便器洗浄装置
【課題】排泄物の種別をより適切に判定することができる便器洗浄装置の提供。
【解決手段】便器2と、便器2のボール部内に洗浄水を供給する給水バルブ122と、給水バルブ122を制御する制御部150と、給水バルブ122及び制御部150を収納し便器2の上部後方に配置された便器洗浄装置本体10とを有する便器洗浄装置1において、ボール部内への落下物を検知する測距センサ100を便器洗浄装置本体10に設け、制御部150は、落下物が測距センサ100の検知領域のうち測距センサ側の第1検知領域200内を通過した場合は使用者により排便行為がなされたと判定し、落下物が測距センサ100の検知領域のうち第1検知領域200よりも遠くの第2検知領域201内を通過した場合は使用者により排尿行為がなされたと判定して、当該判定結果に応じた水量の洗浄水を給水バルブ122を制御してボール部内に供給することを特徴とする便器洗浄装置1。
【解決手段】便器2と、便器2のボール部内に洗浄水を供給する給水バルブ122と、給水バルブ122を制御する制御部150と、給水バルブ122及び制御部150を収納し便器2の上部後方に配置された便器洗浄装置本体10とを有する便器洗浄装置1において、ボール部内への落下物を検知する測距センサ100を便器洗浄装置本体10に設け、制御部150は、落下物が測距センサ100の検知領域のうち測距センサ側の第1検知領域200内を通過した場合は使用者により排便行為がなされたと判定し、落下物が測距センサ100の検知領域のうち第1検知領域200よりも遠くの第2検知領域201内を通過した場合は使用者により排尿行為がなされたと判定して、当該判定結果に応じた水量の洗浄水を給水バルブ122を制御してボール部内に供給することを特徴とする便器洗浄装置1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄装置に関し、特に、便器のボール部内へ向けて投光した光の反射波によってボール部内への落下物を検知する測距センサを有する便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、便器を設置したトイレブースには、その快適さから、使用後の便器に洗浄水を自動的に流す自動洗浄機能を備えた便器洗浄装置が広く取り付けられるようになっている。
【0003】
この自動洗浄機能を備えた従来の便器洗浄装置では、便器のボール部内に流す洗浄水を節約するために、便器への排泄物が大便か小便かを判別して、便器へ供給する洗浄水の水量を切り替えるものがある。この排泄物の種別(大便、小便)の判別は、使用者の便座への着座をセンサによって検知し、その着座時間によって行っていた。しかし、実際には排尿であるのに使用者の着座時間が長かった場合や実際には排便であるのに使用者の着座時間が短かった場合、大便か小便かの判別を誤るおそれがあり、その結果、適切な水量の洗浄水が供給されないという不具合が生じることがある。
【0004】
そこで、ドップラセンサを用いて便器内への落下物を検知することで使用者の排泄行為を判別して、当該排泄行為に対応する水量の洗浄水を供給する便器洗浄装置が提案されている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002−266407
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明は、ドップラセンサから送信されるマイクロ波の周波数と落下物から反射して戻ってきたマイクロ波の周波数との差分を出力信号として検出し、当該出力信号の出力レベルと当該出力信号の継続時間とによって排泄物が大便であるか小便であるかを判別するものであるため、例えば、液状に近い大便である場合や硬いがために局部に長時間ぶら下がった状態の大便である場合、使用者の排泄行為が排便であるにも関わらず排尿と判断される恐れがあり、大便/小便の判別の確実性に欠けるものである。
【0006】
そこで、本発明は、排泄物の種別をより適切に判定することができる便器洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、便器と、前記便器のボール部内に洗浄水を供給する給水バルブと、前記給水バルブを制御する制御部と、前記給水バルブ及び前記制御部を収納し前記便器の上部後方に配置された便器洗浄装置本体とを有する便器洗浄装置において、前記便器のボール部内へ向けて投光した光の反射光によって前記ボール部内への落下物を検知する測距センサを前記便器洗浄装置本体に設けるとともに、前記制御部は、前記落下物が前記測距センサの検知領域のうち前記測距センサ側の第1検知領域内を通過した場合は使用者により排便行為がなされたと判定し、前記落下物が前記測距センサの検知領域のうち前記第1検知領域よりも遠くの第2検知領域内を通過した場合は使用者により排尿行為がなされたと判定して、当該判定結果に応じた水量の前記洗浄水を前記給水バルブを制御して前記ボール部内に供給することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記使用者の着座を検知するとともに、着座した前記使用者の臀部の位置を検知する着座センサを便器洗浄装置本体に設け、前記制御部は、前記着座センサから前記検知した臀部までの距離が長くなるに従い、前記第1検知領域が拡大するように前記第1検知領域と第2検知領域との境界位置を設定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記測距センサの指向方向を前記ボール部内方向から前記便器洗浄装置の前方上方向へ切替える、又は、前記便器洗浄装置の前方上方向から前記ボール部内方向へ切替える指向方向切替え手段を有し、前記制御部は、前記測距センサの指向方向が前記指向方向切替え手段によって前記便器洗浄装置の前方上方向に切替えられた場合、前記測距センサにより前記便器洗浄装置に接近した前記使用者を検知し、前記測距センサが前記便器洗浄装置に接近した前記使用者を検知するとともに、前記着座センサが前記使用者の着座を検知すると、前記指向方向切替え手段を制御して前記測距センサの指向方向を前記ボール部内方向に切替えて、前記測距センサにより前記ボール部内への落下物を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ボール部内へ向けて投光した光の反射光によってボール部内への落下物を検知する測距センサを有することとし、制御部は、落下物が第1検知領域内を通過した場合は使用者により排便行為がなされたと判定し、落下物が第2検知領域内を通過した場合は使用者により排尿行為がなされたと判定して、当該判定結果に応じた水量の前記洗浄水を前記給水バルブを制御して前記ボール部内に供給することとしたため、排泄物の種別をより適切に判定するとともに当該排泄物の種別に対応した水量の洗浄水をボール部内へ適切に供給することが可能となる。また、使用者による排便行為を検知するのみでなく、使用者による排尿行為をも検知することとしたため、使用者が便座に着座したにも関わらず排泄行為を行わなかった場合に洗浄水の供給を行わないことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記使用者の着座を検知するとともに、着座した前記使用者の臀部の位置を検知する着座センサを便器洗浄装置本体に設け、前記制御部は、前記着座センサから前記検知した臀部までの距離が長くなるに従い、前記第1検知領域が拡大するように前記第1検知領域と第2検知領域との境界位置を設定することとした。すなわち、使用者の着座位置によって境界位置を設定することとしたため、使用者の行った排泄行為をより確実に判定することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、測距センサの指向方向を切替える指向方向切替え手段を備えたため、当該指向方向を切り替えることにより、本来排泄物検知手段として設けた測距センサを使用者が便器洗浄装置に接近したことを検知する人体検知手段としても機能させ、この人体検知手段による検知結果に基づき便蓋の自動開蓋を行なうことが可能となる。すなわち、測距センサを排泄物検知手段のみでなく人体検知手段としても使用することで、便器洗浄装置に人体検知手段用のセンサを別途設ける必要がなくなり、コスト削減に資することができる。また、測距センサが便器洗浄装置に接近した使用者を検知するとともに、着座センサが使用者の着座を検知すると、指向方向切替え手段により測距センサの指向方向がボール部内方向に切り替わることとしたため、人体検知手段と排泄物検知手段とを最適なタイミングで切替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明にかかる便器洗浄装置は、便器と、便器のボール部内に洗浄水を供給する給水バルブと、給水バルブを制御する制御部と、給水バルブと制御部とを収納し便器の上部後方に配置された便器洗浄装置本体と、便座及び便蓋とを備えて構成される。
【0014】
また、便器洗浄装置は、使用者が便座に着座したことを検知する着座センサを有するとともに、便器の洗浄水を自動的に供給する自動洗浄機能を有しており、着座センサの検知領域から使用者が外れたことを当該着座センサが検知することによって、洗浄水を自動的に供給することができる。
【0015】
