便器洗浄タンク装置
【課題】 大洗浄と小洗浄の切り替え機構を具備する便器洗浄タンク装置に対して、軽い力で制御筒に設けられた大通孔を開閉可能として、確実に大小洗浄を切替動作させることができる便器洗浄タンク装置を提供することである。
【解決手段】 タンク本体1内定部に排水口32を開口すると共に、この排水口32に対して排水弁31を開閉自在に着座させて排水弁3を構成し、上記排水弁体31に浮き子体7を取り付け、該浮き子体7を制御筒5内に収容し、上記制御筒5下部に小通孔52、大通孔53を各々開設し、操作ハンドル8のの回動により引き上げられる連結部材10、11上記排水弁体31と制御筒5の大通孔53に当接配置した小洗浄用パイロット弁4に連結したものである。
【解決手段】 タンク本体1内定部に排水口32を開口すると共に、この排水口32に対して排水弁31を開閉自在に着座させて排水弁3を構成し、上記排水弁体31に浮き子体7を取り付け、該浮き子体7を制御筒5内に収容し、上記制御筒5下部に小通孔52、大通孔53を各々開設し、操作ハンドル8のの回動により引き上げられる連結部材10、11上記排水弁体31と制御筒5の大通孔53に当接配置した小洗浄用パイロット弁4に連結したものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、便器洗浄タンク装置に関し、さらに詳しくは操作ハンドルの回動操作により便器に対する給水量を大側若しくは小側に切り替え可能な便器洗浄タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の便器洗浄タンク装置の中には、例えば特許文献1(特許3206263号)のように、タンク本体に設けた操作ハンドルの回動方向を大側若しくは小側に回動することにより、タンク本体内に貯水した洗浄水を便器に対して全て給水する大洗浄と、タンク本体内に所定量の洗浄水を残して給水する小洗浄とを選択的に切り替え、これにより節水を図ったものがある。
【0003】
【特許文献1】特許3206263号公報
【0004】
図9〜図12は特許文献1に記載された便器洗浄タンク装置を示している。
この便器洗浄タンク装置100は、タンク本体101内部おける底面部に洗浄水を便器へ給水する排水弁3を設けると共に、同タンク本体101周壁の上部には上記排水弁3を開弁させる操作ハンドル104と、便器洗浄を行なう度に給水源から供給される水をタンク本体内の給水レベルまで補給するボールタップ給水栓102を設けてある。タンク本体101と便器とを連絡する給水管112の上端口はタンク本体101底面の開口に対して嵌挿してあり、その給水管112の上端口が排水口132として構成されている。上記排水口132は排水弁103の弁口を構成するものであり、タンク本体101内の底面において上方へ向けて開口し、該排水口132に上方から排水弁体131が着座している。
【0005】
円板状の排水弁体131は、オーバーフロー管115の下端に取り付け固定され、その中心部にはオーバーフロー管115を流れ落ちてくる水を排水口132に通過させる孔131aを穿設してある。オーバーフロー管115は後述する制御容器105の中心部を貫通し、制御容器105に支持される形で上下摺動自在に支持されている。制御容器105は上面を開口させた平面略D型の容器であり、脚114を介してタンク本体101底面に取り付け支持することにより、タンク本体101内における底面から幾分上の位置に設置してある。また、制御容器105の中心部には中筒部105aを垂直に貫通させた状態で設け、該中筒部105a内部に沿って前記オーバーフロー管115を摺動自在に嵌挿し、該オーバーフロー管115の上昇端において管下端に設けた排水弁体131が制御容器105の底面に当接させることにより、後述する浮き子体107による浮上上限を定めてある。
【0006】
前記オーバーフロー管115の上部外周からは中筒部105aを避けて制御容器105内へ延びる2本の連結部材113を突出してあり、これら連結部材113の下端に各々中空状の浮き子体107を取り付け固定してある。浮き子体107はオーバーフロー管115と排水弁体131とを浮上させるだけの浮力を生じる中空体であり、上記制御容器105の内部に収納され、連結部材113を介して一体化するオーバーフロー管115の上下動に伴って、容器5内において上昇、降下するように支持されている。
【0007】
上記制御容器105の側壁の平面部105bには流出口108を開口し、この流出口108の外側に開閉弁蓋109が設けてある。流出口108は小洗浄時において制御容器105内の水を短時間の間に流出させる為のものであり、タンク本体101内における底面から所定の高さ、即ち小洗浄時におけるタンク本体内水位の低限のレベルに合わせて開口してある。一方、上記流出口108に設ける開閉弁蓋109は、図9及び図11によって示す如く板状に形成し、制御容器105側壁に開口した流出口108に外側からあてがう形で設けてある。弁蓋109の両側辺部には下へ向けて垂直に延出するガイドシャフト191を設けてあり、このガイドシャフト191を流出口108の両側辺部に沿って垂直に設けた摺動孔192に対して上方から摺動自在に挿嵌することにより、上下にスライドして流出口108を開閉自在に閉鎖している。通常、上記した開閉弁蓋109は自重により閉弁状態を維持しているが、上部に連結した連結部材111が操作ハンドル104の回動操作により引き上げられることにより上昇して開弁し、上記連結部材111が弛むことにより自重により再び降下して流出口108を閉鎖する。
【0008】
上記ガイドシャフト191は開閉弁蓋109が降下する時に摺動孔192の内部に嵌挿されるように摺動するが、上記摺動孔192の下端口は小径に絞ってあり、ガイドシャフト191が摺動孔192の内部を降下するのに伴って摺動孔192内を満たす水がその小径孔193を介して外部へ噴出し、その際に適度な抵抗が生じ、開閉弁蓋109の降下が遅延させるようになっている。尚、上記した抵抗は、小径孔93を設けずに、ガイドシャフト191と摺動孔192との間に適度なクリアランスを設け、このクリアランスを介して摺動孔192内と外部との間の水の出入りを行なうように構成しても発生させることができる。よって操作ハンドル104の操作に開閉弁蓋109が引き上げられ、その後、開閉弁蓋109が自重により閉弁する際に、ガイドシャフト191の降下により摺動孔192の内部から小径孔193を介して噴出する。この時、ガイドシャフト191に必要な抵抗が生じ、この抵抗によって開閉弁蓋109がゆっくりと時間をかけて降下するようになっている。上記制御容器105の底面には小通孔116が穿設してある。この小通孔116は制御容器105内の水を少量ずつ排水することにより容器105内の浮き子体107を時間をかけて降下させるためのものであり、容器105内を満たす水が容器下部の浮き子体7降下位置に低下するまで所定の時間、例えばタンク本体内洗浄水の排水開始から排水が完全に終了するまでの時間をかけて流出し得る直径に設定してある。
【0009】
タンク本体101周壁の上部に設けられる操作ハンドル104はタンク本体101内へ向けて水平に延びる回動軸141と下向きに突出するレバー142とを備え、上記回動軸141をタンク本体101周壁に嵌着した支持筒111に外側から嵌挿することにより、左右に所定角度ずつ回動するように支持してある。また、操作ハンドル104は大洗浄と小洗浄とに対応して回動方向が定めてあり、レバー142が下向きになる位置を中立として、ハンドル104を左に回動させると大洗浄が行なわれ、右に回動させると小洗浄が行なわれるようになっている。
【0010】
タンク本体101内に水平に延出する回動軸141の外周には回動管161を嵌着し、この回動管161に排水弁体131を引き上げる腕片162と開閉弁蓋109を引き上げる引き上げ腕片163とを各々下へ向けて取り付けてある。腕片162には鎖等からなる連結部材110を垂下し、該連結部材110の下端を弛みの無い状態でオーバーフロー管115の上端に接続してある。また、引き上げ腕片163は回動管161外周に固定される固定片164と該固定片164中間部に回転軸165を介して軸支される回動片166とから構成され、上記固定片の先端部一側辺部に係止片167を屈曲形成してある。そして、上記した回動片166の先端からは連結部材111を垂下させ、その連結部材111の下端を前記した開閉弁蓋109の上部に幾分弛ませた状態で接続してある。よって、操作ハンドル104を大側に回動させると、図12(b)にて示すように一方へ向けて所定角度回動した固定片164の回転軸165から回動片166が垂下する形で連結部材111が小さく引き上げられる。尚、この引き上げでは引き上げストロークが小さい為に連結部材111の弛みがとれるだけで開閉弁蓋109は閉状態を維持している。また、操作ハンドル104を小側に回動させると、固定片164が所定角度回動する共に係止片167に係止された回動片166が固定片164を延長する形で回動され、これより連結部材111が大きなストロークで引き上げられて開閉弁蓋109が開弁する。
