説明

係留式二輪車駐車装置

【課題】不正利用を防止しながらも装置全体のコスト上昇を抑え、さらに、装置全体が頑丈に構成された係留式二輪車駐車装置を提供する。
【解決手段】一方端が装置本体1若しくは壁面や取付梁Z等の固定部に固定され、他方端には係留用の係留係合部3Rが取付けられた可撓性を有する係留部材3と、固定部に固定されて装置本体1の前面部に鉛直に起立した係留棒状部2を有し、当該係留棒状部2に隣接して先端に前記係留係合部3Rを保持する保持部を設けた揺動板が係留棒状部2に沿って揺動可能に設けられ、前記係留用の係留係合部3Rを前記係留棒状部2に掛けると共に、前記係留部材3の先端の係留係合部3Rを保持する保持部(凹部)に挿入して押し込むと、装置本体1内のロック機構部10が上記揺動板を解除方向回動不能にロック動作し、係留棒状部2から係留係合部3Rが脱出不能に施錠するように構成した係留式二輪車駐車装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道駅周辺などに設置されるオートバイ・自動二輪車等の二輪車専用の駐車装置に関するもので、具体的には、壁や支柱に吊り下げられたチェーンやワイヤー状の係留部材を、二輪車のタイヤやハンドル、或いは、本体に掛け渡して、その先端部を施錠部に固定する係留式二輪車駐車装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より自転車等の二輪車には、前輪を退出不可能にロックするロック式の駐輪装置が使用されているが、車体の重量が重くタイヤの幅が広いオートバイ・自動二輪車等の場合には、例えば特許文献1並びに2に記載の如く、壁や支柱に吊り下げられたチェーンやワイヤー状の係留部材を、二輪車のタイヤやハンドル、或いは、本体に掛け渡して、その先端部を施錠部に固定するように構成した係留式二輪車駐車装置が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3120331号公報
【特許文献2】意匠登録第1323411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1や2に記載の係留式駐輪装置では、チェーンの先端に取付けた円柱状の差込部をしっかりと装置側の着脱部に挿入しないと、差込部の溝部に施錠手段の係止部が適切に係合されず、施錠がなされないことがある。そして、これを悪用しようと利用者が差込部を着脱部に中途まで挿入し、外観上はあたかもしっかり挿入された様に装うことで、駐輪状態にあるという検出がなされないまま、利用料金を支払わずにチェーンを外して脱出するといった不正利用が容易に出来てしまうという問題があった。
【0005】
また、上記の差込部が適切に挿入されたか否かを検出して、仮に検出されなければ警報を発するとか、表示ランプを点滅させるといった対策を講じることも可能であるが、一般的に鉄道駅周辺の二輪車駐車駐輪装置は周辺の商店への買い物客も利用することから、利用開始から数十分は施錠されないという利用形態も多く存在するため、複数の検知手段や表示手段や警報手段等を追加して、装置全体のコストを上昇させることは避けなければならないという実情があった。
【0006】
さらに、係留した二輪車が風の影響で倒れた場合など、円柱状の差込部の溝部に係止部が係合された状態でチェーンに過大な引張り力が加わると、特に溝部の寸法や係止部の形状を円柱の寸法内に納めなければならないために、力を受ける箇所の構成部品を小さく構成せざるをないことから、容易に破壊されてしまうという問題もあった。
【0007】
そこで本発明の技術的課題は、上記の不正利用を防止しながらも装置全体のコスト上昇を抑え、さらに、装置全体が頑丈に構成された係留式二輪車駐車装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の技術的課題を解決するため、本発明の請求項1に係る係留式二輪車駐車装置は、チェーン状やロープ状、或いは、ワイヤー状を成す係留部材を、二輪車のタイヤハンドル、或いは、本体等に掛け渡し、この係留部材の先端部を施錠部に施錠して係留するように構成した係留式二輪車駐車装置であって、