また、便器洗浄装置本体は、便器のボール部内へ向けて投光した光の反射光によってボール部内への落下物を検知する測距センサを有しており、制御部は、当該測距センサの検知結果に基づき使用者による排泄行為を判定する構成となっている。すなわち、制御部は、落下物が当該測距センサの検知領域のうち測距センサ側の第1検知領域内を通過した場合は使用者により排便行為がなされたと判定し、落下物が当該測距センサの検知領域のうち第1検知領域よりも測距センサから遠くの第2検知領域内を通過した場合は使用者により排尿行為がなされたと判定して、当該判定結果に応じた水量の洗浄水を給水バルブを制御してボール部内に供給する。ここで、第1検知領域は、後述するように統計的に割り出した大便の落下位置を十分にカバーするように設定される領域であり、第2検知領域は、統計的に割り出した小便の落下位置を十分にカバーするように設定される領域であるため、上記のような構成とすることによって、使用者による排泄行為をより適切に判定し、当該排泄行為に応じた水量の洗浄水を給水バルブを制御して供給することが可能となる。また、使用者による排便行為を検知するのみでなく、使用者による排尿行為をも検知することとしたため、使用者が便座に着座したにも関わらず排泄行為を行わなかった場合に洗浄水の供給を行わないことができる。
【0016】
また、着座センサは、着座した使用者の臀部の位置を検知することができ、制御部は、着座センサによって検知した臀部の位置に応じて、測距センサの検知領域における第1検知領と第2検知領域との境界位置を設定する構成とすることもできる。かかる構成とすることにより、使用者の行った排泄行為をより確実に判定することができる。
【0017】
また、便器洗浄装置は、測距センサの指向方向を便器のボール部内方向から便器洗浄装置の前方上方向へ切替える、又は、前記便器洗浄装置の前方上方向から前記ボール部内方向へ切替える指向方向切替え手段を有する構成とすることができ、当該指向方向切替え手段を用いて測距センサの指向方向を便器洗浄装置の前方上方向に切替えることで、測距センサを便器洗浄装置に接近した使用者を検知する人体検知手段として機能させることができる。そして、測距センサを人体検知手段として機能させることにより、当該人体検知手段による検知結果に基づき、便蓋の自動開蓋を行なうことが可能となる。このように、測距センサを排泄物検知手段のみでなく人体検知手段としても使用することで、便器洗浄装置に人体検知手段用のセンサを別途設ける必要がなくなるため、コスト削減に資することとなる。
【0018】
また、測距センサが便器洗浄装置に接近した使用者を検知するとともに、着座センサが使用者の着座を検知すると、指向方向切替え手段により測距センサの指向方向がボール部内方向に切り替わることとしたため、人体検知手段と排泄物検知手段とを最適なタイミングで切替えることができる。
【0019】
以下に、本発明にかかる便器洗浄装置の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態における便器洗浄装置の外観図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態における便器洗浄装置1は、トイレブースに設置された便器2と、便器2の上部後方に取り付けられた便器洗浄装置本体10と、便器洗浄装置本体10に回動可能に連結された便座20と、同じく便器洗浄装置本体10に回動可能に連結された便蓋30とを備えている。
【0021】
便器2は、大/小便両用の便器であって、当該便器2の背面部には上流側端部が上水管に連通し、下流側端部が便器2のボール部内の所定位置に開口する洗浄水配管(図示しない。)が設置されている。
【0022】
便器洗浄装置1の便蓋30及び便座20は、その支軸11を回転軸として、略90度の範囲を移動可能となっている。
【0023】
ここで、便器洗浄装置本体10の構成について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態における便器洗浄装置本体10のブロック構成図である。
【0024】
図2に示すように、便器洗浄装置本体10は、便器2のボール部内への落下物を検知する測距センサ100と、使用者が便座20に着座したことを検知する着座センサ110と、便器2のボール部内に洗浄水を供給するための洗浄水供給部120と、測距センサ100を駆動させて当該測距センサ100の指向方向を切替える測距センサ駆動部130と、便蓋30を開閉駆動させる便蓋駆動部140と、これらを制御する制御部150とより構成される。なお、洗浄水供給部120と制御部150とは、便器洗浄装置本体10内に収納されている。
【0025】
便器洗浄装置本体10全体を制御する制御部150は、CPU(Central Processing Unit)、ワーキングメモリなどに使用されるRAM(Random Access Memory)などから構成される。また、ROM(Read Only Memory)等から構成される記憶部151には、便器洗浄装置本体10を制御するためのプログラムが格納されており、CPUは記憶部151に格納されたプログラムを読み取って実行することにより、便器洗浄装置本体10を制御する。
【0026】
ここで、測距センサは、光を投光してその反射光を受光することにより、測距対象物までの距離を検知するものであり、以下に、本実施形態における測距センサ100の構成について、図3ないし図5を用いて説明する。図3は測距センサの概略構成図であり、図4は測距センサ100から得られる出力電圧と当該センサ100から落下物までの距離の関係を表したグラフであり、図5は測距センサ100の検知領域を示した図であって、図5(a)は便器洗浄装置1の平面図、図5(b)は便器洗浄装置1の側断面図である。
【0027】
本実施形態における測距センサ100は、便器2のボール部内への落下物を検知する排泄物検知手段として機能するものであり、図3に示すように、落下物に光を投光するための発光素子101と、落下物によって反射した反射光を受光する受光素子102とにより概略構成される。なお、図中、符号103は投光する光を集光するための投光用集光レンズであり、符号104は反射光を集光するための受光用集光レンズである。
【0028】
受光素子102は、PSD(Position Sensitive Device)で構成されている。このPSDは、半導体で構成される位置検出素子であり、落下物Mとの接触による反射光を受光すると、当該反射光を受光した位置から電極までの距離に反比例する電圧が出力される。PSDが反射光を受光する位置は、発光素子101から投光された光が落下物Mと接触した位置によって変化するため、所定の計算をすることにより、測距センサ100から落下物Mまでの距離を測定することができる。
【0029】
受光素子102から得られる出力電圧と測距センサ100から落下物Mまでの距離は、図4に示すように反比例の関係となっており、所定の電圧範囲のみを検知するように設定することにより、所望の距離範囲内を通過した落下物のみを検知することが可能となる。例えば、a〜bの距離範囲を通過した落下物のみを検知したい場合は、A〜Bの範囲の電圧のみを検知するように設定する。
【0030】
本実施形態においては、所望の距離範囲とは、使用者が排泄行為を行ったときに排泄物やトイレットペーパーが通過する範囲に設定されており、測距センサ100がかかる所定の範囲を落下物が通過したことを検知することにより、制御部150は、使用者によって排泄行為がなされたと判定することができる。
【0031】
本実施形態における測距センサ100は、図5(a),(b)に示すように、便器洗浄装置本体10の先端下部に設けられている。すなわち、この測距センサ100は、着座した使用者の後背部分に相当する便座20の下方に設けられている。また、発光素子101から投光される光は、ボール部の前面に向けて投光されることにより、使用者の排泄物や局部を拭いたトイレットペーパー等の落下経路をカバーすることができる。
【0032】
さらに、発光素子101から投光される光は、ボール部内に溜められた水及び使用者の体(主に使用者の臀部)に当たらない範囲で投光される。このような範囲で投光することにより、例えば、水に浮いている排泄物等や使用者の臀部を誤って検知してしまうことを防ぐことができるため、より正確に落下物を検知することができる。なお、使用者の体に当たらない範囲は、子供から成人までの男女が便座20に着座したときの臀部の沈み具合を統計的に求めた結果から得られるものである。
【0033】
本実施形態における測距センサ100は、検知領域のうち測距センサ100側の所定領域を第1検知領域200(図4におけるa〜bまでの距離範囲。)とし、第1検知領域よりも遠くの所定領域を第2検知領域201(図4におけるb〜c)としている。これら第1検知領域200と第2検知領域201との境界位置202は、子供から成人までの男女における排泄物落下位置及びトイレットペーパーの投下位置を統計的に算出することによって決定されるものである。
【0034】
このように、測距センサ100を用いて第1検知領域200内、或いは、第2検知領域201内を通過した落下物を検知し、落下物が第1検知領域200内を通過した場合、使用者により排便行為がなされたと判定し、落下物が第2検知領域201内を通過した場合、使用者により排尿行為がなされたと判定することとしたため、使用者による排泄行為を適切に判定し、当該排泄行為に応じた水量の洗浄水を給水バルブを制御して供給することが可能となる。
【0035】
