説明

便座装置及びトイレ装置

【課題】 人体検知センサのよる誤検知を低下させることができる便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 便器に付設される便座装置であって、ロータンクを内蔵するケース210と、ケース210の下方に回動可能に付設された便座410と、ケース210の下方に回動可能に付設された便蓋400と、ケース210に設けられ、使用者を検知する検知用赤外線700を前方に放出する投光部233と、隣接させた2つのフォトダイオードで検知用赤外線700の反射波を検出する受光部235と、を有する人体検知センサユニット230と、を備え、人体検知センサユニット230は、受光部235を投光部233の下方に設けた便座装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置及びトイレ装置に関し、より詳細には、水洗便器に取り付けられるロータンクと人体検知センサとを備えた便座装置及びトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水洗式の腰掛便器は、便蓋や便座の自動開閉や、便器への洗浄水の自動供給などの高機能化が進んでいる。これらの自動機能を実現するためには、使用者の存在や状態を検知する人体検知センサが必要である。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている便器洗浄装置の場合、ロータンクの上方に第1の人体検知センサが設けられ、さらに、便座を開くと露出する位置に第2の人体検知センサが設けられている。男性が立ったままの状態で便器を使用する場合には、この第2の人体検知センサにより便器の自動洗浄が実行される。
また、特許文献2に開示されているシャワートイレ用センサにおいては、投光部と受光部を横に併設させた赤外線反射式のマンセンサ(人体検知センサ)を上カバー内に収め、人の有無を検出して便蓋の開閉制御を行なっている。
【特許文献1】特開2002−339430号公報
【特許文献2】特開2003−130962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これらの特許文献に挙げられた構成によれば、人体検知センサの投光部から発せられた赤外線がトイレルームに設けられた鏡や窓に反射した反射波を受光部が拾ってしまい、検知すべき人体が無いのにあたかも人が居ると誤認識してしまう反応を生じることがある。
【0005】
本発明は、上述したような人体検知センサのよる誤検知を低下させることができる便座装置及びこれを備えたトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、便器に付設される便座装置であって、ロータンクを内蔵するケースと、前記ケースの下方に回動可能に付設された便座と、前記ケースの下方に回動可能に付設され、前記便座を覆う便蓋と、前記ケースに設けられ、使用者を検知する検知用赤外線を放出する投光部と、隣接させた2つのフォトダイオードで前記検知用赤外線の反射波を検出する受光部と、を有する人体検知センサユニットと、を備え、前記人体検知センサユニットは、前記受光部を前記投光部の下方に設けたことを特徴とする便座装置が提供される。
【0007】
また、前記投光部は、検知用赤外線を発光する投光素子と投光レンズを有し、前記受光部は、前記反射波を集光する受光レンズと前記隣接させた2つのフォトダイオードを有するようにしてもよい。
【0008】
また、前記投光部と受光部の前方にフィルタを設け、該フィルタに密接されて前記投光部と受光部を隔離する隔離壁を二重壁構成にすることができる。
【0009】
さらに、前記便座及び前記便蓋が全開の状態において、前記検知用赤外線が前記便座及び前記便蓋により実質的に干渉されないようにするのが好ましい。
上記構成によれば、便蓋や便座の開閉状態にかかわらず、ひとつの人体検知センサにより使用者の存在を検知が可能となる。また、コストも低くなり、制御も容易で誤動作も防ぐことができる。
【0010】
また、便器と、前記便器に付設される請求項1〜4のいずれか1項に記載の便座装置と、を備えたことを特徴とするトイレ装置を提供することもできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、トイレルーム内の設備による誤検知の少ない便座装置及びトイレ装置を提供することができる。また、便蓋や便座の開閉状態にかかわらず、ひとつの人体検知センサにより使用者の存在を検知が可能な便座装置及びトイレ装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の外観を例示する模式図である。
