説明

保持器及び保持器の製造方法

【課題】保持器を製造する設備を、帯材及びそれを加工した成形材の送り方向に短くし、その設置スペースを減らす。
【解決手段】 帯材10を素材として、一対の環状形成部11,11と、転動体を収容するポケット12を形成するように前記一対の環状形成部11,11を連結する複数の柱部13とを形成して長手状の成形材20と成し、前記成形材20の長手方向両端部21,21を接合して環状とする打ち抜き保持器の製造方法において、前記成形材20の両端21,21を接合する前の状態で、その成形材20の長手方向を前記帯材10の送り方向に直交する方向に配し、前記帯材10を前記送り方向へ順次送りながら前記成形材20を順送成形する打ち抜き保持器の製造方法を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ころ軸受に用いられる保持器、及び、その保持器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ころ軸受において、内側軌道輪と外側軌道輪との間の環状空間には、転動体としてのころを保持するために保持器が配置される。保持器には、ころを保持するためのポケットが設けられ、各ポケットの間に位置する柱部で、各ころの間隔を保持している。
【0003】
この保持器を製造する技術として、例えば、特許文献1に記載のものがある。この技術では、材料となる鋼製の帯材に対して、その長手方向に直交する断面形状がV字状(凹状)となるように押し曲げるV型フォーム成形工程と、同じくその長手方向に沿って所定の間隔に並んだポケットを打ち抜くポケット抜き工程と、そのポケットが形成された帯状の成形材を長手方向に沿って所定の長さに切断する切断工程と、切断された成形材を概略円形に折り曲げる曲げ工程と、折り曲げられた成形材の両端を接合する接合工程、からなる工程により成形していた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、例えば、特許文献2に記載のように、帯材に対して、長手方向に直交する断面形状が凹状となるように押し曲げる工程(前記V型フォーム成形工程に相当)と、同じく長手方向に所定の間隔に並んだポケットを打ち抜く工程(前記ポケット抜き工程に相当)とを、一つの工程で同時に行うようにした技術もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−16957号公報
【特許文献2】特開2009−191899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術では、例えば、特許文献1に示すように、材料となる鋼製の帯材に対して、その加工を行うための工程が多数連続している。また、例えば、特許文献2に示すように、全体の工程の数を減らすことで設備の設置に要するスペースを減らす工夫をしている場合もある。
【0007】
これらの技術では、帯材に対して加工を行う複数の工程が連続しており、その複数の工程毎に設備が必要である。すなわち、複数台の設備を並列させる必要がある。
また、これらの複数台の設備は、その帯材及びそれを加工した成形材の長手方向が成形送り方向になるように配置している。原料の帯材も、それを加工した成形材も長手方向に長いため、これらの設備では、特にその送り方向に沿って設備の設置スペースを広く確保する必要がある。また、設備が一方向にのみ長いことは、設備を管理する上での作業者の動線が長くなるので、この点においても好ましくない。
【0008】
そこで、この発明は、保持器を製造する設備を、帯材及びそれを加工した成形材の送り方向に短くし、その設置スペースを減らすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、この発明は、帯材を素材として、一対の環状形成部と、転動体を収容するポケットを形成するように前記一対の環状形成部を連結する複数の柱部とを形成して長手状の成形材と成し、前記成形材の長手方向両端部を接合して環状とする打ち抜き保持器の製造方法において、前記成形材の両端を接合する前の状態で、その成形材の長手方向を前記帯材の送り方向に直交する方向に配し、前記帯材を前記送り方向へ順次送りながら前記成形材を順送成形することを特徴とする打ち抜き保持器の製造方法を採用した。
【0010】
この構成によれば、成形材の長手方向を成形送り方向に直交する方向、すなわち、帯材の送り方向に直交する方向に配し、いわゆる順送による搬送を実施しつつ成形することで、打ち抜き保持器を製造する設備を、素材となる帯材及びそれを加工した成形材の送り方向に対して短くし、その設置スペースを減らすことができる。
【0011】