また、使用者による排便行為を検知するのみでなく、使用者による排尿行為をも検知することとしているため、例えば、使用者が便座20に着座したものの排泄行為を一切しなかった場合に、洗浄水が供給されるのを防止することができる。すなわち、かかる構成とすることにより、制御部150は、使用者によって排便行為がなされたか、或いは、排尿行為がなされたかを判定するのみならず、排泄行為自体がなされたか否かを判定することができるようになるため、さらに節水に資することができる。
【0036】
なお、この測距センサ100は、排泄物だけではなく、使用者の局部を拭いたトイレットペーパー等も検知することができる。ここで、例えば、便座20に着座して排尿行為を行った使用者がトイレットペーパーを便器2のボール部内へ捨てる場合、わざわざ自分の臀部の後方から捨てることは考えづらいため、トイレットペーパーによって誤った判定がなされるおそれはない。
【0037】
次に、着座センサ110の構成について、図1、図6及び図7を参照して具体的に説明する。図6は使用者の便座20への着座位置と境界位置202との関係を示した図であって、図6(a)は平均的な着座位置に着座した使用者の着座状態を示した図、図6(b)は当該使用者の着座状態に対応した境界位置を示した図であり、図7は使用者の便座20への着座状態と境界位置202との関係を示した図であって、図7(a)は平均的な着座位置よりも前方に着座した使用者の着座状態を示した図、図7(b)は当該使用者の着座位置に対応した境界位置を示した図である。
【0038】
着座センサ110は、図1に示すように、便器洗浄装置本体10の前面上部に設けられており、上述した測距センサ100と同様のセンサで構成されている。この着座センサ110は、使用者を検知しなくなるとボール部内へ洗浄水を自動的に供給する自動洗浄手段として機能するものである。
【0039】
さらに、この着座センサ110は、上述した測距センサ100と同様のセンサが用いられているため、着座した使用者の臀部までの距離を検知することができ、制御部150は、当該検知結果に基づいて第1検知領域200と第2検知領域201との境界位置202を設定することができる構成となっている。すなわち、制御部150は、着座センサ110が検知した臀部までの距離が長くなるに従い、第1検知領域200が拡大するように境界位置202を設定することによって、使用者の行った排泄行為をより確実に判定することができる。例えば、図6(a)に示すように使用者の着座位置が平均的な位置である場合はよいが、例えば、図7(a)に示すように、使用者が平均的な着座位置を大きく外れた便座20の前方に着座した場合、当該使用者の排泄行為が排便であるにもかかわらず排泄物やトイレットペーパーが第2検知領域を通過してしまうと、制御部150によって使用者によって排尿行為がなされたと判定されることとなる。そこで、着座センサ110によって計測した使用者の臀部までの距離に基づいて境界位置202を設定することにより、かかる事態を回避することが可能となる。
【0040】
洗浄水供給部120は、ボール部内に洗浄水を供給する給水バルブ122と、給水バルブ122を駆動させる給水バルブ駆動部121とより構成され、洗浄水配管と連結することでボール部内に洗浄水を供給することができる。
【0041】
制御部150は、この給水バルブ駆動部121を制御することにより、給水バルブ122の開放状態を制御する。すなわち、制御部150は、測距センサ100が落下物が第1検知領域200内を通過したことを検知すると使用者により排便行為がなされたと判定し、第2検知領域201内を通過したことを検知すると使用者により排尿行為がなされたと判定する。さらに、着座センサ110が当該使用者を検知しなくなると使用者の排泄行為が終わったと判定し、給水バルブ駆動部121を駆動させて給水バルブ122の開放状態を変化させる。この際、制御部150は、使用者の排泄行為が排便であると判定したときは、大洗浄として排便に対応した所定時間だけ給水バルブ122を開放させ、使用者の排泄行為が排尿であると判定したときは、小洗浄として排尿に対応した所定時間だけ給水バルブ122を開放させる。本実施形態において、この所定時間は、大洗浄の場合は供給される洗浄水の総量が8リットルとなる時間であり、小洗浄の場合は供給される洗浄水の総量が6リットルとなる時間である。このように、制御部150の判定結果に応じた水量の洗浄水を給水バルブを制御してボール部内に供給することとしたため、排泄物の種別に対応した水量の洗浄水をボール部内へ適切に供給することが可能となる。
【0042】
次に、測距センサ駆動部130の構成について、図8を参照して具体的に説明する。図8は、測距センサ100が人体検知手段として機能する場合を示した図であって、図8(a)は投光する光が便蓋30の透明部31を通過する場合を示した図であり、図8(b)は投光する光が便座20と便器2の上端との間隙を通る場合を示した図であり、図8(c)は測距センサ100が人体検知手段から排泄物検知手段に切り替わった様子を示した図である。
【0043】
測距センサ駆動部130は、指向方向切替え手段として機能するものであり、制御部150の制御に基づいて測距センサ100の指向方向をボール部内方向から便器洗浄装置1の前方上方向へ切替える。これにより、制御部150は、本来排泄物検知手段として設けられている測距センサ100を使用者が便器洗浄装置1に接近したことを検知する人体検知手段として機能させることができる。また、制御部150は、測距センサ100の指向方向が当該指向方向切替え手段によって便器洗浄装置1の前方上方向に切替えられた場合、測距センサ100により便器洗浄装置1に接近した使用者を検知し、測距センサ100が便器洗浄装置1に接近した使用者を検知するとともに、着座センサ110が使用者の着座を検知すると、指向方向切替え手段を制御して測距センサ100の指向方向をボール部内方向に切替えて、測距センサ100を排泄物検知手段として機能させる。
【0044】
本実施形態における測距センサ駆動部130は、図8に示すように、測距センサ100の位置を移動させることなく回動のみさせて当該指向方向を切替えるものである。測距センサ100が人体検知手段として機能するのは、使用者が便器洗浄装置1を使用していないとき、すなわち便蓋30が閉まった状態のときであるため、本実施形態における便蓋30は、図1に示すように、先端の所定範囲を投光する光を透過させることのできる透明素材で形成した透明部31を有している。かかる構成とすることにより、便蓋30が閉まった状態であっても光を使用者に向かって投光することが可能となる。なお、光を投光する方向は、図8(a)に示すように、便蓋30の透明部31を通るようにしてもよいし、図8(b)に示すように、便座20と便器2の上端部との間隙を狙って投光させてもよい。また、図4における符号203は、人体検知手段としての測距センサ100の検知領域を示したものである。
【0045】
便蓋駆動部140は、人体検知手段としての測距センサ100が便器洗浄装置1に接近した使用者を検知すると、制御部150の制御に基づいて便蓋30を自動的に開蓋状態とする。また、便蓋駆動部140は、着座センサ110が使用者を検知しなくなると、制御部150の制御に基づいて便蓋30を自動的に閉蓋状態とする。
【0046】
以上のように構成された便器洗浄装置1における自動洗浄処理について、図9を参照して、さらに具体的に説明する。図9は、自動洗浄処理のフローチャートである。
【0047】
図9に示すように、自動洗浄処理を開始すると、制御部150は、使用者が便器洗浄装置1に接近したか否かを判定する(ステップS100)。この判定は、人体検知手段として機能している状態にある測距センサ100が便器洗浄装置1に接近した使用者を検知したか否かによって判定するものである。この処理において、使用者が便器洗浄装置1に接近したと判定すると(ステップS100:Yes)、制御部150は、便蓋駆動部140を駆動させることにより便蓋30を自動開蓋させる(ステップS101)。
【0048】
次に、制御部150は、使用者が便座20に着座したか否かを判定する(ステップS102)。この判定は、着座センサ110が便座20に着座した使用者を検知したか否かによって判定するものである。この処理において、使用者が便座20に着座したと判定すると(ステップS102:Yes)、制御部150は、着座センサ110から使用者の臀部までの距離を計測する(ステップS103)。この計測は、着座センサ110を用いて行うものであり、制御部150は、当該計測結果に基づき、第1検知領域200と第2検知領域201との境界位置202を設定する(ステップS104)。このように、使用者が便座20に着座した位置によって第1検知領域200と第2検知領域201との境界位置202を設定することで、使用者の排泄行為が排便であるか排尿であるかをさらに正確に判定することが可能となる。
【0049】
次に、制御部150は、人体検知手段として機能している状態にある測距センサ100を排泄物検知手段として機能させるため、測距センサ100の指向方向を切替える(ステップS105)。この指向方向の切替えは、測距センサ駆動部130を駆動させることによりなされるものである。
【0050】
次に、制御部150は、使用者が排便行為を行ったか否かを判定する(ステップS106)。この判定は、測距センサ100が検知した落下物が第1検知領域200内を通過したか否かによって判定するものである。この処理において、使用者が排便行為を行ったと判定すると(ステップS106:Yes)、制御部150は、処理をステップS107に移行する。