一方端を装置本体若しくは壁面や取付梁等の固定部に固定し、他方端にはリング状又はフック状に形成した係留係合部を設けた上記の係留部材と、
上記の固定部に固定されて装置本体の前面部に配置された係留棒状部と、
当該係留棒状部に隣接し、先端部には上記係留係合部を嵌合する凹部を設けると共に、上記係留棒状部に沿って揺動可能に設けられた揺動板とによって構成され、
上記係留係合部を上記係留棒状部の先端部に掛け、且つ、上記凹部に嵌合させた状態で最奥部まで押し込むと、上記本体内に設けたロック機構部が上記揺動板を解除方向へ回動できないようにロックして、上記係留棒状部から上記係留係合部を抜き出せないように構成し、
一方、上記係留係合部が上記最奥部まで押し込まれない場合には、上記揺動板に作用させたスプリングの反力によって上記揺動板を解除方向に回動して、上記係留係合部を上記係留棒状部の先端部方向に押圧せしめることを特徴としている。
【0009】
(2)また、本発明の請求項2に係る係留式二輪車駐車装置は、前記係留棒状部の円周方向の周囲の前面部を除く略半周以上の部分を、上記装置本体に設けた凹壁部が取り囲むことにより、前記係留棒状部と前記揺動板の隣接する前記係留係合部を保持する前記凹部に対して、装置本体の外部からの棒状異物の直線的挿入が不可能と成っていることを特徴としている。
【0010】
(3)また、本発明の請求項3に係る係留式二輪車駐車装置は、係留動作前の状態において、前記係留係合部を保持する前記揺動板に設けた凹状の外形部と、前記係留棒状部の上端部近傍の直線部分までの寸法が、少なくとも係留係合部の太さの半分よりも短く構成されていることを特徴としている。
【0011】
(4)さらに、本発明の請求項4に係る係留式二輪車駐車装置は、前記チェーン状やロープ状、或いは、ワイヤー状を成す係留部材が、可撓性を有する金属性ワイヤー部材を用いて構成されていることを特徴としている。
【0012】
上記(1)で述べた請求項1に係る手段によれば、係留棒状部に係留係合部が適切に挿入されていないと、揺動板によって係留係合部が係留棒状部から脱落しやすい方向に押圧されるため、利用者が係留係合部を適切に挿入せずに、中途半端な位置に掛けて放置する不正利用がし難くなる。また、係留棒状部に対して係留係合部を有するチェーン状やロープ状若しくはワイヤー状を成す係留部材により二輪車の一部が懸架されるため、仮に二輪車が倒れた際や、無理やりチェーン状やロープ状若しくはワイヤー状を成す係留部材を手前に引き抜こうとしても、係留棒状部と係留係合部の強度によって保持されるため、簡単に破壊されることが無い。
【0013】
また、上記(2)で述べた請求項2に係る手段によれば、装置本体の外部からの異物挿入が困難となり、異物を挿入して係留状態を装う不正が難しくなり、特に簡単に入手できる直線的な棒状部材を使った不正駐車が不可能となる。
【0014】
また、上記(3)で述べた請求項3に係る手段によれば、リング状又はフック状を成す係留係合部を係留棒状部の先端に引掛けておいて放置するといった不正利用をすることが極めて困難になる。
【0015】
さらに、上記(4)で述べた請求項4に係る手段によれば、係留係合部を係留棒状部の先端に引掛けておいて放置するといった不正利用は、可撓性を有する金属製ワイヤー部材で造ったチェーン状やロープ状、或いは、ワイヤー状を成す係留部材の復元力によってすぐに脱落してしまうため、全く不可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上述べた次第で、本発明に係る係留式二輪車駐車装置によれば、利用者の意図的な不正利用を防止しながらも、装置全体のコスト上昇を抑えつつ、頑丈に構成された係留式二輪車駐車装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る係留式二輪車駐車装置の全体を示した外観図。
