説明

便器洗浄装置及び便器システム

【課題】光結合素子及び整流回路を介してポンプを駆動する場合に、短時間でポンプの回転数を上昇及び下降させることができるようにした便器洗浄装置を提供する。
【解決手段】便器洗浄装置は、タンク3内の水を便器5に供給するポンプ4と、該ポンプのモータ4mを駆動する駆動部9と、該駆動部に対してモータの駆動を制御するための指令信号を出力する制御部10とを有する。駆動部は、指令信号を光信号を介して伝達する光結合手段92と、該光結合手段の出力を整流する整流手段93とを有し、該整流手段からの出力をモータに供給する。駆動部は、制御部からの制御信号に応じて整流手段からモータへの出力供給をON/OFF切り換えするスイッチ手段95を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内の水をポンプを用いて便器に供給する便器洗浄装置及びこれを備えた便器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
サイホン式水洗便器は、少ない洗浄水量で、かつ早期にサイホン現象を生じさせるために瞬間的に大流量の洗浄水を必要とする。
【0003】
一方、サイホン式水洗便器に対して、タンクに貯めた洗浄水をポンプを用いて供給する便器洗浄装置が特許文献1にて開示されている。この洗浄装置によれば、ポンプの回転数(吐出流量)を高く設定することで大流量の洗浄水を便器に供給することができる。
【0004】
また、上記のような便器洗浄装置の電気系統では、ポンプモータの駆動を制御するための指令信号を出力する制御部と、該指令信号に基づいてモータを駆動する駆動部とが光結合素子(フォトカプラ)によって電気的に絶縁される場合が多い。そして、モータをPWM制御等で駆動する場合、光結合素子の後段に整流回路が設けられ、該整流回路の出力が駆動信号としてモータに供給される。
【0005】
図15には、従来の便器洗浄装置の電気系統の例を示している。マイクロコンピュータ110には、不図示の操作部から洗浄指令信号が入力される。マイクロコンピュータ110から洗浄指令信号に応じて出力されたポンプモータ出力指令信号は、光結合素子192を介して整流回路193に入力される。そして、整流回路193の出力が駆動信号としてポンプモータ104に入力される。ポンプモータ104は、該駆動信号に応じて駆動され、不図示のポンプを回転させる。
【0006】
図16には、マイクロコンピュータ110から出力される出力指令信号と、ポンプモータ104に入力される駆動信号(Vsp)と、ポンプモータ104の回転数との関係を示している。
【特許文献1】特開2006−104669号公報(段落0047〜0052、図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図15に示すように光結合素子192の後段に整流回路193が設けられている場合、図16に示すように、ポンプモータ出力指令信号のON後、整流回路193の時定数により駆動信号Vspは緩やかに立ち上がる。このため、ポンプモータ104の回転数の上昇も緩やかになり、サイホン現象を生じさせるために必要な大流量に対応する目標回転数Vtに短時間で到達させることが難しい。ポンプの駆動開始後、その回転数が目標回転数に到達するまでの間の期間Tsにおいても洗浄水は便器に供給されるため、無駄に消費される洗浄水量が多くなってしまう。
【0008】
さらに、洗浄終了時においても同様に、ポンプモータ出力指令信号のOFF後、整流回路からの駆動信号が緩やかに立ち下がるため、ポンプの回転もある程度の期間継続される。この期間Teにおいてもポンプによってタンクから洗浄水が排出されるため、この間の排水量を見込んでタンク容量を大きくしておく必要がある。すなわち、タンクが大型化する。
【0009】
本発明は、光結合素子及び整流回路を介してポンプモータを駆動する場合に、短時間で回転数を上昇及び下降させることができるようにした便器洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面としての便器洗浄装置は、タンク内の水を便器に供給するポンプと、該ポンプのモータを駆動する駆動部と、該駆動部に対してモータの駆動を制御するための指令信号を出力する制御部とを有する。駆動部は、指令信号を光信号を介して伝達する光結合手段と、該光結合手段の出力を整流する整流手段とを有し、該整流手段からの出力をモータに供給する。そして、駆動部は、制御部からの制御信号に応じて整流手段からモータへの出力供給をON/OFF切り換えするスイッチ手段を有することを特徴とする。
【0011】
これにより、光結合素子及び整流回路を介してモータ(ポンプ)を駆動する場合に、短時間で回転数を上昇及び下降させることが可能となり、無駄に消費される洗浄水量を減少させたり、タンク容量も小さくしたりすることができる。さらに、洗浄開始から洗浄終了までの時間を短くすることができる。
【0012】
好ましくは、制御部に、指令信号を出力してから所定時間が経過したことに応じてスイッチ手段を整流手段からモータへの出力供給をOFFとする状態からONとする状態に切り換える制御信号を出力させるとよい。また、制御部に、指令信号を出力してから整流手段が少なくともモータの目標回転数に応じた出力を供給可能となった後にスイッチ手段を整流手段からモータへの出力供給をOFFとする状態からONとする状態に切り換える制御信号を出力させるとよい。
【0013】
さらに、制御部が、モータの回転数を制御するための第1及び第2の指令信号を出力し、駆動部が、第1及び第2の指令信号をそれぞれ光信号を介して伝達する第1及び第2の光結合手段と、該第1及び第2の光結合手段の出力をそれぞれ整流する第1及び第2の整流手段とを有する場合には、駆動部に、制御部からの第1及び第2の制御信号に応じて第1及び第2の整流手段からモータへの出力供給をそれぞれON/OFF切り換えする第1及び第2のスイッチ手段を設けてもよい。そしてこの場合、制御部に、第1及び第2のスイッチ手段を、第1及び第2の整流手段からモータへの出力供給を選択的にON/OFF切り換えさせるよう第1及び第2の制御信号を出力させるようにしてもよい。
