説明

便座装置

【課題】組み付けが容易で、見映えも清掃性も良好な便座装置を提供する。
【解決手段】便座装置は、局部洗浄装置のノズル11A等が載置され、洋風便器本体1の後部上面に取付可能なベース部材10を備えている。ベース部材10にケーシング20が固定されている。ケーシング20は、左右側壁21Aの内面に設けられた第1係止部30を有し、ベース部材10は、左右上面に設けられ、第1係止部30に係合する第1被係止部35を有している。第1係止部30には、ケーシング20の下端開口面と略平行な上面を有する第1係止片31が形成されている。第1被係止部35には、第1係止片31の上面に係合する下面を有する第1被係止片37が形成されている。第1被係止片37の下方に、ベース部材10の前端側から第1係止片31を後方にスライドさせて挿入可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の便座装置が開示されている。この便座装置は、便器洗浄タンク、局部洗浄装置等の機能装置が載置され、洋風便器本体の後部上面に取り付け可能なベース部材を備えている。ベース部材には、機能装置を収納し、ベース部材の外周端面を覆う側壁及び便座・便蓋を回動自在に軸支する軸支部を有するケーシングが固定されている。ケーシングの左右側面の下部には、ビスの頭部を収納する凹部が形成され、凹部の中心部にはネジ孔が貫設されている。ケーシングの左右側方からネジ孔にビスをねじ込むことによりベース部材にケーシングを固定することができる。
【0003】
【特許文献1】特開平8−311952号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の便座装置では、ケーシングの左右側方からビスをねじ込まなければならないため、ビスが落下しないように注意しながら組み付けなければならず手間を要する。また、側面の下部に凹部が形成されているため、見映えが悪く、凹部にほこりが溜まり易く、清掃性に劣る。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、組み付けが容易で、見映えも清掃性も良好な便座装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の便座装置は、機能装置が載置され、洋風便器本体の後部上面に取付可能なベース部材と、
該ベース部材に固定され、該機能装置を収納し、該ベース部材の外周端面を覆う側壁及び便座を回動自在に軸支する軸支部を有するケーシングとを備えた便座装置において、
前記ケーシングは、左右側壁の内面に設けられた第1係止部を有し、
前記ベース部材は、左右上面に設けられ、該第1係止部に係合する第1被係止部を有し、
該第1係止部には、該ケーシングの下端開口面と略平行な上面を有する第1係止片が形成され、
該第1被係止部には、該第1係止片の上面に係合する下面を有する第1被係止片とが形成され、
該第1被係止片の下方に、該ベース部材の前端側から該第1係止片を後方にスライドさせて挿入可能であることを特徴とする。
【0007】
この便座装置では、ベース部材に対して上方から所定の位置にケーシングを下降させた後、ベース部材の後方側にケーシングをスライドさせることにより、第1係止部と第1被係止部とを係合させることができる。つまり、ベース部材の前端側から第1係止片を後方にスライドさせ、第1被係止片の下方に第1係止片を挿入し、第1係止片の上面が第1被係止片の下面に係合可能となる。これにより、ケーシングは、ベース部材に対して上方向への移動が規制され、ベース部材に固定される。また、ケーシングは、左右側壁の外面に凹凸が設けられないため、すっきりとした外観にすることができる。さらに、ケーシングの左右側壁の外面は、ほこりが溜まり難く、清掃し易い。
【0008】
したがって、本発明の便座装置は、組み付けが容易で、見栄えも清掃性も良好である。
【0009】
第1被係止片の上面には、後方から前方に下降する傾斜面を有するガイド部材が形成され得る。この場合、ケーシングを上方からベース部材に対して下降させる際に、第1係止部をガイド部材に案内させ、第1被係止部よりベース部材の前端側に容易に位置させることができる。このため、ケーシングを上方からベース部材に対して下降させた後、ベース部材の後方側にスライドさせることにより、容易かつ確実に第1係止部と第1被係止部とを係合させることができる。
【0010】
ベース部材は、左右端縁に立設された挿入片を有し、ケーシングは、左右側壁の内面に設けられ、左右側壁の内面との間に隙間を形成し、挿入片を挟み込み可能な挟持片を有し得る。この場合、ケーシングを上方からベース部材に対して所定の位置に下降させると、挿入片が挟持片と左右側壁の内面との間の隙間に挿入されて挟み込まれる。このため、ケーシングの左右側壁の下端が左右方向に広がることを防止することができる。
【0011】