【図2】(イ)と(ロ)は本発明に係る係留式二輪車駐車装置の平面図と正面図、(ハ)は(ロ)に示した正面図のA−A’線に沿った断面図。
【図3】本発明に係る係留式二輪車駐車装置の使用時の状態を示した外観図。
【図4】本発明に係る係留式二輪車駐車装置の分解斜視図。
【図5】本発明に係る係留式二輪車駐車装置の係留動作時の状態を示したもので、(イ)は係留係合部が深く挿入される前の状態を示した側断面図、(ロ)は係留係合部が完全に挿入された後の状態を示した側断面図。
【図6】本発明に係る係留式二輪車駐車装置のロック動作時の状態を説明したもので、(イ)は正面図、(ロ)は平面図、(ハ)は(イ)に示した正面図のB−B’線に沿った断面図。
【図7】本発明に係る係留式二輪車駐車装置のロック動作時のフロー図。
【図8】本発明に係る係留式二輪車駐車装置と精算機の電気的構成を示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る係留式二輪車駐車装置について、図面に基づいて説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限りこれらの態様に限定されるものではない。
【0019】
図1は本発明に係る係留式二輪車駐車装置の外観図であり、取付梁体Zは図示しない壁面若しくは地面に強固に固定されている。符号TKで全体的に示した係留式二輪車駐車装置を構成する装置本体1側の前面には、凹壁部1Hが設けられ、その中央には係留棒状部2がほぼ鉛直に起立している。また、係留棒状部2と凹壁部1Hの奥側に隣接して符号10で全体的に示したロック機構部が構成されている。また装置本体1には、一方端が装置本体1の底面に固定され、他方端にはリング状又はフック状に形成した係留用の係留係合部3Rが回転自在に固定されたチェーン状やロープ状、或いは、ワイヤー状を成す係留部材3が取付けられており、使用前には図1の様に仮懸架部4に係留係合部3Rを引っ掛けておくよう別途運用案内などが表示されている。
【0020】
上記の係留部材3を構成するワイヤーは金属性の可撓性のあるワイヤーであり、その他、多数の金属性繊維の素線を撚って形成されたロープ状のものもあり、表面には樹脂コーティングが施されて車体に傷つけたり、人がワイヤーの素線の繊維に刺さって怪我をすることが無いように配慮されている。なお、ワイヤー素線の材質や撚り方や太さ等によって適度に可撓性を有して、且つ、引っ張り強度の強いワイヤーは、すでに自転車やオートバイの防犯用ワイヤー錠等で市場に普及しており、安価に入手できるものである。
【0021】
図2(イ)と(ロ)は本発明に係る係留式二輪車駐車装置の平面図と正面図を示し、(ハ)に示した断面図はちょうど係留棒状部2と前述したロック部機構10を構成する揺動板11の部分を中央で切断した正面図のA−A’断面を示している。係留棒状部2は装置本体1のシャーシ1Sに強固に固定されており、揺動板11が係留棒状部2のすぐ後ろに隣接して配置されている。揺動板11は装置本体1内の揺動板用ブラケット5(詳細は図4参照)に対して、前記取付梁体Zと平行で水平な方向に固定された揺動板支軸6を中心に、断面視で時計方向・反時計方向に回動可能に取付けられているが、断面図の状態は最も開いた状態でこれ以上の時計方向の回動は図示しない規制部によって規制されている。
【0022】
上記揺動板11の根元近傍には、揺動板11の動作を検知する揺動板検知スイッチ20の検知用の凸部11Kが形成されている。また、平面図で見て、係留棒状部2の手前側は装置本体1が開放されているが、平面視で係留棒状部2の上側半分は完全に本体ケースの凹壁部1Hに囲まれており、係留棒状部2の両側部までも本体ケースの凹壁部1Hを囲んだ壁が及んでおり、係留棒状体2に対しては本体ケースの前面方向の一部の範囲しか開口しない様に、装置本体1はそのケース形状が構成されている。
【0023】
