導くことができる。後胴回り領域S2に配置された吸収性シート90に体液を誘導することにより、吸収能力が高い部分に体液を優先的に集中させることができる。
【0091】
よって、吸収能力を有効に使用して、吸収性物品全体の吸収能力を高めることができる。また、排尿された尿が股間部において集中的に保持されると、股間部において吸収体が膨らみ、脚が閉じにくくなり大きな違和感を生じたり、歩きにくくなったりする。しかし、排尿領域から離間した遠い位置の吸収性シートに尿を誘導して集中的に保持することにより、股間部において尿吸収後に吸収性ポリマーが膨らんで吸収体の厚みが増大することによる違和感を低減させながら、吸収効率を高めて漏れを低減させることができる。
【0092】
また、吸収性ポリマー配置領域96と中央開口部45との間には、平面視で10mm程度の距離がある。吸収性ポリマー配置領域96と中央開口部45の後端部との間を中間領域110とする。中間領域110は、吸収性ポリマー配置領域96に体液を集中させるために、繰り返し排尿がなされた場合であっても、体液を拡散できる構成とする必要がある。このような観点から中間領域における吸収性ポリマーの重量比率は80%未満とする必要がある。本実施の形態の中間領域における吸収性ポリマーの重量比率は、38%である。
【0093】
なお、本実施の形態に係る案内部は、吸収体に形成したスリット等の開口によって構成されているが、この構成に限られない。例えば、吸収体において周囲の目付よりも低い目付である低目付領域によって構成されていてもよいし、吸収体を厚み方向に圧縮した圧搾部によって構成してもよい。
例えば、案内部を低目付領域によって構成した場合には、低目付領域の吸収性ポリマーの目付が圧搾部の吸収性ポリマーの目付に比べて低いため、繰り返し吸収時においても、溝(液が通る通路)を塞がれない点において優れている。
また、案内部を圧搾部によって構成した場合には、密度が高いため、拡散性に優れており、低目付領域によって案内部を構成する場合に比べて、特に重力に逆らった方向へも積極的に拡散できる点において優れている。
【0094】
なお、本発明における低目付け領域とは、周囲の吸収体を構成する吸収層の平均目付に対して目付比率が50%以下の領域である。目付は、例えば、以下の方法によって測定することができる。まず、製品の対象となる領域において幅10mm、長さ50mmの寸法で表面シート上にマーキングし、当該寸法で吸収体をシート部材毎切り取り、初期の重量を測定する。この重量をA(g)とする。
【0095】
次いで、一緒に切り取ったシート部材(表面シート,セカンドシート,裏面被覆シート等)をトルエンなどの有機溶剤で洗浄し、乾燥させた後に重量を測定し、シート部材のトータルの重量を求める。この重量をB(g)とする。
【0096】
初期の重量(A)とシート部材の重量(B)とを用いて、「(A−B)÷採取寸法」によって、吸収体の目付を算出する。具体的には、本実施の形態における目付Xは、(A−B)/(10×50/1000/1000)(g/m)によって算出できる。なお、上記重量は、ホットメルト型接着剤を含んだ重量となるが、吸収体の重量等と比較して極めて小さいため、無視してもよい。
上記方法によって求めた吸収体の目付に基づいて目付比率を算出する。
目付比率=(低目付領域の吸収体の目付)/(周囲の吸収体の目付)×100
低目付領域は、目付比率が50(%)以下となる領域である。
すなわち、以下の条件にあてはまるものを低目付領域とする。
(低目付領域の吸収体の目付)/(周囲の吸収体の目付)×100≦50(%)
【0097】
なお、低目付領域が他の吸収層と重なっていない箇所(例えば、第1吸収層に形成された領域であって、第2吸収層で覆われていない領域)にある場合には、対象となる低目付領域の吸収層の目付とその吸収層の周囲の目付とを上記方法によって求める。
【0098】
また、低目付領域が他の吸収層と重なった箇所(例えば、第1吸収層に形成された領域であって、第2吸収層で覆われている領域)にある場合には、一の吸収層の低目付領域の目付を測定し難いため、対象となる低目付領域の吸収層の重なった部分の目付X1を求め、次に周囲の重なった部分の吸収体の目付X2を求め、さらに重なっていない単独層の部分の目付X3を求めることによって、低目付領域の目付を測定する。
【0099】
さらに、この場合、(1)低目付領域を有する吸収層と上記単独層が一致している場合においては、低目付領域は、(X1−X2+X3)÷X3×100≦50(%)にあてはまるものとすることができる。
一方、(2)低目付領域を有する吸収層と上記単独層が一致していない場合においては、低目付領域は、(X1−X3)÷(X2−X3)×100≦50(%)にあてはまるものとすることができる。