【0013】
すなわち、本実施形態のトイレ装置は、水洗便器300と、その上部後方に設置された便座装置200と、を備える。便座装置200は、ロータンクが内蔵されたケース210と、その上部に設けられたケース蓋220と、ケース210の側部上端に設けられた人体検知センサユニット230と、を備えている。
【0014】
ケース210の前面(使用者に対向する面)の下方には便蓋400が回動可能に付設され、さらにその下には便座(図4参照)が回動可能に付設されている。また、ケース210の内部には、図示しない局部温水洗浄装置(商標名「ウォシュレット」などとして普及している)を内蔵させてもよい。
【0015】
また、トイレ室の壁面などにリモコン500を設置し、使用者がこのリモコン500を操作することにより、便蓋400の開閉動作、便器300の水洗洗浄動作、局部温水洗浄装置による局部洗浄動作などを実行可能とすることもできる。
【0016】
便座装置200のケース蓋220は、その前面(使用者に対向する面)から上面にいたる湾曲面220Aを有する。後に詳述するように、本発明においては、ケース蓋220に、手洗い用のスパウトと手洗い鉢を設けてもよい。その場合も、ケース蓋220の前面には湾曲面220Aが設けられる。
【0017】
そして、人体検知センサユニット230は、ケース210の上端よりも上方に突出して設けられ、その前面は、ケース蓋220の湾曲面220Aと連続的して一体的な湾曲表面を構成する湾曲部を有する。一方、人体検知センサユニット230の下には、表示部212が設けられている。この表示部212には、例えば、図2に例示した如く、ひとつあるいは複数のLEDなどの表示灯214が設けられ、便座装置200の動作状態や設定状態などを適宜表示可能としている。
【0018】
この便座装置は、内蔵するロータンクから水洗便器300に洗浄水を流すことができる。また、人体検知センサユニット230により使用者を検知して、便蓋400や便座を自動的に開閉させることができる。またさらに、人体検知センサユニット230により使用者を検知して、便器300に適量の洗浄水を最適なタイミングで自動的に流すことも可能である。
【0019】
そして、本実施形態によれば、人体検知センサユニット230をケース210の側部上端に突出させて設けることにより、便蓋400が開状態にある時も、閉状態にある時も、便器300の前にいる使用者を連続的に確実に検知することができる。
【0020】
図3及び図4は、便器300の前に立つ使用者を検知する動作を説明するための概念図である。
すなわち、これらの図面に表したように、人体検知センサユニット230からは検知用赤外線700が放射される。そして、図3に表したように、便蓋400が閉まった状態において、使用者900が便器300の前に立つと、検知用赤外線700が使用者900により反射され、その反射光が人体検知センサユニット230により検出されて使用者900を検知することができる。
【0021】
また、図4に表したように便蓋400や便座420が開いた状態においても、検知用赤外線700はこれら便蓋400や便座420に遮られることなく照射され、使用者900からの反射光も、これら便蓋400や便座420に遮られることなく人体検知センサユニット230により検出される。これは、人体検知センサユニット230をケース210の上方の中央ではなく、側部に設置したからである。
【0022】
つまり、仮に人体検知センサユニット230をケース210の上方に設置したとしても、ケース210の中央に設置したのでは、便蓋400や便座420が開いた時にこれらの干渉を受け、検知用赤外線700やその反射光が遮られてしまう。この問題を回避するためには、人体検知センサユニット230の取り付け位置をさらに高くしなければならない。このためには、ケース210の高さを高くする必要がある。
【0023】
しかし、ケース210の高さを高くすると、圧迫感が生じ、見栄えも悪く、限られたトイレ空間が狭くなるという問題が生ずる。また、ケース210を高くすると、ケース蓋220に手洗い鉢を設けた場合に、手洗い高さが高くなるため使い勝手が悪くなるという問題も生ずる。
【0024】
これに対して、本実施形態によれば、人体検知センサユニット230をケースの上方、かつ中央部ではなく側部において上方に突出させて設けることにより、ケース210の高さを低く抑えつつ、ひとつのセンサで、便蓋400や便座420の開閉状態に関わらず、使用者900を確実かつ安定的に検出することができる。このため、特許文献1に開示されている便器洗浄装置のように、複数の人体検知センサを設けてこれらを使い分ける必要がない。複数のセンサを切り替えて使用する場合、コストが高くなるばかりでなく、制御が複雑化し、誤動作が生ずる可能性も高くなる。