この構成において、前記帯材を、前記送り方向に隣り合う前記成形材同士をその成形材間を結ぶサンを残して分離し、前記成形材の長手方向両端部に接合部を成形するカット工程と、前記成形材の長手方向に沿って凹部を成形する成形工程と、前記ポケットを打ち抜くポケット成形工程と、前記成形材を環状に曲げる曲げ工程と、前記成形材の長手方向両端部を接合する接合工程と、前記サンの切断により前記成形材を前記送り方向に隣り合う他の成形材から切り離す切離工程とを備えた構成を採用することができる。
【0012】
このとき、切離工程を行う時期は、カット工程、成形工程、ポケット成形工程、曲げ工程、接合工程との関係において、自由な時期に設定することができるが、例えば、前記切離工程が、前記曲げ工程と前記接合工程との間に行われる構成を採用することができる。また、前記切離工程が、前記曲げ工程よりも前に行われる構成を採用することもできる。
【0013】
また、他の構成として、切離工程を行う時期を接合工程の後に設定することもできる。すなわち、その構成は、前記帯材を、前記送り方向に隣り合う前記成形材同士をその成形材間を結ぶサンを残して分離し、前記成形材の長手方向両端部に接合部を成形するカット工程と、前記成形材の長手方向に沿って凹部を成形する成形工程と、前記ポケットを打ち抜くポケット成形工程と、前記成形材を環状に曲げる曲げ工程と、前記成形材の長手方向両端部を接合する接合工程までを、前記サンで前記送り方向に隣り合う前記成形材同士が繋がった状態で順送成形する構成である。
【0014】
この構成によれば、送り方向に隣り合う複数の成形材を、帯材とともにサンを介して繋がった状態で送るので、順送成形を行うための上下金型や送り装置の構成を簡略化できる。
【0015】
なお、これらの各構成において、カット工程、成形工程、ポケット成形工程、曲げ工程、接合工程は、必ずしもこの順序に限定されるものではなく、特に、カット工程、成形工程、ポケット成形工程の順序は任意である。ただし、接合工程は曲げ工程の後段であることが望ましい。また、曲げ工程は、カット工程、成形工程、ポケット成形工程の後段であることが望ましい。
【0016】
また、カット工程、成形工程、ポケット成形工程は、それぞれ、帯材の送り方向に沿って並列して設けられて、複数回のプレスによって順に行うようにしてもよいが、これらのうちいくつかを、前記送り方向一箇所において一回のプレスで同時に行ってもよい。すなわち、前記カット工程、前記成形工程及び前記ポケット成形工程の中から選択される複数の工程を、一回のプレスで同時に行う構成を採用することができる。
【0017】
さらに、カット工程、成形工程、ポケット成形工程、曲げ工程、接合工程のうち、そのいずれかを別の装置で行ってもよい。例えば、カット工程、成形工程、ポケット成形工程までを連続する装置で行い、成形材を切り離した後に、曲げ工程、接合工程を行う構成、あるいは、カット工程、成形工程、ポケット成形工程、曲げ工程までを連続する装置で行い、成形材を切り離した後に接合工程を行う構成も考えられる。
すなわち、前記帯材を、前記送り方向に隣り合う前記成形材同士をその成形材間を結ぶサンを残して分離し、前記成形材の長手方向両端部に接合部を成形するカット工程と、前記成形材の長手方向に沿って凹部を成形する成形工程と、前記ポケットを打ち抜くポケット成形工程と、前記成形材を環状に曲げる曲げ工程と、前記成形材の長手方向両端部を接合する接合工程の中から選択される一つの又は複数の工程を前記送り方向に連続する単一の設備で行い、他を別の設備で行う構成を採用することができる。
【0018】
このとき、前記送り方向に連続する単一の設備の最後に、前記サンの切断により前記成形材を前記送り方向に隣り合う他の成形材から切り離す切離工程が設けられることが望ましい。
【0019】
また、他の構成として、別の設備を用いることなく、特に、前記カット工程、前記成形工程、前記ポケット成形工程、前記曲げ工程及び前記接合工程までを、前記送り方向に連続する単一の設備で連続して成形する構成を採用することができる。
【0020】
さらに、これらの各構成において、前記曲げ工程は、前記接合工程よりも前段で少なくとも一工程以上の予備曲げ工程を備えることができる。予備曲げ工程があれば、例えば、その予備曲げ工程において、成形材の長手方向両端部付近を、その長手方向に沿って予め円弧状に予備曲げしておくなどの処理により、その両端部同士が対向して環状を成した際に、その対向部に折れ点を生じさせず、その全体形状をより真円に近づけることが容易である。また、長手方向両端部以外の中間部に対し、予備曲げを行ってもよい。
【0021】
これらの各構成において、前記帯材としては、金属製の素材を採用することができる。
また、前記帯材が鋼板である場合において、前記接合工程は、例えば、前記成形材の長手方向両端部を溶接により接合する構成とすることができる。
【0022】
また、その接合部の構成として、前記接合部は互いに噛み合う凹凸であり、前記接合工程は、前記長手方向両端部を前記接合部同士の噛み合わせにより接合する構成とすることができる。このとき、前述の溶接による接合を併用してもよい。
【0023】
