説明

便座装置

【課題】
便器と便座装置との間の清掃中、便座装置が前方に傾いたとき、手が便器と便座装置との間に挟まれる危惧がないようすること。
【解決手段】
前方側及び後方側に夫々座面部33及びボックス部31を備え、前記ボックス部31が便器10のリム面11の後部に立設されたブラケット20にピン32により軸支されるようにし且つ前記ボックス部31が前記ピン32を支点として起立回動されたときに前記ボックス部31と前記便器10との間に所定の空間Gが画成されるようにした便座装置30において、前記ボックス部31の後壁31Rと底面31Bとの間に傾斜面31Sを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に関し、特に便器に対して起立回動する便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器特許文献1に開示の便座装置は、起立回動されたときに、便器との間に所定の空間が画成されるようになっている。これにより、便器と便座装置との間の清掃が可能になり、これにより、便座装置と便器との間における飛散尿の堆積及びこれに伴う異臭発生を防止できる。
【特許文献1】登録実用新案第3106818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された便座装置は、確かに、上記したように実用上多大な効果を奏するが、便座装置の後壁と底面との間が、丸みを帯びているとはいえ、略90度のエッジ形状になっているので、便器と便座装置との間の清掃中に便座装置が前方に傾いたとき、手が便器とエッジの間に挟まれる危惧があり、このため、清掃時には、清掃に用いない手で便座装置を保持せねばならず、実用的とは言い難い。
【0004】
それ故に、本発明は、便器と便座装置との間の清掃中に便座装置が前方に傾いたとき、手が便器と便座装置との間に挟まれる危惧がないようすることを、その技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために講じた第1の技術的手段は、請求項1に記載のように、
「前方側に座面部を、後方側にボックス部を備え、前記ボックス部が便器のリム面の後部に立設されたブラケットにピンにより軸支されるようにし且つ前記ボックス部が前記ピンを支点として起立回動されたときに前記ボックス部と前記便器との間に所定の空間が画成されるようにした便座装置において、前記ボックス部の後壁と底面との間に傾斜面が形成したことを特徴とする、便座装置。」
を構成したことである。
【0006】
上記の課題を解決するために講じた第2の技術的手段は、請求項2に記載のように、
「後方側が便器のリム面の後部に立設されたブラケットにピンにより軸支されて閉成位置と開成位置との間を回動可能とされた便座装置において、前記閉成位置から前記開成位置への変移過程で、前記後方側と前記リム面との間に形成される空隙は、前方に向かって、順次拡開するようにしてなる、便座装置。」
を構成したことである。
【発明の効果】
【0007】
便器と便座装置との間の清掃中に便座装置が前方に傾いた場合であっても、便座装置のボックス部の後壁と底面との間には傾斜面が形成されているので、便器側に下降する便座装置が清掃する人の身体に当ったとき、この傾斜面が便座装置と便器との間の空間を維持して、挟みこみが惹起されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の便座装置を具体化した一実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1において、トイレ空間の床面(図示略)上に固定された便器10のリム面11の後部には、一対のブラケット20(一方のみ図示)が固定される。各ブラケット20は、上方の所定量だけ突出する。しかして、一対のブラケット20は、便器10の幅方向に所定の間隔をおいて、設置される。
【0010】
便器10の幅方向にブラケット20の上端部(先端部)の近傍には、便座装置30のボックス部31がピン32により軸支されている。ボックス部31には、前方に延在する座面部33が一体的に形成されている。図1に示す状態にあるとき、つまり便座装置30が、使用位置(閉成位置)にあるとき、座面部33には使用者が着座できるようになっている。しかして、ボックス部31の内部には、周知の温水洗浄装置(図示略)が収納されており、所定の操作により、ノズル(図示略)の先端部から噴射された温水が使用者の局部を洗浄するようになっている。
【0011】
尚、図1に示すように、便座装置30が、使用位置(閉成位置)にあるとき、ボックス部31の底面部31Bと便器10のリム面11との間には、殆ど隙間が形成しないようになっている。ボックス部31の後壁31Rと底面部31Bとの間には傾斜面31Sが形成されている。しかして、便座装置30が、使用位置(閉成位置)にあるとき、ボックス部31の傾斜面31Sは、後方に拡開しているが、後述するように、便座装置30の座面部33が便器10のリム面11に対して所定の角度(約35度)をなすときは、ボックス部31の傾斜面31Sは、空隙Gを介して、便器10のリム面11と略平行をなす(図3)。そして、便座装置30が起立位置ないしは不使用位置(開成位置)に変移されたときには、ボックス部31の傾斜面31Sは、前方に拡開する(図2)。