ケーシングは、前端部の後方内部に設けられ、後方に伸びた第2係止片を有する第2係止部を有し、ベース部材は、前端部に設けられ、前方に向けて開口し、第2係止片を挿入可能な凹部からなる第2被係止部を有し得る。この場合、ケーシングをベース部材に対して上方から所定の位置に下降させた後、ベース部材の後方側にスライドさせることにより、第2係止部と第2被係止部とを係合させることができる。つまり、第2係止片が凹部に挿入され、第2係止片の上面が凹部の上側内面に係合可能となる。これにより、ケーシングの前端部は、ベース部材に対して上方向への移動が確実に規制され、ベース部材に固定される。
【0012】
ベース部材は、前ベース部材と後ベース部材とから構成され、前ベース部材には、第1被係止部、第2被係止部及び挿入片が設けられ、後ベース部材は洋風便器本体の後部上面に取付可能であり、後ベース部材に対して、ケーシングが固定された前ベース部材を昇降可能な昇降装置を備え得る。この場合、便座装置を洋風便器本体の後部上面に取り付けた際、ケーシングが固定された前ベース部材を洋風便器本体の上面より上方へ上昇させることができる。この状態にすると、洋風便器本体の便鉢後方の上面を容易に清掃することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の便座装置を具体化した実施例1を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0014】
実施例1の便座装置は、図1に示すように、洋風便器本体1の後部上面に取り付け可能なベース部材10を備えている。ベース部材10は、前ベース部材11と後ベース部材12とから構成されている。前ベース部材11の上面には局部洗浄装置のノズル11Aや、図示しない温風乾燥装置等の機能装置が載置されている。後ベース部材12には、局部洗浄装置の温水タンク12Aや、脱臭及び空気清浄装置12B等の機能装置及び機能装置を制御する制御装置12Cが載置されている。
【0015】
便座装置は、前ベース部材11に固定され、機能装置を収納するケーシング20を備えている。ケーシング20は、前ベース部材11の後部下面と後ベース部材12の前部上面とが重ね合った状態のベース部材10の外周端面を覆う左右側壁21A、前側壁21B及び後側壁21Cを有している。また、ケーシング20は、前側壁21Bの上端から後方に向かって上昇する前部上面21Dと、前部上面21Dを後方に延長した仮想面よりも上方に突出し、後方に向かって上昇する後部上面21Eとを有している。前部上面21Dには、便座2及び便蓋3を回動自在に軸支する軸支部22が設けられている。便座装置は、後部上面21Eを覆う上カバー4を有している。
【0016】
ケーシング20は、図2及び図3に示すように、左右側壁21Aの内面に設けられた第1係止部30を有している。第1係止部30は、左右側壁21Aの夫々の内面に前後及び上下方向に離れて2個ずつ設けられている。第1係止部30には、左右側壁21Aの内面からケーシング20内に伸び、ケーシング20の下端開口面と略平行な上面を有する矩形状の第1係止片31が形成されている。第1係止片31の前端縁には、左右側壁21Aの内面から上下方向に伸びた前補強片32が接続されている。また、第1係止片31の後端縁の左右側壁21A側には、左右側壁21Aの内面から上下方向に伸びた後補強片33が接続されている。
【0017】
前ベース部材11は、左右上面に設けられ、第1係止部30に係合する第1被係止部35を有している。第1被係止部35には、前ベース部材11の上面から立ち上がった支持片36の上端から前ベース部材11の左右外側方向に伸び、第1係止片31の上面に係合する下面を有する第1被係止片37が形成されている。第1被係止片37の下方は、前ベース部材11の前端側が開口し、第1係止片31を挿入可能である。第1被係止片37の上面には、後方から前方に下降する傾斜面を有するガイド部材38が形成されている。
【0018】
このため、ケーシング20を上方から前ベース部材11に対して下降させる際に、第1係止部30をガイド部材38に案内させ、第1被係止部35より前ベース部材11の前端側に容易に位置させることができる。その後、前ベース部材11の後方側にケーシング20をスライドさせることにより、第1被係止片37の下方に第1係止片31が挿入され、容易かつ確実に第1係止片31の上面が第1被係止片37の下面に係合可能となる。これにより、ケーシング20は、前ベース部材11に対して上方向への移動が規制される。また、ケーシング20は、左右側壁21Aの外面に凹凸が設けられないため、すっきりとした外観にすることができる。さらに、ケーシング20の左右側壁21Aの外面は、ほこりが溜まり難く、清掃しやすい。
【0019】
したがって、実施例1の便座装置は、組み付けが容易で、見栄えも清掃性も良好である。
【0020】