また、これらの構成において、前記カット工程は、一回のプレスにより行われるものとすることができるが、特に、前記送り方向に隣り合う前記成形材同士をその成形材間を結ぶサンを残して分離する工程と、前記成形材の長手方向両端部に接合部を成形する工程とを別々のプレスにより分けて行う構成を採用することができる。設備の長さ(前記送り方向長さ)が短くなったことにより、このようにプレスを分けて行う構成も採用しやすくなる。
【0024】
また、前記ポケット成形工程は、例えば、前記曲げ工程で成形材を環状に曲げた際に、その内径面となる側から外径面となる側に向かって前記ポケットの打ち抜きを行う構成を採用することができる。
このとき、前記ポケット成形工程は、下型に対して上型が降下することにより前記ポケットが形成されるものであり、前記曲げ工程は、前記成形材の長手方向両端部を上方へ持ち上げることにより環状に曲げられる構成を採用することができる。
【0025】
さらに、これらの各構成からなる打ち抜き保持器の製造方法によって製造された転がり軸受用保持器を、内側軌道輪(内輪)と外側軌道輪(外輪)との間の環状空間に、ころ等の転動体を複数配置した軸受に対し、その環状空間内において転動体を周方向に沿って保持する保持器として採用することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明は、成形材の長手方向を成形送り方向に直交する方向、すなわち帯材の送り方向に直交する方向に配し、いわゆる順送による搬送を実施しつつ成形することで、打ち抜き保持器を製造する設備を、素材となる帯材及びそれを加工した成形材の送り方向に対して短くし、その設置スペースを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態を示し、(a)は打ち抜き保持器の製造方法を示す平面図、(b)は、同正面図
【図2】図1(a)の右側面図
【図3】打ち抜き保持器の斜視図
【図4】この実施形態の打ち抜き保持器の製造方法を示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、帯材10を素材として、一対の環状形成部11,11と、ころ等の転動体を収容するポケット12を形成するように、その一対の環状形成部11,11間を連結する複数の柱部13とを形成して長手状の成形材20と成し、その成形材20の長手方向両端部21,21を接合して環状とする打ち抜き保持器30の製造方法である。
以下、打ち抜き保持器30を単に保持器30と称する。この実施形態は、図3に示すような針状ころ軸受の保持器30を例に、その製造方法を示している。
【0029】
帯材10の素材としては、通常は金属が用いられ、特に、この実施形態では鋼板を用いているが、樹脂等の他の素材を用いる場合も考えられる。
【0030】
図4は、この実施形態の保持器30を製造する工程を示すフロー図である。この実施形態は、カット工程A、成形工程B、ポケット成形工程C、曲げ工程D、接合工程E、切離工程Fを順に備える。また、図1及び図2は、これらの各工程A〜Fにおける帯材10、成形材20に対する加工の内容を表す概略図である。この図1及び図2を参照して、保持器30の製造方法について説明する。
【0031】
まず、保持器30の概略円周長さを幅寸法Wとする帯材10を順送プレスに挿入する。そして、図示しない送り装置によって、帯材10及びそれを加工した成形材20は、保持器30の概略幅寸法L1に、その送り方向に隣り合う成形材20,20同士の隙間L2を加えた送り量L3ずつ搬送しながら、そのL3の搬送を終了した都度、下型gに対する上型a1〜fによるプレスにより順送成形を行う。送り方向は、図1(a)(b)に示す左から右方向である。
【0032】
図中の符号Aは、帯材10を、送り方向に隣り合う成形材20,20同士を結ぶサン14を残して分離し、成形材20の長手方向両端部21,21に、互いに噛み合う凹凸からなる接合部15,16を成形するカット工程Aを行うエリアを示している。
【0033】
このカット工程Aのうち、図中の符号A1は、上型a1の降下によって、送り方向に隣り合う成形材20,20同士を結ぶサン14を残して、その成形材20,20を分離する工程である。この段階で、サン14は、送り方向に向かって進むにつれて徐々に狭まる台形状である。
【0034】
符号A2は、上型a2の降下によって、送り穴19を設けるとともに、成形材20の長手方向両端部21,21に接合部15,16を成形するための第一工程である。送り穴19には、送り装置の治具(図示せず)が通されて、帯材10及び成形材20の前記距離L3毎の送りが補助される。
【0035】
符号A1’は、上型a1’の降下によって、台形状のサン14の内側をくり抜くことにより、そのサン14を、より幅の狭い二本のサン14’,14’に分割する工程である。サン14’,14’は平面視ハの字型であり、その幅が、前段の台形状のサン14よりも狭いことから、後述する切離工程Fでの切断を容易にしている。
【0036】