【0051】
ステップS107において、制御部150は、使用者が便座20から離れたか否か(すなわち、便座20から離座したか否か)を判定する。この判定は、着座センサ110が使用者が当該着座センサ110の検知領域から外れたか否かで判定するものである。この処理において、使用者が便座20から離れたと判定すると(ステップS107:Yes)、制御部150は、排便行為に対応した水量の洗浄水を供給する(S108)。この処理は、制御部150が給水バルブ駆動部121を制御することにより給水バルブ122の開放時間を排便に対応した時間だけ開放させることによりなされる。
【0052】
ステップS106において、使用者が排便行為を行っていないと判定すると(ステップS106:No)、制御部150は、使用者が排尿行為を行ったか否かを判定する(ステップS109)。この判定は、測距センサ100が検知した落下物が第2検知領域201内を通過したか否かによって判定するものである。この処理において、使用者が排尿行為を行ったと判定すると(ステップS109:Yes)、制御部150は、処理をステップS110に移行する。
【0053】
ステップS110において、制御部150は、使用者が便座20から離れたか否か判定する。この判定は、ステップS107と同様であり、着座センサ110が使用者が当該着座センサ110の検知領域から外れたか否かで判定するものである。この処理において、使用者が便座20から離れたと判定すると(ステップS110:Yes)、制御部150は、排尿行為に対応した水量の洗浄水を供給する(ステップS111)。この処理は、制御部150が給水バルブ駆動部121を制御することにより給水バルブ122の開放時間を排尿に対応した時間だけ開放させることによりなされる。
【0054】
ステップS110において、使用者が便座20から離れたと判定しないとき、制御部150は、処理をステップS106に移行する。
【0055】
ステップS109において、使用者により排尿行為がなされたと判定しないとき(ステップS109:No)、制御部150は、使用者が便座20から離れたか否か判定する(ステップS112)。この処理において、使用者が便座20から離れたと判定しないとき(ステップS112:No)、制御部150は、処理をステップS106に移行する。
【0056】
ステップS108、ステップS111の処理が終了したとき、或いは、ステップS112において、使用者が便座20から離れたと判定したとき(ステップS112:Yes)、制御部150は、測距センサ100の指向方向を測距センサ駆動部130を用いて切替えることにより、測距センサ100を人体検知手段として機能させる(ステップS113)。
【0057】
ステップS102において、使用者が便座20に着座していない判定すると(ステップS102:No)、制御部150は、人体検知手段として機能している状態の測距センサ100が6秒以上継続して使用者を検知したか否かを判定する(ステップS114)。この処理において、人体検知手段として機能している状態の測距センサ100が6秒以上継続して使用者を検知したと判定すると(ステップS114:Yes)、制御部150は、使用者が測距センサ100の検知領域から外れた際に、排尿に対応した水量の洗浄水をボール部内に供給することを設定する(ステップS115)。
【0058】
次に、制御部150は、使用者が測距センサ100の検知領域から外れたか否かを判定する(ステップS116)。この処理において、使用者が測距センサ100の検知領域から外れたと判定すると(ステップS116:Yes)、制御部150は、排尿行為に対応した水量の洗浄水をボール部内に供給する(ステップS117)。この処理は、制御部150が給水バルブ駆動部121を制御することにより給水バルブ122の開放時間を排尿に対応した時間だけ開放させることによりなされる。
【0059】
ステップS113、ステップS117の処理が終了したとき、或いは、ステップS114において人体検知手段として機能している状態の測距センサ100が6秒以上継続して使用者を検知したと判定しないとき、制御部150は、自動洗浄処理を終了する。
【0060】
以上、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0061】
例えば、測距センサ駆動部130は、図11(a)に示すように、便器洗浄装置本体10内部に支持され測距センサ100をその先端部で保持する筒状の支持部材であってもよい。すなわち、測距センサ100は、この支持部材の先端に取り付けられており、例えば、図11(a)に示すように、人体検知手段として機能している測距センサ100の位置を、支持部材を回動させることにより移動させ、図11(b)に示すように排泄物検知手段として機能させることができる。
【0062】
なお、測距センサ100が人体検知手段として機能している場合、当該測距センサ100は、図10で示すように便器洗浄装置本体10の前方上部に位置している。かかる位置は、便蓋30が閉蓋した状態であっても外部に露出している位置であるため、便蓋30の一部を透明にしなくとも使用者に向けて光を投光することができる。また、測距センサ駆動部130は、着座センサ110が便座20に着座した使用者を検知すると、制御部150による制御に基づいて駆動して便器2のボール部内へ光を投光できる位置に測距センサ100を配置させる。これにより、測距センサ100は、排泄物検知手段として機能することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態における便器洗浄装置の外観図である。
【図2】本実施形態における便器洗浄装置本体のブロック構成図である。
【図3】本実施形態における測距センサの概略構成図である。
【図4】本実施形態における測距センサから得られる出力電圧と当該センサから落下物までの距離の関係を表したグラフである
【図5】本実施形態における測距センサの検知領域を示した図であって、図5(a)は便器洗浄装置の平面図、図5(b)は便器洗浄装置の側断面図である。
【図6】使用者の便座への着座位置と境界位置との関係を示した図であって、図6(a)は平均的な着座位置に着座した使用者の着座状態を示した図、図6(b)は当該使用者の着座状態に対応した境界位置を示した図である。
【図7】使用者の便座への着座状態と境界位置との関係を示した図であって、図7(a)は平均的な着座位置よりも前方に着座した使用者の着座状態を示した図、図7(b)は当該使用者の着座位置に対応した境界位置を示した図である。
【図8】本実施形態における便器洗浄装置の測距センサが人体検知手段として機能する場合を示した図であって、図8(a)は投光する光が便蓋の透明部を通過する場合を示した図であり、図8(b)は投光する光が便座と便器の上端との間隙を通る場合を示した図であり、図8(c)は測距センサが人体検知手段から排泄物検知手段に切り替わった様子を示した図である。
【図9】本実施形態における便器洗浄装置の自動洗浄処理フローチャート図である。
【図10】他の実施形態における便器洗浄装置の測距センサが人体検知手段として機能している様子を示した図であって、図10(a)は便器洗浄装置の側断面図であり、図10(b)は便器洗浄装置に使用者が着座した様子を示した図である。
【図11】他の実施形態における便器洗浄装置の外観図である。
【符号の説明】
【0064】
1 便器洗浄装置
10 便器洗浄装置本体
20 便座
30 便蓋
100 測距センサ
110 着座センサ
122 給水バルブ
130 測距センサ駆動部
140 便蓋駆動部
150 制御部
200 第1検知領域
201 第2検知領域
202 境界位置
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄装置に関し、特に、便器のボール部内へ向けて投光した光の反射波によってボール部内への落下物を検知する測距センサを有する便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、便器を設置したトイレブースには、その快適さから、使用後の便器に洗浄水を自動的に流す自動洗浄機能を備えた便器洗浄装置が広く取り付けられるようになっている。
【0003】
この自動洗浄機能を備えた従来の便器洗浄装置では、便器のボール部内に流す洗浄水を節約するために、便器への排泄物が大便か小便かを判別して、便器へ供給する洗浄水の水量を切り替えるものがある。この排泄物の種別(大便、小便)の判別は、使用者の便座への着座をセンサによって検知し、その着座時間によって行っていた。しかし、実際には排尿であるのに使用者の着座時間が長かった場合や実際には排便であるのに使用者の着座時間が短かった場合、大便か小便かの判別を誤るおそれがあり、その結果、適切な水量の洗浄水が供給されないという不具合が生じることがある。
【0004】
そこで、ドップラセンサを用いて便器内への落下物を検知することで使用者の排泄行為を判別して、当該排泄行為に対応する水量の洗浄水を供給する便器洗浄装置が提案されている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開2002−266407
