説明

便器洗浄水タンク

【課題】手洗いスペースを広くし、使い勝手を向上させると共に、手洗い給水管を手すりとして使用することの危険性を知らせることができる便器洗浄水タンクを提供する。
【解決手段】本発明は、水洗便器1を洗浄する洗浄水を溜める便器洗浄水タンク14であって、ロータンク本体14cと、このロータンク本体の上に着脱自在に固定され且つその上面に手洗い鉢14dを形成する蓋14eと、ロータンク本体へ洗浄水を給水するボールタップ22と、このボールタップから分岐し且つ手洗い鉢14dの上方に吐水口32aを位置させるように延びる手洗い給水管32と、を有し、手洗い給水管は、蓋の上面に固定されることなく蓋の側面14hに固定されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄水タンクに係り、特に、水洗便器を洗浄する洗浄水を溜める便器洗浄水タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗便器を洗浄する洗浄水を溜める便器洗浄水タンクにおいて、タンク本体上に固定された蓋の上面に手洗い鉢が形成されているものがある。そして、近年、いかにしてこの手洗い鉢のスペースを広くすることにより、使用者にとって手洗いスペースを広げて使い勝手を向上させるかが要請された課題となっている。
例えば、特許文献1に記載されている従来の便器洗浄水タンクにおいては、手洗い給水管(スパウト)をタンク本体上の蓋の上面に配置せずに、タンク本体の側面に配置することにより、手洗い鉢のスペースを広くする工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭50−96347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の便器洗浄水タンクにおいては、手洗い給水管(スパウト)がタンク本体側面から外方を迂回し蓋の上方に位置し、かつ手洗い給水管(スパウト)の根元部分がタンク本体の側面に固定されており、ある程度の荷重を支えることができるため、使用者がスパウトを手すりとして使用することができるものと誤認する場合があるという問題がある。
また、万一、使用者が実際にスパウトを手すりとして使用した場合には、スパウトが使用者の体重程度の荷重を支えるほどの十分な強度を備えていないため、スパウトの根元部分とタンク本体側面との固定部等に過荷重が作用することになり、スパウトのみならずタンク本体が破損し、漏水の原因にもなる可能性があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、手洗いスペースを広くし、使い勝手を向上させると共に、手洗い給水管を手すりとして使用することの危険性を知らせることができる便器洗浄水タンクを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、水洗便器を洗浄する洗浄水を溜める便器洗浄水タンクであって、タンク本体と、このタンク本体の上に着脱可能に固定され且つその上面に手洗い鉢を形成する蓋と、上記タンク本体へ洗浄水を給水する給水手段と、この給水手段から分岐し且つ上記手洗い鉢の上方に吐水口を位置させるように延びる手洗い給水管と、を有し、上記手洗い給水管は、上記蓋の上面に固定されることなく上記蓋の側面に固定されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、手洗い給水管が蓋の上面に固定されることなく側面に固定されているため、蓋の上面に形成される手洗い鉢のスペースを広くすることができるため、使用者にとって手洗いスペースが広くなり、使い勝手を向上させることができる。また、手洗い給水管が蓋の側面に固定されているため、万一、使用者が手洗い給水管を誤って手すりとして握ってしまった場合でも、蓋が動くため、使用者に対して手洗い給水管を手すりとして使用することの危険性を知らせることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、蓋は、その側面に設けられ且つその外側に凸状に突出した突起部を備え、手洗い給水管は、蓋の突起部に嵌合可能な嵌合部を備えている。
このように構成された本発明においては、手洗い給水管の嵌合部を蓋の突起部に嵌合させることによって、簡易な構成で手洗い給水管を蓋の側面に固定することができる。さらに、蓋側の手洗い給水管との固定部分を外側に凸状に突出した突起部にしたことにより、蓋を成形する際に2つの型を用いて成形することができるため、突起部の代わりに凹状に形成された凹部が設けられた蓋を成形する場合に比べて、用いる型数が少なく、より簡単に成形することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、更に、給水手段と手洗い給水管とを接続するホース部を有し、給水手段とホース部との接続部、及び、手洗い給水管とホース部との接続部は、タンク本体内に位置している。
