説明

便器洗浄装置

【課題】蓄圧タンクの必要強度を緩和することができる蓄圧装置を備えた便器洗浄装置を提供する。
【解決手段】便器非使用時には貯水タンク60には蓄圧水を貯水しておかない。フラッシュスイッチが操作されると、ソレノイド57が励磁し、弁体55を引き上げて直動形電磁弁50を開弁する。これにより、分岐管30を介して水道水が静水圧にて貯水タンク60内に流入し、貯水される。その後、弁装置22を開弁する。これにより、リム3へ給水され、鉢部2の内面が洗浄される。次いで、電磁弁50を開とすると共に、弁装置23を開弁する。これにより、貯水タンク60内の蓄圧水と給水ホース11からの水とがジェットノズル5を介してトラップ部に噴出し、トラップ部にサイホンが迅速かつ強力に発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋風便器に洗浄水を供給する便器洗浄装置に係り、さらに詳しくは、ロータンクやハイタンクなどのタンクを設置せず、水道水の水圧によって洗浄水を洋風便器に供給する便器洗浄装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられてきた洋風便器は、便器本体の後部上面にロータンクを設置し、該ロータンク内の水をリム等へ供給するロータンク式のものが多い。
【0003】
このロータンク式洋風便器は、ロータンクの分だけ後方に出張るところから、近年、ロータンクを省略し、水道水圧によって洗浄水を給水することにより洋風便器の後方出張りを著しく小さくした洋風便器が急速に普及しつつある。この水道水圧による便器洗浄装置にあっては、便鉢内から汚物やペーパーを強力に排出するために、便器のトラップ部にジェット孔から水を噴出させてサイホン排出水流を形成するサイホンジェット式洗浄方式が採用されている。
【0004】
ところで、水道水圧によって便器に給水する場合、水道水圧が低いと十分な水勢によって洗浄水を便器に供給することができない。この対策として、特開2005−120742号には、給水配管の途中に弁装置付き配管を介して蓄圧タンクを接続し、ジェット動作中に蓄圧水を水道水に対し付加することが記載されている。
【0005】
同号公報で用いられている上記弁装置はパイロット弁である。このパイロット弁では、弁体の背後側の管制室と蓄圧タンクとは、弁体に設けられた弁小孔を介して連通している。また、この管制室は、プランジャ弁によって開閉されるパイロット小孔を介して水道配管側と連通可能とされている。弁体の背後側の管制室に水圧を加えることにより弁体が着座して閉弁する。また、この管制室内の水が弁小孔又はパイロット小孔を介して抜けることにより、弁体が離座して開弁する。
【0006】
水道配管からリム、ジェットノズルのいずれにも水道水を放出していないときに、水道水圧によって弁体が押し上げられ、蓄圧タンク内ヘ水道水が流入する。蓄圧タンク内の圧力が所定圧に達すると、弁体が着座し、閉弁する。従って、便器の非使用時には蓄圧タンクは常時、蓄圧貯水状態となっている。
【特許文献1】特開2005−120742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特開2005−120742号公報の洋風便器設備にあっては、蓄圧タンク内が便器非使用時に常に蓄圧貯水状態となっているため、蓄圧タンクの要求強度が高くなり、コスト高となる。
【0008】
本発明は、上記問題点を解決し、蓄圧タンクの必要強度を緩和することができる蓄圧装置を備えた便器洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の便器洗浄装置は、洋風便器に水道水圧によって水を供給する給水手段と、該給水手段から連通路を介して水道水が水道水圧によって導入されると共に、該連通路を介して該給水手段に対し蓄圧水を供給可能な蓄圧装置と、該連通路に設けられた弁とを有する便器洗浄装置において、該弁が直動形電磁弁であることを特徴とするものである。
【0010】
