説明

使用済み粒状活性炭の再利用方法および浄水処理設備

【課題】浄水処理設備における使用済みの粒状活性炭を再利用するのに際して、低コストでより多くの使用済み粒状活性炭を再利用可能とするとともに、精製される浄水への水質リスクを抑える。
【解決手段】取水した原水A中の汚泥Bを凝集して沈殿させる凝集沈殿池2と、この凝集沈殿池2から排出された汚泥Bを濃縮する濃縮槽7と、この濃縮槽7で濃縮された汚泥Bを保持して脱水機9に供給する給泥槽8とを備えた浄水処理設備にあって、この浄水処理設備における凝集沈殿池2からの沈殿処理水に粒状活性炭吸着設備において接触させられた使用済み粒状活性炭Gと、他の浄水処理設備における凝集沈殿池からの沈殿処理水に粒状活性炭接触池4において接触させられた使用済み粒状活性炭Gとのうち少なくとも一方を粉砕して粉砕活性炭Hとし、この粉砕活性炭Hを濃縮槽7と給泥槽8の少なくとも一方に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浄水処理設備における粒状活性炭吸着設備において原水の沈殿池からの沈殿処理水に接触させられた使用済みの粒状活性炭を再利用するための使用済み粒状活性炭の再利用方法、およびかかる再利用方法を適用し得る浄水処理設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浄水処理設備においては、河川等から取水した原水を凝集沈殿池に導入して濁質を汚泥として凝集、沈殿させ、こうして沈殿した汚泥は濃縮槽において濃縮して上澄み水は着水井等に戻すとともに、濃縮した汚泥は給泥槽に保持した上で脱水機に供給して脱水し、脱水ケーキは園芸用土などとして有効利用するとともに、脱水した水分はやはり着水井等に戻すようにしている。一方、凝集沈殿池から排出された沈殿処理水は、オゾン接触池などを経た後、粒状活性炭を充填した接触池などの吸着設備に供給されてこの粒状活性炭により臭気成分が除去されることがあり、こうして臭気が除かれた処理水は急速濾過池において濾過された後、浄水池を経て浄水として送水される。
【0003】
このように粒状活性炭吸着設備を備えた浄水処理設備においては、粒状活性炭が破過する前に定期的に粒状活性炭を交換することになり、使用済みの粒状活性炭は従来は産業廃棄物として処分されたり再生して再利用されたりしていた。ところが、こうして交換される使用済み粒状活性炭は大量であるために産業廃棄物として処理するにも莫大な処理費用が必要となり、また再生するにしても多くのエネルギーが必要となって、やはりコスト高を招く結果になる。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、このような使用済み粒状活性炭の再利用方法として、使用済み粒状活性炭を粉砕して粉末活性炭とし、これを凝集沈殿設備の前段部に注入したり、急速濾過池の濾過砂に代わる濾材としたりして再利用することが提案されている。また、特許文献2にも、使用済みの粒状活性炭を回収し、熱再生処理した後、粉砕して凝集沈殿設備に供給することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−346548号公報
【特許文献2】特開2005−034742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2のように使用済み粒状活性炭を熱処理によって再生するには、やはり多くのエネルギーを要することになって処理コストが高騰することが避けられない。さらに、こうして再生した粒状活性炭や使用済み粒状活性炭をそのまま粉砕して凝集沈殿設備に供給するにしても、水質改善には新炭を使用する場合と比べて数十倍の活性炭量が必要であり、さらに、一度は略破過した活性炭であるために吸着性能が不安定となっているおそれがあり、そのような粉砕活性炭を、浄水の精製工程の前段とはいえ、凝集沈殿設備において後々浄水となる原水に直接注入することは、水質リスクの上で好ましくない。