このように構成された本発明においては、ホース部の両端、すなわち、給水手段とホース部との接続部、及び、手洗い給水管とホース部との接続部がいずれもタンク本体内に位置しているため、万一、ホース部と給水手段との接続部、又は、ホース部と手洗い給水管との接続部の少なくともいずれか一方の接続部が外れたとしても、ホース部からタンク本体の外部への水漏れを防ぐことができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、手洗い給水管とホース部との接続部は、手洗い給水管の嵌合部を構成する固定部材に固定されている。
このように構成された本発明においては、手洗い給水管とホース部との接続部が手洗い給水管の嵌合部を構成する固定部材に固定されているため、手洗い給水管とホース部との接続部が手洗い給水管の固定部材から外れるより先に、タンク本体内でホース部が外れるため、ホース部からタンク本体の外部への水漏れを防ぐことができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、手洗い給水管は、その下端部の中心軸線回りに所定の回動角度の範囲内で回動可能に上記蓋の側面に固定されている。
このように構成された本発明においては、万一、使用者が手洗い給水管を誤って手すりとして握ってしまった場合でも、手洗い給水管がその下端部の中心軸線回りに所定の回動角度の範囲内で回動することができるため、使用者に対して手洗い給水管を手すりとして使うことの危険性を知らせることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の便器洗浄水タンクによれば、手洗いスペースを広くし、使い勝手を向上させると共に、手洗い給水管を手すりとして使用することの危険性を知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態による便器洗浄水タンクを備えた水洗便器の断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態による便器洗浄水タンクの内部を示す正面断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による便器洗浄水タンクの平面図である。
【図4】図3に示す本発明の第1実施形態による便器洗浄水タンクにおいて結露防止カバーが見えるように蓋の部分の一部を切り取った平面図である。
【図5】本発明の第1実施形態による便器洗浄水タンクの結露防止カバーを斜め上方から見た斜視図である。
【図6】本発明の第1実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管が固定された蓋の後方側の側面部分を斜め上方から見た拡大斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管が固定される蓋の後方側の側面部分を斜め上方から見た拡大斜視図である。
【図8】本発明の第1実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管が固定された蓋の後方側の側面部分において水落下防止カバーを取り外した状態を斜め上方から見た拡大斜視図である。
【図9】本発明の第1実施形態による便器洗浄水タンクの水落下防止カバーの内側部分を斜め上方から見た拡大斜視図である。
【図10】本発明の第2実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管を示す分解斜視図である。
【図11】図10に示す本発明の第2実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管の下端部を拡大して斜め上方から見た拡大斜視図である。
【図12】図10に示す本発明の第2実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管の下端部を拡大して斜め下方から見た拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面により、本発明の第1実施形態による便器洗浄水タンクを説明する。
まず、図1は、本実施形態による便器洗浄水タンクを備えた水洗便器の断面図である。図1に示すように、符号1は水洗便器を示し、この水洗便器1の上部の前方側には、ボウル部2が形成され、後方側の上部には導水路4が、導水路4の下方にはボウル部2と連通する排水トラップ管路6が、それぞれ形成されている。