請求項2の便器洗浄装置は、請求項1において、該直動形電磁弁は、弁座と、該弁座に対し前記給水手段側から着座する弁体と、該弁体を着座方向に押圧するバネと、該バネの押圧力と反対方向に該弁体を付勢可能なソレノイドとを有することを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の便器洗浄装置は、請求項1又は2において、該蓄圧装置は、貯水タンクと、該貯水タンクとは別体に設けられたエアータンクと、該貯水タンクと該エアータンクとを連通する連通手段と、を有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の便器洗浄装置は、請求項3において、前記蓄圧装置は、前記蓄圧装置内のエアーを加圧するためのエアーポンプを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の便器洗浄装置は、請求項4において、前記蓄圧装置内のエアー圧を検知するエアー圧検知手段と、該エアー圧検知手段の検知圧力に基づいて前記エアーポンプの作動を制御する手段を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
請求項6の便器洗浄装置は、請求項4又は5において、前記貯水タンクに、該貯水タンク内のエアーが前記便器側に流出することを阻止するエアー流出阻止手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項7の便器洗浄装置は、請求項6において、前記貯水タンクの底部に水の給排口が設けられており、前記エアー流出阻止手段は、該給排口に設けられており、上方から浮子が着座可能な弁シート部と、該貯水タンク内の水面に浮上している浮子とを備えてなり、該貯水タンク内の水位が所定以下になると該浮子が該弁シート部に着座して該給排口が閉鎖されることを特徴とするものである。
【0016】
請求項8の便器洗浄装置は、請求項1ないし7のいずれか1項において、洋風便器の便器洗浄を開始するためのフラッシュスイッチが設けられており、前記直動形電磁弁は、該フラッシュスイッチが操作されると、所定時間開弁し、水道水を前記蓄圧装置内に流入させて蓄圧水を貯水することを特徴とするものである。
【0017】
請求項9の便器洗浄装置は、請求項8において、前記洋風便器は、トラップ内ヘ水を噴出するジェットノズルを備えており、前記給水手段は、洋風便器のリムと該ジェットノズルとにそれぞれ給水可能であり、該給水手段は、前記蓄圧装置内に所定量の水道水が流入すると直動形電磁弁を閉弁させ、その後、直動形電磁弁を消磁状態としたままリムにのみ水道水を供給し、その後、リムへの給水を停止し、ジェットノズルへ水道水を供給すると共に、直動形電磁弁を励磁状態として蓄圧水を供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明(請求項1)の便器洗浄装置にあっては、蓄圧装置に水道水を出し入れするための連通路に直動形電磁弁を設けている。この直動形電磁弁は、ソレノイドの励磁、消磁によって連通路の迅速な開閉が可能である。そのため、便器洗浄の直前に水道水を導入して貯水するようにし、便器非使用時にはタンク内を蓄圧貯水状態としないでおくことができる。これにより、蓄圧装置のタンクの必要強度を緩和することができる。
【0019】
請求項2の便器洗浄装置にあっては、弁座に対し弁体が給水手段側から着座する。従って、水道元圧が高い場合であっても、水道水圧は弁体を着座方向に押圧するので、水道水圧によって弁体が開弁することはない。
【0020】
従って、水道水圧の如何にかかわらず、蓄圧装置のタンク内を便器非使用時には非蓄水状態とすることができる。
【0021】
請求項3の便器洗浄装置にあっては、蓄圧装置の貯水タンクとエアータンクとが別体に設けられているため、貯水タンク及びエアータンクを異なる場所に配置することができる。従って、まとまったスペースがなくても蓄圧装置を設置することができる。
【0022】
請求項4の便器洗浄装置にあっては、蓄圧装置内のエアーを加圧するためのエアーポンプを備えているため、蓄圧装置内を所定圧に加圧することができる。また、蓄圧装置内のエアーの一部が水に溶出したとしても、溶出した分のエアーを補充することができる。
【0023】
請求項5の便器洗浄装置にあっては、蓄圧装置内のエアー圧を検知するエアー検知手段と、該エアー検知手段の検知圧に基づいて蓄圧装置内への水の流入又はエアーポンプの作動を制御する手段を備えているため、蓄圧装置を過剰に加圧して蓄圧装置が破損することが防止される。また、蓄圧装置内を確実に所定圧力に制御することができる。