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の発明は、ドップラセンサから送信されるマイクロ波の周波数と落下物から反射して戻ってきたマイクロ波の周波数との差分を出力信号として検出し、当該出力信号の出力レベルと当該出力信号の継続時間とによって排泄物が大便であるか小便であるかを判別するものであるため、例えば、液状に近い大便である場合や硬いがために局部に長時間ぶら下がった状態の大便である場合、使用者の排泄行為が排便であるにも関わらず排尿と判断される恐れがあり、大便/小便の判別の確実性に欠けるものである。
【0006】
そこで、本発明は、排泄物の種別をより適切に判定することができる便器洗浄装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、便器と、前記便器のボール部内に洗浄水を供給する給水バルブと、前記給水バルブを制御する制御部と、前記給水バルブ及び前記制御部を収納し前記便器の上部後方に配置された便器洗浄装置本体とを有する便器洗浄装置において、前記便器のボール部内へ向けて投光した光の反射光によって前記ボール部内への落下物を検知する測距センサを前記便器洗浄装置本体に設けるとともに、前記制御部は、前記落下物が前記測距センサの検知領域のうち前記測距センサ側の第1検知領域内を通過した場合は使用者により排便行為がなされたと判定し、前記落下物が前記測距センサの検知領域のうち前記第1検知領域よりも遠くの第2検知領域内を通過した場合は使用者により排尿行為がなされたと判定して、当該判定結果に応じた水量の前記洗浄水を前記給水バルブを制御して前記ボール部内に供給することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記使用者の着座を検知するとともに、着座した前記使用者の臀部の位置を検知する着座センサを便器洗浄装置本体に設け、前記制御部は、前記着座センサから前記検知した臀部までの距離が長くなるに従い、前記第1検知領域が拡大するように前記第1検知領域と第2検知領域との境界位置を設定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記測距センサの指向方向を前記ボール部内方向から前記便器洗浄装置の前方上方向へ切替える、又は、前記便器洗浄装置の前方上方向から前記ボール部内方向へ切替える指向方向切替え手段を有し、前記制御部は、前記測距センサの指向方向が前記指向方向切替え手段によって前記便器洗浄装置の前方上方向に切替えられた場合、前記測距センサにより前記便器洗浄装置に接近した前記使用者を検知し、前記測距センサが前記便器洗浄装置に接近した前記使用者を検知するとともに、前記着座センサが前記使用者の着座を検知すると、前記指向方向切替え手段を制御して前記測距センサの指向方向を前記ボール部内方向に切替えて、前記測距センサにより前記ボール部内への落下物を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、ボール部内へ向けて投光した光の反射光によってボール部内への落下物を検知する測距センサを有することとし、制御部は、落下物が第1検知領域内を通過した場合は使用者により排便行為がなされたと判定し、落下物が第2検知領域内を通過した場合は使用者により排尿行為がなされたと判定して、当該判定結果に応じた水量の前記洗浄水を前記給水バルブを制御して前記ボール部内に供給することとしたため、排泄物の種別をより適切に判定するとともに当該排泄物の種別に対応した水量の洗浄水をボール部内へ適切に供給することが可能となる。また、使用者による排便行為を検知するのみでなく、使用者による排尿行為をも検知することとしたため、使用者が便座に着座したにも関わらず排泄行為を行わなかった場合に洗浄水の供給を行わないことができる。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記使用者の着座を検知するとともに、着座した前記使用者の臀部の位置を検知する着座センサを便器洗浄装置本体に設け、前記制御部は、前記着座センサから前記検知した臀部までの距離が長くなるに従い、前記第1検知領域が拡大するように前記第1検知領域と第2検知領域との境界位置を設定することとした。すなわち、使用者の着座位置によって境界位置を設定することとしたため、使用者の行った排泄行為をより確実に判定することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、測距センサの指向方向を切替える指向方向切替え手段を備えたため、当該指向方向を切り替えることにより、本来排泄物検知手段として設けた測距センサを使用者が便器洗浄装置に接近したことを検知する人体検知手段としても機能させ、この人体検知手段による検知結果に基づき便蓋の自動開蓋を行なうことが可能となる。すなわち、測距センサを排泄物検知手段のみでなく人体検知手段としても使用することで、便器洗浄装置に人体検知手段用のセンサを別途設ける必要がなくなり、コスト削減に資することができる。また、測距センサが便器洗浄装置に接近した使用者を検知するとともに、着座センサが使用者の着座を検知すると、指向方向切替え手段により測距センサの指向方向がボール部内方向に切り替わることとしたため、人体検知手段と排泄物検知手段とを最適なタイミングで切替えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明にかかる便器洗浄装置は、便器と、便器のボール部内に洗浄水を供給する給水バルブと、給水バルブを制御する制御部と、給水バルブと制御部とを収納し便器の上部後方に配置された便器洗浄装置本体と、便座及び便蓋とを備えて構成される。
【0014】
また、便器洗浄装置は、使用者が便座に着座したことを検知する着座センサを有するとともに、便器の洗浄水を自動的に供給する自動洗浄機能を有しており、着座センサの検知領域から使用者が外れたことを当該着座センサが検知することによって、洗浄水を自動的に供給することができる。
【0015】
また、便器洗浄装置本体は、便器のボール部内へ向けて投光した光の反射光によってボール部内への落下物を検知する測距センサを有しており、制御部は、当該測距センサの検知結果に基づき使用者による排泄行為を判定する構成となっている。すなわち、制御部は、落下物が当該測距センサの検知領域のうち測距センサ側の第1検知領域内を通過した場合は使用者により排便行為がなされたと判定し、落下物が当該測距センサの検知領域のうち第1検知領域よりも測距センサから遠くの第2検知領域内を通過した場合は使用者により排尿行為がなされたと判定して、当該判定結果に応じた水量の洗浄水を給水バルブを制御してボール部内に供給する。ここで、第1検知領域は、後述するように統計的に割り出した大便の落下位置を十分にカバーするように設定される領域であり、第2検知領域は、統計的に割り出した小便の落下位置を十分にカバーするように設定される領域であるため、上記のような構成とすることによって、使用者による排泄行為をより適切に判定し、当該排泄行為に応じた水量の洗浄水を給水バルブを制御して供給することが可能となる。また、使用者による排便行為を検知するのみでなく、使用者による排尿行為をも検知することとしたため、使用者が便座に着座したにも関わらず排泄行為を行わなかった場合に洗浄水の供給を行わないことができる。
【0016】
また、着座センサは、着座した使用者の臀部の位置を検知することができ、制御部は、着座センサによって検知した臀部の位置に応じて、測距センサの検知領域における第1検知領と第2検知領域との境界位置を設定する構成とすることもできる。かかる構成とすることにより、使用者の行った排泄行為をより確実に判定することができる。
【0017】
また、便器洗浄装置は、測距センサの指向方向を便器のボール部内方向から便器洗浄装置の前方上方向へ切替える、又は、前記便器洗浄装置の前方上方向から前記ボール部内方向へ切替える指向方向切替え手段を有する構成とすることができ、当該指向方向切替え手段を用いて測距センサの指向方向を便器洗浄装置の前方上方向に切替えることで、測距センサを便器洗浄装置に接近した使用者を検知する人体検知手段として機能させることができる。そして、測距センサを人体検知手段として機能させることにより、当該人体検知手段による検知結果に基づき、便蓋の自動開蓋を行なうことが可能となる。このように、測距センサを排泄物検知手段のみでなく人体検知手段としても使用することで、便器洗浄装置に人体検知手段用のセンサを別途設ける必要がなくなるため、コスト削減に資することとなる。
【0018】
また、測距センサが便器洗浄装置に接近した使用者を検知するとともに、着座センサが使用者の着座を検知すると、指向方向切替え手段により測距センサの指向方向がボール部内方向に切り替わることとしたため、人体検知手段と排泄物検知手段とを最適なタイミングで切替えることができる。
【0019】
以下に、本発明にかかる便器洗浄装置の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態における便器洗浄装置の外観図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態における便器洗浄装置1は、トイレブースに設置された便器2と、便器2の上部後方に取り付けられた便器洗浄装置本体10と、便器洗浄装置本体10に回動可能に連結された便座20と、同じく便器洗浄装置本体10に回動可能に連結された便蓋30とを備えている。
【0021】