【0014】
水洗便器1のボウル部2の上縁部にはオーバーハング形状のリム8が形成され、このリム8に導水路4から洗浄水が供給される1つ又は2つのリム吐水口10が形成され、洗浄水が旋回しながら下降してボウル部2を洗浄できるようになっている。また、ボウル部2の中心下部には、導水路4から洗浄水が供給されるジェット吐水口12が形成され、このジェット吐水口12から洗浄水が排水トラップ管路6に向けて吐水され、サイホンを短時間で発生されるようになっている。
【0015】
水洗便器1の導水路4の上方には、水洗便器1を洗浄する洗浄水を溜める本実施形態の便器洗浄水タンクに相当する、いわゆる、ロータンク14が設けられている。このロータンク14の底面14aには、水洗便器1の導水路4と連通する連通口14bが形成されている。
【0016】
つぎに、図2〜図9を参照して、本実施形態の便器洗浄水タンク(ロータンク)の詳細について説明する。ここで、図2は本実施形態の便器洗浄水タンク(ロータンク)の内部を示す正面断面図であり、図3は本実施形態の便器洗浄水タンク(ロータンク)の平面図である。
図2に示すように、ロータンク14は、ロータンク14の外枠を形成する陶器からなるロータンク本体14cと、このロータンク本体14cの上に着脱自在に固定され且つその上面に手洗い鉢14dを形成する陶器からなる蓋14eとを備えている。
蓋14eの外周部の底面に沿って連続的に形成された、又は、所定間隔を置いて複数形成された突起部14iが設けられており、蓋14eが何らかの衝撃により横ずれした場合、この突起部14iがロータンク本体14cの上端に対して当接することにより、蓋14eが床に落下しないようになっている。また、蓋14eが陶器で形成されている場合には、陶器の重さである程度横ずれを防止することができるため、突起部14iは蓋14eの外周部の底面に沿ってわずかな長さで形成してもよいし、省略してもよい。
【0017】
ロータンク本体14cは、その内部に洗浄水が貯留される内タンク14fを備え、この内タンク14fには、排水弁16、オーバーフロー管18、給水管20、ボールタップ22、及び、フロート24が設けられている。また、内タンク14fの上面には、詳細は後述する結露防止カバー25が覆うように配置されている。
【0018】
まず、排水弁16は、大洗浄用の弁体16aと小洗浄用の弁体16bを備え、両弁体16a,16bは、ロータンク14の底面14aの連通口14bの部分に設けられている。また、各弁体16a,16bは、操作レバー26に接続された玉鎖28a,28bにそれぞれ接続されており、操作レバー26を操作して大洗浄又は小洗浄を切り替えることにより、大洗浄用の弁体16a又は小洗浄用の弁体16bの開閉操作が行われるようになっている。そして、排水弁16は、閉操作により洗浄水をロータンク本体14cの内タンク14f内に貯水し、開操作により、ロータンク本体14cの内タンク14f内の洗浄水を水洗便器1の導水路4を経由して、リム吐水口10及びジェット吐水口12に導くようになっている。
【0019】
つぎに、オーバーフロー管18は、その上端に開口18aが形成されその下端が排水弁16の弁座16cに連通するように設けられている。このオーバーフロー管18により、洗浄水の水位が万一上昇しても、開口18aから、洗浄水がオーバーフローし、排水弁16の弁座16aを経由して、さらに、水洗便器1の導水路4を経て、リム吐水口10とジェット吐水口12から、ボウル部2内に排出されるようになっている。
【0020】
つぎに、給水管20は、ロータンク14の底面14aに取り付けられ、外部の水道等の給水源(図示せず)に接続され、洗浄水をロータンク本体14cの内タンク14f内に供給するようになっている。
給水管20の先端部には、ロータンク本体14cの内タンク14f内に洗浄水を給水する給水手段としてボールタップ22が設けられている。このボールタップ22には、アーム30が取り付けられており、さらに、アーム30の右端部にはフロート24が取り付けられている。フロート24が内タンク14f内の洗浄水の水位の変動に伴って上下動することにより、ボールタップ22内の給水バルブ(図示せず)が開閉し、給水管20から内タンク14f内への洗浄水の吐水及び止水が切り替えられるようになっている。
【0021】
つぎに、図2〜図5を参照して、結露防止カバー25の詳細について説明する。ここで、図4は、図3に示す本実施形態による便器洗浄水タンクにおいて結露防止カバーが見えるように蓋の部分の一部を切り取った平面図である。また、図5は、本実施形態による便器洗浄水タンクの結露防止カバーを斜め上方から見た斜視図である。