【0024】
請求項6の便器洗浄装置にあっては、貯水タンクに、該貯水タンク内のエアーが便器側に流出することを阻止するエアー流出阻止手段が設けられているため、貯水タンクから便器へ水を流出するときに、貯水タンク内のエアーまで便器側へ流出することがない。このため、蓄圧装置内にエアーを補給する頻度は少なくてすみ、エアーポンプのランニングコストが低いと共に、エアーポンプの要求性能が低くなり、エアーポンプの小型化、低騒音化、低コスト化が図られる。また、貯水タンクから便器へ水を流出するときに、貯水タンク内のエアーが便器側へ流出して異音が発生することが防止される。
【0025】
請求項7の便器洗浄装置にあっては、蓄圧装置内の水位が所定以下になると、浮子が水の給排口に設けられた弁座部に着座して該給排口を閉鎖するため、蓄圧装置内のエアーが便器側に流出することが確実に防止される。また、構造が簡易であるため、蓄圧装置の低コスト化も可能である。
【0026】
請求項8の便器洗浄装置にあっては、フラッシュスイッチが操作されると、直動形電磁弁が所定時間開弁し、水道水が蓄圧装置内に流入し蓄圧水が貯水される。
【0027】
このように、フラッシュスイッチ動作の当初に蓄圧装置に蓄圧水を貯水させることにより、その前の状態(便器非使用時)では蓄圧装置内に蓄圧水を貯水させることが不要となる。
【0028】
請求項9の便器洗浄装置にあっては、ジェット洗浄時に蓄圧水をジェットノズルに供給することにより、サイホンを迅速に起動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0030】
[第1の実施の形態]
第1図は第1の実施の形態に係る便器洗浄装置の斜視図、第2図は第1図の洋風便器の斜視図、第3図〜第6図は第1図の便器洗浄装置のフロー図、第7図はタイミングチャートである。
【0031】
第1,2図の通り、陶器製の洋風便器1は、前部に鉢部2を備え、この鉢部2の上部内周にリム3が設けられている。このリム3へはリムノズル4を介して洗浄水が供給される。このリムノズル4は、洋風便器1の正面向って左側にのみ配置されており、所謂「片側給水方式」となっている。このリムノズル4から水がリム3に供給されることにより、鉢面には旋回流が形成される。
【0032】
鉢部2のトラップ部には、該トラップ部にサイホン排出流を誘起するための水(ジェット水)を噴出するジェットノズル5が設けられている。このトラップ部は、鉢部2の底部から斜め上方に立ち上がる上昇部と、該上昇部に連なり、下方に立ち下がる立下部とを有しており、この立下部が排水管(図示略)に連なっている。このトラップ構造自体は周知のものである。
【0033】
なお、この洋風便器1はフラッシュスイッチを操作することにより便器洗浄が開始されるよう構成されている。このフラッシュスイッチは、図示しないリモコンに設けられている。このリモコンからのフラッシュ信号が後述の制御手段に赤外線等によって与えられる。
【0034】
洋風便器1の後部上面に便座ボックス6が設置されている。この便座ボックス6の後部は洋風便器1よりも若干後方に張り出し、その下側にアンダーケース7が連なっている。便座ボックス6に対し便座8及び便蓋9が起倒回動しうるように支持されている。
【0035】
トイレルームの壁面には給水管の末端が突出しており、この給水管の末端に止水栓10が取り付けられている。この止水栓10は給水ホース11及び逆止弁11a(第3〜6図)を介して洋風便器1の後部に設置されたストレーナ12に接続されている。この逆止弁11aは、便器1側から止水栓10側への水の流出を阻止し、その逆を許容するものである。このストレーナ12を通過した水は配管24を介して電動弁ユニット20へ供給されている。
【0036】
第3〜6図の通り、電動弁ユニット20は、内部に弁装置22,23を備えている。配管24は末端側が2手に分岐しており、一方に弁装置22が設けられ、他方に弁装置23が設けられている。
【0037】
弁装置22はリムノズル4へ水を供給し、弁装置23はジェットノズル5へ水を供給する。リムノズル4に至る配管に調圧弁4a及びバキュームブレーカ4bが設けられている。ジェットノズル5に至る配管に調圧弁5a及びバキュームブレーカ5bが設けられている。これら弁装置22,23は、電気配線を介して図示しない制御手段に接続されている。
【0038】
