説明

依存性退薬症状の治療

【課題】妊娠中の患者の薬物依存症又はオピオイド耐性患者における退薬症候群又は禁断症候群を治療するためのブプレノルフィンの投与計画の提供。
【解決手段】退薬症候群を軽減するためにブプレノルフィンの有効量の経皮投与による患者の退薬症候群又は禁断症候群を治療することを含む。例えば、第1のブプレノルフィン含有経皮剤形は、約5日以内の第1の投与期間に投与することができ;約5日以内の第2の投与期間に第2のブプレノルフィン含有経皮剤形を投与することができ、第2の剤形が、第1の剤形と同一か、又は第1の剤形よりも高用量のブプレノルフィンを含み;及び少なくとも2日間の第3の投与期間に第3のブプレノルフィン含有経皮剤形を投与することができ、第3の剤形が、第2の剤形と同一か、又は第2の剤形よりも高用量のブプレノルフィンを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年7月25日出願の米国特許出願第60/490,407号に対す
る優先権を主張する。本先行出願は、参照として本明細書に組み込まれている。
本発明は、退薬症候群の治療に関する。特に本発明は、オピオイド類依存性妊婦におけ
る退薬症状を治療すること、及び新生児のオピオイド依存症の治療に関する。
【背景技術】
【0002】
オピエート退薬症候又は禁断症候群は、オピオイド投与の減少又は欠如設定中又はオピ
オイドアンタゴニスト(例えば、ナロキソン又はナルトレキソン)導入時の一群の瞳孔散
大、コリーザ(粘液分泌鼻)、過敏性、吐気及び/又は嘔吐及び/又は下痢、及び起毛(
鳥肌)である。中毒者の多くは、オピオイドの供給を維持できず、薬物を使い切る前に投
与量の漸増を止めないことから、本症候群はオピオイド中毒と関連することが多い。しか
しながら、中毒は、公知の有害作用にもかかわらず、「薬物の強迫的使用並びにその獲得
及び使用に抵抗できない関与を特徴とする行動パターン」である(グッドマン(Goodman
)及びギルマン(Gillman)著、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、ジェ
イ・ジー・ハードマン(J.G.Hardman(編集)、マックグローヒル・プロフェッショナル・
パブリッシングMcGraw-Hill Professional Publishing)、2001年、p.586)ので,禁断症
候群の存在は、中毒の最も本質的な構成要素ではない。中毒に対する可能な治療の一部は
、オピオイド禁断症候群の管理である。オピオイド中毒者は、オピオイド類に対して極め
て耐性であり得、したがって彼らが自己の破壊的行動を止めようとすると、重篤な及び/
又は持続的な禁断症候群を患う可能性がある。オピオイド禁断症候群を減少又は予防する
ために、1970年代におけるメタドンから始まって多くの薬物が利用されてきた。中毒
者のオピオイド「ハンガー(hunger)」を減少させるためにさらに幾つかの薬物が研究さ
れた。これらの薬物治療が、オピオイド中毒の治療と考えられる。
【0003】
現在、オピオイド中毒を治療するために試験中の多くの薬物があり、例えば、アボット
69024、アマンチジン、ブプロピオン、ブロモクリプチン、ブスピロン、カルバマゼ
ピン(テグレトール(Tegretol))、フルオキセチン(プロザク(Prozac))、フルペン
チキソール、ゲピロン、LAAM、マジンドール、ナルトレキソン及びシェリング233
90(引用文献:Scientific American、1991年3月、p.94
−103を参照)。有効であることが証明されているのは、これらの薬物のうちほんの僅
かである。オピオイド依存症用のメタドンの代わりに、ブプレノルフィン等の新規な薬物
に照準が当てられているが、臨床試験情報の入手が限られている(フヅラ(Fudula)ら、
NIDA Research Monograph 1991年、105:p.587−
588)。
【0004】
妊娠中の継続的なオピオイド乱用は、母親及びその乳児に合併症をもたらしうるので特
に重要である。妊婦におけるオピオイド依存を、合成オピオイド類により維持することは
推奨される実践法である。国際ガイドラインによれば、メタドンは、推奨される物質であ
る。しかしながら、新生児禁断症候群(NAS)は、妊娠時のヘロイン摂取後のNASと
比較して、重篤性は低いが、より長期に亘って新生児の60〜80%に見られる(イーダ
ー(Eder)ら、Psychiatr Prax2001年、28:p.267−69)。
NASは、1つ以上の以下の症状を特徴としうる:振せん、過敏性、緊張亢進、嘔吐、く
しゃみ、発熱、哺乳不良、及び発作。
【0005】
最近の試験では、妊娠患者の治療のため、舌下のブプレノルフィンを含む他の合成オピ
オイド類の安全性と有効性が調べられている。ブプレノルフィンによる維持療法は、妊娠
時の安全性及び有効性が証明され、母親は、尿毒性学の監視により立証されたように、継
続的ヘロイン乱用はなかった(イーダー(Eder)ら、Psychiatr Prax 2
001年、28:p.267−69)。
【0006】
ブプレノルフィンは、若年及び高齢患者において、静脈内、硬膜外、鞘内又は舌下等、
多くの異なった投与経路で送達された場合、広範囲の患者における痛みのコントロールに
有効であることが示されているμ−オピオイド受容体の強力な部分的アゴニストである(