図2〜図5に示すように、結露防止カバー25は、その上方に位置する蓋14eの内面等に付着している結露が落下し、内タンク14fの内部の排水弁16、オーバーフロー管18、給水管20、ボールタップ22、及び、フロート24等の内部機器や内部部材に濡らしてしまうのを防ぐようになっている。
【0022】
また、結露防止カバー25の上面は、下方に凹んで滑らかな凹曲面状の排水路25aを形成している。
排水路25aは、手洗い鉢14dの排水孔14gと対向する下方位置に漏斗部25cを備えている。
漏斗部25cは、その下端部に形成された排水孔25cに向かって窄まっており、この排水孔25cは、下方に向かって開口しているが、内タンク14fの内部の排水弁16、オーバーフロー管18、給水管20、ボールタップ22、及び、フロート24等の内部機器や内部部材と対向しないように位置している。
【0023】
さらに、排水路25aは、その外縁から漏斗部25bに向かってなだらかに下方に傾斜しており、蓋14eの内面等に付着している結露が結露防止カバー25の上面(排水路25a)に落下すると、漏斗部25bに向かって流れた後、この漏斗部25bの排水孔25cから内タンク14f内の排水弁16、オーバーフロー管18、給水管20、ボールタップ22、及び、フロート24等の内部機器や内部部材以外の所定箇所に差し向けて排水されるようになっている。
【0024】
また、図4においては、手洗い鉢14dの排水孔14gと結露防止カバー25の排水路25aの漏斗部25bとの互いの位置関係を明確にするために、手洗い鉢14dの排水孔14gを破線で示している。
図3及び図4に示すように、結露防止カバー25の排水路25aの漏斗部25bにおいては、蓋14eの後方側の側面14hに固定された手洗い給水管32(詳細は後述する)の吐水口32aから手洗い鉢14dに吐水され、手洗い鉢14dの排水孔14gから排水された水が漏斗部25bに流れ、内タンク14f内の排水弁16、オーバーフロー管18、給水管20、ボールタップ22、及び、フロート24等の内部機器や内部部材以外の所定箇所に差し向けて排水されるようになっている。
【0025】
さらに、結露防止カバー25の排水路25aには、手洗い給水管32の外面を伝わる水の床面への落下を防止する落下防止手段である水落下防止カバー34(詳細は後述する)の排水路34aが結露防止カバー25の排水路25aに向かって差し向けて配置されている。手洗い給水管32の外面を伝わった水は、水落下防止カバー34の排水路34aを経て結露防止カバー25の排水路25aに差し向けられ、この漏斗部25bの排水孔25cから内タンク14f内の排水弁16、オーバーフロー管18、給水管20、ボールタップ22、及び、フロート24等の内部機器や内部部材以外の所定箇所に差し向けて排水されるようになっている。
【0026】
ロータンク本体14cの内タンク14f内に洗浄水を給水する給水手段であるボールタップ22には、手洗い給水管32へ給水を導く導水管36が給水管20とは別に分岐して設けられている。この導水管36の一端部36aは、結露防止カバー25の漏斗部25bの後方側に配置されている(図4参照)。
【0027】
また、導水管36の一端部36aには、差し込み式の継手36bが差し込まれて接続されており、この継手36bにはホース36cが接続されている。そして、このホース36cは、手洗い給水管32の内部ホース32bに接続されている継手36dに接続されている。
【0028】
すなわち、継手36bは、導水管36とホース36cとの接続部となり、継手36dは、ホース36cと手洗い給水管32の内部ホース32bとの接続部となっている。
ここで、継手36b,36dが接続されているホース36cの両端部(接続部)は、ロータンク本体14cの内部に位置しており、万一、ホース36cとその両端部の継手36b,36dとの接続部の少なくともいずれか一方の接続部が外れたとしても、ホース36cからロータンク本体14cの外部への水漏れを防ぐことができるようになっている。
【0029】
つぎに、図1〜図9を参照して、手洗い給水管32の詳細について説明する。
図6は本実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管が固定された蓋の後方側の側面部分を斜め上方から見た拡大斜視図であり、図7は本実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管が固定される蓋の後方側の側面部分を斜め上方から見た拡大斜視図であり、図8は本実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管が固定された蓋の後方側の側面部分において水落下防止カバーを取り外した状態を斜め上方から見た拡大斜視図である。また、図9は本実施形態による便器洗浄水タンクの水落下防止カバーの内側部分を斜め上方から見た拡大斜視図である。
