説明

係留方法及び装置

【課題】地震発生時に浮体構造物や固定支持装置が破損する問題を防止し且つ浮体構造物が漂流しないように係留できるようにする。
【解決手段】液体上に浮かぶ浮体構造物1と、該浮体構造物1とドルフィン3との間に備えて浮体構造物1の移動を拘束する拘束装置4を有する固定支持装置2と、浮体構造物の移動を許容して係留する緩支持装置7とを設け、地震時に、固定支持装置2の拘束装置4の少なくとも一部を切離し落下させて拘束装置4による浮体構造物1の拘束を解除し、緩支持装置7により浮体構造物1を係留する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は浮体を係留するための係留方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海上等に浮かんだ状態で設置される浮体の移動を係留するための係留装置としては、従来より種々の方式が採用されている。従来から知られている係留装置としては、主に浮体の移動を許容して係留する緩支持装置と、固定構造物により浮体の移動を拘束するようにした移動拘束支持装置とがあり、夫々目的、状況に応じて使用されている。前記緩支持装置は、チェーンやワイヤ等からなる係留索、テンションレグ、回動アーム等により浮体と海底等との間を接続して浮体の移動をある程度許容するように係留するものである。又、前記移動拘束支持装置は、剛性強度を有するドルフィン、スパット等の固定構造物を海底地盤等に固定し、固定構造物に備えたフェンダ等の拘束装置によって浮体の上下動は許容するが横方向の移動は拘束するようにしたものである。
【0003】
一方、近年では、原子力発電所、化学プラント、空港等を建設するに当たり地理的条件や他の制約等から、このような大型構造物を海上等に浮かぶ浮体構造物として設置することが提案されている。
【0004】
このような浮体構造物を海上等に設置する際には、浮体構造物を係留しておく必要があり、前記したような緩支持装置或いは移動拘束支持装置を用いて係留することができる。
【0005】
上記したような浮体構造物を海上等に係留するための係留装置の一般的な先行技術文献情報としては、特許文献1、2等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−240484号公報
【特許文献2】特開平11−222187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記した浮体構造物を緩支持装置を用いて係留した場合には、波浪や強風によって浮体構造物が大きく揺れ動く問題があり、従って、こうした揺動が問題になる浮体構造物の係留には適用することができない。
【0008】
一方、浮体構造物を緩支持装置で保持した場合には、移動拘束支持装置によって浮体構造物の横方法の移動は拘束することができる。しかし、地震時には、拘束装置に過大な負荷が作用することになり、このために拘束装置が破壊したり、更には、拘束装置を介して浮体構造物や移動拘束支持装置が破損するという問題を有していた。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑みてなしたもので、地震発生時に、浮体構造物や移動拘束支持装置が破損する問題を防止し且つ浮体構造物が漂流しないように係留できる係留方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、液体上に浮かぶ浮体構造物と固定構造物との間に備えて前記浮体構造物の移動を拘束する拘束装置を有する固定支持装置と、前記浮体構造物の移動を許容して係留する緩支持装置とを設け、地震時に、前記固定支持装置の拘束装置の少なくとも一部を切離し落下させて拘束装置による浮体構造物の拘束を解除し、緩支持装置により浮体構造物を係留することを特徴とする係留方法、に係るものである。
【0011】
上記係留方法において、地震早期監視装置からの指令信号によって前記拘束装置の切離し落下を行うことは好ましい。
【0012】