【0011】
以上の手段により、小洗浄時、操作ハンドルの回動により連結部材を介して開閉弁蓋が大きく引き上げられ、制御容器の流出口が開口する。反対に大洗浄時においては、連結部材による引き上げ量が小さくなり、開閉弁蓋は閉状態を維持する。また、小洗浄時において引き上げられた開閉弁蓋は、自重により降下するが、降下遅延機構によりその降下が所定時間遅延される。従って、上記遅延時間の間、開閉弁蓋が開かれることになり、これにより流出口から制御容器内の水が急速に流出して排水弁体の閉弁が早められる。この結果、タンク内に残留洗浄水が発生し、当該残留水分、便器に対する給水量が削減されたことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記した従来の便器洗浄タンク装置は、排水弁体131の開弁時間制御を、制御容器105の側壁の平面部105bに開口した流出口108を弁蓋109の遅延閉止により、制御筒105内の水の流出速度を可変させることにより行っているが、弁蓋109の遅延閉止を、弁蓋109の側辺部に下へ向けて垂直に延出するガイドシャフト191と、流出口108の両側辺部に沿って垂直に設けた摺動孔192とのクリアランスから漏れる水を利用したダンパー機構により構成しているため、前記クリアランスにタンク本体101内に存在する微小なゴミ、洗浄水より析出したスケール等の噛み込みにより、弁蓋109の開弁不良が発生した。また、弁蓋109を開弁させる際にも前記ダンパー効果が機能するため、弁蓋109の開弁に過大な開弁荷重が必要となり、操作ハンドル104の操作力の増大、連結部材111の切断等の不具合がした。
【0013】
本発明の目的は、上記のように如き大洗浄と小洗浄の切り替え機構を具備する便器洗浄タンク装置に対して、軽い力で制御筒に設けられた流出口を開閉可能として、確実に大小洗浄を切替動作させることができる便器洗浄タンク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を解決するために本発明の請求項1の便器洗浄タンク装置は、タンク本体内の底部に便器へ連絡する排水口を上向きに開口すると共に、この排水口により構成した弁口に対して排水弁体を上方から開閉自在に着座させて排水弁を構成し、上記排水弁体に同弁体を浮上させる直動弁用フロートを取り付け、該直動弁用フロートをタンク本体内底部から間隔を置いて所定の高さに設置した制御筒の内部に昇降自在な状態で収容し、上記制御筒の上部を開口すると共に、この制御筒下部に遅延閉止用小通孔を開設し、また、この制御筒の下部に前記排水口よりも下流側と連通した大通孔を設け、前記タンク本体上部に設けた操作手段により引き上げられる2つのの連結部材の内、一方を上記排水弁体に、他方を制御筒の大通孔を開閉可能に支持される小洗浄用パイロット弁に各々連結し、上記操作手段により小洗浄が選択されると前記2つの連結部材をを引き上げて前記排水弁体及び前記小洗浄用パイロット弁を開動させ、上記操作手段により大洗浄が選択されると前記一方の引き上げ手段のみを引き上げて前記排水弁体を開状態として前記小洗浄用パイロット弁を閉状態とする引き上げ部材作動機構を具備してなる構成としたものである。
【0015】
また、請求項2の前記便器洗浄タンク装置において、前記制御筒に設けられた前記小洗浄用パイロット弁を上下に摺動可能に格納する格納部と、前記小洗浄用パイロット弁の外周面又は前記格納部の内壁面から他方に向かって突設形成されたリブと、を備える構成としたものである。
【0016】
また、請求項3の前記便器洗浄タンク装置において、前記格納部の上部に、この格納部よりも内径が小さい円筒部材を設け、この円筒部材の中を前記小洗浄用パイロット弁と連結された連結部材が挿通する構成としたものである。
【0017】
また、請求項4の円筒部材は、タンク上方に向かって徐拡大する構成としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上説明したように、操作ハンドルの回動方向を大側と小側とに選択することにより、制御筒の下部に前記排水口よりも下流側と連通した大通孔を小洗浄用パイロット弁により閉口若しくは開口した状態で排水弁からの排水を開始し、制御容器内における水位の低下時間を変化させることで、排水弁の閉弁のタイミングを遅い場合(大洗浄)と、早い場合(小洗浄)とに制御し、タンク本体内から便器に対して行われる洗浄水排水量の大小を選択的に切り替えるように構成したものであるから、従来の便器洗浄タンク装置のように、制御筒から水の流出制御を行う弁蓋にダンパー機構を有する必要が無くなり、軽い力で制御筒に設けられた大通孔を開閉可能として、確実に大小洗浄を切替動作させることができる。
【0019】
請求項2の便器洗浄タンク装置においては、小洗浄用パイロット弁と制御筒に設けられた格納部との接触面積を低減し、パイロット弁と格納部の摺動抵抗の低減によるパイロット弁開弁荷重の低減、またパイロット弁と格納部間へのゴミの噛み込みによるパイロット弁開弁不良を防止することができる。
【0020】
請求項3の便器洗浄タンク装置においては、連結部材が円筒部材の内壁に沿って上昇・下降し、小洗浄用パイロット弁を略垂直方向に開弁することにより、小洗浄用パイロット弁と格納部の接触を回避することができるため、パイロット弁と格納部の接触抵抗の低減によるパイロット弁開弁荷重を低減することができる。
【0021】
請求項4の円筒部材においては、連結部材が円筒部材の徐拡大部に沿って上昇・下降するため、連結部材の屈曲を回避することにより、連結部材の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明を実施した便器洗浄タンク装置を一部切欠して示す正面図である。この図1にて示す便器洗浄タンク装置aは便器(図示せず)の上方部に設置するものであり、陶器製のタンク本体1内部における底面部に洗浄水を便器へ給水する排水弁3を開弁させる操作ハンドル8、便器洗浄を行う度に給水源から供給される水をタンク本体内の給水レベルまで補給するボールタップ給水栓2を設けてある。タンク本体1と便器とを連絡する給水管12の上端口はタンク本体1底面の開口に対して嵌挿してあり、その給水管12の上端口が排水口32として構成されている。上記排水口32は排水弁3の弁口を構成するものであり、タンク本体1内の底面において上方へ向けて開口し、排水口32に上方から排水弁体31が着座している。
【0023】
円板状の排水弁体31は、オーバーフロー管15の下端に取り付け固定され、その中心部にはオーバーフロー管15を流れ落ちてくる水を排水口32に通過させる孔31aを穿設してある。オーバーフロー管15は後述する制御筒5の中心部を貫通し、制御筒5に支持される形で上下摺動自在に支持されている。制御筒5は上面を開口させた円筒型の容器であり、給水管12に勘合取り付けすることにより、タンク本体1内における底面から幾分上の位置に設置してある。尚、上記した制御筒5は円筒型以外の形状であってもよい。また、制御筒5の中心部には中筒部5aを垂直に貫通させた状態で設け、中筒部5a内部に沿ってオーバーフロー管15の上端において下端に設けた排水弁体31が制御筒5の底面に当接させることにより、後述する本発明における直動弁用フロートとしての浮き子体7による浮上上限を定めてある。
【0024】
前記オーバーフロー管15の上方外周面にはフランジ部15aを形成している。浮き子体7は円筒部7aと円筒部7a下端に下方開口した浮き子7bにて形成している。円筒部7a上部にはフランジ部15a上面に当接させる段部7cを形成し、オーバーフロー管15を浮き子体7の円筒部7aに浮き子体7下方より挿入し、フランジ部15a上面と段部7cを当接させ、オーバーフロー管15上部に止め部材55を装着することにより、オーバーフロー管15と浮き子体7を一体化した。浮き子7bはオーバーフロー管15と排水弁体31と止め部材55を浮上させるだけの浮力を生じる下方開口容器であり、上記制御筒5の内部に収納され、該オーバーフロー管15の上下動に伴って、制御筒5内において上昇、下降するように支持されている。なお、浮き子7bの形態は下方開口容器に限るものではなく、円筒型中空体でもよい。