図3は本発明に係る係留式二輪車駐車装置の使用時の状態を示した外観図であり、二点鎖線で示した二輪車のタイヤTYが図の様に進入して駐車された際に、タイヤTYのホイールの図示しない孔にワイヤー状を成す係留部材3を通して利用する状態を示している。係留係合部3Rは装置本体1に設けた凹壁部1Hの中央の係留棒状部2に上方から挿入して、ロック機構部10の機構を押し込みながら挿入することで、ロック動作が成される様に構成されており、その詳細は後述する。
【0024】
図4は本発明に係る係留式二輪車駐車装置の分解斜視図であり、一部取付ネジや電気配線部材、或いは、バネ掛け部などは省略されている。各部品の構成に関しては以下の動作状態と共に説明する。
【0025】
図5は本発明に係る係留式二輪車駐車装置の係留動作時の状態を示した断面図であって、(イ)は係留係合部3Rが完全に挿入される前の状態を示し、(ロ)は係留係合部3Rが最奥部まで挿入された後の状態を示す。また、(イ)(ロ)とも内部の状態を解かり易く示した断面図を示しているが、前述の図2の中央切断断面ではなく、前記係留棒状部2の手前で、且つ、後述するロック爪7の位置で断面を示している。
【0026】
図5(イ)の状態では、リング状又はフック状を成す係留係合部3Rが一点鎖線の如く上方より係留棒状部2に挿入された状態を示しているが、まだ内部に押し込まれる前の状態である。ロック機構部10を構成する揺動板11は前述の図2の通り最も開いているが、これは揺動板スプリング11Sが図視上で揺動板11を時計方向に回転する様に引っ張っており、揺動板11は図示しない規制部に当接して停止している。また、揺動板11には図示背面側に従動板13が相対的にスライド可能に添設され、従動板スプリング13S(図4参照)によって一方向に付勢されているが、図の状態は最も従動板13が突出した状態であり、この状態で従動板13から立設されたロックピン12が揺動板11の長丸孔11Dの端部に当接して相対的に停止している。
【0027】
また、前述のロックピン12はそのすぐ下方のロック爪7の上部の爪外形に接近しており、当該ロック爪7は揺動板用ブラケット5(図4参照)に水平で、且つ、取付梁体Zと平行な方向に固定されたロック爪支軸5Cに対し回動可能に取付けられているが、ロック爪7の回転中心より下側にロック爪スプリング7Sが掛かっており、図視上で反時計方向の付勢力を受けている。但し、図5(イ)の状態でロック爪7がこれ以上反時計方向に回動せずに停止する様、図示しない規制部で規制されている。また、ロック爪7の下方にはロックレバー8が位置しており、この状態ではロックレバー8はロック爪7を規制しない状態になっているが、詳細は後述する。
【0028】
図5(ロ)の状態は、図5(イ)の状態で係留棒状部2に挿入された係留係合部3Rをさらに下方向に押し込んだ時の状態であり、係留係合部3Rは揺動板11の凹部としての保持部11Aの端を押下することで、揺動板11は図5(ロ)の様に反時計方向に回動して動作下端に達している。この状態ではロック爪7が従動板13から立設されたロックピン12の上部をフックし、揺動板11のスイッチ検知凸部11Kは揺動板検知スイッチ20のアクチュエータ部20Sを押し上げて、スイッチONの状態となっている。また、この状態では、従動板13は揺動板11に対して相対的に後退した位置になっているが、これは従動板13の先端の部分が係留係合部3Rの太さによって係留棒状部2からその太さ分だけ後退させられているためである。
【0029】
この位置関係にあって、ロック爪7はロック爪スプリング7Sで反時計方向に回動可能に付勢され、ロックピン12に当接して停止しているが、まだこの状態では係留係合部3Rを上方に抜き出そうとする力を加えれば、ロック爪7の上壁にロックピン12から力が加わり、ロック爪スプリング7Sの引っ張り力やロック爪7の上壁の角度のバランスによって、ある程度の力でロック爪7が外れるようになっている。
【0030】
