説明

保冷具およびマット

【課題】身体への装着感と冷却効率に優れた保冷具、および身体の触感と乾燥効率に優れたマットを提供する。
【解決手段】保冷具10は、ポリビニルアセタール樹脂等の樹脂製であり、柱状の外形を有する数百から数千個の多孔体12と、これらの多孔体12を包み、水が透過する透水穴20を供える包装体14とを有する。包装体14の両端部には、紐16が接続されている。紐16には止め具18が装着されている。この保冷具10を水中に浸して水分を含ませ、身体の部位に装着すれば、多孔体12中の水分の気化熱によってこの部位が冷却される。また、マットは、ポリビニルアセタール樹脂等の樹脂製であり、柱状の外形を有する複数の多孔体と、これらの多孔体を包み、水が透過する透水穴を供える包装体とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の部位を冷却するのに適した保冷具、および水回りでの使用に適したマットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
分離独立した粒状の蓄熱材を外装袋内に多数個収納した蓄熱パックが知られている(特許文献1)。この蓄熱パックは、頭部、脚部、腕肩部などを冷却湿布等するためのものであり、外装袋内に収納される蓄熱材は球状粒子である。
【0003】
【特許文献1】特開平9−173373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、外装袋内部の蓄熱材に水分を吸収させ、その水分の気化熱によって身体の部位を冷却するタイプの保冷具に、上記蓄熱パックをそのまま適用した場合、球状粒子である蓄熱材は表面積が小さいため水分の気化効率が悪くなる。また、球状粒子である蓄熱材同士は密着しやすいため、この蓄熱パックを身体に装着した場合、蓄熱パックが身体に過度に接触し触感が悪くなる。
【0005】
本発明はこれらの問題点に鑑みて成されたものであり、身体への装着感と冷却効率に優れた保冷具を提供することを目的とする。また、この保冷具を発明する過程で、この保冷具は、身体への装着感と水分の気化効率、すなわち乾燥効率が優れることから、この保冷具の主要構成をマットに応用することを見出した。したがって、本発明は身体、特に足裏の触感と乾燥効率に優れたマットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、樹脂製であり、柱状の外形を有する複数の多孔体と、複数の多孔体を包み、水が透過する透水穴を供える包装体と、を有する保冷具である。多孔体は、直方体の外形を有していてもよい。多孔体の長さは、多孔体の幅の3倍以上であることが好ましい。また、多孔体は、ポリビニルアセタール樹脂シートの端材を裁断して作製されてもよい。
【0007】
本発明の他の態様は、樹脂製であり、柱状の外形を有する複数の多孔体と、複数の多孔体を包み、水が透過する透水穴を供える包装体と、を有するマットである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、身体への装着感と冷却効率に優れた保冷具が得られる。また、本発明によれば、身体の触感と乾燥効率に優れたマットが得られる。すなわち、柱状の外形を有する多孔体を用いることにより、多孔体同士が密着し過ぎることなく、包装体内に適度な空間が形成される。この空間が、保冷具で保冷する部位やマットが触れる部位の触感の向上をもたらすと共に、水分の気化を促す。また、樹脂シートの端材を裁断して作製した材料を用いた保冷具によれば、廃棄物を有効利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係る保冷具10を示す。保冷具10は、複数の多孔体12と、包装体14と、紐16と、止め具18とを備える。
【0010】
多孔体12は樹脂製であり、柱状の外形を有する。柱状とは、例えば、円柱、角柱、棒状のような細長い形状をいう。多孔体12の材料として使用できる樹脂として、例えば、ポリビニルアセタール(以下「PVA」という。)、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。本実施の形態では、多孔体12はPVA樹脂製である。PVA樹脂の多孔物質は、吸水性および含水性に優れる上、含水時に適度な柔軟性を有するので、保冷具10の多孔体12の材料として好ましい。
【0011】
包装体14は、複数、例えば、数百から数千個の多孔体12を包み、水が透過する透水穴20を備えている。なお、図1では、包装体14の一部を現さず、その内部に存在する多孔体12を模式的に現している(図1の点線円部分)。包装体14が包む多孔体12の数量は、保冷具10を使用する身体の部位の形状または大きさ等に応じて適宜調整される。もちろん、使用する多孔体12の数量が大きくなれば、包装体14もそれに伴って大きくなる。
【0012】
包装体14の材料としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、綿、羊毛、絹、麻等が挙げられる。本実施の形態では、包装体14はポリエステル製である。ポリエステルは、強度があり、耐摩耗性・耐久性・耐薬品性・耐油性に優れ、シワになりにくく、カビや細菌が繁殖しにくく、乾きやすく、肌触りがよい。したがって、包装体14をポリエステル製とすることが好ましい。