【0007】
また、特許文献1に記載されているように、使用済み粒状活性炭を粒状のまま急速濾過池の濾材として再利用する場合も、浄水の精製工程に使用済みの、かつ一般的な砂濾過材と物性の異なる活性炭を直接利用することになるため、水質リスクが懸念されることは避けられない。しかも、濾材の必要量は再利用すべき使用済み活性炭の量と比べて少ないため、使用済み粒状活性炭の多くが再利用できなくなるおそれもある。これは、凝集沈殿設備に粉砕活性炭を供給する場合も同様であり、すなわち凝集沈殿設備への粉砕活性炭の必要供給量は原水の水質により変化するため、環境条件等により水質の良好な原水が取水される場合には粉砕活性炭の供給量も少なくなり、十分な再利用を図ることができなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような背景の下になされたもので、浄水処理設備における使用済みの活性炭を再利用するのに際して、低コストでより多くの使用済み粒状活性炭を再利用可能であるとともに、精製される浄水への水質リスクを抑えることが可能な使用済み粒状活性炭の再利用方法、およびかかる再利用方法を適用し得る浄水処理設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の使用済み粒状活性炭の再利用方法は、取水した原水中の汚泥を凝集して沈殿させる凝集沈殿池と、この凝集沈殿池から排出された汚泥を濃縮する濃縮槽と、この濃縮槽で濃縮された汚泥を保持して脱水機に供給する給泥槽とを備えた浄水処理設備にあって、当該浄水処理設備における上記凝集沈殿池からの沈殿処理水に粒状活性炭吸着設備において接触させられた使用済み粒状活性炭と、他の浄水処理設備における凝集沈殿池からの沈殿処理水に粒状活性炭吸着設備において接触させられた使用済み粒状活性炭とのうち少なくとも一方を粉砕して粉砕活性炭とし、この粉砕活性炭を上記濃縮槽と給泥槽の少なくとも一方に供給することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の浄水処理設備は、取水した原水中の汚泥を凝集して沈殿させる凝集沈殿池と、この凝集沈殿池から排出された汚泥を濃縮する濃縮槽と、この濃縮槽で濃縮された汚泥を保持して脱水機に供給する給泥槽とを備えた浄水処理設備において、当該浄水処理設備における上記凝集沈殿池からの沈殿処理水に粒状活性炭吸着設備において接触させられた使用済み粒状活性炭と、他の浄水処理設備における凝集沈殿池からの沈殿処理水に粒状活性炭吸着設備において接触させられた使用済み粒状活性炭とのうち少なくとも一方を粉砕する粉砕手段と、この粉砕手段により粉砕された粉砕活性炭を上記濃縮槽と給泥槽の少なくとも一方に供給する供給手段とを備えていることを特徴とする。
【0011】
このように、本発明の使用済み粒状活性炭の再利用方法および浄水処理設備においては、使用済み粒状活性炭を粉砕した粉砕活性炭は、凝集沈殿池から排出された汚泥を濃縮する濃縮槽と、この濃縮槽で濃縮された汚泥を保持して脱水機に供給する給泥槽とのうち少なくとも一方に供給されるため、濃縮槽の上澄み水や給泥槽からの汚泥から脱水機において脱水された排水が着水井に返送されるにしても、この着水井や凝集沈殿池、急速濾過池などの浄水の精製工程に使用済みの活性炭を直接供給するのに比べて水質リスクを大幅に低減することができ、むしろこうして返送される返送水の水質改善や脱水機から排出される脱水ケーキの臭気低減を図ることができる。
【0012】
また、こうして濃縮槽や給泥槽に供給される使用済みの活性炭は粒状活性炭を粉砕したものであるので、粒状活性炭が略破過したものであっても新たな気孔が露出して吸着性が回復しており、熱再生処理を施したりすることなくそのまま濃縮槽や給泥槽に供給することができる。しかも、濃縮槽に供給された粉砕活性炭は汚泥の沈降助剤としての作用も奏功するとともに、こうして濃縮槽に供給された粉末活性炭も汚泥とともに給泥槽に排出されて脱水機により脱水されるが、粒径が粒状活性炭より小さくされているため、給泥槽に供給された粉砕活性炭ともども、脱水機における脱水ケーキの形成を阻害するようなこともない。