本発明は、液体上に浮かぶ浮体構造物と固定構造物との間に、被拘束部材と該被拘束部材と係合して前記浮体構造物の移動を拘束する拘束部材とを有する拘束装置を備えた固定支持装置と、前記浮体構造物の移動を許容して係留する緩支持装置とを備え、更に、地震早期監視装置からの指令信号により前記固定支持装置における拘束装置の少なくとも一部を切離して落下させる解除駆動装置を備えたことを特徴とする係留装置、に係るものである。
【0013】
上記係留装置において、前記地震早期監視装置がリアルタイム地震情報を受信して前記解除駆動装置に指令信号を発することは好ましい。
【0014】
又、上記係留装置において、前記固定支持装置は、ドルフィン、スパットのいずれかを有することができる。
【0015】
又、上記係留装置において、前記緩支持装置は、係留索、テンションレグ、回動アームの何れかを有することができる。
【0016】
又、上記係留装置において、浮体構造物と固定構造物の間に備える拘束装置が、被拘束部材と、該被拘束部材を前後左右には設定間隔で移動可能に拘束し上下にはスライド可能に嵌合した拘束部材と、前記拘被拘束部材と拘束部材の少なくとも一方を浮体構造物及び又は固定構造物に対して着脱可能に固定する固定具とを有しており、該固定具が前記解除駆動装置により切離されて前記被拘束部材と拘束部材の少なくとも一方が落下するようにしてもよい。
【0017】
又、上記係留装置において、浮体構造物と固定構造物の間に備える拘束装置が、前記浮体構造物と固定構造物の一方には、上下にスライド可能なスライドブロックと該スライドブロックに水平方向に延設した上下の支持板とからなる被拘束部材を有し、前記浮体構造物と固定構造物の他方には、前記支持板と上下に重なるように固定した固定支持板と、前記被拘束部材の支持板と固定支持板を上下に貫通し軸方向に延びた突条を有する連結ロッドとからなる拘束部材を有しており、前記連結ロッドが解除駆動装置により回転されて前記突条が支持板及び固定支持板に備えた溝部に一致することで連結ロッドが落下するようにしてもよい。
【0018】
又、上記係留装置において、浮体構造物と固定構造物の間に備える拘束装置が、地盤に固定した固定構造物の鉛直な支持ロッドに昇降可能に備えた拘束部材と、該拘束部材と前後左右には設定間隔で移動可能で上下にはスライド可能に浮体構造物に固定した被拘束部材と、前記拘束部材の上端に備えて支持ロッドの上端を閉塞する閉塞部材とを有しており、該閉塞部材が前記解除駆動装置により移動されて支持ロッドの上端が開放されることにより拘束部材が落下するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の係留方法及び装置によれば、液体上に浮かぶ浮体構造物と固定構造物との間に備えて前記浮体構造物の移動を拘束する拘束装置を備えた固定支持装置と、前記浮体構造物の移動を許容して係留する緩支持装置とを設け、地震時に、前記固定支持装置の拘束装置の少なくとも一部を切離し落下させて拘束装置による浮体構造物の拘束を解除し、緩支持装置により浮体構造物を係留するようにしたので、地震時に、浮体構造物の揺動によって移動拘束支持装置が破損する問題を防止することができ、且つ浮体構造物が漂流しなうように係留できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例を示す側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】拘束装置の一例を示す平面図である。
【図4】固定具の切離し構造を示す切断平面図である。
【図5】図4をV−V方向から見た固定具の拘束を解除する解除駆動装置の一例を示す正面図である。
【図6】図4の固定具を切離す状態を示す切断平面図である。
【図7】図5の解除駆動装置による連結を解除する状態を示す正面図である。
【図8】連結が解除されて拘束部材が落下する状態を示す平面図である。
【図9】上記実施例における拘束装置の他の例を示す側面図である。
【図10】図9の平面図である。
【図11】図9の連結ロッドを落下させる状態を示す側面図である。
【図12】図11の平面図である。
【図13】本発明の他の実施例を示す側面図である。
【図14】図13の平面図である。
【図15】図13の拘束装置の詳細を示す側面図である。
【図16】図15のXVI方向矢視図である。
【図17】図15の平面図である。
