説明

便器洗浄装置及び便器装置

【課題】十分な洗浄能力を有した便器洗浄装置と、この便器洗浄装置を備えた便器装置を提供する。
【解決手段】蓄圧タンク20の内部はダイヤフラム23によって蓄圧室21と吸気室22とに区画されている。蓄圧室21は逆止弁Vを備えた流入管11を介して給水管10に接続されていると共に、開閉弁Vを備えた蓄圧水放出用流路31及びジェット用流路32を介してリム3に接続されている。吸気室22は連通配管30を介して排水路5に接続されている。洗浄時、蓄圧室21内から蓄圧水放出用流路31を介して蓄圧水が流出すると、ダイヤフラム23が上方に移動し、排水路5内の空気が連通配管30を介して吸気室22内に吸引される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に洗浄水を供給する便器洗浄装置に係り、特にロータンクやハイタンクなどのタンクを設置せず、水道水の圧力によって洗浄水を洋風便器に供給する便器洗浄装置の改良に関する。また、本発明は、この便器洗浄装置を備えた便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられてきた洋風便器は、便器本体の後部上面にロータンクを設置し、該ロータンク内の水をリム等へ供給するロータンク式のものが多い。このロータンク式洋風便器は、ロータンクの分だけ後方に出張るところから、近年、ロータンクを省略し、水道水圧によって洗浄水を給水することにより洋風便器の後方出張りを著しく小さくした洋風便器が急速に普及しつつある。
【0003】
このように、水道水圧によって便器に給水する場合、水道配管内に水が流れると流動抵抗が発生するため、一般に給水時の水道水圧は静水時の水道水圧より低くなる。そして、この流動抵抗は流量が多いほど大きくなることから、水道水圧によって便器に給水する場合、十分な水勢によって洗浄水を便器に供給することが困難となり、洗浄能力が低下する。この対策として、水道配管の途中に蓄圧器を設けることが特開平7−300891号に記載されている。特開平7−300891号公報の洋風便器設備にあっては、洋風便器はブローアウト式洋風便器であり、洋風便器に供給される洗浄水の全量が蓄圧器によって蓄圧される。
【0004】
また、洗浄能力を向上させるための別の技術として、便鉢のトラップ部よりも下流の排水路内の空気を吸気して、サイホン現象を起こし易くすることも従来より知られている。例えば、特開平7−54388号公報には、便器給水管のバイパス管に流路を絞ったスロートからなる減圧機構を設け、弾力性を有するベローズを収納したブースを減圧機構と連結し、ベローズをコネクターチューブを介して便器の排水路に連通させた構成が記載されている。
【特許文献1】特開平7−300891号公報
【特許文献2】特開平7−54388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
便器の洗浄能力を向上させるために上記特開平7−300891号公報の蓄圧器及び特開平7−54388号公報の吸引機構の両方を用いる場合、一方を用いる場合と比べてスペースを要すると共に、設置に手間がかかる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消し、十分な洗浄能力を有した便器洗浄装置と、この便器洗浄装置を備えた便器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(請求項1)の便器洗浄装置は、便器洗浄水を貯水する蓄圧タンクを有する便器洗浄装置において、該蓄圧タンク内は区画手段によって便器洗浄水を貯水する蓄圧室と吸気室とに区画されており、該吸気室内及び該蓄圧室内の少なくとも一方に該区画手段を蓄圧室側に付勢する付勢手段が設けられており、該吸気室を便器の便鉢トラップ部の2次側に連通する連通手段を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項2の便器洗浄装置は、請求項1において、前記蓄圧室は、便器へ洗浄水を供給する給水管に逆止弁を介して接続されており、該逆止弁は、該給水管から該蓄圧室に向かってのみ水が流れることを許容するものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3の便器洗浄装置は、請求項1又は2において、前記区画手段はダイヤフラムであることを特徴とするものである。