【0013】
さらに、環境中の一般的な臭気物質濃度であれば濃縮槽や給泥槽に供給する粉砕活性炭の供給量も安定しており、また必要とされる供給量も急速濾過池の濾材などよりは多量であるので、使用済み粒状活性炭の安定した再利用を図ることができる。このため、こうして再利用する使用済み粒状活性炭が発生する粒状活性炭吸着設備が、粉砕活性炭が供給される濃縮槽や給泥槽を有する本発明の浄水処理設備自体に備えられている場合は勿論、他の浄水処理設備に備えられた粒状活性炭吸着設備で使用された活性炭を本発明の浄水処理設備に搬送して再利用することも可能であり、その場合には必ずしも本発明の浄水処理設備に粒状活性炭吸着設備が備えられている必要はない。
【0014】
ここで、このような粉砕活性炭の供給量をより多量とするには、粉砕活性炭を、濃縮槽と給泥槽の双方に分配して供給するのが勿論望ましい。また、この場合には、凝集沈殿池から濃縮槽に供給される汚泥量の方が、濃縮槽から給泥槽に供給されて保持される汚泥量よりも多いので、濃縮槽への粉砕活性炭の供給量を、給泥槽への粉砕活性炭の供給量よりも多くすることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、使用済み粒状活性炭を熱再生処理などすることなく多量に再利用することができて経済的であるとともに、精製される浄水への水質リスクを低減して、より安全な浄水処理を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の浄水処理設備の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の浄水処理設備の一実施形態を示す概略図である。以下、この浄水処理設備の説明と併せて、本発明の使用粒状済み活性炭の再利用方法の一実施形態について説明する。
【0018】
河川等から取水された原水Aは、着水井1に一旦保持された後、凝集沈殿池2に供給される。凝集沈殿池2は、上流側から順に混和池2A、フロック形成池2B、および沈殿池2Cとから概ね構成されており、混和池2Aに導入された原水Aは凝集剤が添加されて攪拌されながら混和され、こうして凝集剤が混和した原水Aはフロック形成池2Bにおいて濁質が凝集してフロックが形成され、さらにこうして形成されたフロックは沈殿池2Cにおいて汚泥Bとして沈殿させられる。
【0019】
沈殿池2Cにおいて汚泥Bが沈殿して分離させられた沈殿処理水としての原水Aは、オゾン接触池3に供給されてオゾンが吹き込まれることにより殺菌、消毒され、次いで本実施形態における粒状活性炭吸着設備である粒状活性炭接触池4に供給されて、粒径数mm程度の粒状活性炭に接触させられることにより臭気物質やトリハロメタン等の不純物が吸着されて除去される。さらに、こうして殺菌、消毒されるとともに不純物が除去された原水Aは急速濾過池5において濾過され、浄水池6に保持された後、浄水Cとして送水される。
【0020】
一方、凝集沈殿池2において原水Aから沈殿して分離された汚泥Bは、濃縮槽7に供給されて濃縮させられる。図示の濃縮槽7は放射流式のものであって、沈降分離により濃縮された汚泥Bは濃縮槽7の底部中央から抜き出されて給泥槽8に供給される一方、濃縮槽7の上部の堰を越流した上澄み水Dは着水井1に返送される。
【0021】
また、濃縮槽7から給泥槽8に供給された濃縮された汚泥Bは、この給泥槽8に一定量が保持された後に脱水機9に供給されて脱水させられる。脱水後の汚泥Bの脱水ケーキEは乾燥させられて例えば園芸用土などとして有効利用される一方、脱水された排水Fは上澄み水Dと同様に着水井1に返送される。
【0022】