【0013】
包装体14の両端部には、紐16が接続されている。紐16は、伸縮自在な材料、例えばゴム製である。なお、紐16は伸縮しない材料で作製されていてもよい。また、紐16は、金属鎖、樹脂鎖であってもよい。
【0014】
紐16には止め具18が装着されている。止め具18に設けられた突起部を押しながら、止め具18を紐16に沿って移動すれば、保冷したい身体の部位に合わせて、包装体14と紐16で囲まれる領域の大きさが適宜調整できる。この止め具18は、一般的にストッパーと呼ばれている。
【0015】
なお、止め具18は、略陸上トラック形状の平板の外形を有し、2個所に孔が設けられたものであってもよい。このような止め具は、一般的にループエンドと呼ばれる。このループエンドは、一方の面側から紐16を通した後、他方の面側からその一方の面側に向かって紐16を通して保冷具10に装着する。ループエンドを持ちながら、紐16を押したり引っ張ったりすることによって、包装体14と紐16で囲まれる領域の大きさが適宜調整できる。
【0016】
また、本発明では、保冷具10に止め具18を設けず、保冷具10を身体の部位に当てた後、その部位に紐16で保冷具10を縛り付けることによって、保冷具10を身体の部位に装着してもよい。
【0017】
次に、一例として、額部または首部を保冷する保冷具10の製造方法について説明する。まず、PVA樹脂シートを裁断機で柱状に裁断する。裁断されたPVA樹脂シートは、保冷具10の多孔体12として使用される。
【0018】
柱状の外形を有する多孔体12を用いることにより、多孔体12同士が、包装体14の内部で密着し過ぎることなく、包装体14内に適度な空間が形成される。包装体14内に形成されたこの空間が、保冷する部位の触感の向上をもたらすと共に、水分の気化を促す。
【0019】
図2は、多孔体12の外形の一例を示す。この多孔体12は、底面が約1.5mm×約2mmの略長方形で、高さが約10mmの略直方体(四角柱)の外形を有する。ここで、多孔体12の長さLは、この略直方体の高さに相当し約10mmである。多孔体12の幅Wは、この略直方体の底面の最大長である略長方形の対角線の長さに相当し約2.5mmである。多孔体12が直方体の形状を有する場合、汎用の裁断機によって多孔体12が大量に製造できるため、保冷具10のコストダウンが図れる。
【0020】
多孔体12の外形が直方体以外の場合には、多孔体12の最も長い個所をその「長さ」とし、長さ方向と略直交する全ての断面の中で最大長をその「幅」とする。ここで、多孔体12の長さは、その幅の3倍以上であることが好ましい。多孔体12の長さをその幅の3倍以上とすることによって、より一層、保冷する部位の触感の向上をもたらす。
【0021】
図3は、PVA樹脂シートの端材22を示す。この端材22は、PVA樹脂シートから、例えば、金型洗浄スポンジ等の製品となる部分である製品部分24を打ち抜いたものである。本来なら、この端材22は廃棄処分される。しかし、新品のPVA樹脂シートに代えて、この端材22を裁断して多孔体12を作製し、保冷具10の材料にすることによって、廃棄物の有効利用が図れる。
【0022】
こうして多孔体12が用意できたら、止め具18が装着された紐16の両端が逢着されたポリエステルのメッシュ生地上に、上記方法で得られた数百から数千個の多孔体12を配置する。そして、この生地で多孔体12を包み込んだ後、多孔体12が生地から飛び出さないように生地を逢着する。こうして、内部に多孔体12を有し、約5cm×約20cm×約3cmの大きさの板状の外形を有する包装体14を備える保冷具10が得られる
【0023】
次に、保冷具10の使用方法の一例について説明する。まず、保冷具10を水中に浸し、多孔体12に水分を充分含ませる。次に、保冷具10を水中から取り出し、包装体14から水分がしたたり落ちない程度にまで包装体14を絞る。そして、身体の冷却したい部位、例えば、額、首、腕、脚、手、足等に保冷具10を密着させた後、止め具18を移動させて包装体14と紐16で囲まれる領域の大きさを適宜調整し、この部位に保冷具10を固定する。
【0024】
固定された保冷具10の多孔体12に含まれる水分の気化熱によって、この部位が冷却される。しかも、多孔体12が柱状の外形を有するため、包装体14の内部で多孔体12同士が密着し過ぎることなく、包装体14内に適度な空間が形成され、保冷する部位の触感の向上をもたらすと共に、水分の気化を促す。
【0025】
多孔体12の水分がある程度気化して、保冷具10の冷却効率が落ちてきたら、保冷具10を水中に再度浸して使用する。多孔体12が耐久性に優れる樹脂製であるため、このように保冷具10を繰り返して使用できる。
【0026】
次に、本発明の実施の形態に係るマットについて説明する。このマットは、樹脂製であり、柱状の外形を有する複数の多孔体と、前記複数の多孔体を包み、水が透過する透水穴を供える包装体と、を有する。この多孔体と包装体は、保冷具10と同様のものが使用できる。
【0027】
すなわち、多孔体は直方体の外形を有していてもよい。多孔体の長さは、多孔体の幅の3倍以上であることが好ましい。また、多孔体は、PVA樹脂シートの端材を裁断して作製されてもよい。包装体は、ポリエステル製が好ましい。
【0028】