【0030】
図1〜図9に示すように、手洗い給水管32は、その下端部と蓋14eの後方側の側面14hのそれぞれに設けられた固定構造38によって、蓋14eの後方側の側面14hに固定されている。
まず、蓋14eの後方側の側面14hに設けられた固定構造38は、蓋14eの後方側の側面14hから外側に凸状に突出した一対の突起部38aを備え(図7及び図8参照)、この一対の突起部38aが手洗い給水管32の下端部を横方向から挟み込むようになっている。
また、一対の突起部38aの各先端部は、上側に突出する上側突出部38bと、下側に突出する下側突出部38cとを形成し(図7及び図8参照)、両突起部38aの基端部と先端部との間にほぼ平坦な一対の上側棚部38dと下側棚部38eを形成している(図7参照)。
【0031】
一方、手洗い給水管32の下端部に設けられた固定構造38は、手洗い給水管32の下端部の両側からほぼ水平方向に延びる一対のフランジ部38fを備え、この一対のフランジ部38fは、蓋14eの一対の突起部38aにおける上側棚部38dの上に配置される。
また、手洗い給水管32の下端部に設けられた固定構造38は、手洗い給水管32の下端部における一対のフランジ部38fと共に蓋14eの一対の突起部38aを下方から挟み込んで固定する固定部材である固定金具38gを備えている。
【0032】
固定金具38gは、手洗い給水管32の下端部における一対のフランジ部38fと対応するように、一対の突起部38aの下側棚部38eに配置される一対のフランジ部38hを備えており、これらの両フランジ部38f,38hは、ボルト38iによって蓋14eの一対の突起部38aに嵌合可能な嵌合部を構成している。すなわち、蓋14eの一対の突起部38aを上下方向から両フランジ部38f,38hで挟み込んで嵌合させた状態でボルト38iを締め付けると、手洗い給水管32の下端部が蓋14eの後方側の側面14hに固定されるようになっている。
【0033】
また、図8に示すように、固定金具38gの下端部は、ロータンク本体14cの内側に向かって且つ斜め下方に延びており、手洗い給水管32の内部ホース32bに接続されている継手36dが固定される固定部38jを備えている。
上述した手洗い給水管32を、万一、使用者が誤って手すりとして握ってしまうと、蓋14eの外周部の底面に突起部14iが設けられている場合には、この突起部14iとロータンク本体14cの上端とが当接する当接部が支点となって蓋14eが僅かに浮き上がるようになっている。
一方、蓋14eの裏に突起部14iが設けられていない場合には、蓋14eがロータンク本体14cに対して横にずれるため、使用者は手洗い給水管32を手すりとして握ってはいけないと直ぐに認知することができるようになっている。
【0034】
つぎに、図3、図4、図6、及び、図9を参照して、水落下防止カバー34の詳細について説明する。
水落下防止カバー34は、手洗い給水管32の下端部の固定構造38の外側を覆うように手洗い給水管32の下端部に取り外し可能に設けられており、水落下防止カバー34の下端部には、斜め下方に傾斜する排水路34aが設けられている。
また、水落下防止カバー34の排水路34aは、蓋14eとロータンク本体14cの結露防止カバー25との間に配置されており、結露防止カバー25の排水路25aに差し向けられている。
【0035】
水落下防止カバー34は、その上面にほぼU字形に形成された切欠き部34bを備え、この切欠き部34bと、これに対向する手洗い給水管32の下端部の外面との間には、所定間隔の隙間が形成されており、万一、結露、手洗い給水管32の水掃除、或いは、手洗い鉢14dからの返り水により、手洗い給水管14の外面で水伝えが発生したとしても、この水が手洗い給水管14の外面を伝って切欠き部34bとの隙間を通過し、排水路34a上に落下して、この排水路34aから結露防止カバー25の排水路25aへ排水されるようになっている。
【0036】
また、図4及び図9に示すように、手洗い給水管32の下端部の下方に位置する水落下防止カバー34の排水路34aを形成する外郭34cは、上面視から見て手洗い給水管32の下端部の外郭(外面)よりも外側に位置しており、手洗い給水管32の下端部を水が伝わっている途中で落下しても、この落下した水を排水路34aの外郭34cの範囲内で受けることができるようになっている。
【0037】
つぎに、手洗い給水管32は、蓋14eの一対の突起部38aによって横方向から両側が挟み込まれた始端部32cから手洗い鉢14dの高さを超える中間部32dまで上方に起立して延びている。
また、手洗い給水管32は、中間部32dからその終端部である吐水口32aにかけて、この吐水口32aが手洗い鉢14dの上方に位置するように、排水孔14gが形成された手洗い鉢14dの中心方向に向かって延びており、蓋14eの上面全体が手洗い鉢14dとして利用できるようにロータンク本体14cの側面14hから手洗い鉢14dを迂回して配置されている。