イナガキ(Inagaki)ら、Anesth Analg 1996年、83:p.530−
536;ブレマ(Brema)ら、Int J Clin Pharmacol Res 1
996年、16:p.109−116;カポグナ(Capogna)ら、Anaesthesi
a 1988年、43:p.128−130;アドリアネンセン(Adrianensen)ら、A
cta Anaesthesiol Belg 1985年、36:p.33−40;タ
ウジン−フィン(Tauzin-Fin)ら、Eur J Anaesthesiol 1998年
、15:p.147−152;ナサール(Nasar)ら、Curr Med Res Op
in 1986年、10:p.251−255)。文献に報告されたブプレノルフィンの
経皮製剤には、幾つかの種類がある。例えば、ヒルレ(Hille)らに対する米国特許第5
,240,711号明細書、ヒダカ(Hidaka)らに対する米国特許第5,225,199
号明細書、シャーマ(Sharma)らに対する米国特許第5,069,909号明細書、チエ
ン(Chien)らに対する米国特許第4,806,341号明細書;ドラスト(Drust)らに
対する米国特許第5,026,556号明細書;コチンケ(Kochinke)らに対する米国特
許第5,613,958号明細書;及びレーダー(Reder)らに対する米国特許第5,9
68,547号明細書を参照されたい。ローマン・セラピー−システム社(Lohmann Ther
apie-Systeme GmbH & Co.)によって製造されているブプレノルフィンの経皮送達システ
ムは、現在、商品名トランステク(TRANTEC(登録商標))として、ヨーロッパ連合にお
いて販売されている。これらのパッチは、20mg、30mg及び40mgのブプレノル
フィンを含有し、それぞれ35、52.5及び70μg/時間の近似送達率又は「フラッ
クス」率を有する。他のオピオイドアンタゴニストであるフェンタニルの経皮送達システ
ムとしては、例えば、商品名デュラルジェシック(Duralgesic)により商品として入手し
うる。
【0007】
ブプレノルフィンは、他のアンタゴニスト鎮痛剤に時折見られる精神異常発現作用を示
すことなく、強力なオピオイドアンタゴニスト鎮痛剤であることがヒトにおいて示されて
いる。動物及びヒトの試験において、ブプレノルフィンは、アゴニスト(モルフィン様)
及び(モルフィン)アンタゴニスト性質の双方を有していることが示されている。しかし
ながら、動物及びヒトにおける直接的依存症試験から、ブプレノルフィンは、有意な身体
的依存を発生せず、また動物の自己投与試験及びヒトの中毒後における多幸性作用の測定
により示されるとおり、精神的依存を発生する可能性が低いことが結論付けられている。
ヒトにおいて、ブプレノルフィンのアゴニスト及び麻薬アンタゴニスト特性は、オピエー
ト中毒者において証明されている。したがって、用量範囲が6〜16mgにおける経口ブ
プレノルフィンは、高依存症オピエート中毒者においては解毒作のために起こる禁断を誘
起することが示されている。他方、毎日の比較的低用量の経口メタドンで安定化している
対象を含む試験においては、舌下ブプレノルフィンは、低レベルの不快感のみでメタドン
の代わりに用いることができた。本状況下において、ブプレノルフィンは、固有活性の低
いオピエートアゴニストとして挙動していた。
【0008】
最近の試験により、新生児罹患率に対する薬物依存性の母親及びブプレノルフィン維持
の影響結果が評価されている(ジャーナイト(Jernite)ら、Arch.Pediatr
.、1999年、6(11):p.1179−85)。本試験により、妊娠時のブプレノ
ルフィンの使用が、未熟、成長抑制、胎児仮死及び胎児死亡等の胎児/乳児における依存
症合併症を減じうることが示された。
【0009】
妊娠している中毒者における胎児に対する活性オピオイド乱用の帰結としては:母体の
呼吸抑制による酸素供与の減少が、複数の臓器損傷を生じさせること;オピエート誘導飢
餓又は錯乱から母親の栄養失調による子宮内栄養失調;発育時のオピエート暴露によって
生じるオピエート受容体のダウンレギュレーションによる神経発育異常、及び神経経路発
育異常;違法に得られたオピエートの大部分は汚染されていることから、他の胎児性毒素
への曝露;オピエート中毒母体の判定障害による他の胎児性毒素への曝露;及びオピエー
ト中毒母体の判定障害による心的外傷(意図的及び偶発的)に対する曝露、が挙げられる

【0010】
胎児に対するブプレノルフィンの直接的及び間接的作用に関する情報は、妊娠している
オピエート中毒者の治療可能性を決定するために必須である。さらに、母親の血行中のブ
プレノルフィンの治療レベルが、胎児に対して間接的な作用(胎盤を介して)を有してい
ないこともありうる(ナノフスカヤ(Nanovskaya)ら、J.Pharmacology
and Exp.Ther.2002年、300:p.26−33)。妊娠時に前記薬物
により治療を受けた母親に関する限られた報告数の中で、本試験では、ブプレノルフィン
の胎児循環路への胎盤経由移行の低さにより、新生児における退薬症状が穏やか/欠如し
ていると説明できたようだ。さらに、ブプレノルフィン治療は、療法のコンプライアンス
により証明されるように、メタドン治療と比較して妊婦により良好に受容されると考えら
れる(フィッシャー(Fischer)ら、Addiction2000年、95(2):p.