すなわち、低目付領域の構造に応じて、上記3通りの方法で目付を測定することができる。
【0100】
また、中央開口部45を形成することにより、中央部分40Cを着用者側である内方向INに凸に曲がり易くすることができる。第1サイドスリット46は、中央開口部45よりも幅方向外側に形成されている。第1サイドスリット46は、前後方向に沿って延在する縦長の形状を有する。一対の第1サイドスリット46は、外方向OUTに凸、つまり吸収体40が中央開口部45と逆の凸に曲がるように、前後方向に沿って吸収体40に形成されている。
【0101】
第2層42は、略砂時計型の形状である。第2層は、後胴回り領域S2と排尿領域S3との境界を跨っており、長手方向でみて排尿領域側に向かうに連れて幅方向内方に向かう方向に、第1層との重なり部と非重なり部の境目となる部分を有する。重なり部は非重なり部に比べて曲げ剛性が高いので、排尿領域における第1サイドスリットによる内方向と反対側に向かう外方向OUTに曲がる変形を第1層との重なり部と非重なり部の境目となる部分よりも後方に伝達しないように構成することができる。
【0102】
吸収体の幅は、前胴回り領域S1及び後胴回り領域S2において、120〜250mmが好ましく、排尿領域S3で120mm〜250mmが好ましい。
【0103】
中央開口部45の前後方向における長さは、第1サイドスリット46の前後方向における長さよりも長い。本実施の形態では、中央開口部の幅は、40mmであり、第1サイドスリット46の幅は、それぞれ10mmである。
【0104】
排尿領域S3において、第2層42の幅方向における外側端部42Wは、第1層の第1サイドスリット46の内側端部41Wと重なっており、前後方向に沿って配置されている。吸収体40の外側端部42Wよりも幅方向外側は、第1層41のみによって構成され、外側端部42Wよりも内側は、中央開口部45が形成された部分を除いて、第1層41と第2層42とによって構成される。よって、第1層41の内側端部41Wと第2層42の外側端部42Wとを境界として、吸収体40の剛性及び厚みが変化する。本実施の形態では、剛性等が変化する第2層の外側端部42Wを境界として、吸収体が曲がる。
【0105】
また、中央開口部45において表面シート10と吸収体裏面被覆シート30とが貼り合わされて固定されることにより、吸収体を型崩れされることなく屈曲させることができる。
【0106】
(3)吸収体の形状変化
図7は、使い捨ておむつ1の着用状態を模式的に示す断面図(図1のX1−X’1線基準)である。使い捨ておむつ1が着用されると、吸収体の排尿領域S3は、着用者の股間に当てられる。着用者の脚等によって、吸収体には、幅方向外側から幅方向内側に向かって力が掛かる。吸収体40は、中央弾性材44及び中央開口部45と、第1サイドスリット46と、を基点として吸収体40が曲がり、使い捨ておむつ1の幅方向Wに沿った断面形状は、波状に変形する。よって、吸収体40の排尿領域S3は、規則的に折り畳まれた状態となる。
【0107】
吸収体40は、中央弾性材44によって内方向INに凸となった吸収体40の頂面が着用者の股間部に当接する。中央曲部による凸状部分が形成される部分は、第2層42のみによって構成されており、比較的厚みが薄い。一方、中央曲部による凸状部分と第1曲部による凸状部分との間は、第1層41と第2層42とが重なっており、比較的厚みが厚く、剛性が高い。中央曲部と第1曲部との間の剛性が高い部分によって中央曲部による凸状部分を支持することができ、中央曲部による凸形状の安定性を向上させることができる。
【0108】
また、中央曲部の中央部に前後方向に延びる中央溝やスリットを設けるように構成してもよい。中央曲部の中央部に前後方向に延びる中央溝やスリットを設けることにより、肌当接面側に凸となった中央曲部の幅方向中央部に、非肌当接面側に凹む凹部を設けることもできる。例えば、第2層の中央開口部に対向する位置にスリットを形成することにより、スリットが形成された部分に吸収体が配置されないため、当該部分の表面シートが裏面シート側に曲がるように変形させて、外方向に凸に曲がるように構成することができる。
【0109】
また、着用者が両脚を閉じると、使い捨ておむつ1の断面形状は、吸収体は、中央曲部及び第1曲部で折り畳まれ、互いに密着した状態で、股間部の下方においてコンパクトに配置される。
【0110】
このとき、中央弾性材44及び中央開口部45によって形成される中央曲部、は、着用者の股間部と当接するように位置する。一方、第1サイドスリット46によって形成される第1曲部は、非肌当接面側に凸状であり、着用者の排泄口と当接しない位置となる。
【0111】
