説明

係留装置

取り外し可能上部タイプ係留杭と調整可能係留ドルフィンとを使用して現場で浮上構造体を係留する装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、桟橋、プラットフォームなどのような浮揚構造物の係留装置に関する。より詳細には、本発明は、埋め込み可能な係留杭および周囲の係留ドルフィンとを利用し、浮揚構造物を固定することが可能である係留装置に関する。この装置は、浮揚構造物を、海底に押し込まれる下方固定部と、下方固定部にフランジ同士でボルト締めされた上方着脱部分とを有する係留杭に取り付けることを可能にする。
【0002】
このようにして形成された係留杭は、設計位置と比べて係留杭の位置の許容施工偏心を考慮する調整可能係留ドルフィンを使用して浮揚構造物に取り付けられる。
【背景技術】
【0003】
風、波、および、流れの影響を受ける浮揚構造物は、指定された場所から離れることを防止するために係留される。従来の係留装置は、
(a)浮揚構造物が陸側に衝突することを防止するためフェンダ付きの岸側係柱に縛り付けられた係留索と、
(b)海底に押し込まれる単一の連続した長さの係留杭、および、浮揚構造物を係留杭に連結する係留ドルフィンとを利用する。
【0004】
ある特許された設計は、浮揚構造物の底を海底に設置された固定点に連結するため弾性ロープを使用する。
【0005】
既存の方法の欠点は次の通りである。
【0006】
(a)岸側に縛り付けられた係留索は、浮揚構造物が船首および船尾の方向へ移動することを可能にする。また、係留索は、浮揚構造物が横揺れおよび縦揺れの回転運動をすることを防止しない。
【0007】
(b)係留杭は、上記の問題を解決するが、従来の単一の連続した長さの係留杭は、他の使用のために浮揚構造物の領域をクリアにすることを要する場合に、その係留杭の位置から定期的に取り外すことができない。
【0008】
浮揚構造物の底で海底に取り付けられた弾性索を使用する特許された係留装置に伴う欠点は、この係留装置が、浮揚構造物が規制された範囲で水平方向に移動することを可能にし、浮揚構造物が垂直方向に回転および移動することを可能にすることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術に関連した欠点を解消し、浮揚構造物を係留杭に取り付け、さらに、付近のボートまたはその他の活動への障害を防止するために海底の上に突出する係留杭の部分が取り外されることを可能にする係留装置を提供する。この装置は、従来の係留杭と同様に垂直方向における浮揚構造物の移動を可能にするが、係留杭の突出している部分を取り外すことにより他の使用のために場所を開放する利点がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
より詳細には、本発明は、
(a)海底に押し込まれる下方固定部および上方着脱部を含む2個の部分からなる係留杭、
(b)完全な係留杭を形成するための杭の下方固定部と上方着脱部とのフランジボルト締め仕掛け、
(c)施工許容誤差のため係留杭の場所における偏心に適応できる調整可能係留ドルフィンに関する。
【0011】
本発明のさらなる目的は以下の発明の開示および説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】係留杭の下方固定部および上方着脱部を示す正面図である。
【図2】係留杭の下方固定部および上方着脱部を連結するフランジの正面図である。
【図3】係留杭の下方固定部および上方着脱部を連結するフランジの平面図である。
【図4】係留杭の上方着脱部の先端部の正面図である。
【図5】係留杭の上方着脱部の平面図である。
【図6】調整可能係留ドルフィンの平面図である。
【図7】浮揚構造物に垂直である調整可能係留ドルフィンの正面図である。
【図8】浮揚構造物に平行である調整可能係留ドルフィンの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の理解の便宜のために、好ましい一実施の形態を、添付図面を参照しながら例として説明する。
【0014】
係留ユニットの主な要件は、浮揚構造物の移動を浮揚構造物の用途の要件を満たす安全限界内に維持しつつ、艀、プラットフォーム、桟橋などのような浮揚構造物を安全に自然条件下で拘束することである。通常は、フェンダタイプの係留ドルフィンが固定係留杭から浮揚構造物を保護するために使用される。本発明の設計によれば、ブラケットが浮揚構造物の上端部および側面に嵌め込まれ、溶接される。1個以上のスタッドが係留ドルフィン固定アームに形成された細長い溝の内部に係合するようにブラケットに締め付けられる。溝は、反力に対抗して作用し、浮揚構造物の前後の移動を調整するように、浮揚構造物に対する係留ドルフィンの規制された調整可能な移動を可能にさせる。