【0025】
制御筒5の底面には小通孔51が穿設してある。この小通孔51は制御筒5内の水を少量ずつ排水することにより制御筒5内の浮き子体7を時間をかけて下降させるためのものであり、制御筒5内を満たす水が制御筒下部の浮き子体7下降位置に低下するまでの所定の時間、例えばタンク本体1内洗浄水の排水開始から排水が完全に終了するまでの時間をかけて流出し得る直径に設定してある。また、制御筒5の下部には前記小通孔51よりも開口面積が大きな大通孔52を開設し、該大通孔52と連通する通水筒53が制御筒5の下方からタンク本体1底面へ突出している。給水管12には給水管12上端口よりも下流側と連通した流出口34を設け、該流出口34と前記通水筒53が連結管6により連通している。大通孔52の上端には小洗浄用パイロット弁4が配設されている。該小洗浄用パイロット弁4はシール部材41とフロート42より構成され、前記シール部材41はフロート42下端に配設されおり、前記シール部材41下面と大通孔52上部が当接することにより大通孔52を閉塞している。
【0026】
タンク本体1内において、洗浄水貯水時における小洗浄用パイロット弁4による大通孔52の閉塞原理を説明する。まず、排水弁体31により排水口32閉塞時、小洗浄用パイロット弁4の下面のシール位置より内側領域は、給水管12の流出口34と制御筒5下部の通水筒53が連結管6により連通しているため、大気圧が作用している。また小洗浄用パイロット弁4の上面部はタンク本体1内の給水レベルにより作用する水頭圧が作用している。このため、小洗浄用パイロット弁4にはタンク下方向にフロート42自重F1、シール部材41自重F2、小洗浄用パイロット弁上面に作用する水頭圧とパイロット弁下面に作用する大気圧の差圧により発生する荷重F3が作用し、タンク上方向にはフロート42により発生する浮力F4が発生し、(F1+F2+F3)>F4となるフロート容量に設定することにより、大通孔52をシール部材により閉塞する。
【0027】
次に本発明の操作手段としての操作ハンドル8が大洗浄側へ回動し、オーバーフロー管15のみが引き上げられ排水口32が開口状態になった場合の、小洗浄用パイロット弁4による大通孔52の閉塞原理を説明する。排水口32が開口状態になることによりタンク本体1内の洗浄水が給水管12へ流入し、給水管12内部は洗浄水にて満たされるため、上記にて説明したF3は小洗浄用パイロット弁上面に作用する水頭圧とパイロット弁下面に作用する静圧の差圧により発生する荷重へと変化するが、給水管12内を流れる水の流速により前記水頭圧よりもパイロット弁下面に作用する静圧の方が小さい状態となる。そのためF3は依然としてタンク下方向へ作用する荷重となるため、小洗浄用パイロット弁4は大通孔52に負勢され、大通孔52を閉塞した状態を維持する。
【0028】
タンク本体1周壁の上部に設けられる操作ハンドル8はタンク本体1内へ向けて水平に伸びる回動軸81と下向きに突出するレバー82とを備え、上記回動軸81をタンク本体1周壁に嵌着した支持筒83に外側から嵌挿することにより、左右に所定角度角度ずつ回動するように支持してある。また、操作ハンドル8は大洗浄と小洗浄とに対応して回動方向を定めてあり、レバー82が下向きになる位置を中心として、ハンドル82を左に回動させると大洗浄が行われ、右に回動させると小洗浄が行われるようになっている。
【0029】
タンク本体1内に水平に伸出する回動軸81の外周には、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91を挿入し、次にオーバーフロー管引き上げ部材92を嵌着している。オーバーフロー管引き上げ部材92はレバーを大洗浄側、小洗浄側のいずれの方向に回動させた場合にも、回動軸81の回動方向と連動して回動し、オーバーフロー管15を引き上げる。
【0030】
図2は、図1におけるII―II線における断面図であり、小洗浄用パイロット弁4と回動軸81との位置関係を示す断面図である。この図2にて小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91の回動原理を説明する。図2(b)はハンドル82を操作していない中立位置である。この中立位置から図2(a)のようにハンドル82を小洗浄側へ回動した場合、回動軸81の外周に配設された跳ね上げリブ81aが小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91の跳ね上げ面91aと当接し、該リブ81aにより該跳ね上げ面91aを介して小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91を回動軸81の回動に同調して回動し、小洗浄用パイロット弁4はタンク上方へ引き上げられる。次に図2(c)のようにハンドル82を大洗浄側へ回動した場合、該リブ81aと小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91間は、大洗浄側回動角度より大なる空走角αを設けているため、該リブ81aと小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91の跳ね上げ面91aは当接せず、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91は自重により初期位置を保持したままであるため、小洗浄用パイロット弁4は制御筒5の大通孔52に当接された状態を維持する。
【0031】
上記した如く構成した便器洗浄タンク装置aの作動説明をする。通常時、タンク本体1内はボールタップ給水栓2により行われる給水によって、タンク本体1内の上限水位(図1のWL)まで洗浄水が貯水されている。この状態において排水弁3は水頭圧により閉弁され、小洗浄用パイロット弁4も同様に水頭圧により閉弁されている。
【0032】
大洗浄に際して、使用者が操作ハンドル8を大洗浄側に回動すると、オーバーフロー管跳ね上げ部材92が所定角度回動し、この回動により連結部材10及びオーバーフロー管15が引き上げられて排水弁体31が開弁する。この時点から、タンク本体1から便器に対する洗浄水の給水が開始される。また、一旦開弁した排水弁体31は浮き子体7による浮力により上昇して開弁状態を維持する。このとき、前記した小洗浄用パイロット弁4の作動原理により、該小洗浄用パイロット弁4は初期状態を維持される。
【0033】
洗浄水の排水に伴ってタンク本体1内水位が低下し、制御筒5上端の開口部まで下がると、タンク本体1内の洗浄水が制御筒5内に流れ込むことがなくなり、さらにタンク本体1内の洗浄水は排水口32から大量に排水され水位も急速に低下する。これと平行して制御筒5底面の小通孔51からも制御筒5内の水が流出し、浮き子体7も降下するが、小通孔51からの流出量が少ないために制御筒5内水位の低下は遅く、時間をかけてゆっくりと降下する。よって、上記した浮き子体7が制御筒5内下部まで降下し、排水弁体31が排水口32に着座するまでの間には、タンク本体1内の排水口32の上端(図1にDWL1で示す)より下となる部分を除く洗浄水は全て排水され、排水が完了している。即ち、大洗浄時においてはタンク本体1内の排水弁3を開いて排出可能な水が全て排水されることになる。排水弁3が閉弁した後は、タンク本体1内上部のボールタップ給水栓2から給水が行われ、タンク本体1内の上限水位まで洗浄水が補給される。
【0034】
小洗浄に際して操作ハンドル8を小洗浄側に回動すると、オーバーフロー管引き上げ部材92が所定角度回動し、連結部材10を介してオーバーフロー管15が引上げられて排水弁体31が開弁し、便器に対する給水が開始される。これと同時に、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91がオーバーフロー管引き上げ部材92の回動と同調して回動し、これにより連結部材11が引上げられて小洗浄用パイロット弁4を開弁する。排水に伴ってタンク本体1内水位が低下し、制御筒5上端の開口部以下にまで低下すると、制御筒5の大通孔52が大きく開口されているため、制御筒5内の水が大通孔52を介して速やかに流出し、制御筒5内の水位もタンク本体1内の水位低下と略同じ速度で急速に低下する。
【0035】
制御筒5内の浮き子体7が同容器5下部まで降下し、タンク本体1内水位が小洗浄時における下限水位(図1のDWL2)まで低下した時、浮き子体7と共に降下する排水弁体31が排水口32に着座して閉弁する。小洗浄用パイロット弁4も浮き子体7と同様に降下するため、排水弁体31の閉弁と略同時に閉弁する。排水弁3が閉弁した時点において、タンク本体1内には制御筒5下面以下の範囲に洗浄水が残っており、この残留水の分(DWL1とDWL2との差の分)、便器に対して供給される洗浄水の量が削減されることになる。