【図18】図15の拘束部材を落下させる状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0022】
図1、図2は発明の一実施例を示すもので、図中、1は海上等に浮かぶ平面四角形状の浮体構造物、2は上記浮体構造物1を取り巻くように海底地盤に固定したドルフィン3(固定構造物)を有する固定支持装置であり、前記浮体構造物1と固定支持装置2との間には拘束装置4が設けられている。前記ドルフィン3は浮体構造物1の四方を取り巻くように設置されていてもよく、又、図1、図2に示すように浮体構造物1の一辺又は二辺が岸壁5により拘束装置4で支持されていてもよい。
【0023】
更に、前記浮体構造物1は、複数のチェーン或いはワイヤ等の係留索6からなる緩支持装置7によって所要の移動範囲で移動できるように海底に係留されている。図2では、浮体構造物1は四方向に設けた係留索6によって係留されている。
【0024】
前記拘束装置4は、図1、図3に示すように、浮体構造物1に鉛直に固定されたレール状の被拘束部材8と、該被拘束部材8と嵌合し、アンカーボルトのようなJ字形を有する固定具9によってドルフィン3に固定した拘束部材10とを有しており、拘束部材10は、被拘束部材8に対して所定の間隔で前後左右には移動可能に拘束し、上下にはスライド自在となっている。1'は歩廊である。
【0025】
前記固定具9は、図4に示すように、中間部で取り離された拘束部材10側の分離端9aとドルフィン3側の固定端9bとを有しており、切離された対向端部には夫々フランジ部11a,11bが形成されている。
【0026】
又、前記ドルフィン3には、図4、図5に示す如く、断面U字形を有してピン12を中心に回動して前記フランジ部11a,11bの外側に嵌合することによりフランジ部11a,11bを連結するようにした一対の連結ブロック13,14が設けてあり、更に、前記ドルフィン3には、前記フランジ部11a,11bに対して連結ブロック13,14を回動させて嵌合・離反させるシリンダ15等からなる解除駆動装置16が設けられている。このとき、前記分離端9aが貫通するようにドルフィン3に設けられる開口17は、前記フランジ部11aが拘束部材10側へ抜け出ることができるようにフランジ部11aよりも大きい口径となっている。18は前記拘束部材10が横方向へ移動するのを阻止するストッパ部材である。
【0027】
尚、前記拘束装置4は、浮体構造物1に被拘束部材8を設けて、ドルフィン3に拘束部材10を設けた場合について例示したが、浮体構造物1に拘束部材10を設けて、ドルフィン3に被拘束部材8を設けるようにしてもよく、又、被拘束部材8に解除駆動装置16を設けて地震時に被拘束部材8が落下するようにしてもよく、更に、地震時に拘束部材10と被拘束部材8の両方が落下するようにしてもよい。
い。
【0028】
図1、図2の岸壁5の上部にはリアルタイム地震情報を受信する地震早期監視装置19が設けてあり、該地震早期監視装置19は地震時に前記解除駆動装置16に指令信号20を発することにより、フランジ部11a,11bに嵌合して分離端9aと固定端9bを連結している連結ブロック13,14を、フランジ部11a,11bから離反させて連結を解除するようになっている。前記地震早期監視装置19は浮体構造物1上に設けるようにしてもよく、又、ドルフィン3上に設けてもよい。
【0029】
次に、上記実施例の作動を説明する。
【0030】
図1、図2に示すように、浮体構造物1はドルフィン3(固定構造物)を備えた固定支持装置2と、係留索6からなる緩支持装置7によって支持されており、通常時は、前記浮体構造物1と固定支持装置2との間に備えた拘束装置4によって、浮体構造物1は移動を拘束された状態に支持されている。このとき、図5に示す解除駆動装置16のシリンダ15は伸長されて、連結ブロック13,14がフランジ部11a,11bに嵌合した状態を保持しているので、前記拘束部材10は固定具9によって堅固にドルフィン3に固定されている。
【0031】
前記拘束装置4の拘束部材10と被拘束部材8の係合によって、浮体構造物1は前後左右には僅かな移動で精度良く固定支持装置2に固定され、又、潮位の変化による上下にはスライド自在となっている。従って、浮体構造物1は海上等の任意の場所に安定して保持される。
【0032】