配管24の途中から分岐管30が分岐している。この分岐管30の末端は直動形電磁弁50の第1ポート51に接続されている。
【0039】
なお、分岐管30の途中部分から水抜管31が分岐し、この水抜管31に水抜弁32が設けられている。この水抜弁32は、通常時は閉とされ、凍結防止等のために機器内部の水を抜く場合に開とされる。
【0040】
また、分岐管30の途中から放圧用配管33が分岐し、この放圧用配管33にリリーフ弁34が設けられている。この放圧用配管33の末端は便鉢のリムに連通している。
【0041】
直動形電磁弁50は、筒軸心方向を上下方向とした円筒形のハウジング53と、該ハウジング53の下部に設けられた前記第1ポート51と、該ハウジング53の底部中央から上方に突設された短い筒状の弁座54と、該弁座54内に連通した第2ポート52と、該弁座54に上方から着座するプランジャ型の弁体55と、該弁体55を着座方向に押圧するバネ56と、該弁体55を着座方向に押圧するバネ56と、該弁体55を上方に引張り上げるように該弁体55に対し磁力を与え得るソレノイド57とを有する。このソレノイド57に対し、前記制御手段から通電が行われる。
【0042】
第2ポート52は配管58を介して貯水タンク60の水給排口61に接続されている。
【0043】
貯水タンク60内には、該水給排口61に周設された弁座63と、該弁座63を囲むパンチングメタルや金網などよりなる円筒状の浮子ガイド65と、該ガイド65内に上下動自在に配置された浮子62とを有している。このガイド65は、浮子62を弁座63に案内するためのものであり、筒軸方向を鉛直方向にして配置されている。
【0044】
貯水タンク60の上部の連通口66と、エアータンク43とが、耐圧ホース40を介して接続されている。このエアータンク43に逆止弁45付きの配管46を介して、エアーポンプ41及びエアー圧検知手段としての圧力センサ42が接続されている。これら貯水タンク60、耐圧ホース40、エアーポンプ41、圧力センサ42及びエアータンク43により蓄圧装置が構成されている。
【0045】
圧力センサ42の検知圧は、電気信号として、電気配線を介して制御手段に送信可能となっている。また、制御手段とエアーポンプ41は電気配線を介して接続されており、制御手段からの信号によってエアーポンプ41が作動可能となっている。
【0046】
電動ユニット20、貯水タンク60、エアーポンプ41及び圧力センサ42は、便座ボックス6からアンダーケース7内に配置されている。エアータンク43は、洋風便器1のスカート部1a内に配置されている。
【0047】
次に、このように構成された便器洗浄装置の作動内容について、以下に説明する。
【0048】
[初期設定(空気供給)]
弁装置22,23及び直動形電磁弁50が閉弁され、貯水タンク60内に水が貯留されていない状態において、制御手段がエアーポンプ41を作動させる。蓄圧装置内のエアー圧が所定圧に達すると、圧力センサ42が制御手段に信号を送信し、制御手段がエアーポンプ41を停止する。
【0049】
この所定圧は、水道水の静水圧よりも低く、かつ後述の通り、貯水タンク60内に貯水され、蓄圧装置のエアータンク43内のエアーが圧縮されたときに、エアータンク43内のエアー圧が所定の十分に高い圧力となるように設定される。なお、このエアー圧は、蓄圧水を貯水したときのタンク内の圧力よりも十分に低い。従って、便器非使用時には貯水タンク60にはそれ程の圧力はかからないことになり、貯水タンク60の必要強度が緩和される。
【0050】
[非使用時(第3図)]
弁装置22,23及び直動形電磁弁50は閉弁されている。貯水タンク60内は貯水されておらず、貯水タンク60内は、上記所定圧となっている。なお、直動形電磁弁50の弁体56は、バネ56の付勢力と、水道水圧とによって弁座54に押し付けられ、閉弁状態となっている。
【0051】
[貯水タンク60内への静水圧による蓄水(第4図)]
フラッシュスイッチが操作されると、制御手段がソレノイド57を励磁し、弁体55を引き上げて直動形電磁弁50を開弁する。これにより、止水栓10、給水ホース11及び分岐管30を介して水道水が静水圧にて貯水タンク60内に流入し、貯水される(第7図の工程a)。貯水タンク60の容量は、通常は500〜1000cc程度であり、工程aは通常は2〜5秒程度である。
【0052】