239−244)。現行のブプレノルフィンによる中毒治療は、禁断症候群を予防し、か
つ治療し、並びにオピオイド「ハンガー」を低下させうる。オピオイド中毒用のブプレノ
ルフィンは、毎日又は1日おきに舌下用錠剤又は舌下用液剤により送達される。
【0011】
メタドンは、維持療法に関して現在米国において承認されている、オピオイド対する唯
一のものであるが、ブプレノルフィンは、オピエート依存症の治療に関して以下の多くの
望ましい特性、(a)中等度依存症の個体に対してオピエート類の代わりとなりうる;(
b)退薬時に極めて緩和な禁断作用;及び(c)極めて良好な安全性、を有している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、維持療法に関して、頻回投与が必要等、オピエート中毒者治療のための
舌下用ブプレノルフィン製品には潜在的な問題がある。これにより、治療時の中毒者の移
動度が制限され、しばしば、スケジュール化監視投与により生産的な生活への復帰が、困
難になることが認められる。
【0013】
このように、一般的な集団及び特に薬物依存妊婦の双方のための薬物依存症の治療に有
効な療法の欠如により、新規なアプローチが要であることが強く示唆される。本発明は、
この必要性及び他の必要性を満たすことに関するものであり、オピオイド依存性妊婦及び
彼女らの胎児における禁断症候群の予防及び/又は治療に関する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、退薬症候群又は禁断症候群の治療を必要とする薬物依存症又はオピオイド耐
性患者における退薬症候群又は禁断症候群の治療を可能にするブプレノルフィンの具体的
な療法を提供する。
【0015】
本発明は、退薬症候群又は禁断症候群のような治療を必要とする薬物依存症又はオピオ
イド耐性患者における退薬症候群又は禁断症候群を治療する方法を提供し、該方法は、該
患者の退薬症候群を軽減するためにブプレノルフィンの有効量の経皮投与を含む。該患者
は、好ましくは妊婦である。該女性は、例えば、ヘロイン等のオピエート中毒でありうる

【0016】
本発明はまた、(1)約5日以内の第1の投与期間に第1のブプレノルフィン含有経皮
剤形を患者に投与すること;(2)約5日以内の第2の投与期間に第2のブプレノルフィ
ン含有経皮剤形を患者に投与することであり、前記第2の剤形が、第1の剤形と同一用量
のブプレノルフィンか、又は第1の剤形よりも高用量のブプレノルフィンを含むこと;及
び(3)少なくとも2日間の第3の投与期間に第3のブプレノルフィン含有経皮剤形を患
者に投与することであり、第3の剤形が、第2の剤形よりも高用量のブプレノルフィンを
含む、患者における退薬症候群又は禁断症候群を治療する方法を提供する。
【0017】
特定の実施形態において、前記第1、第2、及び第3の経皮剤形は、それぞれ下表の1
列に記載されているブプレノルフィンの近似量を含有する。
【0018】
【表2】

【0019】
前記投与計画は、第3の剤形後、ブプレノルフィンの血漿中平均濃度が、約800pg
/mlであるブプレノルフィンの血漿中プロフィルをもたらすことが好ましい。
【0020】
好ましい一実施形態において、本発明の方法はさらに、第3の投与期間後、第4の投与
期間に第4のブプレノルフィン含有経皮剤形を投与することを含む。例えば、当該第4の
剤形は、7日の投与期間のために、例えば、10mg、20mg、30mg、又は40m
gのブプレノルフィンを含む。
【0021】
特定の実施形態において、退薬症状が散逸した時点で前記剤形の投与量を次第に少なく
する。
【0022】
該経皮投与は、局所ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム、経粘膜デバイス、及び
イオン泳動送達システムから選択される経皮システムにより生じうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、禁断症候群の治療及び/又は予防の必要な対象に禁断症候群の有効な治療及
び/又は予防をより迅速に達成する方法を提供する。好ましい実施形態において、該方法
は、オピオイド依存性妊婦の治療に適用され、治療されている母体の新生児における禁断
症候群を軽減する。したがって、本発明の方法は、例えば、妊婦におけるヘロインからの
退薬症状を治療又は予防するために適用しうる。本発明で治療を受ける妊婦は、妊娠前に
処方薬又は非処方薬に依存する女性、又は妊娠中に依存性となる女性でありうる。
【0024】
該方法は、特定の剤形及び療法においてブプレノルフィンの有効量を対象に投与するこ
とを含む。本剤形及び療法は、ブプレノルフィンの用量を漸増させて一連の経皮剤形を対
象に投与することを含む。本用量増加は、できるだけ短時間で有効性を達成するように迅
速でありつつブプレノルフィンの高過ぎる開始用量の副作用を最少にすることが好ましい

【0025】
本発明の経皮投与計画は、依存症治療のためのブプレノルフィン投与におけるより有効
な方法を提供する。妊婦に投与される場合、本法は、薬物依存症の妊婦を治療しつつ、胎
児における(後の新生児における)禁断症状の発生を軽減する。さらに、本法は、毎日の
監視投与を必要としない。したがって、本法は、薬物療法による患者のコンプライアンス
の程度及び治療有効性を増大する。実際、ある実施形態において、本発明は、送達後の妊
婦、胎児及び新生児の双方における退薬症状の制御有効性の増大を有利に達成する。
【0026】
あるいは、本発明の投与計画は、ブプレノルフィンの漸増用量を含む一連の経皮剤形の
投与によって記載されうる。これは、中毒対象、好ましくは妊婦への経皮剤形の適用に言
及し、患者の禁断症候群を予防及び/又は治療するのに十分なブプレノルフィンの血中レ
ベルを、より迅速に達成しうる。本治療は、患者がダウンタイトレーションする状態にな
ったと思われる時間まで維持されるであろう。ダウンタイトレーションは、胎児に危険性
をもたらすと思われる、活動性中毒再発の危険性があるので、通常は妊娠中に開始されな
いと考えられる。
【0027】
例えば、一連の経皮剤形は、第1の剤形が5mgのブプレノルフィン、次いで2つの後
続剤形が5mg及び10mgを含有する投与計画で投与されうる。あるいは、該剤形は、
10mg及び10mgのブプレノルフィン、又は20mgのブプレノルフィンを含みうる
。特定の実施形態において、30mg及び/又は40mgのブプレノルフィン用量レベル
が用いられる。
【0028】