本実施の形態に係るマットの多孔体と包装体を、保冷具10と同様の多孔体と包装体とすることにより、身体、特に足裏の触感と乾燥効率に優れたマットが得られる。多孔体が柱状の外形を有するため、包装体の内部で多孔体同士が密着し過ぎることなく、包装体内に適度な空間が形成され、身体、特に足裏の触感の向上をもたらすと共に、多孔体の水分の気化、すなわち多孔体の乾燥が促されるからである。
【0029】
本実施の形態に係るマットは、風呂上りに使用するマット、すなわちバスマット、台所で使用するマット、すなわちキッチンマット、トイレで使用するマット、すなわちトイレマット等の水回りの足拭きマットとして使用することが好ましい。また、浴室内で使用することもできる。
【0030】
例えば、バスマットとして使用する場合、家族のある者が使用した後、他の者が使用するときには、マットの乾燥が進んでいるため、他の者の足裏の水分を吸収しやすい。また、他の者は、乾燥が進んだマットを使用できるので、マットが水分を含むことによる不快感が余りない。
【実施例】
【0031】
多孔体12として、PVA樹脂の直方体(3mm×3mm×9mm)である試料1と、PVA樹脂の立方体(一辺が3mm)である試料2を用いて、包装体14内に形成される空間を評価する試験を行った。
【0032】
まず、2つの200mLビーカに、試料1を10g、試料2を10gそれぞれ入れた。試料1が入ったビーカは、容量約160mLの高さまで試料1が充填された。一方、試料2が入ったビーカは、容量約120mLの高さまで試料2が充填された。
【0033】
次に、この2つのビーカに、水90gをそれぞれ加えた。その結果、試料1が入ったビーカは、容量約210mLの高さまで試料1が増量した。一方、試料2が入ったビーカは、容量約160mLの高さまで試料2が増量した。
【0034】
この結果より、多孔体が細長い直方体の外形を有する場合は、多孔体が立方体の外形を有する場合を比べて、乾燥時および水分吸収時の双方で、見かけ上の体積が大きいことが分かった。したがって、細長い直方体の外形を有する多孔体を用いた保冷具では、立方体の外形を有する多孔体を用いた保冷具の場合と比べて、包装体内に形成される空間が大きくなり、水分がより気化しやすくなる。すなわち、細長い直方体の外形を有する多孔体を用いた保冷具は、立方体の外形を有する多孔体を用いた保冷具より冷却効率に優れるといえる。また、細長い直方体の外形を有する多孔体を用いたマットは、立方体の外形を有する多孔体を用いたマットより乾燥効率に優れるといえる。
【0035】
また、細長い直方体の外形を有する多孔体を用いた保冷具では、立方体の外形を有する多孔体を用いた保冷具の場合と比べて、包装体内に形成される空間が大きくなるため、保冷する部位の触感の向上をもたらす。この触感の向上は、保冷具の水分の含有状態に影響されない。つまり、細長い直方体の外形を有する多孔体を用いた保冷具は、乾燥している場合でも、水分を吸収している場合でも、身体への装着感が優れる。また、細長い直方体の外形を有する多孔体を用いたマットは、乾燥している場合でも、水分を吸収している場合でも、身体の触感が優れる。
【0036】
以上より、柱状、すなわち、細長い形状の外形を有する多孔体を用いた保冷具は、立方体や球体のような外形を有する多孔体を用いた保冷具と比べて、身体への装着感と冷却効率が優れていると考えられる。また、柱状、すなわち、細長い形状の外形を有する多孔体を用いたマットは、立方体や球体のような外形を有する多孔体を用いたマットと比べて、身体の触感と乾燥効率が優れていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態に係る保冷具の外観図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る多孔体の外観図である。
【図3】PVA樹脂シートの端材の外観図である。
【符号の説明】
【0038】
10 保冷具、 12 多孔体、 14 包装体、 16 紐、 18 止め具、 20 透水穴、 22 端材、 24 製品部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製であり、柱状の外形を有する複数の多孔体と、
前記複数の多孔体を包み、水が透過する透水穴を供える包装体と、
を有する保冷具。
【請求項2】
前記多孔体は、直方体の外形を有する請求項1記載の保冷具。
【請求項3】
前記多孔体の長さは、前記多孔体の幅の3倍以上である請求項1または2記載の保冷具。
【請求項4】
前記多孔体は、ポリビニルアセタール樹脂シートの端材を裁断して作製された請求項1から3のいずれか1項記載の保冷具。
【請求項5】
樹脂製であり、柱状の外形を有する複数の多孔体と、
前記複数の多孔体を包み、水が透過する透水穴を供える包装体と、
を有するマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−101112(P2009−101112A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299824(P2007−299824)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(504278318)
【Fターム(参考)】