【0025】
これに対して、本実施形態によれば、ひとつの人体検知センサユニット230により使用者900を連続的かつ確実に検知でき、コストも低くなり、制御も容易で誤動作も防ぐことができる。また、人体検知センサのフィルタを構成する黒窓もひとつになり、外観もすっきりとして見栄えもよい。
【0026】
なお、図1乃至図4においては、人体検知センサユニット230をケース210の向かって左側部に配置した具体例を表したが、これとは反対に右側部に配置してもよい。
また一方、図4に表したように、ケース210の前面下方に着座センサ240を設けてもよい。この着座センサ240は、便座420に座った使用者900を検知し、例えば、脱臭装置(図示せず)を自動的に動作させたり、局部温水洗浄装置の動作を許可するトリガ信号を形成するために用いることができる。
【0027】
図5及び図6は、本実施形態における人体検知センサユニット230の検知方向をさらに具体的に説明するための概念図である。
すなわち、本発明者は、トイレ室のサイズや便器の配置、あるいはトイレ室における使用者の動きなどについて検討した。すなわち、検出感度が低すぎると、使用者が便器に接近しても所定の自動動作が実行されず、使い勝手が悪い。一方、遠くの人体まで検出すると、誤検知や不要な自動動作が増えてしまう。
【0028】
これらの観点から検討した結果、便器300の正面においてその先端から300ミリメータ以内の範囲に使用者が接近した時に、その存在を検知できるようにするとよいことが判明した。
【0029】
このためには、ケース200を現行の標準的なサイズとした場合に、人体検知センサユニット230から放出される検知用赤外線700は、便器300の中心線Cに向けて水平方向に約11度傾け、垂直方向には殆ど傾けずに放射させるとよい。また、後に詳述するように、検知用赤外線700のビーム広がり角度は、約4度と比較的狭くするとよい。このようにすると、便器300の前にいる使用者900を確実かつ安定的に検知できる。
【0030】
この検知条件においては、便器300の正面でその先端Y1から約300乃至100ミリメータの距離の位置Y2に使用者900が立った時に、平均的な3才児の頭部にあたる位置に検知用赤外線700が照射される。一般的に、腰掛便器を一人で使用できるようになるのは3才からであり、図5及び図6に例示した検知条件によれば、このような幼児から大人まで、便器300に接近するすべての使用者を確実に検知することができる。
【0031】
本発明によれば、このようにひとつの人体検知センサで使用者を確実に検知することができ、この検知情報に基づいて、便蓋400の自動開閉動作や、便器300の自動洗浄などの自動動作を実行させることができる。
図7及び図8は、便蓋400や便座の自動開閉動作を例示する模式図である。
すなわち、図7は、使用者900が便器300に腰掛けて使用する場合を表す。
この場合、図7(a)に表したように、まず便器300に使用者900が接近すると、検知用赤外線700の検知範囲(例えば、便器300の先端から約300ミリメータ以内)において検知され、便蓋400が矢印Aで表した方向に自動的に開く(オート開動作)。なお、便蓋400が開いた状態においても、図1乃至図6に関して前述したように、人体検知センサユニット230により使用者の検知は安定して続行される。
【0032】
そして、図7(b)に表したように、使用者900が便座420に座ると、着座センサ240(図4参照)からの検知用赤外線720により着座したことが検知される。またこの時、人体検知センサユニット230からの検知用赤外線700によっても使用者900が検知されている。このように使用者900が便座420に着座した状態を検知したら、所定の動作を開始させることができる。例えば、着座を検知して、脱臭装置を動作させることができる。また、所定の時間(例えば、6秒間)、連続的な着座を検知したら、「オート閉モード(使用者900が便器300を離れると、便蓋400が自動的に閉じる動作モード)」を許可するようにしてもよい。
【0033】
使用者900が便器300を使用した後に便座420から立ち上がると、着座センサ240の検知用赤外線720による検知範囲外となる。この時に、例えば、脱臭装置の風量を一時的に増大させてもよい。そしてさらに、図7(c)に表したように使用者900が便器300から離れると、人体検知センサユニット230からの検知用赤外線700による検知範囲外(例えば、便器300の先端から約300ミリメータ)となる。このように、人体検知センサユニット230と着座センサ240がいずれも非検知となり所定時間(例えば、90秒)が経過したら、図7(d)に表したように、便蓋400が矢印Bの方向に自動的に閉じる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、ひとつの人体検知センサユニット230とひとつの着座センサ240とにより、使用者900の存在や、着座状態を確実かつ安定的に検知し、各種の自動動作を確実に実行させることができる。