本明細書に用いられる「BTDS」は、「ブプレノルフィン経皮システム」を意味し、
Xがゼロ超の数である「BTDSX」は、Xミリグラムのブプレノルフィンを含有する経
皮剤形を意味する。したがって、「BTDS5」は、約5mgのブプレノルフィンを含有
する。BTDSは、好ましくは塩基又は塩の形態、より好ましくは、塩基の形態における
ブプレノルフィンを含有する。
【0029】
鎮痛剤の「鎮痛的有効」量とは、患者が経験する痛みのレベルを低下させうる薬剤量を
意味する。患者が経験する痛みのレベルは、目視アナログ尺度(VAS)又はリッカート
型尺度の使用によって評価しうる。VASは、線の一端が無痛を表し、線の他端が考えら
れる最悪の痛みを表す直線である。患者は、各時点で、彼らの痛みがあると考えられる所
で線上に印を付けるように求められ、無痛からその印までの長さを全尺度の長さと関係づ
けうる。リッカート型尺度は、記載事項との一致又は不一致に基づき、通常は、1から5
までの範囲の評点尺度である。同様のタイプであるが、11点尺度(0から10の範囲)
に基づく尺度もまた用いうる。処置時に患者が経験する痛みのレベルの変化、例えば、患
者又は患者集団が、痛みの療法開始の前後に経験する痛みのレベルの減少を視覚化するた
めに、このような痛みの尺度を適用しうる。
【0030】
ブプレノルフィン
本発明は、ブプレノルフィン又は製薬的に許容しうるその塩、エーテル誘導体、エステ
ル誘導体、酸誘導体、鏡像異性体、ジアステレオマー、ラセミ体、多形体又は溶媒和物に
関する。特定のいずれの理論にも拘束されないが、当業界においてブプレノルフィンは薬
理学的に、中枢神経系(「CNS」)及び末梢組織においてμオピオイド受容体における
部分的アゴニストであると考えられている。ブプレノルフィンは、鎮痛等、その作用の多
くをμ完全オピオイドアゴニストと共有している。部分的アゴニストは、一般的に、受容
体に対する親和性を有する化合物を含むが、完全アゴニストとは異なり、たとえ、高比率
の受容体がその化合物に占有されているとしても、低い程度の薬理学的効果を誘導するに
すぎない。鎮痛に対する「天井効果」(すなわち、用量を増加してもさらなる鎮痛なし)
は、多くの動物モデルにおいてブプレノルフィンに関して十分に立証されている。それは
、高親油性で、オピオイド受容体から徐々に解離する。さらにブプレノルフィンは、高親
和性でμ受容体及びκ1受容体と結合し、また低親和性でδ受容体と結合すると考えられ
ている。κ受容体における固有のアゴニスト活性は限定されているようであり、ブプレノ
ルフィンは、κ受容体におけるアンタゴニスト活性を有することが大多数の証拠により示
唆されている。κアゴニズムの欠如により、アゴニスト/アンタゴニスト薬にみられる不
快作用、及び精神異常発現作用が、ブプレノルフィンにはない。ブプレノルフィンのオピ
オイドアンタゴニスト作用は、δオピオイド受容体との相互作用により媒介されうること
が、他の研究から示唆される。
【0031】
ブプレノルフィンは、μ受容体と徐々に結合し、また徐々に解離することが当業界で公
知である。μ受容体に対するブプレノルフィンの高親和性並びにそれと徐々に結合し、ま
たそこから徐々に解離することから、本受容体が、鎮痛持続時間を延ばし及び、その薬物
に見られる限定された潜在的身体的依存の一因である可能性があると考えられている。ブ
プレノルフィンが、投与された他のオピオイドのμアゴニスト作用を遮断しうるという事
実もまた、高親和性結合により説明しうる。
【0032】
他のオピオイドアゴニスト同様、ブプレノルフィンは、用量関連の鎮痛を生じる。正確
な機構は十分には説明されていないが、中枢神経系におけるμオピオイド受容体、また、
ことによると、κオピオイド受容体に対するブプレノルフィンの高親和性から鎮痛が生じ
るようだ。また該薬物は、痛みの閾値(侵害刺激に対する求心性神経末端の閾値)を変化
させうる。重量に基づいた非経口ブプレノルフィンの鎮痛効力は、非経口モルヒネの約2
5倍から約50倍、ペンタゾシンの約200倍、及びメペリジンの約600倍のようだ。
【0033】
塩及び誘導体
該活性化合物の種々の製薬的に許容しうる塩、エーテル誘導体、エステル誘導体、酸誘
導体及び水溶性変更誘導体(solubility altering derivatives)の使用もまた、本発明に
包含される。本発明は、該化合物の全ての活性な個々の鏡像異性体、ジアステレオマー、
ラセミ体、及び他の異性体の使用をさらに含む。また、本発明は、本化合物の全ての多形
体並びに水和物及び有機溶媒によって形成されたもの等の溶媒和物の使用も含む。このよ
うな異性体、多形体及び溶媒和物は、位置特異的及び/又はエナンチオ選択的な合成及び
分割による等、当業界で公知の方法により調製しうる。
【0034】
該化合物の好適な塩類としては、限定はしないが、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、
過塩素酸、硫酸、硝酸、リン酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸
、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸
、炭酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ヒドロキシエタン
スルホン酸、ベンセンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクロヘキサンスルファミ
ン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、2−フェノキシ安息香酸及び2−アセトキシ
安息香酸等で作製された酸付加塩類;サッカリンで作製された塩類;ナトリウム塩やカリ
ウム塩等のアルカリ金属塩類;カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩類
;及び四級アンモニウム塩等の有機又は無機リガンドで作製された塩類が挙げられる。
【0035】
さらなる好適な塩類としては、限定はしないが、該化合物の酢酸塩、ベンゼンスルホン
酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酒石酸水素塩、硼酸塩、臭化物、エデト酸カル
シウム塩、カムシレート(camsylate)、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、