符号A2’は、上型a2’の降下によって、成形材20の長手方向両端部21,21に接合部15,16を成形するための第二工程である。接合部16は、第一工程で形成される凹部16aと第二工程で形成される凹部16bとで形成される凸部である。
【0037】
図中の符号Bは、成形材20の長手方向に沿って凹部17を成形する成形工程Bを行うエリアを示している。
【0038】
この成形工程Bでは、上型bの降下によって、成形材20の長手方向全長に亘って同一断面で続く凹部17が形成される。この凹部17の断面形状は、軸受の種別やころの種別によって適宜選択される。この凹部17の形成により、後述の曲げ工程Dで成形材20が円筒状に曲げられたときに、その成形材20の幅方向中央部と幅方向端部とが、径方向に対して段差を生じた状態になる。
【0039】
図中の符号Cは、成形材20の長手方向に沿って、複数のポケット12を所定の間隔に打ち抜くポケット成形工程Cを行うエリアを示している。
【0040】
このポケット成形工程Cのうち、図中の符号C1は、上型c1の降下によって、ポケット12を構成する長手状の穴明けを行う工程である。また、図中の符号C2は、上型c2の降下によって、そのポケット12の内面(周方向側の縁)につめ出し成形を行う工程である。
【0041】
なお、このポケット成形は、ポケット成形型である上型c1,c2を成形材20に対し、後述する曲げ工程Dで成形材20を円筒状に折り曲げた際に、その内径面となる側から外径面となる側に向かって行っている。ただし、ポケット成形型である上型c1,c2と下型gとを上下逆転させることにより、これを逆方向、すなわち、外径面となる側から内径面となる側に向かって行うようにしてもよい。これは、前段の工程A,Bについても同様である。
【0042】
また、前段の工程において、凹部17が形成されていることによって、このポケット成形工程Cで形成されたポケット12,12間に位置する柱部13のうち、成形材20の幅方向中央部は、成形材20の幅方向端部に位置する環状形成部11よりも径方向外側に凹んだ形状となる。
【0043】
つぎに、図中の符号Dは、成形材20を環状に曲げる曲げ工程Dを行うエリアを示している。この曲げ作業は、図示しない治具を成形材20の長手方向両端部21,21に宛がうとともに、その治具に図示しない上型を下降させることにより成形材20を押し当て、適宜、その長手方向両端部21,21を内側(前記帯材10の幅W中心側)へ寄せることにより行う。図2は、その曲げ工程Dにおいて、成形材20の長手方向両端部21,21が持ち上げられ、その後、内側に寄せられて、成形材20が徐々に環状に曲げられていく状態が理解できる側面図である。
【0044】
この曲げ工程Dにおいて、成形材20を環状に曲げる前に予備曲げを行ってもよい。例えば、成形材20の長手方向両端部21,21付近を、その長手方向に沿って予め円弧状に予備曲げしておけば、その両端部21,21同士が対向して環状を成した際に、その対向部に折れ点を生じさせず、その全体形状をより真円に近づけることが容易である。また、長手方向両端部21,21以外の中間部に対し、予備曲げを行ってもよい。
【0045】
図中の符号Eは、成形材20の長手方向両端部21,21を接合する接合工程Eを行うエリアを示している。
【0046】
この接合工程Eでは、カット工程Aで形成された接合部15,16の凹凸同士を互いに噛み合わせることで、成形材20の長手方向両端部21,21を接合する。これにより、成形材20は、環状(円筒状)となる。
ここで、帯材10は鋼板であるから、この接合部15,16同士の噛み合わせによる接合に代えて、あるいは加えて、長手方向両端部21,21同士を溶接により接合してもよい。
また、接合部15,16の形状はこの実施形態に限定されず、他の凹凸形状や、穴とそれに入り込む凸部などの周知の係合構造を採用することができる。
【0047】
図中の符号Fは、その環状となった成形材20を、送り方向に隣り合う他の成形材20から切り離す切離工程Fを行うエリアを示している。
【0048】
この切離工程Fでは、上型fの降下により、サン14(サン14’,14’)が切断されて成形材20が分離され、保持器30が完成する。
【0049】
なお、この実施形態で示す工程は一般的なものであり、製品形状や仕様により、工程数の増減や順序の変更、一部工程の省略も考えられる。
【0050】
例えば、カット工程A、成形工程B、ポケット成形工程C、曲げ工程D、接合工程Eは、必ずしもこの順序に限定されるものではなく、特に、カット工程A、成形工程B、ポケット成形工程Cの順序は任意である。ただし、接合工程Eは曲げ工程Dの後段であることが望ましい。また、曲げ工程Dは、カット工程A、成形工程B、ポケット成形工程Cの後段であることが望ましい。
【0051】