便器2は、大/小便両用の便器であって、当該便器2の背面部には上流側端部が上水管に連通し、下流側端部が便器2のボール部内の所定位置に開口する洗浄水配管(図示しない。)が設置されている。
【0022】
便器洗浄装置1の便蓋30及び便座20は、その支軸11を回転軸として、略90度の範囲を移動可能となっている。
【0023】
ここで、便器洗浄装置本体10の構成について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態における便器洗浄装置本体10のブロック構成図である。
【0024】
図2に示すように、便器洗浄装置本体10は、便器2のボール部内への落下物を検知する測距センサ100と、使用者が便座20に着座したことを検知する着座センサ110と、便器2のボール部内に洗浄水を供給するための洗浄水供給部120と、測距センサ100を駆動させて当該測距センサ100の指向方向を切替える測距センサ駆動部130と、便蓋30を開閉駆動させる便蓋駆動部140と、これらを制御する制御部150とより構成される。なお、洗浄水供給部120と制御部150とは、便器洗浄装置本体10内に収納されている。
【0025】
便器洗浄装置本体10全体を制御する制御部150は、CPU(Central Processing Unit)、ワーキングメモリなどに使用されるRAM(Random Access Memory)などから構成される。また、ROM(Read Only Memory)等から構成される記憶部151には、便器洗浄装置本体10を制御するためのプログラムが格納されており、CPUは記憶部151に格納されたプログラムを読み取って実行することにより、便器洗浄装置本体10を制御する。
【0026】
ここで、測距センサは、光を投光してその反射光を受光することにより、測距対象物までの距離を検知するものであり、以下に、本実施形態における測距センサ100の構成について、図3ないし図5を用いて説明する。図3は測距センサの概略構成図であり、図4は測距センサ100から得られる出力電圧と当該センサ100から落下物までの距離の関係を表したグラフであり、図5は測距センサ100の検知領域を示した図であって、図5(a)は便器洗浄装置1の平面図、図5(b)は便器洗浄装置1の側断面図である。
【0027】
本実施形態における測距センサ100は、便器2のボール部内への落下物を検知する排泄物検知手段として機能するものであり、図3に示すように、落下物に光を投光するための発光素子101と、落下物によって反射した反射光を受光する受光素子102とにより概略構成される。なお、図中、符号103は投光する光を集光するための投光用集光レンズであり、符号104は反射光を集光するための受光用集光レンズである。
【0028】
受光素子102は、PSD(Position Sensitive Device)で構成されている。このPSDは、半導体で構成される位置検出素子であり、落下物Mとの接触による反射光を受光すると、当該反射光を受光した位置から電極までの距離に反比例する電圧が出力される。PSDが反射光を受光する位置は、発光素子101から投光された光が落下物Mと接触した位置によって変化するため、所定の計算をすることにより、測距センサ100から落下物Mまでの距離を測定することができる。
【0029】
受光素子102から得られる出力電圧と測距センサ100から落下物Mまでの距離は、図4に示すように反比例の関係となっており、所定の電圧範囲のみを検知するように設定することにより、所望の距離範囲内を通過した落下物のみを検知することが可能となる。例えば、a〜bの距離範囲を通過した落下物のみを検知したい場合は、A〜Bの範囲の電圧のみを検知するように設定する。
【0030】
本実施形態においては、所望の距離範囲とは、使用者が排泄行為を行ったときに排泄物やトイレットペーパーが通過する範囲に設定されており、測距センサ100がかかる所定の範囲を落下物が通過したことを検知することにより、制御部150は、使用者によって排泄行為がなされたと判定することができる。
【0031】
本実施形態における測距センサ100は、図5(a),(b)に示すように、便器洗浄装置本体10の先端下部に設けられている。すなわち、この測距センサ100は、着座した使用者の後背部分に相当する便座20の下方に設けられている。また、発光素子101から投光される光は、ボール部の前面に向けて投光されることにより、使用者の排泄物や局部を拭いたトイレットペーパー等の落下経路をカバーすることができる。
【0032】
さらに、発光素子101から投光される光は、ボール部内に溜められた水及び使用者の体(主に使用者の臀部)に当たらない範囲で投光される。このような範囲で投光することにより、例えば、水に浮いている排泄物等や使用者の臀部を誤って検知してしまうことを防ぐことができるため、より正確に落下物を検知することができる。なお、使用者の体に当たらない範囲は、子供から成人までの男女が便座20に着座したときの臀部の沈み具合を統計的に求めた結果から得られるものである。
【0033】
本実施形態における測距センサ100は、検知領域のうち測距センサ100側の所定領域を第1検知領域200(図4におけるa〜bまでの距離範囲。)とし、第1検知領域よりも遠くの所定領域を第2検知領域201(図4におけるb〜c)としている。これら第1検知領域200と第2検知領域201との境界位置202は、子供から成人までの男女における排泄物落下位置及びトイレットペーパーの投下位置を統計的に算出することによって決定されるものである。
【0034】
このように、測距センサ100を用いて第1検知領域200内、或いは、第2検知領域201内を通過した落下物を検知し、落下物が第1検知領域200内を通過した場合、使用者により排便行為がなされたと判定し、落下物が第2検知領域201内を通過した場合、使用者により排尿行為がなされたと判定することとしたため、使用者による排泄行為を適切に判定し、当該排泄行為に応じた水量の洗浄水を給水バルブを制御して供給することが可能となる。
【0035】
また、使用者による排便行為を検知するのみでなく、使用者による排尿行為をも検知することとしているため、例えば、使用者が便座20に着座したものの排泄行為を一切しなかった場合に、洗浄水が供給されるのを防止することができる。すなわち、かかる構成とすることにより、制御部150は、使用者によって排便行為がなされたか、或いは、排尿行為がなされたかを判定するのみならず、排泄行為自体がなされたか否かを判定することができるようになるため、さらに節水に資することができる。
【0036】
なお、この測距センサ100は、排泄物だけではなく、使用者の局部を拭いたトイレットペーパー等も検知することができる。ここで、例えば、便座20に着座して排尿行為を行った使用者がトイレットペーパーを便器2のボール部内へ捨てる場合、わざわざ自分の臀部の後方から捨てることは考えづらいため、トイレットペーパーによって誤った判定がなされるおそれはない。
【0037】
次に、着座センサ110の構成について、図1、図6及び図7を参照して具体的に説明する。図6は使用者の便座20への着座位置と境界位置202との関係を示した図であって、図6(a)は平均的な着座位置に着座した使用者の着座状態を示した図、図6(b)は当該使用者の着座状態に対応した境界位置を示した図であり、図7は使用者の便座20への着座状態と境界位置202との関係を示した図であって、図7(a)は平均的な着座位置よりも前方に着座した使用者の着座状態を示した図、図7(b)は当該使用者の着座位置に対応した境界位置を示した図である。
【0038】
着座センサ110は、図1に示すように、便器洗浄装置本体10の前面上部に設けられており、上述した測距センサ100と同様のセンサで構成されている。この着座センサ110は、使用者を検知しなくなるとボール部内へ洗浄水を自動的に供給する自動洗浄手段として機能するものである。
【0039】
さらに、この着座センサ110は、上述した測距センサ100と同様のセンサが用いられているため、着座した使用者の臀部までの距離を検知することができ、制御部150は、当該検知結果に基づいて第1検知領域200と第2検知領域201との境界位置202を設定することができる構成となっている。すなわち、制御部150は、着座センサ110が検知した臀部までの距離が長くなるに従い、第1検知領域200が拡大するように境界位置202を設定することによって、使用者の行った排泄行為をより確実に判定することができる。例えば、図6(a)に示すように使用者の着座位置が平均的な位置である場合はよいが、例えば、図7(a)に示すように、使用者が平均的な着座位置を大きく外れた便座20の前方に着座した場合、当該使用者の排泄行為が排便であるにもかかわらず排泄物やトイレットペーパーが第2検知領域を通過してしまうと、制御部150によって使用者によって排尿行為がなされたと判定されることとなる。そこで、着座センサ110によって計測した使用者の臀部までの距離に基づいて境界位置202を設定することにより、かかる事態を回避することが可能となる。
【0040】
洗浄水供給部120は、ボール部内に洗浄水を供給する給水バルブ122と、給水バルブ122を駆動させる給水バルブ駆動部121とより構成され、洗浄水配管と連結することでボール部内に洗浄水を供給することができる。
【0041】