二塩化水素化物、エデト酸塩、エジシレート、エストレート、エシレート、フマル酸塩、
グルセプテート、グルコネート、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシル
レゾルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ
化物、イソチオネート、乳酸塩、ラクトビオネート、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイ
ン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル、硝酸メチル、硫酸メチル、ムチン酸塩
(mucate)、ナプシレート、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸
、パモエート(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸
塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コ
ハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート、トシル酸塩、トリエチオジド、及び
吉草酸塩が挙げられる。
【0036】
本発明は、該化合物のプロドラッグを含む。プロドラッグとしては、限定はしないが、
インビボで容易にブプレノルフィンに変換しうるブプレノルフィンの官能基誘導体が挙げ
られる。好適なプロドラッグ誘導体を選択及び調製する従来の方法は、例えば、「Des
ign of Prodrugs」、編集者エイチ・ブンドガード(H.Bundgaard)、エ
ルセビア(Elsevier)、1985年に記載されている。
【0037】
経皮剤形
経皮剤形は、限定はしないが、例えば、オピオイド鎮痛剤等の鎮痛剤を含む多くの種々
の治療的に有効な活性剤を送達する便利な剤形である。典型的なオピオイド鎮痛剤として
は、限定はしないが、フェンタニル、ブプレノルフィン、エトルフィン類、及び他の高力
価麻薬が挙げられる。経皮剤形は、活性剤の定時放出及び持続放出に特に有用である。
【0038】
経皮剤形は、経皮投与物品と経皮投与組成物とに分類しうる。最も一般的な経皮投与物
品は、液体貯留層又は接着剤内薬物基質システムのいずれかを用いる拡散駆動経皮システ
ム(経皮パッチ)である。経皮投与組成物としては、限定はしないが、局所ゲル、ローシ
ョン、軟膏、経粘膜システム及び経粘膜デバイス、並びにイオン泳動的(電気的拡散)送
達システムが挙げられる。経皮剤形は、経皮パッチであることが好ましい。
【0039】
本発明で用いられる経皮パッチ剤形は、ブプレノルフィンに不浸透性の製薬的に許容し
うる材料から作製された下地層を含むことが好ましい。下地層は、ブプレノルフィンの保
護カバーとして働き、また支持機能も提供することが好ましい。下地層を作製するための
好適な材料の例としては、高密度及び低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビ
ニル、ポリウレタン、ポリ(エチレンフタレート)等のポリエステルの薄膜、金属箔、こ
のような好適なポリマー薄膜の金属箔積層、貯留層の成分が、それらの物理的性質のため
に布に浸透し得ない場合は織物がある。下地層に用いられる材料は、アルミニウム箔等の
金属箔を有するこのようなポリマー薄膜の積層であることが好ましい。下地層は、所望の
保護的及び支持的機能を提供するための任意の適切な厚さでありうる。好適な厚さは、約
10ミクロンから約200ミクロンとなる。望ましい材料及び厚さは、当業者に明らかで
あろう。
【0040】
ある好ましい実施形態において、本発明で用いられる経皮剤形は、薬理学的又は生物学
的に許容しうるポリマー基質層を含有する。一般的に、ポリマー基質を形成するために用
いられるポリマー類は、薬剤が制御された速度で通過しうる薄壁又はコーティングを形成
しうる。ポリマー基質に含まれる例示的材料の非限定的リストとしては、ポリエチレン、
ポリプロピレン、エチレン/プロピレンコポリマー類、エチレン/エチルアクリレートコ
ポリマー類、エチレンビニルアセテートコポリマー類、シリコーン類、ゴム、ゴム様合成
ホモ−、コ−又はブロックポリマー類、ポリアクリル酸エステル類及びそれらのコポリマ
ー類、ポリウレタン類、ポリイソブチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、塩化
ビニル−ビニルアセテートコポリマー、ポリメタクリレートポリマー(ヒドロゲル)、ポ
リ塩化ビニリデン、ポリ(エチレンテレフタレート)、エチレン−ビニルアルコールコポ
リマー、エチレン−ビニルオキシエタノールコポリマー、ポリシロキサン−ポリメタクリ
レートコポリマー類等のシリコーンコポリマー類を含むシリコーン類、セルロースポリマ
ー類(例えば、エチルセルロース、及びセルロースエステル類)、ポリカーボネート類、
ポリテトラフルオロエチレン及びそれらの混合物が挙げられる。ポリマー基質層に含まれ
る例示的材料としては、一般的なポリジメチルシロキサン構造のシリコーンエラストマー
(例えば、シリコーンポリマー)がある。好ましいシリコーンポリマーは架橋し、製薬的
、又は生物学的に許容しうる。ポリマー基質層に含まれる他の好ましい材料としては、好
適な過酸化物触媒を用いて架橋しうるジメチル及び/又はジメチルビニルシロキサン単位
を有する架橋可能なコポリマーであるシリコーンポリマーが挙げられる。スチレン及び1
,3−ジエン類に基づくブロックコポリマー(特に、スチレン−ブタジエン−ブロックコ
ポリマー類の線状のスチレン−イソプレン−ブロックコポリマー類)からなるポリマー、
ポリイソブチレン類、アクリレート及び/又はメタクリレートに基づくポリマー類もまた
好ましい。
【0041】
ポリマー基質層は、場合によっては、製薬的に許容しうる架橋剤を含んでもよい。好適
な架橋剤としては、例えば、テトラプロポキシシランが挙げられる。本発明の方法により
用いられる好ましい経皮送達システムは、所望の投与期間、患者の皮膚に該剤形を付着さ
せるための接着層が挙げられる。所望の期間、該剤形の接着層を接着できない場合は、例
えば、接着テープ、例えば外科用テープにより、該剤形と患者の皮膚とを接着させること
により、該剤形と皮膚との間の接触を維持することができる。
【0042】
該接着層として好ましくは、ポリアクリル系接着ポリマー、アクリレートコポリマー(