【0010】
本発明(請求項4)の便器装置は、便鉢及び該便鉢の下部の便鉢トラップ部を有する便器と、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の便器洗浄装置とを備えた便器装置であって、前記吸気室が前記連通手段を介して該便鉢トラップ部の2次側に連通されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項5の便器装置は、請求項4において、前記蓄圧室が蓄圧水放出用流路を介して便器のジェット孔及びリムの少なくとも一方に蓄圧水を供給可能とされていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項6の便器装置は、請求項5において、前記蓄圧水放出用流路に蓄圧水放出弁が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項7の便器装置は、請求項4ないし6のいずれか1項において、便器排水口と前記弁鉢トラップ部の2次側との間に、該2次側が負圧となったときに排水管と該2次側とを隔絶するための第2トラップ部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明(請求項1)の便器洗浄装置及びこの便器洗浄装置を備えた便器装置(請求項4)にあっては、吸気室が連通手段を介して便鉢トラップ部の2次側と連通していることから、便器洗浄時に蓄圧室内の水が便器内に供給されて蓄圧室内の圧力が低下すると、区画手段が付勢手段からの付勢力のために蓄圧室側に移動し、これにより、トラップ部の2次側の滞留空気が連通手段を介して吸気室内に吸引される。従って、トラップ部の2次側の圧力が低下し、サイホン現象が起こり易くなる。
【0015】
この便器洗浄装置は、蓄圧タンク内のうち区画手段を隔てた蓄圧室と反対側の部分を吸気室として利用することにより、別途吸気装置を設置することが不要となる。
【0016】
請求項2の便器洗浄装置にあっては、蓄圧室は、便器へ洗浄水を供給する給水管に逆止弁を介して接続されており、該逆止弁は、該給水管から該蓄圧室に向かってのみ水が流れることを許容するものであることから、給水時に流動抵抗によって給水管内の水圧が低下しても、蓄圧室内の水が給水管側に逆流することが防止される。
【0017】
この便器洗浄装置の区画手段がダイヤフラムである場合(請求項3)、蓄圧タンク内を蓄圧室と吸気室とに確実に区画することができると共に、蓄圧タンク内をスムーズに移動することができる。
【0018】
請求項5の便器装置にあっては、蓄圧室から蓄圧水放出用流路を介して便器のジェット孔及びリムの少なくとも一方に蓄圧水を供給することができる。
【0019】
この蓄圧水放出用流路に蓄圧水放出弁が設けられている場合(請求項6)、非洗浄時にこの蓄圧水放出弁を閉弁することにより、蓄圧室内に蓄圧水が貯留される。この蓄圧水放出弁を開弁することにより、蓄圧水が蓄圧室から便器のジェット孔及びリムの少なくとも一方に供給される。
【0020】
請求項7の便器装置にあっては、便鉢トラップ部の2次側の空気が連通手段を介して吸気室内に吸気されると、該2次側が負圧となり、該第2トラップ部によって排水管と該2次側とが隔絶される。このため、便鉢トラップ部2次側内に排水管から空気が逆流せず、該便鉢トラップ部2次側内の負圧が十分に高くなり、便鉢トラップ部に強力なサイホン流を速やかに形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。第1図〜第3図は実施の形態に係る便器洗浄装置を備えた便器装置の縦断面図であり、第1図は非洗浄時の状態を示す縦断面図、第2図は給水管からの給水のみによって洗浄している状態を示す縦断面図、第3図は給水管及び蓄圧タンクからの給水によって洗浄している状態を示す縦断面図である。