【0035】
なお、例えば、使用者900が便蓋400を手動またはリモコン500(図1参照)で閉めた場合には、その後、人体検知センサユニット230により所定時間(例えば、10秒間)の間、連続的に非検知とならないとオート開動作は実行しないようにしてもよい。このようにすれば、使用者900の意思によって、便蓋400を閉状態に維持できる。
【0036】
また、図7(b)に表した状態において「オート閉モード」が許可されなかった場合でも、人体検知センサユニット230と着座センサ240がいずれも連続して所定の時間(例えば、5分間)の間、非検知状態の場合には、自動的に便蓋400を閉じるようにしてもよい。
【0037】
また、図7(a)に表したように人体検知センサユニット230が使用者900を検知した時に、便蓋400のみならず便座420も同時に自動的に開かれるようにしてもよい。この場合、使用者900が便座420に腰掛ける時には、手動またはリモコン500で便座420をおろせばよい。なお、「オート開動作」に際して、便蓋400のみが開くか、それとも、便蓋400と便座420を開くか、は、例えば、リモコン500などにより設定変更が可能である。
【0038】
次に、図8は、男性が立った状態で便座420を使用する場合を表す。
この場合も、図8(a)に表したように、まず便器300に使用者900が接近すると、検知用赤外線700の検知範囲において検知され、便蓋400が矢印Aで表した方向に自動的に開く(オート開動作)。なお、この時に、前述した如く便座420も同時に開くようにしてもよい。
【0039】
次に、図8(b)に表したように、使用者900は必要に応じて、手動またはリモコン500により便座420を矢印Bの方向に上げる。なお、このように便蓋400や便座420が開いた状態においても、人体検知センサユニット230により使用者900を確実に検知できる。また、この場合、使用者900は、着座センサ240の検知用赤外線720からは検知範囲外にいる。
【0040】
そして、図8(c)に表したように使用者900が便器300の前に立ち続け、所定の時間(例えば、6秒間)、人体検知センサユニット230により連続的に検知したら、「オート閉モード」を許可するようにしてもよい。
【0041】
使用者900が便器300を使用した後に、図8(d)に表したように、便器300から離れると、人体検知センサユニット230からの検知用赤外線700による検知範囲外(例えば、便器300の先端から約300ミリメータ)となる。このように、人体検知センサユニット230と着座センサ240がいずれも非検知となり所定時間(例えば、90秒)が経過したら、図8(e)に表したように、便蓋400が矢印Cの方向に自動的に閉じる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、ひとつの人体検知センサユニット230により、男性の使用者900の小用動作も確実かつ安定的に検知し、各種の自動動作を確実に実行させることができる。
【0043】
次に、便器300の自動洗浄について説明する。
図9及び図10は、便器300の自動洗浄動作を例示する模式図である。
すなわち、図9は、使用者900が便器300に腰掛けて使用する場合を表す。
この場合も、図9(a)に表したように、まず便器300に使用者900が接近すると、検知用赤外線700の検知範囲(例えば、便器300の先端から約300ミリメータ以内)において検知される。ここで、図7及び図8に関して前述したように便蓋400を自動的に開いてもよい。
【0044】
そして、図9(b)に表したように、使用者900が便座420に座ると、着座センサ240(図4参照)からの検知用赤外線720により着座したことが検知される。またこの時、人体検知センサユニット230からの検知用赤外線700によっても使用者900が検知されている。着座を検知したら、脱臭装置を動作させるようにもしてよい。そして、所定の時間、連続的な着座を検知したら、「自動洗浄モード(使用者900が便器300を離れると、便器300に自動的に洗浄水を流す動作モード)」を許可するようにしてもよい。
【0045】
使用者900が便器300を使用した後に便座420から立ち上がると、着座センサ240の検知用赤外線720による検知範囲外となる。この時に、例えば、脱臭装置の風量を一時的に増大させてもよい。そしてさらに、図7(c)に表したように使用者900が便器300から離れると、人体検知センサユニット230からの検知用赤外線700による検知範囲外(例えば、便器300の先端から約300ミリメータ)となる。