このうち、上記粒状活性炭接触池4では、粒状活性炭が上述のような不純物を吸着することにより吸着能が徐々に低下し、やがて破過に至る。従って、破過に至る前に、通常は数年に1度程度の割合で粒状活性炭接触池4における粒状活性炭の交換を行うことになり、その際に大量の使用済み粒状活性炭Gが発生することになるが、本発明ではこの使用済み粒状活性炭Gを粉砕手段10によって粉砕して上記濃縮槽7と給泥槽8のうち少なくとも一方に供給する。
【0023】
すなわち、交換の際に発生した使用済み粒状活性炭Gは、本実施形態では熱再生処理などを施されることなく、そのまま粉砕手段10によって粉砕させられて、例えば粒径が1mm以下のものが60%以上含まれ、望ましくは粒径が100μm以下のものが90%以上含まれるような粉砕活性炭Hとされる。なお、この粉砕手段10としては各種粉砕装置が使用可能であるが、粉砕メディアが高速回転する粉砕装置が好ましく、ハンマーミルやボールミルが特に好ましい。こうして使用済み粒状活性炭Gを粉砕することにより、粉砕活性炭Hにおいては不純物等を吸着していない気孔が露出することになり、吸着能の回復が図られる。
【0024】
そこで、この粉砕活性炭Hを、例えばスラリー状として粉砕活性炭保持槽11に保持して、図示されないポンプ等の給送装置により濃縮槽7と給泥槽8のいずれか一方、または双方に供給する。従って、本実施形態では、これら粉砕活性炭保持槽11および給送装置が粉砕活性炭Hの供給手段とされる。また、本実施形態では図示のように濃縮槽7と給泥槽8の双方に粉砕活性炭Hを供給している。
【0025】
このように粉砕活性炭Hが供給されることにより、濃縮槽7においては、露出した気孔に臭気物質等が吸着されて除去され、藻類が繁殖していたりしても悪臭を抑制することができる。また、濁質もこの粉砕活性炭Hに吸着されるので、着水井1に返送される上澄み水Dを清澄化して着水井1における水質の改善を図ることもできる。さらには、こうして濃縮槽7に供給された粉砕活性炭Hが沈降助剤として機能して汚泥Bの速やかな沈降分離を促し、濃縮槽7内の上澄み水Dとの界面の低下を図ることも可能となる。
【0026】
また、給泥槽8においても、供給された粉砕活性炭Hにより臭気物質が吸着されて除去されるので、給泥槽8内の汚泥Bが腐敗していても悪臭を抑えることができる。これは、この給泥槽8から供給された汚泥Bを脱水機9によって脱水した脱水ケーキEにおいても同様であり、また脱水機9から着水井1に返送される排水Fの清澄化も図られるので、やはり着水井1の水質を改善することもできる。
【0027】
さらに、この粉砕活性炭Hは、望ましくは上述のような小さな粒径に粉砕されたものであるので、脱水機9において汚泥Bを脱水して脱水ケーキEを形成する際に汚泥Bとの馴染みがよく、例えば粉砕していない使用済み粒状活性炭Gをそのまま供給して脱水ケーキを形成する場合のようにケーキ厚みに異常なムラができたり、いびつなケーキが形成されたり、あるいはケーキ自体が形成できなくなったりすることがない。また、粒径が小さいので脱水機9の配管や機器内において閉塞を生じることもない。
【0028】
そして、このように、使用済み粒状活性炭Gを粉砕した粉砕活性炭Hは、着水井1から浄水池6に至る原水Aから浄水Cへの精製工程に直接供給されるのではなく、濃縮槽7と給泥槽8の少なくとも一方に供給されて、最終的には脱水ケーキEとして処理されるので、浄水Cの水質リスクを最小限に抑えて安全な浄水処理を促すことが可能となる。勿論、こうして処理された脱水ケーキEを園芸用土などとして利用すれば、従来は莫大な費用を要して産業廃棄物として処理したり、大きなエネルギーを用いて再生処理したりしていた使用済み粒状活性炭Gをそのまま有効利用することができ、経済的である。ただし、使用済み粒状活性炭Gに乾燥処理や水溶処理等の前処理を施してから粉砕して粉砕活性炭Hとして供給するようにしてもよい。
【0029】