【0022】
陶器製の洋風便器本体1における便鉢2の上部内周にリム3が設けられている。便鉢2の下部の便鉢トラップ部4にサイホン排出流を誘起するための水(ジェット水)を噴出するジェットノズル8が設けられている。この便鉢トラップ部4は排水路5を介して第2トラップ部6と連通している。この排水路5は、該便鉢トラップ部4から斜め上方に立ち上る上昇部と、該上昇部に連なり、下方に立ち下がって第2トラップ部6と連なる立下部とからなる。
【0023】
この第2トラップ部6は排水口7と連通している。この第2トラップ部6は、該排水路5の管壁下部の最低位部6bの下側を回り込み、次いで溢出用の最高位部を乗り越えて排水口7に到るS字状流路よりなる。この第2トラップ部6の該最高位部6aの高さは、該最低位部6bよりも若干低くなっている。
【0024】
便器本体1のリム3に対し、開閉弁Vを備えた給水管10が接続されている。この給水管10の開閉弁Vより上流側から、逆止弁Vを備えた流入管11が分岐しており、この流入管11は蓄圧タンク20上部の流入ポートに接続されている。
【0025】
なお、第1図〜第3図では、この蓄圧タンク20が便器本体10よりも上位に図示されているが、実際にはこの蓄圧タンクは便器本体10の後部の側方に配置されている。ただし、蓄圧タンクの配置箇所はこれに限定されるものではない。
【0026】
この蓄圧タンク20の内部はタイヤフラム23によって蓄圧室21と吸気室22とに区画されている。ダイヤフラム23の中央部の吸気室22側の面に、ダイヤフラム23をバックアップする支体24の上面が接着されている。
【0027】
この支体24は、上面が閉鎖され、下方に向って開放する有蓋無底の円筒形カップ状のものである。この支体24と吸気室22の底部との間に、支体24を上方(蓄圧室21側)に付勢する付勢手段としてのコイルバネ25が設けられている。
【0028】
この吸気室22内が、連通手段としての連通配管30を介して、排水路5の上部に連通されている。
【0029】
蓄圧室21の上部の流出用ポートに、開閉弁Vを備えた蓄圧水放出用流路31の一端が接続されている。この蓄圧水放出用流路31の他端はリム3に接続されていると共に、ジェット用流路32を介してジェットノズル8に接続されている。
【0030】
なお、開閉弁V、Vはモータやソレノイド等によって駆動される電気駆動式のものであり、図示しない弁制御回路によって開閉動作する。この弁制御回路は、フラッシュスイッチや人体検知センサからの信号に基づいて開閉弁V、Vへ所定のタイミングで開弁信号あるいは閉弁信号を出力する。
【0031】
このように構成された便器洗浄装置を備えた便器装置の作動について次に説明する。
[蓄圧水貯留]
非洗浄時には、第1図の通り、開閉弁V、Vは閉止されており、給水管10から流入管11及び逆止弁Vを介して蓄圧室21内に水が徐々に流入し、蓄圧水が貯留される。この蓄圧水の静水圧は、給水管10内の給水圧と同等である。なお、給水管10の静水圧は、コイルバネ25の付勢圧力よりも高いため、蓄圧室21内へ給水管10から水が徐々に流入すると支体24は下方に徐々に移動し、最終的には第1図の通り、支体24の下端が吸気室22の底面に当接する。
【0032】
[リム洗浄]
便器洗浄を開始する場合、第2図の通り、開閉弁Vは閉のままとしておき、先ず開閉弁Vを開弁させて、給水管10からリム3に洗浄水を給水する。このリム洗浄により、便鉢2の内面が洗浄される。このとき、給水管10内が通水状態となるため、給水管10内の水圧は非洗浄時における給水管10内の静水圧と比べて低下する。このため、給水管10内の水圧は蓄圧室21内の水圧より低くなるが、流入管11に逆止弁Vが設けられているため、蓄圧室21から給水管10に水が逆流することが防止される。
【0033】
[ジェット作動・汚水排出]