【0038】
さらに、図3に示すように、手洗い鉢14dの外周は楕円形状を有している。この楕円形状の手洗い鉢14dの最大横幅寸法lと最大奥行き寸法dを画定する寸法線をそれぞれL1、L2とすると、手洗い給水管32の始端部32cから中間部32dの部分及び水落下防止カバー34の全体は、これら寸法線L1,L2とロータンク本体14cの側面14hによって囲まれる領域A内に配置されている。
すなわち、手洗い給水管32の始端部32cから中間部32dの部分は、手洗い鉢14の横幅寸法と奥行き寸法との最大範囲内(領域A内)でロータンク本体14cから起立している。
【0039】
また、図2〜図4に示すように、手洗い給水管32は、蓋14eの後方側の側面14hにおいて正面視及び上面視から見て左側に配置されているのに対し、操作レバー26はロータンク本体14cにおいて正面視及び上面視から見て右側に配置されている。すなわち、手洗い給水管32と操作レバー26とは、互いに対になる方向に配置されており、手洗い給水管32と操作レバー26の両者の位置が互いに干渉しないように位置決めされている。
【0040】
上述した本発明の第1実施形態の便器洗浄水タンクによれば、手洗い給水管32が蓋14eの上面に固定されることなく、蓋14eの後方側の側面14hに固定されているため、蓋14eの上面に形成される手洗い鉢14dのスペースを広くすることができるため、使用者にとって手洗いスペースが広くなり、使い勝手を向上させることができる。また、手洗い給水管32が蓋14eの後方側の側面14hに固定されているため、万一、使用者が手洗い給水管32を誤って手すりとして握ってしまった場合でも、蓋14eが動くため、使用者に対して手洗い給水管32を手すりとして使用することの危険性を知らせることができる。
【0041】
また、本実施形態の便器洗浄水タンクによれば、蓋14eの後方側の側面14hに設けられた固定構造38の一対の突起部38aに対して、手洗い給水管32の下端部に設けられた固定構造38の両フランジ部38f,38h及びボルト38iによって構成される嵌合部を嵌合させることによって、簡易な構成で手洗い給水管32を蓋14eの後方側の側面14hに固定することができる。
さらに、手洗い給水管32が固定される蓋14eの後方側の側面14hの固定部分を外側に凸状に突出した突起部38aにしたことにより、蓋14eを陶器として成形する際に2つの型を用いて成形することができるため、突起部38aの代わりに、蓋14eの後方側の側面14hの内側に向けて凹状に形成された凹部が設けられた蓋14eを成形する場合に比べて、用いる型数が少なく、より簡単に蓋14eを成形することができる。
【0042】
さらに、本実施形態の便器洗浄水タンクによれば、ホース36cの両端部、すなわち、導水管36とホース36cとの接続部(継手36b)、及び、手洗い給水管32の内部ホース32bとホース36cとの接続部(継手36d)がいずれもロータンク本体14c内に位置しているため、万一、導水管36とホース36cとの接続部(継手36b)、又は、手洗い給水管32の内部ホース32bとホース36cとの接続部(継手36d)の少なくともいずれか一方が外れたとしても、ホース36cからロータンク本体14cの外部への水漏れを防ぐことができる。
【0043】
また、本実施形態の便器洗浄水タンクによれば、手洗い給水管32の内部ホース32bとホース36cとの接続部(継手36d)が、手洗い給水管32の下端部に設けられた固定構造38の固定金具38gの固定部38jに固定されているため、手洗い給水管32の内部ホース32bとホース36cとの接続部(継手36d)が固定金具38gの固定部38jから外れるより先に、ロータンク本体14c内でホース36cが外れるため、ホース36cからロータンク本体14cの外部への水漏れを防ぐことができる。
【0044】
つぎに、図10〜図12を参照して、本発明の第2実施形態による便器洗浄水タンクを説明する。
図10は本発明の第2実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管を示す分解斜視図であり、図11は本発明の第2実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管の下端部を拡大して斜め上方から見た拡大斜視図であり、図12は本発明の第2実施形態による便器洗浄水タンクの手洗い給水管の下端部を拡大して斜め上方から見た拡大斜視図である。ここで、図10〜図12において、本発明の第1実施形態による便器洗浄水タンクの部分と同一の部分については同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0045】