また、カット工程A、成形工程B、ポケット成形工程Cは、それぞれ、帯材10の送り方向に沿って並列して設けられて、複数回のプレスによって順に行うようにしてもよいが、これらのうちいくつかを、前記送り方向一箇所において一回のプレスで同時に行ってもよい。すなわち、カット工程A、成形工程B及びポケット成形工程Cの中から選択される複数の工程を、一回のプレスで同時に行う構成を採用することができる。
【0052】
さらに、カット工程A、成形工程B、ポケット成形工程C、曲げ工程D、接合工程Eのうち、そのいずれかを別の装置で行ってもよい。例えば、カット工程A、成形工程B、ポケット成形工程Cまでを連続する装置で行い、成形材20を切り離した後に、曲げ工程D、接合工程Eを行う構成、あるいは、カット工程A、成形工程B、ポケット成形工程C、曲げ工程Dまでを連続する装置で行い、成形材20を切り離した後に接合工程Eを行う構成も考えられる。
【0053】
すなわち、帯材10を、送り方向に隣り合う成形材20,20同士を結ぶサン14を残して分離し、成形材20の長手方向両端部21,21に接合部15,16を成形するカット工程Aと、成形材20の長手方向に沿って凹部17を成形する成形工程Bと、ポケット12を打ち抜くポケット成形工程Cと、成形材20を環状に曲げる曲げ工程Dと、成形材20の長手方向両端部21,21を接合する接合工程Eの中から選択される一つの又は複数の工程を、適宜の順序で送り方向に連続する単一の設備で行い、成形材20を切り離した後に、他の工程を別の設備で行う構成である。
【符号の説明】
【0054】
10 帯材
11 環状形成部
12 ポケット
13 柱部
14 サン
15,16 接合部
17 凹部
18 凸部
19 送り穴
20 成形材
21 長手方向両端部
30 打ち抜き保持器(保持器)
A,A1,A2,A1’,A2’ カット工程
B 成形工程
C,C1,C2 ポケット成形工程
D 曲げ工程
E 接合工程
F 切離工程
a,a1,a2,a1’,a2’,b,c1,c2,f 上型
g 下型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯材(10)を素材として、一対の環状形成部(11,11)と、転動体を収容するポケット(12)を形成するように前記一対の環状形成部(11,11)を連結する複数の柱部(13)とを形成して長手状の成形材(20)と成し、前記成形材(20)の長手方向両端部(21,21)を接合して環状とする打ち抜き保持器の製造方法において、
前記成形材(20)の両端(21,21)を接合する前の状態で、その成形材(20)の長手方向を前記帯材(10)の送り方向に直交する方向に配し、前記帯材(10)を前記送り方向へ順次送りながら前記成形材(20)を順送成形することを特徴とする打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項2】
前記帯材(10)を、前記送り方向に隣り合う前記成形材(20,20)同士をその成形材(20,20)間を結ぶサン(14)を残して分離し、前記成形材(20)の長手方向両端部(21,21)に接合部(15,16)を成形するカット工程(A)と、前記成形材(20)の長手方向に沿って凹部(17)を成形する成形工程(B)と、前記ポケット(12)を打ち抜くポケット成形工程(C)と、前記成形材(20)を環状に曲げる曲げ工程(D)と、前記成形材(20)の長手方向両端部(21,21)を接合する接合工程(E)と、前記サン(14)の切断により前記成形材(20)を前記送り方向に隣り合う他の成形材(20)から切り離す切離工程(F)とを備える請求項1に記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項3】
前記切離工程(F)は、前記曲げ工程(D)と前記接合工程(E)との間に行われることを特徴とする請求項2に記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項4】
前記切離工程(F)は、前記曲げ工程(D)よりも前に行われることを特徴とする請求項2に記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項5】
前記帯材(10)を、前記送り方向に隣り合う前記成形材(20,20)同士をその成形材(20,20)間を結ぶサン(14)を残して分離し、前記成形材(20)の長手方向両端部(21,21)に接合部(15,16)を成形するカット工程(A)と、前記成形材(20)の長手方向に沿って凹部(17)を成形する成形工程(B)と、前記ポケット(12)を打ち抜くポケット成形工程(C)と、前記成形材(20)を環状に曲げる曲げ工程(D)と、前記成形材(20)の長手方向両端部(21,21)を接合する接合工程(E)までを、前記サン(14)で前記送り方向に隣り合う前記成形材(20,20)同士が繋がった状態で順送成形することを特徴とする請求項1に記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項6】