よって、利用者はまず二輪車を係留させて係留係合部3Rを係留棒状部2に深くまで押し込んでおくが、後述する設定時間(サービスタイム)以内であれば自身で係留係合部3Rを引き上げることにより、容易に係留状態を解除することができる。
【0031】
図6は本発明に係る係留式二輪車駐車装置を構成するロックレバー8のロック動作時の状態を示した説明図であり、図6(ハ)は図5(ロ)の状態で設定時間経過した後、ロックレバー8のロック動作が成された後の状態である。図6(イ)の正面図は装置本体1のケース内部の要部のみ透視して示したものであり、上記のロックレバー8は(図4で示したソレノイド用ブラケット9T上の)前後方向水平に配置されたロックレバー支軸8Aに対して回動可能に取付けられ、正面視右側先端はロックレバースプリング8Sで上方に引張り上げられ(ロックレバースプリング8Sの他端は図4に示す揺動板用ブラケット5のスプリング掛け部5Bに掛けられ)、ロックレバー8の左端は装置本体1のケース内部におけるシャーシ1S上のソレノイド用ブラケット9T(図4参照)に固定された、ソレノイド9のプランジャー9Xにプランジャーピン9Aで係合されている。
【0032】
図6(イ)の状態はすでにロックレバー8を牽引したソレノイド9が(初期の吸引状態から)解放されて、ロックレバー8を反時計方向に回動して停止した状態であり、ロックレバー検知スイッチ8X(詳細に図示しないが、揺動板用ブラケット5に固定されている)がON状態を検知している。この状態では、前記図5の状態と異なり、図6(ハ)の如くロックレバー8がロック爪7の末端部の近傍にせりあがってきており、係留係合部3Rを上方に引き抜こうとしてもロック爪7の末端部がロックレバー8に当接して開くことができず、その結果、係留係合部3Rの引き抜きが不可能となったロック(施錠)状態となっている。この状態から復帰するためには、後述するロック制御部48の指令によってソレノイド9を吸引させ、ロックレバー8の先端位置を下方に下げて、ロック爪7が外力によって外せる様にすればよい。
【0033】
以上のように構成した本発明の係留式二輪車駐車装置によれば、鉛直に起立した係留棒状部2に係留係合部3Rが適切に挿入されていないと、揺動板11によって係留係合部3Rが係留棒状部2から脱落する方向に押圧されて外れやすくなっているため、利用者が係留係合部3Rを適切に挿入せずに中途半端な位置に掛けて放置する不正利用がし難くなり、また、装置本体1のケース体の壁部より外部からの異物挿入が困難であり、異物を挿入して係留状態を装う不正が困難であり、特に直線的な棒状部材の挿入は不可能となる。さらに、係留係合部3Rを係留棒状部2の先端に引掛けておいて放置するといった不正利用が容易には出来ない。加えて係留係合部3Rを係留棒状部2の先端に引掛けておいて放置するといった不正利用は、可撓性を有する金属製ワイヤー、即ち、係留部材3の復元力によってすぐに脱落してしまうために全く出来なくなっている。
【0034】
上記不正利用の防止に関しては、図5(イ)を参照すれば解かり易いが、図の状態で揺動板11の先端の凹部としてのリング保持部11Aの下側端の高さが、その近接した係留棒状部2の先端のSR(半球)を除く直線部分の境界に比べて、係留係合部3Rの太さの半分以下の高さ差しかないように構成されている。この差が大きいと、係留係合部3Rを係留棒状部2に掛けただけで押し下げずに留め置くことが可能となってしまう。図5(イ)の位置関係では、係留係合部3Rをそのまま放置しようとしても非常に不安定な状態であり不可能である。また、揺動板11は通常は時計方向に回動しようと揺動板スプリング11Sによって付勢されているため、揺動板11を途中まで押し下げて止めることも不可能となっている。
【0035】
さらに、可撓性を有する金属製ワイヤー、即ち、係留部材3の復元力により、下方向から伸びてくる係留部材3の先端のリング状又はフック状を成す係留係合部3Rには、図5(イ)の状態で若干でも反時計方向に回転する作用が働いており、この復元力も係留係合部3Rが先端にバランスよく停止することが出来ないように作用している。但し、係留部材3を構成する可撓性を有する金属製ワイヤーの復元力は係留係合部3Rが係留棒状部2の奥まで挿入された状態では、係留棒状部3全体をひねるようにしか作用せず、係留係合部3Rが上方に抜け出す様には作用しない様になっている。