制御部150は、この給水バルブ駆動部121を制御することにより、給水バルブ122の開放状態を制御する。すなわち、制御部150は、測距センサ100が落下物が第1検知領域200内を通過したことを検知すると使用者により排便行為がなされたと判定し、第2検知領域201内を通過したことを検知すると使用者により排尿行為がなされたと判定する。さらに、着座センサ110が当該使用者を検知しなくなると使用者の排泄行為が終わったと判定し、給水バルブ駆動部121を駆動させて給水バルブ122の開放状態を変化させる。この際、制御部150は、使用者の排泄行為が排便であると判定したときは、大洗浄として排便に対応した所定時間だけ給水バルブ122を開放させ、使用者の排泄行為が排尿であると判定したときは、小洗浄として排尿に対応した所定時間だけ給水バルブ122を開放させる。本実施形態において、この所定時間は、大洗浄の場合は供給される洗浄水の総量が8リットルとなる時間であり、小洗浄の場合は供給される洗浄水の総量が6リットルとなる時間である。このように、制御部150の判定結果に応じた水量の洗浄水を給水バルブを制御してボール部内に供給することとしたため、排泄物の種別に対応した水量の洗浄水をボール部内へ適切に供給することが可能となる。
【0042】
次に、測距センサ駆動部130の構成について、図8を参照して具体的に説明する。図8は、測距センサ100が人体検知手段として機能する場合を示した図であって、図8(a)は投光する光が便蓋30の透明部31を通過する場合を示した図であり、図8(b)は投光する光が便座20と便器2の上端との間隙を通る場合を示した図であり、図8(c)は測距センサ100が人体検知手段から排泄物検知手段に切り替わった様子を示した図である。
【0043】
測距センサ駆動部130は、指向方向切替え手段として機能するものであり、制御部150の制御に基づいて測距センサ100の指向方向をボール部内方向から便器洗浄装置1の前方上方向へ切替える。これにより、制御部150は、本来排泄物検知手段として設けられている測距センサ100を使用者が便器洗浄装置1に接近したことを検知する人体検知手段として機能させることができる。また、制御部150は、測距センサ100の指向方向が当該指向方向切替え手段によって便器洗浄装置1の前方上方向に切替えられた場合、測距センサ100により便器洗浄装置1に接近した使用者を検知し、測距センサ100が便器洗浄装置1に接近した使用者を検知するとともに、着座センサ110が使用者の着座を検知すると、指向方向切替え手段を制御して測距センサ100の指向方向をボール部内方向に切替えて、測距センサ100を排泄物検知手段として機能させる。
【0044】
本実施形態における測距センサ駆動部130は、図8に示すように、測距センサ100の位置を移動させることなく回動のみさせて当該指向方向を切替えるものである。測距センサ100が人体検知手段として機能するのは、使用者が便器洗浄装置1を使用していないとき、すなわち便蓋30が閉まった状態のときであるため、本実施形態における便蓋30は、図1に示すように、先端の所定範囲を投光する光を透過させることのできる透明素材で形成した透明部31を有している。かかる構成とすることにより、便蓋30が閉まった状態であっても光を使用者に向かって投光することが可能となる。なお、光を投光する方向は、図8(a)に示すように、便蓋30の透明部31を通るようにしてもよいし、図8(b)に示すように、便座20と便器2の上端部との間隙を狙って投光させてもよい。また、図4における符号203は、人体検知手段としての測距センサ100の検知領域を示したものである。
【0045】
便蓋駆動部140は、人体検知手段としての測距センサ100が便器洗浄装置1に接近した使用者を検知すると、制御部150の制御に基づいて便蓋30を自動的に開蓋状態とする。また、便蓋駆動部140は、着座センサ110が使用者を検知しなくなると、制御部150の制御に基づいて便蓋30を自動的に閉蓋状態とする。
【0046】
以上のように構成された便器洗浄装置1における自動洗浄処理について、図9を参照して、さらに具体的に説明する。図9は、自動洗浄処理のフローチャートである。
【0047】
図9に示すように、自動洗浄処理を開始すると、制御部150は、使用者が便器洗浄装置1に接近したか否かを判定する(ステップS100)。この判定は、人体検知手段として機能している状態にある測距センサ100が便器洗浄装置1に接近した使用者を検知したか否かによって判定するものである。この処理において、使用者が便器洗浄装置1に接近したと判定すると(ステップS100:Yes)、制御部150は、便蓋駆動部140を駆動させることにより便蓋30を自動開蓋させる(ステップS101)。
【0048】
次に、制御部150は、使用者が便座20に着座したか否かを判定する(ステップS102)。この判定は、着座センサ110が便座20に着座した使用者を検知したか否かによって判定するものである。この処理において、使用者が便座20に着座したと判定すると(ステップS102:Yes)、制御部150は、着座センサ110から使用者の臀部までの距離を計測する(ステップS103)。この計測は、着座センサ110を用いて行うものであり、制御部150は、当該計測結果に基づき、第1検知領域200と第2検知領域201との境界位置202を設定する(ステップS104)。このように、使用者が便座20に着座した位置によって第1検知領域200と第2検知領域201との境界位置202を設定することで、使用者の排泄行為が排便であるか排尿であるかをさらに正確に判定することが可能となる。
【0049】
次に、制御部150は、人体検知手段として機能している状態にある測距センサ100を排泄物検知手段として機能させるため、測距センサ100の指向方向を切替える(ステップS105)。この指向方向の切替えは、測距センサ駆動部130を駆動させることによりなされるものである。
【0050】
次に、制御部150は、使用者が排便行為を行ったか否かを判定する(ステップS106)。この判定は、測距センサ100が検知した落下物が第1検知領域200内を通過したか否かによって判定するものである。この処理において、使用者が排便行為を行ったと判定すると(ステップS106:Yes)、制御部150は、処理をステップS107に移行する。
【0051】
ステップS107において、制御部150は、使用者が便座20から離れたか否か(すなわち、便座20から離座したか否か)を判定する。この判定は、着座センサ110が使用者が当該着座センサ110の検知領域から外れたか否かで判定するものである。この処理において、使用者が便座20から離れたと判定すると(ステップS107:Yes)、制御部150は、排便行為に対応した水量の洗浄水を供給する(S108)。この処理は、制御部150が給水バルブ駆動部121を制御することにより給水バルブ122の開放時間を排便に対応した時間だけ開放させることによりなされる。
【0052】
ステップS106において、使用者が排便行為を行っていないと判定すると(ステップS106:No)、制御部150は、使用者が排尿行為を行ったか否かを判定する(ステップS109)。この判定は、測距センサ100が検知した落下物が第2検知領域201内を通過したか否かによって判定するものである。この処理において、使用者が排尿行為を行ったと判定すると(ステップS109:Yes)、制御部150は、処理をステップS110に移行する。
【0053】
ステップS110において、制御部150は、使用者が便座20から離れたか否か判定する。この判定は、ステップS107と同様であり、着座センサ110が使用者が当該着座センサ110の検知領域から外れたか否かで判定するものである。この処理において、使用者が便座20から離れたと判定すると(ステップS110:Yes)、制御部150は、排尿行為に対応した水量の洗浄水を供給する(ステップS111)。この処理は、制御部150が給水バルブ駆動部121を制御することにより給水バルブ122の開放時間を排尿に対応した時間だけ開放させることによりなされる。
【0054】
ステップS110において、使用者が便座20から離れたと判定しないとき、制御部150は、処理をステップS106に移行する。
【0055】
ステップS109において、使用者により排尿行為がなされたと判定しないとき(ステップS109:No)、制御部150は、使用者が便座20から離れたか否か判定する(ステップS112)。この処理において、使用者が便座20から離れたと判定しないとき(ステップS112:No)、制御部150は、処理をステップS106に移行する。
【0056】
ステップS108、ステップS111の処理が終了したとき、或いは、ステップS112において、使用者が便座20から離れたと判定したとき(ステップS112:Yes)、制御部150は、測距センサ100の指向方向を測距センサ駆動部130を用いて切替えることにより、測距センサ100を人体検知手段として機能させる(ステップS113)。
【0057】
ステップS102において、使用者が便座20に着座していない判定すると(ステップS102:No)、制御部150は、人体検知手段として機能している状態の測距センサ100が6秒以上継続して使用者を検知したか否かを判定する(ステップS114)。この処理において、人体検知手段として機能している状態の測距センサ100が6秒以上継続して使用者を検知したと判定すると(ステップS114:Yes)、制御部150は、使用者が測距センサ100の検知領域から外れた際に、排尿に対応した水量の洗浄水をボール部内に供給することを設定する(ステップS115)。
【0058】