【0012】
図1の状態で便座装置30の座面部33の先端部(前端部)を手で持ち上げると、便座装置30の座面部33及びボックス部31は、ピン32を支点として回動起立され、図2に示されるように、周知の態様(例えば、図示されないロータンクへの傾止)で、起立位置ないしは不使用位置(開成位置)に保持される。かように便座装置30が起立位置ないしは不使用位置(開成位置)に変移されるのは、主として、男性の小用時若しくは便器10のリム面11の清掃時である。しかして、便座装置30が起立位置ないしは不使用位置(開成位置)に変移されたときに、便座装置30のボックス部31の後壁312と便器10のリム面11との間には所定の高さの空隙Gが形成され、この空隙Gに手を入れることにより、便器10のリム面11及びボックス部31汚れの払拭その他の清掃がなされる。尚、便座装置30のボックス部31と便器10のリム面11との間の空隙Gの形成は、便器10のリム面11からのピン32の高さ及びピン32が枢着されボックス部31の位置により決定される。また、便座装置30が起立位置ないしは不使用位置(開成位置)にあるときは、図2に示すところから明らかなように、便座装置30のボックス部31の後壁31Rと便器10のリム面11とは、略平行となっている。
【0013】
上に述べたように、便座装置30が起立位置ないしは不使用位置(開成位置)に変移されたときに、便座装置30のボックス部31の後壁312と便器10のリム面11との間には所定の高さの空隙Gが形成され、この空隙Gに手を入れることにより、便器10のリム面11及びボックス部31汚れの払拭その他の清掃がなされる。しかして、この清掃の最中、何らかの理由で、便座装置30が下降して、使用位置(閉成位置)に変移する可能性があるが、清掃は、便器10の前方に位置する人が後方向に手を伸ばして、便座装置30のボックス部31の後壁31Rと便器10のリム面11との間には所定の高さの空隙Gに手を入れることによりなされる。従って、便座装置30の下降は、途中で(使用位置ないしは閉成位置に復帰する前に)、清掃する人の身体に当って、静止する。このとき、図3に示されるように、便座装置30の座面部は便器10のリム面11に対して約35度の角度を形成すると共に、ボックス部31の後壁31Rと底面311との間に形成された傾斜面31Sは、便器10のリム面11との間の空隙Gを維持するので、清掃する者の手が便座装置30と便器10のリム面11との間に挟まれることはない。
【0014】
上記した実施形態例に係る便座装置10は、回動起立されて使用位置(閉成位置)から起立位置ないしは不使用位置(開成位置)に変移する過程において、後部(つまりボックス部31)と便器10のリム面11との間に形成される空隙Gは、起立角度が所定に達した後、次第に、前方に向かって拡開する。逆に言えば、便座装置10が不使用位置(開成位置)から使用位置(閉成位置)に回動下降する過程において、後部(つまりボックス部31)と便器10のリム面11とがなす角度が所定に達した時点で清掃する人の身体に当った場合、爾後の回動下降が阻止されると共に便器10のリム面11との間に形成される空隙Gが維持され、清掃する者の手が便座装置30と便器10のリム面11との間に挟まれることはない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る便座装置が使用位置(閉成位置)にあるときの側面図である。
【図2】図1の便座装置が不使用位置(開成位置)にあるときの側面図である。
【図3】図1のベッド装置の、長手方向に沿う内部構造を説明する図である。
【符号の説明】
【0016】
10:便器
11:リム面
20:ブラケット
30:便座装置
31:ボックス部
32:ピン
33:座面部
G :空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方側に座面部を、後方側にボックス部を備え、前記ボックス部が便器のリム面の後部に立設されたブラケットにピンにより軸支されるようにし且つ前記ボックス部が前記ピンを支点として起立回動されたときに前記ボックス部と前記便器との間に所定の空間が画成されるようにした便座装置において、前記ボックス部の後壁と底面との間に傾斜面が形成したことを特徴とする、便座装置。
【請求項2】
後方側が便器のリム面の後部に立設されたブラケットにピンにより軸支されて閉成位置と開成位置との間を回動可能とされた便座装置において、前記閉成位置から前記開成位置への変移過程で、前記後方側と前記リム面との間に形成される空隙は、前方に向かって、順次拡開するようにしてなる、便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−330682(P2007−330682A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168910(P2006−168910)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】