図10〜図12に示すように、本発明の第2実施形態による便器洗浄水タンクにおいては、手洗い給水管32の下端部が、その中心軸線C回りに所定の回動角度αの範囲内で回動可能に蓋14eの後方側の側面14hに固定されるようになっている点が、第1実施形態の便器洗浄水タンクと異なっている。
【0046】
また、手洗い給水管32の下端部の上側部分と下側部分には、ゴム製のパッキン等からなるシール部材42a,42bがそれぞれ設けられている。
さらに、手洗い給水管32の下端部の中間部には、嵌合溝44が形成され、手洗い給水管32の底部には、凹溝46が形成されている。
【0047】
また、固定部材40には、手洗い給水管32の下端部を差し込むことにより取り付けが可能な取付け穴40aが形成され、この取付け穴40aの底面には、その取付け穴40aの中心軸回りに回動可能な回動容器40bが設けられている。この回動容器40bは、シール部材42bを備えた手洗い給水管32の下端部の下側部分を収容することができるようになっている。
さらに、回動容器40bの底部には、手洗い給水管32の底部の凹溝46と嵌合可能な突起40cが設けられており、手洗い給水管32の下端部の下側部分を回動容器40bに挿入し、手洗い給水管32の底部の凹溝46と回動容器40bの底部の突起40cとを嵌合させることにより、手洗い給水管32の下端部の下側部分は回動容器40bによって保持されるようになっている。
【0048】
また、固定部材40の側面には、Cリング48が嵌め込み可能な嵌め込み溝40dが形成されている。この固定部材40の嵌め込み溝40dは、手洗い給水管32の下端部を固定部材40の差し込み穴40aに差し込んだ状態で、手洗い給水管32の下端部の中間部における嵌合溝44と対向するように位置しており、手洗い給水管32の下端部の下側部分を固定部材40の差し込み穴40aの回動容器40b内に差し込んだ後、Cリング48を嵌め込み溝40dに嵌め込むことによって、手洗い給水管32の下端部がシール部材42a,42bにより固定部材40の差し込み穴40aに対して隙間なく取り付けられ、かつ固定部材40に対して中心軸線C回りに所定の回動角度αの範囲内で回動することができるようになっている。
【0049】
ここで、手洗い給水管32の下端部が固定部材40に対して中心軸線C回りに回動する所定の回動角度αの範囲については、手洗い給水管32の吐水口32aが常に手洗い鉢14d上面の範囲内に位置するように設定するのが好ましい。
【0050】
さらに、固定部材40は、その側面から両側にほぼ水平方向に延びる一対のフランジ部40eを備えている。このフランジ部40eについては、上述した第1実施形態の便器洗浄水タンクにおける固定金具38gの一対のフランジ部38hと共に、蓋14eの一対の突起部38aを上下方向から挟み込んで嵌合させた状態でボルト38iを締め付けることにより、手洗い給水管32の下端部がその中心軸線C回りに所定の回動角度αの範囲内で回動可能に蓋14eの後方側の側面14hに固定されるようになっている。
【0051】
そして、手洗い給水管32の下端部が蓋14eの後方側の側面14hに固定されると、水落下防止カバー34が、固定部材40及び固定金具38gの外側を覆うように手洗い給水管32の下端部に取り付けられる。
【0052】
上述した本発明の第2実施形態の便器洗浄水タンクによれば、万一、使用者が手洗い給水管32を誤って手すりとして握ってしまった場合でも、手洗い給水管32の下端部が固定部材40に対して中心軸線C回りに所定の回動角度αの範囲内で回動することができるため、使用者に対して手洗い給水管32を手すりとして使うことの危険性を知らせることができる。
【0053】
また、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による便器洗浄水タンクにおいては、手洗い給水管32の外面を伝わる水の床面への落下を防止する落下防止手段の一例として、手洗い給水管32の下端部に水落下防止カバー34の排水路34aを設けた形態について説明したが、このような形態に限定されず、他の形態についても適用可能である。
【0054】
例えば、他の形態として、水落下防止カバー34の排水路34aの代わりとして、手洗い給水管32の外面の伝え水を受け留める桶のような形態や、スポンジ等の吸水性を有する材料を用いてもよい。
【0055】
また、水落下防止カバー34の排水路34aの配置についても、蓋14eとロータンク本体14cの結露防止カバー25との間に配置されており、結露防止カバー25の排水路25aに差し向けた形態について説明したが、結露防止カバー25の排水路25aを直接的に内タンク14f内に差し向けるようにしてもよい。或いは、水落下防止カバー34の排水路34aを手洗い給水管32の手洗い鉢14dの高さを超える中間部32d付近に配置して排水路34aを手洗い鉢14dに差し向けてもよい。
