説明

便座取付コネクター

【課題】 便器の便座取付孔の間隔及び縦寸法が取り付ける便座の規格サイズに合わない場合であっても、その取付を可能とする便座取付コネクターを提供する。
【解決手段】 裏面部中央長手方向に断面略T字形の案内長溝を、また、中央部左右対称位置に便座本体に設けられている対の取付用ボルト孔に対応した一対又は複数対の螺子孔を備えてなるコネクタープレートと、前記案内長溝に挿嵌可能で移動自在な頭部断面形状をなすスライドボルトから構成され、前記案内長溝内に挿嵌した前記スライドボルトの設定位置を、取り付ける便器のサイズに応じ適宜調整可能とした便座取付コネクターを便器と便座本体との間に介設させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式(腰掛け式)便器に載置固定して使用する便座、主に、洗浄機能付き便座の取付コネクターに関する。
【背景技術】
【0002】
図6は附属のベースプレート105を介して洗浄機能付き便座110を便器100に取り付ける従来例を示す斜視図、図7は日本で広く使用されている国内型便器の寸法説明図である。以下、図6及び図7に基づいてその取付方の概略を説明する。100は便器、110は便座本体111及び便蓋112からなる便座、105は便座110に附設されているベースプレートである。便座110を便器100に取り付けるには、便器100の後方上面部に穿設されている一対の便座取付孔101及び102に、該便座取付孔101及び102に対応する一対のボルト孔103及び104を有するベースプレート105を、先端部分にゴムブッシュ107を差し込んだ取付ボルト106により固定する。続いて、ベースプレート105の上面部左右適宜位置に設けられた一対のガイド片108及び109に、該ガイド片108及び109に対応するよう便座本体111の後方部底面に設けられている嵌合溝(図示せず)をスライドさせながら嵌め込むことによって行われている。
【0003】
上記のように、最近では、便器100に洗浄機能付き便座110を取り付けるに当たって、便座本体111を直接便器100に取り付けるのではなく、予めベースプレート105を取付ボルト106により便器100の後方部上面に固定しておき、この固定されたベースプレート105に便座本体111をスライド嵌合させる方法が広く採用されている(以下、このような便座を「簡易取付型便座」という。)。このような簡易取付型便座にあっては、通常便座から洗浄機能付き便座に、また、旧型の洗浄機能付き便座から新型の洗浄機能付き便座に取り替えることが極めて容易となっている。
【0004】
現在、日本国内で広く普及している便器(以下、「国内型便器」という。)には、大型サイズの便器と標準サイズの便器の2種類があり、大型サイズの便器は、便器の後方上面部に設けられた便座取付孔101及び102の孔中心から便器上面部の先端までの長さ(以下、この長さを「便器縦寸法」という。)が約470mmとなっており、また、標準サイズの便器は、この便器縦寸法が約440mmとなっている。そして、便器100の後方部に穿設されている一対の便座取付孔101及び102の間隔(以下、この間隔を「便座取付孔間隔」という。)は、大型サイズも標準サイズも同じ140mmに統一されている(図7参照)。
【0005】
現在、日本国内においては、このような便器縦寸法の異なる2種類の国内型便器に対応するため、洗浄機能付き便座もそれぞれの便器サイズに対応させたものが提供されており、また、ベースプレート105に設けるボルト孔103及び104を、便器縦寸法の差(30mm)分だけ前後にずらし、それぞれ2穴ずつ二対のボルト孔103a、103b及び104a、104bを備え、便器の縦寸法に応じて前後何れか一対のボルト孔を利用することにより、いずれのサイズの便器にも適用可能としたものも提供されている(図7参照)。
【特許文献1】特開平9−308595号公報
【特許文献2】特開平11−197061号公報
【特許文献3】特開平11−299693号公報
【特許文献4】特開2002−242261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のとおり、従来より提供されている日本製の洗浄機能付き便座にあっては、簡易取付型便座であっても便器に直接便座本体を取り付ける形式の便座(以下、このような便座を「直付型便座」という。)であっても、いずれも国内型便器の規格サイズに対応したものとなっている。したがって、外国で使用されている大型サイズの便器には適用できない場合が多く、特に、便座取付孔の間隔が140mm以外の便器には全く適用できないという不都合がある。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、便器がいかなるサイズのものであっても、便座を便器に容易に取り付けることができる便座取付コネクターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、便器と便座本体(直付型便座の場合)若しくは便器とベースプレート(簡易取付型便座の場合)の間に便座取付コネクターを介在させることとし、請求項1の発明にあっては、その裏面部中央長手方向に断面略T字形の案内長溝を、また、中央部左右対称位置に取り付ける便座の取付用ボルト孔に対応した一対又は複数対の螺子孔を備えてなるコネクタープレートと、該」コネクタープレートの案内長溝に挿嵌可能で移動自在な頭部断面形状をなす対のスライドボルトから構成され、前記案内長溝内に挿嵌された前記両スライドボルトの設定位置を、取り付ける便器のサイズに応じ適宜調整可能としたことを特徴とする便座取付コネクターとした。