一方、地震時には、リアルタイム地震情報を受信している地震早期監視装置19が地震の大きさを判断し、設定強度以上の地震が発生した際には、該地震早期監視装置19は前記解除駆動装置16に指令信号20を発し、図4、図5に示すようにフランジ部11a,11bに嵌合していた連結ブロック13,14を、図6、図7に示すようにフランジ部11a,11bから離反させて固定具9の分離端9aと固定端9bの連結を解除する。
【0033】
分離端9aが切離されると、図6、図8に示すように拘束部材10は支持を失うので、分離端9aはドルフィン3から抜き出され、拘束部材10は重力によって海底に落下する。
【0034】
拘束部材10が落下すると、前記浮体構造物1の被拘束部材8とドルフィン3との間には間隔Hが形成され、浮体構造物1は上下、前後左右に自由に移動できるようになる。このとき、地震によって浮体構造物1が前後左右に移動する最大量を予め想定しておき、その最大移動量よりも大きくなるように前記間隔Hを設定しておくことにより、地震時に、前記浮体構造物1の被拘束部材8とドルフィン3が衝突して破損する問題は防止される。
【0035】
上記したように拘束部材10が落下すると、浮体構造物1は固定支持装置2による拘束からは解除されることになるが、浮体構造物1は係留索6からなる緩支持装置7によって係留されているので、浮体構造物1は漂流することなく所定の場所に係留される。
【0036】
図9、図10は、上記実施例における浮体構造物1とドルフィン3(固定構造物)の間に備える拘束装置4の他の例を示したものであり、図9、図10では、浮体構造物1には、上下にスライド可能なスライドブロック21と、該スライドブロック21に対して水平方向外側に張り出すように上下に固定した支持板22a,22bとからなる被拘束部材23を設けており、又、ドルフィン3には、水平方向外側に張出して前記支持板22a,22bを上下から挟むように上下に固定した固定支持板24a,24bからなる拘束部材25を設けており、前記支持板22bは固定支持板24b上に載置されている。
【0037】
更に、前記支持板22a,22bと固定支持板24a,24bを上下に貫通するように形成した貫通孔26には連結ロッド27が配置されており、該連結ロッド27の長手方向中間部の周面には前記被拘束部材23の上下の支持板22a,22bの間に嵌合する長さの突条28が形成されている。又、該突条28の上部には、図11に示すように、突条28を切り欠いて前記支持板22aと固定支持板24aが嵌合できる空間29が形成されてその空間29の上部には突部30が形成されている。更に、前記支持板22a,22bと固定支持板24a,24bの貫通孔26には、前記突条28及び突部30が通過できる溝部31が形成されている。従って、前記突条28を溝部31に一致させると、連結ロッドを支持板22a,22bと固定支持板24a,24bの貫通孔26に挿通させることができ、更に、前記支持板22aと固定支持板24aに空間29が一致した状態では連結ロッド27を回転させることができるので、連結ロッド27を回転させて、突条28及び突部30と溝部31の位置をずらすと、突部30が固定支持板24a上に係止されて連結ロッド27は支持されるようになっている。尚、下部の支持板22bと固定支持板24bに設けている溝部31は、破線で示すように上部の支持板22aと固定支持板24aに設けている溝部31に対して幅を大きく形成している。
【0038】
前記ドルフィン3には、前記突条28及び突部30と嵌合する平面コの字形の係合金具32を有して連結ロッド27を水平回転させることにより、突部30が溝部31からずれた位置と、突部30が溝部31と一致した位置とに移動させるようにしたシリンダ33等の解除駆動装置34を設けている。
【0039】
図9、図10では、通常時は、解除駆動装置34のシリンダ33が縮小しており、このとき、支持板22a,22bと固定支持板24a,24bの貫通孔26に貫通した連結ロッド27の突部30及び突条28は溝部31からずれた位置に保持されている。従って、被拘束部材23と拘束部材25は連結ロッド27により連結されるので浮体構造物1は拘束装置4によって拘束される。
【0040】