【0036】
次に、悪意のある者が意図的に揺動板11を押し下げてロック状態としてしまい、他の利用者の利用を妨げるといった悪戯に対して、本発明の対策を説明すると、図6(ロ)の平面図および図4において、揺動板11に連接して従動板13が取付けられ、従動板13は相対的に揺動板11に対して進退可能にスライドするが、従動板13の末端のバネ掛け部13Tとロック揺動板11のバネ掛けボス部11Bの間に従動板スプリング13Sが懸架されているため、基本的には従動板13は揺動板11より先端が突出する方向に付勢されている。図6(ハ)に示す断面図の様に係留係合部3Rが係留棒状部2に深くまで挿入された状態においては、従動板13は図の様に揺動板11より突出せずに奥にさがっており、その位置で従動板13から立設されたロックピン12がロック爪7に係るようになっている。
【0037】
もしもここで係留棒状部2に対して係留係合部3Rが挿入されておらず、揺動板11若しくは従動板13のみが反時計方向に回動するよう、外部より悪戯操作されたとすると、従動板13は図より前方(係留棒状部2方向)に突出するためにロックピン12が手前に移動し、その結果ロック爪7はロックピン12を係止することができなくなり、外力を解放した場合には揺動板11及び従動板13は初期の開いた状態(時計方向)に戻ってしまう。よって、悪戯によって揺動板11若しくは従動板13が下におされてしまっても、そのままでロック状態が継続してしまい、他の利用者の利用を阻害するといったことは防止出来る。
【0038】
図7は本発明におけるロック動作のフローを示し、ステップS1で揺動板検知スイッチ20のONを監視し、スイッチONとなればYESの経路を進み、ONとならなければNOの経路でステップS1の監視が継続される。YESとなってステップS2に移行すると、設定時間の経過が判定され、設定時間が経過した場合はYESとなるが、設定時間に達しない場合にはNOとなってステップS3に移行する。ステップS3では揺動板検知スイッチ20がそのままONを継続しているかどうかが監視され、仮にOFFとなった場合にはNOの経路に進み全体処理が終了する。ステップS3で揺動板検知スイッチ20がONのままであれば、ステップS2の設定時間の経過監視を継続する。
【0039】
なお、設定時間はサービスタイムであり、利用者が設定時間以内の係留だけであれば、特にロック(施錠)せずに係留係合部3Rの引き抜きを許可する時間である。公共交通機関の駅周辺環境整備のために(放置車両撲滅)設置されるような場合、サービスタイムは30分から2時間程度まで設定されている事例が多い。もちろん、設定数分でその後は料金を支払わないと解錠できない用途も可能であり、この設定は後述する精算機や、中継装置にプログラムされている。
【0040】
設定時間が経過しても係留状態が継続いていれば、ステップS4に移行してソレノイド9を解放(PUSH)し、次のステップS5でロックレバー検知スイッチ8XがONしたかどうかを判断し、ONであればYESの経路を進み、次のステップS6で装置本体1の前面に設けた表示部1PのLEDが点灯し、ロック状態へと移行する。その状態でステップS7でロック解除信号がONされるかどうかが監視され、解除信号がONしない限りNOとなってこの監視が繰り返される。ロック解除信号がONされた場合、YESの経路を進み、ステップS8でソレノイド9が吸引(PULL)され、ステップS9でロックレバー検知スイッチ8XがOFFしたかどうかを判断し、OFFであればYESの経路を進み、ステップS10で表示部のLEDが消灯して、全体の処理が終了する。
【0041】
なお、通常のソレノイドは吸引状態では常時通電して吸引しておく必要があるが、実施例ではラッチングソレノイドタイプのものを用いることを想定し、吸引状態で電流を停止させておくことができ、ソレノイドが熱くなったり、消費電流が嵩んでしまうことがない。