また、濃縮槽7に供給されて濃縮させられる汚泥Bや、給泥槽8に保持される濃縮させられた汚泥Bの質は、天候や季節などの環境条件によってその水質が不安定となりがちであるが、環境中の一般的な臭気物質濃度であればこれら濃縮槽7や給泥槽8に供給する粉砕活性炭Hの供給量も安定している。従って、使用済み粒状活性炭Gの安定した再使用を図ることができ、数年に1度大量に発生する使用済み粒状活性炭Gを確実に処理することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、この使用済み粒状活性炭Gが発生する粒状活性炭接触池4が本実施形態の浄水処理設備自体に備えられている場合について説明したが、例えば当該浄水処理設備自体には粒状活性炭接触池4が備えられていなくても、他の浄水処理設備に備えられた粒状活性炭接触池4等の粒状活性炭吸着設備において発生した使用済み粒状活性炭Gに対して本発明を適用して、この他の浄水処理設備の使用済み粒状活性炭Gを粉砕して本実施形態の浄水処理設備の濃縮槽7や給泥槽8に供給するようにしてもよい。また、上述のように大量に発生する使用済み粒状活性炭Gの確実な処理が可能であることから、本実施形態の浄水処理設備に粒状活性炭接触池4が備えられている場合でも、他の浄水処理設備で発生した使用済み粒状活性炭Gも併せて粉砕して再利用することも可能となる。
【0031】
ここで、上記実施形態では粉砕活性炭Hを濃縮槽7と給泥槽8との双方に分配して供給するようにしているが、これら濃縮槽7と給泥槽8のいずれか一方に供給することも可能であり、その場合にも濃縮槽7と給泥槽8のそれぞれにおける上記効果は奏することができる。ただし、給泥槽8のみに粉砕活性炭Hを供給する場合には濃縮槽7における効果は得ることはできず、また濃縮槽7のみに供給する場合には、最終的には給泥槽8にも粉砕活性炭Hが供給されることになるとはいえ、粉砕活性炭Hの供給量、すなわち使用済み粒状活性炭Gの処理量が低減することは避けられない。
【0032】
従って、粉砕活性炭Hは、本実施形態のように濃縮槽7と給泥槽8の双方に分配して供給されるのが望ましい。このとき、濃縮槽7と給泥槽8へのそれぞれの粉砕活性炭Hの供給量の比は、濃縮槽7に供給された粉砕活性炭Hが最終的には汚泥Bとともに給泥槽8に供給されることを考慮すると、重量比で9:1程度と濃縮槽7への供給量が給泥槽8への供給量より多くされるのが望ましい。
【0033】
なお、こうして濃縮槽7と給泥槽8の双方に粉砕活性炭Hを分配して供給する場合や、給泥槽8のみに粉砕活性炭Hを供給する場合でも、給泥槽8での臭気の確実な除去や脱水機9からの排水Fの清澄化を図るには、給泥槽8内の溶液中における粉砕活性炭Hの濃度が常に0.1〜1重量%となるように、例えば自動制御されて粉砕活性炭Hのスラリーが、0.1〜1%の範囲の粉砕活性炭注入率で注入されるように構成されるのが望ましい。ここで、粉砕活性炭注入率とは、粉砕活性炭Hを添加する対象に含まれる粉砕活性炭Hの固形物重量濃度である。また、粉砕活性炭保持槽11から濃縮槽7および給泥槽8に粉砕活性炭Hのスラリーを供給する配管にそれぞれバルブを設けておいて、これら濃縮槽7と給泥槽8のいずれか一方への粉砕活性炭Hの供給と双方への分配供給とを切り替え可能としてもよい。
【実施例】
【0034】
以下、上記実施形態に基づく実施例を挙げて本発明の効果について実証する。本実施例では、凝集沈殿池2から排出される排泥量が1000m/日、排泥濃度(固形物濃度)が0.5%、固形物量5t−ds/日、臭気原因物質である2−メチルイソボルネオール濃度が10〜20ng/Lの汚泥Bに対して、粒径が100μm以下のものが90%以上含まれた粉砕活性炭Hを、容量1000mの濃縮槽7に4.5t−ds/日、容量100mの給泥槽8に0.5t−ds/日の割合で、合計5t−ds/日で供給した。従って、粉砕活性炭Hの注入率は0.5%である。また、濃縮槽7から引き抜かれて給泥槽8に排出される濃縮槽引抜汚泥量は100m/日、全固形物濃度は9.5%、全固形物量は9.5t−ds/日であり、給泥槽8から排出されて脱水される脱水処理汚泥は10t−ds/日、そのうち粉砕活性炭Hは5t−ds/日であった。
【0035】