次に、制御部150は、使用者が測距センサ100の検知領域から外れたか否かを判定する(ステップS116)。この処理において、使用者が測距センサ100の検知領域から外れたと判定すると(ステップS116:Yes)、制御部150は、排尿行為に対応した水量の洗浄水をボール部内に供給する(ステップS117)。この処理は、制御部150が給水バルブ駆動部121を制御することにより給水バルブ122の開放時間を排尿に対応した時間だけ開放させることによりなされる。
【0059】
ステップS113、ステップS117の処理が終了したとき、或いは、ステップS114において人体検知手段として機能している状態の測距センサ100が6秒以上継続して使用者を検知したと判定しないとき、制御部150は、自動洗浄処理を終了する。
【0060】
以上、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【0061】
例えば、測距センサ駆動部130は、図11(a)に示すように、便器洗浄装置本体10内部に支持され測距センサ100をその先端部で保持する筒状の支持部材であってもよい。すなわち、測距センサ100は、この支持部材の先端に取り付けられており、例えば、図11(a)に示すように、人体検知手段として機能している測距センサ100の位置を、支持部材を回動させることにより移動させ、図11(b)に示すように排泄物検知手段として機能させることができる。
【0062】
なお、測距センサ100が人体検知手段として機能している場合、当該測距センサ100は、図10で示すように便器洗浄装置本体10の前方上部に位置している。かかる位置は、便蓋30が閉蓋した状態であっても外部に露出している位置であるため、便蓋30の一部を透明にしなくとも使用者に向けて光を投光することができる。また、測距センサ駆動部130は、着座センサ110が便座20に着座した使用者を検知すると、制御部150による制御に基づいて駆動して便器2のボール部内へ光を投光できる位置に測距センサ100を配置させる。これにより、測距センサ100は、排泄物検知手段として機能することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態における便器洗浄装置の外観図である。
【図2】本実施形態における便器洗浄装置本体のブロック構成図である。
【図3】本実施形態における測距センサの概略構成図である。
【図4】本実施形態における測距センサから得られる出力電圧と当該センサから落下物までの距離の関係を表したグラフである
【図5】本実施形態における測距センサの検知領域を示した図であって、図5(a)は便器洗浄装置の平面図、図5(b)は便器洗浄装置の側断面図である。
【図6】使用者の便座への着座位置と境界位置との関係を示した図であって、図6(a)は平均的な着座位置に着座した使用者の着座状態を示した図、図6(b)は当該使用者の着座状態に対応した境界位置を示した図である。
【図7】使用者の便座への着座状態と境界位置との関係を示した図であって、図7(a)は平均的な着座位置よりも前方に着座した使用者の着座状態を示した図、図7(b)は当該使用者の着座位置に対応した境界位置を示した図である。
【図8】本実施形態における便器洗浄装置の測距センサが人体検知手段として機能する場合を示した図であって、図8(a)は投光する光が便蓋の透明部を通過する場合を示した図であり、図8(b)は投光する光が便座と便器の上端との間隙を通る場合を示した図であり、図8(c)は測距センサが人体検知手段から排泄物検知手段に切り替わった様子を示した図である。
【図9】本実施形態における便器洗浄装置の自動洗浄処理フローチャート図である。
【図10】他の実施形態における便器洗浄装置の測距センサが人体検知手段として機能している様子を示した図であって、図10(a)は便器洗浄装置の側断面図であり、図10(b)は便器洗浄装置に使用者が着座した様子を示した図である。
【図11】他の実施形態における便器洗浄装置の外観図である。
【符号の説明】
【0064】
1 便器洗浄装置
10 便器洗浄装置本体
20 便座
30 便蓋
100 測距センサ
110 着座センサ
122 給水バルブ
130 測距センサ駆動部
140 便蓋駆動部
150 制御部
200 第1検知領域
201 第2検知領域
202 境界位置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器と、前記便器のボール部内に洗浄水を供給する給水バルブと、前記給水バルブを制御する制御部と、前記給水バルブ及び前記制御部を収納し前記便器の上部後方に配置された便器洗浄装置本体とを有する便器洗浄装置において、
前記便器のボール部内へ向けて投光した光の反射光によって前記ボール部内への落下物を検知する測距センサを前記便器洗浄装置本体に設けるとともに、
前記制御部は、
前記落下物が前記測距センサの検知領域のうち前記測距センサ側の第1検知領域内を通過した場合は使用者により排便行為がなされたと判定し、
前記落下物が前記測距センサの検知領域のうち前記第1検知領域よりも遠くの第2検知領域内を通過した場合は使用者により排尿行為がなされたと判定して、
当該判定結果に応じた水量の前記洗浄水を前記給水バルブを制御して前記ボール部内に供給すること
を特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記使用者の着座を検知するとともに、着座した前記使用者の臀部の位置を検知する着座センサを便器洗浄装置本体に設け、
前記制御部は、
前記着座センサから前記検知した臀部までの距離が長くなるに従い、前記第1検知領域が拡大するように前記第1検知領域と第2検知領域との境界位置を設定すること
を特徴とする請求項1に記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
前記測距センサの指向方向を前記ボール部内方向から前記便器洗浄装置の前方上方向へ切替える、又は、前記便器洗浄装置の前方上方向から前記ボール部内方向へ切替える指向方向切替え手段を有し、
前記制御部は、
前記測距センサの指向方向が前記指向方向切替え手段によって前記便器洗浄装置の前方上方向に切替えられた場合、前記測距センサにより前記便器洗浄装置に接近した前記使用者を検知し、
前記測距センサが前記便器洗浄装置に接近した前記使用者を検知するとともに、前記着座センサが前記使用者の着座を検知すると、前記指向方向切替え手段を制御して前記測距センサの指向方向を前記ボール部内方向に切替えて、前記測距センサにより前記ボール部内への落下物を検知すること
を特徴とする請求項2に記載の便器洗浄装置。
【請求項1】
便器と、前記便器のボール部内に洗浄水を供給する給水バルブと、前記給水バルブを制御する制御部と、前記給水バルブ及び前記制御部を収納し前記便器の上部後方に配置された便器洗浄装置本体とを有する便器洗浄装置において、
前記便器のボール部内へ向けて投光した光の反射光によって前記ボール部内への落下物を検知する測距センサを前記便器洗浄装置本体に設けるとともに、
前記制御部は、
前記落下物が前記測距センサの検知領域のうち前記測距センサ側の第1検知領域内を通過した場合は使用者により排便行為がなされたと判定し、
前記落下物が前記測距センサの検知領域のうち前記第1検知領域よりも遠くの第2検知領域内を通過した場合は使用者により排尿行為がなされたと判定して、
当該判定結果に応じた水量の前記洗浄水を前記給水バルブを制御して前記ボール部内に供給すること
を特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記使用者の着座を検知するとともに、着座した前記使用者の臀部の位置を検知する着座センサを便器洗浄装置本体に設け、
前記制御部は、
前記着座センサから前記検知した臀部までの距離が長くなるに従い、前記第1検知領域が拡大するように前記第1検知領域と第2検知領域との境界位置を設定すること
を特徴とする請求項1に記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
前記測距センサの指向方向を前記ボール部内方向から前記便器洗浄装置の前方上方向へ切替える、又は、前記便器洗浄装置の前方上方向から前記ボール部内方向へ切替える指向方向切替え手段を有し、
前記制御部は、
前記測距センサの指向方向が前記指向方向切替え手段によって前記便器洗浄装置の前方上方向に切替えられた場合、前記測距センサにより前記便器洗浄装置に接近した前記使用者を検知し、
前記測距センサが前記便器洗浄装置に接近した前記使用者を検知するとともに、前記着座センサが前記使用者の着座を検知すると、前記指向方向切替え手段を制御して前記測距センサの指向方向を前記ボール部内方向に切替えて、前記測距センサにより前記ボール部内への落下物を検知すること
を特徴とする請求項2に記載の便器洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−248669(P2008−248669A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95081(P2007−95081)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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