【0014】
これにより、モータ(ポンプ)の回転数を短時間で変更することができ、その結果、無駄に消費される洗浄水量を減少させたり、必要なタンク容量も小さくしたりすることができる。さらに、洗浄開始から洗浄終了までの時間を短くすることができる。
【0015】
また、本発明の他の一側面としての便器洗浄装置は、タンク内の水を便器に供給するポンプと、該ポンプのモータを駆動する駆動部と、該駆動部に対してモータの駆動を制御するための第1及び第2の指令信号を出力する制御部とを有する。該駆動部は、第1の指令信号を光信号を介して伝達する第1の光結合手段を含み、該第1の光結合手段の出力をモータに供給する第1の駆動部と、第2の指令信号を光信号を介して伝達する第2の光結合手段及び該第2の光結合手段の出力を整流する整流手段を含み、該整流手段からの出力をモータに供給する第2の駆動部とを有する。そして、第2の駆動部は、制御部からの制御信号に応じて整流手段を放電接地する放電手段を有することを特徴とする。
【0016】
この構成では、例えば、まず制御部から整流手段を持たない第1の駆動部に対して第1の指令信号を出力して時間遅れのない出力をモータに供給することで短時間でモータの回転数を上昇させる。その後第2の指令信号を整流手段を持つ第2の駆動部に対して出力し、第2の駆動部からの出力をモータに供給してモータの動作を安定させる。モータ停止時には放電手段により整流手段の出力の放電接地を行わせることで、停止までに要する時間を短くすることができる。この結果、無駄な消費水量を減少させたり、必要なタンク容量を小さくしたりすることができる。さらに、洗浄開始から洗浄終了までの時間を短くすることができる。
【0017】
なお、上記各便器洗浄装置と、ポンプからの水により洗浄される便器とを有する便器システムも本発明の他の側面を構成する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光結合素子及び整流回路を介してポンプのモータを駆動する場合に、短時間で回転数を上昇及び下降させることができる。このため、無駄に消費される洗浄水量を減少させることができるとともに、タンク容量も小さくすることができる。さらに、洗浄開始から洗浄終了までの時間を短くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0020】
図1には、本発明の実施例1であるポンプ式便器洗浄装置と便器を含む便器システムの全体構成を示している。
【0021】
この図において、Lは水道配管に接続された給水路であり、1は該給水路L上に設けられた給水電磁弁である。給水電磁弁1は、水道配管からの水を流路切換電磁弁(以下、単に流路切換弁という)2に供給する開位置と、該供給を遮断する閉位置とに切り換えられる。
【0022】
流路切換弁2は、給水電磁弁1から供給された水を第1の導水路L1に流す状態(以下、リム側位置という)と、第2の導水路L2に流す状態(以下、タンク側位置という)とに切り換えられる。
【0023】
なお、流路切換弁2と第1の導水路L1により便器給水系が構成され、該流路切換弁2と第2の導水路L2によりタンク給水系が構成される。
【0024】
第1の導水路L1は、便器5のリム部5aに水を供給するための管路である。リム部は、便器5の上部開口の周縁部であり、該リム部5aに沿って水を流すことで、ボウル部5bの上方から渦巻き状の水流を生じさせることができる。第2の導水路L2は、タンク3に水を供給するための管路である。
【0025】
タンク3には、該タンク3の上部に設けられた給水口3aを通じて第2の導水路L2から水が供給される。これにより、タンク3内に水が貯まる。タンク3内に貯まった水を、以下の説明ではタンク水Wという。
【0026】
タンク3の下部には、ポンプ4の吸込みポート4aが接続されている。ポンプ4としては、渦巻きポンプ、ディフューザポンプ、カスケードポンプ等、様々な種類のポンプを使用することができる。4mはポンプ4を駆動するポンプモータである。
【0027】
ポンプ4の吐出ポート4bから吐出された水は、便器5のボウル部5bの前側下部に形成されたゼット孔5cに供給される。ゼット孔5cからは、ボウル部5bの後側につながったトラップ排水部5dに向けて水が噴出する。
【0028】
なお、実際には、上記給水路L及び導水路L1,L2には、定流量弁、逆流防止弁、フラッパ弁、絞り、エア逃がし弁、水抜き弁等の部品が設けられているが、図1ではこれらを省略して示している。
【0029】
6はタンク3内の上部に設けられたフロートスイッチであり、タンク水Wが、満水水位に相当する水量まで貯まったことを検出する満水水位検出器である。満水水位は、タンク3内に貯留可能な(タンク3から溢れ出ない)上限水量に基づいて、つまりは該上限水量に対して若干の余裕を見込んだ低めの水位に設定される。
【0030】
7はタンク3内の下部に設けられたフロートスイッチであり、タンク水Wが下限水位に相当する水量まで減少したことを検出する下限水位検出器である。下限水位は、ポンプ4が空転せずに正常に動作可能な(ポンプ4の駆動が許容される)下限水量に基づいて、つまりは該下限水量に対して若干の余裕を見込んだ高めの水位に設定される。
【0031】
10はマイクロコンピュータ(CPU)やメモリ等により構成される制御部であり、メモリ内に格納されたコンピュータプログラムに従って給水電磁弁1や流路切換弁2やポンプモータ4mの駆動を制御する。
【0032】
9は制御部10からの出力指令信号に応じてポンプ4(ポンプモータ4m)を駆動するポンプ駆動部である。
【0033】