【0046】
この時、例えば、着座センサ240が非検知となり所定時間(例えば、5秒間)が経過したか、または、人体検知センサユニット230と着座センサ240がいずれも非検知となり所定時間が経過したら、図9(d)に表したように、ケース210内のロータンクから便器300に洗浄水Bが自動的に供給され、水洗洗浄される。また、この際に、着座センサ240により検知した着座時間が所定時間(例えば、30秒間)以上であれば「大洗浄(流水量が多い)」を実行し、所定時間以下であれば「小洗浄(流水量が少ない)」を実行するようにしてもよい。例えば、「大洗浄」として8リッター、「小洗浄」として6リッターをそれぞれ流すことができる。このように流水量を切り替えれば、節水できる。
【0047】
次に、図10は、男性が立った状態で便座420を使用する場合を表す。
この場合も、図10(a)に表したように、まず便器300に使用者900が接近すると、検知用赤外線700の検知範囲において検知される。この時、図8(a)に関して前述したように、便蓋400(あるいは、便蓋400と便座420)を矢印Aで表した方向に自動的に開いてもよい。
【0048】
次に、図10(b)に表したように、使用者900は必要に応じて、手動またはリモコン500により便座420を矢印Bの方向に上げる。この時、使用者900は、人体検知センサユニット230により検知されているが、着座センサ240からは検知範囲外にいる。
【0049】
そして、図10(c)に表したように使用者900が便器300の前に立ち続け、所定の時間(例えば、6秒間)、人体検知センサユニット230により連続的に検知したら、「自動洗浄モード」を許可するようにしてもよい。
【0050】
使用者900が便器300を使用した後に、図10(d)に表したように、便器300から離れると、人体検知センサユニット230からの検知用赤外線700による検知範囲外となる。このように、人体検知センサユニット230が非検知となり所定時間(例えば、3秒)が経過したら、図10(e)に表したように、ケース210内のロータンクから便器300に洗浄水Cが自動的に供給され、水洗洗浄される。この際には、流水量が相対的に小さい「小洗浄」を実行する。男子小用の「小洗浄」の流水量は、例えば4.5リッター程度とすることができる。
【0051】
なお、図9及び図10に関して前述したいずれの場合も、不要な自動洗浄を防ぐため、上述のプロセスにより自動洗浄が実行された場合や、使用者900がリモコン500などを操作して洗浄した場合は、その後の所定時間(例えば、60秒間)は自動洗浄をしないように設定してもよい。
以上説明したように、本実施形態によれば、ひとつの人体検知センサユニット230により、便座420に着座した場合も、男性の使用者900の小用動作も、確実かつ安定的に検知し、所定の洗浄動作を確実に実行させることができる。
【0052】
特に、男性の使用者900が立った状態で使用する場合、特許文献1に記載された便器洗浄装置においては、便蓋が閉じた状態では第1の人体検知センサにより検知し、便蓋が開かれると第2の人体検知センサにより検知する。しかし、このように複数のセンサを切り替えて使用すると、便蓋や便座を開くタイミングや使用者の姿勢などによっては、これらセンサによる検知に空白時間が生ずるおそれもある。つまり、使用者がいずれのセンサにも検知されない瞬間が生じ、その後の自動動作に支障が生ずるおそれもある。
これに対して、本実施形態によれば、ひとつの人体検知センサユニット230により連続的かつ安定的に使用者900を検知でき、所定の自動動作を確実に実行させることができる。また、人体検知センサユニット230と着座センサ240とにより使用者900の状態を検知し、水洗洗浄の流水量を、男女の「大洗浄(8リッター)」、女性の「小洗浄(6リッター)」、男性の「小洗浄(4.5リッター)」とこまめに切り替えると、洗浄効果を低下させずに、高い効率の節水効果が得られる。
【0053】
一方、本実施形態によれば、人体検知センサユニット230に、リモコン500からの信号の受光部も内蔵させることができる。
【0054】
図1により、リモコン500からの信号の経路を説明する。
すなわち、リモコン500からは、赤外線による制御信号が送信される。この制御信号は、矢印Tで表したように、通常は上方すなわちトイレ室の天井に向けて送信される。そして、便座装置200は、矢印Rで表したように、その反射波を受信する。リモコン500から便座装置200に向けて赤外線が直接、送信されないのは、使用者などにより遮られる場合が多く、また、人体検知センサに干渉するおそれがあるからである。
【0055】