【0015】
係留杭は浮揚構造物の周りで現場の予め決められた位置に設置され、浮揚構造物は調整可能ドルフィンによって係留杭に取り付けられる。
【0016】
係留杭の上方着脱部を取り外すため、係留ドルフィンは浮揚構造物から外され、調整可能係留ドルフィンのセクションが完全に取り外される。係留杭の上方着脱部を係留杭の下方固定部に連結する締め付けボルトは取り外され、上方着脱部がずらされ、吊り上げられ、水中から取り出される。
【0017】
図面をより詳細に参照すると、図1は、係留杭体の下方固定部と上方着脱部との間のフランジ継手を示している。また、同図は、海底に押し込まれた係留杭の下方固定部を示している。
【0018】
図2は、杭寸法およびフランジ厚さを含む、係留杭の下方固定部と上方着脱部との間のフランジ継手の詳細を示している。フランジの平面図は、連結ボルトの位置決めを表す図3に示されている。係留杭の下方固定部分が海底に押し込まれると、係留杭の上方着脱部は、ボルト締めによって2個のフランジを連結するためにボルト孔を位置合わせすることを要する。下方杭体は、その安定性を高めるために砂、砂利などで満たされてもよい。
【0019】
図4は係留杭の上方着脱部の上部の正面図を示し、図5は係留杭の上方着脱部の上部の平面図を示す。滑走板が、係留杭ローラーの間に完全な面接触を与えるためにこの上部に設けられる。図4に示されているような孔付きの上端三角形プレートは、据え付け、調整および取り外しのために係留杭の上方着脱部を吊り上げるために使用される。
【0020】
図6は、調整可能係留ドルフィンの平面図を示す。調整可能係留ドルフィンは、係留杭を浮揚構造物に連結する。調整可能ドルフィンは、施工許容誤差に起因する係留杭の位置の偏心を収容するように設計される。これは、係留ドルフィンが浮揚構造物と垂直方向および平行方向の両方に移動できるように連結ボルトを設計することによって実現される。
【0021】
図7は、浮揚構造物に垂直である調整可能係留ドルフィンの正面図を示す。係留ドルフィンは、杭の中心の片側に3個ずつの6個のスタッドによって浮揚構造物の側面に取り付けられている。調整可能係留ドルフィンは、浮揚構造物に平行な方向に係留ドルフィンの位置を調整するために細長い溝を有する。
【0022】
図8は、浮揚構造物に平行である調整可能係留ドルフィンの正面図を示す。調整可能係留ドルフィンのアームの部分は浮揚構造物のデッキの上に延び、デッキに溶接された支持用ブラケット構造体に固定されている。係留ドルフィン構造体の延ばされたアームは、支持ブラケット構造体に溶接されたスタッドを係合させる細長い溝を有する。これは、係留ドルフィンが浮揚構造物の側面に垂直な方向に調整されることを可能にする。係留ドルフィンがこのようにして調整される間に、浮揚構造物の側面の固定スタッドは係合されたまま保たれる。
【0023】
一度、浮揚構造物の側面およびデッキの両方の連結用スタッドが係合されると、固定用ナットは、調整可能係留ドルフィンの設置を完了するために取り付けられ、堅く締められる。
【0024】
上述の記載および添付図面は発明者により現在意図されている特定に好ましい実施形態に関するが、広範な局面における本発明は記載および図示される要素の機械的および機能的均等物を含むことが理解されるであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および側壁を有する浮揚構造物用の係留装置であって、
海底に埋め込むことが可能である下方部および前記下方部に着脱により固定可能である上方部を有する少なくとも1本の係留杭と、
前記浮揚構造物と前記係留杭との間に固定可能である少なくとも1個の係留ドルフィンとを備える、係留装置。
【請求項2】
前記少なくとも1個の係留ドルフィンは、前記浮揚構造物に調整して固定可能であることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1個の係留ドルフィンは、前記浮揚構造物と係合するために延びる固定アームを備えることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記固定アームは、前記浮揚構造物の前記上面および前記側壁に取り付けられた固定ピンを収容するための細長い溝が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
固定ピンが、前記少なくとも1個の係留ドルフィンに前記浮揚構造物の垂直軸に平行な方向および垂直な方向へ前記浮揚構造物に対して規制された移動を可能にするために前記細長い溝の内部に摺動可能に収容されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