この貯水タンク60内への水の流入に伴って、貯水タンク60内のエアーがエアータンク43内へ押し込まれ、該エアータンク43内のエアー圧が上昇する。このエアー圧が設定圧に達すると、圧力センサ42からの信号により、制御手段が弁装置23をソレノイド57を消磁する。これにより、バネ56の押圧力によって弁体55が弁座54に着座し、貯水タンク60内に所定量の水が貯留されると共に、エアータンク43内に設定圧の加圧エアーが貯えられた状態が保たれる(第7図の工程b)。この工程bは、例えば0〜1秒程度とされ、リム弁22が開く前に直動弁を閉めることにより、蓄水がリムに抜けてしまうのを防ぐためのタイムラグとして設けられている。
【0053】
なお、貯水タンク60に水が流入すると、浮子62がその浮力によって上昇し、弁座63から離座する。
【0054】
[便器洗浄]
1.リム洗浄(工程c,d)
上記工程bの後、制御手段が弁装置22を開弁する。これにより、止水栓10、リムノズル4を介してリム3へ給水され、鉢部2の内面が洗浄される(工程c,d)。
【0055】
なお、弁装置22が開弁すると配管24内の静水圧とバネ56との押圧力との和が貯水タンク60内の圧力以下に低下する。これにより、貯水タンク60内の水がその蓄圧によって直動形電磁弁50の弁体55をバネ56の押圧力に抗して押し上げ、貯水タンク60内の水の一部がリム放出水に追加される(工程c)。このように、一部の水が流出して貯水タンク60内の水圧が(静水圧)+(バネ56の押圧力)以下になると、弁体55は弁座54に着座し、水の流出が停止し、工程cから工程dに移行する。
【0056】
この工程dの間は水道水のみがリムノズル4へ供給される。
【0057】
所定時間経過後、制御手段が弁装置22を閉弁し、リム洗浄(工程d)が停止される。
【0058】
2.ジェット起動(工程e)
次いで、制御手段が弁装置23を開弁する。これにより、貯水タンク60内の蓄圧水と給水ホース11からの水とがジェットノズル5を介してトラップ部に噴出する。これにより、トラップ部にサイホンが迅速かつ強力に発生する(工程e)。
【0059】
このジェット洗浄工程の後半になると、貯水タンク60内の水の大部分が放出終了する。そこで、制御手段はソレノイド57を消磁させ、弁体55を弁座54に着座させ、直動形電磁弁50を閉弁させる。この閉弁後は、水道水圧のみによってジェット洗浄が行われる。
【0060】
3.ジェット停止、溜水面の形成
やがて、制御手段からの信号によって弁装置23が閉弁する。これによってジェット水噴出が停止し、鉢部2内の汚水が排出され、サイホンがブレークされる。そこで、制御手段が弁装置22を所定の短時間だけ開弁し、鉢部2内に所定量の水を供給し、溜水面を形成する。
【0061】
鉢部2内に十分な溜水面が形成された後、制御手段が弁装置22を閉弁し、洗浄が終了する。
【0062】
[エアーの補充]
貯水タンク60内に蓄圧水を貯留した状態において、何らかの原因によりエアーがリークしたり、エアーが水へ溶け込んだりすることにより、エアータンク43内のエアー圧が規定の圧力よりも低下した場合には、圧力センサ42からの信号に基づき、制御手段がエアーポンプ41を作動させ、エアータンク43内のエアー圧を所定圧まで回復させることが望ましい。
【0063】
[別の態様]
上記実施の形態では、リム洗浄工程dの間、ソレノイド57は全く励磁されないが、リム洗浄工程dの終期に、一時的にソレノイド57を励磁し、直動形電磁弁50を開とし、貯水タンク60から蓄圧水をリム洗浄水に追加してもよい。これにより、便鉢内の水位が一時的に上昇する。この状態でジェットが起動することにより、サイホンが早期に形成されるようになる。
【0064】
この場合、工程dの終了後、工程eを開始する前に、一時的に弁装置22,23を閉とした状態で直動形電磁弁50を開とし、水道水圧で貯水タンク60内に水を補充し、その後、工程eに移行するようにしてもよい。
【0065】
[さらに別の態様]
直動形電磁弁50のバネ56のバネ定数を調節できるようにしてもよい。これにより、工程dの間における貯水タンク60内の水圧をバネ定数に応じた値に調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】第1の実施の形態に係る便器洗浄装置の斜視図である。
【図2】第1図の洋風便器の斜視図である。