前ベース部材11は、左右端縁に立設された略矩形状の挿入片45を有している。また、前ベース部材11は、前端縁に連続し、左右端縁の前端部に立設されたリブ46を有している。ケーシング20は、左右側壁21Aの内面から下向きに開口する鉤状に突設した第1挟持片41を有している。第1挟持片41は、左右側壁21Aの内面との間に隙間41Sが形成され、挿入片45を挟み込み可能である。挟持片41の前後端部の上方には、左右側壁21Aの内面から上下方向に伸びた補強片42が接続されている。また、ケーシング20は、左右側壁21Aの前端部に設けられたブロック状の第2挟持片43を有している。第2挟持片43は、左右側壁21Aの内面との間に隙間43Sを形成する切欠きが形成され、リブ46を挟み込み可能である。
【0021】
このため、ケーシング20を上方から前ベース部材11に対して所定の位置に下降させると、挿入片45が隙間41Sに挿入され、前ベース部材11の内面と第1挟持片41との間に挟み込まれ、リブ46が隙間43Sに挿入され、前ベース部材11の内面と第2挟持片43との間に挟み込まれる。このように、ケーシング20の左右側壁21Aの下端が左右方向に広がることを防止することができる。
【0022】
ケーシング20は、図2〜図4に示すように、前端部の後方内部の左右2か所に設けられた第2係止部50を有している。第2係止部50には、前部上面21Dの内面から垂下する垂下片52から後方に伸びた第2係止片51が形成されている。前ベース部材11は、前端部の左右2か所に設けられた第2被係止部55を有している。第2被係止部55には、前方に向けて開口し、第2係止片51が挿入可能な凹部56が形成されている。凹部56の開口側の上面は、開口に向けて上方に傾斜するテーパー面に形成されている。
【0023】
このため、ケーシング20を上方から前ベース部材11に対して所定の位置に下降させた後、前ベース部材11の後方側にスライドさせることにより、第2係止片51が凹部56のテーパー面に案内されて、凹部56内に挿入され、第2係止片51の上面が凹部56の上側内面に係合可能となる。これにより、ケーシング20の前端部は、前ベース部材11に対して上方向への移動が確実に規制される。
【0024】
ケーシング20は、図1及び図5に示すように、後部上面21Eの左右前方部の2か所に設けられ、底面にビスBを挿通するビス孔が貫設された凹部23を有している。前ベース部材11の後部上面には、上方に伸びた円柱状のビス固定部13が設けられている。ビス固定部13は、凹部23の下方に位置している。ケーシング20は、ケーシング20の上方から凹部23内にビスBが挿入され、ビス固定部13に螺着される。これにより、ケーシング20の前方向への移動が規制され、前ベース部材11に固定される。
【0025】
後ベース部材12には、図5及び図6に示すように、前ベース部材11の後端部の後方に昇降装置60が備えられている。昇降装置60は、基部61が後ベース部材12の上面に固定され、基部61に対して昇降する昇降部62が前ベース部材11の後部に接続されており、前ベース部材11を昇降可能に支持している。後ベース部材12は、洋風便器本体1の後部上面に取り付けられる。このため、便座装置を洋風便器本体1の後部上面に取り付けた際、ケーシング20が固定された前ベース部材11を洋風便器本体1の上面より上方へ上昇させることができる。この状態にすると、洋風便器本体1の便鉢後方の上面を容易に清掃することができる。
【0026】
ケーシング20が前ベース部材11とともに洋風便器本体1の後部上面に下降している状態では、図5に示すように、後側壁21Cの内面と後ベース部材12の後端から上方に立上がった後壁14との間は僅かな隙間しか生じない。このため、ケーシング20を前後方向にスライドさせることができない。よって、ケーシング20を前ベース部材11から着脱する場合には、図6に示すように、前ベース部材11を昇降装置60により後ベース部材12より上方に上昇させ、ケーシング20を前後方向に所定間隔Sのスライドを可能にする。つまり、後ベース部材12の上面に載置された温水タンク12A、制御装置12C等の機能装置の後端面は、上側の方が後ベース部材12の前方側に位置するように形成及び配置されているため、ケーシング20を上方に位置させることにより、前後方向にスライドさせることができる。
【0027】
このため、ケーシング20を前ベース部材11に固定する場合には、後ベース部材12から上昇させた前ベース部材11に対して、所定の位置にケーシング20を下降させた後、前ベース部材11の後方側にスライドさせることにより、第1係止部30と第1被係止部35とを係合させ、第2係止部50と第2被係止部55とを係合させる。その後、ビスBを上方から凹部23内に挿入し、ビス固定部13にケーシング20を螺着する。また、ケーシング20を前ベース部材11から取り外す場合には、後ベース部材12から前ベース部材11とともにケーシング20を上昇させた後、ビスBを外して、ケーシング20を前ベース部材11の前方側にスライドさせる。これにより、第1係止部30と第1被係止部35との係合は解除され、第2係止部50と第2被係止部55との係合も解除され、ケーシング20を前ベース部材11から取り外すことができる。