15は操作パネルであり、便器洗浄を開始させる洗浄スイッチや、不図示の洗浄便座部を動作させるためのスイッチが設けられている。洗浄スイッチが操作されると、操作パネル15から制御部10に対して洗浄指令信号が出力される。なお、操作パネル15は、電気配線により制御部10に接続されていてもよいし、制御部10に設けられた不図示の受信部に対してリモートコントロール信号としての洗浄指令信号を送信するリモコン操作パネルであってもよい。
【0034】
次に、図2及び図3を用いて、本実施例のポンプモータ4mの駆動制御系(ポンプモータ駆動制御系)について説明する。図2には上記ポンプモータ駆動制御系の全体の構成を示し、図3にはポンプモータ4m内の回路構成を示す。
【0035】
制御部10内には、マイクロコンピュータ10mが設けられており、該マイクロコンピュータ10mは、ポンプモータ出力指令部10aと、ポンプモータ出力制御部10bと、ポンプモータ回転数判別部10cとを含む。ポンプモータ出力指令部10aは、操作パネル15からの洗浄指令信号の入力に応じて、ポンプモータ4mの駆動を制御する(言い換えれば、ポンプモータ駆動部9に対してポンプモータ4mの駆動を指示する)ためのポンプモータ出力指令信号を出力する。
【0036】
ポンプモータ駆動部9は、光結合素子92を有する。ポンプモータ出力指令部10aから出力されたポンプモータ出力指令信号(ON出力)は、該光結合素子92で一旦光信号に変換された後、再び電気信号に変換され、CR回路である整流回路93にて整流される。
【0037】
なお、実際には、ポンプモータ出力指令部10aから出力されたポンプモータ出力指令信号は、後述するLED駆動回路に入力されてトランジスタのスイッチング信号として用いられ、また該LED駆動回路からの出力も光結合素子92のスイッチング信号として用いられ、ポンプモータ出力指令部10aからそのままポンプモータ出力指令信号が整流回路93に入力されるわけではないが、本実施例ではポンプモータ出力指令部10aから出力されたポンプモータ出力指令信号も整流回路93に入力される信号もまとめてポンプモータ出力指令信号と称する。このことは、後述するポンプモータ出力制御信号、ポンプモータ駆動出力、ポンプモータ回転数信号についても同様とする。また、後述する他の実施例でも同様とする。
【0038】
整流回路93から出力された駆動信号としてのポンプモータ駆動出力は、スイッチ手段としてのスイッチング光結合素子95を介してポンプモータ4m内に設けられた電力制御回路42に入力される。
【0039】
スイッチング光結合素子95は、マイクロコンピュータ10m内のポンプモータ出力制御部10bから出力されるポンプモータ出力制御信号に応じてON/OFF切り換えされる。
【0040】
45は交流電源(商用電源)であり、46は該交流電源45からの交流電圧を直流電圧に変換する整流平滑回路である。ポンプモータ4mにはインバータ41aが搭載されており、該インバータ41aには整流平滑回路46からの直流電圧が供給される。電力制御回路42は、ポンプモータ駆動出力に基づいてインバータ41aをPWM制御し、可変周波数及び可変電圧の交流電圧(本実施例では三相交流電圧)をポンプモータ4mのコイル41bに供給する。
【0041】
また、ポンプモータ4m内には、該ポンプモータ4mの回転数を検出するためのホール素子等のセンサ43a及び回転数検出回路43が設けられている。回転数検出回路43からのポンプモータ回転数出力は、ポンプモータ駆動部9に設けられた回転検出光結合素子97及びローパスフィルター回路98を介してポンプモータ回転数信号としてマイクロコンピュータ10m内のポンプモータ回転数判別部10cに入力される。ポンプモータ出力指令部10aは、ポンプモータ回転数判別部10cにて得られた回転数が目標回転数に一致する又は近づくように、ポンプモータ出力指令信号をコントロールする。
【0042】
図4には、ポンプ駆動部9を含むポンプモータ駆動制御系のより具体的な構成を示している。図2に示した構成要素と同じ構成要素には図2と同じ符号を付している。Vcc1〜Vcc3は電源電圧を意味する。
【0043】
図4において、91はマイクロコンピュータ10mからのポンプモータ出力指令信号のON出力に応じて光結合素子92の発光ダイオードを点灯駆動するLED駆動回路である。
【0044】
また、94はマイクロコンピュータ10mからのポンプモータ出力制御信号のON出力に応じてスイッチング光結合素子95の発光ダイオードを点灯駆動するスイッチングLED駆動回路である。スイッチング光結合素子95の発光ダイオードの点灯と消灯に応じてフォトトランジスタが導通状態と非導通状態に切り換わることで、整流回路93からポンプモータ4mへの出力であるポンプモータ駆動出力の供給のON/OFF切り換え(ON/OFF制御)が行われる。
【0045】
図5には、上述したポンプモータ駆動制御系によりポンプモータ4mの駆動を制御する場合のポンプモータ出力指令信号と、ポンプモータ出力制御信号と、ポンプモータ駆動出力Vspと、ポンプモータ4mの回転数との関係を示している。
【0046】
マイクロコンピュータ10mは、時刻t1においてポンプモータ出力指令信号をONとする。これにより、LED駆動回路91によって光結合素子92が駆動され、整流回路93のコンデンサへの充電が開始される。このとき、スイッチング光結合素子95は光信号のやり取りが行われていないOFFの状態である。
【0047】
マイクロコンピュータ10mは、時刻t1から時刻t2までの所定時間を内部タイマによりカウントする。この所定時間の間に、整流回路93のコンデンサには、ポンプモータ4mの目標回転数Vtに対応する電圧(以下、目標電圧という)を発生可能な電荷が蓄積される。ここにいう目標回転数Vtは、便器5にサイホン現象を発生させるのに必要な瞬間流量の水をポンプ4が供給できる回転数に基づいて設定され、実際にはその回転数に若干の余裕を見込んだ高めの回転数である。このことは、後述する他の実施例でも同じである。
