説明

保守業務支援システム

【課題】食品製造プラント設備の保守点検時に発見された設備異常の要因分析と上記要因の是正措置を適切、且つ迅速にプラント使用者に対して提供することによって、食品製造プラントの信頼性向上と、保守点検コストの低減を可能とする保守業務支援システムを提供する。
【解決手段】メンテナンス事業者の保守点検作業によって発見された、設備異常情報を入力しうる保守点検結果入力手段と、過去の保守点検結果の履歴データと上記食品製造プラント設備の設備仕様データとを参照し、上記保守点検結果入力手段から入力された設備異常情報の妥当性を判定する保守点検結果妥当性判定手段と、上記保守点検結果妥当性判定手段によって妥当性を有さないと判断された場合に、過去の改善提案履歴データから同一の異常が発生した事象の有無を検索し、事象が合致する改善提案データを抽出する改善提案履歴検索手段と、上記改善提案履歴検索手段によって抽出された改善提案データをプラント使用者に提示する改善提案提示手段とを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品製造プラントの保守業務の支援を行う保守業務支援システムに係り、特にプラント使用者に対し、保守点検時に発見された設備異常について、上記設備異常を是正するための改善提案を提示しうる保守業務支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品製造プラントは多種多数の設備から構成されている。
上記食品製造プラント設備には、高温、高圧等の過酷な条件下で製品が流通するため、経時劣化によって、ひび割れ等の破損や歪み等が生じる可能性があり、上記の破損や歪みが起因となって、汚染物質の混入による製品の汚染、製品の漏出等が発生する虞がある。
従って、製造する製品の品質を常に高く保持するためには、定期的に保守点検作業を行い、異常が発生した設備については、迅速に交換又は修理を実施する必要がある。
【0003】
従来、食品製造プラント設備の保守点検作業によって異常が発見された設備については、メンテナンス事業者からプラント使用者に対して、異常が発生した設備、異常の内容等が報告され、その後交換、修理等の作業が行われていた。
しかしながら、従来の保守点検作業は、異常設備の発見、交換及び修理を目的としており、異常の発生要因の分析と評価、及び異常発生要因の是正措置の提案は、メンテナンス事業者が必要に応じて個別に行っていた。
従って、異常が発生した設備の交換等を行っても、異常発生の要因が解決されていない場合は、同一の異常が繰り返し発生し、上記食品製造プラント設備の稼動に影響を与えるだけでなく、プラント設備の保守点検費用が増大するという不具合を有していた。
また、異常発生の要因は、各プラント設備の設備仕様、使用環境、及び稼動時間等の設備運用条件等の複数の要因が考えられ、これらの情報はメンテナンス事業者、プラント施工業者、プラント使用者によって夫々個別に管理されていることから、メンテナンス事業者のみで異常発生の要因分析と評価、及び是正措置の提案を行うことは困難であった。
【0004】
また、食品製造プラントは、製造される製品の安全性に対する要請が極めて高く、製品の汚染は、需要者の信頼を失墜させる要因ともなりうることから、上記食品製造プラントの構成設備の異常発生要因の分析と是正措置は、食品製造業者にとって、極めて重要な事項であり、その要請も高い。
しかしながら、上記の通り、現在までにおいて異常発生要因の分析と上記要因の是正措置を迅速に提案するための保守業務支援システムは提案されていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、食品製造プラント設備の保守点検時に発見された設備異常の要因分析と上記要因の是正措置を適切、且つ迅速にプラント使用者に対して提供することによって、食品製造プラントの信頼性向上と、保守点検コストの低減を可能とする保守業務支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載の保守業務支援システムは、食品製造プラント設備のメンテナンス業者の保守業務を支援する保守業務支援システムであって、メンテナンス事業者の保守点検作業によって発見された設備異常情報を入力しうる保守点検結果入力手段と、過去の保守点検結果の履歴データと上記食品製造プラント設備の設備仕様データとを参照し、上記保守点検結果入力手段から入力された設備異常情報の妥当性を