矢印Rで表したように、トイレ室の天井などで反射された赤外線を確実に受信するためには、受光部が上方を向いていることが望ましい。これに対して、本実施形態によれば、ケース蓋220の前面に湾曲面220Aを設け、人体検知センサユニット230の少なくとも上部をこの湾曲面220Aと一体的に連続する湾曲部とし、この部分にリモコン用の受光素子を上向きに内蔵させることにより、上方から伝搬する反射赤外線を確実に検出できる。
【0056】
また、人体検知センサユニット230の少なくとも上部を湾曲部とすることにより、埃や水垢などの蓄積を抑制できる。すなわち、人体検知センサユニット230の上部を仮に水平面とすると、埃や水などが堆積しやすく、これにより受光窓の透過率が低下して受光感度が経年的に低下するおそれもある。これに対して、本実施形態によれば、人体検知センサユニット230の上部を湾曲部とすることにより、埃や水垢の蓄積を抑制して、長期間に亘り安定的にリモコン500からの信号を受信できる。
【0057】
また、このようにリモコンからの信号の受光部と人体検知センサとをひとつの人体検知センサユニット230にまとめると、外観もすっきりとし見栄えがよく、またコストも下げることができる。
【0058】
以下、本実施形態における人体検知センサユニット230の内部構造について、具体例を参照しつつ説明する。
図11は、人体検知センサユニット230を斜め正面から眺めた模式図である。
また、図12は、人体検知センサユニット230を斜め後方から眺めた模式図である。
また、図13は、人体検知センサユニット230のフィルタケース231を外した状態を表す模式図である。
また、図14は、人体検知センサユニット230の断面構造を表す模式図である。
また、図15及び図16は、人体検知センサユニット230の組立図である。
【0059】
すなわち、人体検知センサユニット230は、フィルタケース231の中に、人体検知センサ232と、リモコン受光素子238とを内蔵している。フィルタケース231は、赤外線を透過させ可視光は遮る光学特性を有する。人体検知センサ232は、投光部233が下になるように、投光部233と受光部235とが上下に配置された構造を有してなり、さらに投光部233と受光部235の間には先端をフィルタケース231に密接させた二重壁構成の隔離壁250を設けている。投光部233には赤外線発光素子が内蔵され、投光レンズ234を介して収束された検知用赤外線700が放出される。検知用赤外線700の広がり角度は、図14に例示したように、例えば、7度程度にしている。一方、受光部235には、2つのフォトダイオードを隣接させてなる受光素子が内蔵され、受光レンズ236を介して収束された検知用赤外線700の反射波を検出する。
このように投光部233と受光部235とを縦方向に配置することにより、人体検知センサユニット230の横幅をスリムにでき、外観をすっきりと見栄えよくできる。また、投光部と受光部とを横方向に配置するよりも、本実施形態における縦方向配置のほうが、検知用赤外線700が便蓋400や便座420に遮られることなく、確実に使用者900を検知することができる。さらに、投光部233が受光部235より上方に設けられているので、後述するように誤検知を防止することができる。
【0060】
また、隔離壁250は、フィルタケース231の表面に汚れが付着しているときに、投光部233が発する検知用赤外線700がフィルタケース231の表面で内部反射して受光部235側に入り込むのを防ぐためのものである。この隔離壁250の二重壁間の寸法を7ミリメータ程度にしておけば、投光部233からの光がフィルタケース231の表面や裏面で2,3度反射しても、受光部235側に入り込むことがなくなる。このような構造であれば、隔離壁250をフィルタケース231と二色成形していた従来の構造よりも、製造が容易なためコストダウンが図れる。
【0061】
この人体検知センサ232は、センサホルダ237に保持され、フィルタケース231のなかに収容される。一方、その上方には、リモコン受光素子238がホルダ239に保持されてフィルタケース231の中に収容される。リモコン受光素子238は、シリコンのフォトダイオードなどを内蔵する。リモコン受光素子238の受光部は、図14に表したように、斜め上方に向けて、例えば60度の検出角度範囲を有する。このように、人体検知センサ232から放出される検知用赤外線700の方向と、リモコン受光素子238の検出角度範囲と、をそれぞれ別の方向に向けることにより、信号の干渉による誤検出や誤動作を防ぐことができる。つまり、人体検知センサ232から放出される検知用赤外線700やその反射波R2は、リモコン受光素子238には入射しにくい。同様に、リモコン500から送信される赤外線やその反射波R1も、人体検知センサ232の受光部235には入射しにくい。