一方、地震時には、地震早期監視装置19は前記解除駆動装置34に指令信号20を発して、図11、図12に示すように、シリンダ33を伸長させる。すると、突部30及び突条28の位置が溝部31に一致され、これにより連結ロッド27は重力により海底に落下する。
【0041】
連結ロッド27が落下すると、被拘束部材23と拘束部材25との連結は解除され、前記浮体構造物1の被拘束部材23とドルフィン3との間、及びドルフィン3の拘束部材25と浮体構造物1との間には間隔Hが形成され、浮体構造物1は上下、前後左右に自由に移動することができる。従って、地震によって浮体構造物1が前後左右方向に移動しても、前記浮体構造物1と固定支持板24a,24b、ドルフィン3と支持板22a,22bが衝突して破損する問題は防止される。又、このとき、浮体構造物1が係留索6からなる緩支持装置7によって係留されることは前記と同様である。
【0042】
図13、図14は、本発明の他の実施例を示すもので、図13、図14では、海底地盤に固定するようにしたスパット35(固定構造物)を有する固定支持装置2を設けた場合を示しており、前記スパット35から浮体構造物1を貫通するように鉛直に設けられた支持ロッド36と浮体構造物1との間に拘束装置4を設けている。前記浮体構造物1は2ヶ所に設けたスパット35からなる固定支持装置2によって支持されており、更に、浮体構造物1は四方に設けた係留索6による緩支持装置7によって係留されている。
【0043】
前記拘束装置4は、前記支持ロッド36に昇降可能に嵌合した矩形ブロック形状の拘束部材37と、該拘束部材37と前後左右には設定間隔で移動でき上下にはスライドできるように浮体構造物1に固定したフェンダ等からなる被拘束部材38を有している。
【0044】
更に、前記拘束部材37の上端には、図15、図16、図17に示すように、支持ロッド36の上端を閉塞する閉塞部材39が配置されており、閉塞部材39は横方向一方向への移動のみを許す係止具40によって支持されている。更に、前記閉塞部材39の上部には鉛直なロッド41が固定されていると共に、該ロッド41に対して昇降可能に嵌合した嵌合管42が設けてあり、該嵌合管42は、浮体構造物1に設けたシリンダ43等からなる解除駆動装置44の伸縮ロッド43aに固定されており、前記シリンダ43を伸縮すると、閉塞部材39を移動させて前記支持ロッド36の上端を閉塞した状態と解放した状態とに切換えられるようになっている。
【0045】
図13〜図17の実施例では、通常時は、解除駆動装置44のシリンダ43は伸長されて、閉塞部材39が支持ロッド36の上端を閉塞しており、よって、拘束部材37は閉塞部材39によって支持ロッド36の上端に支持されている。このとき、浮体構造物1が波浪により昇降するとロッド41も昇降するが、ロッド41に昇降可能に嵌合した嵌合管42によって閉塞部材39の位置が位置決めされているので閉塞部材39が移動することはない。従って、上記支持ロッド36に支持された拘束部材37と該拘束部材37を取り巻くように浮体構造物1に備えられた被拘束部材38からなる拘束装置4によって、浮体構造物1は前後左右方向の移動が拘束される。
【0046】
一方、地震時には、地震早期監視装置19は前記解除駆動装置44に指令信号20を発して、図18に示すようにシリンダ43を縮小させる。すると、支持ロッド36の上端を閉塞していた閉塞部材39が移動されて支持ロッド36の上端を開放するので、支持ロッド36に支持されていた拘束部材37は支持を失って重力により下方に落下する。
【0047】
拘束部材37が落下すると、拘束部材37と支持ロッド36との間には間隔Hが形成され、浮体構造物1は上下、前後左右に自由に移動することができるようになる。従って、地震によって浮体構造物1が前後左右方向に移動しても、支持ロッド36と被拘束部材38が衝突して破損する問題は防止される。又、このとき、浮体構造物1が係留索6からなる緩支持装置7によって係留されることは前記と同様である。
【0048】
尚、本発明の係留方法及び装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 浮体構造物
2 固定支持装置
3 ドルフィン(固定構造物)
4 拘束装置
6 係留索
7 緩支持装置
8 被拘束部材
9 固定具
10 拘束部材
16 解除駆動装置
19 地震早期監視装置