判定する保守点検結果妥当性判定手段と、上記保守点検結果妥当性判定手段によって妥当性を有さないと判断された場合に、過去の改善提案履歴データから同一の異常が発生した事象の有無を検索し、事象が合致する改善提案データを抽出する改善提案履歴検索手段と、上記改善提案履歴検索手段によって抽出された改善提案データをプラント使用者に提示する改善提案提示手段とを有することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2記載の保守業務支援システムは、食品製造プラント設備の保守点検結果の履歴情報を格納する保守点検結果履歴データベースと、食品製造プラント設備の仕様データを格納するプラント設備仕様データベースと、上記食品製造プラントのプラント使用者に対して、過去に行った改善提案の履歴データを格納する改善提案履歴データベースと、上記保守点検結果履歴データベース、上記プラント設備仕様データベース、及び上記改善提案履歴データベースに接続されると共に、メンテナンス事業者による保守点検作業によって発見された設備異常情報を入力しうる保守点検結果入力手段と、上記設備異常情報と上記保守点検結果履歴データベースと上記プラント設備仕様データベースとを参照し、上記保守点検結果の妥当性を判定する保守点検結果妥当性判定手段と、上記保守点検結果妥当性判定手段によって妥当性を有さないと判定された場合に、上記改善提案履歴データベースから同一の異常が発生した事象を検索する改善提案履歴検索手段と、上記改善提案履歴検索手段の検索によって抽出された改善提案データをプラント使用者に提示する改善提案提示手段と有することを特徴とする。
【0008】
従って、保守点検時に発見された設備異常が上記プラント設備の仕様上妥当な範囲であるかの判定、異常発生要因及び上記要因の是正措置を、食品製造プラント設備の設備仕様データ及び過去の改善提案履歴データを参照することよって、迅速に提供することが可能となる。
【0009】
また、請求項3記載の保守業務支援システムは、上記設備診断サーバと広域ネットワークを介して接続され、プラント施工業者が有する上記食品製造プラントの施工計画データを格納するプラント設備施工計画データベースを有し、上記改善提案履歴検索手段によって同一の異常が発生した事象が発見されなかった場合に、上記プラント設備施工計画データベースを参照し、上記設備異常情報に該当する設備の構成及び使用環境を確認し、設備の構成及び使用環境に問題点が発見された場合に、上記使用の問題点を是正する改善提案を作成する改善提案作成手段を備えることを特徴とする。
【0010】
従って、設備異常がプラント設備の施工時における設備構成、プラント設計時において使用された設計基準データ等に起因する場合であっても、広域ネットワークを介して上記プラント設備施工計画データベースを参照することによって、メンテナンス事業者が迅速に把握することが可能となる。
【0011】
また、請求項4記載の保守業務支援システムは、上記設備診断サーバと広域ネットワークを介して接続され、上記食品製造プラントの使用者が実施した設備保全情報を格納する設備保全履歴データベースを有し、上記改善提案履歴検索手段によって同一の異常が発生した事象が発見されなかった場合に、上記設備保全履歴データベースを参照し、設備運用上の問題点を発見した場合は、上記設備運用上の問題点を是正する改善提案を作成する改善提案作成手段を備えることを特徴とする。
【0012】
従って、設備異常がプラント使用者の設備運用上の問題点に起因する場合であっても、広域ネットワークを介して上記設備保全履歴データベースを参照することによって、メンテナンス事業者が迅速に要因を把握することが可能となる。
【0013】
また、請求項5記載の保守業務支援システムは、上記設備診断サーバは、現地調査によって発見された設備異常の要因を入力しうる現地調査結果入力手段を備え、上記改善提案作成手段は、上記現地調査で発見された異常要因を是正する改善提案を作成することを特徴とする請求項4記載の保守業務支援システム。
【0014】
従って、設備異常の要因が、設備の構成及び使用環境、又は設備運用上の問題に起因しない場合であっても、現地調査によって発見された設備異常の要因を入力することによって、適切な改善提案を作成することが可能となる。
【0015】
また、請求項6記載の保守業務支援システムは、上記現地調査によって発見された設備異常の要因は、携帯端末を介して上記現地調査結果入力手段に入力されることを特徴とする