次いで、第3図の通り、開閉弁Vを開弁状態としたまま、開閉弁Vを開弁する。これにより、ダイヤフラム23がコイルバネ25によって押し上げられ、蓄圧室21内の蓄圧水が蓄圧水放出用流路31を介してリム3に供給されると共に、ジェット用流路32を介してジェットノズル8に供給される。これにより、リム洗浄が十分に行なわれると共に、便鉢トラップ部4に強力なサイホン排出流が形成され、便鉢2内の汚物が排水管へ排出される。また、蓄圧室21内の蓄圧水を放出すべくダイヤフラム23が上昇した場合、吸気室22内に負圧が発生し、排水路5内の空気が連通配管30を介して吸気室22内に吸い出され、便鉢トラップ部4の水が排水路5側へ吸引され、便鉢トラップ部4の排水路5へ向う流れが助勢される。この流れに対しジェットノズル8からの噴出水勢が加わることにより、便鉢トラップ部4に強力なサイホン流が形成される。
【0034】
なお、この実施の形態では、排水路5内の空気が吸気室22へ吸い出されたときに、第2トラップ部6の水面が上方に吸い上げられる。これにより、第2トラップ部6内のトラップ水が管壁最低位部6bに接触し、排水路5と排水管側とが隔絶され、排水管側から排水路5へ空気が流入することが防止される。このため、排水路5内の負圧が十分に強くなり、便鉢トラップ部4内の水が排水路5側へ向う流れが強化され、強力なサイホン排出流が確実に形成される。
【0035】
[トラップ水貯留]
蓄圧室21内の水のほぼ全量が放出される程度の時間が経過すると、開閉弁Vが閉弁される。便鉢2内の汚水がほぼ流出すると、便鉢トラップ部4におけるサイホンがブレークし、便鉢2の底部に徐々にトラップ水が貯留し始める。便鉢2内に所定量のトラップ水が溜まる時間が経過した後、開閉弁Vが閉弁される。
【0036】
この開閉弁Vの閉弁に伴い、給水管10内の水圧は静水圧にまで上昇し、給水管10内から流入管11及び逆止弁Vを介して徐々に水が蓄圧室21内に流入し、最終的に第1図の通り、蓄圧室21内に蓄圧水が満水状に貯留される。
【0037】
この実施の形態に係る便器洗浄装置は、上記の通り、蓄圧タンク20内のうちダイヤフラムを隔てた蓄圧室21と反対側の部分を吸気室22として利用することにより、別途吸気装置を設置することが不要となる。
【0038】
第4図〜第7図は別の実施の形態に係る便器洗浄装置を備えた便器装置の縦断面図であり、第4図は非洗浄時の状態を示す縦断面図、第5図は給水管からの給水のみによって洗浄している状態を示す縦断面図、第6図は給水管及び蓄圧タンクからの給水によって洗浄している状態を示す縦断面図、第7図は洗浄後に蓄圧タンク内に蓄水している状態を示す縦断面図である。第8図は第4図の蓄圧タンクの拡大断面図である。
【0039】
第8図の通り、蓄圧タンク20Aの底面に、空気が排水路5側から吸気室22に向かってのみ流れることを許容し、逆方向の流れを阻止する逆止弁装置26が設けられている。また、蓄圧タンク20Aの底面に、吸気室22内の空気圧力が所定以上になると開弁するリリーフ弁装置27が設けられている。これらの逆止弁装置26及びリリーフ弁装置27の下側を覆うようにケーシング28が設けられており、このケーシング28内と排水路5とが連通配管30Aを介して連通されている。
【0040】
この逆止弁装置26及びリリーフ弁装置27の構造の詳細は、次の通りである。蓄圧タンク20Aの底面に開口26a、27aが設けられている。開口26aの周縁から上方に向って環状の弁座26bが突設されており、該弁座26bに対し弁体26cが上方から着座するように配置されている。なお、弁体26cは円板部と、この円板部の中央から下方に向って突出する軸部とを有しており、該円板部が該弁座26bに対し上方から接離し、軸部が開口26a内に挿入されている。
【0041】
開口27aの周縁から下方に向って、環状の弁座27bが突設されており、弁体27cが該弁座27bに対し下側から着座可能とされている。この弁体27cは、円板部と、この円板部の中方から上方に向って突出する軸部とを有しており、該円板部27cが弁座27bに対し下方から接離し、軸部が開口27a内に挿入されている。この弁体27cの円板部とケーシング28の底面との間にコイルバネ27dが設けられている。このコイルバネ27dにより、弁体27cは弁座27bに押し付けられている。開口26a、27aの上方には、弁体26cが開口26aから離脱することを防止するための金網29が設けられている。
【0042】