【0009】
請求項2の発明にあっては、前記コネクタープレートに穿設してなる螺子孔を前後に穿設された一対の長孔としたことを特徴とする請求項1に記載の便座取付コネクターとした。
【0010】
請求項3の発明にあっては、洋式便器に載置固定して使用される便座において、請求項1及び請求項2のいずれかに記載の便座取付コネクターの構成を含むことを特徴とする便座とした。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する本発明にかかる便座取付コネクターによれば、一対のスライドボルトがコネクタープレート裏面に穿設されている案内長溝に沿って移動自在であるため、取り付ける便器の便座取付孔間隔がどのような寸法であっても所望の便座を容易に取り付けることができる。
【0012】
また、コネクタープレートに穿設した螺子孔が複数対である場合、又は、該螺子孔を前後に穿設された一対の長孔とした場合にあっては、本発明にかかる便座取付コネクターを介在させることにより、便座本体の取付縦位置を自在に調整できるため、便器縦寸法がどのような便器であっても所望の便座を取り付けることができる。
【実施例】
【0013】
本実施例は、ベースプレート105を用いるタイプ(簡易取付型)の洗浄機能付き便座を便器に取り付ける場合であるが、このようなベースプレート105を介在させず、便座本体111を便器100に直づけするタイプ(直付型)の便座の場合であっても、取付ボルト106を便器100に設けられている便座取付孔101及び102に差し込むことによって便座110を便器100に載置固定するという原理的構造に何ら変わることはない。したがって、本発明による便座取付コネクターが上記いずれのタイプの便座にも適用可能であることはいうまでもない。
【0014】
なお、背景技術の項でも説明したように、国内型便器は、大型サイズのものでも標準サイズのものでも、便座取付孔間隔はいずれも140mmに設定されており、また、国内型便器の便器縦寸法は、大型サイズのもので470mm、標準サイズもので440mmとなっている(図7参照)。したがって、日本製の洗浄機能付き便座は、上記のような国内型便器に対応しているのが通例で、この場合、本発明の取付コネクターは必要としない。しかしながら、欧米やロシアなど外国で使用されている外国型便器については、殆どその便座取付孔間隔が140mm以上となっていて、このような外国型便器に日本製の洗浄機能付き便座を取り付けるには本発明の便座取付コネクターが有用となる。
【0015】
以下、日本製の洗浄機能付き便座を外国型便器に取り付ける場合の本発明の実施例について図面を参照にして説明する。なお、便器及び便座についての各符号及び簡易型便座に附属するベースプレートに関する符号は、背景技術の項で使用した図6及び図7の符号をそのまま使用する。
【0016】
図1は、本発明の一実施例である便座取付コネクター1を示した斜視図である。便座取付コネクター1は、横長方形の合成樹脂素材などからなる板状のコネクタープレート2と、スライドボルト3、3′と、ゴムブッシュ4、4′と、固定ボルト5、5′とによって部材構成され、必要に応じて座金9、9′及びナット10、10′等(図2に示す)の部材を適宜使用する。そして、コネクタープレート2には、その裏面部中央長手方向に案内長溝6が設けられ、また、中央部左右対称位置に140mm間隔での複数対の螺子孔7及び8が穿設されている。
【0017】
図示のとおり、コネクタープレート2の裏面に穿設された案内長溝6は、スライドボルト3、3′の頭部分の形状に対応する横断面略T字状をなし、スライドボルト3、3′がその頭部をもって当該案内長溝6に挿嵌可能で、且つ、移動自在な形状寸法をなす。図示実施例においては、スライドボルト3、3′の頭部が4角形状となっているが、本発明は特にこれに限定されるものではなく、スライドボルト3、3′の頭部が案内長溝6から脱落しない程度に嵌装でき、尚且つ、案内長溝6に沿って移動可能な形状寸法のものであればよい。
【0018】
また、140mm間隔にて穿設されている複数対の螺子孔7及び8は、図2で示すように、これらを連続させて一対の長孔7a、8aとしてもよく、この場合、固定ボルト5、5′は、平行な適宜位置において長孔7a及び8aを貫通させナット10、10′によって螺着固定する。この場合、固定ボルト5、5′の固定位置がズレを防止するため、ゴム材など摩擦抵抗の高い弾性素材からなるパッキンリング11、11′を裏座面とナット10、10′との間に介在させる等の手段を講じるのが好ましい。
【0019】
次に、図3に基づき本発明にかかる取付コネクター1を用いた便座取付方法について具体的に説明する。100は外国型の便器で、間隔が140mmを超える便座取付孔101及び102を備える。110は国産の簡易取付型の洗浄機能付き便座で、便座本体111及び便蓋112と、附属のベースプレート105からなる。ベースプレート105には、国内型便器の規格寸法に対応するよう140mm間隔でのボルト孔103及び104が設けられ、また、便座本体111の後方部底面に設けられている嵌合溝(図示せず)に対応するよう上面部左右両側にガイド片108及び109が形成されている。
【0020】