【0016】
従って、現地調査結果の情報は広域ネットワークを介さずに直接設備診断サーバに入力されるため、情報が外部に漏洩し難い。
【0017】
また、請求項7記載の保守業務支援システムは、上記改善提案提示手段は、プラント使用者に対し、上記広域ネットワークを介して、改善提案データを配信することを特徴とする。
【0018】
従って、改善提案データは、プラント使用者に対してオンラインで迅速に提供される。
【発明の効果】
【0019】
請求項1及び2記載の発明にあっては、メンテナンス事業者の保守点検作業で発見された設備異常の内容を、保守点検結果履歴データベースと、プラント設備仕様データベースを参照して分析すると共に、過去に行った改善提案の履歴データから上記設備異常の要因を是正するための改善提案データをプラント使用者に提供することができるため、従来の保守点検方法と比較して、食品製造プラントの信頼性が向上すると共に、設備異常の発生要因を是正することによって、設備交換、修理等に必要となる保守点検コストを低減することが可能となる。
【0020】
また、請求項3及び4の発明にあっては、請求項2の効果に加え、過去の改善提案履歴データに同一の異常が発生した事象が発見されない場合であっても、
プラント施工業者が保有するプラント設備施工計画データベース及びプラント使用者が保有する設備保全履歴データベースを、広域ネットワークを介してオンラインで参照することが可能であることから、設備異常の要因把握及び是正措置のための改善提案データをより的確且つ迅速に提供することが可能となる。
【0021】
また、請求項5の発明にあっては、オンラインで参照できるデータのみで、設備異常の要因が把握できない場合であっても、現地調査の結果を入力することによって、より確実に上記設備異常の要因を把握し、適切な改善提案データを提供することが可能となる。
更に請求項6の発明にあっては、上記現地調査結果の情報は携帯端末を介して設備診断サーバに入力されることから、オンラインでの情報配信と比較して、より外部への情報漏洩が発生しにくく、機密性を確保することが可能となる。
【0022】
また、請求項7の発明にあっては、上記改善提案データの内容を上記広域ネットワークを介して、プラント使用者に配信する改善提案配信手段を有することから、メンテナンス使用者に対して、より迅速に改善提案データを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
図1に示すように、本実施例に係る保守業務支援システム10は、メンテナンス事業者11が行う食品製造プラント設備の保守点検結果の履歴情報を格納する保守点検結果履歴データベース12と、食品製造プラント設備の仕様データを格納するプラント設備仕様データベース13と、上記食品製造プラントのプラント使用者14に対して、過去に行った改善提案の履歴データを格納する改善提案履歴データベース15と、上記保守点検結果履歴データベース12、上記プラント設備仕様データベース13、及び上記改善提案履歴データベース15に接続されると共に、メンテナンス事業者11による保守点検作業によって発見された設備異常情報16を入力しうる保守点検結果入力手段17と、上記設備異常情報16と上記保守点検結果履歴データベース12と上記プラント設備仕様データベース13とを参照し、上記保守点検結果の妥当性を判定する保守点検結果妥当性判定手段18と、上記保守点検結果妥当性判定手段18によって妥当性を有さないと判定された場合に、改善提案履歴データベース15から同一の異常が発生した事象を検索し、事象が合致する改善提案データ26aを抽出する改善提案履歴検索手段19と、上記改善提案履歴検索手段19によって抽出された改善提案データ26bをプラント使用者14に提示する改善提案提示手段20とを有する設備診断サーバ21とを有している。
また、上記設備診断サーバ21には、広域ネットワーク22を介し、プラント施工業者23が有する上記食品製造プラントの施工計画データを格納するプラント設備施工計画データベース24と、上記食品製造プラントの使用者14が実施した設備保全情報を格納する設備保全履歴データベース25とが接続されている。
また、上記設備診断サーバ21は、上記改善提案履歴検索手段19によって同一の異常が発生した事象が発見されなかった場合に、上記プラント設備施工計画データベース24と上記設備保全履歴データベース25とを参照し、設備の構成及び使用環境若しくは設備運用上の問題点を発見した場合に、上記問題点を是正する改善提案データ26aを作成する改善提案作成手段27を有している。