【0042】
ステップS5及びステップS9のロックレバー8の検知スイッチ8Xの状態監視において、ステップS5においてロックレバー検知スイッチ8XがONとならない場合、及び、ステップS9においてロックレバー検知スイッチ8XがOFFとならない場合には、夫々NOの経路に進み、ステップS11のエラー処理を経由して終了する。エラー処理は詳細は省略するが、例えば表示部1Pが点滅したり、エラー状態を精算機に送信して該当する番号の駐車装置のみ使用不可して管理者に通知するなどの処理が考えられる。
【0043】
なお、このロックレバー8の検知スイッチ8Xは必須ではなく、これを使用せずに、またステップS5及びステップS9の処理を割愛して運用することも可能であるが、同時にステップS11のエラー処理も省略することになる。安価に二輪車駐車装置を設置し、多数併設する場合などはこの様に安価なものでも良いと考えられる。
【0044】
図8は本発明に係る係留式二輪車駐車装置TKと精算機MCの構成を示したブロック図であり、一台の精算機MCと一台の中継装置PAと、複数台の係留式二輪車駐車装置TK…で構成された例である。また、中継装置PAは精算機MCと一体で構成可能であるが、係留式二輪車駐車装置TKを数十台、数百台設置するような場合には、中継装置PAも複数設けておくなどして拡張性を高くすることが出来、さらに部分的に自転車用の駐輪装置の制御と兼用する場合などにも、中継装置PAで分割しておくことで好都合となる。なお、中継装置PAから各係留式二輪車駐車装置TKに接続される電気配線は、前記図1の取付梁体Zの内部を通して配線処理をすることが常套手段であるが、各係留式二輪車駐車装置TKに無線子機を搭載し、中継装置PA内に無線親機を配置して、複数の係留式二輪車駐車装置TKを制御することも可能である。その場合、各二輪車駐車装置TK…内部にはバッテリーを持たせて、ソレノイドや電気通信部を駆動させればよい。
【0045】
なお、本発明の実施例では係留棒状部2の先端を極力短くして、中途半端に係留係合部3Rがバランスしないように工夫しているが、本発明の請求項1においては特に係留棒状部2の先端の位置関係には言及しておらず、仮に係留棒状部2が十分に長い状態であっても、そこに係留係合部3Rを挿入しただけで押し込まずに放置した場合、従来の差込部を着脱部に挿入する方式に比較して、外から目視してすぐに中途半端な状態だと認識できる。これは外部に露出した係留棒状部2に対して、係留係合部3Rを上下方向に挿入しているためであり、巡回係員がざっと見渡してその係留係合部3Rの高さの違いによって中途半端な挿入状態にあることが容易に識別できる利点を有している。この利点に関しては、係留棒状部2を鉛直でなく水平に設置していても、係員から目視し易いように前後方向の配置ではなく左右方向に(取付梁体Zと平行に)係留棒状部2を構成する様にすることでも、本発明の特徴は発揮できるため、係留棒状部2が必ずしも鉛直でない構成であってもよい。
【0046】
図8は上述した本発明に係わる係留式二輪車駐車装置TKと、本発明と共に使用される料金精算機MCと、これ等係留式二輪車駐車装置TKと料金精算機MCとの間を中継する中継装置PAの、各実施例を説明したブロック図であって、料金精算機MCはCPU31と、精算に必要な各種のプログラムを格納したメモリー32とを備え、更に、これ等CPU31とメモリー32の間にバス33を介して接続したインターフェイス34には、料金精算に必要な各種の装置、即ち、外部通信部35、インターホン36、領収証プリンタ37、コインセレクタ38、硬貨払い出し装置39、カードリーダー40、表示器41、テンキー42、操作キー43、係員呼出し釦44、スピーカ45並びに構内通信部46、が接続され、更に、上記の中継装置PAには、通信部中継装置47と、各係留式二輪車駐車装置TK…の制御部48が設けられている。
【0047】