【0056】
さらに、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による便器洗浄水タンクにおいては、一例として、水落下防止カバー34を手洗い給水管32の下端部に取り外し可能に設けることにより、手洗い給水管32とは別体とした形態について説明したが、このような形態に限定されず、水落下防止カバー34を手洗い給水管32に一体に設けてもよいし、水落下防止カバー34の排水路34aに相当する排水路を蓋側の陶器と一体に設けてもよい。
【0057】
また、上述した本発明の第1実施形態及び第2実施形態による便器洗浄水タンクにおいては、一例として、手洗い給水管32と操作レバー26とは、互いに対になる方向に配置することにより、手洗い給水管32と操作レバー26の両者の位置が互いに干渉しないように位置決めした形態について説明したが、このような形態に限定されず、手洗い給水管32と操作レバー26とが互いに同方向に配置された形態にしてもよい。このような形態により、使用者は、操作レバーを操作しながら手洗い給水管を手すりとして掴むことが難しくなるため、手洗い給水管を手すりとして使用する可能性を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 水洗便器
2 ボウル部
4 導水路
6 排水トラップ管路
8 リム
10 リム吐水口
12 ジェット吐水口
14 ロータンク
14a ロータンクの底面
14b 連通口
14c ロータンク本体
14d 手洗い鉢
14e 蓋
14f 内タンク
14g 排水孔
14h 蓋の後方側の側面
14i 突起部
16 排水弁
18 オーバーフロー管
20 給水管
22 ボールタップ
24 フロート
25 結露防止カバー
25a 排水路
25b 漏斗部
25c 排水孔
26 操作レバー
28a,28b 玉鎖
30 アーム
32 手洗い給水管
32a 吐水口
32b 内部ホース
32c 始端部
32d 中間部
34 水落下防止カバー
34a 排水路
34b 切欠き部
34c 外郭
36 導水管
36a 導水管の端部
36b,36d 継手
36c ホース
38 固定構造
38a 突起部
38b 上側突出部
38c 下側突出部
38d 上側棚部
38e 下側棚部
38f フランジ部
38g 固定金具
38h フランジ部
38i ボルト
38j 固定部
40 固定部材
40a 取付け穴
40b 回動容器
40c 突起
40d 嵌め込み溝
40e フランジ部
42a,42b シール部材
44 嵌合溝
46 凹溝
48 Cリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器を洗浄する洗浄水を溜める便器洗浄水タンクであって、
タンク本体と、
このタンク本体の上に着脱可能に固定され且つその上面に手洗い鉢を形成する蓋と、
上記タンク本体へ洗浄水を給水する給水手段と、
この給水手段から分岐し且つ上記手洗い鉢の上方に吐水口を位置させるように延びる手洗い給水管と、を有し、
上記手洗い給水管は、上記蓋の上面に固定されることなく上記蓋の側面に固定されていることを特徴とする便器洗浄水タンク。
【請求項2】
上記蓋は、その側面に設けられ且つその外側に凸状に突出した突起部を備え、上記手洗い給水管は、上記蓋の突起部に嵌合可能な嵌合部を備えている請求項1記載の便器洗浄水タンク。
【請求項3】
更に、上記給水手段と上記手洗い給水管とを接続するホース部を有し、上記給水手段と上記ホース部との接続部、及び、上記手洗い給水管と上記ホース部との接続部は、上記タンク本体内に位置している請求項1又は2に記載の便器洗浄水タンク。
【請求項4】
上記手洗い給水管と上記ホース部との接続部は、上記手洗い給水管の嵌合部を構成する固定部材に固定されている請求項3記載の便器洗浄水タンク。
【請求項5】
上記手洗い給水管は、その下端部の中心軸線回りに所定の回動角度の範囲内で回動可能に上記蓋の側面に固定されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の便器洗浄水タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−216105(P2010−216105A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61704(P2009−61704)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】