また、上記設備診断サーバ21は、現地調査によって発見された設備異常の要因28を、携帯端末29を介して入力しうる異常箇所情報入力手段30を有している。
また、上記改善提案提示手段20は、プラント使用者14に対し、上記広域ネットワーク22を介して、改善提案データ26a及び26bを配信する。
【実施例】
【0024】
以下に、上記実施例の形態における、保守業務支援システム10の実施例の詳細構成について、以下図面を用いて説明する。
図1は、本実施例に係る、保守業務支援システム10の全体構成図を示す概念図であり、図2は本実施例に係る各データベースの構成例を示している。
図1において、保守点検結果履歴データベース12、プラント設備仕様データベース13、及び改善提案履歴データベース15はメンテナンス事業者11が保有しており、夫々設備診断サーバ21に接続されている。
上記保守点検結果履歴データベース12は、保守点検結果入力手段17に新規の保守点検結果である設備異常情報16が入力されることによって逐次更新され、図2(1)に示すように、保守点検実施時期12aと、異常が発生している設備の画像データ、異常発生率等の保守点検結果12bとを有している。
また、図1に示すように、上記プラント設備仕様データベース13は、メンテナンス事業者11が、当該食品製造プラント設備の保守を請け負った時点等のタイミングで更新され、図2(2)に示すように、食品製造プラントを構成する構成機器種別13aと、上記設備の設備仕様書13bとを有している。
また、図1に示すように、改善提案履歴データベース15は、上記改善提案作成手段27によって新規の改善提案データ26aが作成されることによって更新され、図2(3)に示すように、対象プラント15a毎に、対象設備機器15bと、異常発生状況15cと、改善提案書15dと、上記改善提案を実施した場合における改善効果に関連するデータ15eとを有している。
上記改善効果に関連するデータ15eとは、例えば改善提案実施後の故障発生率の低下等の情報を示している。
また、図1に示すように、上記プラント施工計画データベース24は、プラント施工業者23が保有し、広域ネットワーク22を介して上記設備診断サーバ21に接続されている。
上記プラント施工計画データベース24は、一台若しくは複数のコンピュータ(図1には図示せず)によって管理され、プラント施工業者23の管理下において更新が行われる。
図2(4)に示すように、上記プラント施工計画データベース24は、対象となる食品製造プラントの設備構成24aと、上記食品製造プラントの設計規範24bとを有している。
また、図1に示すように、上記設備保全履歴データベース25は、プラント使用者14によって管理され、プラント使用者14の管理下において、更新が行われる。
図2(5)に示すように、上記設備保全履歴データベース25は、プラント使用者の保全計画25aと、上記保全計画25aの実績25bと、運用基準等の設備運用情報25cとを有している。
また、図1に示す設備診断サーバ21はパーソナルコンピュータからなり、必要に応じて上記パーソナルコンピュータが複数台が並列接続した形態としても良い。
本実施例の構成においては、図1に示す各手段を備えていれば、上記設備診断サーバ21のハードウェアの種類及び物理的台数は問わない。
また、図1に示す、プラント施工計画データベース24及び設備保全履歴データベース25を管理するコンピュータ(図1には図示せず)は、広域ネットワーク22に接続可能であれば、特に種類及び物理的台数は問わない。
【0025】
上記実施例の構成において、メンテナンス事業者11が保守点検結果を入力してから、改善提案データ26a又は26bがメンテナンス使用者14提示されるまでの各処理について以下図面を用いて詳述する。
図3は、本実施例に係る保守支援システム10の処理のフローチャートである。
図1に示すようにメンテナンス事業者11が行った保守点検によって発見された設備異常情報16は保守点検結果入力手段17を介して設備診断サーバ21に入力される(図3の処理40)。
図3の処理40における設備異常情報16(図3には図示せず)の入力方法は特に限定されず、フラッシュメモリ、フロッピーディスク等の任意の記憶媒体(図1には図示せず)経由であっても、表示装置を介した対話形式インターフェイス(図1には図示せず)を用いても良い。