【0048】
そして、マイクロコンピュータ10mは、時刻t2においてポンプモータ出力制御信号をONにしてスイッチング光結合素子95を駆動し、光信号がやり取りされるON状態に切り換える。これにより、上記目標電圧を有するポンプモータ駆動出力Vspがポンプモータ4mに入力される。
【0049】
ポンプモータ駆動出力Vspは、ポンプモータ4mへの入力が開始された時点で上記目標電圧を有するため、ポンプモータ4mは、図15及び図16に示した従来構成に比べて短い期間Ts1(<Ts)で目標回転数Vtまで立ち上がる。
【0050】
マイクロコンピュータ10mは、時刻t2から内部タイマにより時刻t3までの時間をカウントし、時刻t3においてポンプモータ出力制御信号をOFFに切り換えてスイッチング光結合素子95をOFF状態に切り換える。またこれと同時又はその直後にポンプモータ出力指令信号もOFFに切り換える。スイッチング光結合素子95がOFF状態に切り換わることで、ポンプモータ4mに入力されていたポンプモータ駆動出力Vspは一瞬で遮断される。このため、ポンプモータ4mは従来構成に比べて短い期間Te1(<Te)で停止する。
【0051】
図6及び図7はそれぞれ、本実施例及び従来構成におけるポンプからの吐出流量の変化を時間を追って示している。図6及び図7の下段には、ポンプモータ駆動出力Vspの変化を示している。
【0052】
これらの図において、ポンプの回転開始後の実線ハッチング部分の面積が、便器洗浄の開始過程において、ポンプからの吐出流量がサイホン現象を発生させるのに必要な瞬間流量Qに到達するまでに便器に供給される水量(すなわち、サイホン現象の発生に寄与しない無駄に消費される水量)を示す。両図の比較から明らかなように、本実施例では吐出流量の立ち上がりが従来構成に比べて急峻であり、このため、無駄な水量を従来構成のそれよりもかなり少なくすることができる。しかも、吐出流量がポンプ回転開始時から流量Qに到達するまでの時間(立ち上がり時間)も、本実施例の方が従来構成よりも大幅に短くなる。
【0053】
一方、両図の点線ハッチング部分の面積は、所定の駆動時間(立ち上がり後、定常運転が終了するまでの時間)の経過時点からポンプが停止するまでの停止過程における便器への供給水量(以下、停止水量という)を示す。ここでの停止水量は、その多くが便器の封水に使用されるので無駄になるわけではないが、ポンプから吐出される水はタンクから供給される水であるので、この停止水量が多いとその分タンクの容量を大きくする必要がある。
【0054】
両図の比較から分かるように、ポンプの停止過程におけるポンプからの吐出流量の低下は本実施例の方が従来構成に比べて急であり、停止水量も本実施例の方が従来構成よりも少なくなる。したがって、本実施例によれば、必要なタンクの容量を従来よりも小さくすることができる。すなわち、タンク3の小型化を図ることができる。
【0055】
また、立ち上がり時間と同様に、ポンプが停止するまでの立ち下がり時間も本実施例の方が従来構成よりも短くなる。したがって、駆動時間と立ち下がり時間との和を実洗浄時間という場合には、本実施例によれば該実洗浄時間を従来よりも短縮することができる。
【0056】
図8は、マイクロコンピュータ10m(制御部10)によって行われる上記ポンプモータ4mの駆動制御を含む便器洗浄動作全体の流れを示すフローチャート及びタイムチャートである。なお、図中の時刻t1〜t3は、図5に示した時刻t1〜t3に対応する。ここでは、前回の便器洗浄動作後、図1に示すタンク3に満水水位までタンク水Wが貯まっており、流路切換弁2はリム側位置にセットされているものとする。
【0057】
ステップ(図ではSと略す)1で、操作パネル15にて便器洗浄スイッチがオンされ、マイクロコンピュータ10mに洗浄指令信号が入力されると、マイクロコンピュータ10mは給水電磁弁1を閉位置から開位置に切り換える。これにより、水道配管からの水が給水電磁弁1及び流路切換弁2を介して第1の導水路L1から便器5のリム部5aに供給され、前リム洗浄が行われる。マイクロコンピュータ10mは、内部タイマにより前リム洗浄時間のカウントを開始する。
【0058】
さらにマイクロコンピュータ10mは、洗浄指令信号の入力に応じてポンプモータ出力指令信号をONにする。
【0059】
そして、前リム洗浄時間が経過すると、ステップ2において、マイクロコンピュータ10mは、ポンプモータ出力制御信号をONにする。ステップ1でポンプモータ出力指令信号を出力した時刻はt1であり、ポンプモータ出力制御信号を出力する時刻はt2である。すなわち、前リム洗浄時間(所定時間)の間に、整流回路93から上記目標電圧を出力可能な状態とする。
【0060】
ポンプモータ出力制御信号が出力されることで、スイッチング光結合素子95を介して目標電圧を有するポンプモータ駆動出力が整流回路93からポンプモータ4mに供給される。これにより、ポンプモータ4mの駆動が開始され、その回転数が急速に上昇する。ポンプ4からの吐出流量も短時間で流量Qに到達し、便器5にサイホン現象が発生する。この洗浄過程をゼット洗浄という。マイクロコンピュータ10mは、所定のゼット洗浄時間のカウントを開始する。
【0061】
なお、マイクロコンピュータ10mは、ポンプモータ4mの駆動開始とともに、流路切換弁2をタンク側位置に切り換えて、第2の導水路L2を通じてタンク3への給水を開始させる。本実施例の特徴であるポンプ4の急速立ち上げ及び急速立ち下げの制御とともに、ポンプ4の駆動中にタンク3への給水を行うことで、さらにタンク3を小型化することが可能となる。
【0062】
そして、ゼット洗浄時間が経過すると、マイクロコンピュータ10mは、ステップ3(時刻t3)において、ポンプモータ出力指令信号をOFFにするとともに、ポンプモータ出力制御信号をOFFにしてスイッチング光結合素子95をOFF状態とする。これにより、整流回路93からポンプモータ4mに対するポンプモータ駆動出力の供給が瞬時に遮断され、ポンプモータ4mの回転数は急速に低下し、短時間のうちにポンプモータ4mは停止する。