着用者の股間部において吸収体が密着しているので、肌伝いするような尿速の遅い尿が排出された場合であっても、体液の漏れを防止できる。また、折り畳まれた状態で、吸収体の肌から離れた部分の曲部においては、前後方向に延びる凹みが形成されるため、体液を前後方向外側へ拡散させることができ、横漏れを防止することができる。
【0112】
吸収体に形成した中央開口部45、第1サイドスリット46を基点に折りまげるため、吸収体40に厚さの薄い部分を形成して凸状部分とする場合と比較して、吸収体40が液体を吸収して膨らんだ場合でも吸収体40が曲がり易くなる。また、使い捨ておむつ1を着用して吸収体40が変形したときの断面形状は、非肌当接面側から肌当接面側に向かって狭くなる先細り形状である。よって、着用者の股間部の隙間に収まり易く違和感を与えにくい。
【0113】
また、中央曲部によって形成される凸状部分は、第2層42のみによって構成されており、第1層41と第2層42とが積層されて構成された部分よりも厚みが薄い。すなわち、中央曲部によって形成される凸状部分は、厚みが薄くかつ高さが高いため、股間部の狭い隙間に挿入され易くなり、排泄口と密着し易くなる。よって、排尿口と吸収体とが密着するため、排泄された尿を迅速に吸収することができる。また、着用者の股間部の肌に近い部分においては、吸収体の厚みが薄く、肌から遠い部分で厚みが厚くなるように折り畳まれるため、違和感なくフィットさせることができる。
【0114】
身体の股間部の細い隙間に入りこみやすい構造により、中央開口部45と排尿部の距離を近づけることができる。中央開口部45と排尿部の距離を近づけることにより、排尿された尿を中央開口部45によって前後方向に拡散させて、後胴回り領域S2の吸収性シート90に導くことができる。吸収性シート90に体液を円滑に誘導することにより、優先的に吸収能力の高い部分に体液を集中させて、吸収能力をより有効に使用することで吸収性能をさらに高めることができる。
【0115】
このように構成された吸収性物品の製造方法としては、例えば、吸収体の第1層を成形する工程と、吸収体の第2層を成形する工程と、第1層と第2層とを合体させる工程と、ベルトコンベア等で吸収体等を搬送し、搬送する過程で吸収性シートや表面シート等のシート材と接合する工程と、を含む方法によって吸収性物品を製造することができる。なお、その他の工程は、公知の製造方法に従って製造し得る。
【0116】
また、第1層と第2層の両方に、開口部やサイドスリットを設けた場合、第1層と第2層とを重ね合わせるときの位置ずれが生じることがある。例えば、幅方向に位置ずれが生じると、左右に配置された一対のサイドスリットの幅が狭くなり、規則的な変形ができなくなったり、左右アンバランスな吸収体となり、吸収性や装着感に悪影響を及ぼしたりするおそれがある。しかし、第1層と第2層のうちいずれか一方に、開口部やサイドスリットを設けたことにより、サイドスリット等の位置ずれを防止できる。
【0117】
(変形例1に係る使い捨ておむつ)
次いで、変形例に係る使い捨ておむつの吸収体の構成について、図面を参照しながら説明する。なお、上述した実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0118】
図8(a)及び図8(b)は、変形例1に係る吸収体を示している。図8(a)は、平面図であって、図8(b)は、幅方向中央における前後方向に沿った断面の断面図である。
【0119】
変形例1に係る吸収体40Gは、略砂時計型の1層によって構成されている。吸収体40Gは、吸収性ポリマーを有する第1領域R1と、第1領域R1よりも吸収性ポリマーの目付が低い第2領域R2を有する。なお、図8において第1領域に斜線を付して示す。吸収体における第1領域の周囲の領域は、第2領域となる。第1領域は、吸収性ポリマーを間欠的に配置することによって構成されており、臀部に当接する後胴回り領域S2の非肌当接面側に配置されている。
なお、第2領域は、第1領域よりも吸収性ポリマーの目付が低く構成されていればよく、吸収性ポリマーを有しない(吸収性ポリマーの目付が0g/m)領域であってもよい。
【0120】
図8(c)及び図8(d)は、変形例2に係る吸収体40Hを示している。図8(c)は、平面図であって、図8(d)は、幅方向中央における前後方向に沿った断面の断面図である。
【0121】
変形例2に係る吸収体40Hは、略砂時計型の1層によって構成されている。第1領域は、吸収性ポリマーが周囲の吸収体よりも高い高目付領域である高吸収性コアを配置することによって構成されており、臀部に当接する後胴回り領域S2の肌当接面側に配置されている。
【0122】
吸収体の中央開口部の後端部は、第1領域と厚み方向において重なっている。このように案内部と第1領域とを重ねて配置することにより、排尿領域S3において吸収した体液を直接的に第1領域に導くことができる。したがって、第1領域に体液を迅速かつ確実に移行して、第1領域に配置された吸収性ポリマーの使用効率を高めることができる。