図3における上記処理40にて入力された設備異常情報16(図3には図示せず)は、図1における保守点検結果妥当性判定手段18において、図2(1)に示す保守点検結果履歴データベース12の点検結果12b、及び図2(2)のプラント設備仕様データベース13の設備仕様書13bを参照し、上記異常の状態及び異常発生の頻度等を把握すると共に、入力された上記設備異常情報16が、上記食品製造プラント設備の通常使用条件下において発生しうる範囲であるかが判定される(図3の処理41)。
【0026】
図3における上記処理41において、入力された設備異常情報16が通常使用条件下において発生しうる範囲を超えており、妥当性を有さないと判定された場合は、図1における改善提案履歴検索手段19によって、過去の改善提案履歴データベース15が検索される(図3の処理42)。
図3における上記処理42において、図2(3)に示す改善提案履歴データベース15の対象プラント名15a、対象設備機器15b、異常発生状況15c等を参照することにより、入力された上記設備異常情報16にかかる設備異常と同じ事象が過去に発生しているかを検索する。
図3における上記処理42において、同一の事象が発見された場合は、図2(3)に示す上記改善提案履歴データベース15から、改善提案を実施した場合における改善効果に関連するデータ15eを参照し、上記事象における最適な改善提案書15dが抽出され、図1の改善提案提示手段20によって改善提案データ26aとしてプラント使用者14に提示される(図3の処理43)。
なお、上記改善提案提示手段20における、プラント使用者14に対する改善提案データ26bの提示方法は、広域ネットワーク22を介して電子メール等の手段によって配信する方法の他、プラント使用者14が有するコンピュータ(図1には図示せず)の表示装置等に直接表示する方法を選択してもよい。
【0027】
図3における上記処理42において、同一の事象が発見できなかった場合において、図1に示すように、改善提案作成手段27は、広域ネットワーク22を介して、プラント施工業者23が有するプラント施工計画データベース24を参照し、図2に示す、当該食品製造プラントの設備構成24a及びプラント施工時の設計規範24b等の情報を検証することによって、図1における上記設備異常情報16にかかる異常が上記食品製造プラント固有の設備構成若しくは使用環境等の問題に起因したものであるかを判定する(図3の処理44)。
図3における上記処理44において、図1における上記設備異常情報16にかかる異常が、上記食品製造プラントの設備構成若しくは使用環境等に起因すると判定された場合は、図1に示すように、上記改善提案作成手段27は、その要因となった設備構成及び使用環境の改善方針を改善提案データ26aとしてプラント使用者14に提示する(図3の処理45)。
なお、プラント使用者14への改善提案データ26aの提示方法については上記で示した改善提案データ26bの提供方法と同様に複数の方法から選択することが可能である。
【0028】
また、図3における上記処理42において、同一の事象が発見できなかった場合において、図1に示すように、上記改善提案作成手段27は、広域ネットワーク22を介して、プラント使用者14が有する設備保全履歴データベース25を参照し、図2に示す当該食品製造プラントの保全計画25aと保全実績25b、及び設備の稼動状況、設備運用基準等からなる設備運用情報25cを検証することによって、図1における上記設備異常情報16にかかる異常が、プラント使用者14による、設備の稼動可能時間の超過、設備の配置変更等の設備運用上の問題に起因したものであるかを判定する(図3の処理46)。
図3における上記処理46において、図1における上記設備異常情報16にかかる異常が、上記食品製造プラントの設備運用上の問題に起因すると判定された場合は、図1に示すように、上記改善提案作成手段27は、その要因となった稼動時間超過の是正、設備配置の変更等を改善提案データ26aとしてプラント使用者14に提示する(図3の処理47)。
【0029】
また、図3における上記処理42において、同一の事象が発見できなかった場合は、図1に示すように、上記メンテナンス事業者11の保守員が現地調査を行い、上記現地調査で確認された設備異常要因28を、携帯端末29を介して、異常箇所情報入力手段30に入力する(図3の処理48)。
図1に示すように、改善提案作成手段27は、異常箇所情報入力手段30から入力された設備異常要因28を参照し、その要因を是正する方針を改善提案データ26aとしてプラント使用者14に提示する(図3の処理49)。