例えば、ポリアクリレート)及びポリイソブチレン接着ポリマー等の該剤形と製薬的に適
合性があり、好ましくは、低アレルギー性の当業界に公知の任意の接着剤を使用すること
を含む。本発明の他の好ましい実施形態において、接着剤は低アレルギー性で感圧性の接
触接着剤である。
【0043】
本発明で用いうる経皮剤形は、場合によっては、浸透増強剤を含みうる。浸透増強剤は
、患者の皮膚及び血流を通しブプレノルフィンの浸透及び/又は吸収を促進する化合物で
ある。浸透増強剤の非限定的リストとしては、ポリエチレングリコール類、界面活性剤等
が挙げられる。
【0044】
あるいは、ブプレノルフィンの浸透は、患者の所望の部位への適用後、例えば、密封包
帯による剤形の密封により増強しうる。また、浸透は、例えば、毛刈り、剃り又は脱毛剤
の使用により、適用部位から毛を除去することによっても増強しうる。他の浸透増強剤は
熱である。経皮剤形の適用時、とりわけ適用部位に赤外線ランプ等の放熱体を使用するこ
とにより、浸透が増強されうると考えられる。イオン泳動的手段の使用等のブプレノルフ
ィンの浸透を増強させる他の手段もまた、本発明の範囲内にあることが意図される。
【0045】
本発明で使用しうる好ましい経皮剤形としては、例えば、ポリエステルから作製された
非浸透性下地層;例えば、ポリアクリレートから作製された接着層、及びブプレノルフィ
ン並びに軟化剤、浸透性増強剤、粘稠剤等の他の望ましい補助薬剤を含有する基質が挙げ
られる。
【0046】
活性剤のブプレノルフィンは、薬物貯留層中のデバイス、薬物基質又は薬物/接着層に
含まれうる。パッチの本面積及び単位面積当たりの活性剤の量は、通常の当業者が容易に
決定しうる限界用量を決定する。
【0047】
ある好ましい経皮送達システムは、貯留層又は基質中に軟化剤も含む。好適な軟化剤と
しては、ドデカノール、ウンデカノール、オクタノール等の高級アルコール類、また、ア
ルコール成分が、ポリエトキシレート化アルコールでありうるカルボン酸のエステル類、
ジ−n−ブチルアジアペート等のジカルボン酸のジエステル類及びトリグリセリド類、特
にカプリル酸/カプリン酸又はココナツ油の中鎖トリグリセリド類が挙げられる。好適な
軟化剤のさらなる例は、例えば、グリセロール及び1,2−プロパンジオールとして多価
アルコール類、並びにポリエチレングリコール類によってエステル化もされうるレブリン
酸及びカプリル酸である。
【0048】
ブプレノルフィンの溶媒もまた、本発明の経皮送達システムに含まれうる。溶媒は、ブ
プレノルフィンを十分な程度溶解し、それによって完全な塩形成を避けることが好ましい
。好適な溶媒の非限定的リストとしては、少なくとも1つの酸性基を有するものが挙げら
れる。特に好適なものは、モノメチルグルタレート及びモノメチルアジペート等のジカル
ボン酸のモノエステル類である。
【0049】
貯留層又は基質中に含まれうる他の製薬的に許容しうる成分としては、溶媒、例えば、
イソプロパノール等のアルコール類;上記に記載したような浸透増強剤;及びセルロース
誘導体等の粘稠剤、ガーゴム等の天然又は合成ゴム類が挙げられる。
【0050】
好ましい実施形態において、経皮剤形は、可撤性のある保護層又は保護放出層を含む。
可撤性のある保護層は、適用前に取り外され、それが、例えば、シリコーン処理により可
撤性が施されることで提供され、上記の下地層に用いられた材料から構成されうる。他の
可撤性のある保護層は、例えば、ポリレトラ−フルオロエチレン、処理紙、アロフェン、
ポリ塩化ビニル等である。一般的に、可撤性のある保護層は、接着層に接着しており、所
望の適用時まで、接着層の完全性を保持する簡便な手段を提供する。
【0051】
本発明で用いられる経皮剤形の組成及び用いられるデバイスのタイプは、本発明の方法
では重要ではないと考えられ、デバイスが、経皮剤形の活性剤、例えばブプレノルフィン
を、個体の皮膚に、所望の期間及び所望のフラックス率、すなわち、速度又は浸透で送達
することを提供する。
【0052】
本発明の使用に好ましい、ある経皮剤形は、参照として本明細書に組み込まれているヒ
ルレ(Hille)らに対する米国特許第5,240,711号明細書;(LTSローマン・
セラピー−システム社(Lohmann Therapie-Systeme GmbH & Co.)に譲渡)に記載されて
いる。このようなブプレノルフィン経皮送達システムは、ブプレノルフィン含有非浸透性
の下地層及び、場合によっては、感圧性接着剤を組み合わせた浸透性増強剤を有する積層
複合体でありうる。米国特許第5,240,711号明細書による好ましい経皮剤形は、
(i)ブプレノルフィン非浸透性のポリエステルの下地層;(ii)ポリアクリレート接
着層;(iii)分離ポリエステル層;及び(iv)ブプレノルフィン又はその塩、ブプ
レノルフィンの溶媒、軟化剤及びポリアクリレート接着剤を含有する基質を含む。ブプレ
ノルフィンの溶媒は、最終製剤に存在しても、存在しなくてもよい。基質は、約10重量
%から約95重量%のポリマー材料、約0.1重量%から約40重量%の軟化剤、及び約
0.1重量%から約30重量%のブプレノルフィンを含むことが好ましい。ブプレノルフ
ィン塩基又は製薬的に許容しうるその塩の溶媒は、約0.1重量%から約30重量%含ま
れうる。
【0053】
本発明の剤形は、また、1種以上の不活化剤も含みうる。「不活化剤」という用語は、
経皮剤形の乱用の可能性を減少させるために、活性剤を不活化又は架橋する化合物をいう
。不活化剤の非限定的例としては、限定はしないが、重合化剤、光開始剤及びホルマリン
が挙げられる。架橋剤又は重合化剤の例としては、ジイソシアネート類、過酸化物、ジイ
ミド類、ジオール類、トリオール類、エポキシド類、シアノアクリレート類及びUV活性
化モノマー類が挙げられる。
【0054】
いかなる適切な添加剤、不活化剤及び当業界で公知の剤形はまた、本発明の方法と組み
合わせて使用しうる。
【0055】
好ましい実施形態において、本発明の方法は、薬物依存症の妊婦における退薬症状を治
療するために用いられる。他の好ましい実施形態において、本発明の方法は、依存症の妊
娠母体の治療により新生児の退薬症状を防ぐために用いられる。
【0056】
本発明の方法は、患者におけるブプレノルフィンの血漿中濃度が徐々に増加するように
ブプレノルフィンを投与することを含むことが好ましい。好ましい実施形態において、本
発明の方法で達成された血漿プロフィルは、以下のとおり記載しうる。最初に2枚の20
mgブプレノルフィンパッチでタイトレーション投与した後に、ブプレノルフィンの平均