【0063】
また、マイクロコンピュータ10mは、流路切換弁2をリム側位置に再び切り換える。これにより、第1の導水路L1及びリム部5aを通じて主として便器5の封水のための給水(後リム洗浄)が行われる。このとき、ポンプモータ4mの回転が停止するまではポンプ4からの便器への給水も行われ、封水のための水の一部となる。
【0064】
マイクロコンピュータ10mは、内部タイマにより後リム洗浄時間のカウントを開始する。
【0065】
後リム洗浄時間が経過すると(時刻ta)、マイクロコンピュータ10mは、ステップ4にて流路切換弁2をタンク側位置に再び切り換える。これにより、第2の導水路L2を通じたタンク3への給水が行われる。
【0066】
そして、ステップ5で満水水位検出器6によりタンク3の満水が検出されると(時刻tb)、マイクロコンピュータ10mは、給水電磁弁1を閉位置に切り換えるとともに、流路切換弁2をリム側位置に切り換える。上述したようにタンク3を小型化することで、タンク3への給水時間も短くて済む。ポンプ4の駆動時間及びタンク3への給水時間が短いことで、次回の洗浄が可能となるまでの時間(満水水位検出器6により満水が検出されるまでの時間)を短くすることができる。以上により、便器洗浄の全動作が終了する。
【0067】
以上説明したように、本実施例では、ポンプモータ4mを駆動するポンプモータ駆動部9は、ポンプモータ出力指令信号を光信号を介して伝達する光結合素子92と、該光結合素子92の出力を整流する整流回路93とを有し、さらに整流回路93からポンプモータ4mへの出力供給をON/OFF切り換えするスイッチング光結合素子95を有する。これにより、サイホン現象の起動に寄与しない無駄な水量を減少させることができ、かつタンク3を小型化することができる。
【実施例2】
【0068】
図9には、本発明の実施例2である便器洗浄装置におけるポンプモータ駆動制御系の構成を示している。本実施例の便器洗浄装置も、実施例1で説明した便器システムに用いられる。また、図9において、図4に示した構成要素と同じ構成要素には図4と同じ符号を付している。
【0069】
本実施例では、実施例1にて説明したLED駆動回路91、光結合素子92、整流回路93、スイッチング光結合素子95及びスイッチングLED駆動回路94により構成される出力指令系を2系統有する。それ以外の構成は実施例1と同じである。
【0070】
一方の出力指令系の構成要素には、図4と同じ符号にAを付加しており、それぞれ第1のLED駆動回路91A、第1の光結合素子92A、第1の整流回路93A、第1のスイッチング光結合素子95A及び第1のスイッチングLED駆動回路94Aと称する。また、他方の出力指令系の構成要素には、図4と同じ符号にBを付加しており、それぞれ第2のLED駆動回路91B、第2の光結合素子92B、第2の整流回路93B、第2のスイッチング光結合素子95B及び第2のスイッチングLED駆動回路94Bと称する。
【0071】
マイクロコンピュータ10mは、第1及び第2のポンプモータ出力指令信号(図にはそれぞれ、ポンプモータ出力指令信号1,2と記す)をそれぞれ、第1及び第2の光結合素子92A,92Bを介して第1及び第2の整流回路93A,93Bに供給する。
【0072】
マイクロコンピュータ10mは、第1及び第2のポンプモータ出力制御信号(図にはそれぞれ、ポンプモータ出力制御信号1,2と記す)をそれぞれ第1及び第2のスイッチング光結合素子95A,95Bに入力してこれらを選択的にON/OFF制御する。これにより、第1及び第2の整流回路93A,93Bからポンプモータ4mへの出力供給を選択的に行わせることができる。
【0073】
言い換えれば、マイクロコンピュータ10mは、第1及び第2のスイッチング光結合素子95A,95Bに、第1及び第2の整流回路93A,93Bからポンプモータ4mへの出力供給を選択的にON/OFF切り換えさせるよう第1及び第2のポンプモータ出力制御信号を出力する。
【0074】
図10には、本実施例のポンプモータ駆動制御系によりポンプモータ4mを制御する場合の第1及び第2のポンプモータ出力指令信号と、第1及び第2のポンプモータ出力制御信号と、ポンプモータ駆動出力Vspと、ポンプモータ4mの回転数との関係を示している。なお、図中の時刻t1,t2,t3は、実施例1の図8に示したt1,t2,t3に相当する。
【0075】
マイクロコンピュータ10mは、時刻t1において第1及び第2のポンプモータ出力指令信号をONにする。これにより、第1のLED駆動回路91Aによって第1の光結合素子92Aが駆動され、第1の整流回路93Aのコンデンサへの充電が開始される。また、第2のLED駆動回路91Bによって第2の光結合素子92Bが駆動され、第2の整流回路93Bのコンデンサへの充電が開始される。このとき、第1及び第2のスイッチング光結合素子95A,95BはOFF状態である。
【0076】
マイクロコンピュータ10mは、時刻t1から時刻t2までの所定時間を内部タイマによりカウントする。この所定時間の間に、第1の整流回路93Aのコンデンサには、サイホン現象を発生させるためのポンプモータ4mの目標回転数(本実施例では、第1の目標回転数という)Vtに対応する目標電圧(以下、第1の目標電圧という)を発生可能な電荷が蓄積される。一方、第2の整流回路93Bのコンデンサには、ポンプモータ4mの第1の目標回転数より低い第2の目標回転数Vt′に対応する第2の目標電圧を発生可能な電荷が蓄積される。
【0077】