【0030】
図1に示すように、上記実施例によれば、プラント使用者14に対して、保守結果のみでなく保守結果で発見された設備異常の発生を将来的に是正するための改善提案を行うことが可能となるため、食品製造プラントの信頼性がより向上すると共に、設備異常の発生要因を是正することによって、設備交換、修理等に必要となる保守点検コストを低減することが可能となる。
また、図1に示すように、広域ネットワーク22を介してプラント施工業者23が保有するプラント設備施工計画データベース24及びプラント使用者14が保有する設備保全履歴データベース25を参照することから、設備異常の要因把握及び是正措置をより的確且つ迅速に作成することが可能となる。
また、現地調査の結果を、携帯端末29を介して入力することによって、現地情報の機密漏洩を防止しつつ、より確実に設備異常の要因を把握し、適切な改善提案を行うことが可能となる。
【0031】
なお、図3に示すように、本実施例における処理44と45、処理46と47、及び処理48と49は夫々独立して構成することが可能であり、処理順序についても順次処理、並列処理のいずれを選択しても、本実施例と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0032】
また、図1に示す設備異常要因28の入力についても、プラント使用者14(プラント設備の現地)とメンテナンス事業者11との間に、専用回線若しくはVPN(Virtual Private Network)等のセキュリティが十分に確保された回線によって接続することが可能であれば、メンテナンス事業者11の保守員が、食品製造プラント設備の現地に設置したパーソナルコンピュータ等(図1には図示せず)から、現地調査結果を直接入力して配信することとしても、本実施例と同様の作用及び効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、食品製造プラントの保守業務の支援を行う保守業務支援システムに係り、特にプラント使用者に対し、保守点検時に発見された設備異常について、上記設備異常を是正するための改善提案を提示しうる保守業務支援システムに適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明にかかる保守業務支援システムの一実施の形態を示し、実施例の形態における全体システム構成を示す概念図である。
【図2】本発明にかかる保守業務支援システムで使用する各種データベースの構成を階層的に示す概念図である。
【図3】本発明にかかる保守業務支援システムの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
10 保守業務支援システム
11 メンテナンス事業者
12 保守点検結果履歴データベース
12a保守点検時期
12b保守点検結果
13 プラント設備仕様データベース
13a構成設備種別
13b設備仕様書
14 プラント使用者
15 改善提案履歴データベース
15a対象プラント名
15b対象設備機器
15c異常発生状況
15d改善提案書
15e改善効果に関連するデータ
16 設備異常情報
17 保守点検結果入力手段
18 保守点検結果妥当性判定手段
19 改善提案履歴検索手段
20 改善提案提示手段
21 設備診断サーバ
22 広域ネットワーク
23 プラント施工業者
24 プラント施工計画データベース
24aプラント設備構成
24bプラント設計規範
25 設備保全履歴データベース
25a保全計画
25b保全実績
25c設備運用情報(運用基準等)
26a改善提案データ
26b改善提案データ
27 改善提案作成手段
28 設備異常要因
29 携帯端末
30 異常箇所情報入力手段
40 保守点検結果入力手段の処理
41 保守点検結果妥当性判定手段の処理
42 改善提案履歴検索手段の処理
43 改善提案提示手段の処理
44 改善提案作成手段の処理
45 改善提案提示手段の処理
46 改善提案作成手段の処理
47 改善提案提示手段の処理
48 異常箇所情報入力手段の処理
49 改善提案作成手段の処理

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品製造プラント設備の保守業務を支援する保守業務支援システムであって、
メンテナンス事業者の保守点検作業によって発見された、設備異常情報を入力しうる保守点検結果入力手段と、