血漿中濃度が約800pg/mlとなる。
【0057】
局所用製剤は典型的に、懸濁剤及び、場合によっては、消泡剤を含有する。このような
局所用製剤は、液体灌注、アルコール性溶液、局所用クレンザー、クレンジングクリーム
、スキンゲル、スキンローション及びクリーム剤形又はゲル剤形のシャンプー(限定はし
ないが、水性溶液及び懸濁液を含む)でありうる。
【0058】
あるいは、ブプレノルフィンは、経皮物品又は経皮組成物に含まれうる、小型の単層ベ
シクル、大型の単層ベシクル及び多層ベシクル等のリポソーム送達システムの形態で投与
しうる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミン又はホスファチジルコリン等
の種々のリン脂質から形成されうる。
【0059】
経皮剤形は、当業界で公知のいかなる方法によっても製剤化でき、指示されたとおり投
与しうる。このような製剤は、米国特許第4,806,341号明細書;米国特許第5,
240,711号明細書;及び米国特許第5,968,547号明細書に記載されている

【0060】
投与
本発明の単位剤形は、オピエート禁断症候群を患っているか、又は予防する患者、好ま
しくはヒト患者に投与される。好ましい一実施形態において、患者は、妊婦である。本発
明の単位剤形は、何らかの可能性のある毒性を低下させながら最適活性を獲得できるよう
に、規定の投与計画で投与しうる。例えば、該方法は、約800pg/mlのブプレノル
フィンの濃度を提供する一連の経皮剤形を含む投与計画においてブプレノルフィンの有効
量を、患者に投与することを含む。
【0061】
本発明の投与計画は、幾つかの個別の投与期間を含む。投与期間は、一連の経皮剤形の
うちの1つを患者に投与する期間であり、投与計画は、一連の経皮剤形を各々投与するた
めの個別の投与期間から構成される。したがって、例えば、一連の第1の経皮剤形は、5
日間まで連続で、好ましくは約2日間まで連続で、患者に装着されよい。取り外した際、
次に第2の剤形が、他の期間、好ましくは5日間まで連続で、より好ましくは約2日間ま
で連続で、患者に装着されてもよく、その後、第3の剤形が、少なくともさらに2日間、
患者に装着されうる。好ましい一実施形態において、投与計画の合計治療期間は、所望の
用量が達成されるまで6日である。本用量は、不定期に維持しうる。用量増加が必要な場
合は、適切な間隔、例えば、3日から7日ごとに用量を増加しうる。
【0062】
特定の一実施形態において、投与計画は、オピエート禁断症候群の可能性があればすぐ
に開始する。一実施形態において、開始剤形は、2日間5mgのブプレノルフィンで始め
、次いで5mgを2日間、次に少なくとも10mgを2日間、好ましくは約10日間以内
、最も好ましくは約7日間以内で続ける。他の実施形態において、投薬計画は、患者が、
治療開始6日後に全部で20mgになるようにQ2(「2日」)スケジュールで徐々に拡
大させる。さらに他の実施形態において、後続の投薬量は、患者が必要とする同一用量か
、又は高用量のいずれかのブプレノルフィンを投与しうる。目標の血漿レベルが、開始の
パッチの組合せにより達成される場合、治療措置は、必要に応じて、約2日おきから約7
日おき又は週ごとに頻度を延長してパッチを変えながら、不定期に連続的に投与しうる。
高血漿レベルのブプレノルフィンを、患者が必要とし、通常の医師が承認する場合は、高
用量の単一パッチ、又は共に高用量を含む複数パッチの投与により達成しうる。例えば、
2〜4枚のBTDS20、又は複数枚のBTDS30又は40を同時に患者に投与しうる

【0063】
ブプレノルフィンの投薬量は、基礎疾患の状態、個人の病態、体重、及び年齢等の種々
の因子によって変化しうる。用量の予め定められた間隔又は投与計画は、患者の種、年齢
、体重、及び医学的状態;治療状態の重症度;選択する経皮送達システム;及び用いるブ
プレノルフィンの具体的形態等の種々の因子により選択される。通常の医師又は獣医師は
、本開示を考慮して病態の進行を防止、対応又は阻止するのに必要な薬物の有効量を、容
易に決定及び処方しうるであろう。毒性なしで効能が生じる範囲内の薬物濃度を達成する
最適精度には、標的部位に対する薬物効用の動態学に基づく療法が必要である。これには
、薬物の吸収、分布、代謝及び排泄を考慮することが含まれる。
【0064】
本発明の組成物又は剤形が、経皮剤形として投与される場合、通常の当業者が決定する
いかなる身体部分にも提供しうる。例えば、該組成物又は剤形は、患者の腕、脚部、背中
又は胸部に提供されうる。妊婦のための好ましい実施形態において、その位置は、上腕又
は背中が好ましい。反復投与では、同じ位置でなく、異なる位置に投与するのが好ましい
。例えば、各位置は、異なる領域に回し、1ヵ月過ぎてから同じ位置を利用しうる。
【0065】
一般的に、局所製剤は、その局所製剤の全100重量%を基準にして、約0.01重量
%から約100重量%、好ましくは約3重量%から約80重量%の該化合物を含有する。
一般的に、経皮製剤は、その剤形におけるブプレノルフィン製剤の全100重量%を基準
にして、約0.01重量%から約100重量%、好ましくは約3重量%から約50重量%
の該化合物を含有する。
【0066】
本発明の方法に用いられる剤形は、単独で、又は他の活性剤と組み合わせて投与しても
よい。活性剤が別の剤形である、2種以上の活性剤との併用治療の場合、活性剤を同時に
投与してもよいし、各々時間差で別々に投与してもよい。所望の効果を達成するために、
上記のように他の活性剤と併用する場合は、投与量を調整しうる。あるいは、これらの種
々の活性剤の単位剤形を独立に最適化してから、各活性剤が単独で用いられるよりも症状
が軽減するような相乗的結果を達成させるために組み合わせうる。
【0067】
例示的一実施形態において、患者は、安定なメタドン維持療法における妊婦のオピエー
ト中毒者である。各患者は、患者の通常のメタドン用量に加えて3日間BTDS5が投与
される。問題がないことを観察後3日目に、医師は患者のBTDS5を取り外し、メタド
ンを25%減少させるように3日間BTDS10に置き換える。問題がないことを観察後
6日目に、医師は患者のBTDS10を取り外し、メタドンをさらに25%減少させるよ
うに、3日間BTDS20に置き換える。問題がないことを観察後9日目に、医師は第2
のBTDS20を付着させ、メタドンを元の用量の10%まで減少させる。問題がないこ
とを観察後11日目に、医師はメタドンを中止し、残りの妊娠期間、週に一度2枚のBT