そして、マイクロコンピュータ10mは、時刻t2において第1のポンプモータ出力制御信号をONにして第1のスイッチング光結合素子95Aを駆動しON状態に切り換える。これにより、上記第1の目標電圧を有するポンプモータ駆動出力Vspがポンプモータ4mに入力される。ポンプモータ駆動出力Vspは、ポンプモータ4mへの入力が開始された時点で第1の目標電圧を有するため、ポンプモータ4mは、図15及び図16に示した従来構成に比べて短い期間Ts1(<Ts)で第1の目標回転数まで立ち上がる。
【0078】
マイクロコンピュータ10mは、時刻t2から内部タイマにより時刻t2′までの時間をカウントし、時刻t2′において第1のポンプモータ出力制御信号をOFFにして第1のスイッチング光結合素子95AをON状態からOFF状態に切り換える。一方、第2のポンプモータ出力制御信号をONにして第2のスイッチング光結合素子95Bを駆動しON状態に切り換える。これにより、第1の整流回路93Aからの出力供給が瞬時に遮断されるとともに、第2の整流回路93Bから上記第2の目標電圧を有するポンプモータ駆動出力Vspがポンプモータ4mに入力される。
【0079】
また、第1のポンプモータ出力制御信号の出力停止と同時又はその直後に第1のポンプモータ出力指令信号もOFFにする。この後は、ポンプモータ4mは、第2の目標回転数で駆動される。図8のフローチャートで言えば、ステップ2とステップ3の間にこの動作を行うステップが挿入される。
【0080】
こうして、第1の目標回転数での駆動により便器5にサイホン現象が発生させるための瞬間流量を確保した後は、それよりも少ない流量で洗浄水を便器5に供給することになる。便器5への流量を減少させることで、便器5内に浮遊していた汚物を押し流す効果を高めることができる。
【0081】
しかも、第1の整流回路93Aからの出力供給が瞬時に遮断されるため、ポンプモータ4mの回転数(つまりは吐出流量)の切り換えを高速で行うことができる。回転数の切り換えに時間を要すると、その分ポンプモータ4mを駆動すべき時間が長くなり、無駄な洗浄水を便器5に供給することになるが、本実施例のように回転数の切り換えを短時間で行うことで、節水効果を高めることができるとともに、タンク3に必要な容量も小さくすることができる。
【0082】
すなわち、本実施例によれば、汚物の種類に対して流量を変えて洗浄性能を向上させることができるとともに、さらなる節水効果とタンク3の小型化の効果を得ることができる。
【0083】
マイクロコンピュータ10mは、時刻t2′から内部タイマにより時刻t3までの時間をカウントし、時刻t3において第2のポンプモータ出力制御信号をOFFにして第2のスイッチング光結合素子95BをON状態からOFF状態に切り換える。またこれと同時又はその直後に第2のポンプモータ出力指令信号もOFFにする。第2のスイッチング光結合素子95BがOFF状態に切り換わることで、ポンプモータ4mに入力されていたポンプモータ駆動出力は瞬時に遮断される。この遮断直前のポンプモータ4mの回転数がもともと低めであったことと相まって、ポンプモータ4mは従来構成及び実施例1に比べて短い期間Te1′(<Te1<Te)で停止する。
【0084】
図11には、本実施例におけるポンプからの吐出流量の変化を時間を追って示している。図11の下段には、ポンプモータ駆動出力Vspの変化を示している。
【0085】
この図において、ポンプの回転開始後の実線ハッチング部分の面積が、便器洗浄の開始過程において、ポンプからの吐出流量がサイホン現象を発生させるのに必要な瞬間流量Qに到達するまでに便器に供給される無駄な消費水量を示す。本実施例でも、実施例1と同様に、吐出流量の立ち上がりが図7に示した従来構成での立ち上がりに比べて急峻であり、このため、無駄な水量を従来構成のそれよりもかなり少なくすることができる。
【0086】
しかも、吐出流量がポンプ回転開始時から流量Qに到達するまでの時間(立ち上がり時間)も、本実施例の方が従来構成よりも大幅に短くなる。
【0087】
一方、点線ハッチング部分の面積は、所定の駆動時間(立ち上がり後、第2の目標回転数での運転が終了するまでの時間)の経過時点からポンプ4が停止するまでの停止過程における便器への供給水量(停止水量)を示す。本実施例では、ポンプの停止過程におけるポンプからの吐出流量の低下も従来構成に比べて急であるので、停止水量も本実施例の方が従来構成よりも少なくなる。したがって、本実施例によれば、必要なタンクの容量を従来よりも小さくすることができる。
【0088】
また、立ち上げ時間と同様に、ポンプが停止するまでの立ち下がり時間も本実施例の方が従来構成よりも短い。したがって、本実施例によれば、実洗浄時間を従来よりも短縮することができる。
【0089】
本実施例によれば、1つのポンプモータ4mに対して2系統の指令信号系を設け、第1及び第2のポンプモータ出力制御信号による該指令信号系からのポンプモータ4mへの出力供給を選択的にON/OFF切り換え可能としたことで、ポンプ4の駆動中における回転数(つまりは流量)の切り換えを短時間で行うことができる。この結果、無駄な洗浄水の減少、タンク3の小型化及び洗浄に要する時間の短縮化を図ることができる。
【実施例3】
【0090】
図12には、本発明の実施例3である便器洗浄装置におけるポンプモータ駆動制御系の構成を示している。本実施例の便器洗浄装置も、実施例1で説明した便器システムに用いられる。また、図12において、図9に示した構成要素と同じ構成要素には図9と同じ符号を付している。
【0091】
本実施例は、実施例2と同様に、指令信号系を2系統有する。具体的には、実施例2にて説明した第1及び第2のLED駆動回路91A,91Bと、第1及び第2の光結合素子92A,92Bと、第2の整流回路93Bを有する。第1のLED駆動回路91A及び第1の光結合素子92Aにより構成される一方の指令信号系(以下、第1の駆動部ともいう)には、整流回路は設けられていない。
【0092】