その結果として、人体検知センサ232とリモコン受光素子238の誤検出を抑制し、これら誤検出に起因する誤動作を防ぐことができる。
【0062】
ここで、投光部233を受光部235より上方に設けた人体検知センサ232により誤検知を防ぐ点について説明する。
図17に示すように、LEDからなる赤外線発光素子233aは、投光レンズ234により収束され、光の主軸に沿って前方に投光するが、投光レンズ234により光が広がって周囲にも散光している。よって、通常は、光の主軸の反射波に加えて周囲に散光された弱い光の反射波も、受光素子235aが拾っている状態にある。光の主軸は、便座装置200の正面の一定距離以内に立つ人体に反射して強い反射波として受光素子235aに達し、一方、周囲への散光は弱い反射波として受光素子235aに達するので、強い反射波が2つのフォトダイオードのいずれかにスポットされるかによって、便座装置200の前に人体の有無を判定している。便座装置200の前方の壁が無垢の壁であれば、人体がいない場合であっても、壁からの反射波は人体非検知となる側のフォトダイオードにスポットされるので、人体の有無が正常に判定される。
しかし、便座装置200の前方の壁に、手洗器と鏡が配置されている場合、あるいはすりガラスを嵌め込んだ戸を設けている場合には、人体の有無を正常に判定できないことがある。すなわち、鏡やすりガラスが、赤外線発光素子233aが発する光の主軸を完全反射あるいはすり抜けてしまい、受光素子235aに入る光量が少なくなり、一方、鏡やすりガラスの周囲の壁に反射された散光が受光素子235aに多く入ることになり、その結果、光が人体検知となる側のフォトダイオードに多くスポットされるため、検知すべき人体が無いのに人体検知と判定してしまうことがある。図18によりその現象を説明する。
【0063】
図18(a)は、投光部233と受光部235を横に並設させた特許文献2の便座装置の前方の壁に鏡を設けた例を示すものである。このケースでは、人不在時に投光部233が発する光の主軸が鏡に当たり完全反射されてしまう一方、光の主軸のサイドに延在する誤検知領域は壁にかかるため、投光部233が発する散光が乱反射される。そのため、光の主軸の反射波よりも、散光の反射波が受光素子235aに多く入るため、人体検知となるフォトダイオードに多くスポットされてしまい、人体が存在するように誤検知してしまう。
図18(b)は、投光部233と受光部235を、投光部233が下方になるように配置した人体検知センサユニットを備えた便座装置の前方の壁に鏡を設けた比較例を示すものである。このケースでは、やはり人不在時に投光部233が発する光の主軸が鏡に当たり完全反射されてしまう一方、光の主軸の下方に延在する誤検知領域は鏡より下の壁にかかるため、投光部233が発する散光が乱反射される。そのため、光の主軸の反射波よりも、散光の反射波が受光素子235aに多く入るため、人体検知となるフォトダイオードに多くスポットされてしまい、人体が存在するように誤検知してしまう。
これらに対して、本発明のごとく、投光部233と受光部235を、投光部233が上方になるように配置した人体検知センサユニットを備えた便座装置の前方の壁に鏡を設けた例では、上述したような誤検知は発生しにくい。すなわち、図18(c)に示すように、人不在時に投光部233が発する光の主軸が壁に当たり完全反射されてしまう一方、光の主軸の下方に延在する誤検知領域は鏡にかかるため、投光部233が発する光の主軸が乱反射される。そのため、散光の反射波よりも光の主軸の反射波が受光素子235aに多く入るため、人体非検知となるフォトダイオードに多くスポットされることになり、人体の不在を適切に判定することができるのである。なお、このケースにおいて、光の主軸が鏡にかかったとしても、誤検知領域の鏡にかかっているため、壁による乱反射が受光素子235aに入り込むことはないので、やはり誤検知を生じることはない。
【0064】
なお、図18で説明した現象は、鏡に代えてすりガラスが存在する場合でも、同様である。
【0065】
以上具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
すなわち、本発明の便座装置及びトイレ装置を構成する要素について当業者が設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。
【0066】
例えば、ケース210、ケース蓋220、人体検知センサユニット230及びこれらに内蔵される各種の要素などについては、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の要旨を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施の形態にかかるトイレ装置の外観を例示する模式図である。