本実施の形態に係る便器洗浄装置及び該便器洗浄装置を有する便器装置のその他の構成は第1図〜第3図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0043】
このように構成された便器洗浄装置を備えた便器装置の作動について次に説明する。
[蓄圧水貯留]
非洗浄時には、第4図の通り、開閉弁V、Vは閉止されており、給水管10から流入管11及び逆止弁Vを介して蓄圧室21内に水が徐々に流入し、蓄圧水が貯留される。この蓄圧水の静水圧は、給水管10内の給水圧と同等である。給水管10の静水圧は、コイルバネ25の付勢圧力よりも高いため、蓄圧室21内へ給水管10から水が徐々に流入すると支体24は下方に徐々に移動し、最終的には第4図の通り、支体24の下端が吸気室22の底面に当接する。
【0044】
このように支体24が下方に徐々に移動すると、吸気室22内の空気が加圧されて所定値以上となり、弁体27cが弁座27bから離座してリリーフ弁装置27が開弁される。そして、吸気室22内の空気はこのリリーフ弁装置27及び連通配管30Aを通って排水路5に排気される。支体24の下端が吸気室22の底面に当接し、支体24の移動が停止すると、第4図の通り、弁体27cはコイルバネ27dの付勢圧力によって弁座27bに押し付けられ、リリーフ弁装置27が閉弁する。
【0045】
[リム洗浄]
便器洗浄を開始する場合、第5図の通り、開閉弁Vは閉のままとしておき、先ず開閉弁Vを開弁させて、給水管10からリム3に洗浄水を給水する。このリム洗浄動作は、第1図〜第3図のリム洗浄と同じである。
【0046】
[ジェット作動・汚水排出]
次いで、第6図の通り、開閉弁Vを開弁状態としたまま、開閉弁Vを開弁する。これにより、ダイヤフラム23がコイルバネ25によって押し上げられ、蓄圧室21内の蓄圧水が蓄圧水放出用流路31を介してリム3に供給されると共に、ジェット用流路32を介してジェットノズル8に供給される。これにより、リム洗浄が十分に行なわれると共に、便鉢トラップ部4に強力なサイホン排出流が形成され、便鉢2内の汚物が排水管へ排出される。また、蓄圧室21内の蓄圧水を放出すべくダイヤフラム23が上昇した場合、吸気室22内に負圧が発生し、弁体26cが吸気室22側に吸引されて逆止弁装置26が開弁する。これにより、排水路5内の空気が連通配管30及び逆止弁装置26を介して吸気室22内に吸引され、便鉢トラップ部4に強力なサイホン流が形成される。このジェット作動・汚水排出動作は、第1図〜第3図のジェット作動・汚水排出動作と同一である。
【0047】
なお、この実施の形態でも、排水路5内の空気が吸気室22へ吸い出されたときに、第2トラップ部6の水面が上方に吸い上げられ、第2トラップ部6内のトラップ水が管壁最低位部6bに接触し、排水路5と排水管側とが隔絶され、排水管側から排水路5へ空気が流入することが防止される。
【0048】
[トラップ水貯留]
蓄圧室21内の水のほぼ全量が放出される程度の時間が経過すると、開閉弁Vが閉弁される。便鉢2内の汚水がほぼ流出すると、便鉢トラップ部4におけるサイホンがブレークし、便鉢2の底部に徐々にトラップ水が貯留し始める。便鉢2内に所定量のトラップ水が溜まる時間が経過した後、第7図の通り、開閉弁Vが閉弁される。
【0049】
第1図〜第3図の場合と同じく、この開閉弁Vの閉弁に伴い、給水管10内の水圧は静水圧にまで上昇し、給水管10内から流入管11及び逆止弁Vを介して徐々に水が蓄圧室21内に流入し、最終的に第4図の通り、蓄圧室21内に蓄圧水が満水状に貯留される。
【0050】
本実施の形態に係る便器洗浄装置にあっては、逆止弁装置26とリリーフ弁装置27とが並列に設けられている。このように逆止弁装置26とリリーフ弁装置27とを並列に設けると、蓄圧室21と吸気室22とを隔てるダイヤフラム23に万一若干の破損が生じた場合に、蓄圧室21から排水路5へ水が流出することが防止ないし抑制される。
【0051】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態において蓄圧室21内の蓄圧水をリム3及びジェットノズル8のいずれか一方に供給するようにしてもよい。