【0036】
以上説明したように、便器洗浄タンク装置aにあっては、従来のもののように、制御筒側面に、該制御筒内の水の流出速度を制御する開閉弁蓋を配設し、該開閉弁蓋の遅延閉止にダンパー機構を使用する必要がなく、小洗浄用パイロット弁4の開閉にて制御筒5内の水の流出速度を制御することができる。したがって、軽い力で制御筒5に設けられた小洗浄用パイロット弁4を開閉可能として、確実に大小洗浄を切替動作させることができる。
【0037】
図3から図5に基づいて、制御筒5における格納部54と該小洗浄用パイロット弁4の関係について更に説明する。図3は、制御筒に配設した小洗浄用パイロット弁4の格納部54を示す斜視図であり、図4は、小洗浄用パイロット弁4のフロート42を示す斜視図であり、図5は、格納部54と小洗浄用パイロット弁4の位置関係を示す上面図である。図3に示すように、制御筒5の外周部には、小洗浄用パイロット弁4を格納する格納部54が形成されている。この格納部54は内面が円筒状であり、制御筒5とはスリット状の連通路54aによって繋がっている。また、図4に示すように、小洗浄用パイロット弁4のフロート42の外周面から他方に向かってリブ43を突設形成する。そして、図5に示すように、リブ43が格納部54の内壁と対向する構成となっている、従って、操作ハンドル8を小洗浄側に回動し、小洗浄用パイロット弁4をタンク上方へ引上げる際、前記格納部54の内壁と前記リブ43が当接する。なお、リブ43は小洗浄用パイロット弁4のフロート42の外周面に突設形成する構成に限定されることはなく、前記格納部54の内周面から他方に向かって突設形成する構成としてもよい。
【0038】
前記リブ43を突設形成することにより、格納部54とフロート42の摺動抵抗を低減することができる。したがって、軽い力で制御筒5に設けられた小洗浄用パイロット弁4を開閉可能として、確実に大小洗浄を切替動作させることができる。
【0039】
次に、小洗浄用パイロット弁4を引き上げる際の、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91とこの小洗浄用パイロット弁4とを繋ぐ連結部材11の動作について、図6〜図8に基づいて説明する。
図6は、小洗浄用パイロット弁4、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91および連結部材11の位置関係を示す断面図、図7は、小洗浄用パイロット弁4の格納部54の上部に円筒部材55を配設した場合を示す他の実施例であり、図8は、円筒部材55の変形例として円筒部材55の上端部を徐拡大した場合を示す断面図である。図6(b)に示すように、小洗浄用パイロット弁4と該小洗浄用パイロット弁4をタンク上方へ引き上げる小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91の跳ね上げ面91aとの位置関係は、小洗浄用パイロット弁4が閉弁状態においては、跳ね上げ面91aは小洗浄用パイロット弁4の略垂直上方に位置している。つまり連結部材11は略垂直状態を維持している。ここで操作ハンドル8にて小洗浄側へ回動すると(図6(a)に示す)、小洗浄用パイロット弁4は跳ね上げ面91aの回動により引き上げ部材11を介してタンク上方へ引き上げられる。このとき跳ね上げ面91aは所定の回動角度回動するため、跳ね上げ面91aの回動終了時、跳ね上げ面91aは小洗浄用パイロット弁4の垂直上方から外れた位置にくる。つまり連結部材11も小洗浄用パイロット弁4に対して垂直を維持できない状態となる。このときの垂直方向からのずれ角度をβとする。そのため、小洗浄用パイロット弁4は垂直方向に引き上げられず、垂直方向よりも角度βずれた方向に引き上げられることになる。このときの小洗浄用パイロット弁4の位置を破線にて示す。これにより小洗浄用パイロット弁4は格納部54内壁に接触しながらタンク上方へ引き上げられることになる。そのため、パイロット弁4のフロート42外壁と格納部54内壁の間に摺動抵抗が発生し、小洗浄用パイロット弁の引き上げ荷重が増加する。
【0040】
ここで、図7に示すように、格納部54の上部に該格納部54よりも内径が小さい円筒部材55を配設する。この円筒部材55の中を前記小洗浄用パイロット弁と連結された連結部材11が挿通することにより、小洗浄用パイロット弁4を引き上げる場合において、跳ね上げ面91aと小洗浄用パイロット弁4の位置関係が角度βずれたとしても、連結部材11は円筒部材55の内壁に沿う形態で小洗浄用パイロット弁4を引き上げるため、パイロット弁4は略垂直状態を保持したまま、タンク上方へ引き上げることが可能となり、軽い力で制御筒5に設けられた小洗浄用パイロット弁4を開閉可能として、確実に大小洗浄を切替動作させることができる。
【0041】
また図8に示すように、円筒部材55の上端部55aを徐拡大することにより、連結部材11の屈曲を防止し、連結部材11と円筒部材54の摺動抵抗も減少可能となるため、小洗浄用パイロット弁4の引き上げ荷重を更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を実施した便器洗浄タンク装置を一部切欠して示す正面図。
【図2】小洗浄用パイロット弁と回動軸との位置関係を示す断面図。
【図3】制御筒に配設した小洗浄用パイロット弁の格納部を示す斜視図。
【図4】小洗浄用パイロット弁のフロートを示す斜視図。
【図5】格納部と小洗浄用パイロット弁の位置関係を示す上面図。
【図6】小洗浄用パイロット弁、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材および連結部材の位置関係を示す断面図。
【図7】格納部の上部に円筒部材を配設した場合の、小洗浄用パイロット弁、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材および連結部材の位置関係を示す断面図。
【図8】円筒部材の上端部を徐拡大した場合を示す断面図。
【図9】従来の便器洗浄タンク装置を示す正面図。
【図10】従来の排水弁部分を示す拡大図。
【図11】従来の制御容器の流出口部分を示す斜視図。
【図12】従来の大洗浄時と小洗浄時における引き上げ腕片の回動状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0043】
a 便器洗浄タンク装置
1 タンク本体
3 排水弁
4 小洗浄用パイロット弁
5 制御筒
7 浮き子体(直動弁用フロート)
8 操作ハンドル(操作手段)
10,11 連結部材
12 給水管
15 オーバーフロー管
31 排水弁体
32 排水口
43 リブ
51 小通孔
52 大通孔
54 格納部
55 円筒部材
91 小洗浄用パイロット弁引き上げ部材(引き上げ部材作動機構)
92 オーバーフロー管引き上げ部材(引き上げ部材作動機構)
【技術分野】
【0001】
この発明は、便器洗浄タンク装置に関し、さらに詳しくは操作ハンドルの回動操作により便器に対する給水量を大側若しくは小側に切り替え可能な便器洗浄タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の便器洗浄タンク装置の中には、例えば特許文献1(特許3206263号)のように、タンク本体に設けた操作ハンドルの回動方向を大側若しくは小側に回動することにより、タンク本体内に貯水した洗浄水を便器に対して全て給水する大洗浄と、タンク本体内に所定量の洗浄水を残して給水する小洗浄とを選択的に切り替え、これにより節水を図ったものがある。
【0003】
【特許文献1】特許3206263号公報
【0004】
図9〜図12は特許文献1に記載された便器洗浄タンク装置を示している。
この便器洗浄タンク装置100は、タンク本体101内部おける底面部に洗浄水を便器へ給水する排水弁3を設けると共に、同タンク本体101周壁の上部には上記排水弁3を開弁させる操作ハンドル104と、便器洗浄を行なう度に給水源から供給される水をタンク本体内の給水レベルまで補給するボールタップ給水栓102を設けてある。タンク本体101と便器とを連絡する給水管112の上端口はタンク本体101底面の開口に対して嵌挿してあり、その給水管112の上端口が排水口132として構成されている。上記排水口132は排水弁103の弁口を構成するものであり、タンク本体101内の底面において上方へ向けて開口し、該排水口132に上方から排水弁体131が着座している。