【0123】
また、吸収体の中央開口部の非肌当接面側に第1領域が配置されているため、中央開口部によって導かれる体液は、第1領域の非肌面側から吸収される。よって、体液が肌に付き難くなり、ウエット感を少なくすることができる。
【0124】
図8(e)及び図8(f)は、変形例3に係る吸収体40Jを示している。図8(e)は、平面図であって、図8(f)は、幅方向中央における前後方向に沿った断面の断面図である。
【0125】
変形例3に係る吸収体40Jは、略砂時計型の1層によって構成されている。第1領域は、吸収体の一部分の吸収性ポリマーの目付けを高くすることによって形成されており、臀部に当接する後胴回り領域S2に配置されている。
【0126】
図8(g)及び図8(h)は、変形例4に係る吸収体40Kを示している。図8(g)は、平面図であって、図8(h)は、幅方向中央における前後方向に沿った断面の断面図である。
【0127】
変形例4に係る吸収体40Kは、略砂時計型の1層によって構成されている。第1領域は、吸収性ポリマーを間欠的に配置することによって構成されている。吸収体には、案内部及び曲部として機能する低目付領域47が前後方向に沿って形成されている。
【0128】
図9は、変形例に係る使い捨ておむつの平面図である。この使い捨ておむつは、脚回り弾性材の幅方向における内側端部が幅方向中央に延びており、左右の脚回り弾性材が連なっている。この連なっている弾性材は、幅方向に伸縮する幅伸縮性部材として機能する。
【0129】
左脚用の脚回り弾性材と右脚用の脚回り弾性材とが連続して配置されていることにより、脚回り弾性部材を連動して引き上げることができ、効率よく後胴回り領域を引き上げることができる。
【0130】
このような構成においては、通常は脚回り伸縮性部材の収縮によって吸収体に皺が入り吸収性能の悪化を招くおそれがある。しかし、本実施例においては、第1領域の存在により剛性が高まっているため、吸収体に皺が入りにくい構成となっている。第1領域は吸収性ポリマーの量が多いため、液吸収後においては剛性がさらに高まる。よって、さらに吸収体に皺が入り難くなり、吸収性能の悪化を抑制することができる。
【0131】
[その他の実施形態]
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0132】
例えば、上述した実施形態では、パンツ型の使い捨ておむつとして説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、オープン型の使い捨ておむつ、失禁用パッド及び生理用ナプキンなどに適用してもよい。
【0133】
上述した実施形態では、スリット、弾性材又は剛性の変化する境界部分を用いて吸収体が曲がるよう構成したが、吸収体の厚さを薄くしたり、吸収体にエンボス加工を施したりすることによって吸収体が曲がるよう構成してもよい。
【0134】
また、本実施の形態に係る吸収性物品は、側端部弾性材49を備えているが、側端部弾性材49を備えていなくてもよい。また、防漏壁は、股間からの横漏れを防ぐために起立部(防漏弾性材53)有しているが、必ずしも防漏弾性材53を有していなくてもよい。
【0135】
本実施形態では、吸収体40は、第1層41と第2層42との2層構造であるが、本発明に係る着用物品の吸収体40は、1層のみによって構成されていてもよいし、3層以上で構成されていてもよい。
【0136】
また、本実施の形態では、中央曲部と第1曲部とが設けられているが、第1曲部よりも幅方向外側に第2曲部や第3曲部等、複数の曲部を設けてもよい。
【0137】
また、変形例3において、第1領域の例として1層の吸収体の一部分の吸収性ポリマーの目付を高くすることによって形成する例を示したが、図8で示したように、吸収体の幅方向中央部における上側に吸収性ポリマーを配置したり、幅方向にみてほぼ全幅に吸収性ポリマーを配置したり、吸収体の断面でみて吸収体の表面側に吸収性ポリマーを散布してもよい。
【0138】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。従って、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0139】