【図2】表示部212の具体例を表す正面図である。
【図3】便器300の前に立つ使用者を検知する動作を説明するための概念図である。
【図4】便器300の前に立つ使用者を検知する動作を説明するための概念図である。
【図5】本実施形態における人体検知センサユニット230の検知方向をさらに具体的に説明するための概念図である。
【図6】本実施形態における人体検知センサユニット230の検知方向をさらに具体的に説明するための概念図である。
【図7】便蓋400や便座の自動開閉動作を例示する模式図である。
【図8】便蓋400や便座の自動開閉動作を例示する模式図である。
【図9】便器300の自動洗浄動作を例示する模式図である。
【図10】便器300の自動洗浄動作を例示する模式図である。
【図11】人体検知センサユニット230を斜め正面から眺めた模式図である。
【図12】人体検知センサユニット230を斜め後方から眺めた模式図である。
【図13】人体検知センサユニット230のフィルタケース231を外した状態を表す模式図である。
【図14】人体検知センサユニット230の断面構造を表す模式図である。
【図15】人体検知センサユニット230の組立図である。
【図16】人体検知センサユニット230の組立図である。
【図17】人体検知センサ230の検知原理を説明する図である。
【図18】従来技術、比較例及び本発明による誤検知発生の様子を説明する図である。
【符号の説明】
【0068】
200 便座装置
210 ケース
220 ケース蓋
220A 湾曲面
222 スパウト
224 手洗い鉢
226 係合凹部
230 人体検知センサユニット
231 フィルタケース
232 人体検知センサ
233 投光部
233a 赤外線投光素子
234 投光レンズ
235 受光部
235a 受光素子
236 受光レンズ
237 センサホルダ
238 リモコン受光素子
239 ホルダ
240 着座センサ
252 内蓋
254 ロータンクユニット
256 防露層
257 連結管
258 分岐バルブユニット
259 給水部
260 バルブ水抜き部
270 取付基板
272 脱臭ユニット
274 補助操作部
275 脱臭吹出口
278 ノズルユニット
280 熱交換ユニット
282 室暖ユニット
284 コントローラ取付台
286 コントローラ
288 カバー
300 便器
300 水洗便器
400 便蓋
420 便座
500 リモコン
700、720 検知用赤外線
900 使用者



【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に付設される便座装置であって、
ロータンクを内蔵するケースと、
前記ケースの下方に回動可能に付設された便座と、
前記ケースの下方に回動可能に付設され、前記便座を覆う便蓋と、
前記ケースに設けられ、使用者を検知する検知用赤外線を放出する投光部と、隣接させた2つのフォトダイオードで前記検知用赤外線の反射波を検出する受光部と、を有する人体検知センサユニットと、を備え、
前記人体検知センサユニットは、前記受光部を前記投光部の下方に設けたことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記投光部は、検知用赤外線を発光する投光素子と投光レンズを有し、前記受光部は、前記反射波を集光する受光レンズと前記隣接させた2つのフォトダイオードを有することを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記投光部と受光部の前方にフィルタを設け、該フィルタに密接されて前記投光部と受光部を隔離する隔離壁を二重壁構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記便座及び前記便蓋が全開の状態において、前記検知用赤外線が前記便座及び前記便蓋により実質的に干渉されないことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項5】
便器と、
前記便器に付設される請求項1〜4のいずれか1項に記載の便座装置と、
を備えたことを特徴とするトイレ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−280674(P2006−280674A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105463(P2005−105463)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】