【0005】
円板状の排水弁体131は、オーバーフロー管115の下端に取り付け固定され、その中心部にはオーバーフロー管115を流れ落ちてくる水を排水口132に通過させる孔131aを穿設してある。オーバーフロー管115は後述する制御容器105の中心部を貫通し、制御容器105に支持される形で上下摺動自在に支持されている。制御容器105は上面を開口させた平面略D型の容器であり、脚114を介してタンク本体101底面に取り付け支持することにより、タンク本体101内における底面から幾分上の位置に設置してある。また、制御容器105の中心部には中筒部105aを垂直に貫通させた状態で設け、該中筒部105a内部に沿って前記オーバーフロー管115を摺動自在に嵌挿し、該オーバーフロー管115の上昇端において管下端に設けた排水弁体131が制御容器105の底面に当接させることにより、後述する浮き子体107による浮上上限を定めてある。
【0006】
前記オーバーフロー管115の上部外周からは中筒部105aを避けて制御容器105内へ延びる2本の連結部材113を突出してあり、これら連結部材113の下端に各々中空状の浮き子体107を取り付け固定してある。浮き子体107はオーバーフロー管115と排水弁体131とを浮上させるだけの浮力を生じる中空体であり、上記制御容器105の内部に収納され、連結部材113を介して一体化するオーバーフロー管115の上下動に伴って、容器5内において上昇、降下するように支持されている。
【0007】
上記制御容器105の側壁の平面部105bには流出口108を開口し、この流出口108の外側に開閉弁蓋109が設けてある。流出口108は小洗浄時において制御容器105内の水を短時間の間に流出させる為のものであり、タンク本体101内における底面から所定の高さ、即ち小洗浄時におけるタンク本体内水位の低限のレベルに合わせて開口してある。一方、上記流出口108に設ける開閉弁蓋109は、図9及び図11によって示す如く板状に形成し、制御容器105側壁に開口した流出口108に外側からあてがう形で設けてある。弁蓋109の両側辺部には下へ向けて垂直に延出するガイドシャフト191を設けてあり、このガイドシャフト191を流出口108の両側辺部に沿って垂直に設けた摺動孔192に対して上方から摺動自在に挿嵌することにより、上下にスライドして流出口108を開閉自在に閉鎖している。通常、上記した開閉弁蓋109は自重により閉弁状態を維持しているが、上部に連結した連結部材111が操作ハンドル104の回動操作により引き上げられることにより上昇して開弁し、上記連結部材111が弛むことにより自重により再び降下して流出口108を閉鎖する。
【0008】
上記ガイドシャフト191は開閉弁蓋109が降下する時に摺動孔192の内部に嵌挿されるように摺動するが、上記摺動孔192の下端口は小径に絞ってあり、ガイドシャフト191が摺動孔192の内部を降下するのに伴って摺動孔192内を満たす水がその小径孔193を介して外部へ噴出し、その際に適度な抵抗が生じ、開閉弁蓋109の降下が遅延させるようになっている。尚、上記した抵抗は、小径孔93を設けずに、ガイドシャフト191と摺動孔192との間に適度なクリアランスを設け、このクリアランスを介して摺動孔192内と外部との間の水の出入りを行なうように構成しても発生させることができる。よって操作ハンドル104の操作に開閉弁蓋109が引き上げられ、その後、開閉弁蓋109が自重により閉弁する際に、ガイドシャフト191の降下により摺動孔192の内部から小径孔193を介して噴出する。この時、ガイドシャフト191に必要な抵抗が生じ、この抵抗によって開閉弁蓋109がゆっくりと時間をかけて降下するようになっている。上記制御容器105の底面には小通孔116が穿設してある。この小通孔116は制御容器105内の水を少量ずつ排水することにより容器105内の浮き子体107を時間をかけて降下させるためのものであり、容器105内を満たす水が容器下部の浮き子体7降下位置に低下するまで所定の時間、例えばタンク本体内洗浄水の排水開始から排水が完全に終了するまでの時間をかけて流出し得る直径に設定してある。
【0009】
タンク本体101周壁の上部に設けられる操作ハンドル104はタンク本体101内へ向けて水平に延びる回動軸141と下向きに突出するレバー142とを備え、上記回動軸141をタンク本体101周壁に嵌着した支持筒111に外側から嵌挿することにより、左右に所定角度ずつ回動するように支持してある。また、操作ハンドル104は大洗浄と小洗浄とに対応して回動方向が定めてあり、レバー142が下向きになる位置を中立として、ハンドル104を左に回動させると大洗浄が行なわれ、右に回動させると小洗浄が行なわれるようになっている。
【0010】
タンク本体101内に水平に延出する回動軸141の外周には回動管161を嵌着し、この回動管161に排水弁体131を引き上げる腕片162と開閉弁蓋109を引き上げる引き上げ腕片163とを各々下へ向けて取り付けてある。腕片162には鎖等からなる連結部材110を垂下し、該連結部材110の下端を弛みの無い状態でオーバーフロー管115の上端に接続してある。また、引き上げ腕片163は回動管161外周に固定される固定片164と該固定片164中間部に回転軸165を介して軸支される回動片166とから構成され、上記固定片の先端部一側辺部に係止片167を屈曲形成してある。そして、上記した回動片166の先端からは連結部材111を垂下させ、その連結部材111の下端を前記した開閉弁蓋109の上部に幾分弛ませた状態で接続してある。よって、操作ハンドル104を大側に回動させると、図12(b)にて示すように一方へ向けて所定角度回動した固定片164の回転軸165から回動片166が垂下する形で連結部材111が小さく引き上げられる。尚、この引き上げでは引き上げストロークが小さい為に連結部材111の弛みがとれるだけで開閉弁蓋109は閉状態を維持している。また、操作ハンドル104を小側に回動させると、固定片164が所定角度回動する共に係止片167に係止された回動片166が固定片164を延長する形で回動され、これより連結部材111が大きなストロークで引き上げられて開閉弁蓋109が開弁する。
【0011】
以上の手段により、小洗浄時、操作ハンドルの回動により連結部材を介して開閉弁蓋が大きく引き上げられ、制御容器の流出口が開口する。反対に大洗浄時においては、連結部材による引き上げ量が小さくなり、開閉弁蓋は閉状態を維持する。また、小洗浄時において引き上げられた開閉弁蓋は、自重により降下するが、降下遅延機構によりその降下が所定時間遅延される。従って、上記遅延時間の間、開閉弁蓋が開かれることになり、これにより流出口から制御容器内の水が急速に流出して排水弁体の閉弁が早められる。この結果、タンク内に残留洗浄水が発生し、当該残留水分、便器に対する給水量が削減されたことになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記した従来の便器洗浄タンク装置は、排水弁体131の開弁時間制御を、制御容器105の側壁の平面部105bに開口した流出口108を弁蓋109の遅延閉止により、制御筒105内の水の流出速度を可変させることにより行っているが、弁蓋109の遅延閉止を、弁蓋109の側辺部に下へ向けて垂直に延出するガイドシャフト191と、流出口108の両側辺部に沿って垂直に設けた摺動孔192とのクリアランスから漏れる水を利用したダンパー機構により構成しているため、前記クリアランスにタンク本体101内に存在する微小なゴミ、洗浄水より析出したスケール等の噛み込みにより、弁蓋109の開弁不良が発生した。また、弁蓋109を開弁させる際にも前記ダンパー効果が機能するため、弁蓋109の開弁に過大な開弁荷重が必要となり、操作ハンドル104の操作力の増大、連結部材111の切断等の不具合がした。
【0013】