【0028】
以上において、本発明を実施例1に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨に逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0029】
例えば、ベース部材10は一枚のベース部材のみで構成されていてもよい。便座装置は便蓋3を有さなくてもよい。
ケーシング20の後部上面21Eには、凹部23や開口を形成せず、便座装置は上カバー4を有さなくてもよい。この場合、後側壁21Cにビス孔を貫設し、ケーシング20をベース部材に螺着するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は洋風水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の便座装置の分解斜視図である。
【図2】実施例1の便座装置の要部の分解斜視図である。
【図3】実施例1の便座装置の要部の斜視図である。
【図4】実施例1の便座装置の要部の断面図である。
【図5】実施例1の便座装置の前ベース部材の下降時を示す断面図である。
【図6】実施例1の便座装置の前ベース部材の上昇時を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1…洋風便器
2…便座
10…ベース部材
11…前ベース部材
11A…ノズル(機能装置)
12…後ベース部材
12A…温水タンク(機能装置)
12B…空気清浄装置(機能装置)
20…ケーシング
21A、21B、21C…側壁(21A…左右側壁、21B…前側壁、21C…後側壁)
22…軸支部
30…第1係止部
31…第1係止片
35…第1被係止部
37…第1被係止片
38…ガイド部材
41…挟持片
45…挿入片
50…第2係止部
51…第2係止片
55…第2被係止部
56…凹部
60…昇降装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能装置が載置され、洋風便器本体の後部上面に取付可能なベース部材と、
該ベース部材に固定され、該機能装置を収納し、該ベース部材の外周端面を覆う側壁及び便座を回動自在に軸支する軸支部を有するケーシングとを備えた便座装置において、
前記ケーシングは、左右側壁の内面に設けられた第1係止部を有し、
前記ベース部材は、左右上面に設けられ、該第1係止部に係合する第1被係止部を有し、
該第1係止部には、該ケーシングの下端開口面と略平行な上面を有する第1係止片が形成され、
該第1被係止部には、該第1係止片の上面に係合する下面を有する第1被係止片が形成され、
該第1被係止片の下方に、該ベース部材の前端側から該第1係止片を後方にスライドさせて挿入可能であることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記第1被係止片の上面には、後方から前方に下降する傾斜面を有するガイド部材が形成されている請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記ベース部材は、左右端縁に立設された挿入片を有し、
前記ケーシングは、左右側壁の内面に設けられ、該左右側壁の内面との間に隙間を形成し、該隙間に該挿入片を挟み込み可能な挟持片を有する請求項1又は2記載の便座装置。
【請求項4】
前記ケーシングは、前端部の後方内部に設けられ、後方に伸びた第2係止片を有する第2係止部を有し、
前記ベース部材は、前端部に設けられ、前方に向けて開口し、該第2係止片を挿入可能な凹部からなる第2被係止部を有している請求項1乃至3のいずれか1項記載の便座装置。
【請求項5】
前記ベース部材は、前ベース部材と後ベース部材とから構成され、
該前ベース部材には、前記第1被係止部、前記第2被係止部及び前記挿入片が設けられ、
該後ベース部材は洋風便器本体の後部上面に取付可能であり、
該後ベース部材に対して、前記ケーシングが固定された該前ベース部材を昇降可能な昇降装置を備えている請求項1乃至4のいずれか1項記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−279256(P2009−279256A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135718(P2008−135718)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】