過去の保守点検結果の履歴データと上記食品製造プラント設備の設備仕様データとを参照し、上記保守点検結果入力手段から入力された設備異常情報の妥当性を判定する保守点検結果妥当性判定手段と、
上記保守点検結果妥当性判定手段によって妥当性を有さないと判断された場合に、過去の改善提案履歴データから同一の異常が発生した事象の有無を検索し、事象が合致する改善提案データを抽出する改善提案履歴検索手段と、上記改善提案履歴検索手段によって抽出された改善提案データをプラント使用者に提示する改善提案提示手段とを有することを特徴とする保守業務支援システム。
【請求項2】
食品製造プラント設備の保守点検結果の履歴情報を格納する保守点検結果履歴データベースと、
食品製造プラント設備の仕様データを格納するプラント設備仕様データベースと、
上記食品製造プラントのプラント使用者に対して、過去に行った改善提案の履歴データを格納する改善提案履歴データベースと、
上記保守点検結果履歴データベース、上記プラント設備仕様データベース、及び上記改善提案履歴データベースに接続されると共に、メンテナンス事業者による保守点検作業によって発見された設備異常情報を入力しうる保守点検結果入力手段と、上記設備異常情報と上記保守点検結果履歴データベースと上記プラント設備仕様データベースとを参照し、上記保守点検結果の妥当性を判定する保守点検結果妥当性判定手段と、上記保守点検結果妥当性判定手段によって妥当性を有さないと判定された場合に、上記改善提案履歴データベースから同一の異常が発生した事象を検索する改善提案履歴検索手段と、上記改善提案履歴検索手段の検索によって抽出された改善提案データをプラント使用者に提示する改善提案提示手段とを備える設備診断サーバとを有することを特徴とする保守業務支援システム。
【請求項3】
上記設備診断サーバと広域ネットワークを介して接続され、プラント施工業者が有する上記食品製造プラントの施工計画データを格納するプラント設備施工計画データベースを有し、
上記改善提案履歴検索手段によって同一の異常が発生した事象が発見されなかった場合に、上記プラント設備施工計画データベースを参照して、上記設備異常情報に該当する設備の構成及び使用環境を確認し、設備の構成及び使用環境に問題点が発見された場合に、上記設備の構成及び使用環境上の問題点を是正する改善提案を作成する改善提案作成手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の保守業務支援システム。
【請求項4】
上記設備診断サーバと広域ネットワークを介して接続され、上記食品製造プラントの使用者が実施した設備保全情報を格納する設備保全履歴データベースを有し、
上記改善提案履歴検索手段によって同一の異常が発生した事象が発見されなかった場合に、上記設備保全履歴データベースを参照し、設備運用上の問題点を発見した場合は、上記設備運用上の問題点を是正する改善提案を作成する改善提案作成手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の保守業務支援システム。
【請求項5】
上記設備診断サーバは、現地調査によって発見された設備異常の要因を入力しうる現地調査結果入力手段を備え、
上記改善提案作成手段は、上記現地調査で発見された異常要因を是正する改善提案を作成することを特徴とする請求項3または4いずれか1項記載の保守業務支援システム。
【請求項6】
上記現地調査によって発見された設備異常の要因は、携帯端末を介して、上記現地調査結果入力手段に入力されることを特徴とする請求項5記載の保守業務支援システム。
【請求項7】
上記改善提案提示手段は、プラント使用者に対し、上記広域ネットワークを介して、改善提案データを配信することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項に記載の保守業務支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−176331(P2010−176331A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17195(P2009−17195)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(000157946)岩井機械工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】