本発明の目的は、上記のように如き大洗浄と小洗浄の切り替え機構を具備する便器洗浄タンク装置に対して、軽い力で制御筒に設けられた流出口を開閉可能として、確実に大小洗浄を切替動作させることができる便器洗浄タンク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を解決するために本発明の請求項1の便器洗浄タンク装置は、タンク本体内の底部に便器へ連絡する排水口を上向きに開口すると共に、この排水口により構成した弁口に対して排水弁体を上方から開閉自在に着座させて排水弁を構成し、上記排水弁体に同弁体を浮上させる直動弁用フロートを取り付け、該直動弁用フロートをタンク本体内底部から間隔を置いて所定の高さに設置した制御筒の内部に昇降自在な状態で収容し、上記制御筒の上部を開口すると共に、この制御筒下部に遅延閉止用小通孔を開設し、また、この制御筒の下部に前記排水口よりも下流側と連通した大通孔を設け、前記タンク本体上部に設けた操作手段により引き上げられる2つのの連結部材の内、一方を上記排水弁体に、他方を制御筒の大通孔を開閉可能に支持される小洗浄用パイロット弁に各々連結し、上記操作手段により小洗浄が選択されると前記2つの連結部材をを引き上げて前記排水弁体及び前記小洗浄用パイロット弁を開動させ、上記操作手段により大洗浄が選択されると前記一方の引き上げ手段のみを引き上げて前記排水弁体を開状態として前記小洗浄用パイロット弁を閉状態とする引き上げ部材作動機構を具備してなる構成としたものである。
【0015】
また、請求項2の前記便器洗浄タンク装置において、前記制御筒に設けられた前記小洗浄用パイロット弁を上下に摺動可能に格納する格納部と、前記小洗浄用パイロット弁の外周面又は前記格納部の内壁面から他方に向かって突設形成されたリブと、を備える構成としたものである。
【0016】
また、請求項3の前記便器洗浄タンク装置において、前記格納部の上部に、この格納部よりも内径が小さい円筒部材を設け、この円筒部材の中を前記小洗浄用パイロット弁と連結された連結部材が挿通する構成としたものである。
【0017】
また、請求項4の円筒部材は、タンク上方に向かって徐拡大する構成としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上説明したように、操作ハンドルの回動方向を大側と小側とに選択することにより、制御筒の下部に前記排水口よりも下流側と連通した大通孔を小洗浄用パイロット弁により閉口若しくは開口した状態で排水弁からの排水を開始し、制御容器内における水位の低下時間を変化させることで、排水弁の閉弁のタイミングを遅い場合(大洗浄)と、早い場合(小洗浄)とに制御し、タンク本体内から便器に対して行われる洗浄水排水量の大小を選択的に切り替えるように構成したものであるから、従来の便器洗浄タンク装置のように、制御筒から水の流出制御を行う弁蓋にダンパー機構を有する必要が無くなり、軽い力で制御筒に設けられた大通孔を開閉可能として、確実に大小洗浄を切替動作させることができる。
【0019】
請求項2の便器洗浄タンク装置においては、小洗浄用パイロット弁と制御筒に設けられた格納部との接触面積を低減し、パイロット弁と格納部の摺動抵抗の低減によるパイロット弁開弁荷重の低減、またパイロット弁と格納部間へのゴミの噛み込みによるパイロット弁開弁不良を防止することができる。
【0020】
請求項3の便器洗浄タンク装置においては、連結部材が円筒部材の内壁に沿って上昇・下降し、小洗浄用パイロット弁を略垂直方向に開弁することにより、小洗浄用パイロット弁と格納部の接触を回避することができるため、パイロット弁と格納部の接触抵抗の低減によるパイロット弁開弁荷重を低減することができる。
【0021】
請求項4の円筒部材においては、連結部材が円筒部材の徐拡大部に沿って上昇・下降するため、連結部材の屈曲を回避することにより、連結部材の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明を実施した便器洗浄タンク装置を一部切欠して示す正面図である。この図1にて示す便器洗浄タンク装置aは便器(図示せず)の上方部に設置するものであり、陶器製のタンク本体1内部における底面部に洗浄水を便器へ給水する排水弁3を開弁させる操作ハンドル8、便器洗浄を行う度に給水源から供給される水をタンク本体内の給水レベルまで補給するボールタップ給水栓2を設けてある。タンク本体1と便器とを連絡する給水管12の上端口はタンク本体1底面の開口に対して嵌挿してあり、その給水管12の上端口が排水口32として構成されている。上記排水口32は排水弁3の弁口を構成するものであり、タンク本体1内の底面において上方へ向けて開口し、排水口32に上方から排水弁体31が着座している。
【0023】
円板状の排水弁体31は、オーバーフロー管15の下端に取り付け固定され、その中心部にはオーバーフロー管15を流れ落ちてくる水を排水口32に通過させる孔31aを穿設してある。オーバーフロー管15は後述する制御筒5の中心部を貫通し、制御筒5に支持される形で上下摺動自在に支持されている。制御筒5は上面を開口させた円筒型の容器であり、給水管12に勘合取り付けすることにより、タンク本体1内における底面から幾分上の位置に設置してある。尚、上記した制御筒5は円筒型以外の形状であってもよい。また、制御筒5の中心部には中筒部5aを垂直に貫通させた状態で設け、中筒部5a内部に沿ってオーバーフロー管15の上端において下端に設けた排水弁体31が制御筒5の底面に当接させることにより、後述する本発明における直動弁用フロートとしての浮き子体7による浮上上限を定めてある。
【0024】
前記オーバーフロー管15の上方外周面にはフランジ部15aを形成している。浮き子体7は円筒部7aと円筒部7a下端に下方開口した浮き子7bにて形成している。円筒部7a上部にはフランジ部15a上面に当接させる段部7cを形成し、オーバーフロー管15を浮き子体7の円筒部7aに浮き子体7下方より挿入し、フランジ部15a上面と段部7cを当接させ、オーバーフロー管15上部に止め部材55を装着することにより、オーバーフロー管15と浮き子体7を一体化した。浮き子7bはオーバーフロー管15と排水弁体31と止め部材55を浮上させるだけの浮力を生じる下方開口容器であり、上記制御筒5の内部に収納され、該オーバーフロー管15の上下動に伴って、制御筒5内において上昇、下降するように支持されている。なお、浮き子7bの形態は下方開口容器に限るものではなく、円筒型中空体でもよい。
【0025】
制御筒5の底面には小通孔51が穿設してある。この小通孔51は制御筒5内の水を少量ずつ排水することにより制御筒5内の浮き子体7を時間をかけて下降させるためのものであり、制御筒5内を満たす水が制御筒下部の浮き子体7下降位置に低下するまでの所定の時間、例えばタンク本体1内洗浄水の排水開始から排水が完全に終了するまでの時間をかけて流出し得る直径に設定してある。また、制御筒5の下部には前記小通孔51よりも開口面積が大きな大通孔52を開設し、該大通孔52と連通する通水筒53が制御筒5の下方からタンク本体1底面へ突出している。給水管12には給水管12上端口よりも下流側と連通した流出口34を設け、該流出口34と前記通水筒53が連結管6により連通している。大通孔52の上端には小洗浄用パイロット弁4が配設されている。該小洗浄用パイロット弁4はシール部材41とフロート42より構成され、前記シール部材41はフロート42下端に配設されおり、前記シール部材41下面と大通孔52上部が当接することにより大通孔52を閉塞している。
【0026】
タンク本体1内において、洗浄水貯水時における小洗浄用パイロット弁4による大通孔52の閉塞原理を説明する。まず、排水弁体31により排水口32閉塞時、小洗浄用パイロット弁4の下面のシール位置より内側領域は、給水管12の流出口34と制御筒5下部の通水筒53が連結管6により連通しているため、大気圧が作用している。また小洗浄用パイロット弁4の上面部はタンク本体1内の給水レベルにより作用する水頭圧が作用している。このため、小洗浄用パイロット弁4にはタンク下方向にフロート42自重F1、シール部材41自重F2、小洗浄用パイロット弁上面に作用する水頭圧とパイロット弁下面に作用する大気圧の差圧により発生する荷重F3が作用し、タンク上方向にはフロート42により発生する浮力F4が発生し、(F1+F2+F3)>F4となるフロート容量に設定することにより、大通孔52をシール部材により閉塞する。
【0027】
次に本発明の操作手段としての操作ハンドル8が大洗浄側へ回動し、オーバーフロー管15のみが引き上げられ排水口32が開口状態になった場合の、小洗浄用パイロット弁4による大通孔52の閉塞原理を説明する。排水口32が開口状態になることによりタンク本体1内の洗浄水が給水管12へ流入し、給水管12内部は洗浄水にて満たされるため、上記にて説明したF3は小洗浄用パイロット弁上面に作用する水頭圧とパイロット弁下面に作用する静圧の差圧により発生する荷重へと変化するが、給水管12内を流れる水の流速により前記水頭圧よりもパイロット弁下面に作用する静圧の方が小さい状態となる。そのためF3は依然としてタンク下方向へ作用する荷重となるため、小洗浄用パイロット弁4は大通孔52に負勢され、大通孔52を閉塞した状態を維持する。
【0028】