1…使い捨ておむつ(使い捨て着用物品)、 3…ウエストギャザー、 3A…ウエスト弾性材、 4,4’…前胴回り側縁部、 5…レッグギャザー、 5F…前脚回り弾性材、 5R……後脚回り弾性材、 6,6’…後胴回り縁部、8…中間股下縁部、 10…表面シート、 15…セカンドシート、30…吸収体裏面被覆シート、 40,40G,40H,40J,40K…吸収体、41…第1層、 41W…内側端部、 42…第2層、 42W…外側端部、 43…弾性材被覆シート、 44…中央弾性材、 45…中央開口部、 46…第1サイドスリット、 47…低目付領域、 49…側端部弾性材、 53…防漏弾性材、 60…サイドシート、70F…前側外装トップシート、70R…後側外装トップシート、80F…前側外装バックシート、80R…後側外装バックシート、 90…吸収性シート、 92、93…液透過性シート、 96…吸収性ポリマー配置領域、 97…吸収性ポリマー非配置領域、 100…外装センターシート、 110…中間領域、R1…第1領域、 R2…第2領域、S1…前胴回り領域、S2…後胴回り領域、S3…排尿領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置され、かつ着用者の身体前側と身体後側とに延びる前後方向及び前記前後方向に直交する幅方向を有する吸収体と、を備え、着用者の排尿部に当接する領域である排尿領域と、前記排尿領域よりも後方に配置され、前記着用者の臀部を当接する領域である臀部領域と、を有し、前記表面シートと前記裏面シートとの間に、吸収性ポリマーが液透過性シート間に挟持された吸収性シートが設けられた使い捨て着用物品であって、
前記排尿領域には、前記吸収性シートが配置されておらず、
前記臀部領域には、前記吸収性シートが配置されており、
前記排尿領域と前記臀部領域のうち少なくとも前記排尿領域に位置する前記吸収体には、前記排尿領域から前記臀部領域に向かって延びる案内部が設けられており、
前記臀部領域には、前記前後方向と前記幅方向のうち少なくとも前記前後方向に伸縮する臀部伸縮性部材が設けられていることを特徴とする使い捨て着用物品。
【請求項2】
液透過性の表面シートと、裏面シートと、前記表面シートと前記裏面シートとの間に配置され、かつ着用者の身体前側と身体後側とに延びる前後方向及び前記前後方向に直交する幅方向を有する吸収体と、を備え、着用者の排尿部に当接する領域である排尿領域と、前記排尿領域よりも後方に配置され、前記着用者の臀部を当接する領域である臀部領域と、を有する使い捨て着用物品であって、
前記吸収体は、吸収性ポリマーを有する第1領域と、前記第1領域よりも吸収性ポリマーの目付が低い第2領域と、を有しており、
前記臀部領域の前記吸収体には、前記第1領域が設けられており、
前記排尿領域の前記吸収体には、前記第2領域が設けられており、
前記排尿領域と前記臀部領域のうち少なくとも前記排尿領域に位置する吸収体には、前記排尿領域から前記臀部領域に向かって延びる案内部が設けられており、
前記臀部領域には、前記前後方向と前記幅方向のうち少なくとも前記前後方向に伸縮する臀部伸縮性部材が設けられていることを特徴とする使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記案内部は、前記吸収体に形成されたスリット、及び前記吸収体において周囲の目付よりも低い目付である低目付領域のうち少なくともいずれか一方によって構成される、請求項1又は請求項2に記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記臀部伸縮性部材は、前記着用者の脚回りに沿って配置される一対の脚回り伸縮性部材である、請求項1から請求項3のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記一対の脚回り伸縮性部材に跨って配置され、前記幅方向に伸縮する幅伸縮性部材を備える、請求項4に記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記臀部領域には、前記着用者の腰回りに沿って配置され、前記幅方向に伸縮する腰回り弾性材が設けられている、請求項1から請求項5のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項7】
前記臀部領域には、前記吸収性ポリマーが配置された複数のポリマー配置領域と、前記吸収性ポリマーが配置されていないポリマー非配置領域と、が設けられており、
前記複数の前記ポリマー配置領域の間に、前記ポリマー非配置領域が配置されている、請求項1から請求項6のいずれかに記載の使い捨て着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−55994(P2013−55994A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195206(P2011−195206)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】