固定ブラケットが前記浮揚構造物の前記上面および前記側壁に固定され、前記固定ピンが前記固定ブラケットに固定されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記下方部は、下方杭体と前記下方杭体の外側上方部に固定された下方外周フランジとを備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記上方部が上方杭体と前記上方杭体の外側下方部に固定された上方外周フランジとを備え、前記上方外周フランジおよび前記下方外周フランジが互いに位置合わせされ固定されることが可能であることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記下方外周フランジおよび前記上方外周フランジのそれぞれが、固定手段を内部に収容するための複数の開口部と、前記上方外周フランジおよび前記下方外周フランジの取り付け領域を補強するための補強板とを備えることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項10】
前記上方杭体は、位置合わせの間に前記上方外周フランジおよび前記下方外周フランジの完全な面接触を容易にするための滑走板を支えていることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
上面および側壁を有する浮揚構造物用の係留装置であって、
埋め込み部によって海底に固定させて固定可能である下方部および必要に応じて下方部に着脱により固定可能である上方部を有する少なくとも1本の係留杭と、
前記浮揚構造物と前記係留杭との間に固定可能であり、前記浮揚構造物に対して調整により位置決め可能である少なくとも1個の係留ドルフィンとを備える、係留装置。
【請求項12】
前記少なくとも1個のドルフィンを前記浮揚構造物に対して調整して固定する手段をさらに備える、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記固定する手段が、浮揚構造物の垂直軸に実質的に平行な方向および実質的に垂直な方向に前記少なくとも1個のドルフィンの規制された移動を容易にすることを特徴とする、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記固定する手段が、浮揚構造物の上面に固定された少なくとも1個の固定ブラケットおよび浮揚構造物の側壁に固定された少なくとも1個の固定ブラケットと、前記少なくとも1個の固定ブラケットのそれぞれによって支えられた複数の固定ピンと、前記少なくとも1個の係留ドルフィンに取り付けられ、摺動係合する固定ピンを内部に収容するための細長い溝が設けられている固定アームとを備えることを特徴とする、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記下方部が下方杭体と前記下方杭体の外側上方部に固定された下方外周フランジとを備えることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記上方部分が上方杭体と前記上方杭体の外側下方部に固定された上方外周フランジとを備え、前記上方外周フランジおよび前記下方外周フランジが互いに位置合わせされ固定されることが可能であることを特徴とする、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記下方外周フランジおよび前記上方外周フランジのそれぞれが、固定手段を内部に収容するための複数の開口部と、前記上方外周フランジおよび前記下方外周フランジの取り付け領域を補強するための補強板とを備えることを特徴とする、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記上方杭体は、位置合わせの間に前記上方外周フランジおよび前記下方外周フランジの完全な面接触を容易にするための滑走板を支えていることを特徴とする、請求項16に記載の装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−526956(P2010−526956A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508344(P2010−508344)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000184
【国際公開番号】WO2008/140424
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509314921)センブコープ・マリーン・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】SEMBCORP MARINE LTD
【Fターム(参考)】