【図3】第1図の便器洗浄装置のフロー図である。
【図4】第1図の便器洗浄装置のフロー図である。
【図5】第1図の便器洗浄装置のフロー図である。
【図6】第1図の便器洗浄装置のフロー図である。
【図7】第1図の便器洗浄装置のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 洋風便器
2 鉢部
3 リム
4 リムノズル
5 ジェットノズル
11 給水ホース
22,23 弁装置
30 分岐管
41 エアーポンプ
42 圧力センサ
43 エアータンク
50 直動形電磁弁
51 第1ポート
52 第2ポート
54 弁座
56 バネ
57 ソレノイド
60 貯水タンク
62 浮子
63 弁座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋風便器に水道水圧によって水を供給する給水手段と、
該給水手段から連通路を介して水道水が水道水圧によって導入されると共に、該連通路を介して該給水手段に対し蓄圧水を供給可能な蓄圧装置と、
該連通路に設けられた弁とを有する便器洗浄装置において、
該弁が直動形電磁弁であることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、該直動形電磁弁は、弁座と、該弁座に対し前記給水手段側から着座する弁体と、該弁体を着座方向に押圧するバネと、該バネの押圧力と反対方向に該弁体を付勢可能なソレノイドとを有することを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、該蓄圧装置は、
貯水タンクと、
該貯水タンクとは別体に設けられたエアータンクと、
該貯水タンクと該エアータンクとを連通する連通手段と、
を有することを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項4】
請求項3において、前記蓄圧装置は、前記蓄圧装置内のエアーを加圧するためのエアーポンプを備えたことを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項5】
請求項4において、前記蓄圧装置内のエアー圧を検知するエアー圧検知手段と、該エアー圧検知手段の検知圧力に基づいて前記エアーポンプの作動を制御する手段を備えたことを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項6】
請求項4又は5において、前記貯水タンクに、該貯水タンク内のエアーが前記便器側に流出することを阻止するエアー流出阻止手段が設けられていることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項7】
請求項6において、前記貯水タンクの底部に水の給排口が設けられており、
前記エアー流出阻止手段は、
該給排口に設けられており、上方から浮子が着座可能な弁シート部と、
該貯水タンク内の水面に浮上している浮子と
を備えてなり、
該貯水タンク内の水位が所定以下になると該浮子が該弁シート部に着座して該給排口が閉鎖されることを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、洋風便器の便器洗浄を開始するためのフラッシュスイッチが設けられており、
前記直動形電磁弁は、該フラッシュスイッチが操作されると、所定時間開弁し、水道水を前記蓄圧装置内に流入させて蓄圧水を貯水することを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項9】
請求項8において、前記洋風便器は、トラップ内ヘ水を噴出するジェットノズルを備えており、前記給水手段は、洋風便器のリムと該ジェットノズルとにそれぞれ給水可能であり、
該給水手段は、前記蓄圧装置内に所定量の水道水が流入すると直動形電磁弁を閉弁させ、その後、直動形電磁弁を消磁状態としたままリムにのみ水道水を供給し、その後、リムへの給水を停止し、ジェットノズルへ水道水を供給すると共に、直動形電磁弁を励磁状態として蓄圧水を供給することを特徴とする便器洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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