その結果、この脱水処理汚泥を脱水機9で脱水した10t−ds/日の脱水ケーキEは、濃縮汚泥Bが5t−ds/日、粉砕活性炭Hが5t−ds/日で、重量比はds比率で濃縮汚泥Bが50%、粉砕活性炭Hが50%であり、ケーキ厚みにムラが生じたり、いびつなケーキが形成されたりすることなく確実にケーキ形成が可能であった。さらに、濃縮槽7から排出された上澄み水Dと脱水機9から排出された排水Fの2−メチルイソボルネオール濃度は、ともに1〜2ng/Lにまで低減されており、本発明により、着水井1に返送される返送水の水質改善が図られていることが分かった。ちなみに、上記と同じ条件で、粉砕活性炭Hとして粒径が1mm〜100μmのものが60%以上含まれたものを供給した場合でも同様にムラや歪みのない確実なケーキの形成が可能であったのに対し、粒径が1mmを越えるものが殆どを占める粉砕していない使用済み粒状活性炭Gを供給した場合には脱水機9においてケーキを形成することができなかった。
【符号の説明】
【0036】
1 着水井
2 凝集沈殿池
2A 混和池
2B フロック形成池
2C 沈殿池
3 オゾン接触池
4 粒状活性炭接触池(粒状活性炭吸着設備)
5 急速濾過池
6 浄水池
7 濃縮槽
8 給泥槽
9 脱水機
10 粉砕手段
11 粉砕活性炭保持槽(供給手段)
A 原水
B 汚泥
C 浄水
D 上澄み水
E 脱水ケーキ
F 沈殿処理水
G 使用済み粒状活性炭
H 粉砕活性炭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水した原水中の汚泥を凝集して沈殿させる凝集沈殿池と、この凝集沈殿池から排出された汚泥を濃縮する濃縮槽と、この濃縮槽で濃縮された汚泥を保持して脱水機に供給する給泥槽とを備えた浄水処理設備にあって、
当該浄水処理設備における上記凝集沈殿池からの沈殿処理水に粒状活性炭吸着設備において接触させられた使用済み粒状活性炭と、他の浄水処理設備における凝集沈殿池からの沈殿処理水に粒状活性炭吸着設備において接触させられた使用済み粒状活性炭とのうち少なくとも一方を粉砕して粉砕活性炭とし、
この粉砕活性炭を上記濃縮槽と給泥槽の少なくとも一方に供給することを特徴とする使用済み粒状活性炭の再利用方法。
【請求項2】
上記粉砕活性炭を、上記濃縮槽と給泥槽の双方に分配して供給することを特徴とする請求項1に記載の使用済み粒状活性炭の再利用方法。
【請求項3】
上記濃縮槽への粉砕活性炭の供給量を、上記給泥槽への粉砕活性炭の供給量よりも多くすることを特徴とする請求項2に記載の使用済み粒状活性炭の再利用方法。
【請求項4】
取水した原水中の汚泥を凝集して沈殿させる凝集沈殿池と、この凝集沈殿池から排出された汚泥を濃縮する濃縮槽と、この濃縮槽で濃縮された汚泥を保持して脱水機に供給する給泥槽とを備えた浄水処理設備において、
当該浄水処理設備における上記凝集沈殿池からの沈殿処理水に粒状活性炭吸着設備において接触させられた使用済み粒状活性炭と、他の浄水処理設備における凝集沈殿池からの沈殿処理水に粒状活性炭吸着設備において接触させられた使用済み粒状活性炭とのうち少なくとも一方を粉砕する粉砕手段と、
この粉砕手段により粉砕された粉砕活性炭を上記濃縮槽と給泥槽の少なくとも一方に供給する供給手段とを備えていることを特徴とする浄水処理設備。

【図1】
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【公開番号】特開2012−232279(P2012−232279A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104608(P2011−104608)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(591043581)東京都 (107)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【Fターム(参考)】