前記カット工程(A)、前記成形工程(B)及び前記ポケット成形工程(C)の中から選択される複数の工程を、一回のプレスで同時に行うことを特徴とする請求項2乃至5のいずれか一つに記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項7】
前記帯材(10)を、前記送り方向に隣り合う前記成形材(20,20)同士をその成形材(20,20)間を結ぶサン(14)を残して分離し、前記成形材(20)の長手方向両端部(21,21)に接合部(15,16)を成形するカット工程(A)と、前記成形材(20)の長手方向に沿って凹部(17)を成形する成形工程(B)と、前記ポケット(12)を打ち抜くポケット成形工程(C)と、前記成形材(20)を環状に曲げる曲げ工程(D)と、前記成形材(20)の長手方向両端部(21,21)を接合する接合工程(E)の中から選択される一つの又は複数の工程を前記送り方向に連続する単一の設備で行い、他を別の設備で行うことを特徴とする請求項1に記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項8】
前記送り方向に連続する単一の設備の最後に、前記サン(14)の切断により前記成形材(20)を前記送り方向に隣り合う他の成形材(20)から切り離す切離工程(F)が設けられることを特徴とする請求項7に記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項9】
前記カット工程(A)、前記成形工程(B)、前記ポケット成形工程(C)、前記曲げ工程(D)及び前記接合工程(E)までを、前記送り方向に連続する単一の設備で連続して成形することを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一つに記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項10】
前記曲げ工程(D)は、前記接合工程(E)よりも前段で少なくとも一工程以上の予備曲げ工程を備えることを特徴とする請求項2乃至9のいずれか一つに記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項11】
前記帯材(10)は金属製の素材であることを特徴とする請求項2乃至10のいずれか一つに記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項12】
前記帯材(10)は鋼板であり、前記接合工程(E)は、前記長手方向両端部(21,21)を溶接により接合することを特徴とする請求項2乃至10のいずれか一つに記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項13】
前記接合部(15,16)は互いに噛み合う凹凸であり、前記接合工程(E)は、前記長手方向両端部(21,21)を前記接合部(15,16)同士の噛み合わせにより接合することを特徴とする請求項2乃至12のいずれか一つに記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項14】
前記カット工程(A)は、前記送り方向に隣り合う前記成形材(20,20)同士をその成形材(20,20)間を結ぶサン(14)を残して分離する工程と、前記成形材(20)の長手方向両端部(21,21)に接合部(15,16)を成形する工程とを別々のプレスにより分けて行うことを特徴とする請求項2乃至13のいずれか一つに記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項15】
前記ポケット成形工程(C)は、前記曲げ工程(D)で成形材(20)を環状に曲げた際に、その内径面となる側から外径面となる側に向かって前記ポケット(12)の打ち抜きを行うことを特徴とする請求項2乃至14のいずれか一つに記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項16】
前記ポケット成形工程(C)は、下型(g)に対して上型(c)が降下することにより前記ポケット(12)が形成されるものであり、前記曲げ工程(D)は、前記成形材(20)の長手方向両端部(21,21)を上方へ持ち上げることにより環状に曲げられることを特徴とする請求項15に記載の打ち抜き保持器の製造方法。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一つに記載の打ち抜き保持器の製造方法によって製造された転がり軸受用保持器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63450(P2013−63450A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203087(P2011−203087)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】