DS20を適用しながら患者を管理する。胎児の予防治療は必要としない。
【0068】
キット
本発明はまた、本発明を行うための成分を、キット形態で便利に提供しうる一実施形態
を提供する。その最も単純な実施形態において、本発明のキットは、患者の必要に応じて
設定される投薬量でのブプレノルフィンパッチの設定数を提供する。開始キットは、例え
ば、6日間にわたり全投薬量を20mgまで徐々に拡大するような投薬量を提供しうる。
好ましい実施形態において、キットは、6日間にわたり、2〜5mg及び1〜10mgの
ブプレノルフィンパッチ、合計20mgを含有する。より長期間のキットは、特定の患者
の治療に適切な投薬量を含みうる投薬パッチをさらに含む。これらは、5mg、10mg
、20mg、30mg又は40mgのパッチを含みうる。好ましい実施形態において、キ
ットはまた、投薬計画を次第に減らすパッチを含有する。あるいは、他の漸減パッチは、
出産前に投薬量を低下させるために提供されうる。パッチの適用法、単位の保存及び治療
計画の詳細を印刷した説明書もまた全てのキットに含まれている。
【0069】
本発明のキットは、包装及び、例えば、包装又は添付文書についての使用に関する説明
書を含むことが好ましい。キット内のブプレノルフィンパッチは、患者のために符号化し
てもよい(すなわち、色、日数又は用量値等)。例えば、該説明書は、下痢又は他の胃腸
の病態又は障害を処置又は予防するための、投与計画の使用を記載しうる。
【0070】
さらなる一実施形態において、該キットは、使用したブプレノルフィンパッチを廃棄す
るための廃棄用容器又はデバイスを含む。パッチ内薬物の乱用の可能性の防止、又は制限
のために、当業界に公知のいかなるこのような容器又はデバイスをも使用しうる。本明細
書に使用される用語の容器は、最も広い意味、すなわち、材料を保持するための任意の容
器である。
【0071】
本発明は、本明細書に記載された特定の実施形態による範囲に限定されない。実際、本
明細書に記載されたものに加えて、本発明の種々の改変は、上記記載及び添付図面から当
業者にとって明らかであろう。このような改変は、添付の特許請求の範囲内に入ることが
意図されている。また、数値は近似のものであり、説明のために提供されていることを理
解する必要がある。
【0072】
本出願を通じて、特許、特許出願、刊行物、手法等が引用されており、それらの開示は
参照として、それらの全体が本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
退薬症候群又は禁断症候群の治療を必要とする薬物依存症又はオピオイド耐性患者にお
ける退薬症候群又は禁断症候群を治療する方法であって、前記患者の退薬症候群を軽減す
るために有効量のブプレノルフィンの経皮投与を含む方法。
【請求項2】
前記患者が、妊婦である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記妊婦が、オピエート中毒である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(a)約5日以内の第1の投与期間に第1のブプレノルフィン含有経皮剤形を前記患者
に投与すること;
(b)約5日以内の第2の投与期間に第2のブプレノルフィン含有経皮剤形を前記患者
に投与することであり、前記第2の剤形が、前記第1の剤形と同一用量のブプレノルフィ
ンか、又は前記第1の剤形よりも高用量のブプレノルフィンを含み、;及び
(c)少なくとも2日間の第3の投与期間に第3のブプレノルフィン含有経皮剤形を前
記患者に投与することであり、前記第3の剤形が、前記第2の剤形よりも高用量のブプレ
ノルフィンを含むこと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
投与計画は、第3の剤形投与後、ブプレノルフィンの血漿中平均濃度が、約800pg
/mlであるブプレノルフィンの血漿中プロフィルをもたらす請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1、第2、及び第3の経皮剤形が、下表の1列に記載されているブプレノルフィ
ン量を含有する請求項4に記載の方法。
【表1】

【請求項7】
薬物依存症又は耐性による退薬症状又は禁断症状の所望の緩和を達成するために、患者
により必要とされる所与の時期に後続の剤形による延長した後続投与期間をさらに含む請
求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記後続剤形が、10mgのブプレノルフィンを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記後続剤形が、20mgのブプレノルフィンを含む請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記後続剤形が、30mgのブプレノルフィンを含む請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記後続剤形が、40mgのブプレノルフィンを含む請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記後続剤形が、7日ごとに取り替えられる請求項7に記載の方法。
【請求項13】
退薬症状が散逸した時点で投与量を次第に少なくするための後続剤形をさらに含む請求
項7に記載の方法。
【請求項14】
前記投与計画は、後続剤形の投与後、ブプレノルフィンの血漿中平均濃度が、約800
pg/mlであるブプレノルフィンの血漿中プロフィルをもたらす請求項7に記載の方法

【請求項15】
前記経皮剤形が、局所ゲル、ローション、軟膏、経粘膜システム、経粘膜デバイス、及
びイオン泳動送達システムからなる群から選択される請求項1に記載の方法。

【公開番号】特開2011−252020(P2011−252020A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179129(P2011−179129)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【分割の表示】特願2006−521307(P2006−521307)の分割
【原出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(599108792)ユーロ−セルティーク エス.エイ. (134)
【Fターム(参考)】