タンク本体1周壁の上部に設けられる操作ハンドル8はタンク本体1内へ向けて水平に伸びる回動軸81と下向きに突出するレバー82とを備え、上記回動軸81をタンク本体1周壁に嵌着した支持筒83に外側から嵌挿することにより、左右に所定角度角度ずつ回動するように支持してある。また、操作ハンドル8は大洗浄と小洗浄とに対応して回動方向を定めてあり、レバー82が下向きになる位置を中心として、ハンドル82を左に回動させると大洗浄が行われ、右に回動させると小洗浄が行われるようになっている。
【0029】
タンク本体1内に水平に伸出する回動軸81の外周には、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91を挿入し、次にオーバーフロー管引き上げ部材92を嵌着している。オーバーフロー管引き上げ部材92はレバーを大洗浄側、小洗浄側のいずれの方向に回動させた場合にも、回動軸81の回動方向と連動して回動し、オーバーフロー管15を引き上げる。
【0030】
図2は、図1におけるII―II線における断面図であり、小洗浄用パイロット弁4と回動軸81との位置関係を示す断面図である。この図2にて小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91の回動原理を説明する。図2(b)はハンドル82を操作していない中立位置である。この中立位置から図2(a)のようにハンドル82を小洗浄側へ回動した場合、回動軸81の外周に配設された跳ね上げリブ81aが小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91の跳ね上げ面91aと当接し、該リブ81aにより該跳ね上げ面91aを介して小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91を回動軸81の回動に同調して回動し、小洗浄用パイロット弁4はタンク上方へ引き上げられる。次に図2(c)のようにハンドル82を大洗浄側へ回動した場合、該リブ81aと小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91間は、大洗浄側回動角度より大なる空走角αを設けているため、該リブ81aと小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91の跳ね上げ面91aは当接せず、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91は自重により初期位置を保持したままであるため、小洗浄用パイロット弁4は制御筒5の大通孔52に当接された状態を維持する。
【0031】
上記した如く構成した便器洗浄タンク装置aの作動説明をする。通常時、タンク本体1内はボールタップ給水栓2により行われる給水によって、タンク本体1内の上限水位(図1のWL)まで洗浄水が貯水されている。この状態において排水弁3は水頭圧により閉弁され、小洗浄用パイロット弁4も同様に水頭圧により閉弁されている。
【0032】
大洗浄に際して、使用者が操作ハンドル8を大洗浄側に回動すると、オーバーフロー管跳ね上げ部材92が所定角度回動し、この回動により連結部材10及びオーバーフロー管15が引き上げられて排水弁体31が開弁する。この時点から、タンク本体1から便器に対する洗浄水の給水が開始される。また、一旦開弁した排水弁体31は浮き子体7による浮力により上昇して開弁状態を維持する。このとき、前記した小洗浄用パイロット弁4の作動原理により、該小洗浄用パイロット弁4は初期状態を維持される。
【0033】
洗浄水の排水に伴ってタンク本体1内水位が低下し、制御筒5上端の開口部まで下がると、タンク本体1内の洗浄水が制御筒5内に流れ込むことがなくなり、さらにタンク本体1内の洗浄水は排水口32から大量に排水され水位も急速に低下する。これと平行して制御筒5底面の小通孔51からも制御筒5内の水が流出し、浮き子体7も降下するが、小通孔51からの流出量が少ないために制御筒5内水位の低下は遅く、時間をかけてゆっくりと降下する。よって、上記した浮き子体7が制御筒5内下部まで降下し、排水弁体31が排水口32に着座するまでの間には、タンク本体1内の排水口32の上端(図1にDWL1で示す)より下となる部分を除く洗浄水は全て排水され、排水が完了している。即ち、大洗浄時においてはタンク本体1内の排水弁3を開いて排出可能な水が全て排水されることになる。排水弁3が閉弁した後は、タンク本体1内上部のボールタップ給水栓2から給水が行われ、タンク本体1内の上限水位まで洗浄水が補給される。
【0034】
小洗浄に際して操作ハンドル8を小洗浄側に回動すると、オーバーフロー管引き上げ部材92が所定角度回動し、連結部材10を介してオーバーフロー管15が引上げられて排水弁体31が開弁し、便器に対する給水が開始される。これと同時に、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91がオーバーフロー管引き上げ部材92の回動と同調して回動し、これにより連結部材11が引上げられて小洗浄用パイロット弁4を開弁する。排水に伴ってタンク本体1内水位が低下し、制御筒5上端の開口部以下にまで低下すると、制御筒5の大通孔52が大きく開口されているため、制御筒5内の水が大通孔52を介して速やかに流出し、制御筒5内の水位もタンク本体1内の水位低下と略同じ速度で急速に低下する。
【0035】
制御筒5内の浮き子体7が同容器5下部まで降下し、タンク本体1内水位が小洗浄時における下限水位(図1のDWL2)まで低下した時、浮き子体7と共に降下する排水弁体31が排水口32に着座して閉弁する。小洗浄用パイロット弁4も浮き子体7と同様に降下するため、排水弁体31の閉弁と略同時に閉弁する。排水弁3が閉弁した時点において、タンク本体1内には制御筒5下面以下の範囲に洗浄水が残っており、この残留水の分(DWL1とDWL2との差の分)、便器に対して供給される洗浄水の量が削減されることになる。
【0036】
以上説明したように、便器洗浄タンク装置aにあっては、従来のもののように、制御筒側面に、該制御筒内の水の流出速度を制御する開閉弁蓋を配設し、該開閉弁蓋の遅延閉止にダンパー機構を使用する必要がなく、小洗浄用パイロット弁4の開閉にて制御筒5内の水の流出速度を制御することができる。したがって、軽い力で制御筒5に設けられた小洗浄用パイロット弁4を開閉可能として、確実に大小洗浄を切替動作させることができる。
【0037】
図3から図5に基づいて、制御筒5における格納部54と該小洗浄用パイロット弁4の関係について更に説明する。図3は、制御筒に配設した小洗浄用パイロット弁4の格納部54を示す斜視図であり、図4は、小洗浄用パイロット弁4のフロート42を示す斜視図であり、図5は、格納部54と小洗浄用パイロット弁4の位置関係を示す上面図である。図3に示すように、制御筒5の外周部には、小洗浄用パイロット弁4を格納する格納部54が形成されている。この格納部54は内面が円筒状であり、制御筒5とはスリット状の連通路54aによって繋がっている。また、図4に示すように、小洗浄用パイロット弁4のフロート42の外周面から他方に向かってリブ43を突設形成する。そして、図5に示すように、リブ43が格納部54の内壁と対向する構成となっている、従って、操作ハンドル8を小洗浄側に回動し、小洗浄用パイロット弁4をタンク上方へ引上げる際、前記格納部54の内壁と前記リブ43が当接する。なお、リブ43は小洗浄用パイロット弁4のフロート42の外周面に突設形成する構成に限定されることはなく、前記格納部54の内周面から他方に向かって突設形成する構成としてもよい。
【0038】
前記リブ43を突設形成することにより、格納部54とフロート42の摺動抵抗を低減することができる。したがって、軽い力で制御筒5に設けられた小洗浄用パイロット弁4を開閉可能として、確実に大小洗浄を切替動作させることができる。
【0039】
次に、小洗浄用パイロット弁4を引き上げる際の、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91とこの小洗浄用パイロット弁4とを繋ぐ連結部材11の動作について、図6〜図8に基づいて説明する。