先にも説明したように、国内型便器に当該便座110を取り付けるには、ベースプレート105に穿設されている対のボルト孔103及び104と国内型便器に設けられている対の便座取付孔のピッチが140mmで一致しているので本発明の便座取付コネクター1は特に必要としない。しかし、外国型便器100に設けられている便座取付孔101及び102の間隔は140mmを超えているのが通例であって、国産の便座110をそのまま取り付けることはできない。
【0021】
そこで、外国型便器100に国産の洗浄機能付き便座110を取り付けるには、ベースプレート105と便器100との間に便座取付コネクター1を介装させなければならない。そのためには先ず、便座取付コネクター1とベースプレート105とを合着させる。図4はその合着状態を示した断面図で、コネクタープレート2に穿設されている螺子孔7及び8のうち、便器100の便器縦寸法に対応する一対の螺子孔7及び8を選定し、これとベースプレート105に設けられたボルト孔103及び104とを合わせ、固定ボルト5、5′によって螺着固定する。
【0022】
次に、スライドボルト3、3′をゴムブッシュ4、4′に差し込み、スライドボルト3、3′をその頭部をもってコネクタープレート2の裏面に設けられた案内長溝6にそれぞれ挿嵌する。そして、挿嵌された両スライドボルト3、3′の間隔を便器100の便座取付孔101及び102の間隔に合わせ、また、便器100の左右中間になるよう位置調整してスライドボルト3、3′に差し込まれたゴムブッシュ4、4′の部分を便器100の便座取付孔101及び102に差し込む。これによって合着した取付コネクター1とベースプレート105とは、ベースプレート105を上側にして便器100に固定される。
【0023】
続いて便座110をベースプレート105に取り付ける。便座110の取付は、背景技術の項で説明した従来例の場合と同様で、ベースプレート105の上面部左右適宜位置に設けられた一対のガイド片108及び109に、該ガイド片108及び109に対応するよう便座本体111の後方部底面に設けられている嵌合溝(図示せず)を押し込むようにして嵌め込むことによって行う。
【0024】
このようにして便座110は便器100に載置固定されるのであるが、
本発明にかかる便座取付プレート1を利用して便座110を便器100に取り付けた場合、便座取付プレート1の板厚分、便器100と便座本体111との間に隙間ができ便座110が前方向に若干傾斜する。この程度の隙間や傾斜があっても、実際に使用するに当たって特段の不都合はないが、これを解消するには、便座本体111の裏面に弾性材からなる調高片(図示せず)を適宜箇所に貼着するなどの手段を講ずればよい。
【0025】
以上、本発明の一実施例について説明したが、実施例はこれに限られることはなく、本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形可能である。例えば、上記実施例では、コネクタープレート2に設けた案内長溝6を左右両端に通ずる1本の長溝としたが、外国型便器に設けられている便座取付孔の間隔は通例140mm以上あるので、図5で示すように、案内長溝を螺子孔7、8間を除く左右2本の案内長溝6a及び6bとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施例発明である便座取付プレートを示す斜視図。
【図2】螺子孔を長孔とした場合の本実施例発明である便座取付プレートを示す斜視図。
【図3】本実施例発明である便座取付プレートを使用しての便座取付方を示す説明図。
【図4】同上の取付状態を示す部分断面図。
【図5】左右2本の案内長溝とした便座取付プレートを示す斜視図。
【図6】便座を便器に取り付ける従来例を示す斜視図。
【図7】国内型便器の寸法説明図。
【符号の説明】
【0027】
1:便座取付コネクター
2:コネクタープレート
3:スライドボルト
4:ゴムブッシュ
5:固定ボルト
6:案内長溝
7、8:螺子孔
100:便器
101、102:便座取付孔
103、104:ボルト孔
105:ベースプレート
106:取付ボルト
107:ゴムブッシュ
108、109:ガイド片
110:便座
111:便座本体
112:便蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面部中央長手方向には断面略T字形の案内長溝を有し、中央部左右対称位置には取り付ける便座の取付用ボルト孔に対応した一対又は複数対の螺子孔を穿設してなるコネクタープレートと、該コネクタープレートの案内長溝に挿嵌可能で移動自在な頭部断面形状をなす対のスライドボルトからなり、前記案内長溝内に挿嵌された前記両スライドボルトの設定位置を、取り付ける便器のサイズに応じ適宜調整可能としたことを特徴とする便座取付コネクター。
【請求項2】
前記コネクタープレートに穿設してなる螺子孔を前後方向に穿設された一対の長孔としたことを特徴とする請求項1記載の便座取付コネクター。
【請求項3】
洋式便器に載置固定して使用される便座において、請求項1及び請求項2のいずれかに記載された便座取付コネクターの構成を含むことを特徴とする便座。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−29347(P2007−29347A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−215777(P2005−215777)
【出願日】平成17年7月26日(2005.7.26)
【出願人】(595059207)全邦化成株式会社 (2)
【出願人】(505282570)
【Fターム(参考)】