また、本実施例では、第2のLED駆動回路91B及び第2の光結合素子92Bを含む他方の指令信号系(以下、第2の駆動部ともいう)には、実施例2で説明した第2のスイッチング光結合素子95Bと第2のスイッチングLED駆動回路94Bに代えて、放電用LED駆動回路94′と、放電用光結合素子95′と、放電回路99とが設けられている。それ以外の構成は実施例1と同じである。本実施例は、特にポンプモータ4m(ポンプ4)の停止までの時間を従来構成に比べて短縮するものである。
【0093】
放電回路99は、ON状態となることで、第2の整流回路93Bのコンデンサを放電接地させる。
【0094】
放電用LED駆動回路94′は、マイクロコンピュータ10mからのポンプモータ出力制御信号のONを受けて放電用光結合素子95′の発光ダイオードを点灯させる。該発光ダイオードの点灯により放電用光結合素子95′のフォトトランジスタが非導通状態から導通状態に切り換わり、放電回路99をOFF状態からON状態とする。
【0095】
図13には、本実施例のポンプモータ駆動制御系によりポンプモータ4mを制御する場合の第1及び第2のポンプモータ出力指令信号と、ポンプモータ出力制御信号と、ポンプモータ駆動出力Vspと、ポンプモータ4mの回転数との関係を示している。なお、図中の時刻t1,t2,t3は、実施例1の図8に示したt1,t2,t3に相当する。ただし、図13では、時刻t1,t2についてはまとめて記載しており、この時刻t1,t2での動作は、第2のポンプモータ出力指令信号がまだ出力されない点を除き実施例2と同様である。
【0096】
なお、時刻t1では、マイクロコンピュータ10mから整流回路を持たない第1の駆動部の第1のLED駆動回路91Aに対して、例えばPWM100%の第1のポンプモータ指令信号を出力し、第1の光結合素子92Aから時間遅れのない出力をポンプモータ4mに供給する。これにより、短時間でポンプモータ4mの回転数を上昇させることができる。
【0097】
時刻t2でのポンプモータ4mの第1の目標回転数Vtまでの急速立ち上げ後、マイクロコンピュータ10mは、時刻t2から内部タイマにより時刻t2″までの時間をカウントし、時刻t2″において第1のポンプモータ出力指令信号をOFFにして第1のスイッチング光結合素子95AをON状態からOFF状態に切り換える。これにより、第1の駆動部からの出力供給が瞬時に遮断される。
【0098】
一方、マイクロコンピュータ10mは、時刻t2から内部タイマによりカウントした時刻t2′において、第2のポンプモータ出力指令信号をONにして第2の整流回路93Bからの出力をポンプモータ4mに入力させる。このとき放電回路99はOFF状態である。
【0099】
このように第1の駆動部からの出力をポンプモータ4mに供給している状態から第2の駆動部からの出力をポンプモータ4mに供給する状態に移行するのは、第1の駆動部は整流回路を持たないために電圧安定度に劣るためである。すなわち、整流回路93Bを持つ第2の駆動部からのポンプモータ4mへの出力供給状態に移行することで、ポンプモータ4mの動作を安定させるためである。
【0100】
時刻t2′からt2″までの間に整流回路93Bのコンデンサにはポンプモータ4mを目標回転数で駆動するための目標電圧を発生可能な電荷が蓄積される。時刻t2″で第1の駆動部からの出力供給が遮断されると、その後は、第2の整流回路93Bからのポンプモータ駆動出力のみがポンプモータ4mに供給され、ポンプモータ4mは、目標回転数Vtで駆動される。
【0101】
マイクロコンピュータ10mは、時刻t2″から内部タイマにより時刻t3までの時間をカウントし、時刻t3においてポンプモータ出力制御信号をONにして放電用光結合素子95′をON状態に切り換え、放電回路99をON状態に切り換える。またこれと同時又はその直後に第2のポンプモータ出力指令信号をOFFにする。
【0102】
放電回路99がON状態に切り換わることで、第2の整流回路93Bのコンデンサに蓄積されていた電荷が瞬時に放電接地される。したがって、ポンプモータ4mへの出力供給も瞬時に遮断される。ポンプモータ4mは従来構成に比べて短い期間Te1″(<Te)で停止する。ポンプモータ4mの停止後は、ポンプモータ出力制御信号をOFFにして放電用光結合素子95′をOFF状態に切り換え、放電回路99をOFF状態に戻す。
【0103】
以上説明したように、本実施例では、ポンプモータ出力制御信号に応じて第2の整流回路93Bを放電接地する放電回路99を有するので、ポンプモータ4mを短時間で停止されることができ、実施例1,2でも説明したように、タンク3の小型化や洗浄時間の短縮化を図ることができる。
【0104】
なお、上記各実施例では、光結合素子をいわゆるローアクティブ型に接続して用いた場合について説明したが、図14に示すように、いわゆるハイアクティブ型に接続して用いてもよい。
【0105】
また、上記実施例1及び実施例2では、スイッチ手段として光結合素子を用いた場合について説明したが、スイッチ手段としては一般的な開閉スイッチ等、他のものを用いてもよい。
【0106】
また、上記各実施例では図1に示した便器システムに適用される便器洗浄装置について説明したが、各実施例での説明は例にすぎず、他のポンプ式便器洗浄装置にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施例である便器洗浄装置と便器を含む便器システムの構成を示すブロック図。
【図2】上記便器洗浄装置の電気回路構成を示すブロック図。
【図3】上記便洗浄装置のポンプモータ内の電気回路構成を示すブロック図。
【図4】実施例1の便器洗浄装置におけるポンプモータ駆動制御系の構成を示す回路図。
【図5】実施例1の便器洗浄装置におけるポンプモータ出力指令信号とポンプモータ出力制御信号とポンプモータ駆動出力とポンプモータの回転数との関係を示すタイムチャート。
【図6】実施例1の便器洗浄装置におけるポンプ吐出流量の変化を示すグラフ図。
【図7】従来の便器洗浄装置におけるポンプ吐出流量の変化を示すグラフ図。