図6は、小洗浄用パイロット弁4、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91および連結部材11の位置関係を示す断面図、図7は、小洗浄用パイロット弁4の格納部54の上部に円筒部材55を配設した場合を示す他の実施例であり、図8は、円筒部材55の変形例として円筒部材55の上端部を徐拡大した場合を示す断面図である。図6(b)に示すように、小洗浄用パイロット弁4と該小洗浄用パイロット弁4をタンク上方へ引き上げる小洗浄用パイロット弁引き上げ部材91の跳ね上げ面91aとの位置関係は、小洗浄用パイロット弁4が閉弁状態においては、跳ね上げ面91aは小洗浄用パイロット弁4の略垂直上方に位置している。つまり連結部材11は略垂直状態を維持している。ここで操作ハンドル8にて小洗浄側へ回動すると(図6(a)に示す)、小洗浄用パイロット弁4は跳ね上げ面91aの回動により引き上げ部材11を介してタンク上方へ引き上げられる。このとき跳ね上げ面91aは所定の回動角度回動するため、跳ね上げ面91aの回動終了時、跳ね上げ面91aは小洗浄用パイロット弁4の垂直上方から外れた位置にくる。つまり連結部材11も小洗浄用パイロット弁4に対して垂直を維持できない状態となる。このときの垂直方向からのずれ角度をβとする。そのため、小洗浄用パイロット弁4は垂直方向に引き上げられず、垂直方向よりも角度βずれた方向に引き上げられることになる。このときの小洗浄用パイロット弁4の位置を破線にて示す。これにより小洗浄用パイロット弁4は格納部54内壁に接触しながらタンク上方へ引き上げられることになる。そのため、パイロット弁4のフロート42外壁と格納部54内壁の間に摺動抵抗が発生し、小洗浄用パイロット弁の引き上げ荷重が増加する。
【0040】
ここで、図7に示すように、格納部54の上部に該格納部54よりも内径が小さい円筒部材55を配設する。この円筒部材55の中を前記小洗浄用パイロット弁と連結された連結部材11が挿通することにより、小洗浄用パイロット弁4を引き上げる場合において、跳ね上げ面91aと小洗浄用パイロット弁4の位置関係が角度βずれたとしても、連結部材11は円筒部材55の内壁に沿う形態で小洗浄用パイロット弁4を引き上げるため、パイロット弁4は略垂直状態を保持したまま、タンク上方へ引き上げることが可能となり、軽い力で制御筒5に設けられた小洗浄用パイロット弁4を開閉可能として、確実に大小洗浄を切替動作させることができる。
【0041】
また図8に示すように、円筒部材55の上端部55aを徐拡大することにより、連結部材11の屈曲を防止し、連結部材11と円筒部材54の摺動抵抗も減少可能となるため、小洗浄用パイロット弁4の引き上げ荷重を更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明を実施した便器洗浄タンク装置を一部切欠して示す正面図。
【図2】小洗浄用パイロット弁と回動軸との位置関係を示す断面図。
【図3】制御筒に配設した小洗浄用パイロット弁の格納部を示す斜視図。
【図4】小洗浄用パイロット弁のフロートを示す斜視図。
【図5】格納部と小洗浄用パイロット弁の位置関係を示す上面図。
【図6】小洗浄用パイロット弁、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材および連結部材の位置関係を示す断面図。
【図7】格納部の上部に円筒部材を配設した場合の、小洗浄用パイロット弁、小洗浄用パイロット弁引き上げ部材および連結部材の位置関係を示す断面図。
【図8】円筒部材の上端部を徐拡大した場合を示す断面図。
【図9】従来の便器洗浄タンク装置を示す正面図。
【図10】従来の排水弁部分を示す拡大図。
【図11】従来の制御容器の流出口部分を示す斜視図。
【図12】従来の大洗浄時と小洗浄時における引き上げ腕片の回動状態を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0043】
a 便器洗浄タンク装置
1 タンク本体
3 排水弁
4 小洗浄用パイロット弁
5 制御筒
7 浮き子体(直動弁用フロート)
8 操作ハンドル(操作手段)
10,11 連結部材
12 給水管
15 オーバーフロー管
31 排水弁体
32 排水口
43 リブ
51 小通孔
52 大通孔
54 格納部
55 円筒部材
91 小洗浄用パイロット弁引き上げ部材(引き上げ部材作動機構)
92 オーバーフロー管引き上げ部材(引き上げ部材作動機構)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク本体内の底部に便器へ連絡する排水口を上向きに開口すると共に、この排水口により構成した弁口に対して排水弁体を上方から開閉自在に着座させて排水弁を構成し、上記排水弁体に同弁体を浮上させる直動弁用フロートを取り付け、該直動弁用フロートをタンク本体内底部から間隔を置いて所定の高さに設置した制御筒の内部に昇降自在な状態で収容し、上記制御筒の上部を開口すると共に、この制御筒下部に遅延閉止用小通孔を開設し、また、この制御筒の下部に前記排水口よりも下流側と連通した大通孔を設け、前記タンク本体上部に設けた操作手段により引き上げられる2つのの連結部材の内、一方を上記排水弁体に、他方を制御筒の大通孔を開閉可能に支持される小洗浄用パイロット弁に各々連結し、上記操作手段により小洗浄が選択されると前記2つの連結部材をを引き上げて前記排水弁体及び前記小洗浄用パイロット弁を開動させ、上記操作手段により大洗浄が選択されると前記一方の引き上げ手段のみを引き上げて前記排水弁体を開状態として前記小洗浄用パイロット弁を閉状態とする引き上げ部材作動機構を具備してなる便器洗浄タンク装置。
【請求項2】
請求項1記載の便器洗浄タンク装置において、前記制御筒に設けられた前記小洗浄用パイロット弁を上下に摺動可能に格納する格納部と、前記小洗浄用パイロット弁の外周面又は前記格納部の内壁面から他方に向かって突設形成されたリブと、を備えたことを特徴とする便器洗浄タンク装置。
【請求項3】
請求項2記載の便器洗浄タンク装置において、前記格納部の上部に、この格納部よりも内径が小さい円筒部材を設け、この円筒部材の中を前記小洗浄用パイロット弁と連結された連結部材が挿通していることを特徴とする便器洗浄タンク装置。
【請求項4】
前記円筒部材は、タンク上方に向かって徐拡大することを特徴とする請求項3記載の便器洗浄タンク装置。
【請求項1】
タンク本体内の底部に便器へ連絡する排水口を上向きに開口すると共に、この排水口により構成した弁口に対して排水弁体を上方から開閉自在に着座させて排水弁を構成し、上記排水弁体に同弁体を浮上させる直動弁用フロートを取り付け、該直動弁用フロートをタンク本体内底部から間隔を置いて所定の高さに設置した制御筒の内部に昇降自在な状態で収容し、上記制御筒の上部を開口すると共に、この制御筒下部に遅延閉止用小通孔を開設し、また、この制御筒の下部に前記排水口よりも下流側と連通した大通孔を設け、前記タンク本体上部に設けた操作手段により引き上げられる2つのの連結部材の内、一方を上記排水弁体に、他方を制御筒の大通孔を開閉可能に支持される小洗浄用パイロット弁に各々連結し、上記操作手段により小洗浄が選択されると前記2つの連結部材をを引き上げて前記排水弁体及び前記小洗浄用パイロット弁を開動させ、上記操作手段により大洗浄が選択されると前記一方の引き上げ手段のみを引き上げて前記排水弁体を開状態として前記小洗浄用パイロット弁を閉状態とする引き上げ部材作動機構を具備してなる便器洗浄タンク装置。
【請求項2】
請求項1記載の便器洗浄タンク装置において、前記制御筒に設けられた前記小洗浄用パイロット弁を上下に摺動可能に格納する格納部と、前記小洗浄用パイロット弁の外周面又は前記格納部の内壁面から他方に向かって突設形成されたリブと、を備えたことを特徴とする便器洗浄タンク装置。
【請求項3】
請求項2記載の便器洗浄タンク装置において、前記格納部の上部に、この格納部よりも内径が小さい円筒部材を設け、この円筒部材の中を前記小洗浄用パイロット弁と連結された連結部材が挿通していることを特徴とする便器洗浄タンク装置。
【請求項4】
前記円筒部材は、タンク上方に向かって徐拡大することを特徴とする請求項3記載の便器洗浄タンク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2009−97174(P2009−97174A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267657(P2007−267657)
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月15日(2007.10.15)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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