また、本発明の応用例として、二輪車の在車を感知する感知手段と連動させ、感知状態であり、且つ、揺動板検知スイッチ20がONの場合にソレノイド9を解放するといった動作とすることも有効な手段である。
【0048】
以上の様に構成した本発明に係る係留式二輪車駐車装置によれば、利用者の意図的な不正利用を防止しながら、装置全体のコスト上昇を抑えつつ頑丈に構成された係留式二輪車駐車装置を実現することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の技術は、オートバイ・自動二輪車用の係留式二輪車駐車装置として係留方式の二輪車装置を安価で不正利用が不可能に構成したものであり、鉄道駅周辺などの公共機関が環境整備のために導入する設備として利用されることを想定しているが、例えば団地・マンション等の集合住宅での防犯用としての二輪車の係留式駐車装置としても利用される可能性が高いものである。
【符号の説明】
【0050】
Z 取付梁体
TK 係留式二輪車駐車装置
1 装置本体
1H 凹壁部
2 係留棒状部
3 係留部材(ワイヤー)
3R 係留係合部(リング又はフック)
7 ロック爪
8 ロックレバー
8X ロックレバー検知スイッチ
10 ロック機構部
11 揺動板
11A 凹部としての保持部
11S 揺動板スプリング
11K スイッチ検知凸部
12 ロックピン
13 従動板
13S 従動板スプリング
20 揺動板検知スイッチ
20S アクチュエータ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェーン状やロープ状、或いは、ワイヤー状を成す係留部材を、二輪車のタイヤハンドル、或いは、本体等に掛け渡し、この係留部材の先端部を施錠部に施錠して係留するように構成した係留式二輪車駐車装置であって、
一方端を装置本体若しくは壁面や取付梁等の固定部に固定し、他方端にはリング状又はフック状に形成した係留係合部を設けた上記の係留部材と、
上記の固定部に固定されて装置本体の前面部に配置された係留棒状部と、
当該係留棒状部に隣接し、先端部には上記係留係合部を嵌合する凹部を設けると共に、上記係留棒状部に沿って揺動可能に設けられた揺動板とによって構成され、
上記係留係合部を上記係留棒状部の先端部に掛け、且つ、上記凹部に嵌合させた状態で最奥部まで押し込むと、上記本体内に設けたロック機構部が上記揺動板を解除方向へ回動できないようにロックして、上記係留棒状部から上記係留係合部を抜き出せないように構成し、
一方、上記係留係合部が上記最奥部まで押し込まれない場合には、上記揺動板に作用させたスプリングの反力によって上記揺動板を解除方向に回動して、上記係留係合部を上記係留棒状部の先端部方向に押圧せしめることを特徴とする係留式二輪車駐車装置。
【請求項2】
前記係留棒状部の円周方向の周囲の前面部を除く略半周以上の部分を、上記装置本体に設けた凹壁部が取り囲むことにより、前記係留棒状部と前記揺動板の隣接する前記係留係合部を保持する前記凹部に対して、装置本体の外部からの棒状異物の直線的挿入が不可能と成っていることを特徴とする請求項1に記載の係留式二輪車駐車装置。
【請求項3】
係留動作前の状態において、前記係留係合部を保持する前記揺動板に設けた凹状の外形部と、前記係留棒状部の上端部近傍の直線部分までの寸法が、少なくとも係留係合部の太さの半分よりも短く構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の係留式二輪車駐車装置。
【請求項4】
前記チェーン状やロープ状、或いは、ワイヤー状を成す係留部材が、可撓性を有する金属性ワイヤー部材を用いて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の係留式二輪車駐車装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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