【0052】
また、逆止弁V2、開閉弁V3、蓄圧水放出用流路31及びジェット用流路32を省略し、前記特開平7−300891号公報のように洗浄時に蓄圧室21内の蓄圧水を流入管11及び給水管10を介して便器本体1に供給するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施の形態に係る便器洗浄装置を備えた便器装置の非洗浄時の状態を示す縦断面図である。
【図2】実施の形態に係る便器洗浄装置を備えた便器装置の給水管からの給水のみによって洗浄している状態を示す縦断面図である。
【図3】実施の形態に係る便器洗浄装置を備えた便器装置の給水管及び蓄圧タンクからの給水によって洗浄している状態を示す縦断面図である。
【図4】別の実施の形態に係る便器洗浄装置を備えた便器装置の非洗浄時の状態を示す縦断面図である。
【図5】別の実施の形態に係る便器洗浄装置を備えた便器装置の給水管からの給水のみによって洗浄している状態を示す縦断面図である。
【図6】別の実施の形態に係る便器洗浄装置を備えた便器装置の給水管及び蓄圧タンクからの給水によって洗浄している状態を示す縦断面図である。
【図7】別の実施の形態に係る便器洗浄装置を備えた便器装置の洗浄後に蓄圧タンク内に蓄水している状態を示す縦断面図である。
【図8】図4の蓄圧タンクの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 便器本体
2 便鉢
3 リム
4 便鉢トラップ部
5 排水路
6 第2トラップ部
7 排水口
8 ジェットノズル
10 給水管
11 流入管
20,20A 蓄圧タンク
21 蓄圧室
22 吸気室
23 ダイヤフラム
24 弁体
25 コイルバネ
26 逆止弁装置
27 リリーフ弁装置
30,30A 連通配管
31 蓄圧水放出用流路
32 ジェット用流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器洗浄水を貯水する蓄圧タンクを有する便器洗浄装置において、
該蓄圧タンク内は区画手段によって便器洗浄水を貯水する蓄圧室と吸気室とに区画されており、該吸気室内及び該蓄圧室内の少なくとも一方に該区画手段を蓄圧室側に付勢する付勢手段が設けられており、
該吸気室を便器の便鉢トラップ部の2次側に連通する連通手段を備えたことを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記蓄圧室は、便器へ洗浄水を供給する給水管に逆止弁を介して接続されており、
該逆止弁は、該給水管から該蓄圧室に向かってのみ水が流れることを許容するものであることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記区画手段はダイヤフラムであることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項4】
便鉢及び該便鉢の下部の便鉢トラップ部を有する便器と、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の便器洗浄装置とを備えた便器装置であって、
前記吸気室が前記連通手段を介して該便鉢トラップ部の2次側に連通されていることを特徴とする便器装置。
【請求項5】
請求項4において、前記蓄圧室が蓄圧水放出用流路を介して便器のジェット孔及びリムの少なくとも一方に蓄圧水を供給可能とされていることを特徴とする便器装置。
【請求項6】
請求項5において、前記蓄圧水放出用流路に蓄圧水放出弁が設けられていることを特徴とする便器装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項において、便器排水口と前記弁鉢トラップ部の2次側との間に、該2次側が負圧となったときに排水管と該2次側とを隔絶するための第2トラップ部が設けられていることを特徴とする便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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