【図8】実施例の便器洗浄装置の便器洗浄動作全体の流れを示すフローチャート及びタイムチャート。
【図9】実施例2の便器洗浄装置におけるポンプモータ駆動制御系の構成を示す回路図。
【図10】実施例2の便器洗浄装置におけるポンプモータ出力指令信号とポンプモータ出力制御信号とポンプモータ駆動出力とポンプモータの回転数との関係を示すタイムチャート。
【図11】実施例2の便器洗浄装置におけるポンプ吐出流量の変化を示すグラフ図。
【図12】実施例3の便器洗浄装置におけるポンプモータ駆動制御系の構成を示す回路図。
【図13】実施例3の便器洗浄装置におけるポンプモータ出力指令信号とポンプモータ出力制御信号とポンプモータ駆動出力とポンプモータの回転数との関係を示すタイムチャート。
【図14】実施例の変形例を示す電気回路図。
【図15】従来の便器洗浄装置におけるポンプモータ駆動制御系の構成を示す回路図。
【図16】従来の便器洗浄装置におけるポンプモータ出力指令信号とポンプモータ駆動出力とポンプモータの回転数との関係を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0108】
1 給水電磁弁
2 流路切換弁
3 タンク
4 ポンプ
4m ポンプモータ
5 便器
6,7 水位検出器
9 ポンプモータ駆動部
10 制御部
10m マイクロコンピュータ
92,92A,92B 光結合素子
93,93A,93B 整流回路
95,95A,95B スイッチング光結合素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク内の水を便器に供給するポンプと、
該ポンプのモータを駆動する駆動部と、
該駆動部に対して前記モータの駆動を制御するための指令信号を出力する制御部とを有し、
前記駆動部は、前記指令信号を光信号を介して伝達する光結合手段と、該光結合手段の出力を整流する整流手段とを有し、該整流手段からの出力を前記モータに供給し、
前記駆動部は、前記制御部からの制御信号に応じて前記整流手段から前記モータへの出力供給をON/OFF切り換えするスイッチ手段を有することを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記指令信号を出力してから所定時間が経過したことに応じて、前記スイッチ手段を前記整流手段から前記モータへの出力供給をOFFとする状態からONとする状態に切り換える制御信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記指令信号を出力してから前記整流手段が少なくとも前記モータの目標回転数に応じた出力を供給可能となった後に、前記スイッチ手段を前記整流手段から前記モータへの出力供給をOFFとする状態からONとする状態に切り換える制御信号を出力することを特徴とする請求項1又は2に記載の便器洗浄装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記モータの駆動を制御するための第1及び第2の指令信号を出力し、
前記駆動部は、前記第1及び第2の指令信号をそれぞれ光信号を介して伝達する第1及び第2の光結合手段と、該第1及び第2の光結合手段の出力をそれぞれ整流する第1及び第2の整流手段とを有し、
前記駆動部は、前記制御部からの第1及び第2の制御信号に応じて、前記第1及び第2の整流手段から前記モータへの出力供給をそれぞれON/OFF切り換えする第1及び第2のスイッチ手段を有し、
前記制御部は、前記第1及び第2のスイッチ手段に、前記第1及び第2の整流手段から前記モータへの出力供給を選択的にON/OFF切り換えさせるよう前記第1及び第2の制御信号を出力することを特徴とする請求項1に記載の便器洗浄装置。
【請求項5】
タンク内の水を便器に供給するポンプと、
該ポンプのモータを駆動する駆動部と、
該駆動部に対して前記モータの駆動を制御するための第1及び第2の指令信号を出力する制御部とを有し、
前記駆動部は、
前記第1の指令信号を光信号を介して伝達する第1の光結合手段を含み、該第1の光結合手段の出力を前記モータに供給する第1の駆動部と、
前記第2の指令信号を光信号を介して伝達する第2の光結合手段及び該第2の光結合手段の出力を整流する整流手段を含み、該整流手段からの出力を前記モータに供給する第2の駆動部とを有し、
前記第2の駆動部は、前記制御部からの制御信号に応じて前記整流手段を放電接地する放電手段を有することを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記ポンプの駆動を開始させる場合に、前記第1の指令信号を出力した後に前記第2の指令信号を出力することを特徴とする請求項5に記載の便器洗浄装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記モータの駆動を停止させる場合に前記制御信号を出力することを特徴とする請求項5又は6に記載の便器洗浄装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の便器洗浄装置と、
前記ポンプからの水により洗浄される便器とを有することを特徴とする便器システム。


【図5】
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【図10】
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【図16】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−214905(P2008−214905A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51433(P2007−51433)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】