20 指令信号
21 スライドブロック
22a,22b 支持板
23 被拘束部材
24a,24b 固定支持板
25 拘束部材
27 連結ロッド
28 突条
29 空間
30 突部
31 溝部
34 解除駆動装置
35 スパット(固定構造物)
36 支持ロッド
37 拘束部材
38 被拘束部材
39 閉塞部材
44 解除駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体上に浮かぶ浮体構造物と固定構造物との間に備えて前記浮体構造物の移動を拘束する拘束装置を有する固定支持装置と、前記浮体構造物の移動を許容して係留する緩支持装置とを設け、地震時に、前記固定支持装置の拘束装置の少なくとも一部を切離し落下させて拘束装置による浮体構造物の拘束を解除し、緩支持装置により浮体構造物を係留することを特徴とする係留方法。
【請求項2】
地震早期監視装置からの指令信号によって前記拘束装置の切離し落下を行うことを特徴とする請求項1に記載の係留方法。
【請求項3】
液体上に浮かぶ浮体構造物と固定構造物との間に、被拘束部材と該被拘束部材と係合して前記浮体構造物の移動を拘束する拘束部材とを有する拘束装置を備えた固定支持装置と、前記浮体構造物の移動を許容して係留する緩支持装置とを備え、更に、地震早期監視装置からの指令信号により前記固定支持装置における拘束装置の少なくとも一部を切離して落下させる解除駆動装置を備えたことを特徴とする係留装置。
【請求項4】
前記地震早期監視装置はリアルタイム地震情報を受信して前記解除駆動装置に指令信号を発することを特徴とする請求項3に記載の係留装置。
【請求項5】
前記固定支持装置は、ドルフィン、スパットのいずれかを有することを特徴とする請求項3又は4に記載の係留装置。
【請求項6】
前記緩支持装置は、係留索、テンションレグ、回動アームの何れかであることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の係留装置。
【請求項7】
浮体構造物と固定構造物の間に備える拘束装置が、被拘束部材と、該被拘束部材を前後左右には設定間隔で移動可能に拘束し上下にはスライド可能に嵌合した拘束部材と、前記拘被拘束部材と拘束部材の少なくとも一方を浮体構造物及び又は固定構造物に対して着脱可能に固定する固定具とを有しており、該固定具が前記解除駆動装置により切離されて前記被拘束部材と拘束部材の少なくとも一方が落下するようにしたことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つに記載の係留装置。
【請求項8】
浮体構造物と固定構造物の間に備える拘束装置が、前記浮体構造物と固定構造物の一方には、上下にスライド可能なスライドブロックと該スライドブロックに水平方向に延設した上下の支持板とからなる被拘束部材を有し、前記浮体構造物と固定構造物の他方には、前記支持板と上下に重なるように固定した固定支持板と、前記被拘束部材の支持板と固定支持板を上下に貫通し軸方向に延びた突条を有する連結ロッドとからなる拘束部材を有しており、前記連結ロッドが解除駆動装置により回転されて前記突条が支持板及び固定支持板に備えた溝部に一致することで連結ロッドが落下するようにしたことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つに記載の係留装置。
【請求項9】
浮体構造物と固定構造物の間に備える拘束装置が、地盤に固定した固定構造物の鉛直な支持ロッドに昇降可能に備えた拘束部材と、該拘束部材と前後左右には設定間隔で移動可能で上下にはスライド可能に浮体構造物に固定した被拘束部材と、前記拘束部材の上端に備えて支持ロッドの上端を閉塞する閉塞部材とを有しており、該閉塞部材が前記解除駆動装置により移動されて支持路ロッドの上端が開放されることにより拘束部材が落下するようにしたことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1つに記載の係留装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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